(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に開示された構造では、使用者が手摺を把持する際にブラケットに大きな力がかかるが、ブラケットが屈曲状であるためブラケットに大きな応力がかかりやすい。そのため、場合によっては疲労により、ブラケットが破壊される可能性があり、耐久性が低い。
【0008】
また、手摺は、ベース部材およびブラケットを介して壁面に取り付けられる構造であるため、まず、ベース部材およびブラケットを壁面に取り付けてから、その後、手摺をブラケットに取り付けることにより、壁面に手摺を設置する。このため、壁面に対する手摺の取付け位置や取付け角度等を確認するのは、ベース部材およびブラケットを設置した後である。仮に、壁面に対する手摺の取付け位置や取付け角度等に不具合がある場合には、手摺を取り外して、ベース部材およびブラケットの位置の調整を行う必要があり、手間がかかり作業効率が悪いという問題がある。
【0009】
また、使用者は手摺を把持しながら歩行する場合には、手摺を軽く握りつつ手摺に対して手を滑らせながら歩行するのが一般的である。このようにすることが楽であると同時に、手摺から完全に手が離れることがないため安全でもある。ここで、特許文献1に開示された構成では、手摺は丸棒であると考えられる。この場合、使用者は丸棒の全周を握ることとなり、手摺とブラケットとが接続される部分では手がブラケットに接触することとなる。そのため、使用者は、一旦、手摺りから手を離し、ブラケットを避けて、再度、手摺り部を持ち直すこととなり、不便であるだけでなく、手を離すことにより使用者が転倒する危険もある。
【0010】
また、特許文献2に開示された取付け構造においては、壁面に予め設置された腰壁パネルに合わせて取り付ける。したがって、腰壁パネルが設置されていない場合は、特許文献2の取付け構造を用いることができない。また、壁面に対する手摺り本体の取付け位置や取付け角度は、予め壁面に設置された腰壁パネルの設置態様により制限されることとなる。
【0011】
本発明は、上述の問題点に鑑みなされたものであり、手摺の強度を向上させることができ、かつ、使用者が安心して手摺本体を持ちながら歩行することが可能な手摺の取付け構造、および、このような手摺本体を壁面に取り付ける際の作業効率を向上させた手摺の取付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る手摺の取付け構造の一形態は、手摺本体と、固定部材とを備え、前記手摺本体が、前記固定部材を介して壁面に取り付けられる手摺の取付け構造であって、前記手摺本体は、使用者が手で把持するための把持部を上部に有し、前記固定部材は、前記把持部よりも下方において前記手摺本体に固定される手摺側固定部材と、壁面側に固定される壁面側固定部材とを有し、前記壁面側固定部材は、前記壁面に当接して固定される当接部と、該当接部とそれぞれ接続される上面部、下面部および一対の側面部と、を有し、前記当接部、前記上面部、前記下面部および前記一対の側面部により囲まれた中空部が形成されており、前記手摺側固定部材は、前記手摺本体に当接して固定され、前記中空部内に設置され、前記手摺側固定部材と前記壁面側固定部材とが接続され
、前記手摺側固定部材の下面および前記壁面側固定部材の前記下面部の上面の少なくとも一方には、滑り止め構造が形成されていることを特徴とする。
【0013】
これにより、手摺本体に固定された手摺側固定部材は、壁面に固定された壁面側固定部材における、当接部、上面部、下面部および一対の側面部によって形成された中空部内に設置された状態で、壁面側固定部材に接続可能である。このため、手摺本体に外力が付加された場合でも壁面側固定部材に対する手摺側固定部材の曲げモーメントを緩和させることが可能であり、これにより壁面側固定部材と手摺側固定部材との取付け強度が向上する。したがって、強固に設置され、かつ破壊されにくい手摺の取付け構造を実現でき、使用者は安心して、手摺本体を持ちながら歩行等を行うことができる。
