特許第6284781号(P6284781)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284781
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】配光制御システム
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/00 20180101AFI20180215BHJP
   F21S 43/00 20180101ALI20180215BHJP
   F21S 45/00 20180101ALI20180215BHJP
   B60Q 1/12 20060101ALI20180215BHJP
   F21W 103/00 20180101ALN20180215BHJP
   F21W 104/00 20180101ALN20180215BHJP
   F21W 105/00 20180101ALN20180215BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20180215BHJP
【FI】
   F21S8/12 292
   F21S8/12 251
   B60Q1/12 100
   F21Y115:10
【請求項の数】5
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2014-31887(P2014-31887)
(22)【出願日】2014年2月21日
(65)【公開番号】特開2015-158975(P2015-158975A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2017年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 清隆
(72)【発明者】
【氏名】山本 照亮
【審査官】 杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−031641(JP,A)
【文献】 特開2010−232081(JP,A)
【文献】 特開2013−161569(JP,A)
【文献】 特開2011−063070(JP,A)
【文献】 特開2013−140779(JP,A)
【文献】 実開平06−015205(JP,U)
【文献】 特開2012−162121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/12
B60Q 1/12
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される照明装置の配光を制御するシステムであって、
光源と、
前記光源から出射された光の少なくとも一部が通過する投影レンズと、
前記光源から出射された光の一部を遮るように前記投影レンズの後方に配置され、回転軸を有するロータリーシェードと、
前記投影レンズの光軸の向きを変える第1駆動機構と、
前記ロータリーシェードを前記回転軸周りに回転させる第2駆動機構と、
を備えており、
前記ロータリーシェードは、
前記第2駆動機構が前記ロータリーシェードを第1角度位置まで回転させたときに、第1配光パターンの周縁部として前記投影レンズの前方に投影される第1端縁と、
前記第2駆動機構が前記ロータリーシェードを第2角度位置まで回転させたときに、前記第1配光パターンよりも照明面積の広い第2配光パターンの第1周縁部として前記投影レンズの前方に投影される第2端縁と、
前記回転軸の方向について第1位置で前記第1端縁に交わり、前記回転軸の方向について第2位置で前記第2端縁に交わるように、前記回転軸周りに延びるねじれ端面と、
を備えており、
前記ねじれ端面は、前記第2配光パターンの第2周縁部として前記投影レンズの前方に投影される端縁を有しており、
前記車両の舵角についての第1情報を取得する第1情報取得部と、
前記車両の前方についての第2情報を取得する第2情報取得部と、
前記第1情報に基づいて前記光軸の向きを定めるように、前記第1駆動機構を制御する第1制御部と、
前記第2情報に基づいて前記第2周縁部の位置を定めるように、前記第2駆動機構を制御する第2制御部と、
をさらに備えており
前記第2制御部による制御は、前記第1制御部による制御とは独立して実行される、配光制御システム。
【請求項2】
前記第2制御部は、前記第1制御部により定められた前記光軸の向きを基準として、前記第2情報に基づいて前記第2周縁部の位置を定めるように前記第2駆動機構を制御する、請求項1に記載の配光制御システム。
【請求項3】
前記ロータリーシェードは、前記回転軸と同心状に延びる周面を有しており、前記第1端縁と前記第2端縁は、前記周面の一部をなしている、請求項1または2に記載の配光制御システム。
【請求項4】
前記光源は、第1光源と第2光源を含んでおり、
前記投影レンズは、第1投影レンズと第2投影レンズを含んでおり、
前記第1投影レンズは、前記第1光源から出射された光により前記第1配光パターンを形成するように配置されており、
前記第2投影レンズと前記ロータリーシェードは、前記第2光源から出射された光により前記第2周縁部を含む前記第2配光パターンの一部を形成するように配置されており、 前記第1駆動機構は、少なくとも前記第1投影レンズの光軸の向きを変えるように構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の配光制御システム。
【請求項5】
前記第1駆動機構は、前記第1投影レンズの光軸と前記第2投影レンズの光軸の向きを同時に変えるように構成されている、請求項4に記載の配光制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される照明装置の配光を制御するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の配光制御としてADB(Adaptive Driving Beam)制御が知られている。この制御においては、ハイビーム配光による照明中に前方車両や歩行者が検出された場合に、当該検出された前方車両や歩行者を含む領域を照明する光を遮ることによって非照明領域が形成される。これにより、グレア抑制と前方視認性の確保が両立される。本明細書においては、このような配光パターンを「部分的ハイビームパターン」と称する。
【0003】
一方、曲路走行時などに照明方向が車両の進行方向を向くように、灯具の光軸を車両の左右方向に移動させるスイブルアクチュエータが知られている。検出された前方車両や歩行者の位置に応じて、部分的ハイビームパターンにおける非照明領域の位置を左右方向へ移動させるために、スイブルアクチュエータが利用される技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−162121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、曲路走行時においてスイブル制御が有効とされている間に前方車両が検出されてADB制御が有効にされた場合、当該前方車両に非照明領域を追従させるべく部分的ハイビームパターンを左右方向に移動させると、スイブル制御に基づいて本来照明すべき方向と、灯具の光軸とが一致しない場合が生ずる。すなわち、ADB制御を優先させると車両の進行方向の照明が不十分になる場合があり、スイブル制御を優先させると前方車両に与えるグレアの抑制が不十分になる場合がある。両者を協調させようとすると制御が複雑となり、ECUなどの統合制御部における負荷が増大する。
【0006】
よって本発明は、制御負荷の増大を抑制しつつ、前方車両に与えるグレアの抑制と車両進行方向の視認性確保を両立することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明がとりうる一態様は、車両に搭載される照明装置の配光を制御するシステムであって、
光源と、
前記光源から出射された光の少なくとも一部が通過する投影レンズと、
前記光源から出射された光の一部を遮るように前記投影レンズの後方に配置され、回転軸を有するロータリーシェードと、
前記投影レンズの光軸の向きを変える第1駆動機構と、
前記ロータリーシェードを前記回転軸周りに回転させる第2駆動機構と、
を備えており、
前記ロータリーシェードは、
前記第2駆動機構が前記ロータリーシェードを第1角度位置まで回転させたときに、第1配光パターンの周縁部として前記投影レンズの前方に投影される第1端縁と、
前記第2駆動機構が前記ロータリーシェードを第2角度位置まで回転させたときに、前記第1配光パターンよりも照明面積の広い第2配光パターンの第1周縁部として前記投影レンズの前方に投影される第2端縁と、
前記回転軸の方向について第1位置で前記第1端縁に交わり、前記回転軸の方向について第2位置で前記第2端縁に交わるように、前記回転軸周りに延びるねじれ端面と、
を備えており、
前記ねじれ端面は、前記第2配光パターンの第2周縁部として前記投影レンズの前方に投影される端縁を有しており、
前記車両の舵角についての第1情報を取得する第1情報取得部と、
前記車両の前方についての第2情報を取得する第2情報取得部と、
前記第1情報に基づいて前記光軸の向きを定めるように、前記第1駆動機構を制御する第1制御部と、
前記第2情報に基づいて前記第2周縁部の位置を定めるように、前記第2駆動機構を制御する第2制御部と、
をさらに備えている。
【0008】
このような構成によれば、第1制御部がスイブル制御を担当し、第2制御部がADB制御を担当するようにできる。また、スイブル制御は、ADB制御の影響を受けないようにできる。そのため、各投影レンズの光軸の向きが常に最適化され、第2配光パターンにおける照度が最も高い部分が車両の進行方向に対して適切な位置に配置される。これにより、車両進行方向の視認性が確保される。また、ADB制御は、ロータリーシェードのねじれ端面を利用して行なわれるため、第2周縁部の位置を連続的に変化させることができる。これにより、配光パターン形状の変化により運転者が感じる違和感を抑制しつつ、前方車両に与えるグレアの抑制が可能である。さらに、車両の舵角情報に基づくスイブル制御と車両の前方情報に基づくADB制御を独立して実行可能であるため、両制御の協調を前提とした複雑な制御設計を必要としない。したがって、制御負荷の増大を抑制しつつ、前方車両に与えるグレアの抑制と車両進行方向の視認性確保を両立できる。
