(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
当該列車の現在位置情報が本踏切道の所定距離内に接近したと判断した場合には、その後、踏切障害物検知装置が当該列車を検知したことを示す信号の開始時点から列車が踏切道を通過し終わることにより、踏切制御装置が、前記信号の終了時点までの時間の差分を演算し、この差分の時間と、別途列車から送信されるその時点の現在の走行速度とから踏切障害物検知装置が検知した列車の長さを演算し、この長さと、別途列車から送信される自列車の長さとを比較し、その差が許容される範囲にあれば、踏切障害物検知装置が検知した物体は当該列車であると判断し、本踏切の距離程に自列車の長さを加算した値を列車位置補正情報として送信する請求項1に記載の列車位置の補正方法。
踏切制御装置が、当該列車の現在位置情報により本踏切道の所定距離内に接近したと判断した時点で、踏切道に障害物が存在することを示す信号を踏切障害物検知装置より通知された場合、あるいはそれ以前から通知されている場合、及び踏切障害物検知装置が故障したことにより、フェールセーフ性を確保するために障害物が存在すると同様の信号を通知された場合には、当該列車に対して無線を介して、位置補正無効の情報を送信し、この場合には、車上では当該列車の現在位置の置き換え処理を行わないことを特徴とする請求項1又は2に記載の列車位置の補正方法。
車上と踏切制御装置のそれぞれが装置内に百msec単位の精度がある内部時計を有し、また時刻データを取得できるGPS受信機と接続されており、GPS受信機から取得した時刻データにより、装置が立上ったとき及び一定間隔でそれぞれの内部時計を校正することにより両者の内部時計を一致・同期させ、踏切制御装置が踏切障害物検知装置にて列車を検知したときに、当該踏切の距離程とともに、検知した時点における踏切制御装置の内部時計の時刻を付加して、車上への送信タイミングにおいて車上に送信し、車上では、当該送信された踏切の距離程および踏切制御装置の内部時計の時刻を受信した時点における車上の内部時計の時刻と、当該受信した踏切制御装置の内部時計の時刻との差分を求め、この差分とその時点の列車の走行速度との積演算を行い、求めた距離を踏切制御装置から受信した当該踏切の距離程に加算し、この加算した距離程で、当該列車の現在位置を置き換えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の列車位置の補正方法。
【背景技術】
【0002】
例えば地方交通線用列車制御システムにおいては、列車は、車上に、走行する線路上の踏切の位置や、線路の曲線・勾配などに関する情報を、距離程に相応したデータベースとして保有している。そして、このデータベースと、走行する現在の位置(起点からの距離程)に基づき、列車が駅や踏切と無線交信できるエリアに進入した当該駅や踏切に対して無線で交信を開始したり、曲線・勾配に応じて速度制限を行う。
【0003】
また、列車の現在の位置(起点からの距離程)は、速度発電機(タコジェネレータ)からの出力信号を積算することにより知得するが、長い距離を走行すると、種々の原因(空転、滑走等)によって知得した距離程と実際の距離程にズレが発生する。そこで、この距離程のズレを実際の距離程に補正する必要があり、この補正のために、現行は、現地の距離程を書き込んだトランスポンダ無電源地上子(いわゆる、「距離補正用地上子」)を所定の間隔で、軌間に設置する一方、列車にトランスポンダ車上装置と車上子を搭載し、列車が距離補正用地上子の上を通過すると、この地上子から実際の距離程情報を受信し、この情報に自列車の位置(距離程)を合わせるようにしている。
【0004】
ところで、前記現行の列車制御システムにあっては、地上には、所定の間隔で距離補正用地上子を設置し、車上にはトランスポンダ車上装置と車上子を搭載しなければならず、イニシャル、ランニングコストが増加するという問題があった。また、距離補正用地上子を軌間に設置しなければならないため、保線作業を支障し、また地上子のメンテナンスのため作業者が線路内に入らなければならず、作業者の安全確保など保安上の問題もあった。
【0005】
関連する特許文献としては、特開2008−126721号公報(特許文献1)に示すような列車制御システムや、特開2009−240110号公報(特許文献2)に示すような列車制御システムが提案されている。
【0006】
