特許第6284745号(P6284745)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284745
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】歯磨剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/25 20060101AFI20180215BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20180215BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   A61K8/25
   A61K8/73
   A61Q11/00
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-229211(P2013-229211)
(22)【出願日】2013年11月5日
(65)【公開番号】特開2015-89873(P2015-89873A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2016年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】村上 義徳
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−126421(JP,A)
【文献】 特開2002−226347(JP,A)
【文献】 特開平11−199455(JP,A)
【文献】 特開2015−010044(JP,A)
【文献】 特開平04−243816(JP,A)
【文献】 特開平01−299211(JP,A)
【文献】 特開2011−121916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径が45μm以上であって、次の顆粒(a1)〜(a6):
(a1)粒径が45μm以上63μm未満の顆粒
(a2)粒径が63μm以上90μm未満の顆粒 10体積%以上18体積%以下
(a3)粒径が90μm以上125μm未満の顆粒
(a4)粒径125μm以上150μm未満の顆粒
(a5)粒径150μm以上180μm未満の顆粒
(a6)粒径180μm以上の顆粒 20体積%以上52体積%以下
からなる顆粒(A)であって、
顆粒(a2)、顆粒(a3)及び顆粒(a4)の合計の含有量が40体積%以上であり、顆粒(a2)、顆粒(a3)及び顆粒(a4)の含有量の合計と、顆粒(a6)の含有量との体積比((a2+a3+a4)/a6)が以上2以下であり、顆粒(a2)及び顆粒(a3)の含有量の体積比(a2/a3)が0.5以上2以下であり、顆粒(a4)及び顆粒(a3)の含有量の体積比(a4/a3)が0.5以上2以下であり、かつ顆粒の崩壊強度が0.1g/個以上15g/個以下である顆粒(A)を2質量%以上40質量%以下含有する歯磨剤。
【請求項2】
顆粒(a3)の含有量が、顆粒(A)中に8体積%以上25体積%以下である請求項1に記載の歯磨剤。
【請求項3】
顆粒(a5)及び顆粒(a3)の含有量の体積比(a5/a3)が0.4以上1.5以下である請求項1又は2に記載の歯磨剤。
【請求項4】
顆粒(a1)の含有量が、5体積%以上18体積%以下である請求項1〜のいずれか1項に記載の歯磨剤。
【請求項5】
顆粒(a2)、顆粒(a3)及び顆粒(a4)の含有量の合計と、顆粒(a5)の含有量との体積比((a2+a3+a4)/a5)が、2.5以上7以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の歯磨剤。
【請求項6】
顆粒(a2)、顆粒(a3)、顆粒(a4)及び顆粒(a5)の含有量の合計と、顆粒(a6)の含有量との体積比((a2+a3+a4+a5)/a6)が、0.8以上2.5以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の歯磨剤
【請求項7】
顆粒(a4)の含有量が、顆粒(A)中に10体積%以上18体積%以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の歯磨剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯磨剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、歯磨剤に顆粒を配合することによって、歯の表面や歯と歯の間の汚れ除去能を高められることが知られており、種々の顆粒が用いられている。例えば、特許文献1には、崩壊強度が10〜200g/個、平均粒子径が50〜150μmで、かつ90%粒子径と平均粒子径の差が100μm以下である顆粒を含有する歯磨組成物が記載されている。また、特許文献2には、平均粒径が100〜500μmで崩壊強度が0.1〜10g/個である顆粒と、平均粒径が20〜200μmで崩壊強度が10〜50g/個である顆粒の2種類の顆粒を含有する口腔用組成物が記載されており、特許文献3にも、粒径の異なる3種類の顆粒を含有する歯磨剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2006/003989号
【特許文献2】特開平4−243816号公報
【特許文献3】特開2007−126421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうしたなか、近年における食生活や生活習慣等の変化に伴い、口腔内環境の悪化を引き起こす要因も増大しつつあるため、周波条、近心唇面溝、中央隆線及び遠心唇面溝部等、大小様々な凹凸が散在する歯の表面において多種多様の汚れが堅固に付着し、残存しやすい状況下にある。残存した歯の汚れは着色の原因にもなり得るため、口腔内環境を清潔にしつつ白く美しい歯を保つうえで、歯の汚れを十分に除去し得る歯磨剤が益々強く望まれている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された顆粒は、比較的硬い上に一定の平均粒径において粒径分布がシャープであるため、通常の歯磨き時間では、歯の表面の一部に着色汚れが十分に取り除かれずに付着したままとなる。また、特許文献2や特許文献3に記載されるように、粒径や崩壊強度の異なる複数の顆粒を併用した歯磨剤を用いたとしても、僅かな黄ばみがクマのように残存する傾向にある。こうした通常の歯磨き行為によっては取り除かれることなく残存する黄ばみ等の着色汚れは、歯磨き後もなお歯に黄ばみが残っている印象を与えるという課題があった。クマのように僅かに残存するこれらの黄ばみは、見落とされがちであったところ、本発明者らにより、主として歯ブラシの毛先のサイズ、或いは歯磨剤に含まれる清掃剤(研磨性紛体)等のサイズでは十分に対応し得ないことが要因となって、歯の表面において特定の大きさを有する凹部に汚れが付着したままとなることに起因すると判明した。また、これらの黄ばみは、顆粒を含有する歯磨剤であっても、必ずしも十分に除去しきれず、歯磨き後もなお汚れが付着したままとなることも判明した。
【0006】