【0014】
また、手摺本体は、使用者が把持する把持部よりも下方において壁面側と固定されるので、使用者は把持部を軽く握りつつ手摺に対して手を滑らせながら歩行しても、固定部材と使用者の手とが接触することがない。そのため、使用者は手摺を利用して歩行する際に、手摺から手を離すことなく歩行することができ、安全である。
【0015】
さらに、壁面に固定した壁面側固定部材の中空部に、手摺本体に固定された手摺側固定部材を挿入して、壁面側固定部材および手摺側固定部材を接続するという比較的簡単な作業により、手摺本体を壁面に取り付けることができる。また、手摺本体に、手摺側固定部材を固定する前に、中空部に手摺側固定部材を設置した状態で、手摺本体と手摺側固定部材とを仮止めできるので、手摺本体を壁面に取り付ける際の位置合わせが容易である。
【0017】
また、中空部に設置された手摺側固定部材は壁面側固定部材に対して移動しにくく、手摺の取付け作業において手摺本体に手摺側固定部材を容易に仮止めできる。また、壁面側固定部材に対する手摺側固定部材の位置ずれも生じにくい。
【0018】
また、上記手摺の取付け構造において、前記手摺側固定部材および前記壁面側固定部材を接続するための接続部材を備え、前記手摺側固定部材の下面には接続孔が形成され、前記壁面側固定部材の前記下面部には、貫通孔が形成され、前記中空部内に前記手摺側固定部材が設置された場合に、所定のクリアランス寸法を有し、前記手摺側固定部材が前記中空部内に設置された状態で、前記接続部材が前記貫通孔に下方から貫通され、さらに前記接続部材が前記接続孔に螺入されることにより、前記手摺側固定部材と前記壁面側固定部材とが接続されていることとしてもよい。
【0019】
このように、接続部材が下方から、貫通孔を貫通しさらに接続孔に螺入されることにより、手摺側固定部材と壁面側固定部材とが接続されるため、接続部材が手摺側固定部材を、所定のクリアランス寸法内で押し上げつつ接続される。これにより、接続部材に対する手摺側固定部材の位置が矯正されながら、手摺側固定部材および壁面側固定部材が接続されるので、容易に手摺を取り付けることが可能である。また、これらを接続する際に、接続部材により手摺側固定部材が押し上げられても、手摺側固定部材は、中空部を囲む上面部の内壁面に当接するまでしか上昇することがなく、この状態で壁面側固定部材との固定が確保される。
【0020】
しかし、仮に、上方から接続部材により、中空部内に設置された手摺側固定部材と、壁面側固定部材とを接続しようとした場合には、接続部材が手摺側固定部材に螺入される前の段階から、手摺側固定部材は壁面側固定部材の下面部に当接した状態である。そのため、手摺側固定部材はそれ以上、下方に移動することがない。このため、接続部材を螺入させた際には、壁側固定部材に対する手摺側固定部材の位置の矯正が困難である。
【0021】
また、上記手摺の取付け構造において、前記接続部材を覆うように、前記固定部材の底面に取り付けられるカバー体を備えていることとしてもよい。
【0022】
これにより、接続部材が外部に露呈することがなく、美感が損なわれることがない。また、使用者が接続部材に触れた場合には、場合によっては負傷してしまうような不具合が生じる可能性があるが、カバー体により覆われていることで、使用者が誤って接続部材に触れることを防ぐことができる。
【0023】
また、本発明に係る手摺の取付け方法の一形態は、上記手摺の取付け構造における手摺の取付け方法であって、前記当接部を前記壁面に対して当接させた状態で前記壁面側固定部材を、壁面に固定する壁面固定工程と、壁面に固定された前記壁面側固定部材の前記中空部に、前記壁面と対向する側から前記手摺側固定部材を挿入する位置合わせ工程と、前記中空部に挿入された前記手摺側固定部材において前記壁面に対向する側の手摺当接面に粘着部材を設置し、前記手摺当接面に前記手摺本体を当接することで、前記粘着部材により前記手摺側固定部材を前記手摺本体に接着する仮止め工程と、前記手摺本体に接着された前記手摺側固定部材を、前記壁面側固定部材から抜去する抜去工程と、固定用部材により前記手摺側固定部材を前記手摺本体に固定する手摺固定工程と、前記手摺本体に固定された前記手摺側固定部材を、前記壁面と対向する側から前記中空部に挿入する挿入工程と、前記中空部に前記手摺側固定部材が挿入された状態で、前記手摺側固定部材および前記壁面側固定部材を接続する接続工程と、を備えることを特徴とする。