特許文献1に開示されている列車制御システムは、速度発電機を用いて列車位置を検知したときの在線区間を正確に、かつ安全に設定できるようにし、列車間隔を効率的に制御できるようにすることを目的とし、この目的を達成するために所定の軌道を走行する列車の車軸に接続された速度発電機の出力信号を用いて列車位置を検知するとともに、その検知された列車位置に基づいて所定の列車制御を行う列車制御システムにおいて、前記速度発電機は、前記列車の複数の車軸にそれぞれ接続された複数の速度発電機からなり、それら複数の速度発電機で計測された移動距離の中から最も移動距離の大きい最大移動距離を選択して、又はそれら複数の速度発電機で測定された移動距離の小さい最小移動距離を選択して列車位置を検知する検知手段を設けたものである。そして、この装置にあっては、列車に設けられている車上子が地上の所定位置に設けられている地上子と対向して結合したときに、その地上子から得られる情報に基づいて速度発電機から得られた列車位置を補正する(請求項5や段落0023〜0025等を参照)。
【0007】
また、特許文献2に開示されている列車制御システムは、列車の性能に応じた適正な速度照査パターンを生成することができ、極めて効率のよい速度制御を行うことができるようにすることを目的とし、この目的を達成するために列車の位置を演算する列車位置演算部と、列車性能が格納された車両データベースと、線路情報が格納された線路データベースと、列車位置演算部からの列車位置情報、車両データベースからの列車性能および線路データベースからの線路情報をそれぞれ入力して、線路の速度制限区間に対する速度照査パターンを生成するパターン生成部とを備えたものである。そして、この装置にあっては、列車位置演算部が、車上子が地上子と電磁結合することにより取得された信号に基づいて、タコジェネレータによる走行距離を補正する(請求項3や段落0024等を参照)。
【0008】
前記のように、特許文献1の列車制御システム、特許文献2の列車制御システムとも、地上子からの出力信号に基づいて走行距離を補正することには変わりなく、いずれも段落0003,0004に挙げた背景技術と基本的には同様な問題を抱えるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は、前記従来の問題を解決し、列車位置(距離程)の補正を、既設の無線式踏切制御装置と踏切障害物検知装置の検知機能を活用して、距離補正用地上子を設置しなくとも行うことができるとともに、コスト削減と作業者の安全確保を図ることができる列車位置(距離程)補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、無線式踏切制御装置と、
踏切道に設置された投光器及び受光器を有し、該踏切道内に滞留する物体を障害物として検知する踏切障害物検知装置を具えた列車制御システムにおいて、走行する線路上の踏切の位置や線路の曲線・勾配などに関する情報を距離程に相応させて格納した
第1のデータベース、及び速度発電機を車上に搭載して当該踏切と無線交信できるエリアに進入した列車から無線を介して一定周期で送信される当該列車の現在位置を補正する方法であって、前記踏切制御装置が、前記
第1のデータベース及び速度発電機から求められ無線を介して一定周期で送信される当該列車の現在位置を当該踏切と無線交信できるエリアに進入した列車から受信し、この列車の現在位置情報と、
当該踏切制御装置に設けられた第2のデータベースに予め格納されている本踏切の設置位置を示す距離程とを比較することにより、この列車の現在位置情報が本踏切道の所定距離内に接近したと判断した場合には、
当該踏切制御装置は、本踏切に設置した踏切障害物検知装置が
前記投光器及び受光器により本踏切道内において物体を検知したかどうかを確認し、踏切障害物検知装置から物体を検知したことを示す信号を取得すると、当該列車が本踏切道に到達したものとして、当該列車に対して、無線を介して列車位置補正情報として、
前記第2のデータベースに格納されている本踏切の距離程を車上への送信タイミングにおいて車上に送信し、車上では、当該列車の現在位置を本踏切の距離程に置き換えることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、当該列車の現在位置情報が本踏切道の所定距離内に接近したと判断した場合には、その後、踏切障害物検知装置が当該列車を検知したことを示す信号の開始時点から列車が踏切道を通過し終わることにより、踏切制御装置が、前記信号の終了時点までの時間の差分を演算し、この差分の時間と、別途列車から送信されるその時点の現在の走行速度とから踏切障害物検知装置が検知した列車の長さを演算し、この長さと、別途列車から送信される自列車の長さとを比較し、その差が許容される範囲にあれば、踏切障害物検知装置が検知した
