特許第6284724号(P6284724)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284724
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】氷菓、氷菓の素および氷菓の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23G 9/00 20060101AFI20180215BHJP
   A23G 9/04 20060101ALI20180215BHJP
   A23G 9/32 20060101ALI20180215BHJP
   A23G 9/38 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   A23G9/00 101
   A23G9/04
   A23G9/32
   A23G9/38
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-180409(P2013-180409)
(22)【出願日】2013年8月30日
(65)【公開番号】特開2015-47117(P2015-47117A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2016年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000118615
【氏名又は名称】伊那食品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 翔
(72)【発明者】
【氏名】中村 昌敬
(72)【発明者】
【氏名】柴 克宏
【審査官】 平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0003681(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/075939(WO,A1)
【文献】 特開平08−242818(JP,A)
【文献】 特開2012−100539(JP,A)
【文献】 特開2002−165568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 1/00−9/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質またはペプチドのいずれか1以上と、サイクロデキストリンと、増粘多糖類と、酸味料と、水とを含み、起泡されて比重が0.3〜0.6であり、乳固形分が3.0重量%未満、乳脂肪分が3.0重量%未満であることを特徴とする氷菓。
【請求項2】
前記タンパク質または前記ペプチドが、乳、大豆、インゲン豆、小麦、および卵由来のいずれか1以上であることを特徴とする請求項1に記載の氷菓。
【請求項3】
前記増粘多糖類が、HMペクチン、大豆多糖類、カルボキシメチルセルロースナトリウムであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の氷菓。
【請求項4】
氷菓を製造するための氷菓の素であって、
タンパク質またはペプチドのいずれか1以上と、サイクロデキストリンと、増粘多糖類と、酸味料とを含み、タンパク質またはペプチドのいずれか1以上と、サイクロデキストリンとの重量比が、1:0.05〜1:100であることを特徴とする氷菓の素。
【請求項5】
前記増粘多糖類が、HMペクチン、大豆多糖類、カルボキシメチルセルロースナトリウムであることを特徴とする請求項4に記載の氷菓。
【請求項6】
請求項4〜5記載の氷菓の素を水に溶解し、溶解後の液体を0℃以下に冷却し、撹拌しながら起泡させて比重を0.3〜0.6にすることを特徴とする氷菓の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含気された氷菓、含気された氷菓を製造するための氷菓の素および氷菓の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳等省令によると、アイスクリームは乳固形分15.0%以上、乳脂肪分8.0%以上、アイスミルクは乳固形分10.0%以上、乳脂肪分3.0%以上、ラクトアイスは乳固形分3.0%以上、これ以外のものを氷菓と定義している。アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイスは、油脂や乳化剤等の原料や製造方法の検討がなされ、様々な種類の商品が出されている。これに対し氷菓は油脂を使用しないかまたは少なく、さらに乳固形分が少ないために商品の形態は限られ、食感も類似したものになってしまっている。