また、本発明に係る手摺の取付け方法の他の一形態は、手摺本体と、固定部材とを備え、前記手摺本体が、前記固定部材を介して壁面に取り付けられる手摺の取付け構造であって、前記手摺本体は、使用者が手で把持するための把持部を上部に有し、前記固定部材は、前記把持部よりも下方において前記手摺本体に固定される手摺側固定部材と、壁面側に固定される壁面側固定部材とを有し、前記壁面側固定部材は、前記壁面に当接して固定される当接部と、該当接部とそれぞれ接続される上面部、下面部および一対の側面部と、を有し、前記当接部、前記上面部、前記下面部および前記一対の側面部により囲まれた中空部が形成されており、前記手摺側固定部材は、前記手摺本体に当接して固定され、前記中空部内に設置され、前記手摺側固定部材と前記壁面側固定部材とが接続されている、ことを特徴とする手摺の取付け構造における手摺の取付け方法であって、前記当接部を前記壁面に対して当接させた状態で前記壁面側固定部材を、壁面に固定する壁面固定工程と、壁面に固定された前記壁面側固定部材の前記中空部に、前記壁面と対向する側から前記手摺側固定部材を挿入する位置合わせ工程と、前記中空部に挿入された前記手摺側固定部材において前記壁面に対向する側の手摺当接面に粘着部材を設置し、前記手摺当接面に前記手摺本体を当接することで、前記粘着部材により前記手摺側固定部材を前記手摺本体に接着する仮止め工程と、前記手摺本体に接着された前記手摺側固定部材を、前記壁面側固定部材から抜去する抜去工程と、固定用部材により前記手摺側固定部材を前記手摺本体に固定する手摺固定工程と、前記手摺本体に固定された前記手摺側固定部材を、前記壁面と対向する側から前記中空部に挿入する挿入工程と、前記中空部に前記手摺側固定部材が挿入された状態で、前記手摺側固定部材および前記壁面側固定部材を接続する接続工程と、を備える、ことを特徴とする。
【0024】
これにより、手摺の取付け作業を容易に行うことができ、作業効率が向上する。特に、仮止め工程において、手摺本体の壁面に対する取付け位置および取付け角度を調整することができる。そして、仮止め工程で決定された状態で最終的に手摺本体を壁面に設置することができる。そのため、容易に、壁面に対して所望の取付け位置および取付け角度で手摺本体を設置することができる。また、仮止め工程において、手摺本体の壁面に対する取付け位置および取付け角度が好ましくない場合には、壁面側固定部材のみを壁面から取り外して、位置を調整すればよい。そのため、作業が容易であり、作業効率が向上する。
【0025】
また、接続工程において、壁面側固定部材の中空部に手摺側固定部材が挿入された状態で手摺側固定部材および壁面側固定部材を接続することができるため、比較的簡単な作業により手摺本体を壁面に取り付けることができるため、作業効率が向上する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、手摺の強度を向上させることができ、かつ、使用者が安心して手摺本体を持ちながら歩行することが可能な手摺の取付け構造を提供することができるという効果を奏する。また、手摺本体を壁面に取り付ける際の作業効率を向上させた手摺の取付け方法を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態に係る手摺の取付け構造について図を用いて説明する。
図1は本発明の実施形態に係る手摺の取付け構造を示す斜視図である。また、
図2は本発明の実施形態に係る手摺の取付け構造を示す側面断面図である。
【0029】
図1および