物体は当該列車であると判断し、本踏切の距離程に自列車の長さを加算した値を列車位置補正情報として送信する。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、踏切制御装置が、当該列車の現在位置情報により本踏切道の所定距離内に接近したと判断した時点で、踏切道に障害物が存在することを示す信号を踏切障害物検知装置より通知された場合、あるいはそれ以前から通知されている場合、及び踏切障害物検知装置が故障したことにより、フェールセーフ性を確保するために障害物が存在すると同様の信号を通知された場合には、当該列車に対して無線を介して、位置補正無効の情報を送信し、この場合には、車上では当該列車の現在位置の置き換え処理を行わない。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかにおいて、車上と踏切制御装置のそれぞれが装置内に百msec単位の精度がある内部時計を有し、また時刻データを取得できるGPS受信機と接続されており、GPS受信機から取得した時刻データにより、装置が立上ったとき及び一定間隔でそれぞれの内部時計を校正することにより両者の内部時計を一致・同期させ、踏切制御装置が踏切障害物検知装置にて列車を検知したときに、当該踏切の距離程とともに、検知した時点における踏切制御装置の内部時計の時刻を付加して、車上への送信タイミングにおいて車上に送信し、車上では、当該送信された踏切の距離程および踏切制御装置の内部時計の時刻を受信した時点における車上の内部時計の時刻と、当該受信した踏切制御装置の内部時計の時刻との差分を求め、この差分とその時点の列車の走行速度との積演算を行い、求めた距離を踏切制御装置から受信した当該踏切の距離程に加算し、この加算した距離程で、当該列車の現在位置を置き換える。
【発明の効果】
【0015】
この発明は、前記のようであって、請求項1に記載の発明によれば、踏切制御装置が、
第1のデータベース及び速度発電機から求められ無線を介して一定周期で送信される当該列車の現在位置を当該踏切と無線交信できるエリアに進入した列車から受信し、この列車の現在位置情報と、
当該踏切制御装置に設けられた第2のデータベースに予め格納されている本踏切の設置位置を示す距離程とを比較することにより、この列車の現在位置情報が本踏切道の所定距離内に接近したと判断した場合には、
当該踏切制御装置は、本踏切に設置した踏切障害物検知装置が
前記投光器及び受光器により本踏切道内において物体を検知したかどうかを確認し、踏切障害物検知装置から物体を検知したことを示す信号を取得すると、当該列車が本踏切道に到達したものとして、当該列車に対して、無線を介して列車位置補正情報として、
前記第2のデータベースに格納されている本踏切の距離程を車上への送信タイミングにおいて車上に送信し、車上では、当該列車の現在位置を本踏切の距離程に置き換えるので、既設あるいは新設の踏切障害物検知装置による列車検知と、車上―踏切間の無線を用いることにより、非常に安価に列車位置(距離程)を補正することができる。しかも、従来の距離補正用地上子を用いる必要がないとともに、該地上子とは違い踏切障害物検知装置は軌間外に設置されるので、保線作業を支障することもなく、またメンテナンスにも制約がなくなるのに加え、無線式踏切制御装置の付加価値が高まるという優れた効果がある。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、列車の現在位置情報が本踏切道の所定距離内に接近したと判断した場合には、その後、踏切障害物検知装置が当該列車を検知したことを示す信号の開始時点から列車が踏切道を通過し終わることにより、踏切制御装置が、前記信号の終了時点までの時間の差分を演算し、この差分の時間と、別途列車から送信されるその時点の現在の走行速度とから踏切障害物検知装置が検知した列車の長さを演算し、この長さと、別途列車から送信される自列車の長さとを比較し、その差が許容される範囲にあれば、踏切障害物検知装置が検知した
物体は当該列車であると判断し、本踏切の距離程に自列車の長さを加算した値を列車位置補正情報として送信するので、踏切障害物検知装置で検知した物体が列車であることの正当性が高まり、踏切制御装置の信頼性がより一層高くなる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、踏切制御装置が、当該列車の現在位置情報により本踏切道の所定距離内に接近したと判断した時点で、踏切道に障害物が存在することを示す信号を踏切障害物検知装置より通知された場合、あるいはそれ以前から通知されている場合、及び踏切障害物検知装置が故障したことにより、フェールセーフ性を確保するために障害物が存在すると同様の信号を通知された場合には、当該列車に対して無線を介して、位置補正無効の情報を送信し、この場合には、車上では当該列車の現在位置の置き換え処理を行わないので、障害物の存在を列車と見做し、誤った位置補正をすることを回避することