【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 「太陽エネルギー技術研究開発 太陽光発電システム次世代高性能技術の研究開発 超低コスト高効率Agフリーヘテロ接合太陽電池モジュールの研究開発」共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、太陽電池の製造において、電解めっき法によるめっき層100の形成は、
図15(a)のように、めっき対象たる面に位置する層(被めっき層)と、めっき用治具の導電クリップ101を接触させることによって、負の電荷に帯電させ、めっき液の金属イオンが被めっき層上で金属として析出する。
【0007】
しかしながら、この方法の場合、導電クリップ101を被めっき層102に接触させると、導電クリップ101に覆われた部位では、導電クリップ101の存在によって被めっき層102(
図15(b)参照)がほとんどめっき液に浸漬されず、ほとんどめっき層100が形成されない。
【0008】
また、電解めっき法では、通電量等に応じて、被めっき基板110上へのめっき層100の形成量が決まるので、被めっき層102の抵抗が大きい場合には、
図15(b)のように電流が被めっき層102全体に均等に流れず、形成されるめっき層100の面内分布が不均一になるおそれがある。
さらに、導電クリップ101は、通常、高導電率の材料で形成され、被めっき層102までの間で抵抗損失が少なくなるように導電させるため、導電クリップ101の接続部位近傍は、低抵抗で電流が流れやすい。
すなわち、導電クリップ101を被めっき層102ともにめっき液に浸漬させると、導電クリップ101の一部は、被めっき層102の外側から回り込んで固定しているから、当該部分は、めっき電極に近い位置となる。そのため、導電性クリップ101の一部に優先的にめっき層100が析出しやすく、導電性クリップ101との接触部位近傍の被めっき層102にめっき層100が形成されにくい。
【0009】
上記したようにめっき層は、集電極として使用されるので、効率良く電流を取り出すためには、所定の形状にパターニングする必要がある。
このめっき層100のパターニングは、フォトリソグラフィー法によって行われることがある。すなわち、このめっき層100のパターニングは、被めっき基板110の被めっき面に紫外線等によって硬化又は軟化するフォトレジスト材料からなるレジスト層を形成する。その後、このレジスト層を形成した被めっき基板110をめっき液に浸し、電圧を印加することによって、レジスト層で覆われていない部位のみにめっき層が形成され、所定の形状にパターニングされためっき層100が形成される。
【0010】
この方法によってパターニングを行う場合、レジスト層をある程度の厚み(例えば、1μm〜100μm程度)を持たせて形成する。そのため、
図16(a)に示されるように、レジスト層103の厚みによって、導電クリップ101の一部がレジスト層103につかえてしまい、導電クリップ103と被めっき層102との接触が不十分となる場合がある。導電クリップ103と被めっき層102との接触が不十分となると、めっき層の形成量等を正確に制御できなくなるおそれが生じる。
【0011】
また、
図16(b)に示されるように、上記したレジスト層103と導電クリップ101との接触を避けるために、導電クリップ101の接続部位の幅を細くすると、導電クリップ101と被めっき層102の接触面積が小さくなり、単位面積当たりの導電クリップ101の被めっき層102に加わる押圧力が大きくなる。そのため、導電クリップ101の押圧により、被めっき層102を介して光電変換層105が痛みやすくなり、製造される太陽電池の特性が低下するおそれが生じる。
【0012】
近年、太陽電池の設置場所等の汎用性の観点から、太陽電池の薄型化が進んでいる。しかしながら、太陽電池の厚みが薄くなると、導電クリップ101から受ける押圧力によって、太陽電池が割れたりして破損するおそれも生じる。特に結晶シリコン太陽電池の場合、光電変換部の骨格をなすシリコン基板の厚みが100μm以下になると、著しく強度が弱くなり、太陽電池が割れて破損する可能性が高くなる。
また、太陽電池の製造には、表面電極層と裏面電極層の両面の電極層にめっき層を形成する場合がある。この場合、従来の方法では、それぞれの電極層に別途独立して給電する必要があるので、片面にめっき層を形成する場合に比べて、導電性クリップの被めっき基板への取り付け部位が増える。そのため、被めっき基板に導電性クリップを取り付ける際に、上記したような破損が生じる可能性が高くなるという問題があった。
【0013】
このような不具合に対して、本発明者は、太陽電池の製造工程において生じる以下の構造に注目した。
すなわち、例えば、結晶系の太陽電池であるヘテロ接合型の太陽電池などでは、透明電極層のような光電変換部を挟んで表裏面で重複して形成される層が存在する。このような重複する層は、製造工程の簡略化の観点から、一つの装置中で連続して表裏面を成膜することができる。
この製造工程では、重複する層を一つの装置内で成膜するために、成膜面を光入射面側と裏面側とに入れ替えて成膜する工程が存在する。例えば、被めっき基板の光入射面側に透明電極層を形成した後に、被めっき基板の裏面側に透明電極層を形成する工程が存在する。
【0014】
このような表面電極層の一部たる透明電極層(以下、第一透明電極層ともいう)を被めっき基板上に成膜した後に、裏面電極層の一部たる透明電極層(以下、第二透明電極層ともいう)を被めっき基板の裏面に成膜した場合において、第二透明電極層を被めっき基板の裏面に成膜する際に、その成膜面積が被めっき基板の面積よりも大きいと、成膜後の被めっき基板は、裏面側の第二透明電極層が光入射面側の第一透明電極層に回り込んで成膜される場合がある。
この場合、第一透明電極層と第二透明電極層は、電気的に接続された状態となり、発電時に太陽電池が短絡したり、特性が著しく低下したりする原因となる。
【0015】
そこで、従来では太陽電池の短絡等を防止するために、マスク等を用いて電極層の成膜面積を被めっき基板の面積よりも小さくすることによって、電極層の回り込みを防止している。また、電極層の表裏の回り込みが生じた場合には、別途工程によって、第一透明電極層と第二透明電極層とを物理的に切り離して、第一透明電極層と第二透明電極層を電気的に分離することによって対応している。
【0016】
本発明者は、次の方法によって上記した不具合を解消することを試みた。すなわち、めっき層を形成するにあたって、まず意図的に電極層の成膜面積を大きくして表面電極層と裏面電極層とが電気的に接続された状態を形成する。その後、この状態を利用して、表裏の一方の電極層(例えば、裏面電極層)から他方の電極層(例えば、表面電極層)に給電することによって、レジスト層等を形成することによる上記した不具合を解消することを試みた。
【0017】
本発明は、被めっき面にムラなくめっき層を形成できる太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。また、
本発明に関連する発明は、その製造方法に使用できるめっき用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、表面電極層と、裏面電極層と、表面電極層と裏面電極層の間に挟まれた光電変換部とを備えた被めっき基板を用いる太陽電池の製造方法であって、前記被めっき基板上にめっき層を形成する太陽電池の製造方法において、
前記表面電極層と前記裏面電極層は、別途工程にて形成されるものであって、前記光電変換部の側面において重なり部位があり、導電性保持部材を備えためっき用治具を使用し、前記被めっき基板を、前記表面電極層と前記裏面電極層が電気的に接続された状態で、かつ、前記表面電極層と前記裏面電極層のうち、一方の電極層と前記導電性保持部材が接触した状態で、前記めっき用治具によって保持し、前記導電性保持部材に給電することによって、他方の電極層上にめっき層を形成するめっき工程と、
前記表面電極層及び/又は裏面電極層の一部を除去することによって、前記表面電極層と前記裏面電極層の実質的な電気接続を切り離す分離工程をこの順に含んでいることを特徴とする太陽電池の製造方法である。
本発明は、表面電極層と、裏面電極層と、表面電極層と裏面電極層の間に挟まれた光電変換部とを備えた被めっき基板を用いる太陽電池の製造方法であって、前記被めっき基板上にめっき層を形成する太陽電池の製造方法において、導電性保持部材を備えためっき用治具を使用し、前記被めっき基板を、前記表面電極層と前記裏面電極層が電気的に接続された状態で、かつ、前記表面電極層と前記裏面電極層のうち、一方の電極層と前記導電性保持部材が接触した状態で、前記めっき用治具によって保持し、前記導電性保持部材に給電することによって、他方の電極層上にめっき層を形成するめっき工程と、前記表面電極層と前記裏面電極層の実質的な電気接続を切り離す分離工程をこの順に含んでいる。
【0019】
ここでいう「表面電極層と裏面電極層の実質的な電気接続を切り離す」とは、太陽電池の発電時において、表面電極層と裏面電極層との電気接続をショートしない程度に切り離すことを表す。すなわち、必ずしも物理的に表面電極層と裏面電極層の接続を切り離す必要はない。例えば、表面電極層及び/又は裏面電極層の一部を酸化等の絶縁処理を施すことにより、表面電極層と裏面電極層の電気接続を遮断させる場合も含む。
また「表面電極層と裏面電極層の実質的な電気接続を切り離した状態」には、太陽電池の発電時において、太陽電池の発電に支障のない程度の微弱電流が表面電極層と裏面電極層で流れる程度に通電する状態も含む。
【0020】
本発明のめっき工程では、導電性保持部材から、一方の電極層(導電性保持部材と接触する電極層)を経由して、他方の電極層(反対側の電極層)に電圧を印加し、他方の電極層上にめっき層を形成する。そのため、他方の電極層上にめっき層を形成するにあたって、導電性保持部材の存在がめっき層の形成の妨げにならない。すなわち、他方の電極層を十分にめっき液に浸漬することができ、均等にめっき層を形成することができる。
また、本発明の製造方法によれば、めっき工程後に、表面電極層と裏面電極層の実質的な電気接続を切り離す分離工程を行うので、表面電極層と裏面電極層が電気的に接続されることによる短絡を防止することができる。
