【文献】
Mol. Reprod. Dev,2002年,61,385-397
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、2年以上避妊なしで性交しても妊娠しない場合、不妊症と診断される。カップルの10〜15%が不妊症で悩まされていると言われる。不妊には、女性側および男性側のそれぞれに多数の要因が存在している。女性側の主な要因として、排卵障害又は内分泌異常、子宮内膜症などの要因が考えられている。不妊治療の初期の段階では排卵誘発剤や子宮内膜症に対する治療剤が用いられることが多い。しかし、こうした治療でも必ずしも懐妊できず、より効果の高い不妊療法が求められている。
【0003】
このような状況で高度生殖医療(assisted reproductive technology:ART)が普及しはじめている。ARTは体外受精(IVF)、顕微授精(ICSI)、凍結胚移植などの治療法を含む。ARTでは良質な卵子の確保が極めて重要である。
【0004】
しかしながら、不妊治療の年数が長期化するほど卵巣予備能(Ovarian reserve)の低下は進行し、hMG(human menopausal gonadotropin)療法に対する反応性も低下するので、ますますその治療が困難となる。
【0005】
hMG療法に対する反応性などが低下したLow responderに対して、サプリメント製剤としても用いられているDHEA(dehydroepiandrosterone:デヒドロエピアンドロステロン)の投与が行われている。DHEAは副腎から分泌される性ホルモンであり、テストステロンやエストロゲンの前駆体で、動脈硬化阻止作用や抗肥満、抗老化作用を有する。また、ゴナドトロピンに対する卵巣の反応性を上げて卵子の質を改善するとの報告(非特許文献2、3)もある。
【0006】
一方、卵子の質の低下は酸化ストレスによるところが大きいと考えられていること(非特許文献4)から、抗酸化物質には卵子の質を改善する効果があることが期待されている(非特許文献5、6)。さらには、卵の老化は酸化ストレスが顆粒膜細胞のアポトーシスに関与した結果であるとの報告もある(非特許文献7、8)。
【0007】
ところで、梅の実は古くから食用されている天然の素材であり、梅の実を塩付けして得られた梅酢も食用されている。特許文献1や非特許文献1には、梅干の生産時に多量に副製される梅酢を脱塩・濃縮して得られる脱塩濃縮梅酢を飼料と共に鶏に給与すると、産卵率や卵質(卵量、ハウユニット、卵黄色、卵蛋白質のアミノ酸組成など)が向上し、鶏の免疫性が改善されたことが示されている。また、特許文献2には梅の実の種が生理不順に効果を示すことが、特許文献3には梅肉エキスが冷え症に効果があることが示されている。さらに梅には抗酸化作用があることもよく知られた事実である(非特許文献9)。
【0008】
しかしながら、これまでのところ、梅の実又はその抽出物が不妊治療に効果があることは知られておらず、梅の実又はその抽出物に含まれている成分のうち如何なる成分が、産卵率の向上や卵質の向上に寄与するのかどうかも不明であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−73651号公報
【特許文献2】特開2002−154980号公報
【特許文献3】特開2006−348001号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】伊丹哲哉ら,ニワトリの産卵性および卵質に及ぼす脱塩濃縮梅酢の影響,日本家禽学会誌,42,209-216,2005
【非特許文献2】Barad, D., Gleicher, N.,Increased oocyte Production after treatment with dehydroepiandrosterone.,Fertil. Steril.,84,756,2005
【非特許文献3】Casson, PR. et al.,Dehydroepiandrosterone supplementation augments ovarian stimulation in poor responders: a case series.,Hum Replod.,15,2129-2132,2000
