(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
太陽光発電により得られる電力を利用して原水から飲用に適した飲用水を製造するシステムであって、原水を貯水する原水貯槽と、原水を飲用に適した飲用水とするために処理する少なくとも一種類の造水用機器と、原水を原水貯槽から造水用機器に供給する原水ポンプと、造水用機器で処理された処理水を貯水する処理水貯槽と、処理水を処理水貯槽から飲用水として供給する送水ポンプと、原水ポンプ、送水ポンプおよび造水用機器を制御する制御手段と、を有して構成され、造水用機器は複数個が並列に設けられ、制御手段は、少なくとも太陽光発電量データに基づいて、原水ポンプおよび送水ポンプの運転量を0〜100%の範囲内で制御すると共に、並列された各造水用機器に対する通水を個別にオン/オフ制御することを特徴とする、太陽光発電を利用した飲用水製造システム。
制御装置は、前記太陽光発電量データと、太陽光発電を蓄電する蓄電池が保有する電力量のデータとに基づいて原水ポンプおよび送水ポンプの運転並びに造水用機器への通水を制御することを特徴とする、請求項1記載の太陽光発電を利用した飲用水製造システム。
制御装置は、前記太陽光発電量データと、太陽光発電を蓄電する蓄電池が保有する電力量のデータと、過去の電気使用量データとに基づいて原水ポンプおよび送水ポンプの運転並びに造水用機器への通水を制御することを特徴とする、請求項1記載の太陽光発電を利用した飲用水製造システム。
制御装置は、前記データに応じて一の運転モードが選択されるように関連付けされた複数の運転モード選択テーブルを有し、この運転モード選択テーブルを参照して選択された運転モードで原水ポンプおよび送水ポンプの運転並びに造水用機器への通水を制御することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか記載の太陽光発電を利用した飲用水製造システム。
前記造水用機器は、充填剤に通水して処理するろ過器と、膜に通水して処理する膜処理装置とを有してなり、これらろ過器および膜処理装置がいずれも複数個並列されて各々に対する通水をオン/オフ制御することを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか記載の太陽光発電を利用した飲用水製造システム。
制御装置は、並列の各造水用機器に前置したバルブを開閉制御することにより各造水用機器への通水をオン/オフすることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか記載の太陽光発電を利用した飲用水製造システム。
【背景技術】
【0002】
安全かつ健康的な飲用水を製造・供給するシステムは、一般に、ろ過器、吸着塔、除濁装置、膜装置、殺菌装置、消毒装置などを組み合わせた処理装置と、処理装置での処理に必要な加圧水を供給するポンプとを主体として構成されている。
【0003】
水道設備と呼ばれるような大規模な飲用水供給システムは、都市圏などの人口が集中する地域に存在しているため、産業振興開拓中の地域や、離島、レジャー開発地、被災地などでは必ずしも大規模水道設備から常時安定した飲用水供給を受けることができない。したがって、このような地域にあっては小型飲用水製造システムに対する需要が大きい。
【0004】
一方、上記した離島、被災地などの地域では、電力の継続的・安定的供給についても問題があることが多いため、近年では太陽光発電・風力発電・地熱発電などのいわゆる自然エネルギーの開発が進められている。中でも太陽光発電技術はコンパクトなユニットで実施可能であることから注目度が大きく、企業や工業あるいは一般家庭などでも徐々に普及が進んでいる。したがって、太陽光発電で運転可能な小型の飲用水製造システムが開発されれば、離島や被災地などの地域住民にとっては、既存電力会社からの電力供給を受けなくても安全な飲用水をいつでも得ることができるようになり、きわめて有用性が大きいと考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、太陽光発電による発電量は天候(日照)によって大きく左右されることから、太陽光発電による飲用水製造は現実問題として実現不可能であると考えられてきた。この点について
図3を参照して説明する。
【0006】
図3は従来技術による太陽光発電利用の飲用水製造システム構成図である。原水貯槽1に貯水された原水をポンプ2でろ過器3に送水してろ過処理し、このろ過処理水をポンプ4で膜処理装置5に送水して透膜処理し、この透膜処理水を処理水貯槽6に貯水し、ポンプ7で飲用水として供給する。原水貯槽1および処理水貯槽6にはそれぞれ水位計8,9が取り付けられ、各貯槽に貯水されている原水および処理水の水位を計測する。
