(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明を省略する。
【0019】
(第1の実施形態)
以下、
図1〜
図10を用いて、本発明の第1の実施形態である後退支援装置を搭載した運搬機械の構成及び動作を説明する。ここでは、一例として、運搬機械はダンプトラックである。
【0020】
最初に、
図1を用いて、ダンプトラック1000の使用状況を説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態である後退支援装置を搭載したダンプトラック1000の使用状況を説明するための図である。
【0021】
砕石物を積み込んだダンプトラック1000は、崖下に設置された放土場DSに対して後ろ向きに走行し、車止め101の位置で停止し、放土する。なお、
図1では、ダンプトラック1000は、直交座標系23のx軸方向に後退する。また、車止め101は盛土で形成される。
【0022】
ダンプトラック1000は、後退を支援する後退支援装置100を備える。後退支援装置100は、車止め101、車止め計測装置102、計測性能監視装置103、自己位置計測装置105、速度調整装置106などから構成される。これらの装置の詳細は、
図2を用いて後述する。
【0023】
管制局200の報知装置201は、後退支援装置100から供給される情報に基づいて、車止め101の未検出の恐れがある場合に、表示部に警告を表示して報知する。
【0024】
次に、
図2を用いて、後退支援装置100の構成を説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態である後退支援装置100の構成を説明するための図である。
【0025】
図2に示すように、後退支援装置100は、車止め101、車止め計測装置102、計測性能監視装置103、無線通信装置104、自己位置計測装置105、速度調整装置106から構成される。
【0026】
車止め101は、ダンプトラック1000の後方の放土位置に配置される。車止め計測装置102は、車止め101のダンプトラック1000に対する相対位置および向きを計測する。計測性能監視装置103は、車止め計測装置102の計測性能を監視する。
【0027】
無線通信装置104は、管制局200の無線通信装置202と無線で通信する。自己位置計測装置105は、ダンプトラック1000の位置・姿勢を計測する。速度調整装置106は、後退時に車止めに接近しすぎたときや車止めからはずれて後退したときにダンプトラック1000の速度を調整する。
【0028】
車止め計測装置102は、後方物体検出部2a、2b、車止め計測部3、車止め記憶部4から構成される。
【0029】
後方物体検出部2a、2bは、ダンプトラック1000の左右(側面)に設置され、ダンプトラック1000の後方にある車止め101の一部を検出しダンプトラック1000からみた距離と方向またはダンプトラック1000に対する相対位置を取得する。後方物体検出部2a、2bは、例えば、レーザ光を扇状に投射し、物体からの反射光によって対象物までの距離と方向を測定するレーザスキャナ(レーザレンジスキャナ)である。
【0030】
車止め計測部3は、後方物体検出部2a、2bにより取得した、ダンプトラック1000から車止め101上の2点までの距離に基づいて、ダンプトラック1000に対する車止め101の相対位置と向きを求める。車止め記憶部4は、車止め101の相対位置と向きとを記憶する。
【0031】
計測性能監視装置103は、汚れ状態推定部7、汚れ状態記憶装置8から構成される。汚れ状態推定部7は、ダンプトラック1000の表面(ベッセルの側面)に設置された基準物52(
図3を用いて後述)を後方物体検出部2a、2bによって計測した結果から後方物体検出部2a、2bの汚れ状態を推定する。汚れ状態記憶装置8は、推定された汚れ状態を記憶する。
【0032】
自己位置計測装置105は、車輪速計測部15、操舵角計測部16、自己位置演算装置17から構成される。車輪速計測部15は、ダンプトラック1000の車輪回転速度を計測する。操舵角計測部16は、操舵角度を計測する。自己位置演算装置17は、車輪速計測部15と操舵角計測部16による計測結果から、ダンプトラック1000の速度と角速度、さらに、地面に固定された座標系での位置・姿勢を算出する。