図2に示すように、手摺の取付け構造100は、手摺本体1と、固定部材2とを備えている。手摺本体1と固定部材2とは互いに接続され、固定部材2が壁面200に接続されることにより、手摺本体1は壁面200に設置される。
【0030】
固定部材2は、壁面側固定部材3と、手摺側固定部材5とを有しており、手摺側固定部材5は壁面側固定部材3の中空部40の内部に設置されている。壁面側固定部材3および手摺側固定部材5は接続用ネジ(接続部材)6により接続されている。詳細は後述するが、接続用ネジ6は壁面側固定部材3を介して手摺側固定部材5に螺入される。なお、壁面側固定部材3と接続用ネジ6の間にはバネ座金61が設置されている。
【0031】
壁面側固定部材3が壁面用ネジ7により壁面200に固定されることにより、固定部材2が壁面200に固定されている。また、手摺側固定部材5が手摺用ネジ8により手摺本体1に固定されることにより、手摺本体1が固定部材2に固定されている。接続用ネジ6が外部に露呈しないように、カバー体21が固定部材2の底部に設置されている。これにより、接続用ネジ6が外部に露呈することにより美観が損なわれることを防ぐことができる。また、使用者が接続用ネジ6に触れることにより負傷することも防ぐことができる。
【0032】
手摺本体1は使用者が把持するための把持部11を有している。把持部11は使用者が把持しやすいように、適度な大きさを有し、かつ曲面を有する構造である。使用者は壁面200に設置された手摺本体1の把持部11を主に把持しながら歩行する。これにより、脚力の弱い老人や身体障害者であっても、腕の力による助けを借りながら歩行することができ、安全に歩行することができる。なお、上述したように、手摺用ネジ8および壁面用ネジ7により、手摺本体1は固定部材2を介して壁面200に強固に設置されている。固定部材2は屈曲しておらず、使用者により手摺本体1に力がかけられた場合でも、簡単に破損することはない。また、手摺本体1において固定部材2は把持部11よりも下方に位置する。そのため、使用者が、把持部11を軽く握りながら、手摺本体1に対して手を滑らせながら歩行等した場合でも、使用者の手は固定部材2には接触しにくい。そのため、使用者は手摺本体1から手を離さずに歩行等を行うことができ、安全である。
【0033】
次に、壁面側固定部材3および手摺側固定部材5の構成について図を用いて説明する。
図3は本発明の実施形態に係る手摺の取付け構造の壁面側固定部材の構成を示す図であって、
図3(a)は正面斜視図であり、
図3(b)は背面斜視図である。また、
図4は本発明の実施形態に係る手摺の取付け構造の手摺側固定部材の構成を示す図であって、
図4(a)は正面斜視図であり、
図4(b)は背面斜視図である。
【0034】
図3に示すように、壁面側固定部材3は壁面200に当接する壁面当接部34と、壁面当接部34に対して略垂直となるように壁面当接部34にそれぞれ接続される上面部31と、下面部33と、一対の側面部32とを備えている。そして、これら壁面当接部34、上面部31、下面部33および一対の側面部32により囲われて中空部40が形成されている。中空部40は、壁面当接部34に対向する側に開口を有している。壁面当接部34には壁面用ネジ7が挿入される壁面用貫通孔35が形成されている。また、壁面当接部34にはアンカーボルト用貫通孔36が形成されている。また、下面部33には接続用貫通孔37が形成されている。さらに、壁面側固定部材3の正面には手摺側固定部材5を中空部40に挿入する際の位置決めに用いる第1の中心指示マーク38が形成され、側面部32の壁面当接部34側には、壁面側固定部材3を壁面200に固定する際の目印とするためのスミ出しマーク42が形成されている。なお。第1の中心指示マーク38は、壁面側固定部材3の横方向の中心位置に形成されている。また、
図3には図示されておらず、詳細は後述するが、下面部33の上面44には第1滑り止め構造が形成されている。これにより、手摺側固定部材5を壁面側固定部材3の中空部40の内部に設置した際に、手摺側固定部材5が壁面側固定部材3に対して移動しにくく、位置ずれを起こしにくい。