【0007】
このような従来技術では、原水貯槽1から原水をポンプ圧送するポンプ2、砂や活性炭などのろ材でろ過処理するろ過器3、ろ過器3からろ過処理水をポンプ圧送するポンプ4、限外ろ過膜、精密ろ過膜、イオン交換膜、逆浸透膜などにろ過処理水を透過させる膜処理装置5などの造水のための各機器は、家庭などに配電される一般交流電源PSからの電力供給を受けて運転される。すなわち、これら各機器は、原水貯槽1に所定量以上の原水が貯水されていることが水位計9で確認されていることを前提として、一般交流電源Pからの電力で運転を開始し、処理水貯槽7に処理水が満水になったことを水位計9で検知するまで運転を継続して造水を行い、満水になったときに運転を中止し、ポンプ7により給水が行われることにより処理水貯槽6の水位が低下したときに運転を再開する。この場合、各機器は、処理水貯槽7内の処理水の水位に応じて、100%運転(オン)と0%運転(停止ないしオフ)とを交互に繰り返す。
【0008】
したがって、これらの造水用機器を運転するための電力供給は、100%運転を行うための条件を満たすものでなければならないが、上述したように太陽光発電では天候の影響により100%運転条件の電力容量に達しないことが起こり得る。太陽光発電で得た電力を蓄電池に蓄電しておくことも行われているが、その場合であっても、蓄電池容量が無くなるまでの時間の間しか造水運転を行うことができない。
【0009】
また、造水だけでなく処理水を送水する場合にもポンプ7を運転するために電力が必要とされるが、このための電力容量は造水運転のための電力容量より大幅に小さくて済むので、たとえば悪天候で太陽光発電による発電量が少ない(したがって造水を行うことができない)場合であっても、送水のみであれば十分な電力供給が可能であることが多い。ところが、上記従来技術によると、処理水貯槽6が満水でない場合には自動的に造水運転が行われるのでこのために電力を消費し、本来必要な送水時には蓄電池の余裕がなくなってしまうという不具合が生ずるおそれもある。
【0010】
このように見てくると、飲用水を安定的・継続的に製造するという目的に対して、天候に大きく左右される太陽光発電が真に相応しい電力供給手段であるとは言えず、蓄電池を設けてたとえば3時間以上の運転を可能にするようにしたとしても、安全な飲用水を安定的に供給することができるとは言い切れない不安がある。このことが、太陽光発電が注目され普及しつつあるにもかかわらず、これを飲用水製造に利用することがこれまで実現できなかった大きな理由になっていた。
【0011】
このことは、機器をオン/オフさせる制御しか行わないという従来技術の機能上の問題にも関連しており、たとえば太陽光発電量が50%であれば50%なりの造水・送水運転を行うようにすれば、解決することができるようにも考えられるが、安全性が重要視される飲用水の製造という観点でみると、このような単純な手法では解決できない問題が残る。すなわち、飲用水を製造するためには、除濁ろ過システムとしての砂ろ過装置、活性炭ろ過装置、限外ろ過装置、精密ろ過装置、逆浸透膜装置などを適用する必要があり、単純な造水量の調整では、各装置のろ過機能に障害を来たし、処理水に飲用に適した水質を確保することができなくなるおそれがある。つまり、濁質が取れない、脱塩が不十分になる、不純物を削減できない、など本来の装置能力を低下させてしまい、安心・安全な飲用水を供給することができなくなる。
【0012】
たとえば、特に飲用水の味覚に影響を与える塩類を除去するための逆浸透膜の性能についてみると、TDS:5,000mg/Lの原水を逆浸透膜処理(4インチRO膜を2エレメント使用、回収率40%に固定)したときの供給水量と処理後の水質との相関性を次の表1に示す。この表に示される例では、供給水量が7.5〜15.0m
3/日であれば満足すべき脱塩率低下の効果が得られるが、供給水量が5.0m
3/日以下になると脱塩率が大きく減少し、また、供給水量が17.5m
3/日以上になると膜透過処理能力は良好に維持されるものの膜が閉塞しやすくなる。このことは、この逆浸透膜に所期の性能を発揮させるためには、供給水量を所定の範囲内に維持しなければならないことを意味する。
【0013】
【表1】
【0014】
