特許第6284779号(P6284779)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284779
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】液体洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/75 20060101AFI20180215BHJP
   C11D 1/04 20060101ALI20180215BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20180215BHJP
   C11D 3/04 20060101ALI20180215BHJP
   C11D 3/48 20060101ALI20180215BHJP
   B08B 3/08 20060101ALI20180215BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20180215BHJP
   B08B 3/10 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   C11D1/75
   C11D1/04
   C11D17/08
   C11D3/04
   C11D3/48
   B08B3/08 Z
   B08B3/02 F
   B08B3/10 Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-26121(P2014-26121)
(22)【出願日】2014年2月14日
(65)【公開番号】特開2015-151462(P2015-151462A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】土屋 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 慎也
【審査官】 古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−107087(JP,A)
【文献】 特開2001−247895(JP,A)
【文献】 特開2007−332322(JP,A)
【文献】 特開2003−113398(JP,A)
【文献】 特開2010−150319(JP,A)
【文献】 特開2001−294898(JP,A)
【文献】 特開2001−311094(JP,A)
【文献】 特開2002−194400(JP,A)
【文献】 特開2003−253297(JP,A)
【文献】 特開2008−156389(JP,A)
【文献】 特開平03−140387(JP,A)
【文献】 特開昭57−205499(JP,A)
【文献】 米国特許第04397776(US,A)
【文献】 特開2008−214545(JP,A)
【文献】 特開2012−149226(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/090606(WO,A1)
【文献】 特開2005−187601(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00693548(EP,A1)
【文献】 米国特許第05693601(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/75
B08B 3/02
B08B 3/08
B08B 3/10
C11D 1/04
C11D 3/04
C11D 3/48
C11D 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)成分:下記(a−1)成分〜(a−6)成分からなるアミンオキサイド 2質量%以上、18質量%以下、
(a−1)成分:炭素数8の炭化水素基を一つ有するアミンオキサイド
(a−2)成分:炭素数10の炭化水素基を一つ有するアミンオキサイド
(a−3)成分:炭素数12の炭化水素基を一つ有するアミンオキサイド
(a−4)成分:炭素数14の炭化水素基を一つ有するアミンオキサイド
(a−5)成分:炭素数16の炭化水素基を一つ有するアミンオキサイド
(a−6)成分:炭素数18の炭化水素基を一つ有するアミンオキサイド
(b)成分:下記(b−1)成分と(b−2)成分からなる脂肪酸又はその塩 0.5質量%以上、10質量%以下、