【0035】
図4に示すように、手摺側固定部材5は手摺本体1と当接する手摺当接部54を備え、手摺当接部54には手摺用ネジ8が挿入される手摺用貫通孔55が形成されている。手摺側固定部材5の下面52側には、接続用ネジ6と螺合するネジ孔(接続孔)53が形成されている。また、手摺当接部54には、手摺当接部54が中空部40に挿入された際の位置決めに用いる第2の中心指示マーク58が形成されている。第2の中心指示マーク58は、手摺側固定部材5の横方向の中心位置に形成されている。手摺本体1を壁面200に取り付ける際には、手摺側固定部材5は壁面側固定部材3の中空部40内に設置されることとなるが、中空部40の内側の寸法は、手摺側固定部材5の外側の寸法よりも所定のクリアランス寸法だけ大きい。これにより、手摺の取付け作業において生じる位置ずれ分を吸収することができる。また、壁面側固定部材3と手摺側固定部材5とを接続する際に、接続用ネジ6が手摺側固定部材5を押し上げつつ接続される場合があるが、その場合に生じる壁面側固定部材3に対する手摺側固定部材5の傾き等の位置ずれについても吸収することができる。
【0036】
手摺側固定部材5の手摺当接部54には粘着部材である両面テープ56が接着されている。手摺の取付け作業が行われる前は、両面テープ56は一方の面において手摺側固定部材5と接着されており、他方の面においては剥離紙が残っており粘着部分が露呈されていない状態とすればよい。手摺の取付け作業を行う際(特に、後述する位置合わせ工程の際)に、両面テープ56における他方の面の剥離紙を剥がして、粘着部分を露呈させることとすればよい。また、
図4には図示されておらず、詳細は後述するが、下面52には第2滑り止め構造が形成されている。これにより、手摺側固定部材5を壁面側固定部材3の中空部40の内部に設置した際に、手摺側固定部材5が壁面側固定部材3に対して移動しにくく、位置ずれが起こりにくい。
【0037】
次に、本願発明の実施形態に係る手摺の取付け方法について、図を用いて説明する。
図5は本発明の実施形態に係る手摺の取付け方法における壁面固定工程について説明するための図である。また、
図6は本発明の実施形態に係る手摺の取付け方法における位置合わせ工程について説明するための図であって、
図6(a)は位置合わせ工程の第1工程図であり、
図6(b)は位置合わせ工程の第2工程図である。また、
図7は本発明の実施形態に係る手摺の取付け方法における仮止め工程について説明するための図である。また、
図8は本発明の実施形態に係る手摺の取付け方法における抜去工程について説明するための図である。
図9は、本発明の実施形態に係る手摺の取付け方法における手摺固定工程について説明するための図である。
図10は、本発明の実施形態に係る手摺の取付け方法における挿入工程について説明するための図である。また、
図11は本発明の実施形態に係る手摺の取付け方法における接続工程について説明するための図である。
【0038】
手摺本体1を壁面200に取り付ける場合は、まず、壁面200に壁面側固定部材3の取付け位置の基準となるスミ出しを行う。スミ出しとは、住宅等の建築工事を行う際に、当該工事において必要な線や位置などを床や壁などに表示する作業をいう。具体的には、壁面200における壁面側固定部材3の設置位置を決めるために、床面から適当な高さとなる位置に基準線201を引く。そして、
図5に示すように壁面固定工程を行う。具体的には、この基準線201の位置に壁面側固定部材3のスミ出しマーク42の位置が合うように、壁面側固定部材3を壁面200に設置して、この状態で壁面用貫通孔35に壁面用ネジ7を挿入して壁面用ネジ7により壁面側固定部材3を壁面200に固定する。
【0039】
壁面側固定部材3を壁面200に固定した後に、
図6に示すように位置合わせ工程を行う。具体的には、