このため、たとえば太陽光発電量が定格の50%に低下したときに50%なりの造水・送水運転を行おうとしてポンプの運転量(原水の供給量)を50%に制御すると、造水ラインに設けられるろ過器や膜処理装置などの造水用機器への供給水量も50%になってしまい、これによって所期の性能が発揮されなくなるおそれがある。つまり、ろ過器や膜処理装置などの造水用機器を含めた飲用水製造システムの全般について単純に50%運転を行うという手法では、安心・安全な飲用水を安定・継続して供給するという本来の目的が達成できなくなるおそれがある。
【0015】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、太陽光発電により得た電力で飲用水を製造するシステムにおいて、太陽光発電量などに応じて造水・送水の運転量(稼働率)を制御しながら、造水のために必要なろ過器や膜処理装置などの造水用機器が所期の性能を発揮することができるようにして、安心・安全な飲用水を安定的に供給することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この課題を解決するため、請求項1に係る本発明は、太陽光発電により得られる電力を利用して原水から飲用に適した飲用水を製造するシステムであって、原水を貯水する原水貯槽と、原水を飲用に適した飲用水とするために処理する少なくとも一種類の造水用機器と、原水を原水貯槽から造水用機器に供給する原水ポンプと、造水用機器で処理された処理水を貯水する処理水貯槽と、処理水を処理水貯槽から飲用水として供給する送水ポンプと、原水ポンプ、送水ポンプおよび造水用機器を制御する制御手段と、を有して構成され、造水用機器は複数個が並列に設けられ、制御手段は、少なくとも太陽光発電量データに基づいて、原水ポンプおよび送水ポンプの運転量を0〜100%の範囲内で制御すると共に、並列された各造水用機器に対する通水を個別にオン/オフ制御することを特徴とする、太陽光発電を利用した飲用水製造システムである。
【0017】
請求項2に係る本発明は、請求項1記載の太陽光発電を利用した飲用水製造システムにおいて、制御装置は、前記太陽光発電量データと、太陽光発電を蓄電する蓄電池が保有する電力量のデータとに基づいて原水ポンプおよび送水ポンプの運転並びに造水用機器への通水を制御することを特徴とする。
【0018】
請求項3に係る本発明は、請求項1記載の太陽光発電を利用した飲用水製造システムにおいて、制御装置は、前記太陽光発電量データと、太陽光発電を蓄電する蓄電池が保有する電力量のデータと、過去の電気使用量データとに基づいて原水ポンプおよび送水ポンプの運転並びに造水用機器への通水を制御することを特徴とする。
【0019】
請求項4に係る本発明は、請求項1ないし3のいずれか記載の太陽光発電を利用した飲用水製造システムにおいて、制御装置は、前記データに応じて一の運転モードが選択されるように関連付けされた複数の運転モード選択テーブルを有し、この運転モード選択テーブルを参照して選択された運転モードで原水ポンプおよび送水ポンプの運転並びに造水用機器への通水を制御することを特徴とする。
【0020】
請求項5に係る本発明は、請求項1ないし4のいずれか記載の太陽光発電を利用した飲用水製造システムにおいて、前記造水用機器は、充填剤に通水して処理するろ過器と、膜に通水して処理する膜処理装置とを有してなり、これらろ過器および膜処理装置がいずれも複数個並列されて各々に対する通水をオン/オフ制御することを特徴とする。
【0021】
請求項6に係る本発明は、請求項1ないし5のいずれか記載の太陽光発電を利用した飲用水製造システムにおいて、制御装置は、並列の各造水用機器に前置したバルブを開閉制御することにより各造水用機器への通水をオン/オフすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に係る本発明によれば、少なくとも太陽光発電量に基づいて原水ポンプおよび送水ポンプの運転並びに造水用機器への通水が制御されるので、好天で日照の多いときは造水・送水を活発に行い、悪天候や夜間などでは造水・送水を制限または中止し、あるいは造水を中止して送水のみを行うなどの制御を行うことができる効果がある。
【0023】
ここで、ポンプの運転量は太陽光発電量に応じて0〜100%の範囲内で制御されるが、ろ過器や膜処理装置などの造水用機器のうち少なくとも一種類の造水用機器が複数個並列に設けられるので、この並列に設けられる造水用機器への通水を個別にオン/オフ制御することにより、太陽光発電量に応じたポンプ運転量で造水処理を行いながら、各造水用機器に所期の性能を発揮させることを可能にする効果がある。たとえば、太陽光発電量に応じて原水ポンプの運転量を100%と50%のいずれかに制御する場合、50%運転時の送水量(50〜100%送水量)で所期の性能を発揮し得る造水用機器を2個並列して用い、原水ポンプを100%で運転するときは2個の造水用機器に半量ずつ通水し、原水ポンプを50%で運転するときはいずれか一の造水用機器に通水するように制御することによって、上記効果を実現することができる。