したがって、本発明は、歯の表面に存在する凹凸の大きさに左右されることなく、歯に付着した歯垢や着色汚れ等の汚れを効果的に除去することのできる歯磨剤に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者らは、特定の粒径範囲にある顆粒が特定の体積比を満たす含有量で存在する顆粒、すなわち特定の粒度分布を有する顆粒であって、特定の崩壊強度を有する顆粒を含有することにより、歯の表面において特に除去することが困難であった特定の大きさを有する凹部に付着した汚れのみならず、歯と歯の間や周波条、近心唇面溝、中央隆線及び遠心唇面溝部等をも含む大小様々な微小な凹凸部が多々存在する歯の全域にわたって、歯垢や着色汚れ等の汚れを十分に除去することのできる歯磨剤が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、粒径が45μm以上であって、次の顆粒(a1)〜(a6):
(a1)粒径が45μm以上63μm未満の顆粒
(a2)粒径が63μm以上90μm未満の顆粒
(a3)粒径が90μm以上125μm未満の顆粒
(a4)粒径125μm以上150μm未満の顆粒
(a5)粒径150μm以上180μm未満の顆粒
(a6)粒径180μm以上の顆粒
からなる顆粒(A)であって、
顆粒(a2)、顆粒(a3)及び顆粒(a4)の含有量の合計と、顆粒(a6)の含有量との体積比((a2+a3+a4)/a6)が0.5以上2以下であり、顆粒(a2)及び顆粒(a3)の含有量の体積比(a2/a3)が0.5以上2以下であり、顆粒(a4)及び顆粒(a3)の含有量の質量比(a4/a3)が0.5以上2以下であり、かつ顆粒の崩壊強度が0.1g/個以上15g/個以下である顆粒(A)を2質量%以上40質量%以下含有する歯磨剤に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の歯磨剤によれば、従来の歯磨剤では取り除くことが困難であった、歯の表面における特定の大きさを有する凹部に付着した汚れをも十分に除去することができる。したがって、歯と歯の間のみならず大小様々な凹凸が散在する歯の表面全域にわたり、優れた除去効果を発揮することができ、歯の一部の表面に残存しがちであった着色汚れをも有効に防止することが可能であり、優れた清掃感をもたらすこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】調製例1〜3で得られた顆粒A−1、A−4〜A−7の粒度分布を示すグラフである。
図2】評価試験1−1における評価での実施例1の歯を示す写真である。
図3】評価試験1−1における評価での比較例1の歯を示す写真である。
図4】評価試験1−2において、実施例1及び比較例2について求めた汚れ除去面積を示すグラフである。
図5】評価試験1−2における評価での実施例1の歯を示す写真である。
図6】評価試験1−2における評価での比較例1の歯を示す写真である。
図7】歯の凹凸をマイクロスコープ(ワンショット3D、キーエンス社製)で測定した実際の歯の凹凸を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の歯磨剤は、粒径が45μm以上であって、次の顆粒(a1)〜(a6):
(a1)粒径が45μm以上63μm未満の顆粒
(a2)粒径が63μm以上90μm未満の顆粒
(a3)粒径が90μm以上125μm未満の顆粒
(a4)粒径が125μm以上150μm未満の顆粒
(a5)粒径が150μm以上180μm未満の顆粒
(a6)粒径が180μm以上の顆粒
からなる顆粒(A)であって、顆粒(a2)、顆粒(a3)、顆粒(a4)の含有量の合計と、顆粒(a6)の含有量との体積比((a2+a3+a4)/a6)が0.5以上2以下であり、顆粒(a2)及び顆粒(a3)の含有量の体積比(a2/a3)が0.5以上2以下であり、顆粒(a4)及び顆粒(a3)の含有量の質量比(a4/a3)が0.5以上2以下であり、かつ顆粒の崩壊強度が0.1g/個以上15g/個以下である顆粒(A)を2質量%以上40質量%以下含有することにより、従来の顆粒を含有する歯磨剤では十分に除去し得なった歯の表面における特定の大きさを有する凹部、具体的には、例えば幅が20μm以上100μm以下の凹部にも有効に侵入して付着する汚れを有効に除去することができ、着色汚れが沈着するのを未然に防止することができる。なお、通常歯ブラシのブリッスル先端の径が約200μmであり、歯磨剤に含有される紛体の研磨剤の平均粒径が5〜13μmであることから、歯の表面における幅が20μm以上100μm以下の凹部には、ブリッスルの先端は侵入しえず、紛体の研磨剤もこれらの凹部に届きにくく、或いは歯表面との間で摩擦力を高め得ないことが主たる要因となって、幅が20μm以上100μm以下の凹部に汚れが残存しがちであったことに本発明者らが着目し、本発明の歯磨剤を見出すに至ったのである。
また、従来の歯磨剤でも、わずかに黄ばんだ部分があっても歯の表面が滑らかである感触(清掃感)は得られてはいたが、歯磨き後において、黄ばみとして感じられる極わずかに残る汚れを中心に汚れが沈着してしまうのを十分に回避できない傾向にあった。しかしながら、本発明の歯磨剤であれば、極わずかに残る黄ばみまでをも有効に除去できるので、汚れの沈着を効果的に防止することが可能である。すなわち、人の舌で感じることのできる20μm程度の凹凸に付着した汚れまでをも効果的に除去できるので、歯磨き直後においては、今まで感じることのできない極めて滑らかな歯の表面の感触ながら、その後も長時間にわたり歯の表面が滑らかである感触を有効に持続させることが可能となる。
【0012】
顆粒(A)は、全ての粒子の粒径が45μm以上であって、顆粒(a1)〜(a6)からなり、これらの顆粒が特定の含有量を保持している。すなわち、本発明の歯磨剤が含有する顆粒(A)は、特定の粒度分布を有している。具体的には、顆粒(a2)、顆粒(a3)及び顆粒(a4)の含有量の合計と、顆粒(a6)の含有量との体積比((a2+a3+a4)/a6)が0.5以上2以下であり、顆粒(a2)及び顆粒(a3)の含有量の体積比(a2/a3)が0.5以上2以下であり、顆粒(a4)及び顆粒(a3)の含有量の体積比(a4/a3)が0.5以上2以下である。このような顆粒(A)の粒度分布は、幅100μm以下の凹部の汚れ除去に有効な大きさである粒径が63μm以上150μm未満の顆粒の含有量と、歯ブラシのブリッスルの応力を顆粒に伝えるのに有効な、粒径が180μm以上の顆粒の含有量は、体積比が0.5以上2以下(1:2〜2:1)であり、すなわちこれらの顆粒を同程度の量で含み、しかも粒径が63μm以上180μm未満の範囲でブロードなピークを有することになる。
【0013】
これにより、本発明の歯磨剤中には、粒径が63μm以上150μm未満である顆粒(a2)〜(a4)が適度な量で存在しつつ、粒径45μm以上63μm未満である小さな顆粒(a1)も混在する上、粒径が150μm以上180μm未満の顆粒(a5)及び粒径が180μm以上の大きな顆粒(a6)も存在することとなり、後述するように、顆粒が特定の崩壊強度を有することとも相まって、歯の表面における幅20μm以上100μm以下の凹部に付着した取り除きにくい汚れをも有効に除去しつつ、歯と歯の間や周波条、近心唇面溝、中央隆線及び遠心唇面溝部等をも含む大小様々な凹凸部が多々存在する歯の全域にわたり、すなわち、ブリッスルが届きにくく、清掃しにくい大きさの、極めて微細な凹部から大きな凹部に至るまで付着汚れを効果的に除去することができ、従来の顆粒を含有する歯磨剤よりも、歯を舌で触れたときに極めて滑らかな感触が得られ、歯磨き後、長時間にわたりかかる滑らかな感触を持続することを可能とする、優れた清掃感をもたらすことができる。