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、車上と踏切制御装置のそれぞれが装置内に百msec単位の精度がある内部時計を有し、また時刻データを取得できるGPS受信機と接続されており、GPS受信機から取得した時刻データにより、装置が立上ったとき及び一定周期でそれぞれの内部時計を校正することにより両者の内部時計を一致・同期させ、踏切制御装置が踏切障害物検知装置にて列車を検知したときに、当該踏切の距離程とともに、検知した時点における踏切制御装置の内部時計の時刻を付加して、車上への送信タイミングにおいて車上に送信し、車上では、当該送信された踏切の距離程および踏切制御装置の内部時計の時刻を受信した時点における車上の内部時計の時刻と、当該受信した踏切制御装置の内部時計の時刻との差分を求め、この差分とその時点の列車の走行速度との積演算を行い、求めた距離を踏切制御装置から受信した当該踏切の距離程に加算し、この加算した距離程で、当該列車の現在位置を置き換えるので、同じ伝送周期(例えば1秒周期)においても、伝送遅れによる誤差を1/100単位に抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の一実施の形態の列車制御システムについて、図面を参照しながら説明する。
図1は地方交通線用列車制御システムのサブシステムとしての無線式踏切制御装置を示し、その概要は次の通りである。
【0021】
1は踏切近くに設置した踏切用基地局・踏切制御装置を示し、該装置の器具箱には無線式踏切制御装置2と、踏切障害物検知装置3と、無線機4,5が設置されている。踏切制御装置2は、I/O11、データベース(DB)12、論理部13、無線インターフェース(I/F)14を有し、踏切障害物検知装置3から検知情報を得て、また必要によりI/O11やDB12からの情報も得て論理部13で演算処理し、それから得た情報を基に踏切道脇に設置した遮断機16の遮断桿の開閉、及び警報機17の警報の制御を行うようになっている。なお、DB12には、当該踏切の距離程などの情報が格納されている。
【0022】
踏切障害物検知装置3は、踏切道に設置された投光器18、及び受光器19を有し、踏切道に障害物が有るか否かを検知するようになっている。すなわち、踏切障害物検知装置3は踏切保安装置のひとつで前記投受光器18,19以外にも各種方式のものがあるが、いずれも踏切道付近に設置され、エンストや脱輪などの踏切道内に滞留した自動車などを鉄道の運行に支障がある障害物として検知し、進来してくる列車に停止信号を現示することを目的とした装置である。本来は踏切道内に滞留する障害物を検知する目的であるが、機能的には何らかの物体をも検知することができ、ここでは列車も物体として検知できるようになっている。
【0023】
一方、21は所定の線路を走行する列車で、該列車にはデータベース(DB)22、位置把握部23、無線インターフェース(I/F)24、速度発電機(タコジェネレータ)26、速度論理部制御部27のほか、表示装置28、車両用移動局29が搭載されている。DB22には、走行する線路上の踏切の位置や線路の曲線・勾配などに関する情報を距離程に相応させて格納している。なお、いわゆる「距離補正用地上子」を用いて自列車の位置を補正する従来の方式では、上記装置の他に、トランスポンダ車上装置と車上子が必要である。
【0024】
列車(車上)21上では、踏切と無線交信できるエリアに進入した当該踏切にある踏切用基地局・踏切制御装置1に対して、無線を介して、一定周期(例えば1秒周期)で自列車の現在位置(距離程)、現在の走行速度、自列車の長さ(編成長)、の情報を送信する。自列車の現在位置(距離程)と現在の走行速度は、車輪の回転に従ってパルスを発生する速度発電機26からの信号(パルス数)を速度論理部制御部27で積算(計数処理)して求める。
なお、踏切と無線交信できるエリアの始端は、当該踏切道から1,000m〜1,500m手前に離れた位置で、当該踏切の踏切警報開始位置(列車の速度などにより異なるが、踏切道から600m〜800m程度、手前に離れた位置)よりも、更に遠くに離れた位置となる。
【0025】
また、列車(車上)21では、データベース(DB)22から取得する最寄の踏切までに停車するブレーキパターンを生成し、これに沿って走行する。そして踏切制御装置1から、無線を介して、踏切通過が可能であることを示す遮断完了情報を受信することにより、当該踏切までの停車ブレーキパターンを解除・更新する。その後、踏切支障が発生した場合、踏切制御装置1から、無線を介して、踏切支障の情報を受信することにより、当該踏切までの停車ブレーキパターンに引き戻す。
【0026】