【0024】
請求項2に係る本発明によれば、太陽光発電量データだけでなく、太陽光発電を蓄電する蓄電池が保有する電力量のデータを併せて参照した上で原水ポンプおよび送水ポンプの運転並びに造水用機器への通水を制御するので、より的確な制御が可能となり、より継続的・安定的な飲用水供給を実行することができる効果がある。
【0025】
請求項3に係る本発明によれば、太陽光発電量データだけでなく、太陽光発電を蓄電する蓄電池が保有する電力量のデータおよび過去の電気使用量データを併せて参照した上で原水ポンプおよび送水ポンプの運転並びに造水用機器への通水を制御するので、より的確な制御が可能となり、より継続的・安定的な飲用水供給を実行することができる効果がある。
【0026】
請求項4に係る発明によれば、現在の太陽光発電量および蓄電池保有電力量に基づいて適切な運転モードを選択して原水ポンプおよび送水ポンプの運転並びに造水用機器への通水を制御することができる効果がある。
【0027】
請求項5に係る本発明によれば、原水を活性炭、砂、イオン交換樹脂などの充填剤に通してろ過処理すると共に、限外ろ膜、精密ろ膜、逆浸透膜などの膜に通して膜処理することで、より安全性の高い飲用水を製造することができる効果がある。ろ過器および膜処理装置のいずれについても複数個が並列に用いられて個別に通水オン/オフ制御されるので、本来のろ過作用および膜処理作用を損なわない。
【0028】
請求項6に係る本発明によれば、各造水機器に前置させたバルブを開閉制御することで各造水機器への通水を容易にオン/オフ制御することができる効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の一実施形態による太陽光発電利用の飲用水製造システムについて、
図1および
図2を参照して説明する。なお、
図1は、
図3に示す従来技術システムにおける構成およびそれによる処理フローとの相違を端的に示すものであるが、同図においては制御信号や電気の流れについては一部省略されている。これらについては
図2を併せて参照することにより十分に理解することができる。
【0031】
この飲用水製造システム10は、太陽光発電システム30または蓄電システム40から得られる電力を利用して原水から飲用に適した処理水(飲用水)を製造するシステムである。既述したように太陽光発電システム30は日照によって発電量が大きく変動するため、太陽光発電システム30による余剰発電量を蓄電しておく蓄電システム30が設けられている。
【0032】
この飲用水製造システム10は、原水貯槽11に貯水された原水をポンプ12でろ過器13に送水してろ過処理し、このろ過処理水をポンプ14で膜処理装置15に送水して透膜処理し、この透膜処理水を処理水貯槽16に貯水し、ポンプ17で飲用水として供給する。原水貯槽11および処理水貯槽16にはそれぞれ水位計18,19が取り付けられ、各貯槽に貯水されている原水および処理水の水位を計測する。この構成および処理フローは、
図3に示す従来技術システムと基本的に同様である。
【0033】
この飲用水製造システム10では、ろ過器13として2個のろ過器131,132が、原水貯槽11から処理水貯槽16に至る送水ライン20に並列に設けられ、これらろ過器131,132の入力側には各々開閉制御可能なバルブ133,134が設けられている。同様に、膜処理装置15としても2個の膜処理装置151,152が造水ライン20に並列に設けられ、これら膜処理装置151,152の入力側には各々開閉制御可能なバルブ153,154が設けられている。
【0034】
このシステムは、処理フローの観点でみると、原水貯槽11からポンプ12で原水をろ過器131,132に送水してろ過処理し、次いでポンプ14で膜処理装置151,152に送水して膜処理することにより飲用に適した処理水を製造するまでの造水システムWaと、得られた処理水を処理水貯槽16に貯水する貯水システムWbと、この処理水をポンプ17で飲用水として供給する給水システムWcとに大別することができる。造水システムWaにおいては、ポンプ12、ろ過器131,132に関連するバルブ133,134、ポンプ14および膜処理装置151,152に関連するバルブ153,154を駆動するための電力が必要であり、給水システムWcにおいてはポンプ17を駆動するための電力が必要である。したがって、このシステムを稼働させるためには、これらの必要電力が、太陽光発電システム30の発電量および/または蓄電システム40における蓄電量で確保されなければならない。