【0033】
なお、ダンプトラック1000の位置・姿勢をより高精度で計測するため、自己位置計測装置105は、IMU(慣性計測装置)とGPS(Global Positioning System)とで構成してもよい。
【0034】
速度調整装置106は、制動装置18、駆動トルク制限装置19、運搬機械制動制御装置20から構成される。制動装置18は、ダンプトラック1000の速度を低下させたり停止させたりする。駆動トルク制限装置19は、ダンプトラック1000の駆動輪の回転トルク指令値を制限する。運搬機械制動制御装置20は、車止めまでの距離などから制動装置18の制動量と駆動トルク制限装置19の制限量を算出する。
【0035】
管制局200の報知装置201は、計測性能監視装置103から供給される後方物体検出部2a、2bの汚れ状態の推定結果に基づいて、車止め201の未検出や誤検出の恐れがある場合に、表示部に警告を表示して報知する。なお、報知は、音声をスピーカーなどから出力したり、ランプを点灯したりすることにより行ってもよい。
【0036】
車止め計測装置102において、後方物体検出部2a、2bは車止め計測部3に接続され、さらに、車止め計測部3は車止め記憶部4に接続される。また、後方物体検出部2a、2bは、計測性能監視装置103において、汚れ状態推定部7にも接続される。
【0037】
計測性能監視装置103において、無線通信装置104は汚れ状態推定部7に接続される。無線通信装置104は、無線通信装置202と無線で接続され、無線通信部202は、報知装置201と接続される。
【0038】
自己位置計測装置105において、車輪速計測部15と操舵角計測部16は自己位置演算装置17に接続される。速度調整装置106において、車止め計測部3と自己位置演算装置17は、運搬機械制動制御装置20に接続され、運搬機械制動制御装置20は、制動装置18と駆動トルク制限装置19に接続される。
【0039】
車止め計測部3と車止め記憶部4、汚れ状態推定部7、自己位置演算装置17は、例えば中央演算処理装置と記憶装置と入出力回路と通信回路からなるマイコン装置に実装される。
【0040】
車止め計測部3と車止め記憶部4の処理用に、それぞれ別のマイコン装置を設ける構成にしても良く、一つのマイコン装置で構成しても良い。また、運搬機械制動制御装置20は、例えば複数のマイコン装置で構成される車載用コントローラであって、車載用コントローラ内部のソフトウエアによって機能を実現する。
【0041】
次に、
図3〜
図4を用いて、後方物体検出部2(2a、2b)及び後方物体検出部2の汚れを推定するために用いられる基準物52の配置を説明する。
図3は、本発明の第1の実施形態である後退支援装置100に用いられる後方物体検出部2及び基準物52の配置を示すダンプトラック1000の斜視図である。
図4は、本発明の第1の実施形態である後退支援装置100に用いられる後方物体検出部2及び基準物52の配置を示すダンプトラック1000の側面図である。
【0042】
後方物体検出部2は、基準物52までの距離を計測し、計測値を汚れ状態推定部7に供給する。前述したように、汚れ状態推定部7は、基準物52までの距離の計測値に基づいて、後方物体検出部2の汚れを推定する。ここで、基準物52は、例えば、白色の板で構成される。
【0043】
後方物体検出部2は、従動輪50(前輪)の上のダンプトラック1000の側面に取り付けられる。一方、基準物52は、
図4に示すように、ダンプトラック1000の側面上(ベッセルの側面)であって、車止め101の走査に使用されない走査角度の範囲に取り付けられる。例えば、後方物体検出部2と基準物52は、同じ高さに配置される。なお、従動輪50は、キャブ61(運転席)の下方にある。
【0044】
次に、
図5を用いて、後方物体検出部2aの配置を詳細に説明する。
図5Aは、本発明の第1の実施形態である後退支援装置に用いられる後方物体検出部2aの配置を説明するためのダンプトラックの側面図である。
図5Bは、後方物体検出部2aの配置を説明するためのダンプトラックの上面図(模式図)である。
【0045】
本実施形態では、従動輪50からの泥の跳ね上げが後方物体検出部2(2a、2b)の検出窓に付着するのを防ぐために、