踏切制御装置2では、列車(車上)21から無線で送られてくる走行中の列車(自列車)の現在位置(距離程)、現在の走行速度の情報から論理部13で踏切の警報を開始すべき時期を随時予測し、適時に警報機17の警報を開始するとともに、自列車の長さ(編成長)の情報から列車が踏切を通過し終わる時期を予測し、適時に警報を停止する。また、前記において、警報を開始し、遮断機の遮断桿が降りた時点で、踏切通過が可能であることを示す遮断完了情報を車上に送信する。その後、踏切支障が発生した場合、踏切支障の情報を車上に送信する。
【0027】
次に、踏切制御装置1の制御について、
図2を用いて説明する。
【0028】
図2は、踏切制御装置1と列車(車上)21での処理内容を示すフローチャートである。まず、踏切制御装置1においては、踏切と無線交信できるエリアに進入した列車の車上装置から、DB22及び速度発電機26から求められる当該列車の現在位置、現在の走行速度、及び自列車の長さを、無線機4,5及び無線インターフェース14を介して一定周期(例えば1秒周期)で受信する(ステップ01)。
【0029】
次に、論理部13は、この受信情報から列車の現在位置が、本踏切道の距離程の手前所定距離内かを比較し(ステップ02)、所定距離内の場合には当該列車の現在位置により当該列車が本踏切道の手前所定距離内に接近した(以下、
図2〜
図5では「踏切道の直前に接近」したと略記する)と判定して、次のステップ03へ移る。所定距離内でない場合は、未接近として受信前の状態(ステップ01)に復帰する。なお、本踏切の設置位置を示す距離程の情報は、予め踏切制御装置2のDB12に格納されている。
【0030】
ここで所定距離とは、速度発電機からの出力信号を積算することにより知得した距離程と実際の距離程のズレの範囲が当該列車制御システムにおいて許容される距離に、伝送遅れなどによる誤差(例えば10%)を加えた値である。
この許容される距離の例としては、列車が停止位置を万一過走した場合においても、脱線などの危険な事態にならないような処置を行っている当該停止位置からの距離(これを「過走余裕距離」と呼ぶ)100mに対して安全側に余裕をみた50m、あるいは1車両の長さ20mなどに許容誤差、例えば10%を加えた値が挙げられる。
【0031】
次に、前記ステップ02において列車が踏切道の手前所定距離内に接近したと判定した後、踏切制御装置1は、本踏切に設置した踏切障害物検知装置3が物体を検知したかどうかを確認する(ステップ03)。その結果、物体検知を示す信号を取得した場合は、当該列車が本踏切道に到達したものとみなし、本踏切の距離程を列車位置補正情報として、当該列車に対して無線インターフェース14及び無線機4,5を介して送信し(ステップ04)、処理を終了する。列車検知を示す信号を取得できなかった場合は、列車未到達として、ステップ03に復帰する。
【0032】
次に、列車(車上)21では、踏切制御装置1から送られてきた列車位置補正情報(踏切の距離程)を、無線インターフェース24を介して受信し(ステップ11)、この受信した踏切の距離程と、速度論理部制御部27で上述の方法により算出される自列車の走行位置(距離程)との差分を求める(ステップ12)。そして、差分が許容範囲内(所定距離内)か否かを確認し(ステップ13)、範囲内であれば、自列車の走行位置をステップ11で受信した本踏切の距離程に置き換えて(ステップ14)、処理を終了する。一方、差分が範囲外であれば、その旨の警報を発するとともに、自動的にブレーキを作動させ停車させる(ステップ15)。その後の運転再開については、次に列車位置補正情報を受信する箇所までの間、例えば速やかに停車できる速度とされている15km/hの低速で運転するなど、当該列車制御システムの運転取扱いに委ねられる。なお、ステップ13において差分と比較される許容範囲は、前述の所定距離と同じであり、車上のDB22に格納しておけばよい。
【0033】
このようにして列車の現在位置を、既設の無線式踏切制御装置と踏切障害物検知装置の物体検知機能を活用して容易に補正するものである。その際に従来のような距離補正用地上子を設置しなくとも行うことができるので、地上子のメンテナンスの必要が無く、コスト削減を図ることができる。しかも、地上子のように軌間に設置しなくともよいので、作業者の安全確保も支障なく図ることができる。
【0034】
ここで、上述のステップ03において本踏切に設置した前記踏切障害物検知装置が当該列車を検知したことを示す信号を取得すると、当該列車が本踏切道に到達したものとして、ステップ04において当該列車に対して無線を介して列車位置補正情報(本踏切の距離程)を送信するが、その前段として、ステップ02において列車の現在位置情報が本踏切道の所定距離内に接近したと判断することの必要性について述べる。
【0035】