【0035】
制御ユニット21には、太陽光発電システム20から太陽光発電量を示す発電量データS11と、蓄電システム30における蓄電量を示す蓄電量データS12が、リアルタイムまたは所定インターバルで制御ユニット26に入力される。制御ユニット21は、これらの入力データに基づいて造水量および給水量を決定し、この造水量を実現するために造水システムWaにおけるポンプ12、バルブ133,134、ポンプ14およびバルブ153,154を制御すると共に、上記給水量を実現するために給水システムWcにおけるポンプ17を制御する。これらの制御手法については下記に詳述する。なお、貯水システムWbは膜処理装置151,152による膜処理後の処理水を処理水貯槽16に貯水するだけであるので通常は動力および制御を必要とする機器を含まない。
【0036】
表2は、発電量データS11と蓄電量データS12に基づいて制御ユニット21が造水・給水を行うために参照する運転モード選択テーブルの一例を示す。この運転モード選択テーブルは制御ユニット21に内蔵または付設されたメモリ22に格納され、制御ユニット21は入力データS11,S12をこの運転モード選択テーブルに適用して運転モード1〜4のいずれかを選択する。
【0038】
この運転モード選択テーブルは、発電量を5kw超、2.5〜5kw、1.3〜2.5kwおよび0.3kw未満の4つにランク分けすると共に、蓄電量を5kw超、2.5〜5kw、1.3〜2.5kwおよび0.3〜1.3kwの4つにランク分けして、これらの16通りの組み合わせを4つの運転モードに振り分けるようにしている。ランク分けの数や選択可能な運転モードの数は任意であるが、余りにも多数になると制御が煩雑になる。なお、造水システムWaにおいてポンプ12、14、バルブ133,134,153,154を駆動するための電力並びに給水システムWcにおいてポンプ17を駆動するための電力の他にもシステム制御用電源などに電力が必要となることを考慮して、この運転例では、蓄電量が0.3kw未満の場合は本システム10を停止して、造水も給水も行わないものとした。
【0039】
表2に示す運転モード選択テーブルにより選択された各運転モードにおけるシステム稼働条件の一例を表3に示す。
【0041】
詳しく説明すると、運転モード1ではシステム10の全体をフル稼働して造水・給水を行う。すなわち、ポンプ12を運転量100%で運転して最大量の原水を原水貯槽11からろ過器131,132に供給してこれら2つのろ過器によりろ過処理を行い、ポンプ14を運転量100%で運転して該ろ過処理後の処理水の全量を膜処理装置151,152に供給してこれら2つの膜処理装置により膜処理を行い、さらに、ポンプ17を運転量100%で運転して処理水貯槽16から最大量の処理水を飲用水として供給する。このとき、ろ過器131,132に通じるバルブ133,134および膜処理装置151,152に通じるバルブ153.154はいずれも開かれている。
【0042】
運転モード2では、それぞれ2つずつ並列に設けられているろ過器および膜処理装置のいずれか一方のみを稼働することによりシステム全体として50%造水を行い、その造水量に応じてポンプ17を駆動して50%給水を行う。すなわち、ポンプ12を運転量50%で運転して原水を原水貯槽11からろ過器131,132のいずれか一方(ここではろ過器131)に供給して該ろ過器131によりろ過処理を行い、ポンプ14を運転量50%で運転して該ろ過処理後の処理水の全量を膜処理装置151,152のいずれか一方(ここでは膜処理装置151)に供給して該膜処理装置151により膜処理を行い、さらに、ポンプ17を運転量50%で運転して処理水貯槽16から処理水を飲用水として供給する。このとき、稼働させるろ過器131および膜処理装置151に通じるバルブ133,153はいずれも開かれ、稼働させないろ過器132および膜処理装置152に通じるバルブ134.154はいずれも閉じられている。
【0043】
運転モード3では、それぞれ2つずつ並列に設けられているろ過器および膜処理装置のいずれか一方のみを半量送水で稼働することによりシステム全体として25%造水を行い、その造水量に応じてポンプ17を駆動して25%給水を行う。すなわち、ポンプ12を運転量25%で運転して原水を原水貯槽11からろ過器131,132のいずれか一方(ここではろ過器131)に供給して該ろ過器131によりろ過処理を行い、ポンプ14を運転量25%で運転して該ろ過処理後の処理水の全量を膜処理装置151,152のいずれか一方(ここでは膜処理装置151)に供給して該膜処理装置151により膜処理を行い、さらに、ポンプ17を運転量25%で運転して処理水貯槽16から処理水を飲用水として供給する。運転モード3におけるバルブ開閉状態は運転モード2と同じであり、稼働させるろ過器131および膜処理装置151に通じるバルブ133,153はいずれも開かれ、稼働させないろ過器132および膜処理装置152に通じるバルブ134.154はいずれも閉じられている。