(b−1)成分:炭素数12の脂肪酸又はその塩
(b−2)成分:炭素数14の脂肪酸又はその塩
及び
(c)成分:水を含有し、
(a)成分中の(a−1)成分及び(a−2)成分の合計の割合が5質量%以上、20質量%以下であり、
(a)成分中の(a−3)成分及び(a−4)成分の合計の割合が60質量%以上、80質量%以下であり、
(a)成分中の(a−5)成分及び(a−6)成分の合計の割合が10質量%以上、30質量%以下であり、
25℃のpHが13.3以上である、
液体洗浄剤組成物。
【請求項2】
更に、下記(d)成分を0.5質量%以上、10質量%以下含有する請求項1記載の液体洗浄剤組成物。
(d)成分:酸化性ハロゲン酸及びそれらの塩から選ばれる1種以上の化合物
【請求項3】
更に、下記(e)成分を含有する請求項1又は2記載の液体洗浄剤組成物。
(e)成分:アルカリ剤
【請求項4】
食品加工設備用及び/又は調理設備用である、請求項1〜3の何れか1項に記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項5】
下記工程1〜3を含む発泡洗浄方法。
工程1:請求項1〜の何れか1項に記載の液体洗浄剤組成物を水により予め希釈し、及び/又は、希釈しながら、発泡させて泡状に噴射し、食品加工設備及び/又は調理設備に付着させる工程
工程2:泡を一定の時間保持する工程、及び
工程3:泡を付着させた食品加工設備及び/又は調理設備を水で濯ぐ工程
【請求項6】
工程1にて、前記液体洗浄剤組成物を水により2倍以上、200倍以下の希釈倍率で、予め希釈し、及び/又は、希釈しながら噴霧する、請求項5記載の発泡洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体洗浄剤組成物に関する。詳しくは食品加工設備及び/又は調理設備用液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
食品加工工場では、生産スケジュールの中断時に、定期的に、食品の加工及び/又は調理に用いる機器及び設備(即ち、食品加工設備及び/又は調理設備)を洗浄し、衛生状態を確保している。食品加工工場での洗浄対象となる機器としては、例えば、ネットコンベアやフリーザー、スライサー、精米機などが挙げられる。また、設備としては、例えば、床、壁、作業台などが挙げられる。これらの洗浄対象は規模が大きかったり、パーツが入り組み複雑化したりしているため、これらを効率的に洗浄する方法として、通常、洗浄剤を発泡させて泡にして洗浄対象に適用する発泡洗浄が採用されている。
【0003】
発泡洗浄では、洗浄剤組成物を水で希釈した希釈液を噴射装置に投入し水圧や空圧によって発泡させた泡を洗浄対象である機器や設備に噴射・付着させて、一定時間保持させた後、ブラシやスポンジを用いてこするか、又はこすらずに水で濯ぐ工程がおこなわれる。
【0004】
発泡洗浄において、泡は洗浄箇所やすすぎの未処理箇所が容易に確認できることや、不必要な飛散を抑制できる点で利点がある。
【0005】
特許文献1には、酸化性ハロゲン酸及びそれらの塩、炭素数8〜14の炭化水素基を一つ有するアミンオキサイド型界面活性剤、炭素数12〜16の脂肪酸及びそれらの塩、並びに水を含有する食品加工設備及び/又は調理設備用液体洗浄剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−149226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の液体洗浄剤組成物は、発泡洗浄時の起泡性/泡安定性や濯ぎ時の泡切れ性に優れるものであったが、食品汚れの内、牛脂や豚脂といった常温(20℃)で固体の状態で存在する固体脂(以下、常温固体脂ともいう)に対する洗浄力を、低温での長期保存安定性を損なわずに、更に向上させることが望まれた。
【0008】
本発明の課題は、発泡洗浄時の起泡性/泡安定性や濯ぎ時の泡切れ性に優れると共に、常温固体脂に対する洗浄力に優れ、且つ、長期低温保存安定性に優れる液体洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題につき鋭意検討した結果、特定の炭素数の炭化水素基を一つ有する6種のアミンオキサイドと、特定の炭素数を有する2種の脂肪酸又はその塩とを特定の量比で含有することにより、常温固体脂に対する洗浄力が向上し、且つ、長期低温保存安定性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、