【0009】
前記第2制御部は、前記第1制御部により定められた前記光軸の向きを基準として、前記第2情報に基づいて前記第2周縁部の位置を定めるように前記第2駆動機構を制御する構成としてもよい。
【0010】
スイブル制御による配光パターン全体の左右方向への変位量と、ロータリーシェードを用いたADB制御による第2周縁部の左右方向への変位量とでは、前者の方が大きい。まずスイブル制御によって各投影レンズの光軸の方向を定め、当該方向を基準としてADB制御を実行することにより、ロータリーシェードによって第2周縁部が変位可能な範囲を実質的に広げることができる。すなわち、スイブル制御による車両進行方向の視認性確保に影響を及ぼすことなく、グレア抑制効果の及ぶ範囲を広げることができる。したがって、制御負荷の増大を抑制しつつ、前方車両に与えるグレアの抑制と車両進行方向の視認性確保を両立できる。
【0011】
前記ロータリーシェードは、前記回転軸と同心状に延びる周面を有しており、前記第1端縁と前記第2端縁は、前記周面の一部をなしている構成としてもよい。
【0012】
このような構成によれば、したがって、第1端縁と第2端縁の上下方向の位置が、ロータリーシェードの回転に伴って変化しない。したがって、第1配光パターンと第2配光パターンの切替え、および第2配光パターンにおける第2周縁部の変位に伴い、これら端縁の投影像の位置が変化しない。したがって、配光パターンの変化時において運転者が感じる違和感を抑制できる。
【0013】
前記光源は、第1光源と第2光源を含んでおり、
前記投影レンズは、第1投影レンズと第2投影レンズを含んでおり、
前記第1投影レンズは、前記第1光源から出射された光により前記第1配光パターンを形成するように配置されており、
前記第2投影レンズと前記ロータリーシェードは、前記第2光源から出射された光により前記第2周縁部を含む前記第2配光パターンの一部を形成するように配置されている構成としてもよい。この場合、前記第1駆動機構は、少なくとも前記第1投影レンズの光軸の向きを変えるように構成されている。
【0014】
このような構成によれば、第1配光パターンを形成するための光学系と第2配光パターンを形成するための光学系が独立して設けられている場合においても、スイブル制御とADB制御の独立性を高めることができる。
【0015】
ここで、前記第1駆動機構は、前記第1投影レンズの光軸と前記第2投影レンズの光軸の向きを同時に変えるように構成されてもよい。
【0016】
このような構成によれば、第1配光パターンを形成するための光学系と第2配光パターンを形成するための光学系が独立して設けられている場合においても、第2制御部が、第1制御部により定められた投影レンズの光軸の向きを基準として、第2周縁部の位置を定めることができる。すなわち、スイブル制御による車両進行方向の視認性確保に影響を及ぼすことなく、グレア抑制効果の及ぶ範囲を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る前照灯制御システムが搭載された車両の全体構成を模式的に示す図である。
図2】前照灯制御システムが備える右灯具ユニットの一部を示す斜視図である。
図3】右灯具ユニットの構成要素間の位置関係を示す図である。
図4】右灯具ユニットが備える右ロータリーシェードの外観を示す斜視図である。
図5】右ロータリーシェードの回転角度位置と形成される配光パターンの関係を示す図である。
図6】右ロータリーシェードの回転角度位置と形成される配光パターンの関係を示す図である。
図7】前照灯制御システムの一部である左灯具ユニットが備える左ロータリーシェードの外観を示す斜視図である。
図8】左ロータリーシェードの回転角度位置と形成される配光パターンの関係を示す図である。
図9】左ロータリーシェードの回転角度位置と形成される配光パターンの関係を示す図である。
図10】前照灯制御システムの制御構成を模式的に示す図である。
図11図10の前照灯制御システムにより行なわれるADB制御とスイブル制御を説明する図である。
図12】本発明の第2実施形態に係る前照灯制御システムの制御構成を模式的に示す図である。
図13図12の前照灯制御システムにより行なわれるADB制御とスイブル制御を説明する図である。
図14】本発明の第3実施形態に係る前照灯制御システムの制御構成を模式的に示す図である。
図15図14の前照灯制御システムにより行なわれるADB制御とスイブル制御を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付の図面を参照しつつ本発明に係る実施形態の例について以下詳細に説明する。なお以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。また以降の説明に用いる「右」および「左」は、特に断りのない限り、運転席から見た左右の方向を示している。
【0019】
図1は、本発明の第1実施形態に係る前照灯制御システム11(配光制御システムの一例)が搭載された車両10の全体構成を模式的に示している。前照灯制御システム11は、車両10に搭載される前照灯装置12(照明装置の一例)の配光を制御する。前照灯制御システム11は、統合制御部14、車輪速センサ16、操舵角センサ17、およびカメラ18を備えている。
【0020】
統合制御部14は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAMなどを備え、車両10における様々な制御を実行する。
【0021】
車輪速センサ16は、車両10に組み付けられる左右の前輪および後輪の4つの車輪の各々に対応して設けられている。車輪速センサ16の各々は統合制御部14と通信可能に接続されており、車輪の回転速度に応じた信号を統合制御部14に出力する。統合制御部14は、車輪速センサ16から入力された信号を利用して車両10の速度を算出する。
【0022】
操舵角センサ17は、ステアリングホイールに設けられて統合制御部14と通信可能に接続されている。操舵角センサ17は、運転手によるステアリングホイールの操舵回転角に対応した信号を統合制御部14に出力する。統合制御部14は、操舵角センサ17から入力された信号を利用して車両10の進行方向を算出する。
【0023】
カメラ18は、例えばCCD(Charged Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等の撮像素子を備え、車両前方を撮影して画像データを生成する。カメラ18は統合制御部14と通信可能に接続されており、生成された画像データは統合制御部14に出力される。
【0024】
前照灯装置12は、車両10の前部右寄りに配置される右前照灯ユニット22R、および車両10の前部左寄りに配置される左前照灯ユニット22Lを備えている。右前照灯ユニット22Rにおいては、ランプボディ23Rに透光カバー24Rが装着されて灯室25Rを区画している。
【0025】
図2は、右前照灯ユニット22Rの灯室25Rに収容されている右灯具ユニット30Rの一部を示す斜視図である。図3の(a)は、右灯具ユニット30Rを構成する一部の要素同士の位置関係を示す縦断面図である。右灯具ユニット30Rは、光源31、ヒートシンク32、リフレクタ33、投影レンズ34、レンズホルダ35、右ロータリーシェード36、シェード駆動機構37、および支持部38を備えている。
【0026】
光源31は、白色発光ダイオード(LED)や有機EL素子などの半導体発光素子である。光源31は、ヒートシンク32に対して固定されている。ヒートシンク32は、光源31から発する熱を発散させるのに適した材質および形状とされている。光源31から出射された光は、リフレクタ33によって反射され前方に向かう。その光の少なくとも一部は、リフレクタ33の前方に配置された投影レンズ34を通過する。
【0027】
リフレクタ33は、車両10の前後方向に延びる光軸A1を中心軸とする楕円球面を基調とする反射面を有している。光源31は、反射面の鉛直断面を構成する楕円の第1焦点に配置されている。これにより、光源31から出射された光が当該楕円の第2焦点に収束するように構成されている。
【0028】
投影レンズ34は樹脂製である。投影レンズ34は、後方焦点Fがリフレクタ33の反射面の第2焦点に一致するように配置されており、後方焦点F上の像を車両10の前方に反転像として投影するように構成されている。投影レンズ34の周縁部はレンズホルダ35により保持され、ヒートシンク32に対して固定されている。
【0029】
図3の(b)は、右灯具ユニット30Rを構成する一部の要素同士の位置関係を示す平面図である。右ロータリーシェード36は、光源31から出射された光の一部を遮るように、投影レンズ34の後方に配置されている。右ロータリーシェード36は回転軸A2を有しており、当該回転軸A2が、投影レンズ34の後方焦点Fの下方を通るように配置されている。
【0030】
シェード駆動機構37は、右ロータリーシェード36の軸方向左側の端部に固定されている。シェード駆動機構37は、モータと歯車機構を有しており、右ロータリーシェード36を回転軸A2周りに回転させる。具体的には、車両10の統合制御部14から入力される制御信号に応じてモータおよび歯車機構が駆動され、右ロータリーシェード36を当該信号に応じた角度および方向に回転させるように構成されている。図2に示すように、支持部38は、右ロータリーシェード36の軸方向右側の端部を回転可能に支持する。
【0031】
図4は、右ロータリーシェード36の外観を示す斜視図である。後に図5図6を参照して詳述するように、シェード駆動機構37による駆動に基づく回転軸A2を中心とする回転角度に応じて異なる形状の端縁が、投影レンズ34の後方焦点Fの近傍に配置されるような周面および端面を有する形状とされている。
【0032】
光源31から出射された光は、リフレクタ33によって反射されて前方に向かう。その光の一部は、右ロータリーシェード36によって遮られる。このとき投影レンズ34の後方焦点Fの近傍に配置されている端縁の形状が、車両10の前方に形成される配光パターンの周縁の一部として投影される。
【0033】