【0044】
運転モード4は、表2およびその説明から理解されるように、多くの電力を消費する造水用機器(ろ過器131,132、膜処理装置151,152)並びにこれら造水用機器に送水するためのポンプ12,14を駆動して造水を行うには電力の余裕が乏しいと判断される場合に選択され、造水を行わず、給水のみを行う。したがって、運転モード4では、ポンプ12,14は駆動せず、また、バルブ133,134およびバルブ153,154はいずれも閉じられ、ポンプ17のみが給水量に応じた25%の運転量で駆動される。
【0045】
ろ過器131,132に対する給水量は、運転モード1ではその両方に対して125L/hの給水量となり、運転モード2ではそのいずれか一方に対して125L/hの給水量となり、運転モード3ではそのいずれか一方に対して63L/hとなり、運転モード4ではその両方に対して給水ゼロとなる。したがって、給水量が63〜125L/hのときに満足できる性能を発揮するものを選択して使用すれば、運転モード1〜3のいずれが選択されていても十分なろ過処理を行うことができる。膜処理装置151,152についても同様である。運転モード2〜4において稼働されないろ過装置および膜処理装置には送水されないので、ろ過装置131,132および膜処理装置151,152は63L/h未満の通水量で使用されることはない。したがって、過小量の通水によって所期の性能が発揮されなくなるような事態(表1参照)は起こり得ない。
【0046】
なお、上記した運転モードによる各システム機器の運転制御は、原水貯槽11に貯水されている原水量および処理水貯槽16に貯水されている処理水量がいずれも十分にあることを前提としている。これらの水量は水位計18,19で計測されて制御ユニット21に逐次データ送信され、水量が十分にないときは、選択された運転モードにかかわらず、造水・給水を停止するように制御する。この制御は従来技術と同様であり、本発明の技術的特徴に直接関連するものではないので、これ以上の説明を省略する。
【0047】
次に、既述した構成および制御手法により本発明の太陽光発電利用の飲用水製造システム10を稼働する場合の具体的な運転状況について、従来技術による場合(
図3)と対比しつつ、
図4〜
図8を参照して以下に詳述する。なお、これらのシステムにおいて、ポンプ2,12は1kw、ポンプ4,14は3kw、ポンプ7,17は1kwの動力を必要とすることを前提条件としてシミュレーションした。
【0048】
図4および
図5には、従来技術による太陽光発電利用の飲用水製造システム(
図3)を運転した場合の太陽光発電量、蓄電量およびシステム運転に要した電気量の推移が示されている。天候条件については、
図4では晴天で太陽光発電が十分に行われる理想的な天候条件を想定し、
図5では午前中は晴天であったが午後から曇りに変わり、太陽光発電が十分に行われなくなった天候条件を想定した。また、いずれの場合も、夜間に外部電源から充電することにより24kwの蓄電量で午前0時を迎えるものとした。
【0049】
理想的な天候条件で従来システムを運転した
図4の場合、スタート時に24kwと十分な蓄電量があり、且つ、日中には太陽光発電量が十分に得られたことから、ようやく一日を通じてシステムを運転継続することができたが、24時間経過した時点では蓄電量がほぼ0まで低下した。また、より劣悪な天候条件で従来システムを運転した
図5の場合は、午前0時に24kwあった蓄電量が18時にはほぼ0まで低下し、それ以降の造水・給水を行うことができなかった。
【0050】
図6〜
図8には、本発明による太陽光発電利用の飲用水製造システム(
図1,
図2)を運転した場合の太陽光発電量、蓄電量およびシステム運転に要した電気量の推移が示されている。天候条件については、
図6および
図8では
図4と同じ理想的な天候条件を想定し、
図7では
図5と同じ晴れ後曇りの天候条件を想定した。また、いずれの場合も、夜間に外部電源から充電することにより15kw(システム必要電力の3倍)の蓄電量で午前0時を迎えるものとした。
【0051】
理想的な天候条件で本発明システムを運転した
図6の場合、スタート時の蓄電量が15kwと