(a)成分:下記(a−1)成分〜(a−6)成分からなるアミンオキサイド 0.5質量%以上、18質量%以下、
(a−1)成分:炭素数8の炭化水素基を一つ有するアミンオキサイド
(a−2)成分:炭素数10の炭化水素基を一つ有するアミンオキサイド
(a−3)成分:炭素数12の炭化水素基を一つ有するアミンオキサイド
(a−4)成分:炭素数14の炭化水素基を一つ有するアミンオキサイド
(a−5)成分:炭素数16の炭化水素基を一つ有するアミンオキサイド
(a−6)成分:炭素数18の炭化水素基を一つ有するアミンオキサイド
(b)成分:下記(b−1)成分と(b−2)成分からなる脂肪酸又はその塩 0.5質量%以上、10質量%以下、
(b−1)成分:炭素数12の脂肪酸又はその塩
(b−2)成分:炭素数14の脂肪酸又はその塩
及び
(c)成分:水を含有し、
(a)成分中の(a−1)成分及び(a−2)成分の合計の割合が5質量%以上、20質量%以下であり、
(a)成分中の(a−3)成分及び(a−4)成分の合計の割合が60質量%以上、80質量%以下であり、
(a)成分中の(a−5)成分及び(a−6)成分の合計の割合が10質量%以上、30質量%以下であり、
25℃のpHが13.3以上である、
液体洗浄剤組成物に関する。
【0011】
また、本発明は、下記工程1〜3を含む発泡洗浄方法に関する。
工程1:上記本発明の液体洗浄剤組成物を水により予め希釈し、及び/又は、希釈しながら、発泡させて泡状に噴射し、食品加工設備及び/又は調理設備に付着させる工程
工程2:泡を一定の時間保持する工程、及び
工程3:泡を付着させた食品加工設備及び/又は調理設備を水で濯ぐ工程
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発泡洗浄時の起泡性/泡安定性や濯ぎ時の泡切れ性に優れると共に、常温固体脂に対する洗浄力に優れ、且つ、長期低温保存安定性に優れる液体洗浄剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の液体洗浄剤組成物は、下記(a)成分乃至(c)成分を含有する。
【0014】
<(a)成分>
本発明の液体洗浄剤組成物は、(a)成分として、(a−1)成分の炭素数8の炭化水素基を一つ有するアミンオキサイド、(a−2)成分の炭素数10の炭化水素基を一つ有するアミンオキサイド、(a−3)成分の炭素数12の炭化水素基を一つ有するアミンオキサイド、(a−4)成分の炭素数14の炭化水素基を一つ有するアミンオキサイド、(a−5)成分の炭素数16の炭化水素基を一つ有するアミンオキサイド、及び(a−6)成分の炭素数18の炭化水素基を一つ有するアミンオキサイドの6つのアミンオキサイドを含有する。
【0015】
(a−1)成分は、炭素数8の炭化水素基を1つ有するアミンオキサイドである。炭化水素基としては、アルキル基又はアルケニル基が挙げられるが、好ましくはアルキル基である。具体的には、(a−1)成分としては、例えば、炭素数8の炭化水素基を1つと、炭素数1以上、3以下のアルキル基又は炭素数1以上、3以下のヒドロキシアルキル基(好ましくはメチル基)を2つ有するアミンオキサイドを挙げることができる。(a−1)成分としては、オクチルジメチルアミンオキサイドが挙げられる。
【0016】
(a−2)成分は、炭素数10の炭化水素基を1つ有するアミンオキサイドである。炭化水素基としては、アルキル基又はアルケニル基が挙げられるが、好ましくはアルキル基である。具体的には、(a−2)成分としては、例えば、炭素数10の炭化水素基を1つと、炭素数1以上、3以下のアルキル基又は炭素数1以上、3以下のヒドロキシアルキル基(好ましくはメチル基)を2つ有するアミンオキサイドを挙げることができる。(a−2)成分としては、デシルジメチルアミンオキサイドが挙げられる。
【0017】
(a−3)成分は、炭素数12の炭化水素基を1つ有するアミンオキサイドである。炭化水素基としては、アルキル基又はアルケニル基が挙げられるが、好ましくはアルキル基である。具体的には、(a−3)成分としては、例えば、炭素数12の炭化水素基を1つと、炭素数1以上、3以下のアルキル基又は炭素数1以上、3以下のヒドロキシアルキル基(好ましくはメチル基)を2つ有するアミンオキサイドを挙げることができる。(a−3)成分としては、ドデシルジメチルアミンオキサイドが挙げられる。
【0018】