右ロータリーシェード36は、第1端部36aを有している。第1端部36aは、右ロータリーシェード36の左端部に配置されている。第1端部36aは、回転軸A2と同軸に形成された軸穴を有している。当該軸穴は、シェード駆動機構37と結合される。
【0034】
右ロータリーシェード36は、第2端部36bを有している。第2端部36aは、右ロータリーシェード36の右端部に配置されている。第2端部36bは、回転軸A2と同軸に形成された軸穴を有している。当該軸穴は、支持部38と結合される。
【0035】
右ロータリーシェード36は、第1周面36cを有している。第1周面36cは、第2端部36bの左側に配置されている。第1周面36cは、回転軸A2と平行に、右ロータリーシェード36の左右方向に延びている。第1周面36cは、回転軸A2の周囲を同心状に延びている。すなわち、第1周面36cと回転軸A2との距離は一定である。
【0036】
右ロータリーシェード36は、第2周面36dを有している。第2周面36dは、第1周面36cの左側に配置されている。第2周面36dは、回転軸A2と平行に、右ロータリーシェード36の左右方向に延びている。第2周面36dは、回転軸A2の周囲を同心状に延びている。すなわち、第2周面36dと回転軸A2との距離は一定である。また、第2周面36dと回転軸A2との距離は、第1周面36cと回転軸A2との距離よりも大きい。
【0037】
右ロータリーシェード36は、第3周面36eを有している。第3周面36eは、第1周面36cと第2周面36dを接続するように延びている。第3周面36eは、回転軸A2と非平行な向きに延びる傾斜面を形成している。
【0038】
右ロータリーシェード36は、第4周面36fを有している。第4周面36fは、第2周面36dの左側に配置されている。第4周面36fは、回転軸A2と平行に、右ロータリーシェード36の左右方向に延びている。第4周面36fは、回転軸A2の周囲を非同心状に延びている。すなわち、第4周面36fと回転軸A2との距離は、右ロータリーシェード36の回転軸A2を中心とした回転角度に応じて変化する。
【0039】
図6の(e)は、図4とは逆方向から見た右ロータリーシェード36の外観を示している。右ロータリーシェード36は、第1平坦面36gを有している。第1平坦面36gは、回転軸A2と平行に、右ロータリーシェード36の左右方向に延びている。第1周面36cの周方向一端部、第2周面36dの周方向一端部、第3周面36eの周方向一端部、および第4周面36fの周方向一端部は、第1平坦面36gに連続している。
【0040】
右ロータリーシェード36は、第2平坦面36hを有している。第2平坦面36hは、回転軸A2と平行に、右ロータリーシェード36の左右方向に延びている。第1周面36cの周方向他端部は、第2平坦面36hに連続している。
【0041】
図4図6の(e)に示すように、右ロータリーシェード36は、ねじれ端面36iを有している。ねじれ端面36iは、第1部分36i1と第2部分36i2を有している。第1部分36i1は、第3周面36eと第4周面36fを接続するように延びている。第2部分36i2は、第1部分36i1と第2平坦面36hを接続するように延びている。第1部分36i1と第2部分36i2は、境界縁36i3により区切られている。
【0042】
ねじれ端面36iは、回転軸A2周りに延びている。ねじれ端面36iの周方向一端部は、第1平坦面36gに連続している。ねじれ端面36iの周方向他端部は、第2平坦面36hに連続している。ねじれ端面36iが第1平坦面36gに連続する位置と、ねじれ端面36iが第2平坦面36hに連続する位置とは、回転軸A2の方向について異なっている。すなわち、ねじれ端面36iの周方向一端部を回転軸A2上に投射した位置と、ねじれ端面36iの周方向他端部を回転軸A2上に投射した位置とは異なっている。
【0043】
図5の(a)は、図3の(b)に示した状態から180度回転させた右ロータリーシェード36を車両10の前方から見た状態を示している。このとき、回転軸A2の上方においては、第1周面36c、第2周面36d、および第3周面36eにより形成される端縁が、投影レンズ34の後方焦点Fの近傍に配置される。第1周面36cにより形成される端縁36c1は、車両10の前方から見て投影レンズ34の光軸A1(水平基準線Hと垂直基準線Vの交点に対応)の左方に配置されて回転軸A2と平行に延びている。第2周面36dにより形成される端縁36d1は、車両10の前方から見て光軸A1の右方に配置されて回転軸A2と平行に延びている。第3周面36eにより形成される端縁36e1は、車両10の前方から見て光軸A1の左方に配置され、回転軸A2に対して傾斜して延びつつ、端縁36c1と端縁36d1を接続している。
【0044】
図5の(b)は、これらの端縁36c1、36d1、36e1が、車両10の前方に配置された仮想鉛直スクリーンに投影されることにより形成される配光パターンを示している。この配光パターンは、右ロービームパターン50(第1配光パターンの一例)に相当する。右ロービームパターン50は、前方車両にグレアを与えないように車両10の近距離前方を照明する配光パターンである。
【0045】
右ロービームパターン50は、その上端縁に第1水平カットオフライン51、第2水平カットオフライン52、および傾斜カットオフライン53を有している。以降の説明においては、第1水平カットオフライン51、第2水平カットオフライン52、および傾斜カットオフライン53を、必要に応じて「右横カットオフライン54」と総称する。
【0046】
第1水平カットオフライン51は、端縁36d1により形成される。第1水平カットオフライン51は、垂直基準線Vの右方かつ水平基準線Hの下方において水平基準線Hと平行に延びており、対向車線側カットオフラインとして利用される。第2水平カットオフライン52は、端縁36c1により形成される。第2水平カットオフライン52は、垂直基準線Vの左方で水平基準線Hに沿って延びており、自車線側カットオフラインとして利用される。傾斜カットオフライン53は、端縁36e1により形成される。傾斜カットオフライン53は、第1水平カットオフライン51の左端から左上方に向かって斜めに延び、第2水平カットオフライン52の右端に接続している。
【0047】
すなわち、シェード駆動機構37(第2駆動機構の一例)が、図5の(a)に示す位置(第1角度位置の一例)まで右ロータリーシェード36を回転させたとき、端縁36c1、36d1、36e1(ロータリーシェードの第1端縁の一例)が、右横カットオフライン54(第1配光パターンの周縁部の一例)として投影レンズ34の前方に投影される。端縁36c1、36d1、36e1の上方を通過する光は、右横カットオフライン54の下方を照明する。
【0048】
図5の(c)は、図5の(a)に示す状態から、右方から見て時計回りに90度回転させた右ロータリーシェード36を、車両10の前方から見た状態を示している。このとき、回転軸A2の上方においては、第1平坦面36gと第2平坦面36hにより、空間36jが区画されている。
【0049】
空間36jは、投影レンズ34の光軸A1を含んでいる。そのため光源31から出射され、リフレクタ33により反射された光は、遮られることなく空間36jおよび投影レンズ34を通過し、車両10の前方に図5の(d)に示す右ハイビームパターン55を形成する。右ハイビームパターン55は、車両10の前方を遠方まで広範囲に照明する配光パターンである。
【0050】
図6の(a)は、図5の(a)に示す状態から、右方から見て反時計回りに90度回転させた右ロータリーシェード36を、車両10の前方から見た状態を示している。このとき、回転軸A2の上方においては、第1周面36c、第2周面36d、第3周面36eによりそれぞれ形成される端縁36c2、36d2、36e2、およびねじれ端面36iの境界縁36i3が、投影レンズ34の後方焦点Fの近傍に配置される。第1周面36cにより形成される端縁36c2は、車両10の前方から見て投影レンズ34の光軸A1の左方に配置されて回転軸A2と平行に延びている。第2周面36dにより形成される端縁36d2は、車両10の前方から見て光軸A1の右方に配置されて回転軸A2と平行に延びている。第3周面36eにより形成される端縁36e2は、車両10の前方から見て光軸A1の左方に配置され、回転軸A2に対して傾斜して延びつつ、端縁36c2と端縁36d2を接続している。ねじれ端面36iの境界縁36i3は、車両10の前方から見て光軸A1の右方に配置され、回転軸A2に対して傾斜して延びている。境界縁36i3の右方には、空間36k1が区画されている。
【0051】
図6の(b)は、これらの端縁36c2、36d2、36e2、36i3が、車両10の前方に配置された仮想鉛直スクリーンに投影されることにより形成される配光パターンを示している。この配光パターンは、部分的右ハイビームパターン60(第2配光パターンの一例)に相当する。部分的右ハイビームパターン60は、右ロービームパターン50よりも照明面積が大きく、右ハイビームパターン55よりも照明面積が小さい。
【0052】
部分的右ハイビームパターン60は、横カットオフライン61と縦カットオフライン62を有している。横カットオフライン61(第2配光パターンの第1周縁部の一例)は、端縁36c2、36d2、36e2(ロータリーシェードの第2端縁の一例)により形成される。横カットオフライン61は、水平基準線Hに沿って延びている。縦カットオフライン62(第2配光パターンの第2周縁部の一例)は、ねじれ端面36iの境界縁36i3(ねじれ端面の端縁の一例)によって形成される。縦カットオフライン62は、横カットオフライン61の右端から右上方に向かって斜めに延びている。
【0053】
すなわち、シェード駆動機構37が、図6の(a)に示す位置(第2角度位置の一例)まで右ロータリーシェード36を回転させたとき、端縁36c2、36d2、36e2が横カットオフライン61として投影レンズ34の前方に投影され、境界縁36i3が縦カットオフライン62として投影レンズ34の前方に投影される。端縁36c2、36d2、36e2の上方を通過する光は、横カットオフライン61の下方を照明する。空間36k1を通過する光は、縦カットオフライン62の右方を照明する。部分的右ハイビームパターン60の用途については後述する。
【0054】