図5Aに示すように配置される。すなわち、後方物体検出部2aは、従動輪50の車軸50S方向から見たときに、車軸50の上方に設置される。つまり、後方物体検出部2aは、鉛直方向に対して、従動輪の上方に配置される。
【0046】
詳細には、後方物体検出部2aの鉛直方向の位置は、地面を基準にしたときに、従動輪50の高さ(直径)より大きく、ダンプトラックの高さ(ベッセルの上端の高さ)よりも小さい。
【0047】
また、
図5Bのハッチングで示すように、ダンプトラック1000を上から見たときに、左右への最大操舵時における従動輪50の外側端面の2つの延長面(50F
R、50F
L)がなす領域に後方物体検出部2を設置する。換言すれば、後方物体検出部2は、右旋回最大操舵角に対応するダンプトラック1000の従動輪50の外側端面と左旋回最大操舵角に対応する前記運搬機械の従動輪の外側端面とによって挟まれた領域に配置される。
【0048】
ただし、ダンプトラック1000がほとんど直進しかせず、旋回時は低速で走行するといった場合には、
図5Bに示すように、従動輪車軸から車輪径の範囲Wに後方物体検出部2を設置してもよい。すなわち、後方物体検出部2は、前記車軸50Sを含む鉛直面からの距離が前記従動輪半径Rより小さい位置に配置される。
【0049】
ここで、
図5Bの例では、ダンプトラック1000が直進するときの操舵角に対応する従動輪50の外側端面から車軸50Sの軸方向外側に所定距離d1だけ離れた位置にダンプトラック1000の側面1000Sがある。後方物体検出部2は、この側面1000S上に配置される。すなわち、後方物体検出部2は、水平面の車軸50Sの方向に対して、従動輪50の外側に配置される。
【0050】
なお、後方物体検出部2a、2bは、土埃、水滴、雪などの汚れが後方物体検出部2a、2bの検出窓5a、5bに直接付着するのを防ぐために、防塵カバー6で覆ってもよい。
【0051】
以上説明したように、後方物体検出部2を従動輪50の上の所定位置に配置することにより、従動輪50からの泥の跳ね上げが後方物体検出部2(2a、2b)の検出窓に付着するのを防ぐことができる。これにより、車止め101の未検出を防止することができる。
【0052】
次に、
図6を用いて、後方物体検出部2をダンプトラック1000の後部に配置した比較例を説明する。
図6Aは、後方物体検出部2をダンプトラック1000の後部に配置した比較例としてのダンプトラック1000の側面図である。
図6Bは、土埃22が撒きあがる状態を示す比較例としてのダンプトラック1000の側面図である。
図6Cは、
図6Bを上から見た比較例としてのダンプトラック1000の上面図である。
【0053】
ダンプトラック1000の走行路面が乾いた土の場合、タイヤの回転によって土埃が撒きあがり、後退時のブレーキ操作や風向きなどの影響で土埃がダンプトラック1000の周囲に漂うことがある。また、他車両による放土作業によって、ダンプトラック1000の後方に土埃が舞い上がることがある。
【0054】
図6Bに、ダンプトラック1000の周辺に土埃22が漂う様子を模式的に示す。このような状況になった場合、
図6Aに示すように、ダンプトラック1000の後部に後方物体検出部2を設置すると、後方物体検出部2の検出面が汚れ、車止め101までの距離を正しく測定できないことがある。
【0055】
これに対し、本発明の実施形態では、
図5(5A、5B)に示すように、大型ダンプトラック1000のデッキ側面など、後輪から離れた従動輪付近に後方物体検出部2を取り付ける。これにより、舞いあがった土埃が後方物体検出部2の検出窓に付着する頻度を抑えることができる。
【0056】
次に、
図7を用いて、後退支援装置100による後方検出を説明する。
図7Aは、本発明の第1の実施形態である後退支援装置100による後方検出を説明するための模式図(ダンプトラックの側面図)である。
図7Bは、本発明の第1の実施形態である後退支援装置100による後方検出を説明するための模式図(ダンプトラックの上面図)である。
図7(7A、7B)では、鉱山用ダンプトラック1000が放土場の車止め101を検出しながら後退する様子を示す。
【0057】
図7Aの点線矢印は、レーザスキャナで後方物体検出部2a、2bを構成した場合に、車止め計測装置102によって求められる距離Dを示したものである。