図6(a)に示すように手摺側固定部材5を壁面側固定部材3の中空部40に挿入する。なお、この際には両面テープ56の粘着部分が露呈している。手摺側固定部材5を壁面側固定部材3の中空部40に挿入して、
図6(b)に示すように手摺側固定部材5を中空部40の内部に設置する。この際に、壁面側固定部材3の第1の中心指示マーク38と手摺側固定部材5の第2の中心指示マーク58とを合わせる。具体的には、第1の中心指示マーク38と第2の中心指示マーク58とが一つの線となるようにすればよい。これにより、手摺側固定部材5は中空部40の横方向に対して略中心に位置することとなる。なお、壁面側固定部材3および手摺側固定部材5により固定部材2が構成される。
【0040】
壁面側固定部材3の中空部40の内部に手摺側固定部材5が設置された状態で、
図7に示すように仮止め工程を行う。具体的には、手摺本体1の所望の位置に手摺側固定部材5が位置するように、手摺本体1を手摺側固定部材5の手摺当接部54に当接させる。つまり、手摺本体1を壁面200の方へと移動させて、手摺本体1を手摺側固定部材5に押し付ける。これにより、手摺本体1に両面テープ56が接着され、手摺本体1に手摺側固定部材5が仮止めされる。ここで、壁面側固定部材3は、手摺当接部54を中空部40の奥まで挿入しても、手摺当接部54の方が中空部40よりも前面に出ているような構造とする。これにより、手摺本体1を手摺側固定部材5に押し付けた際に、手摺側固定部材5が手摺本体1に押されて中空部40の奥行方向(壁面200側方向)に移動し手摺当接部54の全面と手摺本体1とが当接せずに、手摺本体1に両面テープ56が接着しないといった不具合が生じることがなく、確実に手摺本体1に手摺側固定部材5が仮止めされる。
【0041】
仮止め工程において、手摺本体1の壁面200に対する取付け位置や取付け角度が所望の状態となるように調整をしながら手摺側固定部材5の手摺本体1への仮止めを行う。以降の工程を行い、壁面200に対する手摺本体1の取付け作業が完了した際に、手摺本体1の壁面200に対する取付け位置や取付け角度はこの仮止め工程において調整された取付け位置や取付け角度とほぼ同一となる。そのため、仮止め工程において手摺本体1の壁面200に対する取付け位置や取付け角度を調整しておけばよい。
【0042】
なお、必要であれば、壁面側固定部材3を壁面200から取り外し、スミ出しから行ってもよい。このように最初から手摺の取付け作業をやり直した場合でも、比較的簡単な作業で済み、作業効率が大幅に低下することはない。
【0043】
上述したように、仮止め作業は、手摺本体1を手摺側固定部材5に押し付けるだけなので容易であり、取付け位置や取付け角度が所望の状態となるように手摺側固定部材5を手摺本体1に仮止めすることが容易である。したがって、手摺の取付け作業の効率が向上する。
【0044】
手摺本体1に手摺側固定部材5が仮止めされた場合には、
図8に示すように抜去工程を行う。具体的には、手摺本体1を壁面200から離す。これにより、手摺本体1に仮止めされた手摺側固定部材5も手摺本体1と一体となって、壁面側固定部材3から抜去される。
【0045】
そして、壁面側固定部材3から手摺側固定部材5を抜去した後、
図9に示すように手摺固定工程を行う。具体的には、手摺側固定部材5の手摺用貫通孔55(
図4等参照)に手摺用ネジ8を挿入して、手摺用ネジ8により手摺側固定部材5を手摺本体1に固定する。
【0046】
手摺側固定部材5が手摺本体1に固定された後、
図10に示すように挿入工程を行う。具体的には、抜去工程において壁面側固定部材3の中空部40から抜去した手摺側固定部材5を再び中空部40に挿入して、手摺側固定部材5を中空部40の内部に設置する。手摺本体1において、仮止め工程により位置決めが行われた位置に手摺側固定部材5が固定されていることから、中空部40の内部に手摺側固定部材5を挿入できる。なお、上述したように、中空部40の内側の寸法は、手摺側固定部材5の外側の寸法よりも大きいことから、抜去工程や手摺固定工程等において、手摺本体1に対して手摺側固定部材5が多少、位置ずれしたとしても、中空部40の内部に手摺側固定部材5を挿入できる。