【0014】
顆粒(A)は、粒径180μm以上の大きさの顆粒(a6)を含有する。顆粒(a6)の含有量は、歯磨きの際における歯ブラシのブリッスルからの応力を顆粒に伝えやすくする観点から、顆粒(A)中に、好ましくは20体積%以上であり、より好ましくは25体積%以上であって、さらに好ましくは30体積%以上であり、かつ通常の歯磨きでは除去しにくい幅20μm以上100μm以下の凹部に付着した取り除きにくい汚れも有効に除去する観点から、好ましくは52体積%以下であり、より好ましくは50体積%以下であり、さらに好ましくは45体積%以下である。また、顆粒(a6)の含有量は、顆粒(A)中に、好ましくは20〜52体積%であり、より好ましくは25〜50体積%であり、さらに好ましくは30〜45体積%である。
【0015】
顆粒(a1)の含有量は、より大きな粒径の顆粒(a2)〜(a6)との相互作用により、歯の表面における極めて微細な凹部に付着した汚れをも効果的に除去し、舌で触れた場合に極めて滑らかな感触を得て、かかる感触を維持する観点から、顆粒(A)中に、好ましくは5体積%以上であり、より好ましくは7体積%以上である。顆粒(a1)の含有量は、顆粒(a2)〜(a6)の含有量とのバランスを良好に保持して、極めて微細な凹部、好適には幅20μm以上60μm以下の凹部の清掃のみならず、顆粒(a2)〜(a6)と絡みながら、やや大きな凹部に至るまで歯の表面における凹凸の付着汚れを有効に除去する観点から、顆粒(A)中に、好ましくは18体積%以下であり、より好ましくは15体積%以下であり、さらに好ましくは12体積%以下である。また、顆粒(a1)の含有量は、顆粒(A)中に、好ましくは5〜18体積%であり、より好ましくは7〜15体積%であり、さらに好ましくは7〜12体積%である。
【0016】
顆粒(a2)の含有量は、幅60μm以下の凹部、好適には幅40μm以上の凹部に付着した汚れを効果的に除去し、堅固に付着する着色汚れをも有効に防止する観点から、顆粒(A)中に、好ましくは7体積%以上であり、より好ましくは9体積%以上であり、さらに好ましくは10体積%以上である。顆粒(a2)の含有量は、顆粒(a1)及び顆粒(a3)〜(a6)の含有量とのバランスを良好に保持して、極めて微細な凹部から幅60μm以下の凹部に至るまで、歯の表面における凹凸の付着汚れを有効に除去する観点から、顆粒(A)中に、好ましくは25体積%以下であり、より好ましくは20体積%以下であり、さらに好ましくは18体積%以下である。また、顆粒(a2)の含有量は、顆粒(A)中に、好ましくは7〜25体積%であり、より好ましくは9〜20体積%であり、さらに好ましくは10〜18体積%である
【0017】
顆粒(a3)の含有量は、従来の歯磨剤では十分に除去し得なかった幅100μm以下の凹部、より好ましくは幅50μm以上の凹部に付着した汚れを効果的に除去し、堅固に付着する着色汚れをも有効に防止し、歯磨き後のわずかな黄ばみをも低減する観点から、顆粒(A)中に、好ましくは8体積%以上であり、より好ましくは9体積%以上であり、さらに好ましくは10体積%以上である。顆粒(a3)の含有量は、顆粒(a2)及び顆粒(a4)の含有量と特定の体積比を保持し、極めて微細な凹部から幅80μm以下の凹部に至るまで、歯の表面における凹凸の付着汚れを有効に除去する観点から、顆粒(A)中に、好ましくは25体積%以下であり、より好ましくは20体積%以下であり、さらに好ましくは18体積%以下である。また、顆粒(a3)の含有量は、顆粒(A)中に、好ましくは8〜25体積%であり、より好ましくは9〜20体積%であり、さらに好ましくは10〜18体積%である。
【0018】
顆粒(a2)の含有量と顆粒(a3)の含有量の体積比(a2/a3)は、歯の表面に多く存在する極めて微細な凹部から幅80μm以下の凹部に付着した汚れまで効果的に除去し、さらに唇面溝等に存在する微細でありながら深い凹部に付着した汚れをも除去し、歯磨き後の歯全体がきわめて白くなったという印象を得る観点から、0.5以上であって、好ましくは0.7以上であり、2以下であって、好ましくは1.8以下であり、より好ましくは1.6以下である。また、顆粒(a2)の含有量と顆粒(a3)の含有量の体積比(a2/a3)は、0.5以上2以下であって、好ましくは0.7〜1.8であり、より好ましくは0.7〜1.6である。このように顆粒(a2)の含有量と顆粒(a3)の含有量は、体積比が1:2〜2:1であって、これらの顆粒が同程度の量であることにより、歯磨き後に歯の表面の黄ばみまでもが除去された印象を得ることができる。
なお、前述した微細でありながら深い凹部とは、凹部の大きさが幅に比べて深い凹部をいい、かかる深い凹部には、凹部の幅よりやや大きな粒径の顆粒と、これらの粒径より大きい顆粒や小さい顆粒がバランスよく存在することによって、凹部に顆粒が侵入し、凹部に付着した汚れを除去することができる。
【0019】
顆粒(a4)の含有量は、従来の歯磨剤では十分に除去し得なかった幅120μm以下の凹部、より好適には幅100μm以下の凹部、さらに好適には幅70μm以上の凹部に付着した汚れを効果的に除去し、堅固に付着する着色汚れをも有効に防止する観点から、顆粒(A)中に、好ましくは7体積%以上であり、より好ましくは10体積%以上であり、さらに好ましくは12体積%以上である。顆粒(a4)の含有量は、顆粒(a3)及び顆粒(a2)の含有量とのバランスを良好に保持して、幅120μm以下の凹部に至るまで、歯の表面における凹凸の付着汚れを有効に除去する観点から、顆粒(A)中に、好ましくは25体積%以下であり、より好ましくは20体積%以下であり、さらに好ましくは18体積%以下である。また、顆粒(a4)の含有量は、顆粒(A)中に、好ましくは7〜25体積%であり、より好ましくは10〜20体積%であり、さらに好ましくは12〜18体積%である。
【0020】
顆粒(a4)の含有量と顆粒(a3)の含有量の体積比(a4/a3)は、歯の表面に多く存在し、紛体である研磨剤や歯ブラシによる清掃が困難である幅120μm以下の凹部に付着した汚れを効果的に除去し、唇面溝等に存在する幅120μm以下であって微細でありながら深い凹部に付着した汚れを効果的に除去し、歯磨き後の歯全体がきわめて白くなったという印象を得る観点から、0.5以上であって、好ましくは0.6以上であり、より好ましくは0.7以上であり、2以下であって、好ましくは1.8以下であり、より好ましくは1.6以下である。また、顆粒(a4)の含有量と顆粒(a3)の含有量の体積比(a4/a3)は、0.5以上2以下であって、好ましくは0.6〜1.8であり、より好ましくは0.7〜1.6である。このように、顆粒(a4)の含有量と顆粒(a3)の含有量は、体積比が1:2〜2:1であって、同程度の量であることにより、歯磨き後に歯の表面の黄ばみまでもが除去された印象を得ることができる。
【0021】