【0058】
次に、
図8を用いて、後退支援装置100の動作を説明する。
図8は、本発明の第1の実施形態である後退支援装置100の処理を示すフロー図である。
図8のステップS201からS208はフローの各処理ブロックを示す。
【0059】
後退支援装置100は、車止めを検出した場合(ステップS201;YES)、以下の処理を実行する。
【0060】
車止め計測装置102は、後方物体検出部2a、2bにより取得した結果に基づき左右の車輪から車止めまでの距離D
L、D
Rを算出し、さらに、D
L、D
Rのうち小さいほうをダンプトラック1000までの距離Dとして得る(ステップS202)。また、車止め計測装置102は、車止めからみたダンプトラック1000の向きαを、2a、2bのレーザ照射面間の距離Lを用いて、次の式(1)で計算する(ステップS202)。ただし、αは
図7Bにおいて、反時計まわりを正とした。ここで、αは、車止め101の長手方向(水平方向)に垂直な面S1とダンプトラック1000の従動輪50の車軸50Sに垂直な面S2とがなす角度を示す運搬機械角度である。
【0062】
車止め計測装置102は、ステップS202で得られた向きαが、ある閾値K
α以上であるか否かを判別する(ステップS203)。そして、ステップS202で得られた向きαが、ある閾値K
α以上の場合には(ステップS203;YES)、ダンプトラック1000が車止めに対して斜めに後退していることを表しているため、速度調整装置106は、ダンプトラック1000の速度を制限する(ステップS205)。これにより、ダンプトラック1000の向きを修正する時間的余裕が確保される。
【0063】
ステップS202で得られた向きαが、ある閾値K
αよりも小さい場合には(ステップS203;NO)、車止め計測装置102は、ステップS202で得られた距離Dがある閾値K
D以下であるか否かを判別する(ステップS204)。
【0064】
S202で得られた距離Dが、ある閾値K
D以下である場合(ステップS204;YES)、ダンプトラック1000が車止めに対して接近していることを表しているため、速度調整装置106は、ダンプトラック1000の速度を制限する(ステップS206)。これにより、ダンプトラック1000を安全に停止できる。
【0065】
車止め計測装置102は、ステップS202で得られた距離Dが目標距離k以下であるか否かを判別する(ステップS207)。ここで、目標距離kは閾値K
Dよりも小さい。
【0066】
ダンプトラック1000がさらに車止めに近づき、ステップS202で得られた距離Dが目標距離k以下となった場合(ステップS207;)、速度調整装置106は、ダンプトラック1000を停止させ(ステップS208)、処理を終了する。
【0067】
次に、
図9〜
図10を用いて、後方物体検出部2(2a、2b)の検出窓の汚れ状態を推定する方法を説明する。以下では、ダンプトラック1000やその他の機械の動作によって撒きあがった土煙によって後方物体検出部2の検出窓が次第に汚れるものとする。
【0068】
図9Aは、レーザスキャナ(後方物体検出部2)の検出窓53がきれいな場合の測定結果の一例として、本発明の第1の実施形態である後退支援装置100に用いられるレーザスキャナの走査によって得られる測定距離を示す図である。
【0069】
図9Bは、レーザスキャナ(後方物体検出部2)の検出窓53が汚れた場合の測定結果の一例として、本発明の第1の実施形態である後退支援装置100に用いられるレーザスキャナの走査によって得られる測定距離を示す図である。
【0070】
図9(9A、9B)では、縦軸は、測定距離Tを示し、横軸は走査角度θを示す。
図9(9A、9B)では、レーザスキャナ正面でTs=3.2mとなる位置に、板幅85cmの板を基準物52として設置し、角度範囲85°から100°まで走査して得られた測定距離Tを示している。
【0071】
図9Aでは、基準物52までの測定距離は平均3.2mであり、設置した基準物52までのTs=3.2mを正しく検出できている。
【0072】
一方、
図9Bでは、レーザスキャナの検出窓53の汚れにより測定距離Tに異常が見られる。具体的には、グラフの平坦部分52bにおいて、測定距離Tは、平均3.0mでありTs=3.2mの値より短い。また、グラフの変化部分52cにおいて、全く板を検出できずに測定距離がT=0mとなってしまう部分も発生している。