【0021】
請求項2に記載の発明は、表面電極層と、裏面電極層と、表面電極層と裏面電極層の間に挟まれた光電変換部とを備えた被めっき基板を用いる太陽電池の製造方法であって、前記被めっき基板上にめっき層を形成する太陽電池の製造方法において、
前記表面電極層と前記裏面電極層は、別途工程にて形成されるものであって、前記光電変換部の側面において重なり部位があり、導電性保持部材を備えためっき用治具を使用し、前記被めっき基板を、前記表面電極層と前記裏面電極層が電気的に接続された状態で、かつ、前記裏面電極層と前記導電性保持部材が接触した状態で、前記めっき用治具によって保持し、前記導電性保持部材に給電することによって、表面電極層上にめっき層を形成するめっき工程と、
前記表面電極層及び/又は裏面電極層の一部を除去することによって、前記表面電極層と前記裏面電極層の実質的な電気接続を切り離す分離工程をこの順に含んでいることを特徴とする太陽電池の製造方法である。
本発明は、表面電極層と、裏面電極層と、表面電極層と裏面電極層の間に挟まれた光電変換部とを備えた被めっき基板を用いる太陽電池の製造方法であって、前記被めっき基板上にめっき層を形成する太陽電池の製造方法において、導電性保持部材を備えためっき用治具を使用し、前記被めっき基板を、前記表面電極層と前記裏面電極層が電気的に接続された状態で、かつ、前記裏面電極層と前記導電性保持部材が接触した状態で、前記めっき用治具によって保持し、前記導電性保持部材に給電することによって、表面電極層上にめっき層を形成するめっき工程と、前記表面電極層と前記裏面電極層の実質的な電気接続を切り離す分離工程をこの順に含んでいる。
【0022】
本発明のめっき工程では、導電性保持部材から裏面電極層を経由して表面電極層に電圧を印加し、表面電極層上にめっき層を形成する。そのため、例えば、従来のフォトリソグラフィー法によってパターニングする場合であっても、レジスト層が形成されるのは、被めっき面である表面電極層であるから、レジスト層は導電性保持部材と裏面電極層との接触を阻害しない。そのため、導電性保持部材と裏面電極層との接触が不十分となりにくく、容易に表面電極層に給電することができる。
本発明の製造方法によれば、導電性保持部材を裏面電極層に接触させて給電するため、成膜面である表面側(光入射面側)において、導電性保持部材の存在がめっき層の形成の妨げにならない。
また、本発明の製造方法によれば、導電性保持部材を裏面電極層に接触させて給電するため、上記した例のように、導電性保持部材の接続部位の幅を細くして、レジスト層に当たらないように導電性保持部材を裏面電極層に接触させる必要がない。また、導電性保持部材が接触するのは光反射側である裏面電極層側なので、導電性保持部材と裏面電極層との接触面積を大きくすることが可能であり、薄くて強度の弱い被めっき基板であっても、割れにくくすることが可能である。それ故に、不具合なく容易にめっき層を形成できる。
さらに、本発明の製造方法によれば、めっき工程後に、表面電極層と裏面電極層の実質的な電気接続を切り離す分離工程を行うので、表面電極層と裏面電極層が電気的に接続されることによる短絡を防止することができる。
【0023】
請求項3に記載の発明は、前記めっき工程において、前記表面電極層及び前記裏面電極層のうち、少なくとも一方は、前記光電変換部の側面の一部又は全部を覆っており、前記光電変換部の側面又はその近傍において、前記表面電極層及び前記裏面電極層が接して
おり、前記導電性保持部材に給電することにより、被めっき基板の表面電極層上及び前記裏面電極層上にめっき層を形成することを特徴とする請求項1
又は2に記載の太陽電の製造方法である。
本発明は、前記めっき工程において、前記表面電極層及び前記裏面電極層のうち、少なくとも一方は、前記光電変換部の側面の一部又は全部を覆っており、前記光電変換部の側面又はその近傍において、前記表面電極層及び前記裏面電極層が接している。
【0024】
ここでいう「側面の近傍」とは、被めっき基板を平面視したときに、側面を形成する1辺からの距離が100μm以内の範囲である。好ましくは、50μm以内の範囲である。
【0025】
本発明の製造方法によれば、めっき工程において、表面電極層及び裏面電極層が光電変換部の側面上又は光電変換部の表裏面上で接しているので、容易に表面電極層と裏面電極層を電気的に接続することができる。
また、本発明の製造方法によれば、表面電極層及び裏面電極層を電気的に接続するにあたって、特許文献3のように、光電変換部に貫通孔等を設けて表面電極層と裏面電極層を接続する必要がないため、光電変換部の強度が低下しない。
【0026】
この発明は、前記光電変換部は、多角形状であり、光電変換部の対向する二辺のそれぞれの側面又はその近傍において、前記表面電極層及び前記裏面電極層が接していることが好ましい。
【0027】
この発明の製造方法によれば、めっき工程において、光電変換部の一辺と、当該一辺に対向する対辺のそれぞれの側面又はその近傍に前記表面電極層及び前記裏面電極層が接しているので、例えば、導電性保持部材によって裏面電極層側から給電された場合には、表面電極層全体に対して均等に給電することができ、形成されるめっき層の厚みに分布の偏りが生じにくい。
【0028】
請求項
3に記載の発明は、前記導電性保持部材に給電することにより、被めっき基板の表面電極層上及び前記裏面電極層上にめっき層を形成す
る。
【0029】
本発明の製造方法は、被めっき基板の両面にめっき層を形成するものである。上記したように、従来の方法であれば、両面にめっき層を形成するにあたって、片面ずつに給電してめっき層を形成していく必要があった。
一方、本発明の製造方法によれば、導電性保持部材に給電することにより、被めっき基板の両面の電極層にめっき層を同時に形成するので、片面ずつにそれぞれ独立して給電する必要はない。そのため、たとえ、被めっき基板の厚みが薄い場合であっても、導電性保持部材を接続する際に、誤って被めっき基板が破損してしまうことを防止することができる。
【0030】
請求項
4に記載の発明は、前記被めっき基板は、前記表面電極層が光電変換部側から第一透明電極層、第一導電層の順に積層されてなり、当該第一導電層は、第一透明電極層よりも導電率が大きい層であることを特徴とする請求項1〜
3のいずれかに記載の太陽電池の製造方法である。
【0031】
本発明の方法によれば、導電率が大きい第一導電層が第一透明電極層上に積層されているので、表面電極層側の被めっき面内の電位分布を均一とすることができ、形成されるめっき層の厚みを均一にすることができる。
【0032】
請求項
5に記載の発明は、前記裏面電極層は、光電変換部側から第二透明電極層、第二導電層の順に積層されてなり、当該第二導電層は、第二透明電極層よりも導電率が大きい層であり、第一導電層と第二導電層は、直接接することで電気的に接続されており、さらに、めっき工程において、前記導電性保持部材に給電することにより、被めっき基板の第一導電層上及び/又は第二導電層上にめっき層を形成することを特徴とする請求項
4に記載の太陽電池の製造方法である。
【0033】
本発明の製造方法によれば、導電率が大きい第一導電層と第二導電層によって表面電極層と裏面電極層が電気的に接続されるため、第一透明電極層上及び/又は第二透明電極層上に直接めっき層を形成する場合に比べて、第一導電層上及び/又は第二導電層上に短い時間で大量にめっき層を形成することができる。
また本発明の構成によれば、第一導電層と第二導電層は、直接接することで電気的に接続されているため、第一導電層よりも導電率が低い第一透明電極層や第二導電層よりも導電率が低い第二透明電極層を介してめっき層を形成する場合に比べて、短時間でめっきできる。
さらに、本発明の製造方法によれば、片面側からの給電によって、少なくとも反対側の電極層にめっき層を成膜することができるので、破損する可能性も低くなる。また、例えば、導電性保持部材を「面状」に接続することで、被めっき基板に対して局所的に集中荷重が加わることを避けることができ、破損をより抑制することもできる。
【0034】
ところで、表面電極層上と裏面電極層上の両電極層上に集電極としてめっき層を形成する場合において、光入射の妨げを抑制する観点から、光入射側に位置する表面電極層上に形成されるめっき層のみを所望の形状にパターニングする場合がある。すなわち、パターニングによって、光を光電変換部に取り入れる領域を形成する場合がある。
このようなパターニングは、レジスト層等を用いることによって、行うことが可能である。しかしながら、このようなパターニングを行う場合、表面電極層上のめっき層の成膜面積は、裏面電極層上のめっき層の成膜面積に比べて著しく小さくなる。そのため、めっき工程において、同時に表面電極層上のめっき層及び裏面電極層上のめっき層にめっきを形成した場合、裏面電極層上のめっき層が十分量形成されると、表面電極層上のめっき層の厚みが所望の厚みよりも厚くなる場合がある。すなわち、上記した場合、表面電極層上のめっき層の形成量を裏面電極層上のめっき層の形成量に比べて少なくする必要があり、裏面電極層上のめっき層の形成量と表面電極層上のめっき層の形成量を適切な量に制御する必要がある。
【0035】
ここで、従来からめっき層の形成速度や形成量は、金属イオンや供給される電流量等によって制御されている。
前者の場合の一例としては、例えば、特許文献4がある。この特許文献4に記載の太陽電池製造装置では、めっき電極と被めっき基板との間に規則的に穴が配列した分配プレート(遮蔽板)を介在させて、金属イオンの移動を制御している。
この方法を応用して、表面電極層の近傍に遮蔽板を設置すれば、表面電極層上でのめっき層の形成量を抑えることができると推察される。
しかしながら、この方法では、分配プレートによってめっき液の対流が阻害される。そのため、めっき液内で金属イオン等の偏りが生じるおそれがあり、良好なめっき層が形成されないおそれもある。
そこで、本発明者は、後者の電流量による制御に注目し、透明電極層と導電層との導電率の違いに着目した。
【0036】
すなわち、請求項