【0003】
気泡入り加工食品と、冷菓ミックスを混合し凍結させた、スプーンで掬いやすい冷菓が特許文献1に開示されている。また、乳清タンパク質と増粘多糖類を併用させた状態で起泡させて製造される含気食品と、これを冷凍させた冷凍食品が特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−100539号公報
【特許文献2】特開2008−99650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、卵白、乳清および増粘多糖類を含有した気泡入り加工食品から製造された冷菓が記載されている。しかし、卵白および乳清のタンパク質が一部凝集して重合体を形成した気泡入り加工食品を別に製造する必要があり、これを冷菓用の材料と混ぜ合わせて含気させているため、製造工程が複雑になり、混合時に気泡が破壊されて含気が不十分であるという課題がある。また、特許文献2は、乳清タンパク質と増粘多糖類を併用させた含気食品が記載されているが、乳清タンパク質を熱処理して変性させたものを使用するなど製造工程が複雑となるばかりか、室温でも気泡が保たれているため、氷菓に利用したときには口溶けが悪くなってしまう。
【0006】
そこで本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、従来よりも簡便な方法であり、優れた起泡性を付与した従来にない食感となる、含気された氷菓、氷菓の素および氷菓の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は次の構成を備える。すなわち、本発明に係る氷菓は、タンパク質またはペプチドのいずれか1以上と、サイクロデキストリンと、増粘多糖類と、酸味料と、水とを含み、起泡されて比重が0.3〜0.6であり、乳固形分が3.0重量%未満、乳脂肪分が3.0重量%未満であることを特徴とする。この構成によれば、凍結前の液体に空気を含ませて起泡させ、泡が保持され、凍結後の氷菓であっても多くの気泡があり、口どけに優れて従来にない食感の氷菓である。また、低pH域において、タンパク質またはペプチドが析出して生成される不溶物が沈殿することを防止するので、起泡効果が低下しない。
【0008】
また、本発明において、前記タンパク質または前記ペプチドが、乳、大豆、インゲン豆、小麦、および卵由来のいずれか1以上であることが好ましい。これによれば、口溶けに優れて口腔内での崩壊が早く、美味しい氷菓を得ることができる。
【0009】
また、本発明において、前記増粘多糖類が、HMペクチン、大豆多糖類、カルボキシメチルセルロースナトリウムであることが好ましい。これによれば、pH低下によるタンパク質またはペプチドの沈殿が生じない。
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明は次の構成を備える。すなわち、本発明に係る氷菓の素は、氷菓を製造するための氷菓の素であって、タンパク質またはペプチドのいずれか1以上と、サイクロデキストリンと、増粘多糖類と、酸味料とを含み、タンパク質またはペプチドのいずれか1以上と、サイクロデキストリンとの重量比が、1:0.05〜1:100であることを特徴とする。この構成によれば、氷菓の素を溶かした液体の粘度が増加して起泡性が増し、泡が保持されやすくなる。また、低pH域において、タンパク質またはペプチドが析出して生成される不溶物が沈殿することを防止するので、起泡効果が低下しない。
【0011】
また、本発明において、前記増粘多糖類が、HMペクチン、大豆多糖類、カルボキシメチルセルロースナトリウムであることが好ましい。これによれば、pH低下によるタンパク質またはペプチドの沈殿が生じない。