図6の(c)は、図6の(a)に示す状態から、右方から見て反時計回りに45度回転させた右ロータリーシェード36を、車両10の前方から見た状態を示している。このとき、回転軸A2の上方においては、第1周面36c、第2周面36d、第3周面36eによりそれぞれ形成される端縁36c3、36d3、36e3、およびねじれ端面36iの第2部分36i2の外周縁36i4が、投影レンズ34の後方焦点Fの近傍に配置される。第1周面36cにより形成される端縁36c3は、車両10の前方から見て投影レンズ34の光軸A1の左方に配置されて回転軸A2と平行に延びている。第2周面36dにより形成される端縁36d3は、車両10の前方から見て光軸A1の右方に配置されて回転軸A2と平行に延びている。第3周面36eにより形成される端縁36e3は、車両10の前方から見て光軸A1の左方に配置され、回転軸A2に対して傾斜して延びつつ、端縁36c3と端縁36d3を接続している。ねじれ端面36iの第2部分36i2の外周縁36i4は、車両10の前方から見て光軸A1の右方に配置され、回転軸A2に対して傾斜して延びている。外周縁36i4の右方には、空間36k2が区画されている。
【0055】
図6の(d)は、これらの端縁36c3、36d3、36e3、および外周縁36i4が、車両10の前方に配置された仮想鉛直スクリーンに投影されることにより形成される配光パターンを示している。この配光パターンも、部分的右ハイビームパターン60の一例である。横カットオフライン61は、端縁36c3、36d3、36e3(ロータリーシェードの第2端縁の一例)により形成され、縦カットオフライン62は、外周縁36i4(ねじれ端面の端縁の一例)によって形成される。
【0056】
すなわち、シェード駆動機構37が、図6の(c)に示す位置(第2角度位置の一例)まで右ロータリーシェード36を回転させたとき、端縁36c3、36d3、36e3が横カットオフライン61として投影レンズ34の前方に投影され、外周縁36i4が縦カットオフライン62として投影レンズ34の前方に投影される。端縁36c3、36d3、36e3の上方を通過する光は、横カットオフライン61の下方を照明する。空間36k2を通過する光は、縦カットオフライン62の右方を照明する。図6の(b)に示す状態と比較すると、縦カットオフライン62は垂直基準線Vにより近く、縦カットオフライン62の右方の照明領域が広い。
【0057】
図6の(e)は、図6の(c)に示す状態から、右方から見て反時計回りに45度回転させた右ロータリーシェード36を、車両10の前方から見た状態を示している。このとき、回転軸A2の上方においては、第1周面36cにより形成される端縁36c4と、ねじれ端面36iの第2部分36i2の外周縁36i5が、投影レンズ34の後方焦点Fの近傍に配置される。第1周面36cにより形成される端縁36c4は、車両10の前方から見て投影レンズ34の光軸A1の左方に配置されて回転軸A2と平行に延びている。ねじれ端面36iの第2部分36i2の外周縁36i5は、垂直基準線Vを横切るように、回転軸A2に対して傾斜して延びている。外周縁36i5の右方には、空間36k3が区画されている。
【0058】
図6の(f)は、これらの端縁36c4と外周縁36i5が、車両10の前方に配置された仮想鉛直スクリーンに投影されることにより形成される配光パターンを示している。この配光パターンも、部分的右ハイビームパターン60の一例である。横カットオフライン61は、端縁36c4により形成され、縦カットオフライン62は、外周縁36i5によって形成される。
【0059】
すなわち、シェード駆動機構37が、図6の(e)に示す位置(第2角度位置の一例)まで右ロータリーシェード36を回転させたとき、端縁36c4(ロータリーシェードの第2端縁の一例)が横カットオフライン61として投影レンズ34の前方に投影され、外周縁36i5(ねじれ端面の端縁の一例)が縦カットオフライン62として投影レンズ34の前方に投影される。端縁36c4の上方を通過する光は、横カットオフライン61の下方を照明する。空間36k3を通過する光は、縦カットオフライン62の右方を照明する。図6の(d)に示す状態と比較すると、縦カットオフライン62は垂直基準線Vにより近く、縦カットオフライン62の右方の照明領域が広い。
【0060】
シェード駆動機構37が、図6の(a)に示す位置と図6の(e)に示す位置の間で右ロータリーシェード36を回転させることにより、部分的右ハイビームパターン60の縦カットオフライン62として投影されるねじれ端面36iの一部が、右ロータリーシェード36の左右方向に変位する。ねじれ端面36iは、回転軸A2周りに連続的に延びているため、縦カットオフライン62の位置を左右方向に連続的に変化させることができる。
【0061】
前述のように、右ロータリーシェード36は、回転軸A2と同心状に延びる第1周面36cを有している。したがって、前方への投影の対象となる端縁36c1〜36c4の上下方向の位置が、右ロータリーシェード36の回転に伴って変化しない。したがって、右ロービームパターン50と部分的右ハイビームパターン60の切替え、および部分的右ハイビームパターン60における縦カットオフライン62の変位に伴い、当該端縁の投影像(第2水平カットオフライン52、および横カットオフライン61)の位置が変化しない。したがって、配光パターンの変化時において運転者が感じる違和感を抑制できる。
【0062】
図1に示すように、左前照灯ユニット22Lの灯室25Lには、左灯具ユニット30Lが収容されている。左灯具ユニット30Lは、図2に示す右灯具ユニット30Rと同一の構成を有しているため、図示および繰り返しとなる説明は省略する。左灯具ユニット30Lは、図2に示す右灯具ユニット30Rが備える右ロータリーシェード36に代えて、左ロータリーシェード46を有している。
【0063】
図7は、左ロータリーシェード46の外観を示す斜視図である。左ロータリーシェード46は、回転軸A3を有している。後に図8図9を参照して詳述するように、シェード駆動機構37による駆動に基づく回転軸A3を中心とする回転角度に応じて異なる形状の端縁が、投影レンズ34の後方焦点Fの近傍に配置されるような周面および端面を有する形状とされている。
【0064】
光源31から出射された光は、リフレクタ33によって反射されて前方に向かう。その光の一部は、左ロータリーシェード46によって遮られる。このとき投影レンズ34の後方焦点Fの近傍に配置されている端縁の形状が、車両10の前方に形成される配光パターンの周縁の一部として投影される。
【0065】
左ロータリーシェード46は、第1端部46aを有している。第1端部46aは、左ロータリーシェード46の左端部に配置されている。第1端部46aは、回転軸A3と同軸に形成された軸穴を有している。当該軸穴は、シェード駆動機構37と結合される。
【0066】
左ロータリーシェード46は、第2端部46bを有している。第2端部46aは、左ロータリーシェード46の右端部に配置されている。第2端部46bは、回転軸A3と同軸に形成された軸穴を有している。当該軸穴は、支持部38と結合される。
【0067】
左ロータリーシェード46は、第1周面46cを有している。第1周面46cは、第2端部46bの左側に配置されている。第1周面46cは、回転軸A3と平行に、右ロータリーシェード36の左右方向に延びている。第1周面46cは、回転軸A3の周囲を同心状に延びている。すなわち、第1周面46cと回転軸A3との距離は一定である。
【0068】
左ロータリーシェード46は、第2周面46dを有している。第2周面46dは、第1周面46cの左側に配置されている。第2周面46dは、回転軸A3と平行に、左ロータリーシェード46の左右方向に延びている。第2周面46dは、回転軸A3の周囲を同心状に延びている。すなわち、第2周面46dと回転軸A3との距離は一定である。また、第2周面46dと回転軸A3との距離は、第1周面46cと回転軸A3との距離よりも大きい。
【0069】
左ロータリーシェード46は、第3周面46eを有している。第3周面46eは、第1周面46cと第2周面46dを接続するように延びている。第3周面46eは、回転軸A3と非平行な向きに延びる傾斜面を形成している。
【0070】
左ロータリーシェード46は、第4周面46fを有している。第4周面46fは、第2端部46bと第1周面46cを接続するように延びている。第4周面46fは、回転軸A3と平行に、左ロータリーシェード46の左右方向に延びている。第4周面46fは、回転軸A3の周囲を非同心状に延びている。すなわち、第4周面46fと回転軸A3との距離は、左ロータリーシェード46の回転軸A3を中心とした回転角度に応じて変化する。
【0071】
図9の(e)は、図7とは逆方向から見た左ロータリーシェード46の外観を示している。左ロータリーシェード46は、第1平坦面46gを有している。第1平坦面46gは、回転軸A3と平行に、左ロータリーシェード46の左右方向に延びている。第1周面46cの周方向一端部、第2周面46dの周方向一端部、第3周面46eの周方向一端部、および第4周面46fの周方向一端部は、第1平坦面46gに連続している。
【0072】
左ロータリーシェード46は、第2平坦面46hを有している。第2平坦面46hは、回転軸A3と平行に、左ロータリーシェード46の左右方向に延びている。第1周面46cの周方向他端部は、第2平坦面46hに連続している。
【0073】
図7図9の(e)に示すように、左ロータリーシェード46は、回転軸A3周りに延びるねじれ端面46iを有している。ねじれ端面46iは、第1部分46i1と第2部分46i2を有している。第1部分46i1は、第1周面46cと第4周面46fを接続するように延びている。第2部分46i2は、第1部分46i1と第2平坦面46hを接続するように延びている。第1部分46i1と第2部分46i2は、境界縁46i3により区切られている。
【0074】
ねじれ端面46iの周方向一端部は、第1平坦面46gに連続している。ねじれ端面46iの周方向他端部は、第2平坦面46hに連続している。ねじれ端面46iが第1平坦面46gに連続する位置と、ねじれ端面46iが第2平坦面46hに連続する位置とは、回転軸A3の方向について異なっている。すなわち、ねじれ端面46iの周方向一端部を回転軸A3上に投射した位置と、ねじれ端面46iの周方向他端部を回転軸A3上に投射した位置とは異なっている。