すなわち、踏切障害物検知装置は、本来は踏切道内に滞留する障害物を検知する目的で設置されるもので、列車が踏切の踏切警報開始位置に到達(列車の速度などにより異なるが、踏切道から600m〜800m程度、手前に離れた位置)し、踏切警報が開始後に、踏切道内に物体が一定時間(一般的には5、6秒)以上存在(滞留)すれば、この物体を障害物として検知する。
【0036】
また、本発明では、踏切障害物検知装置は列車も物体として検知することを利用している。従って、踏切障害物検知装置が検知した物体が障害物であるか列車であるかを判別する必要があるが、列車の現在位置情報が本踏切道の所定距離内に接近した場合には、既に十分長い時間、踏切は警報し道路交通が遮断されている。また距離で言い換えれば、踏切警報を開始する600m〜800m程の距離に対して、所定距離50mあるいは20mで十分に短く、また踏切道から列車の進来が確認できる距離であるので、これ以降に自動車などが踏切道に進入することは、意図的な場合以外は現実的にはありえず、これ以降に踏切障害物検知装置が検知した物体は列車と特定できる。このような理由から、上述したステップ02のように、列車の現在位置情報が本踏切道の所定距離内に接近したと判断することが求められる。
【0037】
一方、仮に上述の列車の現在位置情報が本踏切道の所定距離(例えば50mあるいは20m)内に接近したとする判断機能がないとすれば、検知した障害物をもって列車が本踏切道に到達したものと看做し、このときに当該列車に対して列車位置補正情報として、本踏切の距離程を送信することになり、誤った位置補正をすることになる。
【0038】
<変形例1>
図3は、
図2のフローチャートを前提としつつ、踏切障害物検知装置で検知した物体が列車であることの正当性を高めるための変形例を示すフローチャートである。ここでは
図3を用いて両フローチャートでの異なる部分について主に説明する。
【0039】
まず、踏切制御装置1においては、前記ステップ01〜03の処理を経て踏切障害物検知装置3が当該列車を検知したときに、その列車の検知を開始した時刻Tsを取得する(ステップ24)。その後、列車が踏切道を通過し終えると、踏切制御装置1は、踏切障害物検知装置3による当該列車の検知を終了した時刻Teを取得する(ステップ25)。そして、この検知終了時刻Teと、ステップ24で取得した検知開始時刻Tsとの差分(列車検知時間)tを求める(ステップ26)。
【0040】
次に、踏切制御装置1は、ステップ01で列車(車上)21から受信した自列車の現在の走行速度と、ステップ26で求めた列車検知時間tとを乗算し、列車の長さLを求める(ステップ27)。そして、この列車の長さLと、ステップ01で列車(車上)21から受信した自列車の長さとの差分を求め(ステップ28)、この差分が許容範囲内か否かを確認する(ステップ29)。
【0041】
その結果、差分が許容範囲内であれば、踏切障害物検知装置で検知した物体は列車であるとして、本踏切の距離程に自列車の長さを加算したもの(列車位置補正情報)、及び位置補正有効情報を車上に送信し(ステップ30)、処理を終了する。一方、差分が許容範囲外であれば、位置補正無効情報を車上に送信して(ステップ31)、処理を終了する。なお、ステップ29において差分と比較される許容範囲も、当該列車制御システムにおいて許容される距離であり、例えば自列車の長さの±10%を設定し、踏切制御装置2のDB12に格納しておけばよい。
【0042】
次に、列車(車上)21では、踏切制御装置1から送られてきた列車位置補正情報(踏切の距離程に自列車の長さを加算したもの)及び位置補正有効/無効情報を受信し(ステップ41)、受信した位置補正情報が有効か無効かを確認する(ステップ42)。その結果、位置補正有効情報を受信した場合には、踏切制御装置1から送られてきた列車位置補正情報と自列車走行位置(距離程)との差分を求め(ステップ43)、この差分が許容範囲内(所定距離内)か否かを確認する(ステップ44)。差分が許容範囲内であれば、自列車走行位置(距離程)をこの列車位置補正情報に置き換えて(ステップ45)、処理を終了する。
【0043】
一方、ステップ42で位置補正無効情報の受信を確認した場合、及びステップ44で前記差分が許容範囲外であることを確認した場合には、その旨の警報を発するとともに、自動的にブレーキを作動させ停車させる(ステップ46)。その後の運転再開については、次に列車位置補正情報を受信する箇所までの間、例えば速やかに停車できる速度とされている15km/hの低速で運転するなど、当該列車制御システムの運転取扱いに委ねられる。
【0044】
このようにして踏切障害物検知装置で検知した物体が列車であることの正当性を高めるものである。そのため、列車位置補正機能の信頼性がより一層高くなる。
【0045】