6に記載の発明は、前記裏面電極層は、光電変換部側から第二透明電極層、第二導電層の順に積層されてなり、当該第二導電層は、第二透明電極層よりも導電率が大きい層であり、第一導電層と第二導電層は、第一透明電極層及び第二透明電極層のうち、少なくとも一方の電極層を介して、電気的に接続されており、さらに、前記めっき工程において、前記導電性保持部材に給電することにより、被めっき基板の第一導電層上及び第二導電層上にめっき層を形成することを特徴とする請求項
4に記載の太陽電池の製造方法である。
【0037】
本発明の製造方法によれば、第一導電層と第二導電層との間に、当該導電層に比べて導電率の低い透明電極層を介在させることによって、導電性保持部材が接触する面に対して反対側の面に位置する導電層に供給される電流量を抑え、めっき層の形成量を制御するものである。
例えば、導電性保持部材から裏面電極層に給電する場合には、導電性保持部材から、第二導電層と、第一透明電極層及び/又は第二透明電極層と、を経由して第一導電層に給電することになる。すなわち、第一透明電極層及び/又は第二透明電極層の内部抵抗によって、第二導電層上に形成されるめっき層と第一導電層上に形成されるめっき層との間で形成量に差が生じる。そのため、上記したような表面電極層上のめっき層と裏面電極層上のめっき層との間で成膜面積に差がある場合でも、表面電極層上にめっき層が付きすぎることを防止することができる。
【0038】
請求項
7に記載の発明は、前記被めっき基板は、表面電極層上に絶縁層が積層されており、前記絶縁層は、開口を有し、前記めっき工程において、表面電極層がめっき浴に晒された状態で、前記開口を介して前記表面電極層上にめっき層を形成することを特徴とする請求項1〜
6のいずれかに記載の太陽電池の製造方法である。
【0039】
本発明の製造方法によれば、めっき工程において、絶縁層に設けられた開口を介して表面電極層はめっき浴に晒された状態でめっき層を形成するので、表面電極層上の開口に対応する位置に集中してめっき層を形成することができる。
【0040】
請求項
8に記載の発明は、前記被めっき基板は、表面電極層上に絶縁層が積層されており、前記めっき工程後に絶縁層を除去する絶縁層除去工程を行うことを特徴とする請求項1〜
7のいずれかに記載の太陽電池の製造方法である。
【0041】
本発明の製造方法によれば、めっき工程後に絶縁層を除去する絶縁層除去工程を行うので、本発明の製造方法によって形成された太陽電池は、絶縁層の一部又は全部が除去されており、発電時において、絶縁層が入光の妨げにならない。そのため、例えば、絶縁層として光を吸収するような材料を用いた場合でも、発電特性の優れた太陽電池を製造することができる。
また、絶縁層として光を吸収するような材料を用いた場合などには、より光電変換部に光を入射させる観点から、絶縁層除去工程において、基板の表面に対して平行な、めっき層が形成されるめっき層形成領域以外の領域(めっき層非形成領域)における全ての絶縁層を除去することが好ましい。また、絶縁層除去工程において、めっき層と表面電極層との間に介在した絶縁層を除く全ての絶縁層を除去することが好ましい。
【0042】
請求項
9に記載の発明は、前記被めっき基板は、前記表面電極層が光電変換部側から第一透明電極層、第一導電層の順に積層されてなり、前記めっき工程後に第一導電層の
70パーセント以上を除去する第一導電層除去工程を行うことを特徴とする請求項1〜
8のいずれかに記載の太陽電池の製造方法である。
本発明は、前記被めっき基板は、前記表面電極層が光電変換部側から第一透明電極層、第一導電層の順に積層されてなり、前記めっき工程後に第一導電層の大部分を除去する第一導電層除去工程を行うことに関連する。
【0043】
ここでいう「大部分」とは、第一導電層全体の70パーセント以上の部分をいう。
【0044】
本発明の製造方法によれば、めっき工程後に第一導電層の大部分を除去する第一導電層除去工程を行うので、本発明の製造方法によって形成された太陽電池は、第一導電層の大部分が除去されており、発電時において、第一導電層の存在が光入射の妨げになりにくい。そのため、本発明の製造方法によれば、発電特性の優れた太陽電池を製造することができる。
上記した定義では、第一導電層の大部分は、第一導電層全体の70パーセント以上の部分を指すが、光をより光電変換部に入射させる観点から、第一導電層除去工程では、第一導電層の80パーセント以上の部位を除去することが好ましく、90パーセント以上の部位を除去することがより好ましい。
【0045】
本発明は、前記光電変換部は、一導電型の単結晶シリコン基板上に、前記単結晶シリコン基板と異なるバンドギャップを有したシリコン系薄膜が積層された部位が存在すること
にしてもよい。
【0046】
「単結晶シリコン基板」には、シリコン原子に電子を導入するための原子(例えばリン)を含有させたn型と、シリコン原子に正孔を導入する原子(例えばホウ素)を含有させたp型がある。
ここでいう「一導電型」とは、n型、又は、p型のどちらか一方であることをいう。すなわち、「一導電型の単結晶シリコン基板」とは、n型の単結晶シリコン基板又はp型の単結晶シリコン基板である。
【0047】
この発明の製造方法によれば、高変換効率のヘテロ接合型の太陽電池を製造することができる。
【0048】
上記した発明は、めっき工程において、前記光電変換部は、一方の面側の最も外側に一導電型シリコン系薄膜が形成されており、かつ、他方の面側の最も外側に逆導電型シリコン系薄膜が形成されており、当該一導電型シリコン系薄膜は、前記逆導電型シリコン系薄膜と接する部位が存在しており、前記分離工程において、前記一導電型シリコン系薄膜と逆導電型シリコン系薄膜の実質的な電気接続を切り離すことが好ましい。
【0049】
ここでいう「逆導電型」とは、「一導電型」と電気伝導を担うキャリアが異なる型であり、例えば、「一導電型」がn型の場合には、「逆導電型」は、p型となり、「一導電型」がp型の場合には、「逆導電型」は、n型となる。
【0050】
この発明の製造方法は、上記したように、ヘテロ接合型の太陽電池を製造するものである。
この発明の製造方法によれば、一導電型シリコン系薄膜と逆導電型シリコン系薄膜が接しているので、例えば、一導電型シリコン系薄膜がn型であり、逆導電型シリコン系薄膜がp型である場合において、表面電極層側にPN接合が形成される。そのため、例えば、一導電型シリコン系薄膜や逆導電型シリコン系薄膜として導電性の高い材料を用いた場合など、めっき工程において導電性保持部材から給電する際に、表面電極層と裏面電極層間の導電経路に加えて、一導電型シリコン系薄膜と逆導電型シリコン系薄膜との導電経路も形成される場合があるため、めっき工程における表面電極層側への給電を補助することができる。
また、この発明の製造方法によれば、分離工程において、一導電型シリコン系薄膜と逆導電型シリコン系薄膜の実質的な電気接続を切り離すので、一導電型シリコン系薄膜や逆導電型シリコン系薄膜として導電性の高い材料を用いた場合、PN接合による一導電型シリコン系薄膜と逆導電型シリコン系薄膜の短絡を防止することができる。
請求項10に記載の発明は、
表面電極層と、裏面電極層と、表面電極層と裏面電極層の間に挟まれた光電変換部とを備えた被めっき基板を用いる太陽電池の製造方法であって、前記被めっき基板上にめっき層を形成する太陽電池の製造方法において、導電性保持部材を備えためっき用治具を使用し、前記被めっき基板を、前記表面電極層と前記裏面電極層が電気的に接続された状態で、かつ、前記表面電極層と前記裏面電極層のうち、一方の電極層と前記導電性保持部材が接触した状態で、前記めっき用治具によって保持し、前記導電性保持部材に給電することによって、他方の電極層上にめっき層を形成するめっき工程と、前記表面電極層と前記裏面電極層の実質的な電気接続を切り離す分離工程をこの順に含んでおり、前記被めっき基板は、前記表面電極層が光電変換部側から第一透明電極層、第一導電層の順に積層されてなり、前記めっき工程後に第一導電層の70パーセント以上を除去する第一導電層除去工程を行うことを特徴とする太陽電池の製造方法である。
【0051】
本発明は、
上記の太陽電池の製造方法において前記めっき工程を行うためのめっき用治具であ
るめっき用治具
に関連する。
【0052】
本発明の構成によれば、太陽電池を容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0053】
本発明の太陽電池の製造方法及びめっき用治具によれば、導電性保持部材が接触する面に対して反対側の面にある被めっき面にムラなくめっき層を形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
なお、以下の説明において、特に断りがない限り、めっき装置1の上下の位置関係は、
図1の姿勢を基準に説明する。また、図面は、理解を容易にするために全体的に実際の大きさ(長さ、幅、厚さ)に比べて誇張して描写していることがある。各物性は、特に断りがない限り、標準状態(一般的にその分野において主に測定が行われる条件)における物性を表す。
【0056】
第1実施形態におけるめっき装置1は、太陽電池50を製造するためのめっき装置であって、めっき用治具2を使用してめっき層8を形成する装置であり、
図1のように、めっき浴5と、めっき電極6を備えている。
そして、本発明は、このめっき装置1で使用されるめっき用治具2の構造に1つの特徴を備えている。
【0057】
まず、特徴的構成を備えるめっき用治具2について説明する。
めっき用治具2は、
図1のように、被めっき基板20を挟持して所定の姿勢で保持するための固定治具である。
めっき用治具2は、支持台10と、絶縁クリップ11と、絶縁体12と、導電クリップ13(導電性保持部材)から形成されている。
【0058】
支持台10は、めっき用治具2の基体となる部材である。
支持台10は、帯状に延びた板状の導電体であり、
図1に示されるように外部電源7と電気的に接続可能となっている。
また、支持台10上には、図示しない支持台保護層によって被覆されていることが好ましい。
この支持台保護層は、
図7のようにめっき装置1に取り付けた際に、支持台10がめっき浴5のめっき液31に晒されるのを防止する層である。
支持台保護層は、めっき用治具2をめっき装置1に設置した際に、支持台10のめっき液31に浸漬される領域全体を覆っている。