顆粒(a5)の含有量は、顆粒(a6)と共に歯磨きの際の歯ブラシのブリッスルからの応力を顆粒(a2)〜(a4)に伝えやすくする観点から、顆粒(A)中に、好ましくは2体積%以上であり、より好ましくは5体積%以上であり、さらに好ましくは8体積%以上である。顆粒(a5)の含有量は、通常の歯磨きでは除去しにくい幅20μm以上100μm以下の凹部に付着した取り除きにくい汚れも有効に除去する観点から、顆粒(A)中に、好ましくは20体積%以下であり、より好ましくは15体積%以下である。また、顆粒(a5)の含有量は、顆粒(A)中に、好ましくは2〜20体積%であり、より好ましくは5〜15体積%であり、さらに好ましくは8〜15体積%である。
【0022】
顆粒(a5)の含有量と顆粒(a3)の含有量の体積比(a5/a3)は、歯の表面に多く存在し、紛体である研磨剤や歯ブラシによる清掃が困難である幅120μm以下の凹部に付着した汚れを効果的に除去し、唇面溝等に存在する幅120μm以下であって微細でありながら深い凹部に付着した汚れを効果的に除去し、歯磨き後の歯全体がきわめて白くなったという印象を得る観点から、好ましくは0.4以上であり、より好ましくは0.5以上であり、さらに好ましくは0.7以上であり、好ましくは1.5以下であり、より好ましくは1以下であり、さらに好ましくは0.9以下である。また、顆粒(a5)の含有量と顆粒(a3)の含有量の体積比(a5/a3)は、好ましくは0.4〜1.5であり、より好ましくは0.5〜1であり、さらに好ましくは0.7〜0.9である。このように顆粒(a5)の含有量が顆粒(a3)の含有量と同程度、好ましくはやや少ないことにより、即ち、顆粒(a2)〜(a4)の各含有量が顆粒(a5)の含有量と同程度又はやや少ないことにより、歯磨き後に歯の表面の黄ばみまでもが除去された印象を得ることができる。
【0023】
本発明の歯磨剤において、顆粒(a2)、顆粒(a3)及び顆粒(a4)の含有量の合計と、顆粒(a6)の含有量との体積比((a2+a3+a4)/a6)は0.5以上2以下である。顆粒(a2)〜(a4)及び(a6)が、かかる体積比であることにより、歯ブラシのブリッスルの応力を伝達する粒径が180μm以上の顆粒(a6)と、100μm以下の凹部へ押込みやすい大きさの顆粒(a2)、顆粒(a3)及び顆粒(a4)とが相まって、歯の表面における幅20μm以上100μm以下の凹部に付着した微細な汚れを効果的に除去することができる。かかる観点から、顆粒(a2)、顆粒(a3)及び顆粒(a4)の含有量の合計と、顆粒(a6)の含有量とが、体積比1:2〜2:1であって、これら顆粒(a2)、顆粒(a3)及び顆粒(a4)の含有量の合計と顆粒(a6)の含有量とが同程度の量であるか、顆粒(a2)〜(a4)の含有量の合計量が多いことが好ましく、体積比((a2+a3+a4)/a6)は、好ましくは0.7以上であり、より好ましくは1以上であり、好ましくは1.8以下であり、より好ましくは1.5以下である。また、体積比((a2+a3+a4)/a6)は、0.5以上2以下であって、好ましくは0.7〜1.8であり、より好ましくは1〜1.5である。
さらに、顆粒(a2)、顆粒(a3)及び顆粒(a4)の合計の含有量は、顆粒(A)中に、好ましくは30体積%以上であり、より好ましくは35体積%以上であり、さらに好ましくは40体積%以上であり、好ましくは60体積%以下であり、より好ましくは55体積%以下であり、さらに好ましくは50体積%以下である。
【0024】
顆粒(a2)、顆粒(a3)、(a4)及び顆粒(a5)の合計の含有量は、歯ブラシのブリッスルの応力を伝達する歯磨剤中の粒径が180μm以上の顆粒(a6)に粒径が150μm以上180μm未満の顆粒(a5)がブリッスルの応力伝達を補助するとともに、顆粒(a2)、顆粒(a3)及び顆粒(a4)とが相まって、歯の表面における幅20μm以上150μm以下の凹部に付着した微細な汚れを効果的に除去する観点から、顆粒(A)中に、好ましくは40体積%以上であり、より好ましくは43体積%以上であり、さらに好ましくは48体積%以上であり、好ましくは70体積%以下であり、より好ましくは65体積%以下であり、さらに好ましくは60体積%以下である。
【0025】
本発明の歯磨剤において、顆粒(a2)、顆粒(a3)、顆粒(a4)及び顆粒(a5)の合計の含有量と、顆粒(a6)の含有量との体積比((a2+a3+a4+a5)/a6)は、歯磨剤の適用により歯の表面における幅20μm以上150μm以下の凹部に、凹部よりやや大きな顆粒が押し込まれながら堅固に付着する汚れを除去する観点から、好ましくは0.8以上であり、より好ましくは0.9以上であり、さらに好ましくは1以上であり、よりさらに好ましくは1.1以上であり、好ましくは2.5以下であり、より好ましくは2以下であり、さらに好ましくは1.8以下である。
【0026】
本発明の歯磨剤において、顆粒(a2)、顆粒(a3)及び顆粒(a4)の合計の含有量と、顆粒(a5)の含有量との体積比((a2+a3+a4)/a5)は、歯磨剤の適用により歯の表面における幅20μm以上100μm以下の凹部に、凹部よりやや大きな顆粒が押し込まれながら堅固に付着する汚れを除去する観点から、好ましくは2.5以上であり、より好ましくは3以上であり、さらに好ましくは3.5以上であり、好ましくは7以下であり、より好ましくは6以下であり、さらに好ましくは5以下である。
【0027】
上記のように、顆粒(a2)〜(a6)の含有量が各々特定の体積比であることにより、粒径63μm以上150μm未満の顆粒を特定量以上含有することとなるため、本発明の顆粒(A)の粒度分布は、平均粒径以外にピークを備えるものとなり、紛体である研磨剤(清掃剤)及び歯ブラシのブリッスルが届きにくい歯の表面における幅20μm以上100μm以下の凹部に付着した微細な汚れを効果的に除去することが可能となる。一般的に、平均粒径が特定された顆粒は、粒度分布において平均粒径を中心とした正規分布を有するように設計された顆粒であり、このような従来の顆粒では、紛体である研磨剤(清掃剤)及び歯ブラシのブリッスルが届きにくい範囲の凹部の全域にわたり微細な汚れを除去することは困難であったところ、本発明の顆粒(A)によれば、通常の歯磨きによっても、歯の表面の除去しにくい幅20μm以上100μm以下の凹部に付着した汚れを効率よく除去し、黄ばみまでもが除去されて白くなった印象を得ることが可能になる。
かかる観点から、顆粒(A)の粒度分布は、顆粒(a2)〜(a4)の粒径の範囲において、ブロードなピークを有するか、又は複数のピークを有することとなり、平均値とは異なる位置にピークのある偏った分布を備えるものである。より具体的には、顆粒(A)の粒度分布は、顆粒(a2)〜(a4)の含有量が概ね同じであるブロードな分布、あるいは顆粒(a2)〜顆粒(a4)の含有量が顆粒(a5)の含有量よりも多く、顆粒(a6)のピークと併せて複数のピークを備える分布、さらに顆粒(a2)又は顆粒(a4)の含有量が顆粒(a1)や(a3)の含有量よりも多い、あるいは顆粒(a3)の粒径の範囲内に粒度分布のピークを備えるが、顆粒(a2)〜(a5)の含有量の合計が(a6)の合計量よりも多いことによって、平均値とは異なる値に粒度分布のピークを有する、すなわち正規分布とは異なる分布を備えることが好ましく、顆粒(a2)〜(a4)の含有量が顆粒(a5)の含有量と概ね同じであるブロードな粒度分布、又は顆粒(a2)〜(a4)の含有量が顆粒(a5)の含有量よりも多い粒度分布を備えることが好ましい。