【0075】
図8の(a)は、図3の(b)に対応する状態から180度回転させた左ロータリーシェード46を車両10の前方から見た状態を示している。このとき、回転軸A3の上方においては、第1周面46c、第2周面46d、および第3周面46eにより形成される端縁が、投影レンズ34の後方焦点Fの近傍に配置される。第1周面46cにより形成される端縁46c1は、車両10の前方から見て投影レンズ34の光軸A1(水平基準線Hと垂直基準線Vの交点に対応)の左方に配置されて回転軸A3と平行に延びている。第2周面46dにより形成される端縁46d1は、車両10の前方から見て光軸A1の右方に配置されて回転軸A3と平行に延びている。第3周面46eにより形成される端縁46e1は、車両10の前方から見て光軸A1の左方に配置され、回転軸A3に対して傾斜して延びつつ、端縁46c1と端縁46d1を接続している。
【0076】
図8の(b)は、これらの端縁46c1、46d1、46e1が、車両10の前方に配置された仮想鉛直スクリーンに投影されることにより形成される配光パターンを示している。この配光パターンは、左ロービームパターン70(第1配光パターンの一例)に相当する。左ロービームパターン70は、前方車両にグレアを与えないように車両10の近距離前方を照明する配光パターンである。
【0077】
左ロービームパターン70は、その上端縁に第1水平カットオフライン71、第2水平カットオフライン72、および傾斜カットオフライン73を有している。以降の説明においては、第1水平カットオフライン71、第2水平カットオフライン72、および傾斜カットオフライン73を、必要に応じて「左横カットオフライン74」と総称する。
【0078】
第1水平カットオフライン71は、端縁46d1により形成される。第1水平カットオフライン71は、垂直基準線Vの右方かつ水平基準線Hの下方において水平基準線Hと平行に延びており、対向車線側カットオフラインとして利用される。第2水平カットオフライン72は、端縁46c1により形成される。第2水平カットオフライン72は、垂直基準線Vの左方で水平基準線Hに沿って延びており、自車線側カットオフラインとして利用される。傾斜カットオフライン73は、端縁46e1により形成される。傾斜カットオフライン73は、第1水平カットオフライン71の左端から左上方に向かって斜めに延び、第2水平カットオフライン72の右端に接続している。
【0079】
すなわち、シェード駆動機構37(第2駆動機構の一例)が、図5の(a)に示す位置(第1角度位置の一例)まで左ロータリーシェード46を回転させたとき、端縁46c1、46d1、46e1(ロータリーシェードの第1端縁の一例)が、左横カットオフライン74(第1配光パターンの周縁部の一例)として投影レンズ34の前方に投影される。端縁46c1、46d1、46e1の上方を通過する光は、左横カットオフライン74の下方を照明する。
【0080】
図8の(c)は、図8の(a)に示す状態から、右方から見て時計回りに90度回転させた左ロータリーシェード46を、車両10の前方から見た状態を示している。このとき、回転軸A3の上方においては、第1平坦面46gと第2平坦面46hにより、空間46jが区画されている。
【0081】
空間46jは、投影レンズ34の光軸A1を含んでいる。そのため光源31から出射され、リフレクタ33により反射された光は、遮られることなく空間46jおよび投影レンズ34を通過し、車両10の前方に図8の(d)に示す左ハイビームパターン75を形成する。左ハイビームパターン75は、車両10の前方を遠方まで広範囲に照明する配光パターンである。
【0082】
図9の(a)は、図8の(a)に示す状態から、右方から見て反時計回りに90度回転させた左ロータリーシェード46を、車両10の前方から見た状態を示している。このとき、回転軸A3の上方においては、第1周面46c、第2周面46d、第3周面46eによりそれぞれ形成される端縁46c2、46d2、46e2、およびねじれ端面46iの境界縁46i3が、投影レンズ34の後方焦点Fの近傍に配置される。第1周面46cにより形成される端縁46c2は、車両10の前方から見て投影レンズ34の光軸A1の左方に配置されて回転軸A3と平行に延びている。第2周面46dにより形成される端縁46d2は、車両10の前方から見て光軸A1の右方に配置されて回転軸A3と平行に延びている。第3周面46eにより形成される端縁46e2は、車両10の前方から見て光軸A1の左方に配置され、回転軸A3に対して傾斜して延びつつ、端縁46c2と端縁34d2を接続している。ねじれ端面46iの境界縁46i3は、車両10の前方から見て光軸A1の左方に配置され、回転軸A3に対して傾斜して延びている。境界縁46i3の左方には、空間46k1が区画されている。
【0083】
図9の(b)は、これらの端縁46c2、46d2、46e2、46i3が、車両10の前方に配置された仮想鉛直スクリーンに投影されることにより形成される配光パターンを示している。この配光パターンは、部分的左ハイビームパターン80(第2配光パターンの一例)に相当する。部分的左ハイビームパターン80は、左ロービームパターン70よりも照明面積が大きく、左ハイビームパターン75よりも照明面積が小さい。
【0084】
部分的左ハイビームパターン80は、横カットオフライン81と縦カットオフライン82を有している。横カットオフライン81(第2配光パターンの第1周縁部の一例)は、端縁46c2、46d2、46e2(ロータリーシェードの第2端縁の一例)により形成される。横カットオフライン81は、水平基準線Hに沿って延びている。縦カットオフライン82(第2配光パターンの第2周縁部の一例)は、ねじれ端面46iの境界縁46i3(ねじれ端面の端縁の一例)によって形成される。縦カットオフライン82は、横カットオフライン81の左端から左上方に向かって斜めに延びている。
【0085】
すなわち、シェード駆動機構37が、図9の(a)に示す位置(第2角度位置の一例)まで左ロータリーシェード46を回転させたとき、端縁46c2、46d2、46e2が横カットオフライン81として投影レンズ34の前方に投影され、境界縁46i3が縦カットオフライン82として投影レンズ34の前方に投影される。端縁46c2、46d2、46e2の上方を通過する光は、横カットオフライン81の下方を照明する。空間46k1を通過する光は、縦カットオフライン82の左方を照明する。部分的左ハイビームパターン80の用途については後述する。
【0086】
図9の(c)は、図9の(a)に示す状態から、右方から見て反時計回りに45度回転させた左ロータリーシェード46を、車両10の前方から見た状態を示している。このとき、回転軸A3の上方においては、第2周面46d、第3周面46eによりそれぞれ形成される端縁46d3、46e3、およびねじれ端面46iの第2部分46i2の外周縁46i4が、投影レンズ34の後方焦点Fの近傍に配置される。第2周面46dにより形成される端縁46d3は、車両10の前方から見て光軸A1の右方に配置されて回転軸A3と平行に延びている。第3周面46eにより形成される端縁46e3は、車両10の前方から見て光軸A1の左方に配置され、回転軸A3に対して傾斜して延びつつ、端縁46c3と端縁46d3を接続している。ねじれ端面46iの第2部分46i2の外周縁46i4は、車両10の前方から見て光軸A1の左方に配置され、回転軸A3に対して傾斜して延びている。外周縁46i4の左方には、空間46k2が区画されている。
【0087】
図9の(d)は、これらの端縁46d3、46e3、および外周縁46i4が、車両10の前方に配置された仮想鉛直スクリーンに投影されることにより形成される配光パターンを示している。この配光パターンも、部分的左ハイビームパターン80の一例である。横カットオフライン81は、端縁46d3、46e3(ロータリーシェードの第2端縁の一例)により形成され、縦カットオフライン82は、外周縁46i4(ねじれ端面の端縁の一例)によって形成される。
【0088】
すなわち、シェード駆動機構37が、図9の(c)に示す位置(第2角度位置の一例)まで左ロータリーシェード46を回転させたとき、端縁46d3、46e3が横カットオフライン81として投影レンズ34の前方に投影され、外周縁46i4が縦カットオフライン82として投影レンズ34の前方に投影される。端縁46d3、46e3の上方を通過する光は、横カットオフライン81の下方を照明する。空間46k2を通過する光は、縦カットオフライン82の左方を照明する。図9の(b)に示す状態と比較すると、縦カットオフライン82は垂直基準線Vにより近く、縦カットオフライン82の左方の照明領域が広い。
【0089】
図9の(e)は、図9の(c)に示す状態から、右方から見て反時計回りに45度回転させた左ロータリーシェード46を、車両10の前方から見た状態を示している。このとき、回転軸A3の上方においては、第2周面46dにより形成される端縁46d4と、ねじれ端面46iの第2部分46i2の外周縁46i5が、投影レンズ34の後方焦点Fの近傍に配置される。第2周面46dにより形成される端縁46d4は、車両10の前方から見て投影レンズ34の光軸A1の左方に配置されて回転軸A3と平行に延びている。ねじれ端面46iの第2部分46i2の外周縁46i5は、垂直基準線Vを横切るように、回転軸A3に対して傾斜して延びている。外周縁46i5の左方には、空間46k3が区画されている。
【0090】
図9の(f)は、これらの端縁46d4と外周縁46i5が、車両10の前方に配置された仮想鉛直スクリーンに投影されることにより形成される配光パターンを示している。この配光パターンも、部分的左ハイビームパターン80の一例である。横カットオフライン81は、端縁46d4により形成され、縦カットオフライン82は、外周縁46i5によって形成される。
【0091】
すなわち、シェード駆動機構37が、図9の(e)に示す位置(第2角度位置の一例)まで左ロータリーシェード46を回転させたとき、端縁46d4(ロータリーシェードの第2端縁の一例)が横カットオフライン81として投影レンズ34の前方に投影され、外周縁46i5(ねじれ端面の端縁の一例)が縦カットオフライン82として投影レンズ34の前方に投影される。端縁46d4の上方を通過する光は、横カットオフライン81の下方を照明する。空間46k3を通過する光は、縦カットオフライン82の左方を照明する。図9の(d)に示す状態と比較すると、縦カットオフライン82は垂直基準線Vにより近く、縦カットオフライン82の左方の照明領域が広い。