【非特許文献4】Utsunomiya, H. et al.,Fruit-juice concentrate of Asian plum inhibits growth signals of vascular smooth muscle cells induced by angiotensin II.,Life Sciences,72,659-667,2002
【非特許文献5】Devine, PJ. et al.,Roles of reactive oxygen species and antioxidants in ovarian toxicity.,Biol Replod.,86,1-10,2011
【非特許文献6】Juan J. Tarin, et al.,Oral antioxidants counteract the negative effects of female aging on oocyte quantity and quality in the mouse.,Mol reprod and devel,61,385-397,2002
【非特許文献7】Tatone C et al.,Cellular and molecular aspects of ovarian follicle ageing.,Hum Reprod Update.,14,131-42,2008
【非特許文献8】Wiener-Megnazi Z et al.,Oxidative stress indices in follicular fluid as measured by the thermochemiluminescence assay correlate with outcome parameters in in vitro fertilization.,Fertil Steril.,3,1171-6,2004
【非特許文献9】Nakahata, T. et al.,Sphingosine-1-phosphate inhibits H2O2-induced granulasa cell apoptosis via the PI3K/Akt signaking pathway,Fertil. Steril.,98,1001-1008,2012
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る不妊治療剤は梅の実の抽出物を有効成分とし、それ単独で投与されること又はDHEAと組み合わせて投与される。
【0016】
抽出原料として用いられる梅の実は、バラ科サクラ属のウメ(Prunus mume)の果実であればよく、その品種は問われない。抽出に用いられる部位は、梅の果肉でもあり、梅の種子でもあり、梅の実全体でもあり得る。抽出には好ましくは粉砕物が用いられる。
【0017】
抽出溶媒には各種の溶媒が用いられる。抽出溶媒は、例えば、水であり、有機溶媒であり、それらの混合溶媒でもあり得る。有機溶媒は、ペンタン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、メタノールやエタノール、イソプロパノール、1,2−プロパンジオール、グリセリン等のアルコール類、フェノール等のフェノール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチルなどのエステル類でありえる。本発明に係る活性成分は3,4−DHBAであると考えられるところから、当該成分が多く抽出される溶媒が好ましく、その抽出溶媒は好ましくはメタノール、酢酸エチル等の親水性溶媒である。
【0018】
抽出方法は特に限定されず、一般的には梅の実をそのままで、あるいは梅の果肉部分及び/又は種子の部分を取り出して溶媒に浸漬することで行われる。浸漬時に必要により加熱や攪拌、加圧されることもある。また、例えば超臨界抽出法のように超臨界状態に置かれた媒体で抽出を行う方法でもよい。
【0019】
本発明に係る抽出物は梅酢でもあり得る。梅酢は、塩漬けによって高い浸透圧が生じることにより得られる浸出液である。この浸出液は梅の実に含まれる種々の成分を含むので、本明細書ではこの梅酢も梅の実の抽出物として定義される。
【0020】
抽出溶媒で抽出された抽出液や梅酢はそのまま用いられるが、さらに各種の溶媒を用いて液液抽出や濃縮を行い、活性成分である3,4−DHBA(3,4-Dihydroxybenzaldehyde:3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド)を多く含む抽出画分を得てもよい。また、梅酢を用いる場合には、塩分濃度を下げるために脱塩を行うことが好ましい。脱塩は、例えば逆浸透膜や透析膜を利用して行われ、例えば特許文献1に記載された脱塩方法が使用され得る。