【0047】
手摺側固定部材5を中空部40の内部に設置した状態で、
図11に示すように接続工程を行う。具体的には、下方から、バネ座金61を介して接続用ネジ6を接続用貫通孔37に挿入する。接続用貫通孔37に挿入した接続用ネジ6をさらに手摺側固定部材5のネジ孔53(
図4等参照)に螺入させる。接続用ネジ6とネジ孔53とを螺合することにより、壁面側固定部材3と手摺側固定部材5とを接続する。特に、バネ座金61を用いていることにより、壁面側固定部材3と手摺側固定部材5とは強固に接続される。また、仮止め工程において壁面200に対する手摺本体1の取付け位置および取付け角度を調整しているので、この接続工程において壁面側固定部材3と手摺側固定部材5を接続することで、壁面200に対して好ましい取付け位置および取付け角度で手摺本体1を取り付けることができる。
【0048】
そして、
図1に示すように、カバー体21を下方から壁面側固定部材3の底面にはめ込み、接続用ネジ6等が外部に露呈しないように覆う。これにより、手摺の取付け作業が完了する。
【0049】
次に、上述のクリアランス寸法について図を用いて説明する。
図12は本発明の実施形態に係るクリアランス寸法について説明するための図である。
図12は、壁面側固定部材3の中空部40の内部に手摺側固定部材5を設置した状態を示している。なお、手摺側固定部材5が壁面側固定部材3の横方向の中心位置に設置されるようにしている。上述したように、中空部40の幅および高さはそれぞれ手摺側固定部材5の幅および高さよりも大きい。具体的には、中空部40の幅は手摺側固定部材5の幅よりもd1+d2だけ大きい。また、中空部40の高さは手摺側固定部材5の高さよりもd3だけ大きい。なお、手摺側固定部材5が中空部40の中心位置に設置されていることから、d1=d2である。
【0050】
このように、中空部40の幅および高さはそれぞれ手摺側固定部材5の幅および高さよりも大きいことにより、手摺の取付け作業において生じる位置ずれ分を吸収することができる。例えば、仮止めでは、手摺側固定部材5が手摺本体1に両面テープ56により接着されるだけなので、手摺用ネジ8により固定される際に多少の位置ずれが生じる可能性がある。そのような場合でも、その位置ずれ分を吸収し、その後の作業において問題が生じることを防ぐことができる。
【0051】
また、接続工程において接続用ネジ6により壁面側固定部材3および手摺側固定部材5を接続する際に、接続用ネジ6が手摺側固定部材5を押し上げつつ接続される場合がある。この場合でも、中空部40の幅および高さはそれぞれ手摺側固定部材5の幅および高さよりも大きいことにより、壁面側固定部材3に対して手摺側固定部材5の位置が移動可能であり、手摺側固定部材5の位置が矯正されながら、壁面側固定部材3および手摺側固定部材5が接続用ネジ6により接続される。仮に、手摺側固定部材5が移動できないと、接続用ネジ6による接続が困難である。
【0052】
なお、d1〜d3については、壁面側固定部材3および手摺側固定部材5等の形状や強度等に応じて適宜好ましい値とすればよい。例えば、壁面側固定部材3の幅が88mmであり、高さが16.5mmであれば、d1=d2=2mmとし、d3=3.5mmとすればよい。なお、d1〜d3の値はこれに限定されるものではない。
【0053】
ここで、第1滑り止め構造39および第2滑り止め構造59についても説明する。上述したように、壁面側固定部材3の下面部33の上面44には第1滑り止め構造39が形成され、手摺側固定部材5の下面52には第2滑り止め構造59が形成されている(