【0073】
本実施形態では、以下で説明するように、この測定距離Tの測定偏差を利用して、レーザスキャナの検出窓53の汚れ状態を推定する。
【0074】
図10は、本発明の第1の実施形態である後退支援装置100による汚れ状態の判定フロー図である。
図10のステップS300からS309はフローの各処理ブロックを示す。
【0075】
まず、汚れ状態推定部7は、レーザスキャナから基準物52までの設置距離Tsを取得する(ステップS300)。例えば、汚れ状態推定部7は、所定の入力装置により入力され、所定の記憶装置に記憶された設置距離Tsを読み出して取得する。
【0076】
計測性能監視装置103は、走査角度θiをθstartに設定し、レーザスキャナの走査を開始させる(ステップS301)。
【0077】
計測性能監視装置103は、走査角度θiでの測定距離Tiを取得する(ステップS302)。計測性能監視装置103は、TiとTsの偏差を求め、第1の判定閾値Aと比較する。詳細には、計測性能監視装置103は、TiとTsの差の絶対値が、閾値Aより小さいか否かを判別する(ステップS303)。
【0078】
計測性能監視装置103は、TiとTsの偏差が閾値A以上の場合(ステップS303;YES)、
図9Bの52cに例示したような異常状態が発生したと判断し、速度調整装置106は、車両を停止させる(ステップS308)。計測性能監視装置103は、無線通信装置104を介して、異常状態が発生したことを管制局200の報知装置201に通知する(ステップS309)。報知装置201は、その通知に応答して、表示部に後方物体検出部2が汚れており、車止め101の未検出の恐れがある旨を表示部に表示する。
【0079】
一方、TiとTsの偏差が閾値Aより小さい場合(ステップS303;YES)、計測性能監視装置103は、ステップS304へ進む。計測性能監視装置103は、走査角度θiが走査終了角度θendに到達したかどうかを判定する(ステップS304)。
【0080】
計測性能監視装置103は、走査終了角度θendに未到達の場合(ステップS304;NO)、走査角度θiにΔθを加えた角度を新しい走査角度θiに設定し(ステップS305)、ステップS302から処理を繰り返す。
【0081】
一方、ステップS304で走査終了角度θendに到達した場合(ステップS304;YES)、計測性能監視装置103は、取得した全てのTiを平均した平均距離Taveを求める(ステップS306)。計測性能監視装置103は、TaveとTsの偏差を求め、第2の判定閾値Bと比較する。詳細には、計測性能監視装置103は、TaveとTsの差の絶対値が、閾値Bより小さいか否かを判別する(ステップS307)。
【0082】
計測性能監視装置103は、TaveとTsの偏差が閾値B以上の場合(ステップS307;NO)、
図9Bに例示したグラフの平坦部分52bように、測定距離TがTsからずれ始めている状態にあると判断し、速度調整装置106は、走行速度を制限する(ステップS310)。ここで、閾値Bは閾値Aより小さい。
【0083】
一方、計測性能監視装置103は、ステップS307でTaveとTsの偏差が閾値Bより小さい場合(ステップS307;YES)、正常状態であると判断する。
【0084】
以上説明したように、本実施形態によれば、後方物体検出部2a、2bとしてのレーザスキャナの検出窓53の汚れ状態を判定し、その判定結果に基づいて、車止め101の未検出の恐れがあることを報知することができる。報知があったときに、ユーザがレーザスキャナの検出窓53を清掃したり交換したりする等のメンテナンスを行うことにより、車止めの未検出を防止することができる。
【0085】
(第2の実施形態)
次に、
図11〜
図13を用いて、本発明の第2の実施形態である後退支援装置100の構成及び動作を説明する。
【0086】
最初に、
図11(11A、11B)を用いて、車止め101を検出する方法を説明する。
図11Aは、本発明の第1の実施形態である後退支援装置に用いられる後方物体検出部2a、2bとしてのレーザスキャナの走査を示す図である。
図11Bは、
図11Aに示すように走査した場合における、後方物体検出部2a、2bとしてのレーザスキャナの反射光の強度を示す図である。