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明は次の構成を備える。すなわち、本発明に係る氷菓の製造方法は、前記の氷菓の素を水に溶解し、溶解後の液体を0℃以下に冷却し、撹拌しながら起泡させて比重を0.3〜0.6にすることを特徴とする。この構成によれば、従来よりも簡便な方法によって、優れた起泡性を付与して従来にない食感の氷菓を製造できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る氷菓、氷菓の素および氷菓の製造方法によれば、従来よりも簡便な方法で優れた起泡性を付与でき、味付けのための酸味料を添加してpHが低下しても、所要の増粘多糖類を併用、添加することにより、タンパク質またはペプチドが析出して生成される不溶物が沈殿することを防止するので、起泡効果が低下せず、含気させて氷菓を製造することができる。さらに、粘度が増加して起泡性が増し、泡が保持されやすくなり、気泡を多く残したまま液体を凍結させて、従来にない食感の氷菓が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、特に記載がない限り「%」は「重量%」を意味する。
【0015】
本実施形態の氷菓とは、乳等省令におけるアイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス以外のものであり、具体的にはアイスクリームは乳固形分15.0%以上、乳脂肪分8.0%以上、アイスミルクは乳固形分10.0%以上、乳脂肪分3.0%以上、ラクトアイスは乳固形分3.0%以上であり、これ以外のものを氷菓と定義している。このため、本実施形態の氷菓は、乳固形分が3.0%未満、乳脂肪分が3.0%未満である。
【0016】
また、本実施形態の氷菓には、タンパク質またはペプチドの内のいずれか1以上が含まれ、さらにサイクロデキストリンが含まれている。従来の氷菓は、乳固形分、乳脂肪分が少ないために、凍結前の液体に空気を含ませてもすぐに消泡してしまう。しかし、本実施形態の氷菓は、乳固形分、乳脂肪分が少なくても凍結前の液体に空気を含ませて起泡させることができ、さらに気泡を多く残したまま液体を凍結させることができる。さらに、どのような冷凍条件でも油脂が硬化することなく充分に起泡させることができる。これは、油脂が含有され、乳化作用により起泡された従来のアイスクリーム等とは異なる。また、本実施形態の氷菓の内部には空気が含まれて気泡となっているために比重が小さくなり、比重が0.3〜0.6の範囲となる。これにより、スプーンなどの食器を用いて氷菓を掬ったときの通りがよく、従来にない食感となる。
【0017】
本実施形態の氷菓の製造方法は、冷凍前に卵白を泡立てて作製したメレンゲ等を混ぜて起泡を作る必要がなく、簡便な方法で安定した口溶け感に優れた氷菓を製造できる。さらに本実施形態の起泡効果はpH、冷凍温度による影響がなく、氷菓の物性は喫食時の温度に影響されない。
【0018】
(タンパク質およびペプチド)
本実施形態で使用されるタンパク質およびペプチドは、起泡性のあるタンパク質およびペプチドであれば特に限定されない。ペプチドはタンパク質をプロテアーゼにより分解して低分子化されているものであればよい。商品は一般に市販されているものでよい。また、乳タンパク質から製造されるカゼインナトリウムなどのカゼイン製品も本実施形態で用いるタンパク質に含まれる。本実施形態で使用されるタンパク質およびペプチドの量としては、最終的な氷菓の重量に対して0.017〜5.0%が好ましく、0.1〜2.0%が特に好ましい。5.0%より多いと、タンパク質およびペプチドの溶解が困難であり、タンパク質およびペプチドの味が氷菓に出てしまうことに加え、タンパク質やペプチドの冷凍変性の影響が大きくなり冷凍時での起泡が悪くなる。また、タンパク質およびペプチドを溶解させた溶液のpHを低くして等電点以下にすると、析出物が多量に発生して沈殿が生じてしまう。これに対し、0.017%より少ないと起泡効果が小さくなる。
また、本実施形態で使用されるタンパク質およびペプチドは、乳由来、大豆由来、エンドウ豆由来、小麦由来、卵由来で水溶性であることが好ましい。これらを使用することにより、気泡効果が得られやすく、これらを組み合わせて使用してもよい。
【0019】
(サイクロデキストリン)