【0092】
シェード駆動機構37が、図9の(a)に示す位置と図9の(e)に示す位置の間で左ロータリーシェード46を回転させることにより、部分的左ハイビームパターン80の縦カットオフライン82として投影されるねじれ端面46iの一部が、左ロータリーシェード46の左右方向に変位する。ねじれ端面46iは、回転軸A3周りに連続的に延びているため、縦カットオフライン82の位置を左右方向に連続的に変化させることができる。
【0093】
前述のように、左ロータリーシェード46は、回転軸A3と同心状に延びる第1周面46dを有している。したがって、前方への投影の対象となる端縁46d1〜46d4の上下方向の位置が、左ロータリーシェード46の回転に伴って変化しない。したがって、左ロービームパターン70と部分的左ハイビームパターン80の切替え、および部分的左ハイビームパターン80における縦カットオフライン82の変位に伴い、当該端縁の投影像(第1水平カットオフライン71、および横カットオフライン81)の位置が変化しない。したがって、配光パターンの変化時において運転者が感じる違和感を抑制できる。
【0094】
図3の(a)に示すように、右灯具ユニット30Rは、スイブルアクチュエータ39を備えている。スイブルアクチュエータ39は、回転軸A4を中心に右灯具ユニット30Rの少なくとも一部を左右方向に旋回させることにより、投影レンズ34の光軸A1の向きを右灯具ユニット30Rの左右方向に変えることができるように構成されている。回転軸A4は、投影レンズ34の後方焦点Fを通り、右灯具ユニット30Rの上下方向に延びている。図示を省略するが、左灯具ユニット30Lも同様の構成を有している。スイブルアクチュエータ39の用途については、詳しく後述する。
【0095】
図10は、本実施形態に係る前照灯制御システム11が備える統合制御部14の機能構成を模式的に示す図である。統合制御部14は、第1情報取得部141と第2情報取得部142を備えている。
【0096】
第1情報取得部141は、車両10の舵角についての情報(第1情報)を取得するように構成されている。第1情報は、図1に示した車輪速センサ16、操舵角センサ17より入力される信号に基づいて取得されうる。また、カメラ18より取得される車両10の前方の画像を舵角の判断に利用してもよい。これらに加えてあるいは代えて、図示しないナビゲーションシステム、車車間通信部、路車間通信部を通じて得られる情報を舵角の判断に利用してもよい。
【0097】
第2情報取得部142は、車両10の前方についての情報(第2情報)を取得するように構成されている。第2情報は、車両10の前方における前方車両や歩行者などの有無を含む。第2情報は、図1に示したカメラ18より入力される信号に基づいて取得されうる。これらに加えてあるいは代えて、図示しないナビゲーションシステム、車車間通信部、路車間通信部を通じて得られる情報を、前方情報の取得に利用してもよい。
【0098】
統合制御部14は、第1制御部143を備えている。第1制御部143は、第1情報取得部141と機能的に接続されている。第1制御部143は、右灯具ユニット30Rおよび左灯具ユニット30Lがそれぞれ備えるスイブルアクチュエータ39(第1駆動機構の一例)と通信可能に接続されている。第1制御部143は、第1情報取得部141が取得した車両10の舵角情報に基づいて各投影レンズ34の光軸A1の向きを定めるように、各スイブルアクチュエータ39を制御する。
【0099】
統合制御部14は、第2制御部144を備えている。第2制御部144は、第2情報取得部142と機能的に接続されている。第2制御部144は、右灯具ユニット30Rおよび左灯具ユニット30Lがそれぞれ備えるシェード駆動機構37(第2駆動機構の一例)と通信可能に接続されている。第2制御部144は、第1制御部143により定められた各光軸A1の向きを基準として、第2情報取得部142が取得した車両10の前方情報に基づいて、部分的右ハイビームパターン60の縦カットオフライン62および部分的左ハイビームパターン80の縦カットオフライン82の位置を定めるように、各シェード駆動機構37を制御する。
【0100】
図11の(a)は、部分的右ハイビームパターン60と部分的左ハイビームパターン80を用いたADB制御を説明する模式図である。第2制御部144は、ハイビーム配光の実行中において、車両10の前方に前方車両90が存在することを示す情報を第2情報取得部142より取得すると、配光を部分的右ハイビームパターン60と部分的左ハイビームパターン80に切り替える制御を行なう。
【0101】
具体的には、第2制御部144が、右灯具ユニット30Rと左灯具ユニット30Lがそれぞれ備えるシェード駆動機構37を制御し、右ロータリーシェード36と左ロータリーシェード46を回転させる。より詳しくは、部分的右ハイビームパターン60の縦カットオフライン62が前方車両90の右方に配置され、部分的左ハイビームパターン80の縦カットオフライン82が前方車両90の左方に配置されるように、右ロータリーシェード36と左ロータリーシェード46の回転角度位置が決定される。これにより、縦カットオフライン62の左方に形成される非照明領域と縦カットオフライン82の右方に形成される非照明領域が重なり、前方車両90を含むように非照明領域が形成される。したがって、前方車両90に与えるグレアを抑制しつつ、前方の視認性が確保された配光を実現できる。
【0102】
図11の(b)に示すように車両10と前方車両90の相対位置が変化すると、当該事実が第2情報取得部142により検出される。第2制御部144は、縦カットオフライン62が引き続き前方車両90の右方に配置され、縦カットオフライン82が引き続き前方車両90の左方に配置されるように、各シェード駆動機構37を制御して右ロータリーシェード36と左ロータリーシェード46を回転させる。これにより、前方車両90を引き続き含むように、非照明領域が形成される。
【0103】
図11の(c)は、スイブルアクチュエータ39を用いたスイブル制御を説明するための模式図である。スイブル制御は、車両10の舵角に応じて、車両10の進行方向に対応するように各投影レンズ34の光軸A1の向き(水平基準線Hが垂直基準線VR、VLにそれぞれ交わる点に対応)を変え、曲路走行時においても進行方向が照明されるようにするものである。図11の(c)においては、車両10が右曲路を進行している状態が例示されている。
【0104】
情報取得部14は、例えば車輪速センサ16と操舵角センサ17からの入力に基づいて、車両10の舵角すなわち進行方向を算出する。第制御部14は、第情報取得部14が算出した舵角に基づいて、各投影レンズ34の光軸A1の適切な向きを決定する。第制御部14は、決定した光軸A1の向きに基づいて、各スイブルアクチュエータ39の動作量を決定する。図11の(c)に示した例においては、車両10は右方向への転舵がなされていると判断される。よって、各投影レンズ34の光軸A1の向きが右方へ変化するように、各スイブルアクチュエータ39の動作が制御される。右灯具ユニット30Rの垂直基準線VRと左灯具ユニット30Lの垂直基準線VLが、図11の(b)に示す状態よりも右方に移動している。
【0105】
スイブル制御の対象となる配光パターンは、前述の右ロービームパターン50、右ハイビームパターン55、部分的右ハイビームパターン60、左ロービームパターン70、左ハイビームパターン75、および部分的左ハイビームパターン80の全てである。図11(c)に示した例においては、部分的右ハイビームパターン60と部分的左ハイビームパターン80が対象とされている。右灯具ユニット30Rが備える投影レンズ34の光軸A1の向きの変化量と左灯具ユニット30Lが備える投影レンズ34の光軸A1の向きの変化量は、同じであっても異なっていてもよい。図11の(c)においては、両変化量が相違する例が示されている。
【0106】
第2制御部144は、スイブル制御の実行中において、車両10の前方に前方車両90が存在することを示す情報を第2情報取得部142より取得すると、配光を部分的右ハイビームパターン60と部分的左ハイビームパターン80に切り替え、ADB制御を行なう。すなわち、部分的右ハイビームパターン60の縦カットオフライン62が前方車両90の右方に配置され、部分的左ハイビームパターン80の縦カットオフライン82が前方車両90の左方に配置されるように、右ロータリーシェード36と左ロータリーシェード46の回転角度位置が決定される。これにより、縦カットオフライン62の左方に形成される非照明領域と縦カットオフライン82の右方に形成される非照明領域が重なり、前方車両90を含むように非照明領域が形成される。したがって、前方車両90に与えるグレアを抑制しつつ、前方の視認性が確保された配光を実現できる。
【0107】
本実施形態の構成によれば、スイブル制御は、ADB制御の影響を受けないため、各投影レンズ34の光軸A1の向きが常に最適化され、部分的右ハイビームパターン60と部分的左ハイビームパターン80における照度が最も高い部分(各パターンの中央部)が車両10の進行方向に対して適切な位置に配置される。これにより、車両進行方向の視認性が確保される。また、ADB制御は、右ロータリーシェード36のねじれ端面36iと左ロータリーシェード46のねじれ端面46iを利用して行なわれるため、縦カットオフライン62、82の位置を連続的に変化させることができる。これにより、配光パターン形状の変化により運転者が感じる違和感を抑制しつつ、前方車両に与えるグレアの抑制が可能である。さらに、車両10の舵角情報に基づくスイブル制御と車両10の前方情報に基づくADB制御が独立して実行されるため、両制御の協調を前提とした複雑な制御設計を必要としない。したがって、制御負荷の増大を抑制しつつ、前方車両に与えるグレアの抑制と車両進行方向の視認性確保を両立できる。
【0108】
また、本実施形態の構成においては、第2制御部144が、第1制御部143により定められた各投影レンズ34の光軸A1の向きを基準として、縦カットオフライン62、82の位置を定めるように各シェード駆動機構37を制御している。