図11Bでは、縦軸は、レーザスキャナの反射光の強度を示し、横軸は、レーザスキャナからの距離を示す。
【0087】
本実施形態では、
図11Aに示すように、車止め201は、傾斜部101aを有する。レーザスキャナの反射光の強度は、
図11Bに示すように、車止め101の検出位置で変化する。車止め計測装置102は、レーザスキャナの反射光の強度の変化から車止めの位置を検出する。
【0088】
次に、
図12を用いて、車止め検出を行う方法を説明する。
図12は、車止め101の付近に土埃22が撒きあがった場合でも、本発明の第1の実施形態である後退支援装置100がロバストに車止め検出を行う方法を説明するための図である。
【0089】
図12(B)は、後方物体検出部2(2a、2b)による検出面107による運搬機械走行面108の断面Xにおける高さの変化のプロファイルPのグラフを表す。
【0090】
グラフの横軸は、検出面107での水平方向位置、縦軸は鉛直方向高さを示している。後方検出装置2は、この高さの変化のプロファイルPから、例えば高さが徐々に増加しているB
Pの部分を車止め101として検出できるように構成されている。
【0091】
また、後方検出装置2は、プロファイルPの高さの変化がほとんどないか十分小さいC
Pの部分を運搬機械走行面108とし、車止め101と運搬機械走行面108との境界、つまり、プロファイルPが大きく変化する位置D
Pを車止め境界109として検出できるように構成されている。
【0092】
ここで、土埃22の発生により、プロファイルPには、EPのような計測点が生じる場合がある。このとき、B
P部の傾きや形状マッチング等でD
Pを検出することが困難となる。特にダンプトラック1000が大きく、後方物体検出部2から車止め101までの距離が離れている場合には、プロファイルPの計測点が疎となり、車止め101の未検出率や誤検出率が高くなる。
【0093】
次に、
図13を用いて、車止め101の傾斜部101aの角度βを算出する方法を説明する。
図13は、本発明の第1の実施形態である後退支援装置100に用いられる後方物体検出部2と車止め100の傾斜部101aの位置関係を示すダンプトラック1000の側面図である。
【0094】
図13に示すように、ダンプトラック1000が車止めを検出して停車すべき位置における、後方物体検出部2の設置高さHと後方物体検出部2と車止め検出位置D
Pとの距離Vとを用いて、車止め101の傾斜部101aの角度βを、下記の式(2)に従って決定する。すなわち、後方物体検出部2は、ダンプトラックが車止め101の位置で停止した状態において、後方物体検出部2による検出面107と傾斜部101aとの交線と、後方物体検出部2から走行面側の前記交線の一端へ引いた直線とが垂直になるように配置される。
【0096】
さらに、後方物体検出部2によって距離だけでなく反射強度を同時に計測し、例えば、反射強度の急に変化する部分をもって車止め検出位置D
Pを検出する。
【0097】
以上のようにしてD
Pを検出すれば、車止め101の傾斜部101aが後方物体検出部2に対して垂直に近くなり、さらに、土煙22反射強度がB
P部に比較して弱いため、
図12(C)のように、D
Pの検出が容易となる。
【0098】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施例は本発明を分かりやすく説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0099】
上記第1の実施形態では、報知装置201は、管制局200に配置されているが、ダンプトラック1000に配置されていてもよい。
【0100】
上記第1及び第2の実施形態では、後方物体検出部2としてレーザスキャナ(レーザレンジスキャナ)を用いたが、後方物体検出部2は、ダンプトラック1000の後方にある物までの距離を測定できるものであれば何でもよい。例えば、後方物体検出部2は、電磁波、超音波などを用いて距離を測定してもよい。さらに、測定方式の異なる後方物体検出部2を組み合わせてもよい。
【0101】
上記第1及び第2の実施例では、基準物52は、ダンプトラック1000の側面上(ベッセルの側面)に取り付けられているが、地面(走行面)に置くようにしてもよい。