本実施形態で使用されるサイクロデキストリン(以下、CDと略すこともある)はグルコースが王冠のように連なる環状オリゴ糖であり、グルコースの数によって分けられ、グルコースが6個のα−CD、7個のβ−CD、8個のγ−CDがある。サイクロデキストリンの分子形態はドーナツ形状であり、分子の内側が疎水性、外側が親水性のため、空洞内に各種の分子を取り込んで安定化するという特徴を有する。一般的な用途としては、物質の安定化剤、可溶化剤、乳化剤、粉末化剤等である。本実施形態で使用するサイクロデキストリンは、効果が高いα−CDが好ましい。本実施形態に使用されるサイクロデキストリンの量としては、最終的な氷菓の重量に対して0.08%〜16.0%が好ましく、0.5〜5.0%が特に好ましい。15.0%より多いと食感にざらつきが生じ、0.08%より少ないと起泡性が悪くなる。
【0020】
本実施形態の氷菓は、タンパク質またはペプチドの内のいずれか1以上と、サイクロデキストリンとを含む氷菓の素を用いて製造することができる。本実施形態の氷菓の素を水に溶解し、溶解後の液体を撹拌しながら冷凍して製造した氷菓が良好な含気性を有し、従来にない食感を呈する。
【0021】
(タンパク質およびペプチドとサイクロデキストリン併用による相乗効果)
タンパク質および/またはペプチドと、サイクロデキストリンとを併用することにより、氷菓の気泡が相乗的に向上する理由について、以下に説明する。
【0022】
タンパク質単独またはペプチド単独でも、効果は弱いが、乳化作用や起泡性があることは従来から知られている。これはタンパク質やペプチドが複数のアミノ酸から構成されているためである。アミノ酸には疎水基を有し、油に親和性のあるものや、親水基を有して親水性のあるものなど多数の種類があり、これらがペプチド結合することによりタンパク質やペプチドとなる。このためタンパク質やペプチドは親水性、疎水性の両基を有するため乳化剤と同様な構造となり、乳化作用や起泡性を有する。一方、サイクロデキストリンの内側の空洞内には、疎水性の基を取り込む性質がある。このため、タンパク質および/またはペプチドと、サイクロデキストリンとを併用すると、タンパク質やペプチドの疎水基はサイクロデキストリンに取り込まれる。そして、タンパク質またはペプチドとサイクロデキストリンが結合して複合体となり、取り込まれずに露出している部分には、親水基が多くなり、相対的に親水基に対する疎水基の割合が少なくなる。その結果、親水基が多い、つまりHLB値の高い乳化剤様の状態となる。また、タンパク質またはペプチドとサイクロデキストリンが含まれる氷菓の素を水に溶かすと、タンパク質またはペプチドとサイクロデキストリンが結合して複合体となる。
【0023】
一般にHLB値の高い乳化剤は起泡効果が高くなる。このことから、本実施形態の氷菓の素を用いて得られた、タンパク質またはペプチドとサイクロデキストリンとの複合体が含まれる液体は、起泡性が増しているものと思われる。さらにサイクロデキストリンには油を包接する性質があるため、タンパク質やペプチド、さらには氷菓の素に含まれる脂肪分を包接して、脂肪としての物理化学的性質を隠す効果がある。起泡させてできた泡は脂肪分で壊れやすくなることから、脂肪分が見かけ上低下して消泡せずに泡を持続する効果を示す。つまり、サイクロデキストリンがタンパク質およびペプチドの疎水基を隠すことにより、HLB値を上昇させ起泡しやすくなる効果と、サイクロデキストリンが共存する脂肪分を包接して隠すことで泡が消えずに持続する効果の2つにより相乗効果が生じている。さらには、タンパク質やペプチドとサイクロデキストリンが結合した複合体は安定しているためpHなどの変化に強く、様々な条件で使用できる。
【0024】
本実施形態は、ほとんど起泡しないか起泡したとしても泡が持続せず消滅してしまう少量のタンパク質またはペプチド量においても、強力な起泡作用と泡の安定化作用を有することにある。これは、サイクロデキストリンを併用することにより、タンパク質またはペプチドとサイクロデキストリンの包接による複合体が形成されるためであり、この複合体によって起泡しやすくなり、泡が消えにくく安定化する。これに対し、卵白などのタンパク質も起泡作用があることが知られている。これは、卵白にはタンパク質が10%以上含有されており、このタンパク質の作用により起泡する。しかし、タンパク質が多いために、冷凍により変性がおこり本発明のような氷菓には使用することができない。卵白にサイクロデキストリンを添加してメレンゲなどを作る場合においても、卵白自体の起泡は増すが、多量に存在する卵白中のタンパク質の起泡効果が優先してしまい、冷凍下では本願のような起泡作用を発現できない。以上のように、本実施形態でタンパク質またはペプチドとサイクロデキストリンが結合した複合体が、氷菓を製造する際の優れた起泡剤として作用しているのである。