支持台保護層の材料は、めっき液31に対する耐性と、絶縁性を有していれば、特に限定されるものではない。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、セラミック、プラスチック、ゴム、エポキシ樹脂などが採用できる。PTFEを使用する場合には、より信頼性が高い観点からPTFEの中でもテフロン(登録商標)であることが好ましい。
【0059】
絶縁クリップ11は、
図1のように、被めっき基板20を支持台10に固定する部材であり、支持台10から立設した断面形状が略「L」字状の部材である。
絶縁クリップ11は、絶縁体によって形成されている。
絶縁クリップ11の材料は、めっき液31に対する耐性と、絶縁性を有していれば、特に限定されるものではない。絶縁クリップ11の材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、セラミック、プラスチック、ゴム、エポキシ樹脂などが採用できる。PTFEを使用する場合には、より信頼性が高い観点からPTFEの中でもテフロン(登録商標)であることが好ましい。
【0060】
絶縁クリップ11は、
図1,
図7から読み取れるように、被めっき基板20を押圧する押圧部25と、押圧部25と支持台10を接続する接続部26を備えている。
押圧部25は、被めっき基板20を押圧して支持する部位である。
接続部26は、支持台10に対して立設されており、押圧部25に対しても立設されている。
【0061】
絶縁体12は、
図1に示されるように、絶縁クリップ11と共に被めっき基板20を固定する部材であり、被めっき基板20をめっき用治具2に取り付ける際に、絶縁クリップ11と共に被めっき基板20を挟持する部材である。言い換えると、絶縁体12は、被めっき基板20を押圧する押圧部ともいえる。
【0062】
絶縁体12の材料は、めっき液31に対する耐性と、絶縁性を有していれば、特に限定されるものではない。絶縁体12の材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、セラミック、プラスチック、ゴム、エポキシ樹脂などが採用できる。PTFEを使用する場合には、より信頼性が高い観点からPTFEの中でもテフロン(登録商標)であることが好ましい。
【0063】
導電クリップ13は、
図1のように、被めっき基板20を接触して支持する部材であり、被めっき基板20をめっき用治具2に取り付けた際に、被めっき基板20と電気的に接続される部材である。すなわち、導電クリップ13は、支持台10を介して外部電源7と電気的に接続可能となっている。
導電クリップ13は、
図1の拡大図のように、骨格を形成するクリップ本体15と、クリップ本体15上を被覆したクリップ被覆層16から形成されている。導電クリップ13は、クリップ本体15の大部分がクリップ被覆層16で被覆されている。
クリップ本体15は、導電体によって形成されており、クリップ本体15を含む導電クリップ13は、
図7のように長方形状の板状部材を湾曲させた形状をしている。
【0064】
クリップ被覆層16は、クリップ本体15がめっき浴5のめっき液31に晒されるのを防止する層である。
クリップ被覆層16の材料は、めっき液31に対する耐性と、絶縁性を有していれば、特に限定されるものではない。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、セラミック、プラスチック、ゴム、エポキシ樹脂などが採用できる。PTFEを使用する場合には、より信頼性が高い観点からPTFEの中でもテフロン(登録商標)であることが好ましい。
【0065】
導電クリップ13は、
図1の拡大図のように、露出部17と被覆部18を有している。
露出部17は、クリップ本体15がクリップ被覆層16から露出した部位である。すなわち、露出部17は、被めっき基板20にめっきする際に、被めっき基板20と接触する部位であって、被めっき基板20への給電点となる部位である。
露出部17は、自然姿勢において、緩やかに湾曲し、曲面状となっている。
ここで、「自然姿勢」とは、外力が働いていない状態を指し、本実施形態で則していうと、被めっき基板20を挟んでいない状態を指す。
被覆部18は、クリップ本体15の少なくとも裏面側(被めっき基板20と反対側)の面全体に形成されており、本実施形態では、被めっき基板20をめっき用治具2に取り付けた際に、被めっき基板20との接触部位以外の部位に形成されている。
【0066】
ここで、めっき用治具2の各部位の位置関係について説明すると、絶縁クリップ11は、
図7に示されるように、支持台10の長手方向(延伸方向)に所定の間隔を空けて、複数並列されている。また、支持台10には、絶縁クリップ11との接続部位に対応して絶縁体12が取り付けられている。すなわち、絶縁体12も、絶縁クリップ11と同様、支持台10の長手方向(延伸方向)に所定の間隔を空けて、複数並列されている。
絶縁体12は、絶縁クリップ11の押圧部25と支持台10の厚み方向に所定の間隔を空けて配されており、当該間隔に被めっき基板20を取り付け可能となっている。
絶縁クリップ11及び絶縁体12は、支持台10の上端部側に接続されており、導電クリップ13は、支持台10の下端部側に接続されている。すなわち、絶縁クリップ11及び絶縁体12は、導電クリップ13と上下方向(天地方向)にずれた位置にある。
導電クリップ13は、被めっき基板20を固定した際に被めっき基板20に近接する方向に折り曲がって湾曲しており、導電クリップ13の下部に位置する露出部17は、絶縁体12の先端面(被めっき基板20側の面)とほぼ同一平面上に位置している。
【0067】
めっき浴5は、
図1のように、めっき槽30内にめっき液31が導入されたものである。
めっき液31は、公知のめっき液であり、成膜するめっき層8の種類等によって適宜使い分けられる。本実施形態では、金属塩を溶解した電解液であり、具体的には、硫酸銅が電離した硫酸銅水溶液である。すなわち、本実施形態では、銅イオンと、硫酸イオンが電離している。
なお、めっき液には、電導度塩、アノード溶解促進剤、錯化剤、皮膜の外観と物性を調整する添加剤などの公知の添加物を添加してもよい。
【0068】
めっき電極6は、公知のめっき電極であり、電解めっきに用いられる金属単体又は金属合金で形成されたものである。めっき電極6は、めっき液31やめっき層8の種類等によって適宜選択される。
本実施形態では、上記したようにめっき液31として硫酸銅のめっき液を使用しているので、めっき電極6として銅単体などが使用できる。なお、めっき電極6は、溶解する側の電極であるから、当然陽極(アノード)となる。
また、めっき電極6は板状の導電体であり、めっき電極6の大きさは、
図1から読み取れるように、被めっき基板20のほぼ全面を覆う程度の大きさとなっている。
【0069】
続いて、めっき処理の対象たる被めっき基板20について説明する。
被めっき基板20は、平面視したときに、多角形状をしており、具体的には、
図2から読み取れるように、四角形の4隅を取り除いた疑似四角形状をしている。
被めっき基板20は、
図2,
図3から読み取れるように光電変換層53上にめっき下地層51が被覆されためっき層形成領域60と、基板の表面に対して平行なめっき層形成領域60以外の領域であるめっき層非形成領域61を有している。
めっき層形成領域60は、
図2に示されるように、バスバー形成領域62と、フィンガー形成領域63から形成されている。
バスバー形成領域62は、めっき層8を形成することによって、いわゆるバスバー電極として機能する領域である。バスバー形成領域62は、
図2のように縦方向l(長さ方向)に延伸している。
【0070】
フィンガー形成領域63は、めっき層8を形成することによって、いわゆるフィンガー電極として機能する領域である。フィンガー形成領域63は、
図2のように、バスバー形成領域62からバスバー形成領域62の延伸方向に対して直交方向s(横方向)に延びている。
フィンガー形成領域63の幅は、バスバー形成領域62の幅に比べて極めて狭い。
【0071】
被めっき基板20の断面構造に注目すると、被めっき基板20は、
図3に示されるように、めっき層形成領域60において、光入射側(
図3の上側)から表面電極層54と、光電変換層53(光電変換部)と、裏面電極層55がこの順に積層している。
また、被めっき基板20は、めっき層非形成領域61において、光入射側から絶縁層58と、表面電極層54と、光電変換層53と、裏面電極層55がこの順に積層している。
【0072】
表面電極層54は、光電変換層53側から第一透明電極層52、めっき下地層51(第一導電層)の順に積層されて形成されている。
【0073】
めっき下地層51は、めっき層8を形成するにあたって、導電性の下地層として機能する層であり、めっき層8が析出する電極となる層である。
めっき下地層51の材料は、電解めっき法における下地層として機能し得る程度の導電率を有していれば、特に限定されるのではないが、めっき下地層51の体積抵抗率は10
-4Ω・cm以上10
-2Ω・cm以下であることが好ましい。この範囲であれば、導電性の下地層として十分に機能することができる。
例えば、めっき下地層51としては、ニッケル単体や銅単体、これらの合金等が使用できる。
なお、本実施形態では、めっき下地層51は、第一透明電極層52よりも高い導電率を有している。
【0074】
めっき下地層51の形成方法は、特に限定されない。例えば、インクジェット法、スクリーン印刷法、導線接着法、スプレー法、真空蒸着法、スパッタ法、電解めっき法、無電解めっき法などによって形成できる。
【0075】
第一透明電極層52は、透明性及び導電性を有した層であり、導電性酸化物を主成分とした層である。第一透明電極層52としては、例えば、酸化亜鉛や酸化インジウム、酸化錫を単独、又は混合したものが使用できる。
第一透明電極層52は、これらの中でも、導電性、光学特性、および長期信頼性の観点から、酸化インジウムを含んだインジウム系酸化物が好ましく、中でも酸化インジウム錫(ITO)を主成分とするものがより好ましい。
また、第一透明電極層52は、上記した導電性酸化物にドーピング剤を添加したものであってもよい。