【0021】
得られた抽出物は不妊治療剤として用いられる。不妊治療剤は不妊治療の一方法として使用される。本発明の抽出物はエストラジオール産生促進作用を有する3,4−DHBAを含み、抽出物における活性本体は3,4−DHBAであると考えられることから、排卵誘発剤や子宮内膜症に対する治療剤として利用され得る。特にART治療に有効であって、採取された卵の性質を向上させる。また、DHEAと組み合わせて投与することで卵の性質を向上させ、妊娠率を向上させる。
【0022】
抽出物はそのままで投与することができるが、通例、添加剤の使用により種々の剤型に製剤化される。剤型は例えば錠剤であり、顆粒剤であり、散剤であり、カプセル剤であり、チュアブル剤であり、エキス剤であり、液剤であり、注射剤であり得る。添加剤は、デンプンや乳糖などの賦形剤であり、滑沢剤であり、崩壊剤であり、コーティング剤であり、精製水であり、注射用蒸留水であり、pH調整剤であり、保存剤であり、剤型に必要とされる1種又は2種以上の添加剤が使用され得る。また、梅酢を利用する場合には、クエン酸含有量が高いので、服用しやすくするため、得られた梅酢若しくはその濃縮物にアルカリを加えて酸の一部又は全部が中和されることもある。また、甘味料や香料が加えられることもある。梅酢の中和方法は、例えば特開2011−177037号に記載された方法が例示される。
【0023】
投与量や投与方法は当業者によって適宜定められ得る。被投与者の体重、年齢、剤型、投与方法によっても異なるが、抽出溶媒による抽出物では、1日あたり0.001mg〜1gであり、濃縮梅酢である抽出物では、1日あたり0.01mg〜100gであり、3,4−DHBAを投与する場合には、1日あたり0.1ng〜0.5gである。
【0024】
本発明において、DHEAと3,4−DHBAを組み合わせるとは、両者を同時に投与することだけなく、異なる時期に投与することも含む。異なる時期に投与される場合とは、例えば、1日において投与時刻が異なる場合、日や週を変えて投与時期が異なる場合、治療周期において投与時期が異なる場合などを含む。投与計画は、効果などを考慮しながら、適宜、当業者によって決定され得る。
【0025】
DHEAと組み合わせる場合にも、DHEAとの投与比も適宜当業者によって定められ得る。投与比も被投与者の体重、年齢、剤型、投与方法によっても異なるが、抽出物(抽出溶媒による抽出物や梅酢の場合)との投与比(DHEAに対する質量比)は0.001〜100であり、3,4−DHBAとの投与比(DHEAに対する質量比)0.000001〜1である。
【0026】
次に下記の実施例に基づき、本発明について具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されることはない。
【実施例1】
【0027】
ART治療で良好な結果が得られなかった被験者に対して脱塩濃縮梅酢を投与して、妊娠効果に対する影響を調べた。
1.脱塩濃縮梅酢の調整
脱塩濃縮梅酢を特許文献1の実施例1に記載の方法に準じて製造した。つまり、梅の実を塩付けして得られた梅酢を、電気透析と加熱濃縮により脱塩濃縮梅酢(以下「梅BX70」と言う)を得た。この梅BX70(酸度(クエン酸として)50.5w/w%)を90℃で2時間加熱した後、水酸化カリウムと糖アルコールの混合物を加えて酸の一部を中和して試料(酸度26.6w/w%)を調整した(以下「梅BX70S」と言う)。
【0028】
2.不妊症の改善
ARTによっては良好胚の得られなかった反復不成功例16例(33歳〜43歳、平均年齢39.4歳)の被験者に対して、DHEA(dehydroepiandrosterone)を50mg/dayで連日投与した。DHEAを2か月間服用してもらった後、卵巣刺激を行い採卵、IVF又はICSIを施行した。上記16例のうちDHEAを服用後も妊娠に至らなかった症例のうち同意の得られた6例に対し、DHEAを50mg/dayと上記梅BX70S12ml/dayを2か月間服用してもらった後、卵巣刺激を行い採卵、IVF又はICSIを施行した。卵巣刺激法についてはlong法、short法又はGnRHアンタゴニスト併用でhMGを投与した。治療は、i)何も服用せずARTを行った周期、ii)DEHAを服用した周期、iii)DHEAと梅BX70Sを併用した周期(6名のみ)という流れで実施された。