【0028】
本発明の歯磨剤において、顆粒(A)の崩壊強度は、適度に崩壊することによって大小様々な粒径を呈しながら絡み合い、従来の歯磨剤では十分に除去し得なかった幅100μm以下の大きさの凹部も含め、歯の表面のあらゆる大きさの凹部に侵入して付着した汚れを効果的に除去する観点から、0.1g/個以上であって、好ましくは0.2g/個以上であり、より好ましくは0.5g/個以上であり、15g/個以下であって、好ましくは10g/個以下であり、より好ましくは8g/個以下である。また、本発明の顆粒(A)の崩壊強度は、0.1g/個以上15g/個以下であって、好ましくは0.2〜10g/個であり、より好ましくは0.5〜8g/個である。
【0029】
本発明における顆粒(A)の崩壊強度は、顆粒(A)のうち粒径が180〜200μmの顆粒10個〜20個を抽出して、微小圧縮試験機(島津製作所、MCTM−500)を用いて測定した平均値をいうが、顆粒(A)のうち粒径が63μm以上の顆粒である顆粒(a2)〜(a6)の崩壊強度についても、顆粒10〜20個を抽出して上記の方法により測定した平均値は、0.1g/個以上15g/個以下であり、好ましくは0.2〜10g/個であり、より好ましくは0.5〜8g/個である。
【0030】
顆粒(A)は、上記含有量の顆粒(a1)〜(a6)からなり、かつ上記崩壊強度を有するものであれば、材質や造粒方法等は特に制限されず、転動造粒、押し出し造粒、圧縮造粒、破砕造粒、撹拌造粒、流動層造粒、噴霧乾燥造粒、溶融凝固造粒等の公知の方法を用いた各種顆粒を用いることができる。具体的には、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、水酸化アルミニウム、ゼオライト等の研磨性粉体を、ワックス、パラフィン、ステアリン酸等の有機系結合剤を用いて、或いはコロイダルシリカやメタケイ酸アルミン酸マグネシウム等の無機系結合剤を用いて結着させて得られる顆粒;結合剤を用いない炭酸カルシウム微粒子を凝集させたり複合化させたりして得られる顆粒;シリカを凝集させるゲル法、沈降法等の湿式法又は噴霧造粒法により得られる顆粒等が挙げられる。
【0031】
顆粒(A)の含有量は、極めて微細な凹部からさらに大きな凹部に至るまで歯の表面における凹凸の大きさに左右されることなく付着汚れを有効に除去する顆粒(A)の効果を十分に発揮させる観点から、本発明の歯磨剤中に、2質量%以上であって、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上である。顆粒(A)の含有量は、顆粒(A)による優れた効果を保持しながら口腔内における異物感を抑制する観点から、本発明の歯磨剤中に、40質量%以下であって、好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下である。また、顆粒(A)の含有量は、本発明の歯磨剤中に、2質量%以上40質量%以下であり、好ましくは3〜25質量%であり、より好ましくは5〜20質量%である。
【0032】
本発明の粒度分布の顆粒(A)の調製方法としては、各粒度範囲の顆粒に分粒し、分粒した顆粒を適宜混合することにより得ることができる。また、崩壊強度が15g/個以下のように極めて崩壊しやすい顆粒の場合は、例えば平均粒径が100〜500μmの顆粒を用意し、好ましくは平均粒径の異なる2以上の顆粒を用意し、これらの顆粒をグリセリン等の湿潤剤、又は粘性のある基剤に混合して、適度な回転数で撹拌することにより、顆粒が砕けるため、150μm未満の顆粒の含有量を増やし、本発明の顆粒(A)を得ることもできる。本発明の歯磨剤の製造方法は、平均粒径が100〜500μmの顆粒、好ましくは100〜300μmの顆粒を用意し、好ましくは平均粒径の異なる2以上の顆粒を用意し、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール及びポリエチレングリコールから選ばれる1種又は2種以上の湿潤剤と、カルボキシメチルセルロースナトリウム、キサンタンガム、カラギーナン及びアルギン酸ナトリウムから選ばれる1種以上の粘結剤を含む基剤に添加する工程、並びに顆粒を含む基剤を少なくとも1部の顆粒が砕ける回転数及び撹拌時間で撹拌する工程を備える。かかる撹拌する工程において、顆粒が砕けることによって、得られる歯磨剤中の顆粒の粒度分布におけるピーク又は平均粒径は配合時よりも小さいものとなり、粒径63μm以上150μ未満の顆粒の含有量が増加することとなる。
【0033】
水の含有量は、剤形等に応じて適宜設定することができるが、顆粒(A)やその他の成分の分散性を高め、極めて微細な凹部からさらに大きな凹部に至るまで歯の表面における付着汚れ除去効果を十分に発揮させる観点から、本発明の歯磨剤中に、好ましくは0質量%を超え、より好ましくは10質量%以上である。水の含有量は、ブラッシングによって負荷される荷重を顆粒(A)に効率的に伝達し、良好に崩壊させる観点から、本発明の歯磨剤中に、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下である。また、水の含有量は、本発明の歯磨剤中に、好ましくは0質量%を超え60質量%以下であり、より好ましくは10〜50質量%である。
【0034】
本発明の歯磨剤中における水の含有量(水分量)は、配合した水分量及び配合した成分中の水分量から計算によって算出することもできるが、例えばカールフィッシャー水分計で測定することができる。カールフィッシャー水分計としては、例えば、微量水分測定装置(平沼産業(株))を用いることができる。この装置では、歯磨剤を5gとり、無水メタノール25gに懸濁させ、この懸濁液0.02gを分取して水分量を測定することができる。
【0035】
本発明の歯磨剤は、さらに研磨剤を含有することができる。本発明において研磨剤とは、粒径45μm未満の紛体や造粒物をいい、例えば、研磨性シリカ、炭酸カルシウム、ゼオライト、リン酸カルシウム、ポリエチレン粉末、ナイロン粉末、ポリプロピレン粉末等が挙げられ、味及び清掃性の観点から研磨性シリカ、炭酸カルシウムが好ましい。研磨剤としては、上記から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。かかる研磨剤の含有量は、清掃性能と使用感の観点から、本発明の歯磨剤中に、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは7質量%以上であり、好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下である。顆粒(A)と研磨剤の含有量の合計量は、本発明の歯磨剤中に、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは25質量%以上であり、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0036】