ここで「主成分とする」とは、含有量が50重量パーセントより多いことを意味し、70重量パーセント以上が好ましく、90重量パーセント以上がより好ましい。
第一透明電極層52の形成方法は、特に限定されない。例えば、スパッタ法などによって形成できる。
【0076】
光電変換層53は、光電変換機能を備えた層であり、複数の層が積層した多層構造をした層である。詳細については、太陽電池50の層構成とともに後述する。
【0077】
裏面電極層55は、
図3に示されるように、光電変換層53側から順に第二透明電極層56と、金属層57(第二導電層)が積層されて形成されている。
第二透明電極層56は、上記した第一透明電極層52と同様、透明性及び導電性を有した層であり、導電性酸化物を主成分とした層である。第二透明電極層56としては、第一透明電極層52と同様の材料が使用できる。すなわち、第二透明電極層56としては、例えば、酸化亜鉛や酸化インジウム、酸化錫を単独、又は混合したものが使用できる。
第二透明電極層56は、これらの中でも、導電性、光学特性、および長期信頼性の観点から、酸化インジウムを含んだインジウム系酸化物が好ましく、中でも酸化インジウム錫(ITO)を主成分とするものがより好ましい。
また、第二透明電極層56は、上記した導電性酸化物にドーピング剤を添加したものであってもよい。
ここで「主成分とする」とは、含有量が50重量パーセントより多いことを意味し、70重量パーセント以上が好ましく、90重量パーセント以上がより好ましい。
第二透明電極層56の形成方法は、特に限定されない。例えば、スパッタ法などによって形成できる。
【0078】
金属層57の材料は、近赤外から赤外域の反射率が高く、かつ導電性や化学的安定性が高い材料を用いることが望ましい。
このような特性を満たす材料としては、銀やアルミニウム等の金属が挙げられる。
金属層57の成膜方法は、特に限定されないが、スパッタ法や真空蒸着法等の物理気相堆積法や、スクリーン印刷等の印刷法等が適用可能である。
金属層57は、光電変換層53の裏面側の面の略全面に形成してもよいし、光入射面側のめっき下地層51のように櫛型電極としてもよい。
【0079】
絶縁層58は、電気的に絶縁性を有した層であり、所定の条件を満たすことで除去可能な層である。具体的には、絶縁層58は、フォトレジスト材料などによって形成された層である。すなわち、絶縁層58は、光の照射によって、構造変化を起こす硬質感光性の材料であり、さらに、特定の薬品(除去液)に溶けやすくなるものである。
本実施形態の絶縁層58は、めっき層8を形成する際に使用されるめっき液31に対する化学的安定性を有する材料によって形成されている。そのため、めっき工程の際に、絶縁層58が溶解しにくく、光電変換層53へのダメージが生じにくくできる。
【0080】
絶縁層58の形成に使用されるフォトレジスト材料は、上記した性質を備えていれば特に限定されるものではないが、ポジ型ならノボラック樹脂、フェノール樹脂など、ネガ型ならアクリル樹脂などが使用できる。
また、絶縁層58を除去する除去液としては、例えば、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、アルキルベンゼンスルホン酸、エタノールアミン類、水酸化ナトリウムなどを含む溶液などが使用できる。
本実施形態では、フォトレジスト材料として、ポジ型のノボラック樹脂を使用しており、除去液として、水酸化ナトリウム水溶液を使用している。
【0081】
被めっき基板20は、上記したように疑似四角形状をしており、各辺において、表面電極層54と裏面電極層55とが電気的に接続されている。
光入射側に注目すると、光入射側に位置する第一透明電極層52は、
図4(e)のように、光電変換層53の一方の主面(光入射面)から対向する主面(裏面)にかけて、連続して光電変換層53の側面を覆っている。
また、第一透明電極層52は、大部分が光電変換層53の一方の主面(光入射面)に積層されている。
表面電極層54の一部たるめっき下地層51は、光電変換層53側からみて、金属層57のさらに外側を覆っている。すなわち、めっき下地層51は、光電変換層53の一方の主面(光入射面)から対向する主面(裏面)にかけて、側面を覆っている。
光電変換層53の内部では、第一透明電極層52と同様、最表面に位置する逆導電型シリコン系薄膜72(
図6参照)が一方の主面(光入射面)から対向する主面(裏面)にかけて、連続して単結晶シリコン基板70の側面を覆っている。
【0082】
光入射側と反対側(裏面側)に注目すると、裏面電極層55の一部たる第二透明電極層56は、光電変換層53の他方の主面(裏面)から対向する主面(光入射面)にかけて、連続して光電変換層53の側面を覆っている。また、第二透明電極層56は、光電変換層53の側面において第一透明電極層52上を覆っており、第一透明電極層52と接している。すなわち、第一透明電極層52と第二透明電極層56は電気的に接続されている。
また、裏面電極層55の一部たる金属層57は、光電変換層53側からみて、第二透明電極層56のさらに外側を覆っている。すなわち、金属層57も光電変換層53の他方の主面(裏面)から対向する主面(光入射面)にかけて、側面を覆っている。
【0083】
裏面電極層55の最裏面に位置する金属層57は、側面において、表面電極層54の最表面に位置するめっき下地層51と接触しており、めっき下地層51と電気的に接続されている。すなわち、被めっき基板20は、裏面側から光入射面側に向けた導電経路が形成されている。
光電変換層53の内部では、金属層57と同様、最裏面に位置する一導電型シリコン系薄膜74(
図6参照)が一方の主面(裏面)から対向する主面(光入射面)にかけて、連続して単結晶シリコン基板70の側面を覆っている。
一導電型シリコン系薄膜74は、単結晶シリコン基板70の側面において逆導電型シリコン系薄膜72上を覆っており、逆導電型シリコン系薄膜72と接している。すなわち、逆導電型シリコン系薄膜72と一導電型シリコン系薄膜74は、PN接合を形成している。
【0084】
続いて、本実施形態の太陽電池50の製造方法について説明する。特に、めっき層8を形成するめっき工程について詳細に説明する。
【0085】
まず、
図4(a)に示されるように、プラズマCVD装置等によって、光電変換層53を形成する(光電変換層形成工程)。
【0086】
本実施形態では、逆導電型シリコン系薄膜72と一導電型シリコン系薄膜74を連続して成膜している。本実施形態では、逆導電型シリコン系薄膜72を形成した後に一導電型シリコン系薄膜74を形成している。
このときの成膜範囲は、ともに単結晶シリコン基板70と同じ範囲かやや大きい範囲を成膜している。
なお、逆導電型シリコン系薄膜72及び一導電型シリコン系薄膜74の成膜範囲は、マスクによって、所望の形状又は所望の範囲になるように成膜してもよい。
【0087】
光電変換層形成工程の後、
図4(b)に示されるように、光電変換層53の光入射側の面側からスパッタ法によって、第一透明電極層52を形成する(第一透明電極層形成工程)。
このときの成膜範囲は、光電変換層53と同じ範囲かやや大きい範囲を成膜している。そのため、光電変換層53の光入射面(表面)から各辺の側面にまで、第一透明電極層52が形成される。すなわち、第一透明電極層52は、光電変換層53の光入射面(表面)から裏面に向かって延びており、光電変換層53の側面を巻き込んでいる。
【0088】
第一透明電極層形成工程の後、
図4(c)に示されるように、光電変換層53の裏面側からスパッタ法によって、第二透明電極層56を形成する(第二透明電極層形成工程)。
このときの成膜範囲は、光電変換層53と同じ範囲かやや大きい範囲を成膜している。そのため、光電変換層53の裏面側から各辺の側面側にまで、第二透明電極層56が形成されており、第二透明電極層56は、第一透明電極層52の外側を巻き込んで接触した状態で形成されている。
【0089】
第二透明電極層形成工程の後、
図4(d)に示されるように、光電変換層53の裏面側からスパッタ法によって、金属層57を形成する(金属層形成工程)。
このときの成膜範囲は、光電変換層53と同じ範囲かやや大きい範囲を成膜している。そのため、光電変換層53の裏面側から側面側にまで金属層57が形成されており、金属層57は、第二透明電極層56の外側を覆っている。本実施形態では、金属層57は、第二透明電極層56上全体を覆っている。
このようにして、第二透明電極層56上に金属層57が積層され、裏面電極層55が形成される。
【0090】
金属層形成工程と別途工程にて、
図4(e)のように、スパッタ法によって第一透明電極層52上に、めっき下地層51を形成する(めっき下地層形成工程)。本実施形態では、金属層形成工程の後にめっき下地層形成工程を行う。
このときの成膜範囲は、光電変換層53と同じ範囲かやや大きい範囲を成膜している。そのため、光電変換層53の裏面側から側面側にまでめっき下地層51が形成されており、めっき下地層51は、光入射面側の面において、第一透明電極層52の外側を覆っており、側面において、金属層57上を覆っている。本実施形態では、めっき下地層51は、光入射側において、第一透明電極層52上全体を覆っており、側面においても金属層57上全体を覆っている。
このようにして、第一透明電極層52上にめっき下地層51が積層され、表面電極層54が形成される。
【0091】
めっき下地層形成工程の後、
図4(f)のように、めっき下地層51が形成された基板に対して絶縁層58を形成する(絶縁層形成工程)。
具体的には、めっき下地層51の全面にレジスト材料を塗布し、所望の部位をマスクで覆って光を照射する(露光工程)。その後、除去液に浸してレジスト材料の露光部位を溶解させる(現像工程)。
【0092】
このとき、絶縁層58の光を照射した部位には、開口59が形成されており、当該開口59からめっき下地層51が露出している。また、開口59は、バスバー形成領域62及びフィンガー形成領域63からなるめっき層形成領域60(
図2参照)に形成されている。すなわち、開口59の形状は略櫛型となっており、全体にまんべんなく形成されている。
【0093】
絶縁層形成工程後に、本発明の特徴の一つであるめっき工程を行う。
具体的には、