(a−4)成分は、炭素数14の炭化水素基を1つ有するアミンオキサイドである。炭化水素基としては、アルキル基又はアルケニル基が挙げられるが、好ましくはアルキル基である。具体的には、(a−4)成分としては、例えば、炭素数14の炭化水素基を1つと、炭素数1以上、3以下のアルキル基又は炭素数1以上、3以下のヒドロキシアルキル基(好ましくはメチル基)を2つ有するアミンオキサイドを挙げることができる。(a−4)成分としては、テトラデシルジメチルアミンオキサイドが挙げられる。
【0019】
(a−5)成分は、炭素数16の炭化水素基を1つ有するアミンオキサイドである。炭化水素基としては、アルキル基又はアルケニル基が挙げられるが、好ましくはアルキル基である。具体的には、(a−5)成分としては、例えば、炭素数16の炭化水素基を1つと、炭素数1以上、3以下のアルキル基又は炭素数1以上、3以下のヒドロキシアルキル基(好ましくはメチル基)を2つ有するアミンオキサイドを挙げることができる。(a−5)成分としては、ヘキサデシルジメチルアミンオキサイドが挙げられる。
【0020】
(a−6)成分は、炭素数18の炭化水素基を1つ有するアミンオキサイドである。炭化水素基としては、アルキル基又はアルケニル基が挙げられるが、好ましくはアルキル基である。具体的には、(a−6)成分としては、例えば、炭素数18の炭化水素基を1つと、炭素数1以上、3以下のアルキル基又は炭素数1以上、3以下のヒドロキシアルキル基(好ましくはメチル基)を2つ有するアミンオキサイドを挙げることができる。(a−6)成分としては、オクタデシルジメチルアミンオキサイドが挙げられる。
【0021】
なお、(a−1)〜(a−6)成分は、それぞれ、市販品であっても合成品であっても良い。また、後述する各成分の割合を満たすならば、各成分を含む混合物を組成物の調製に用いても良い。
【0022】
本発明の液体洗浄剤組成物では、(a)成分中の(a−1)成分及び(a−2)成分の合計の割合は、長期低温保存安定性の観点から、5質量%以上、好ましくは8質量%以上であり、そして、常温固体脂に対する洗浄性の観点から、20質量%以下、好ましくは16質量%以下、より好ましくは12質量%以下である。
【0023】
本発明の液体洗浄剤組成物では、(a)成分中の(a−3)成分及び(a−4)成分の合計の割合は、発泡時の起泡性/泡安定性の観点から、60質量%以上、好ましくは63質量%以上であり、そして、常温固体脂の洗浄性の観点から、80質量%以下、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
【0024】
本発明の液体洗浄剤組成物では、(a)成分中の(a−5)成分及び(a−6)成分の合計の割合は、常温固体脂に対する洗浄性の観点から、10質量%以上、好ましくは14質量%以上、より好ましくは18質量%以上であり、そして、長期低温保存安定性の観点から、30質量%以下、好ましくは25質量%以下である。
【0025】
本発明の液体洗浄組成物では、(a−4)成分/(a−1)成分の質量比は、発泡時の起泡性/泡安定性の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、そして低温安定性の観点から、好ましくは8以下、より好ましくは7以下、より好ましくは6以下である。
【0026】
本発明の液体洗浄組成物では、(a−4)成分/(a−3)成分の質量比は発泡時の起泡性/泡安定性の観点から、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上であり、そして低温安定性の観点から、好ましくは0.6以下、より好ましくは0.5以下である。
【0027】
本発明の液体洗浄剤組成物では、(a)成分の含有量は、常温固体脂に対する洗浄性の観点から、0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上であり、そして、長期低温保存安定性の観点から、18質量%以下、好ましくは、15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下である。
【0028】
<(b)成分>
(b)成分は、下記(b−1)成分と(b−2)成分からなる脂肪酸又はその塩である。
(b−1)成分:炭素数12の脂肪酸又はその塩
(b−2)成分:炭素数14の脂肪酸又はその塩
ここで、塩としては、例えばアルカリ金属塩が挙げられるが、好ましくはナトリウム塩又はカリウム塩、より好ましくはナトリウム塩である。(b−1)成分としては、ラウリン酸又はその塩が挙げられる。また、(b−2)成分としては、ミリスチン酸又はその塩が挙げられる。