【0109】
スイブル制御による配光パターン全体の左右方向への変位量と、ロータリーシェードを用いたADB制御による縦カットオフラインの左右方向への変位量とでは、前者の方が大きい。まずスイブル制御によって各投影レンズ34の光軸A1の方向を定め(直進走行時における初期方向を維持する場合を含む)、当該方向を基準としてADB制御を実行することにより、ロータリーシェードによって縦カットオフラインが変位可能な範囲を実質的に広げることができる。すなわち、スイブル制御による車両進行方向の視認性確保に影響を及ぼすことなく、グレア抑制効果の及ぶ範囲を広げることができる。したがって、制御負荷の増大を抑制しつつ、前方車両に与えるグレアの抑制と車両進行方向の視認性確保を両立できる。
【0110】
上記の第1実施形態においては、ロービームパターンを形成するための光源31および投影レンズ34は、ハイビームパターンあるいは部分的ハイビームパターンを形成するためにも用いられている。しかしながら、ハイビームパターンあるいは部分的ハイビームパターンを形成するための光源および投影レンズを、ロービームパターンを形成するための光源および投影レンズとは独立して設ける構成としてもよい。そのような構成を、本発明の第2実施形態として説明する。
【0111】
図12は、本発明の第2実施形態に係る前照灯制御システム11Aの機能構成を模式的に示す図である。第1実施形態に係る前照灯制御システム11と実質的に同一の構成や機能を有する要素には同一の参照番号を付与し、繰返しとなる説明は省略する。
【0112】
前照灯制御システム11Aは、右灯具ユニット30RAと左灯具ユニット30LAを備えている。右灯具ユニット30RAと左灯具ユニット30Lは、それぞれロービームユニットLUとハイビームユニットHUを含んでいる。各ロービームユニットLUは、第1光源311、第1投影レンズ341、およびシェード40を備えている。各ハイビームユニットHUは、第2光源312と第2投影レンズ342を備えている。右灯具ユニット30RのハイビームユニットHUは、右ロータリーシェード36を備えている。左灯具ユニット30LのハイビームユニットHUは、左ロータリーシェード46を備えている。
【0113】
右灯具ユニット30RAの第1光源311から出射された光の一部は、シェード40によって遮られる。右灯具ユニット30RAの第1投影レンズ341は、第1光源311から出射された光によりシェード40の端縁を前方に投影し、右ロービームパターン50A(図13参照)を形成するように配置されている。
【0114】
右灯具ユニット30RAの第2光源312から出射された光の一部は、右ロータリーシェード36によって遮られる。右灯具ユニット30RAの第2投影レンズ342は、第2光源312から出射された光により右ロータリーシェード36の回転角度位置に応じた端縁を前方に投影し、部分的右ハイビームパターン60A(図13参照)を形成するように配置されている。右ロータリーシェード36の回転角度位置によっては、図4の(d)に示したものと同様の右ハイビームパターンを形成できる。
【0115】
左灯具ユニット30LAの第1光源311から出射された光の一部は、シェード40によって遮られる。左灯具ユニット30LAの第1投影レンズ341は、第1光源311から出射された光によりシェード40の端縁を前方に投影し、左ロービームパターン70A(図13参照)を形成するように配置されている。
【0116】
左灯具ユニット30LAの第2光源312から出射された光の一部は、左ロータリーシェード46によって遮られる。左灯具ユニット30LAの第2投影レンズ342は、第2光源312から出射された光により左ロータリーシェード46の回転角度位置に応じた端縁を前方に投影し、部分的左ハイビームパターン80A(図13参照)を形成するように配置されている。左ロータリーシェード46の回転角度位置によっては、図8の(d)に示したものと同様の左ハイビームパターンを形成できる。
【0117】
右灯具ユニット30Rにおいては、ロービームユニットLUとハイビームユニットHUが、共通の基台41に支持されている。基台41は、回転軸42を有している。スイブルアクチュエータ39は、回転軸42と機械的に接続されている。スイブルアクチュエータ39は、回転軸42を中心に、基台41を回転させることができる。すなわち、スイブルアクチュエータ39(第1駆動機構の一例)は、第1投影レンズ341の光軸の向きと第2投影レンズ342の光軸の向きを同時に変えるように構成されている。
【0118】
図13の(a)は、部分的右ハイビームパターン60Aと部分的左ハイビームパターン80Aを用いたADB制御を説明する模式図である。第2制御部144は、ハイビーム配光の実行中において、車両10の前方に前方車両90が存在することを示す情報を第2情報取得部142より取得すると、配光を部分的右ハイビームパターン60Aと部分的左ハイビームパターン80Aに切り替える制御を行なう。
【0119】
具体的には、第2制御部144が、右灯具ユニット30RAと左灯具ユニット30LAがそれぞれ備えるシェード駆動機構37を制御し、右ロータリーシェード36と左ロータリーシェード46を回転させる。より詳しくは、部分的右ハイビームパターン60Aの縦カットオフライン62が前方車両90の右方に配置され、部分的左ハイビームパターン80Aの縦カットオフライン82が前方車両90の左方に配置されるように、右ロータリーシェード36と左ロータリーシェード46の回転角度位置が決定される。これにより、縦カットオフライン62の左方に形成される非照明領域と縦カットオフライン82の右方に形成される非照明領域が重なり、前方車両90を含むように非照明領域が形成される。したがって、前方車両90に与えるグレアを抑制しつつ、前方の視認性が確保された配光を実現できる。
【0120】
図13の(b)に示すように車両10と前方車両90の相対位置が変化すると、当該事実が第2情報取得部142により検出される。第2制御部144は、縦カットオフライン62が引き続き前方車両90の右方に配置され、縦カットオフライン82が引き続き前方車両90の左方に配置されるように、各シェード駆動機構37を制御して右ロータリーシェード36と左ロータリーシェード46を回転させる。これにより、前方車両90を引き続き含むように、非照明領域が形成される。
【0121】
図13の(c)は、スイブルアクチュエータ39を用いたスイブル制御を説明するための模式図である。スイブル制御は、車両10の舵角に応じて、車両10の進行方向に対応するように各灯具ユニットにおける第1投影レンズ341および第2投影レンズ342の光軸の向き(水平基準線Hが垂直基準線VR、VLにそれぞれ交わる点に対応)を変え、曲路走行時においても進行方向が照明されるようにするものである。図13の(c)においては、車両10が右曲路を進行している状態が例示されている。
【0122】
情報取得部14は、例えば車輪速センサ16と操舵角センサ17からの入力に基づいて、車両10の舵角すなわち進行方向を算出する。第制御部14は、第情報取得部14が算出した舵角に基づいて、各灯具ユニットにおける第1投影レンズ341および第2投影レンズ342の光軸の適切な向きを決定する。第制御部14は、決定した光軸の向きに基づいて、各スイブルアクチュエータ39の動作量を決定する。図13の(c)に示した例においては、車両10は右方向への転舵がなされていると判断される。よって、各灯具ユニットにおける第1投影レンズ341および第2投影レンズ342の光軸の向きが右方へ変化するように、各スイブルアクチュエータ39の動作が制御される。右灯具ユニット30RAの垂直基準線VRと左灯具ユニット30LAの垂直基準線VLが、図13の(b)に示す状態よりも右方に移動している。右灯具ユニット30RAが備える第1投影レンズ341および第2投影レンズ342の光軸の向きの変化量と、左灯具ユニット30LAが備える第1投影レンズ341および第2投影レンズ342の光軸の向きの変化量は、同じであっても異なっていてもよい。図13の(c)においては、両変化量が相違する例が示されている。
【0123】
第2制御部144は、スイブル制御の実行中において、車両10の前方に前方車両90が存在することを示す情報を第2情報取得部142より取得すると、配光を部分的右ハイビームパターン60Aと部分的左ハイビームパターン80Aに切り替え、ADB制御を行なう。すなわち、部分的右ハイビームパターン60Aの縦カットオフライン62が前方車両90の右方に配置され、部分的左ハイビームパターン80Aの縦カットオフライン82が前方車両90の左方に配置されるように、右ロータリーシェード36と左ロータリーシェード46の回転角度位置が決定される。これにより、縦カットオフライン62の左方に形成される非照明領域と縦カットオフライン82の右方に形成される非照明領域が重なり、前方車両90を含むように非照明領域が形成される。したがって、前方車両90に与えるグレアを抑制しつつ、前方の視認性が確保された配光を実現できる。
【0124】
前述のように、本実施形態の構成においては、スイブルアクチュエータ39が、第1投影レンズ341の光軸の向きと第2投影レンズ342の光軸の向きを同時に変えるように構成されている。そのため、ロービーム配光用の光源および投影レンズとハイビーム配光用の光源および投影レンズが独立している構成においても、第2制御部144が、第1制御部143により定められた各灯具ユニットにおける第1投影レンズ341と第2投影レンズ342の光軸の向きを基準として、縦カットオフライン62、82の位置を定めることができる。まずスイブル制御によって各灯具ユニットにおける第1投影レンズ341と第2投影レンズ342の光軸の方向を定め(直進走行時における初期方向を維持する場合を含む)、当該方向を基準としてADB制御を実行することにより、ロータリーシェードによって縦カットオフラインが変位可能な範囲を実質的に広げることができる。すなわち、スイブル制御による車両進行方向の視認性確保に影響を及ぼすことなく、グレア抑制効果の及ぶ範囲を広げることができる。したがって、制御負荷の増大を抑制しつつ、前方車両に与えるグレアの抑制と車両進行方向の視認性確保を両立できる。
【0125】
上記の第1実施形態と第2実施形態においては、ロービームパターンとハイビームパターン(部分的ハイビームパターンを含む)の双方がスイブル制御の対象とされている。しかしながら、ロービームパターンのみをスイブル制御の対象としてもよい。そのような構成を、本発明の第3実施形態として説明する。