図4の場合より小さいにもかかわらず、ほぼ一日を通じてシステムを運転継続することができた。また、より劣悪な天候条件で本発明システムを運転した
図7の場合は、15kwあった蓄電量が21時頃にはほぼ0まで低下してしまい、それ以降の造水・給水を行うことができなかったが、同じ天候条件で従来システムを運転した
図5の場合より長時間の造水・給水を行うことができた。
【0052】
図8では、太陽光発電による発電量データS11および蓄電量データS12に加えてさらに過去の電気使用量データS13をも加味して運転モードを選択するようにした実施形態(後述)において本発明システムを運転した場合のシミュレーション結果を示すものである。同一天候条件である
図6の場合と比較すると、過去電気使用量データS13をも勘案することにより、
図6の場合よりさらに長くシステムを運転継続することができたことが示されている。
【0053】
これらのシミュレーション結果から、本発明システムによれば、より少ない蓄電量でスタートしても、従来システム使用時に比べてより長時間に亘ってシステムを運転継続することができることが確認された。また、本発明システムを運転した
図6〜
図8の場合も24時間経過後には蓄電量がゼロになっているが、過去の電気使用量実績を踏まえた上で、より積極的に運転モード4を実行するような制御条件(後述)とすることにより、造水システムWaにおける電力消費(ポンプ12用に1kw+ポンプ14用に3kw=合計5kw)が軽減されるので、システム全体としての電力消費量を抑えて蓄電量を確保することができ、このような制御を通じて、飲用水供給を中断させることなく安定的・継続的に行うことが可能になる。また、既述したように、本発明によれば、複数並列に設けた造水用機器を送水量に応じて用いることにより所期の性能を発揮させることができるので、飲用に適した水を安定供給することが可能になる。
【0054】
以上に本発明を実施例およびシミュレーション例を挙げて詳細に説明したが、本発明はこれらの限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載される発明の範囲内において種々多様な変形態様を取り得るものである。たとえば、
図1では造水用機器としてろ過器と膜処理装置とが用いられているが、これらに代えて、またはこれらと共に、他の造水用機器(吸着塔、除濁装置、殺菌装置、消毒装置など)を用いても良い。本発明は、少なくとも一種類の造水用機器を複数個並列に用いることを必須とするが、この要件を満たす限りにおいて、あらゆる具体的態様を包含する。したがって、並列設置する造水用機器は
図1に示すように2個であることに限定されず、3個またはそれ以上の造水用機器を並列設置しても良い。また、並列設置される造水用機器は必ずしも同一の仕様や性能を有するものでなくても良く、異なる仕様や性能を有する造水用機器を並列に用いても良い。
【0055】
また、本発明システムの運転を制御するために少なくとも太陽光発電量を用いることが必要であり、これに加えて、既述実施形態において表2を参照して説明したように太陽光発電量を蓄電する蓄電池が現在保有する蓄電量をも加味してポンプの運転量やバルブの開閉を制御することが好ましいが、さらに、必要に応じて、本システム10における電気使用量実績を記録しておいて、この過去実績をフィードバックさせて制御を行うようにしても良い。
【0056】
すなわち、本発明では発電量や蓄電量に基づいてシステムを運転するので、過去のシステム10内の電気使用量実績(たとえば、昨年の同時期の電気使用量や過去数年間の同時期の電気使用量の平均値)は、経年的な日射量ないし晴天率などの天候条件と相関性を有するものと考えられる。したがって、たとえば現時点の発電量が十分にある場合は、既述した例によれば運転モード1または2(表3)により活発に造水・送水を行うべきことになるが、過去の同時期の電気使用量データS13(
図1)が小さいときは、それほど多くの造水を必要としないと考えられるので、造水・送水を最小限に制限し(たとえば表3の運転モード3)、あるいは造水を行わずに送水のみとする(たとえば表3の運転モード4)などの運転モードにダウングレードする制御を行うものとすることができる。これにより、その分を蓄電システム40における蓄電池への充電に回すことができるので、飲用水供給を中断させることなく安定的・継続的に行うためのシステム制御として優位性が大きいと考えられる。
【0057】
表2に示す運転モード選択テーブルは一例にすぎず、他のロジックで運転モードを選択設定しても良いことは言うまでもない。既述したように、選択可能な運転モードの設定数は任意である。