本発明の歯磨剤には、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記成分のほか、例えば、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム等の粘結剤;グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、キシリトール、マルチット、ラクチット、トレハロース等の湿潤剤;サッカリンナトリウム、アスパルテーム等の甘味剤;パラオキシ安息香酸エチル等の防腐剤;リン酸、クエン酸、リンゴ酸及びこれらの塩等のpH調整剤;アシルアミノ酸塩、アルキルリン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、脂肪酸エステル塩、N−メチル長鎖アシルタウリンナトリウム塩、ポリオキシエチレンモノアルキルリン酸塩等のアニオン界面活性剤;ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン界面活性剤やその他の界面活性剤;フッ化ナトリウム、フッ化スズ、フッ化アンモニウム、フッ化カリウム、フッ化リチウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム、フッ化アンモニウム等のフッ素イオン供給化合物;アラントイン、トラネキサム酸、ビタミンE、ビタミンC、塩化ナトリウム、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、塩化ベンゼトニウム、グリチルレチン酸、クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウム、トリクロロヒドロキシフェニルエーテル(トリクロサン)等の薬効成分;香料等を適宜含有させることができる。
【0037】
本発明の歯磨剤は、ゲル歯磨、練り歯磨、粉歯磨などの各種歯磨剤とすることができる。なかでも、極めて微細な凹部からさらに大きな凹部に至るまで歯の表面における凹凸の大きさに左右されることなく付着汚れを有効に除去する顆粒(A)の効果を十分に享受する観点から、ゲル歯磨、練り歯磨剤とすることが好適である。
【0038】
上述した実施態様に関し、本発明はさらに以下の歯磨剤を開示する。
[1]粒径が45μm以上であって、次の顆粒(a1)〜(a6):
(a1)粒径が45μm以上63μm未満の顆粒
(a2)粒径が63μm以上90μm未満の顆粒
(a3)粒径が90μm以上125μm未満の顆粒
(a4)粒径が125μm以上150μm未満の顆粒
(a5)粒径が150μm以上180μm未満の顆粒
からなる顆粒(A)であって、
顆粒(a2)、顆粒(a3)及び顆粒(a4)の含有量の合計と、顆粒(a6)の含有量との体積比((a2+a3+a4)/a6)が0.5以上2以下であり、顆粒(a2)及び顆粒(a3)の含有量の体積比(a2/a3)が0.5以上2以下であり、顆粒(a4)及び顆粒(a3)の含有量の体積比(a4/a3)が0.5以上2以下であり、かつ顆粒の崩壊強度が0.1g/個以上15g/個以下である顆粒(A)を2質量%以上40質量%以下含有する歯磨剤。
[2]顆粒(a1)の含有量は、顆粒(A)中に、好ましくは5体積%以上であり、より好ましくは7体積%以上であり、好ましくは18体積%以下であり、より好ましくは15体積%以下であり、さらに好ましくは12体積%以下である上記[1]の歯磨剤。
[3]顆粒(a2)の含有量は、顆粒(A)中に、好ましくは7体積%以上であり、より好ましくは9体積%以上であり、さらに好ましくは10体積%以上であり、好ましくは25体積%以下であり、より好ましくは20体積%以下であり、さらに好ましくは18体積%以下である上記[1]又は[2]の歯磨剤。
[4]顆粒(a3)の含有量は、顆粒(A)中に、好ましくは8体積%以上であり、より好ましくは9体積%以上であり、さらに好ましくは10体積%以上であり、好ましくは25体積%以下であり、より好ましくは20体積%以下であり、さらに好ましくは18体積%以下である上記[1]〜[3]いずれか1の歯磨剤。
【0039】
[5]顆粒(a2)の含有量と顆粒(a3)の含有量の体積比(a2/a3)は、好ましくは0.7以上であり、好ましくは1.8以下であり、より好ましくは1.6以下である上記[1]〜[4]いずれか1の歯磨剤。
[6]顆粒(a4)の含有量は、顆粒(A)中に、好ましくは7体積%以上であり、より好ましくは10体積%以上であり、さらに好ましくは12体積%以上であり、好ましくは25体積%以下であり、より好ましくは20体積%以下であり、さらに好ましくは18体積%以下である上記[1]〜[5]いずれか1の歯磨剤。
[7]顆粒(a4)の含有量と顆粒(a3)の含有量の体積比(a4/a3)は、好ましくは0.6以上であり、より好ましくは0.7以上であり、好ましくは1.8以下であり、より好ましくは1.6以下である上記[1]〜[6]いずれか1の歯磨剤。
[8]顆粒(a5)の含有量は、顆粒(A)中に、好ましくは2体積%以上であり、より好ましくは5体積%以上であり、さらに好ましくは8体積%以上であり、好ましくは20体積%以下であり、より好ましくは15体積%以下である上記[1]〜[7]いずれか1の歯磨剤。
【0040】
[9]顆粒(a5)の含有量と顆粒(a3)の含有量の体積比(a5/a3)は、好ましくは0.4以上であり、より好ましくは0.5以上であり、さらに好ましくは0.7以上であり、好ましくは1.5以下であり、より好ましくは1以下であり、さらに好ましくは0.9以下である上記[1]〜[8]いずれか1の歯磨剤。
[10]顆粒(a2)、顆粒(a3)及び顆粒(a4)の含有量の合計と、顆粒(a6)の含有量との体積比((a2+a3+a4)/a6)は、好ましくは0.7以上であり、より好ましくは1以上であり、好ましくは1.8以下であり、より好ましくは1.5以下である上記[1]〜[9]いずれか1の歯磨剤。
[11]顆粒(a2)、顆粒(a3)及び顆粒(a4)の合計の含有量は、顆粒(A)中に、好ましくは27体積%以上であり、より好ましくは35体積%以上であり、さらに好ましくは40体積%以上であり、好ましくは60体積%以下であり、より好ましくは55体積%以下であり、さらに好ましくは50体積%以下である上記[1]〜[10]いずれか1の歯磨剤。
[12]顆粒(a6)の含有量は、顆粒(A)中に、好ましくは20体積%以上であり、より好ましくは25体積%以上であり、さらに好ましくは30体積%以上であり、好ましくは52体積%以下であり、より好ましくは50体積%以下であり、さらに好ましくは45体積%以下である上記[1]〜[11]いずれか1の歯磨剤。
[13]顆粒(a2)、顆粒(a3)、顆粒(a4)及び顆粒(a5)の含有量の合計と、顆粒(a6)の含有量との体積比((a2+a3+a4+a5)/a6)は、好ましくは0.8以上であり、より好ましくは0.9以上であり、さらに好ましくは1以上であり、よりさらに好ましくは1.1以上であり、好ましくは2.5以下であり、より好ましくは2以下であり、さらに好ましくは1.8以下である上記[1]〜[12]いずれか1の歯磨剤。
[14]顆粒(a2)、顆粒(a3)、顆粒(a4)及び顆粒(a5)の合計の含有量は、顆粒(A)中に、好ましくは40体積%以上であり、より好ましくは43体積%以上であり、さらに好ましくは48体積%以上であり、好ましくは70体積%以下であり、より好ましくは65体積%以下であり、さらに好ましくは60体積%以下である上記[1]〜[13]いずれか1の歯磨剤。