図12参照)。第1滑り止め構造39および第2滑り止め構造59は、例えば凹凸形状で構成されており、壁面側固定部材3に対して手摺側固定部材5が滑りにくい構造であればよい。また、ゴム等の摩擦係数の大きい材料により構成されていてもよい。また、サンドペーパーのような研磨剤を備えた構成であってもよい。これにより、手摺側固定部材5を壁面側固定部材3の中空部40の内部に設置した際に、手摺側固定部材5が3に対して移動しにくく、例えば仮止め工程においても壁面側固定部材3に対して手摺側固定部材5が移動しにくく、仮止め工程における手摺側固定部材5の位置がずれを防ぐことができる。なお、壁面側固定部材3に対して手摺側固定部材5が滑りにくいのであればよく、第1滑り止め構造39および第2滑り止め構造59は、いずれか一方だけ形成されていることとしてもよい。
【0054】
次に、固定部材2において壁面側固定部材3および手摺側固定部材5の接続について図面を用いて説明する。
図13は本発明の実施形態に係る壁面側固定部材と手摺側固定部材との接続について説明するための図であって、
図13(a)は固定部材を示す第1の図であり、
図13(b)は固定部材を示す第2の図である。
図13(a)および
図13(b)のそれぞれは、固定部材2における壁面側固定部材3と手摺側固定部材5との接続を模式的に示した図である。壁面側固定部材3および手摺側固定部材5を接続用ネジ6で接続した場合に、接続用ネジ6が手摺側固定部材5を押し上げつつ接続される場合がある。この場合は、手摺側固定部材5が壁面側固定部材3に対して移動することにより、螺入する接続用ネジ6に対する手摺側固定部材5の位置を矯正する必要がある。上述したように、d1〜d3が設定されていることにより、例えば、
図13(a)のように壁面側固定部材3に対して手摺側固定部材5が傾いた状態での接続が可能となる。また、
図13(b)に示すように、手摺側固定部材5が下面において壁面側固定部材3と接することがない状態での接続が可能となる。このように、壁面側固定部材3および手摺側固定部材5が確実に接続される。
【0055】
また、壁面側固定部材3および手摺側固定部材5の接続においては、接続用ネジ6だけでなく、手摺側固定部材5に螺入することなく手摺側固定部材5の下面に対して上方に力を加える突っ張りネジ9を用いてもよい。
図14を用いて突っ張りネジ9を用いた実施形態について説明する。
図14は本発明の突っ張りネジを用いた場合の実施形態について説明するための図であって、
図14(a)は固定部材の底面図であり、
図14(b)は固定部材を示す第1の図であり、
図14(c)は固定部材を示す第2の図である。
【0056】
突っ張りネジ9を用いる点以外は、上述の実施形態と同様の構成である。
図14(a)に示すように壁面側固定部材3の底面に、接続用貫通孔37に加えて突っ張りネジ用孔43が形成されており、接続用ネジ6により壁面側固定部材3および手摺側固定部材5を接続した後に、突っ張りネジ用孔43に突っ張りネジ9を螺入させる。突っ張りネジ9は端面が略平面上であり、螺入されることにより、
図14(b)および
図14(c)に示すように、当該端面が手摺側固定部材5の下面に接触し、さらに手摺側固定部材5を上方に押し上げる。これにより、壁面側固定部材3および手摺側固定部材5の接続がより強固になる。
【0057】
上述したように、本発明の実施形態に係る手摺の取付け方法によれば、壁面200に手摺本体1を容易に取り付けることができ、手摺の取付け作業の作業効率が向上する。また、壁面200に対する手摺本体1の取付け位置や取付け角度の調整が容易であり、かつ、強固な取付けが可能である。
【0058】
以上、本発明の実施形態に係る手摺の取付け構造および手摺の取付け方法について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるわけではない。例えば、上記実施形態では、接続用貫通孔37に壁面用ネジ7を挿入することにより、壁面側固定部材3を壁面200に固定している。しかし、壁面200がコンクリート等のネジが使用できない材質の場合は、アンカーボルト用貫通孔36にアンカーボルトを挿入することにより、壁面側固定部材3を壁面200に固定してもよい。また、各種ネジの個数や配置等は特に制限があるわけではない。また、各部材の形状についても上記実施形態に限定されるわけではない。