【実施例】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0028】
図1は本発明の実施例を示す土構造物の耐震・耐降雨対策斜面安定化工法の標準横断面図である。
【0029】
この図において、1はのり面保護工であり、ジオセル内に中詰材(砕石、モルタル、植生土のう、現地発生土等)を充填した連続のり面保護工である。2は連結工であり、ジオセルのセル面に設けた溝または孔に連結用棒鋼を通して、セル展開面の縦・横方向を連結・一体化させ、ジオセルによるのり面保護工を強化する(ジオセルの構造及びジオセルの接続方法については
図6参照)。3は地山補強土工であり、対象とする斜面のすべり崩壊に対して、地山補強材の引抜き抵抗により安定を確保するための斜面補強工である。のり面保護工と一体化させた構造とすることにより、すべりの規模に応じた補強材を選定・適用することができる。4は頭部定着工であり、のり面保護工1と地山補強土工3を一体化させる目的で、支圧板を補強材頭部にナット等で定着し、連結することにより、対象構造物の耐震性や耐降雨性を向上させる。
【0030】
図2は本発明の実施例を示すジオセルを示す図であり、
図2(a)は標準展開図、
図2(b)は上面図、
図2(c)は側面図である。
図3は本発明の実施例を示すジオセルの接続方法を示す図であり、
図3(a)は結束バンドによる結束の様子を示す図、
図3(b)結束された状態を示す図である。
【0031】
ジオセルとは、ジオシンセティックスに分類される高密度ポリエチレン(HDPE)製の帯状シート材料を超音波で千鳥配置に熱溶着した、立体ハニカム構造の製品である。ジオセル本体を展開し、セル内に中詰材(砕石、モルタル、植生土のう、現地発生土等)を充填して、セル内の中詰材を拘束して強度を確保することにより、連続した構造物を形成することができる。
【0032】
ジオセルの特徴を以下のように示すことができる。
【0033】
(1)軽量・コンパクトである。
【0034】
ジオセルは軽量でコンパクトに畳んであるため広い保管場所を必要とせず、小運搬が容易である。
【0035】
(2)多様な中詰材を活用できる。
【0036】
ジオセルの中詰材には砕石、モルタル、植生土のう、現地発生土等が利用できる。
【0037】
(3)施工が容易である。
【0038】
施工はジオセル本体を展開し、設置後に中詰材を充填して締固めるだけである。
【0039】
(4)柔軟性がある。
【0040】
ジオセルは柔軟性があるため、多少の凹凸のあるのり面や地盤に追随できる。
【0041】
(5)緑化が容易である。
【0042】
植生土や植生土のうを使用することにより緑化が容易にできる。
【0043】
図4は本発明の実施例を示す土構造物の耐震・耐降雨対策斜面安定化工法の施行フローチャートである。
【0044】
この図において、(1)のり面へ地山補強材を打設し、地山補強土工を施す(ステップS1)。
【0045】
(2)次に、のり面へジオセルの敷設を行い、のり面保護工を施す(ステップS2)。
【0046】
(3)次に、連結工を施す(ステップS3)。
【0047】
(4)次に、頭部定着工を施す(ステップS4)。
【0048】
(5)次に、中詰工(砕石やモルタル)を施す(ステップS5)。
【0049】
(6)最後に、モルタル吹付・植生を行い完成する(ステップS6)。
【0050】
図5は本発明の実施例を示す小口径角型鋼管の斜視図であり、
図5(a)はその小口径角型補強材の全体標準寸法を示す斜視図、
図5(b)はその小口径角型補強材の先端と先端付近の形状を示す斜視図、
図5(c)はその小口径角型補強材の先端閉塞型を示す図、
図5(d)はその小口径角型補強材の開放型を示す図である。
【0051】
図5(a)に示すように、補強材としての小口径角型鋼管11の標準寸法は、小口径の幅Wは標準寸法50×50〜150×150mm程度、厚さt1.6〜12.0mm程度の角型鋼管とし、掘削対象地盤によって適切なものを適時選択する。
【0052】
その先端とその先端の形状は、
図5(b)に示すようである。
【0053】
その先端付近、もしくは先端に
図5(c)に示すようスパイラルビット12(先端閉塞型)を取り付け、さらに
図5(d)に示すように先端付近に連続してスクリューフィン13を溶接し(先端開放型)、スクリューフィン13の回転による推進力、もしくは、スパイラルビット12の回転力によって地盤を掘削・削孔する。
【0054】
図6は本発明の実施例を示す小口径角型鋼管とその内部構造の概略を示す図、
図7は本発明の実施例を示すのり面への小口径角型鋼管の打設状態を示す模式図、
図8は本発明の実施例を示すのり面への小口径角型鋼管のジオセルへの頭部定着工の模式図であり、
図8(a)はその頭部定着工を示すのり面保護工の断面図、
図8(b)はその頭部定着工を示す平面図である。
【0055】
図6に示すように、小口径角型鋼管11の内部には矩形パッカー15が設けられた棒状補強材14が配置されている。また、その小口径角型鋼管11には、削孔対象の地盤条件に応じて50〜100cm程度の間隔で注入孔16を開ける。その注入孔16の外側にはセメントペースト等の注入の際にバルブとして作用するゴムスリーブ17で覆う。また、小口径角型鋼管11と周辺地盤との摩擦力を確保するために、セメントペースト等を繰り返し注入を実施するが、その際には注入予定箇所の上下に採用し小口径角型鋼管11の寸法に応じた矩形パッカー15を使用し、二重管方式によって入念な注入工事を実施する。
【0056】
更に、矩形パッカー15の位置を上下させることによって、注入位置を所定の位置に変更することができるので、必要と判断される個所には計画的に再注入を実施することができる。
【0057】
また、対象地盤が逸散しやすい、亀裂が発達している、もしくは空洞がある場合などには、当初、セメントミルク系の注入材を、その後、浸透型の注入材を二重管方式のダブルパッカー15、15を用いて繰り返し注入することによって補強体径を拡大することができる。
【0058】
そのため、従来の地山補強土工と比較して大きな極限引抜力を得ることができる(補強材の許容引張り力に対しては、必要な鋼材厚を選定する)。
【0059】
小口径角型鋼管11内にはセメントペーストを充填し、二重防食構造とし、その頭部には複数枚の押圧板を設置し、地山部ならびに補強材周辺の充填材を確実に押印する。最下部に設置する押圧板の寸法は、小口径角型鋼管11の寸法より若干小さくしてその内部に固定し、
図7および
図8に示すように、高剛性プレート18を構築する。
【0060】
この高剛性プレート18にはあらかじめ鉄筋19を溶接しておき、法面保護工として採用した立体ハニカム構造のジオセル21の縦・横方向に挿入されている連結用鉄筋22,23と一体化させる。
【0061】
この高剛性プレート18は、1つのセル内に収まる形状を基本とするが、その押圧効果による高い補強・拘束効果を法面保護工として採用した立体ハニカム構造のジオセル21に伝達させるために、求められる要求に応じて複数のセルにまたがる構造でも良い。
【0062】
立体ハニカム構造のジオセル21の高さは、10〜15cm程度を標準とするが、縦・横方向に挿入する連結用鉄筋22,23の径、防錆対策、ならびに施工性を考慮して、適切な径および位置にパンチングするものとする。
【0063】
図8に示すように、棒状補強材、高剛性プレート18、およびのり面保護工としてのジオセル21の三構造体を一体化させるために、ジオセル21の高さの1/2程度まで吹付モルタル24のモルタル充填を基本とし、その上部は中詰め材として植生土のう25、種子吹付、あるいは砕石等で充填する。
【0064】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。