[15]顆粒(a2)、顆粒(a3)及び顆粒(a4)の合計の含有量と、顆粒(a5)の含有量との体積比((a2+a3+a4)/a5)は、好ましくは2.5以上であり、より好ましくは3以上であり、さらに好ましくは3.5以上であり、好ましくは7以下であり、より好ましくは6以下であり、さらに好ましくは5以下である上記[1]〜[14]いずれか1の歯磨剤。
【0041】
[16]顆粒(A)の崩壊強度は、好ましくは0.2g/個以上であり、より好ましくは0.5g/個以上であり、好ましくは10g/個以下であり、より好ましくは8g/個以下である上記[1]〜[15]いずれか1の歯磨剤。
[17]顆粒(A)の含有量は、2質量%以上であって、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、40質量%以下であって、好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下である上記[1]〜[16]いずれか1の歯磨剤。
[18]水の含有量は、本発明の歯磨剤中に、好ましくは0質量%を超え、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下である上記[1]〜[17]いずれか1の歯磨剤。
[19]顆粒(A)が、平均粒径の異なる2以上の顆粒を混合して得られるものである上記[1]〜[18]いずれか1の歯磨剤。
[20]平均粒径が100〜500μm、及び崩壊強度が0.1g/個以上15g/個以下の顆粒を、湿潤剤及び粘結剤を含有する基剤に混合する工程、並びに少なくとも一部の顆粒が砕ける回転数で撹拌する工程を備える上記[1]〜[19]いずれか1の歯磨剤の製造方法。
【実施例】
【0042】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
【0043】
[調製例1:顆粒A−1の調製]
無水ケイ酸(ソルボシル AC77、PQ Corporation、平均粒径9.5μm、RDA値125、吸油量129mL/100g)67質量部、コロイダルシリカ(スノーテックスSK、日産化学)28質量部、セルロース(KCフロック W−400G、日本製紙ケミカル)5質量部及び精製水を混合して、固形分50質量%の水スラリーとし、この水スラリーを噴霧造粒機により送風温度200℃、排風温度80〜90℃で噴霧造粒した。なお、噴霧前の25℃における水スラリーの粘度は385mPa・sであり、造粒後の顆粒は、粒径180〜200μmの顆粒の崩壊強度が5g/個であった。
造粒後の顆粒をJIS標準篩(JIS Z8801−1982)により分級し、分級した顆粒を、表1に示す各粒径別の配合量を混合して顆粒A−1を得た。
上記の吸油量はJIS K5101−13−2(2004年制定)に基づき、吸収される煮あまに油の量により特定されたものである。RDA値は、ISO11609研磨性の試験方法 付随書Aにて測定したものを用いた。
顆粒A−1の粒度分布のグラフを図1に示す。
【0044】
[調製例2:顆粒A−2〜A−4、A−6、A−7の調製]
調整例1により造粒した顆粒をJIS標準篩(JIS Z8801−1982)により分級し、分級した顆粒を、表1に示す各粒径別の配合量に混合して顆粒A−2〜A−7を得た。顆粒A−4及び顆粒A6〜7の粒度分布のグラフを図1に示す。
【0045】
[調製例3:顆粒A−5の調製]
顆粒A−5は、調整例1の噴霧造粒の条件を変えることによって得られた平均粒径200μmの顆粒と平均粒径150μmの顆粒を、質量比5:3で混合することにより調整し、表2に示す実施例1の処方にしたがって、その他の成分とともに混合しながら撹拌して製造された歯磨剤中の顆粒である。表1に示す顆粒A−5の粒度分布は、製造した歯磨剤(実施例1)の顆粒を抽出して測定したものであり、顆粒A−5と粒径45μm未満の造粒物を含む。具体的には、下記方法にしたがって歯磨剤中の顆粒A−5の粒度分布を測定した。
顆粒A−5の粒度分布のグラフを図1に示す。
なお、表3に示す歯磨剤(実施例6)に用いた顆粒A−5は、調整例1による造粒後の顆粒をJIS標準篩(JIS Z8801−1982)により分級し、表1に示す顆粒A−5の各粒径別の配合量にしたがって、分級した各顆粒を混合して得たものである。
【0046】
[歯磨剤中の顆粒の粒度分布測定方法]
(1)歯磨剤中の顆粒の抽出:歯磨剤を精製水により20質量倍に希釈した後、遠心分離することで、上澄み液を除去し、残った顆粒と紛体を含むスラリーを乾燥することで、歯磨剤中の顆粒と紛体を抽出した。遠心分離は、遠心分離機(himac CF702、HITACHI社製)を用い、1万rpm、10分間の条件で行った。スラリーの乾燥は、110℃、1昼夜(約12時間)保存によって行った。
(2)粒度分布の測定:得られた紛体及び顆粒を、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(Partica LA-950V2、株式会社堀場製作所製)を用いて粒度分布を測定した。
(3)各顆粒の含有量(体積%)の計算:歯磨剤に含まれている顆粒の含有量(体積%)は、レーザ回折による粒度分布の結果を用い、以下に示す計算方法にしたがって、各顆粒(a1)〜(a6)の含有量を計算値として得た。
【0047】
《レーザ回折による顆粒(a1)〜(a6)の粒度分布の計算方法》
顆粒(a1)〜(a6)の粒度分布は、JIS標準篩(JIS Z8801−1982)の篩の大きさを基準としている。そこで、レーザ回折により測定された粒度分布から、各粒径の範囲の顆粒(a1)〜(a6)の量(体積%)を計算する。具体的には、レーザ回折により測定された各粒径の範囲について、各粒径の範囲の含有量を粒径範囲の比率をかけて顆粒(a1)〜(a6)の量を計算する。例えば、レーザ回折による、粒径45μm以上51μm未満の顆粒が2.5体積%、51μm以上68μm未満の顆粒が1.8体積%である場合には、顆粒(a1)の含有量は、2.8体積%+1.8体積%×(65―51)/(68−51)であり、計算結果は4.3体積%となる。
【0048】
【表1】
【0049】
[評価試験1:歯磨剤における汚れ除去性能の評価]
表2に示す処方の実施例1及び比較例1〜2の歯磨剤を用いたブラッシングと、歯磨剤を用いない歯ブラシのみによるブラッシング(参考例1)について、以下の抜去歯を用いて汚れ除去性能を評価するとともに、実際の使用環境下における汚れ除去性能を評価した。
【0050】
(評価試験1−1:抜去歯による評価)
1本の前歯を左右に分割し、歯の唇側から見て左側の歯を実施例1の歯磨剤1gにより、右側の歯を比較例1の歯磨剤1gにより、各々歯ブラシ(チェック スタンダード、花王製)を用いて歯科衛生士により3分間ブラッシングを行った。実施例1の歯磨き前と歯磨き後の歯を図2に、比較例1の歯磨き前と歯磨き後の歯を図3に示す。図2〜3に示すように、歯磨き後、実施例1では歯に黄ばみのようについていた汚れがほぼ除去されたが、比較例1では汚れがほとんど除去されずに残っていることがわかる。この残存した汚れは、歯の表面に形成されている歯ブラシのブリッスルが届かない100μm以下の凹部に付着した汚れであると考えられる。
【0051】
(評価試験1−2:使用環境下における評価)