【0029】
本発明の液体洗浄剤組成物では、(b)成分の含有量は、すすぎ時の泡切れ性の観点から、0.5質量%以上、好ましくは0.8質量%以上、より好ましくは1.2質量%以上であり、そして、長期低温保存安定性の観点から、10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。ここで、上記含有量は、(b)成分に脂肪酸塩が含まれる場合は、脂肪酸としての換算量を用いた値である。
【0030】
本発明の液体洗浄剤組成物では、(b−1)成分/(b−2)成分の質量比は、長期低温保存安定性の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上であり、更に好ましくは2以上、より更に好ましくは2.5以上であり、そして、すすぎ時の泡切れ性の観点から、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは5以下である。ここで、上記質量比は、(b)成分に脂肪酸塩が含まれる場合は、脂肪酸としての換算量を用いた値である。
【0031】
また、本発明の液体洗浄剤組成物では、(a)成分/(b)成分の質量比は、好ましくは1以上、より好ましくは1.3以上であり、更に好ましくは1.5であり、そして、好ましくは10以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下である。
【0032】
<(c)成分>
本発明の液体洗浄剤組成物は、(c)成分として、水を含有する。水は、好ましくは硬度成分を含まないイオン交換水である。また、精製水も好ましい。
【0033】
<(d)成分>
本発明の液体洗浄剤組成物は、本発明の効果を行わない範囲内で、下記(d)成分を含有することができる。
(d)成分:酸化性ハロゲン酸及びそれらの塩から選ばれる1種以上の化合物
【0034】
(d)成分の酸化性ハロゲン酸としては、次亜塩素酸、次亜臭素酸、亜塩素酸が挙げられ、殺菌性の観点から、次亜塩素酸が好ましい。また、酸化性ハロゲン酸の塩としては、次亜塩素酸、次亜臭素酸、亜塩素酸のアルカリ金属塩が挙げられ、殺菌性及び汎用性の点から、次亜塩素酸のアルカリ金属塩が好ましく、中でも次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
【0035】
(d)成分の含有量は、充分な殺菌効果の観点から、組成物中、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であり、そして、使用感の観点から、組成物中、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、より好ましくは4質量%以下である。ここで、上記含有量は、(d)成分に酸化性ハロゲン酸塩が含まれる場合は、酸化性ハロゲン酸としての換算量を用いた値である。
【0036】
<(e)成分>
本発明の液体洗浄剤組成物は、洗浄性の観点から、強アルカリ性であることが好ましい。本発明の液体洗浄剤組成物は、本発明の効果を行わない範囲内で、更に、下記(e)成分を含有することができる。
(e)成分:アルカリ剤
【0037】
(e)成分のアルカリ剤としては、アルカリ金属の水酸化物、及びアルカリ金属の珪酸塩から選ばれるアルカリ剤が挙げられる。アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等が挙げられ、アルカリ金属の珪酸塩としては珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、具体的には、メタ珪酸ナトリウム、オルト珪酸ナトリウム、1号珪酸ナトリウム、2号珪酸ナトリウム、3号珪酸ナトリウム、4号珪酸ナトリウム、1K珪酸カリウム、2K珪酸カリウムが挙げられる。
【0038】
(e)成分の含有量は、本発明の液体洗浄剤組成物の25℃のpHが13.3以上、好ましくは13.4以上、より好ましくは13.5以上になる量が好ましい。更に13.6以上、更に13.7以上、更に13.8以上になる量であっても良い。(e)成分の具体的な含有量は、洗浄性の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、そして、使用時の安全性の観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0039】