図5(g)のようにめっき用治具2の導電クリップ13を介して裏面電極層55の一部たる金属層57に給電することによって、光入射面側の表面電極層54の一部たるめっき下地層51上にめっき層8を形成する(めっき工程)。
このとき、被めっき基板20は、
図1に示されるように、めっき用治具2の絶縁クリップ11、絶縁体12、及び、導電クリップ13によって、めっき液31内に浸漬された状態で保持されている。
すなわち、表面電極層54のめっき下地層51及び裏面電極層55の金属層57は、めっき液31に晒されており、その状態で給電されることによって、それぞれのめっき液31への露出面にめっき層8が析出される。
またこのとき、
図1のように、導電クリップ13の露出部17は、被めっき基板20の裏面電極層55と面接触している。
絶縁クリップ11と絶縁体12は、被めっき基板20の一部を挟んでいることが好ましい。具体的には、絶縁クリップ11は、被めっき基板20の被めっき箇所以外の部位、すなわち、
図7に示されるめっき層非形成領域61の一部を挟んでいることが好ましい。言い換えると、絶縁クリップ11は、めっき下地層51を挟んでいないことが好ましい。そのため、絶縁クリップ11と絶縁体12の存在がめっき層8の形成を阻害しない。
さらにこのとき、裏面側の金属層57を介して光入射面側のめっき下地層51に給電するため、金属層57とめっき下地層51は、同電位となり、金属層57に正に帯電することはない。すなわち、金属層57が酸化されてイオン化することはない。さらに金属層57は、めっき下地層51と同電位であるから、金属層57上にもめっき層8が形成される。そのため、裏面電極層55の金属層57の厚みが薄くても十分な導電が可能である。
本実施形態の場合、光電変換層53の各辺の側面で金属層57とめっき下地層51が直接接触しているので、金属層57からめっき下地層51全体に均等に導電し、導電ムラが生じにくいので、めっき層8の厚みが均等となる。
以上がめっき工程の説明である。
【0094】
めっき工程後に、
図5(h)のように、導電クリップ13を取り外して、必要に応じ
て絶縁層58を除去する(絶縁層除去工程)。本実施形態では、絶縁層58を完全に除去する。
【0095】
このとき、上記したように絶縁層58は、フォトレジスト材料で形成されているため、除去液に塗布することによって容易に絶縁層58を除去することができる。
【0096】
その後、
図5(i)のように、必要に応じて、めっき層8が形成された部位を避けて、めっき下地層51の大部分を除去する(めっき下地層除去工程)。
【0097】
めっき下地層除去工程において、より光電変換層53に光を入射させる観点から、第一導電層除去工程では、第一導電層の70パーセント以上の部位を除去することが好ましく、さらに光電変換層53に光を入射させる観点から、めっき層8が形成された部位以外のめっき下地層51を全て除去することが好ましい。
また、めっき下地層51とめっき層8(第一めっき層45)を備えた集電極65が形成される。
【0098】
また、
図5(j)のように、レーザーやエッチング液、研磨機等の除去手段によって、表面電極層54及び/又は裏面電極層55の一部を除去することによって、絶縁領域66を形成し、表面電極層54と裏面電極層55との実質的な電気接続を遮断する(分離工程)。
【0099】
この分離工程の一例としては、例えば、めっき下地層51をエッチング液等で除去する工程などである。
なお、本実施形態の分離工程では、レーザー光によって、光電変換層53の側面に位置する表面電極層54と裏面電極層55を全て除去し、表面電極層54と裏面電極層55の重なり部位又は接する部位を物理的に切り離している。
【0100】
ここで、上記した「絶縁領域」とは、光電変換部(本実施形態では、光電変換層53)上に形成された単一あるいは複数の特定の領域を指す用語であり、光入射面側の表面電極層54と裏面側の裏面電極層55との短絡が除去された領域を意味する。
絶縁領域は、典型的には、太陽電池50の表面電極層54及び/又は裏面電極層55を構成する成分が除去され、当該成分が付着していない領域である。
なお、「付着していない領域」とは、当該層を構成する材料元素が全く検出されない領域に限定されるものではなく、材料の付着量がその周辺と比較して著しく少なく、当該層自体が有する特性(電気的特性、光学特性、機械的特性等)が発現しない領域も、「付着していない領域」に包含される。
【0101】
太陽電池50は、上記したようにヘテロ接合太陽電池であるから、特に、導電型シリコン系薄膜72,74として、導電性の高い材料を用いた場合、絶縁領域66は、光電変換層53の両面に形成された表面電極層54や裏面電極層55が付着していないことに加えて、導電型シリコン系薄膜72,74も付着していないことが好ましい。
本実施形態の太陽電池50では、上記したように導電型シリコン系薄膜72,74がPN接合を形成しているため、導電型シリコン系薄膜72,74として導電率が高いものを用いた場合には、導電型シリコン系薄膜72,74の接触部位も同時に除去することが好ましい。すなわち、分離工程において、一導電型シリコン系薄膜74と逆導電型シリコン系薄膜72の実質的な電気接続を切り離すことによって、一導電型シリコン系薄膜74と逆導電型シリコン系薄膜72の短絡をより防止することができる。
【0102】
なお、導電型シリコン系薄膜72,74の接触部位も同時に除去すると、光電変換層53の側面又はその近傍には、光電変換層53上に表面電極層54と裏面電極層55の双方が存在しない領域が形成される。
【0103】
このようにして、本実施形態の太陽電池50は製造される。
【0104】
上記した説明では、太陽電池50の単体について説明したが、実用に供するに際しては、複数の太陽電池50を適宜組み合わせて、モジュール化される。
【0105】
上記した製造方法により製造される太陽電池50について、主に
図6を参照しながら説明する。なお、被めっき基板20と同様の構成については、説明を省略する。
【0106】
本実施形態の太陽電池50は、結晶系の太陽電池であり、結晶系の太陽電池の中でも、特に高変換効率を誇るヘテロ接合結晶シリコン太陽電池(以下、ヘテロ接合太陽電池ともいう)を採用している。
ヘテロ接合太陽電池は、一導電型の単結晶シリコン基板上に、単結晶シリコンとはバンドギャップの異なるシリコン系薄膜を有することで、拡散電位が形成された結晶シリコン系太陽電池である。
【0107】
具体的には、光電変換層53は、
図6のように、単結晶シリコン基板70の一方の面(光入射側の面)上に、真性シリコン系薄膜71、逆導電型シリコン系薄膜72がこの順に積層された断面構造を有している。
一方、単結晶シリコン基板70の他方の面(光入射側と反対側の面,裏面)上に真性シリコン系薄膜73及び一導電型シリコン系薄膜74がこの順に積層されている。
【0108】
すなわち、光電変換層53は、裏面側から一導電型シリコン系薄膜74、真性シリコン系薄膜73、単結晶シリコン基板70、真性シリコン系薄膜71、逆導電型シリコン系薄膜72がこの順に積層されて形成されている。
また、単結晶シリコン基板70と逆導電型シリコン系薄膜72の間、単結晶シリコン基板70と一導電型シリコン系薄膜74の間には、真性シリコン系薄膜71,73が介在している。
【0109】
単結晶シリコン基板70は、一導電型の単結晶シリコン基板によって形成されている。
【0110】
ここで、ヘテロ接合太陽電池では、単結晶シリコン基板へ入射した光が最も多く吸収される入射側のへテロ接合を逆接合として強い電場を設けることで、電子・正孔対を効率的に分離回収することができる。そのため、光入射側のヘテロ接合は逆接合であることが好ましい。一方で、正孔と電子とを比較した場合、有効質量および散乱断面積の小さい電子の方が、一般的に移動度が大きい。
以上の観点から、単結晶シリコン基板70は、n型単結晶シリコン基板であることが好ましい。
【0111】
単結晶シリコン基板70は、
図6に示されるように光入射面(上面)及び裏面(下面)にテクスチャ構造(凹凸構造)を有している。すなわち、めっき層8を形成して製造される太陽電池50の光入射面及び当該光入射面と反対側の面も、ともにテクスチャ構造が形成されている。それ故に、本発明の製造方法によって形成される太陽電池50に入射した光を光電変換層53に閉じ込めることができ、発電効率が高い。
【0112】
導電型シリコン系薄膜72,74は、一導電型又は逆導電型のシリコン系薄膜である。本実施形態では、単結晶シリコン基板70としてn型が用いられるから、一導電型シリコン系薄膜74はn型となり、逆導電型シリコン系薄膜72は、p型となる。
【0113】
導電型シリコン系薄膜72は、p型非晶質シリコン系薄膜の中でも、p型水素化非晶質シリコン層、p型非晶質シリコンカーバイド層、またはp型非晶質シリコンオキサイド層であることが好ましい。
不純物拡散の抑制や直列抵抗低下の観点ではp型水素化非晶質シリコン層が好ましい。一方、p型非晶質シリコンカーバイド層およびp型非晶質シリコンオキサイド層は、ワイドギャップの低屈折率層であるため、光学的なロスを低減できる点において好ましい。
【0114】
真性シリコン系薄膜71,73としては、シリコンと水素で構成されるi型水素化非晶質シリコンであることが好ましい。
単結晶シリコン基板70上に、CVD法によってi型水素化非晶質シリコンが成膜されると、単結晶シリコン基板70への不純物拡散を抑えつつ表面パッシベーションを有効に行うことができる。
【0115】
以上のように、本実施形態の光電変換層53は、光入射側(めっき下地層51側)から順にp型非晶質シリコン系薄膜72/i型非晶質シリコン系薄膜71/n型単結晶シリコン基板70/i型非晶質シリコン系薄膜73/n型非晶質シリコン系薄膜74の順の積層構造を取っている。
【0116】
上記した製造方法で形成されるめっき層8は、めっき法で形成できる材質であれば特に限定されず、例えば、銅、ニッケル、錫、アルミニウム、クロム、銀、金、亜鉛、鉛、パラジウム等、あるいはこれらの混合物を用いることができる。本実施形態では、めっき層8は、銅めっきによって形成されている。
【0117】
また、上記した製造方法によって形成されるめっき層8は、表面電極層54上に成膜された第一めっき層45と、裏面電極層55上に成膜された第二めっき層46から形成されている。