<変形例2>
図4は、
図2のフローチャートを前提としつつ、踏切障害物検知装置で障害物を検知した場合の変形例を示すフローチャートである。
すなわち、
図4は、
図2のフローチャートにおけるステップ02とステップ03との間に、踏切障害物検知装置で障害物を検知しているか否かを確認するステップ51が追加されたものである。
【0046】
すなわち、踏切制御装置1は、前述の
図2におけるステップ01〜02と同様に、踏切と無線交信できるエリアに進入した列車の車上装置から、当該列車の現在位置、現在の走行速度、及び自列車の長さを、無線機4,5及び無線インターフェース14を介して一定周期(例えば1秒周期)で受信し、論理部13において、この受信情報から列車の現在位置が、本踏切道の距離程の手前所定距離内かを比較する。
【0047】
ここで、列車の現在位置が所定距離内の場合には、当該列車が本踏切道の手前所定距離内に接近したと判定し、次のステップ51に移る。そして、列車が本踏切道の手前所定距離内に接近したと判定したとき、あるいはそれ以前から、既に踏切障害物検知装置が物体を検知しているか否かを確認する(ステップ51)。
その結果、物体を検知していない場合(未検知)には、
図2のステップ03と同様に、改めて踏切障害物検知装置にて物体の検知を確認し、ここでも未検知であればステップ03へ復帰する。一方、ステップ03で物体を検知した場合には、列車位置補正情報(踏切の距離程)及び位置補正有効情報を車上装置へ送信し(ステップ52)、処理を終了する。
【0048】
また、ステップ51において、列車が本踏切道の手前所定距離内に接近したと判定したとき、あるいはそれ以前から、既に踏切障害物検知装置が物体を検知していることを確認した場合には、位置補正無効情報を車上装置へ送信し(ステップ53)、処理を終了する。
【0049】
次に、列車(車上)21では、踏切制御装置1から列車位置補正情報(踏切の距離程)、自列車の長さ、及び位置補正有効/無効情報を受信し(ステップ61)、受信した位置補正有効/無効情報の種類を確認する(ステップ62)。有効である場合には、
図2のステップ12〜ステップ14と同様に、受信した踏切の距離程と自列車の走行位置(距離程)との差分を求め(ステップ63)、この差分が許容範囲内(所定距離内)か否かを確認し(ステップ64)、範囲内であれば、自列車の走行位置をステップ61で受信した本踏切の距離程に置き換えて(ステップ65)、処理を終了する。
【0050】
一方、ステップ62で位置補正無効情報の受信を確認した場合、及びステップ64で前記差分が許容範囲外であることを確認した場合には、その旨の警報を発するとともに、自動的にブレーキを作動させ停車させる(ステップ66)。その後の運転再開については、次に列車位置補正情報を受信する箇所までの間、例えば速やかに停車できる速度とされている15km/hの低速で運転するなど、当該列車制御システムの運転取扱いに委ねられる。
【0051】
次に
図5は、
図3のフローチャートにおけるステップ02とステップ03との間に、踏切障害物検知装置で障害物を検知しているか否かを確認するステップ71が追加されたものである。このステップ71の処理は、前述の
図4におけるステップ51と同様であり、このステップ71の時点で踏切障害物検知装置が物体を検知していれば、ステップ73において位置補正無効情報を車上装置へ送信し、処理を終了する。
一方、ステップ71で物体を検知していない場合には、
図3のステップ03以降の処理と同様であるため詳しい説明を省略するが、ステップ72においては、列車位置補正情報とともに、位置補正有効情報を車上装置へ送信する。
【0052】
車上装置での処理は、基本的には
図3のステップ41〜46と同様であり、特に踏切制御装置から位置補正無効情報を受信した場合には、ステップ46において自動的にブレーキを作動させ停車させる。
【0053】
このように、踏切制御装置が、当該列車の現在位置情報により本踏切道の所定距離内に接近したと判断した時点で、踏切道に障害物が存在することを示す信号を踏切障害物検知装置より通知された場合、あるいはそれ以前から通知されている場合、及び踏切障害物検知装置が故障したことにより、フェールセーフ性を確保するために障害物が存在すると同様の信号を通知された場合には、当該列車に対して無線を介して、位置補正無効の情報を伝送する。この場合、車上では列車位置補正の置き換え処理を行わないので、障害物の存在を列車と見做し、誤った位置補正をすることを回避することができる。
【0054】