実施例1と、実施例1の顆粒を研磨性シリカにおきかえた比較例2の歯磨剤により、事前アンケートにより歯に着色汚れがあると回答した被験者歯16人ずつに4週間歯磨きを行ってもらい、歯磨き後の歯の状態について評価した。具体的には、評価試験の前と後に、歯磨き後の歯の写真をとり、画像解析により着色部位を抽出し、画像解析ソフト「WinROOF」(三谷商事株式会社)により着色部位の面積を求め、評価開始前の歯と4週間後の歯における着色部位の面積を比較することにより評価した。より具体的には、評価開始前の歯と4週間後の歯の着色部位の面積の差を汚れ除去面積として評価した。結果を図4に示す。なお、図4に示す汚れ除去面積は、(評価開始前の歯の着色部位の面積)−(4週間後の歯の着色部位の面積)の値であって、各被験者の上顎と下顎の右側側切歯、右側中切歯、左側中切歯、左側側切歯の合計8本の唇側の表面を対象とし、各被験者の結果を平均した値である。
また、実施例1による被験者の評価開始前の歯と4週間後の着色汚れの状況の写真を図5に示す。なお、図5(a)は評価を行った歯の一部を示す写真であり、図5(b)はその歯と歯の間を拡大した写真である。同様に、比較例2による写真を図6に示す。なお、図6(a)は評価を行った歯の写真であり、図6(b)はその歯と歯の間を拡大した写真である。
【0052】
図4に示すように、実施例1の歯磨剤によって汚れがなくなった面積は、比較例2の歯磨剤の2倍であった。また、図5に示すように、実施例1では、歯の遠心唇面溝又は近心唇面溝に付着していた黄ばみ汚れ、及び歯と歯の間の黄ばみ汚れが4週間後には除去されたことがわかる。一方、図6に示すように、比較例2では、4週間後にもこれらの黄ばみ汚れが残存することが認められ、実施例1に比べて歯の表面の微細な凹部に付着した汚れが除去されにくかったことが推定される。
【0053】
歯の汚れが残存しやすい遠心唇面溝及び近唇面溝等のより詳細な凹凸を示すため、歯の表面の凹凸を図7に示す。図7は、歯の凹凸をマイクロスコープ(ワンショット3D、キーエンス社製)で測定した実際の歯の凹凸を示すものである。図7に示すように、歯の表面には、前述の遠心唇面溝、近心唇面溝だけでなく、全体に30μm〜120μmの微細な凹凸が形成されている。
【0054】
[評価試験2:歯磨剤による汚れ除去率の測定]
表2に示す処方の実施例1及び比較例1〜2の歯磨剤と、歯磨剤を用いない歯ブラシのみによる参考例1について、以下の凹凸モデル及び汚れモデルを用い、以下の方法にしたがってブラッシング試験を行い、汚れ除去率を算出した。結果を表2に示す。
【0055】
(凹凸モデル)
縦15mm×横15mm×厚さ3mmのステンレス鋼に、角が90℃の直線状の以下の各種サイズの複数の溝を平行に設けた凹凸モデルを用意した。
凹凸モデル1:幅1000μm、深さ150μmの溝を670μm間隔で設けた。
凹凸モデル2:幅100μm、深さ100μmの溝を620μm間隔で設けた。
凹凸モデル3:幅50μm、深さ50μmの溝を620μm間隔で設けた。
【0056】
(汚れモデル)
汚れモデルとして、アイライナー(サナ スーパークイックアイライナー EX01、常盤薬品工業製)を用い、上記凹凸モデルの溝の全体に擦り込んで充填し、凹凸モデルの表面に突出した汚れモデルや表面に付着した汚れモデルをヘラの水平面を、凹凸モデルの表面に沿ってスライドさせることで除去した。
【0057】
(ブラッシング試験)
前述の凹凸モデルをアルミ板(30mm×80mm×5mm)の中央に設けた15mm×15mm×3mmの正方形の凹部に嵌め込み、各歯磨剤2g、歯ブラシ(チェック スタンダード、花王製)、刷掃条件:荷重200g、速度120rpm、振幅30mm、刷掃回数30st(往復30回)、刷掃方向:凹凸モデルの溝の方向に平行な方向、ブラッシング試験を行った。なお、アルミ板の正方形の前記凹部の角には、凹凸モデルを取り出し容易にする掻き出し用凹部が正方形の外側に設けられている。
【0058】
(汚れ除去率の算出方法)
ブラッシング後、凹凸モデルをアルミ板から取り出し、水洗い後、凹凸モデルの表面に付着した歯磨剤は、凹凸モデルの表面を紙(PPC用紙A4サイズ、コクヨ)に押し付けながらスライドさせることで除去した。
ブラッシング前の凹凸モデル及び歯磨剤を除去した凹凸モデルをデジタルカメラで撮影し、ブラッシング前の凹凸モデルにおいてアイライナーにより着色している領域の面積を着色領域面積(mm2)とした。また、着色領域において歯ブラシによりブラッシングされた領域の面積を評価領域面積(mm2)とし、かかる評価領域においてアイライナーが落ちて凹部の底面が露出した(白くなった)部分の面積(mm2)を汚れ除去面積とした。次いで、評価領域面積全体に対する汚れ除去面積を、下記式(1)により汚れ除去率(%)として算出した。なお、着色領域面積は、デジタルカメラで撮影した際に、疑似汚れ物質による着色が検知された領域の面積であり、その領域において歯ブラシが刷掃した領域を評価領域とした。
汚れ除去率(%)=(汚れ除去面積/評価領域面積全体)×100 ・・・(1)
なお、試験板の凹部に擦り込んだアイライナーは、平坦な面で歯ブラシのみで刷掃した場合でも、所定の荷重をかければアイライナーが落ちて試験板の面が露出するものである。また、デジタルカメラによる撮影では、フラッシュを用い、表面反射光を除くため偏光フィルターを用いた。
【0059】
[評価試験3:清掃感の評価]
表2に示す処方の実施例1及び比較例1〜2の歯磨剤と、歯磨剤を用いない歯ブラシのみによる参考例1について、歯磨剤を用いる場合は1gを用い、歯ブラシ(チェック スタンダード、花王製)により2分間、普段通りに歯磨きした後、上顎切歯の頬側の表面を舌で触った感触について以下の基準により評価した。なお、以下の評価基準は、参考例1を「1」とした相対評価とする。また、被験者は、ブラッシングを停止してから2日後、歯の汚れが凹部に溜まっていることを認識できる者であり、表2には3名の協議による評価結果を示す。
4:歯の凹部に汚れがあることが全く感じられず、とても滑らかな感触である。
3:歯の凹部に汚れがあるとわずかに感じるが、滑らかな感触である。
2:凸凹した感触により歯の凹部に汚れがあると感じる。
1:凸凹した感触が強く、歯の凹部に汚れがあると強く感じる。
【0060】
【表2】
【0061】
表2に示すように、実施例1は、大きな凹部から小さい凹部まで比較例1〜2に比べて顕著に高い汚れ除去効果を示し、特に幅100μmの凹部において比較例1に比べて汚れ除去率の差が大きいことが認められ、歯の表面を舌で感じる感触が極めて滑らかであり優れた清掃感をもたらすことがわかる。
【0062】
[評価試験4:ゲル歯磨剤による汚れ除去率の測定]
表3に示す顆粒A−1〜A−7を混合したゲル歯磨剤について、評価試験2と同様にして汚れ除去率を測定した。
結果を表3に示す。
【0063】
【表3】
【0064】
表3に示すように、顆粒A−1〜A−5は、幅100μm、幅50μmの溝の汚れのいずれに対しても高い汚れ除去率を示しているが、顆粒A−6は幅50μmの溝の汚れ除去性能が低く、顆粒A−7は幅100μmの溝の汚れ除去性能が低い結果が得られた。以上のように、顆粒(a1)〜(a6)を上記体積比を満たすバランスで含有し、かつ特定の崩壊強度を有する顆粒(A)を含有する本発明の歯磨剤は、歯ブラシや通常の研磨剤では除去しにくい、幅50μmの凹部に付着した汚れから幅100μmの凹部に付着した汚れに対して、高い汚れ除去効果を奏することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7