【0126】
図14は、本発明の第3実施形態に係る前照灯制御システム11Bの機能構成を模式的に示す図である。第2実施形態に係る前照灯制御システム11Aと実質的に同一の構成や機能を有する要素には同一の参照番号を付与し、繰返しとなる説明は省略する。
【0127】
前照灯制御システム11Bは、右灯具ユニット30RBと左灯具ユニット30LBを備えている。右灯具ユニット30RBと左灯具ユニット30Bは、それぞれロービームユニットLUとハイビームユニットHUを含んでいる。各ロービームユニットLUは、第1光源311、第1投影レンズ341、およびシェード40を備えている。各ハイビームユニットHUは、第2光源312と第2投影レンズ342を備えている。右灯具ユニット30RのハイビームユニットHUは、右ロータリーシェード36を備えている。左灯具ユニット30LのハイビームユニットHUは、左ロータリーシェード46を備えている。
【0128】
右灯具ユニット30RBの第1光源311から出射された光の一部は、シェード40によって遮られる。右灯具ユニット30RBの第1投影レンズ341は、第1光源311から出射された光によりシェード40の端縁を前方に投影し、右ロービームパターン50B(図15参照)を形成するように配置されている。
【0129】
右灯具ユニット30RBの第2光源312から出射された光の一部は、右ロータリーシェード36によって遮られる。右灯具ユニット30RBの第2投影レンズ342は、第2光源312から出射された光により右ロータリーシェード36の回転角度位置に応じた端縁を前方に投影し、部分的右ハイビームパターン60B(図15参照)を形成するように配置されている。右ロータリーシェード36の回転角度位置によっては、図5の(d)に示したものと同様の右ハイビームパターンを形成できる。
【0130】
左灯具ユニット30LBの第1光源311から出射された光の一部は、シェード40によって遮られる。左灯具ユニット30LBの第1投影レンズ341は、第1光源311から出射された光によりシェード40の端縁を前方に投影し、左ロービームパターン70B(図15参照)を形成するように配置されている。
【0131】
左灯具ユニット30LBの第2光源312から出射された光の一部は、左ロータリーシェード46によって遮られる。左灯具ユニット30LBの第2投影レンズ342は、第2光源312から出射された光により左ロータリーシェード46の回転角度位置に応じた端縁を前方に投影し、部分的左ハイビームパターン80B(図15参照)を形成するように配置されている。左ロータリーシェード46の回転角度位置によっては、図8の(d)に示したものと同様の左ハイビームパターンを形成できる。
【0132】
本実施形態においては、ロービームユニットLUのみが回転軸43を中心に回動可能な構成とされている。スイブルアクチュエータ39は、回転軸43に接続されている。スイブルアクチュエータ39(第1駆動機構の一例)は、第1投影レンズ341の光軸の向きを、第2投影レンズ342の光軸の向きとは独立して変えるように構成されている。
【0133】
図15の(a)は、部分的右ハイビームパターン60Bと部分的左ハイビームパターン80Bを用いたADB制御を説明する模式図である。第2制御部144は、ハイビーム配光の実行中において、車両10の前方に前方車両90が存在することを示す情報を第2情報取得部142より取得すると、配光を部分的右ハイビームパターン60Bと部分的左ハイビームパターン80Bに切り替える制御を行なう。
【0134】
具体的には、第2制御部144が、右灯具ユニット30RBと左灯具ユニット30LBがそれぞれ備えるシェード駆動機構37を制御し、右ロータリーシェード36と左ロータリーシェード46を回転させる。より詳しくは、部分的右ハイビームパターン60Bの縦カットオフライン62が前方車両90の右方に配置され、部分的左ハイビームパターン80Bの縦カットオフライン82が前方車両90の左方に配置されるように、右ロータリーシェード36と左ロータリーシェード46の回転角度位置が決定される。これにより、縦カットオフライン62の左方に形成される非照明領域と縦カットオフライン82の右方に形成される非照明領域が重なり、前方車両90を含むように非照明領域が形成される。したがって、前方車両90に与えるグレアを抑制しつつ、前方の視認性が確保された配光を実現できる。
【0135】
図15の(b)に示すように車両10と前方車両90の相対位置が変化すると、当該事実が第2情報取得部142により検出される。第2制御部144は、縦カットオフライン62が引き続き前方車両90の右方に配置され、縦カットオフライン82が引き続き前方車両90の左方に配置されるように、各シェード駆動機構37を制御して右ロータリーシェード36と左ロータリーシェード46を回転させる。これにより、前方車両90を引き続き含むように、非照明領域が形成される。
【0136】
図15の(c)は、スイブルアクチュエータ39を用いたスイブル制御を説明するための模式図である。スイブル制御は、車両10の舵角に応じて、車両10の進行方向に対応するように各灯具ユニットにおける第1投影レンズ341の光軸の向き(水平基準線Hが垂直基準線VR、VLにそれぞれ交わる点に対応)を変え、曲路走行時においても進行方向が照明されるようにするものである。図15の(c)においては、車両10が右曲路を進行している状態が例示されている。
【0137】
情報取得部14は、例えば車輪速センサ16と操舵角センサ17からの入力に基づいて、車両10の舵角すなわち進行方向を算出する。第制御部14は、第情報取得部14が算出した舵角に基づいて、各灯具ユニットにおける第1投影レンズ341の光軸の適切な向きを決定する。第制御部14は、決定した光軸の向きに基づいて、各スイブルアクチュエータ39の動作量を決定する。図15の(c)に示した例においては、車両10は右方向への転舵がなされていると判断される。よって、各灯具ユニットにおける第1投影レンズ341光軸の向きが右方へ変化するように、各スイブルアクチュエータ39の動作が制御される。これにより、右ロービームパターン50Bと左ロービームパターン70Bが、図15の(b)に示す状態よりも右方に移動する。

【0138】
図15の(c)においては、右ロービームパターン50Bの垂直基準線VRと左ロービームパターン70Bの垂直基準線VLが、図15の(b)に示す状態よりも右方に移動している。右灯具ユニット30RBが備える第1投影レンズ341の光軸の向きの変化量と、左灯具ユニット30LBが備える第1投影レンズ341の光軸の向きの変化量は、同じであっても異なっていてもよい。図15の(c)においては、両変化量が相違する例が示されている。ハイビームパターン55、75の垂直基準線VHは、スイブル制御の前後において変化していない。
【0139】
第2制御部144は、スイブル制御の実行中において、車両10の前方に前方車両90が存在することを示す情報を第2情報取得部142より取得すると、配光を部分的右ハイビームパターン60Bと部分的左ハイビームパターン80Bに切り替え、ADB制御を行なう。すなわち、部分的右ハイビームパターン60Bの縦カットオフライン62が前方車両90の右方に配置され、部分的左ハイビームパターン80Bの縦カットオフライン82が前方車両90の左方に配置されるように、右ロータリーシェード36と左ロータリーシェード46の回転角度位置が決定される。これにより、縦カットオフライン62の左方に形成される非照明領域と縦カットオフライン82の右方に形成される非照明領域が重なり、前方車両90を含むように非照明領域が形成される。したがって、前方車両90に与えるグレアを抑制しつつ、前方の視認性が確保された配光を実現できる。
【0140】
前述のように、本実施形態の構成によれば、スイブルアクチュエータ39が、第1投影レンズ341の光軸の向きを、第2投影レンズ342の光軸の向きとは独立して変えるように構成されている。そのため、スイブル制御とADB制御の独立性をより高めることができる。両制御の協調を前提とした複雑な制御設計を必要としないため、制御負荷の増大を抑制しつつ、前方車両に与えるグレアの抑制と車両進行方向の視認性確保を両立可能である。
【0141】
上記の実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更・改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは明らかである。
【0142】
上記の実施形態においては、主として色収差対策の容易性という観点から、光源31として半導体発光素子を用い、投影レンズ34として樹脂性レンズを用いている。しかしながら、光源31としてはレーザ光源や、ランプ光源(白熱ランプ、ハロゲンランプ、放電ランプ、ネオンランプなど)を用いてもよい。また投影レンズ34としては、ガラスレンズを用いてもよい。
【符号の説明】
【0143】
11、11A、11B:前照灯制御システム、12:前照灯装置、31:光源、34:投影レンズ、36:右ロータリーシェード、36c:第1周面、36c1、36c4:端縁、36i:ねじれ端面、36i3、境界縁、36i4、36i5:ねじれ端面の外周縁、46:左ロータリーシェード、46d:第2周面、46d1、46d3:端縁、46i:ねじれ端面、46i3:境界縁、46i4、36i5:ねじれ端面の外周縁、50、50A、50B:右ロービームパターン、54:横カットオフライン、60、60A、60B:部分的右ハイビームパターン、61:横カットオフライン、62:縦カットオフライン、70、70A、70B:左ロービームパターン、74:横カットオフライン、80、80A、80B:部分的左ハイビームパターン、81:横カットオフライン、82:縦カットオフライン、141:第1情報取得部、142:第2情報取得部、143:第1制御部、144:第2制御部、311、第1光源、312:第2光源、341:第1投影レンズ、342:第2投影レンズ、A1:投影レンズの光軸、A2:右ロータリーシェードの回転軸、A3:左ロータリーシェードの回転軸、F:投影レンズの後方焦点
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