また、踏切障害物検知装置が故障した場合には、フェールセーフ性を確保するために、踏切障害物検知装置自体が安全側、すなわち障害物が存在する状態に遷移し進来してくる列車に対して停止信号を現示する。従って、踏切障害物検知装置が故障した場合にも、障害物が存在する状態と同じになる。さらに、いずれの場合にも、列車に対して位置補正無効の情報を送信するとともに、踏切支障の情報を送信する。したがって、この場合にも、車上では列車位置補正の置き換え処理を行わないので、誤った位置補正をすることを回避することができる。
【0055】
<補正の誤差を低減する変形例>
次に、前述した
図2〜
図5の補正方法における補正の誤差をより低減させるための変形例について、
図6を用いて説明する。
【0056】
前述した
図2〜
図5の補正方法によれば、列車位置(距離程)の補正を、既設の無線式踏切制御装置と踏切障害物検知装置の検知機能を活用して、距離補正用地上子を設置しなくとも行うことができるとともに、コスト削減と作業者の安全確保を図ることができるが、補正の誤差を少なくするための更なる方策が必要である。
【0057】
すなわち、一個の列車は、点在する無線式踏切制御装置や、ここでは説明を割愛するが駅と無線交信できるエリアに進入した当該踏切や駅に設備された装置など、複数の装置との間で無線を介して情報の伝送を行う必要があるが、それぞれとの伝送のために無線周波数を割り当てることは電波資源の有効活用の観点から許されない。そこで、ひとつの無線周波数を使い、各装置との伝送を時分割に行う方式が一般的であり、この方式では、各装置との伝送は一定の時間間隔(周期。例えば1秒)で行われるので、踏切障害物検知装置が列車を検知し、当該踏切の距離程を車上に伝送するタイミングは、この周期によって左右され、最悪1周期弱(例では1秒弱)遅れる。列車の走行速度を時速90kmとし、車上への伝送遅れを1秒と仮定すると、その間に列車は25m進むことになり、この分、補正の誤差となる。
【0058】
そこでこの例では、この誤差を少なくするために、車上と踏切制御装置のそれぞれが装置内に百msec単位の精度がある内部時計を有し、また時刻データを取得できるGPS受信機と接続されている(いずれも図示省略)。そして、GPS受信機から取得した時刻データにより、装置が立上ったとき及び一定間隔(例えば正時(例えば、07時00分00.000秒。)でそれぞれの内部時計を校正することにより両者の内部時計を一致・同期させる。
【0059】
この場合の処理について、
図6のタイミングチャートを用いてより詳細に説明する。
図6において、P1及びP2は、踏切制御装置が当該踏切の距離程を車上に伝送する送信タイミングを示し、ここでは1秒周期で送信されている。ここで、踏切制御装置と車上装置は、それぞれがGPS受信機から取得したGPS時刻情報により、内部時計の校正を行うことで、両者の内部時計を同期させている。
【0060】
そして、踏切制御装置が踏切障害物検知装置にて列車を検知したときに、当該踏切の距離程L1とともに、検知した時点における踏切制御装置の内部時計の時刻T1を付加して、車上への送信タイミングP2において車上に伝送する。一方、車上ではこの情報(距離程と列車を検知した時刻T1)を受信した時点における車上の内部時計の時刻T2から、T2とT1との差(T2−T1)を求める。
【0061】
そして、この差分(T2−T1)と、その時点の列車走行速度V1との積演算を行い、補正距離L3を求める。この補正距離L3は、踏切制御装置が列車を検知した時点から、車上が情報を受信した時点までに走行した距離となる。そして、このL3を、踏切制御装置から受信した当該踏切の距離程L1に加算し、この加算した距離程(L1+L3)で、車上で認識している距離程L2を置き換える。これにより、同じ伝送周期(例えば1秒周期)においても、伝送遅れによる誤差を1/100単位に抑えることができる。
【0062】
なお、車上と踏切制御装置に搭載するGPS受信機の時刻精度の観点からの汎用、市販のGPS受信機の種類としては、1秒間隔で、1秒間に1回時刻データを出力する1HZタイプ、250msec間隔で、1秒間に4回時刻データを出力する4HZタイプ、あるいは200msec間隔で、1秒間に5回時刻データを出力する5Hzタイプがある。
【0063】
踏切制御装置が踏切障害物検知装置にて列車を検知した時点における踏切制御装置の内部時計の時刻T1と、車上でこの情報(距離程と列車を検知した時刻T1)を受信した時点における車上の内部時計の時刻T2との差分(相対時間)から、この間の走行した距離を求め補正するものなので、両者の内部時計が百msec単位で同期していることが重要であり、GPS受信機の得られる時刻の精度は副次的な問題であり、GPS受信機の種類はどのような種類であってもよい。
【0064】
以上、各実施の形態で示した無線式踏切制御装置2や踏切障害物検知装置3はあくまでも一例であり、実施に際しては特許請求の範囲に記載した技術的事項を変更しない限り、ほかの構成としてもよいことは勿論である。