第一めっき層45は、めっき層形成領域60に形成されるめっき層であり、バスバー電極とフィンガー電極の一部を形成する層である。
第一めっき層45は、めっき下地層51上の実質的に全面において形成されている。すなわち、めっき下地層51の光入射側の面上には、第一めっき層45が連続して形成されている。
ここでいう「実質的に全面」とは、ピンホール等の欠陥が生じている場合も含む。
【0118】
第二めっき層46は、金属層57上に形成されるめっき層であり、金属層57上の大部分を覆っている層である。
【0119】
本第1実施形態のめっき用治具2によれば、裏面に位置する裏面電極層55側から給電して表面電極層54上にめっき層8を形成するので、裏面電極層55が負の電荷に帯電し、溶解しない。
【0120】
本第1実施形態の太陽電池の製造方法によれば、めっき工程において、表面電極層54及び裏面電極層55は、光電変換層53の共通の側面の一部又は全部を覆っており、光電変換層53の側面において、表面電極層54及び裏面電極層55が接している。
そのため、裏面側からの給電によって、表面電極層54上に成膜することができる。
【0121】
本第1実施形態の太陽電池の製造方法では、絶縁層58として、レジスト材料を使用していたため、上記したように、めっき下地層51を除去することが推奨される。
そして、上記した実施形態の太陽電池の製造方法によれば、金属層形成工程後にめっき下地層形成工程を行っている。
この工程順の利点について簡単に説明すると、仮に、めっき下地層形成工程後に金属層形成工程を行った場合、金属層57が光入射面側に回り込んで第一透明電極層52と金属層57との間にめっき下地層51が介在することとなる。そのため、第一透明電極層52と金属層57の間に入っためっき下地層51が除去し難くなる。
一方、上記した実施形態の太陽電池の製造方法によれば、金属層形成工程後にめっき下地層形成工程を行うので、めっき下地層51を除去しやすい。
【0122】
本第1実施形態の太陽電池の製造方法によれば、めっき工程において、逆導電型シリコン系薄膜72と一導電型シリコン系薄膜74が接してPN接合を形成しているため、逆導電型シリコン系薄膜や一導電型シリコン系薄膜として、導電性の高い材料を用いた場合、裏面電極層55に給電された電流の一部が逆導電型シリコン系薄膜72及び一導電型シリコン系薄膜74を介しても表面電極層54に流れる。そのため、表面電極層54側に電流を供給しやすい。
【0123】
本第1実施形態の太陽電池の製造方法によれば、裏面側の金属層57上にも第二めっき層46が形成されているので、第二めっき層46によって導電に必要な膜厚を稼ぐことができ、金属層57の使用量を低減させることができる。すなわち、例えば、金属層57を高価な材料で形成する場合において、第二めっき層46の厚みを厚くすることによって、コストを低減することができる。
【0124】
続いて、第2実施形態のめっき用治具80について説明する。
第2実施形態のめっき用治具80は、
図8,
図9に示されるように、被めっき基板20の裏面を覆う裏面側支持具81と、外部電源7と接続可能な導電性コンタクト部82と、被めっき基板20の側面と光入射面(表面)の周縁部を覆う光入射面側支持具83から形成されている。
【0125】
裏面側支持具81は、絶縁体によって形成されており、
図9,
図10から読み取れるように、支持本体85と、支持本体85の端部から立設された立壁部86,87,88,89を有している。すなわち、裏面側支持具81は、支持本体85と立壁部86,87,88,89によって、導電性コンタクト部82の大部分を収納可能な収納空間91が形成されている。
支持本体85は、被めっき基板20の裏面をすべて覆う程度の大きさを有している。
めっき装置1に取り付けた際に天面を形成する立壁部86は、電源側接続部92を挿通可能な取出開口90を有している。
取出開口90は、立壁部86の立設方向先端面から支持本体85に向かって切り欠かれた方形状の切り欠きである。
【0126】
導電性コンタクト部82は、
図10に示されるように、導電体によって形成された薄板であり、電源側接続部92と、基板側接続部93から形成されている。
基板側接続部93は、被めっき基板20の裏面全体を覆う程度の大きさである。基板側接続部93は、正面視したときに、被めっき基板20と同一又は相似形状をしている。すなわち、多角形状となっている。
また、基板側接続部93は、
図8の拡大図に示されるように、被めっき基板20の裏面電極層55と直接面接触可能となっている。
電源側接続部92は、基板側接続部93から張り出した舌状の部位であり、
図9のように裏面側支持具81の取出開口90を挿通可能となっている。
【0127】
光入射面側支持具83は、絶縁体によって形成された額縁状の部材である。具体的には、光入射面側支持具83は、正面視したときに略四角環状となっており、中央にめっき用開口95を有している。
めっき用開口95は、組み立てたときに、被めっき基板20の被めっき面と対応する位置に設けられている。
【0128】
続いて、めっき装置1にめっき用治具80を介して被めっき基板20を取り付けた際の各部材の位置関係について説明する。
【0129】
導電性コンタクト部82の電源側接続部92は、
図8,
図9から読み取れるように、裏面側支持具81の立壁部86に設けられた取出開口90から外側に突出している。
被めっき基板20は、
図8,
図9から読み取れるように、光入射面側支持具83及び裏面側支持具81によって囲まれており、光入射面(表面)のみがめっき液31に晒されている。
【0130】
導電性コンタクト部82の基板側接続部93は、
図8に示されるように、被めっき基板20の金属層57と面接触している。
光入射面側支持具83は、正面視したときに、被めっき基板20のめっき層形成領域60上を被っていない。すなわち、正面視したときに、めっき用開口95内に被めっき基板20のめっき層形成領域60が位置している。
言い換えると、被めっき基板20のめっき層形成領域60は、光入射面側支持具83のめっき用開口95から露出している。すなわち、被めっき基板20のめっき下地層51は、めっき用開口95を介してめっき液31に晒されている。そのため、めっき電極6と導電性コンタクト部82間に電圧を印加することによって、絶縁層58から露出しためっき下地層51上にのみめっき層8が析出する。
【0131】
本第2実施形態のめっき用治具80によれば、金属層57がめっき液31に接触しないため、金属層57上にはめっき層8が形成されない。そのため、めっき層8の成膜量や厚みを制御しやすい。
【0132】
本第2実施形態のめっき用治具80によれば、被めっき基板20の金属層57の全面から給電できるため、めっき層8の厚みに分布の偏りが生じにくい。
【0133】
上記した第1実施形態では、裏面電極層55上にめっき層8が形成されていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、裏面電極層55上のめっき層8をめっき工程後の工程にて除去してもよい。
また、上記した第1実施形態においても、第2実施形態のように、裏面電極層55上を遮蔽板等によって覆い、裏面電極層55上にめっき層8が形成されないようにしても良い。
【0134】
上記した第1実施形態では、支持台10と導電クリップ13が別部材であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、支持台10及び導電クリップ13を介して外部電源7と被めっき基板20とを電気的に接続できればよい。すなわち、支持台10と導電クリップ13は同一部材であってもよい。例えば、板状の導電体を折り曲げ加工を施して導電クリップ13を形成してもよい。
【0135】
上記した実施形態では、表面電極層54として、第一透明電極層52上にめっき下地層51を形成し、その上にめっき層8を形成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、
図11に示されるように、めっき下地層51を形成せずに第一透明電極層52に直接めっき層8を形成して表面電極層54としてもよい。この場合、本発明の第一導電層は、透明電極層52となる。
上記した実施形態のように、めっき下地層51を透明電極層52と別途形成することが好ましい。この場合、めっき下地層51により導電率がより高くなり、良質なめっき層8が形成されやすくすることができる。まためっき下地層51により透明電極層52がめっき液31に溶解することなどをより防止できる。さらにめっき下地層51により隣接する層との接触抵抗がより小さくなり、抵抗損失などをより低減できる。
また、透明電極層52上やめっき下地層51上に裸線の配線部材を接着剤等で接着し、配線部材を介して通電することによって配線部材上にめっき層8を形成してもよい。すなわち、本発明の「第一導電層」には、モジュール化等を行う際に使用される板状又は箔状の配線部材も含む。
【0136】
上記した第2実施形態のめっき用治具80によれば、めっき用治具80に被めっき基板20を取り付けた際に、導電性コンタクト部82の基板側接続部93は、被めっき基板20の全面を覆っていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、被めっき基板20と導電性コンタクト部82との導通が確保できればよい。すなわち、導電性コンタクト部82は、被めっき基板20の一部を覆っていてもよい。
【0137】
上記した実施形態では、太陽電池50として、ヘテロ接合太陽電池であって結晶シリコン太陽電池を採用していたが、本発明はこれに限定されるものではなく、ヘテロ接合太陽電池以外の結晶シリコン太陽電池や、GaAs等のシリコン以外の半導体基板が用いられる太陽電池、非晶質シリコン系薄膜や結晶質シリコン系薄膜のpin接合あるいはpn接合上に透明電極層が形成されたシリコン系薄膜太陽電池や、CIS,CIGS等の化合物半導体太陽電池、色素増感太陽電池や有機薄膜(導電性ポリマー)等の有機薄膜太陽電池のような各種の太陽電池に適用可能である。
【0138】
上記した実施形態では、絶縁層58として、ポジ型のフォトレジスト材料を使用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ネガ型のフォトレジスト材料を使用してもよい。