【0025】
タンパク質またはペプチドと、サイクロデキストリンとの配合割合(重量比)は、1:0.05〜1:100が好ましく、1:0.1〜1:50が特に好ましい。タンパク質とペプチドを共に使用する場合はその合計量と、サイクロデキストリンとの配合割合も同様の範囲が好ましい。氷菓の素に含まれるタンパク質またはペプチドとサイクロデキストリンの量は、氷菓の素に含まれる糖類、酸味料などの割合によって変わるため、最終的な氷菓に対してタンパク質またはペプチドは0.017%〜5.0%含まれているのが好ましく、0.1〜2.0%含まれているのが特に好ましい。最終的な氷菓に対してサイクロデキストリンは0.08%〜16.0%含まれているのが好ましく、0.5 〜5.0%含まれているのが特に好ましい。
【0026】
(増粘多糖類)
本実施形態の氷菓の素には、増粘多糖類としてHMペクチン、大豆多糖類、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)などを添加することが好ましい。また、氷菓の味付けとして、果汁などのpHの低い液体やクエン酸などの酸味料を加えてもよく、これらを予め氷菓の素に加えてもよい。氷菓の素を水に溶解して液体のpHを下げて等電点以下になると、氷菓の素に含まれるタンパク質またはペプチドはタンパク質が凝集し、不溶物を生成し沈殿を生成してしまう。起泡効果は沈殿が生成しても認められるが、沈殿が生成してしまうと起泡効果が低下してしまう。このためペクチン、大豆多糖類、CMC−Naなどを添加することにより低pH域での沈殿を防止することができる。これらの増粘多糖類の添加量は最終製品である氷菓に対して0.02〜0.50%が好ましく0.05〜0.40%が特に好ましい。
【0027】
さらに含気を補助する目的で、前記以外の増粘多糖類を添加しても良い。前記以外の増粘多糖類としては、寒天、カラギナン、ファーセレラン、アルギン酸塩、フノリ抽出物、フェヌグリークガム、グアーガム、タラガム、ローカストビーンガム、カシアガム、グルコマンナン、タマリンドガム、澱粉、化工澱粉、LMペクチン、キサンタンガム、サクシノグルカン、ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム、カードラン、プルラン、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、アラビアガム、トラガントガム、等がある。溶液に粘性が出るため泡の保持がしやすくなる。添加量は最終製品である氷菓に対して0.02〜2.0%が好ましく0.1〜1.0%が特に好ましい。
【0028】
(添加物)
本実施形態の氷菓には、糖質、酸味料、色素、香料、増粘多糖類、高甘味料、機能性成分が含まれていてもよい。糖質は単糖、2糖、オリゴ糖、デキストリン、還元糖、の内のいずれか1以上、酸味料としてはクエン酸、リンゴ酸、乳酸、酢酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、フィチン酸、およびこれらの塩、がある。高甘味料としてはアスパルテーム、スクラロース、アセスルファムK、サッカリンナトリウム、ステビア、羅漢果、ネオテームなどがある。機能性成分としては、ビタミン、ミネラル、機能性オリゴ糖、アガロオリゴ糖、各種ポリフェノール、生薬成分などが挙げられる。また、前記の氷菓の素にこれらを添加してもよい。
【0029】
(氷菓の製造方法)
本実施形態の氷菓の製造方法は、タンパク質またはペプチドの内のいずれか1以上と、サイクロデキストリンとが含まれる粉体を規定量の水に溶解し、溶解後の液体を撹拌して起泡させながら冷凍する。また、さらに糖、酸味料、色素、香料、HMペクチン等を含めて水に溶解してもよい。粉体の溶解方法は、冷水に溶解する成分のみであれば加熱の必要はないが、加熱溶解が必要な成分が含まれていれば加熱溶解を行う。冷却後撹拌しながら0℃以下にして起泡させながら冷凍し含気された氷菓を製造する。