更に、本発明の液体洗浄剤組成物は、本願所望の効果を阻害しない範囲において、食品加工設備及び/又は調理設備用液体洗浄剤組成物に通常用いられる、他の界面活性剤、キレート剤、増泡剤、ハイドロトロープ剤、着色料、香料、ビルダー、防錆剤、粘度調整剤(例えば、ジイソブチレン/マレイン酸共重合体)等の任意成分を含有してもよい。
【0040】
本発明の液体洗浄剤組成物の25℃のpHは、13.3以上、好ましくは13.4以上、より好ましくは13.5以上である。更に13.6以上、更に13.7以上、更に13.8以上であっても良い。ここで、かかるpHの値は、pH METER F-21((株)堀場製作所製)を用いて測定した値である。
【0041】
本発明の液体洗浄剤組成物は、食品加工設備用及び/又は調理設備用として好適である。本発明において、用語「食品加工設備及び/又は調理設備」とは、食品加工工場において、食品を加工する際及び/又は調理する際に用いられる機器及び設備を意味することができる。かかる機器としては、例えば、ネットコンベアやフリーザー、スライサー、精米機などが挙げられる。また、かかる設備としては、例えば、床、壁、作業台などが挙げられる。本発明において、用語「食品加工設備及び/又は調理設備用液体洗浄剤組成物」とは、上記「食品加工設備及び/又は調理設備」の洗浄に使用するための液体洗浄剤組成物を意味することができ、より詳細には、上記「食品加工設備及び/又は調理設備」を発泡洗浄により洗浄するための液体洗浄剤組成物を意味することができる。
【0042】
<食品加工設備及び/又は調理設備の洗浄方法>
本発明の液体洗浄剤組成物は、下記工程1〜3を含む洗浄方法に好適に用いられる。
工程1:本発明の液体洗浄剤組成物を水により、好ましくは2倍以上、より好ましくは5倍以上、そして、好ましくは200倍以下の希釈倍率で、予め希釈し、及び/又は、希釈しながら、発泡させて泡状に噴射し、食品加工設備及び/又は調理設備に付着させる工程
工程2:泡を一定の時間保持する工程、及び
工程3:泡を付着させた食品加工設備及び/又は調理設備を水で濯ぐ工程
【0043】
工程1では、本発明の液体洗浄剤組成物を、水により好ましくは2以上、200倍以下の希釈倍率で予め希釈した後、泡状に噴射する。あるいは、本発明の液体洗浄剤組成物を専用容器に入れ、ホース等により水道と直結するなどして、希釈しながら混合して泡状に噴射する。上記の事前希釈と同時希釈とを組み合わせて、本発明の液体洗浄剤組成物の希釈溶液を泡状に噴射することもできる。工程1における希釈倍率は好ましくは2倍以上、より好ましくは5倍以上、より好ましくは20倍以上であり、そして、好ましくは200倍以下、より好ましくは100倍以下である。
【0044】
ここで、希釈に使用される水としては、一般に、水道水のような、硬度成分を含有する水であることが想定される。希釈に使用される水の硬度は、発泡洗浄時における泡安定性の観点から、0.1°dH以上、30°dH以下の範囲にあることが好ましい。好ましくは20°dH以下、より好ましくは15°dH以下、より好ましくは12°dH以下、より好ましくは8°dH以下、より好ましくは4°dH以下の範囲である。
【0045】
本発明の液体洗浄剤組成物の希釈溶液を泡状に噴射させる態様としては、水で所定の倍率に希釈した希釈溶液を、専用の泡洗浄機に適量充填して、外部からの空気/圧縮空気を混合して泡状に噴射する態様が好適に挙げられる。食品加工工場内の製造ライン等、処理面積が大きい場合は、泡洗浄機(例えば、「SCU−HF」スプレーイング社製、「KF−100」、「KF−200」花王(株)製)が好適に用いられる。まな板等の調理器具等、処理面積が小さい場合は、トリガースプレーヤーやフォーマースプレーヤー等の間欠的に泡を発生させることのできるハンドスプレーヤーが好適に用いられる。
【0046】
工程1では、本発明の液体洗浄剤組成物の希釈溶液を、間欠することなく泡状に噴射することが好ましい。ここで、「間欠することなく」噴射するとは、泡洗浄機を用いて、レバーやスイッチ等により開栓している間は連続的に(例えば、5秒以上)洗浄剤が泡状に噴射し続けることを表し、これは、「間欠する」噴射、例えば、トリガースプレーヤーやフォーマースプレーヤー等のハンドスプレーヤーを用いて、レバーを引いた時に噴射され、瞬時に噴射が停止するような噴射の態様と区別される。
【0047】
泡洗浄機を用いて間欠することなく泡状に噴射する態様は、洗浄対象である食品加工設備及び/又は調理設備の面積や規模が大きい場合により有効である。