【0029】
何も服用しなかった周期とDHEA服用周期、DHEAと梅酢試料の服用周期、それぞれの採卵前hCG(Human chorionic gonadotropin)投与日の血清estradiol(E2)値、採卵数、受精率、妊娠率(胎嚢が確認された臨床的妊娠)について検討した。研究結果の統計学的解析はWilcoxonの検定を用い、P<0.05を有意差ありとした。統計評価は平均±標準誤差で表した。
【0030】
その結果は次のとおりであった。対象周期はIVF周期が49周期、ICSI施行周期は11周期であり、合計60周期であった。平均AMH(抗ミュラー管ホルモン)は1.49ng/mlであった。
【0031】
何も服用していない周期(無添加周期)は16症例に対してIVFを20周期に施行、ICSIを5周期に施行した。妊娠は対象25周期中で1症例1周期のみであった。DHEA周期は16症例に対しIVFを17周期、ICSIを4周期施行した。妊娠は対象21周期で7名7周期だった。DHEAと梅酢試料併用周期(DHEA/梅BX70S周期)は6症例に対してIVFを12周期、ICSIを2周期施行した。対象14周期のうち4名4周期に妊娠が成立した。
【0032】
平均採卵数は無添加周期が7.36±1.28個、DHEA周期が6.52±1.07個、DHEA/梅BX70S周期が4.5±0.73個であり、治療周期が経過するごとに採卵数は低下していった。
【0033】
採卵前HCG投与日平均血清E2値は、無添加周期で2616.4±658.9pg/ml、DHEA周期で2260.3±467.3pg/ml、DHEA/梅BX70S周期で1490.7±189.2pg/mlと採卵数と同様に治療が経過するごとに低下していった。
【0034】
平均受精率は無添加周期が43.1±9.8%、DHEA周期が54.7±7.29%、DHEA/梅BX70S周期が83.0±7.7%と無添加周期よりもDHEA周期、DHEA/梅BX70S周期が有意に高率であった。
【0035】
妊娠率についても無添加周期が4%、DHEA周期が33.3%、DHEA/梅BX70S周期が28.6%と無添加周期よりもDHEA周期、DHEA/梅BX70S周期が有意に高率であった。
【0036】
以上のように、DHEA投与でも妊娠に至らなかった重症不妊患者に対してDHEAと梅酢(梅BX70S)の投与を行い、平均採卵数が最も低値であったにもかかわらず治療3群中で、最も高い受精率を得て、6症例中4症例で妊娠成立に至った。このことから難治性不妊患者に対してDHEAと梅BX70Sを投与することにより卵の質が改善し、ART治療成績が改善されると言える。
【実施例2】
【0037】
1.ヒト卵巣顆粒膜細胞(COV434)を用いた活性成分の単離・同定
次に、梅の実の抽出物である脱塩濃縮梅酢に不妊症の改善効果が観察されたことから、不妊の改善に効果があると推定される活性成分の単離・同定を行った。
図1に活性成分の単離方法を示す。卵巣顆粒膜細胞は卵細胞を取り囲む細胞であり、卵胞腔の形成と卵胞液の貯留を促して卵胞の発育に寄与する。この際、ヒト卵巣顆粒膜細胞は、卵胞発育に阻害的に働くアンドロジェンをアロマターゼ(芳香化酵素)によりエストロゲンジェンに転換する。これにより、卵胞からのエストロジェンの分泌量が増加して、下垂体前葉から急激な一過性のLH(Luteinizing hormone: 黄体形成ホルモン)の放出(LHサージ)が誘導される。その結果、成熟卵胞が排卵する。卵胞の正常な排卵には、このように卵巣顆粒膜細胞のアンドロジェン/エストロジェン転換機能が重要な役割を果たし、卵胞の発育過程で顆粒膜細胞の細胞死(アポトーシス)が生じると卵胞は排卵せずに退行すると考えられている。これらのことから、ヒト卵巣顆粒膜細胞(COV434)の生存率に対する影響を指標として、活性成分を単離した。単離した成分について各種スペクトル分析(マススペクトル、
1H−NMR、
13C−HMR)を行い、活性成分は3,4-Dihydroxybenzaldehyde(3,4−DHBA)であると同定した(
図2参照)。
【0038】
(梅種子からの抽出)
梅の果肉よりも活性成分の含有量が多いことが予想されることから抽出には梅の実の種を用いた。粉砕した梅の実の種300gに900mlのメタノールを加えて、還流冷却装置を用いて8時間の抽出操作を繰り返した。3回の抽出操作により得られたエタノール抽出液を