【0139】
上記した実施形態では、光電変換層53の側面で表面電極層54と裏面電極層55とが接することによって、表面電極層54と裏面電極層55が電気的に接続していたが、本発明はこれに限定されるものではなく、光電変換層53の表面(光入射面)及び/又は裏面で表面電極層54と裏面電極層55を接触させることによって、電気的に接続してもよい。例えば、
図12のように裏面電極層55の一部たる金属層57が光電変換層53の表裏に跨がって形成されて、光入射面側で表面電極層54の一部たる第一透明電極層52と接触していてもよい。また、必ずしも光電変換層53の側面で表面電極層54と裏面電極層55とが接する必要はなく、側面の近傍で接していてもよい。
【0140】
上記した第1実施形態では、表面電極層54側をめっき電極6と対面するように配置したが、本発明はこれに限定されるものではなく、
図13から読み取れるように裏面電極層55側をめっき電極6と対面するように配置してもよい。こうすることによって、裏面電極層55側に重点的にめっき層8を形成することができる。
なお、絶縁クリップ11の代わりに導電体で形成された導電クリップ97によって被めっき基板20を固定し、導電クリップ97から裏面電極層55に給電することが好ましい。
【0141】
上記した実施形態では、めっき層8を短時間で形成するために、金属層形成工程の後にめっき下地層形成工程を行ったが、本発明はこれに限定されるものではない。成膜面ごとにめっき層8の形成量を制御したい場合には、金属層形成工程とめっき下地層形成工程の間に、第一透明電極層形成工程及び/又は第二透明電極層形成工程を行ってもよい。
具体的に説明すると、金属層形成工程とめっき下地層形成工程の間に、第二透明電極層形成工程を行うことによって、
図14(a)のように、被めっき基板20の側面で金属層57とめっき下地層51間に第二透明電極層56が介在することとなる。すなわち、電流は、金属層57とめっき下地層51間の導電経路において、第一透明電極層52及び/又は第二透明電極層56を通過することとなる。そして、
図14(b)のように、めっき層8を形成することによって、優先的に裏面電極層55側からめっき層8が形成される。そのため、第二透明電極層56の内部抵抗により、電流の下流側の面の成膜量を抑えることができる。
【0142】
上記した実施形態では、光電変換層53の側面に位置する表面電極層54と裏面電極層55を全て除去することによって、表面電極層54と裏面電極層55の電気接続を遮断したが、本発明はこれに限定されるものではなく、表面電極層54と裏面電極層55の重なり部位の一部又は全部を物理的に除去してもよい。
【0143】
上記した実施形態では、第一透明電極層52を形成した後に、第二透明電極層56を形成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、第二透明電極層56を形成した後に第一透明電極層52を形成してもよい。
【0144】
上記した実施形態では、フォトリソグラフィー法を用いて、絶縁層のパターニングを行ったが、本発明はこれに限定されるものではなく、絶縁層のパターニング方法は問わない。例えば、CVD法等の乾式法によって絶縁層を形成してもよい。
また、絶縁層58の形成方法は、乾式法、湿式法でもよい。絶縁層58は、乾式法の場合には、例えば、化学気相成長法(CVD)法により、形成することができる。湿式法の場合には、例えば、スピンコートやスプレーで形成することができる。湿式法の場合には、特にフォトリソグラフィー法などで形成することが好ましい。
めっき層8を細線化しつつ所望の形状に形成する観点から、上記した実施形態のようにフォトリソグラフィー法を用いて、絶縁層58のパターニングすることが好ましい。
【0145】
また、上記した実施形態では、スパッタ法によって、めっき下地層51を形成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、銀ペースト等のペースト状の金属を塗布することによってめっき下地層51を形成してもよい。
【0146】
上記した実施形態では、めっき工程後に絶縁層58を除去する絶縁層除去工程を行っていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、絶縁層除去工程を省略してもよい。
すなわち、絶縁層の材料として光を吸収しないものを用いた場合等には必ずしも除去する必要がない。勿論、このような場合でも上記した実施形態のように絶縁層除去工程を行ってもよい。
【0147】
上記した実施形態では、めっき下地層51を形成するめっき下地層形成工程の後、絶縁層58を形成する絶縁層形成工程を行ったが、本発明はこれに限定されるものではなく、絶縁層形成工程後にめっき下地層形成工程を行ってもよい。勿論、絶縁層形成工程とめっき下地層形成工程の間に他の工程を行ってもよい。
【0148】
上記した実施形態では、被めっき基板20に加わる押圧力をできる限り抑制する観点から、導電クリップ13の被めっき基板20への接触部位(露出部17)の形状を緩やかな曲面状にしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、導電クリップ13の被めっき基板20への接触部位の形状は特に問わない。例えば、鋭利な突起が複数分布した形状であってもよいし、先端が丸みを帯びた突起であってもよい。
また、同様の理由から、導電クリップ13と被めっき基板20の接触は、面接触としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、導電クリップ13と被めっき基板20の接触は、点接触であってもよい。
【0149】
上記した実施形態では、絶縁クリップ11として断面形状が略「L」字状の部材を使用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、被めっき基板20を固定できれば、その形状は限定されない。
【0150】
また、上記した第1実施形態では、被めっき基板20を固定するにあたって、被めっき基板20を絶縁クリップ11と絶縁体12で押圧して固定したが、本発明はこれに限定されるものではなく、絶縁体12は必ずしも押圧する必要はない。また、絶縁体12は必ずしも必要ではなく、絶縁クリップ11のみで被めっき基板20を固定してもよい。
【0151】
上記した実施形態では、太陽電池50を形成する際に、バスバー形成領域62及びフィンガー形成領域63を形成したが、バスバー電極は太陽電池50を製造するにあたって、必ず必要であるわけではないので、場合によっては、バスバー形成領域62を形成しなくてもよい。すなわち、フィンガー形成領域63のみを形成し、フィンガー電極のみを形成してもよい。
この場合、フィンガー電極は細線であるから、位置合わせしにくいので、フィンガー形成領域63のめっき下地層51への給電構造が問題となる。
上記した実施形態の太陽電池50の製造方法であれば、裏面電極層55側から給電するため、フィンガー形成領域63のみにめっき層8を形成し、フィンガー電極のみを形成することができる。
各めっき下地層51を接続する場合には、めっき層8の形成の妨げとなることを防止する観点から、フィンガー形成領域63の外側端部で接続することが好ましい。
【0152】
上記した実施形態では、裏面電極層55は、光電変換層53側から順に透明電極層56と、金属層57が積層して形成されていたが、裏面電極層55は、導電性を有している層であれば特に制限されない。すなわち、裏面電極層55は、上記した実施形態のように複数層からなる積層構造であってもよいし、単層であってもよい。
発電時における寄生吸収を抑制する観点からは、上記した実施形態のように透明電極層56と、金属層57の積層構造であることが好ましい。
【0153】
上記した実施形態では、被めっき基板20をめっき液31の液面に対して交差する姿勢で保持するものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、めっき液31内の被めっき基板20の姿勢は問わない。例えば、被めっき基板20を水平方向に向いた姿勢でめっき液に浸漬させてよい。なお、めっき層8を形成する際には、めっき電極6と被めっき基板20の主面は対面する姿勢であることが好ましい。
【0154】
上記した実施形態では、めっき工程において、裏面電極層55の金属層57の裏面全面を露出させて、めっき液31に晒していたが、本発明はこれに限定されるものではなく、金属層57の導電クリップ13と接触する給電部位以外の部位を絶縁層によって、覆ってもよい。
【0155】
上記した実施形態では、絶縁領域66をレーザー照射によって形成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、絶縁領域66の形成方法は特に限定されない。
例えば、絶縁領域66を形成する方法としては、電極層54,55や半導体薄膜等による光電変換層53の一部を製膜する際にマスク等を用い、所定領域に電極層54,55や半導体薄膜等による光電変換層53等の一部が付着しないように製膜を行う方法や、機械研磨、化学エッチング等によって所定領域の電極層54,55や光電変換層53の一部を除去する方法、各層を製膜後に、基板ごと端部を割断して、電極層54,55や半導体薄膜等による光電変換層53が付着していない割断面を形成する方法などが挙げられる。
【0156】
上記した実施形態では、めっき工程において、被めっき基板20の全ての縁(側面)の近傍において、表面電極層54と裏面電極層55が接していたが、本発明はこれに限定されるものではなく、表面電極層54と裏面電極層55が電気的に接続されていればよい。すなわち、表面電極層54と裏面電極層55は、被めっき基板の全ての縁(側面)で接している必要はない。表面電極層54と裏面電極層55は、一部のみで接していてもよい。
【0157】
上記した実施形態では、裏面電極層55側から給電して、表面電極層54上のめっき層8を形成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、表面電極層54側から給電して裏面電極層55上にめっき層8を形成してもよい。