【0048】
泡洗浄機を用いる場合、発泡倍率(泡の体積(mL)/泡の質量(g)の比)は、好ましくは3倍以上、より好ましくは5倍以上、より好ましくは10倍以上であり、そして、好ましくは50倍以下、より好ましくは40倍以下であることが好適である。また、噴射時の圧力(ゲージ圧)は、好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.2MPa以上であり、そして、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.8MPa以下、より好ましくは0.5MPa以下とすることが好適である。トリガースプレーヤーやフォーマースプレーヤー等のハンドスプレーヤーを用いる場合、発泡倍率は、好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上であり、そして、好ましくは30倍以下、より好ましくは20倍以下、より好ましくは10倍以下であることが好ましい。
【0049】
工程1において本発明の液体洗浄剤組成物の希釈溶液を泡状に噴射し食品加工設備及び/又は調理設備に付着させてから、一定時間泡を保持する(工程2)。工程2において泡を保持する時間は、各装置の機構および作業性の観点から、好ましくは1分以上であり、そして、好ましくは60分以下、より好ましくは45分以下、より好ましくは30分以下、より好ましくは20分以下、より好ましくは15分以下、より好ましくは10分以下、より好ましくは5分以下である。また、工程2において泡を保持する時間は、洗浄性の観点から、好ましくは1分以上、より好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、より好ましくは15分以上、より好ましくは20分以上であり、そして、好ましくは60分以下、より好ましくは45分以下、より好ましくは30分以下である。
【0050】
工程2において泡を保持する時間は、希釈溶液の希釈倍率や使用場面によって異なり、特に制限されるものではないが、例えば2倍以上、50倍未満(好ましくは5倍以上、50倍未満)の希釈倍率では、泡を保持する時間は、好ましくは1分以上、60分以下である。また、50倍以上、200倍以下の希釈倍率においては、1分以上、10分以下の間泡を安定に保持することが好ましい。
【0051】
工程2において泡を保持している間は放置しておくことが好ましいが、僅かの水等を加えるようなことも可能である。
【0052】
泡を一定時間保持した後、工程3において、泡を付着させた食品加工設備及び/又は調理設備を水で濯ぐ。濯ぎ水の温度は、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上であり、そして、好ましくは70℃以下であることが好適である。
【実施例】
【0053】
実施例1〜3及び比較例1〜4
表1に示す液体洗浄剤組成物を調製し、以下の試験を行った。結果を表1に併せて示す。表1の実施例の組成物は、食品加工設備用及び/又は調理設備用として好適である。
【0054】
(1)洗浄性試験
標準試験板(SUS304:1.0mm×30mm×80mm 日本テストパネル(株)製)に、牛肉:豚肉=1:1で混合したミンチ肉を約20mg付着させ、1夜放置し、これを洗浄モデル試験板とした。液体洗浄剤組成物3.3質量%水溶液(4°dH硬水、30倍希釈物)をポンプフォーマー容器(B523:株式会社 吉野工業所製)に90mL投入し、フォーマヘッドを2プッシュして形成した泡(1プッシュ当たり1gの泡を生成;発泡倍率30倍)を、上記洗浄モデル試験板に塗布した。塗布後10分放置した後、水道水で濯ぎ、乾燥させ、テストピースの質量を測定し、下記式にて洗浄率(%)を算出した。
洗浄率(%)=100×[(付着ミンチ肉量)−(残存ミンチ肉油量)]/(付着ミンチ肉量)
【0055】
(2)長期保存安定性試験
表1記載の液体洗浄剤組成物を、−5℃環境下で20日間保存した。−5℃にて透明な液体であれば合格(○)とした。一方、相分離したものについて「分離」と記載した。
【0056】
【表1】
【0057】
表1中、(d)成分の質量%は、酸化性ハロゲン酸としての換算量を用いた質量%であり、カッコ内の数値は酸化性ハロゲン酸塩としての質量%である。
【0058】
*ジイソブチレン/マレイン酸共重合体:デモールEP、花王(株)製
【0059】
なお、表1中、実施例に係る組成物は、発泡洗浄時の起泡性/泡安定性や濯ぎ時の泡切れ性にも優れるものであった。