図1に示す方法で液液抽出を行い、Fr−1〜14までの各フラクションを得た。これらのフラクションについて、COV434生存率に対する影響を調べた。
【0039】
(COV434生存率の測定)
細胞株はヒト卵巣顆粒膜細胞(COV434:DS Pharma Biomedical, Osaka, Jpn)を用いた。細胞培養用培地は10%(v/v)牛胎児血清(FBS; HyClone, Logan, UT, USA)、1%(v/v) penicillin/streptomycin(PS:Life Technologies, Carlsbad, CA USA)を含むDulbecco's modified Eagle's medium(DMEM:Life Technologies)を使用した。COV434細胞は37℃、5%CO
2条件下で培養した。
【0040】
培養したCOV434細胞を96 well-plateに5×10
4cell/wellとなるように播種し、3日間培養した。培養後、培養液を除去し、各サンプルを目的の濃度となるように加えた培養液を100μL添加した。また、他のwellにコントロールとしてDMSO(ジメチルスルホキシド:最終濃度0.1%(v/v))を加えた培養液を100μL添加した。細胞を18時間培養後、培養液を除去し、新しい培養液を100μL添加した。次に、各wellにMTS(3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-5-(3carboxymethoxyphenyl)-2-(4-sulfophenyl)-2H-tetrazolium, inner salt; Promega, Madison, WI, USA)を25μL添加し、1時間培養した。MTSは生細胞によって還元され有色のホルマザンとなるので、その490nmにおける吸光度を、マイクロプレートリーダーを用いて測定した。細胞生存率はコントロールの吸光度を100%として求めた。その結果、
図1に示すようにFr.8に活性が認められた。
【0041】
2.3,4−DHBAのエストラジオールの産生促進効果
COV434細胞を12-well plateに5×10
5cells/wellで播種し4日間培養した。次に培養液を除去し、3,4−DHBAを加えた培養液0.5mLを加えて18時間培養を行い、培養液を回収した。培養液を10,000rpmで15分間遠心後、上清を回収し、培養液中に含まれるエストラジオールの濃度測定を日本医学臨床検査研究所(wakayama, Jpn)に依頼した。Well間の細胞数のばらつきを補正するために、培養液回収後のwellに新しい培養液0.5mLを加え、さらにMTSを125μL添加して1時間培養後、490nmにおける吸光度を測定した。ここで得られた吸光度から細胞の生存率を計算し、その値でエストラジオール濃度を補正した。結果はコントロールに対する相対値で示した。その結果を
図3に示した。
【実施例3】
【0042】
次に梅酢中の活性成分について次の条件にて高速液体クロマトグラフィによる分析を行ったところ、上記梅BX70Sの1ml中に約10μgの3,4−DHBAが確認された。その分析結果の一例を
図4に示した。3,4−DHBAは230.5nm、278.5nm、312.5nmに吸収ピークを示すが、320nm付近の吸収を測定することで3,4−DHBAを測定することができた。また、濃縮前の脱塩梅酢中に約4.8μgの3,4−DHBAが確認された。
(分析条件)
カラム:Shim-pack VP-ODS 4.6×150mm(島津製作所製)
検出波長(UV):320nm
注入量:10μL
移動相:(A)0.1%ギ酸含有水、(B)0.1%ギ酸含有メタノール
A:B= 0− 3分 90:10
3−15分 90:10→60:40
15−20分 20:80
20−30分 90:10
【0043】
以上のことから、梅の実の抽出物が有する活性成分は、エストラジオール産生を促進する物質である3,4−DHBAであることが分かった。これまでのところ、3,4−DHBAが梅の実の抽出物に含まれていること及びエストラジオールの産生促進作用があることは知られておらず、特に梅の実の抽出物である梅酢が不妊治療剤として利用可能であることが結論づけられた。また、梅の実の抽出物である梅酢とDHEAの組み合わせ投与がART療法における妊娠率を向上することも証明された。