氷菓の素を水に溶かした後であり、含気させる前の溶液の比重は特に限定されないが、1.0以上であり、この溶液を起泡させて氷菓を製造できる。氷菓の比重は0.3〜0.7が好ましく、0.3〜0.5が特に好ましい。0.3より小さいと口当たりが軽すぎることと製造が困難となる。0.7より大きいと含気が少なく通常の氷菓と差別化しにくい。
【0030】
本実施形態の氷菓は、pH2.5〜7.0において安定した含気氷菓を製造することができる。また、糖度0〜40において安定した含気氷菓を製造することができる。得られた氷菓は含気されているため、喫食したときに即座に表面が溶解してさっくりと崩壊するので、スプーン通りが非常によく、従来にない食感の氷菓となる。
【実施例】
【0031】
実施例に使用した材料は以下の通りである。なお、クラスターデキストリン(登録商標)、デキストリン(1)、デキストリン(2)は、サイクロデキストリンではない。
α−サイクロデキストリン:シクロケム社製
β−サイクロデキストリン:日本食品加工社製
γ−サイクロデキストリン:シクロケム社製
クラスターデキストリン:グリコ栄養食品社製
デキストリン(1):パインデックス#4、松谷化学工業社製
デキストリン(2):パインデックス#100、松谷化学工業製
乳ペプチド(1):C800、カゼインタンパク質由来ペプチド、森永乳業社製
乳ペプチド(2):W800、乳清タンパク由来ペプチド、森永乳業社製
乳清タンパク(1):WPI895、フォンテラジャパン社製
乳清タンパク(2):ビプロ、光洋商会社製
大豆ペプチド:バーサホイップ500、光洋商会社製
大豆タンパク:フジプロCL、不二製油社製
卵タンパク:乾燥卵白ELS(キユーピー社製)
小麦タンパク由来ペプチド:ケリー・ジャパン社製
エンドウ豆由来ペプチド:ピーペプチド、OCI社製
カゼインナトリウム:DMV社製
HMペクチン:イナゲルJP−30、伊那食品工業社製
大豆多糖類:ソヤファイブS、不二製油社製
CMC−Na:セロゲンF−90 7A、第一工業製薬社製
ローカストビーンガム:イナゲルL−15、伊那食品工業社製
寒天:伊那寒天イーナ、伊那食品工業社製
カラギナン:イナゲルE−150、伊那食品工業社製
ファーセレラン:ファーセレラン、伊那食品工業社製
アルギン酸塩:アルギン酸Na、イナゲルGS−70、伊那食品工業社製
フノリ抽出物:フノリ抽出物、伊那食品工業社製
グアーガム:イナゲルGR−10、伊那食品工業社製
タラガム:イナゲルタラガムA、伊那食品工業社製
グルコマンナン:イナゲルマンナン100、伊那食品工業社製
タマリンドガム:グリロイド3S、DSP五協フード&ケミカル社製
澱粉:馬鈴薯澱粉、スタビローズ1000、松谷化学工業社製
化工澱粉:ゆり8、松谷化学工業社製
LMペクチン:イナゲルJM−15、伊那食品工業社製
キサンタンガム:イナゲルV−10、伊那食品工業社製
ジェランガム:ケルコゲル、CPケルコ社製
ネイティブ型ジェランガム:LT−100、CPケルコ社製
プルラン:PI−20、林原商事社製
ゼラチン:イナゲルN−150、伊那食品工業社製
メチルセルロース:MCE−1500、信越化学工業社製
ヒドロキシメチルセルロース:SFE−4000、信越化学工業社製
アラビアガム:アラビアガムA、伊那食品工業社製
アスパルテーム:味の素社製
スクラロース:サンスイート、三栄源FFI社製
アセスルファムK:サネットD、キリン協和フーズ社製
クエン酸:磐田化学社製
クエン酸Na:磐田化学社製
砂糖:東洋精糖社製
アガロオリゴ糖:伊那食品工業社製
【0032】
[実験例1](タンパク質またはペプチドの種類)
表1に氷菓の素の配合量を示し、表1におけるタンパク質またはペプチドの種類を表2に示す。これらを、実施例1〜10、比較例1〜12とする。表1および表2に示した配合にて氷菓の素を製造した。具体的には各粉末を秤量し混合した後、この粉末を80℃の水1000gに加え撹拌して溶解した。この溶液をアイスクリーマー(ハイパートロン・ミニ HTF−3、エフ・エム・アイ社製)を使用して8分間撹拌し−5℃まで冷却して含気された氷菓を製造した。製造後は−35℃で保管した。
【0033】
製造した氷菓について比重を測定し食感を確認した。比重は100mLの容器に充填したときの氷菓の重量から、下記の式で算出した。
氷菓の比重=100mL当たりの氷菓の重量(g)÷100
食感は10名のパネラーにより
A:口溶けに優れ口腔内での崩壊が早く、従来にない美味しい氷菓である。
B:従来の氷菓と同程度である。
C:従来の氷菓より劣る
の判断基準で評価した。結果を表3に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
以上のように、タンパク質またはペプチドおよびサイクロデキストリンを使用含む含気された氷菓は口溶に優れ口腔内での崩壊が早く従来にない美味しい氷菓となった。また、タンパク質またはペプチドのいずれか1以上と、サイクロデキストリンとの両方が含まれない場合は、気泡が生成しにくくて氷菓の比重が大きくなり、従来の氷菓より劣った。
【0038】
[実験例2](サイクロデキストリンの種類)
表4に氷菓の素の配合量を示し、これらを、実施例11〜13、比較例13とする。表4に示した配合にて氷菓を製造した。製法および氷菓の物性評価は実験例1と同様にして行った。結果を表5に示す。
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
【0041】
以上のように、タンパク質またはペプチドおよびサイクロデキストリンを使用含む含気された氷菓において、使用するサイクロデキストリンはαタイプが口溶に優れ、最も含気効果があった。
【0042】
[実験例3](サイクロデキストリン以外の糖類を使用)
表6に氷菓の素の配合量を示し、これらを、実施例14、比較例14〜16とする。表6に示した配合にて氷菓を製造した。製法および氷菓の物性評価は実験例1と同様にして行った。結果を表7に示す。
【0043】
【表6】
【0044】
【表7】
【0045】
以上のようにタンパク質またはペプチドおよびサイクロデキストリンを使用含む含気された氷菓において、サイクロデキストリン以外のデキストリンは含気効果がなかった。
【0046】
[実験例4](タンパク質またはペプチドの配合量)
表8に氷菓の素の配合量を示し、これらを、実施例15〜21とする。表8に示した配合にて氷菓を製造した。製法および氷菓の物性評価は実験例1と同様にして行った。結果を表9に示す。
【0047】
【表8】
【0048】
【表9】
【0049】
以上のようにタンパク質またはペプチドの配合量が0.017%〜5.0%において良好な結果が得られた。
【0050】
[実験例4](サイクロデキストリン配合量)
表10に氷菓の素の配合量を示し、これらを、実施例22〜28とする。表10に示した配合にて氷菓を製造した。製法および氷菓の物性評価は実験例1と同様にして行った。結果を表11に示す。
【0051】
【表10】
【0052】
【表11】
【0053】
以上のようにサイクロデキストリンの配合量が0.08〜16.0%において良好な結果が得られた。
【0054】
[実験例5](タンパク質またはペプチドとサイクロデキストリンの配合割合)
表12に氷菓の素の配合量を示し、これらを、実施例29〜35とする。表12に示した配合にて氷菓を製造した。製法および氷菓の物性評価は実験例1と同様にして行った。結果を表13に示す。
【0055】
【表12】
【0056】
【表13】
【0057】
以上のように、タンパク質またはペプチドとサイクロデキストリンの配合割合が1:0.05〜1:100のものは含気された食感の良い氷菓を製造することができた。
【0058】
[実験例6](増粘多糖類の添加)
表14に氷菓の素の配合量を示し、表14における増粘多糖類の種類を表15に示す。これらを、実施例36〜58、59とする。表14および表15に示した配合にて氷菓の素を製造した。製法および氷菓の物性評価は実験例1と同様にして行った。結果を表16に示す。
【0059】
【表14】
【0060】
【表15】
【0061】
【表16】
【0062】
HMペクチン、大豆多糖類、CMC−Naを添加した実施例36〜38は、pH低下によるペプチドの沈殿が観察されず、均一に分散していた。また増粘多糖類を添加した実施例36〜58において、増粘多糖類を添加していない実施例59に比べ比重が小さくなりより含気されていた。