特許第6284827号(P6284827)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284827
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】開閉器
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/59 20060101AFI20180215BHJP
【FI】
   H01H33/59 D
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-111503(P2014-111503)
(22)【出願日】2014年5月29日
(65)【公開番号】特開2015-225812(P2015-225812A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2017年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161562
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 朗
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 修平
(72)【発明者】
【氏名】恩地 俊行
(72)【発明者】
【氏名】山内 芳准
【審査官】 澤崎 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−038775(JP,A)
【文献】 特開平08−106839(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0007997(US,A1)
【文献】 特開2013−041782(JP,A)
【文献】 特開2013−214406(JP,A)
【文献】 特開2014−216056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流系統の主回路に接続した機械式スイッチの主回路接点に半導体スイッチを並列接続し、前記機械式スイッチの開極動作時に主回路電流を半導体スイッチに転流して機械式スイッチの主回路接点間に発生したアークを消滅させた上で、半導体スイッチに転流した主回路電流を半導体スイッチのOFF制御により遮断するようにした開閉器において、
前記半導体スイッチを、逆直列接続した2個の半導体スイッチング素子と、各半導体スイッチング素子に逆並列接続したFWD(free-wheeling diode)からなる双方向スイッチとして前記機械式スイッチの主回路接点に並列接続した上で、ゲートドライブ回路を介して前記機械式スイッチの開極動作時にその主回路接点間に発生するアーク電圧を半導体スイッチング素子のゲートに印加して半導体スイッチをON/OFF制御させるようにするとともに、前記ゲートドライブ回路には機械式スイッチの開極後に半導体スイッチング素子がターンオフした状態で、前記半導体スイッチング素子のゲートに主回路の電源電圧が順方向に印加されるのを阻止するダイオードを接続したことを特徴とする開閉器。
【請求項2】
請求項1に記載の開閉器において、半導体スイッチのゲートドライブ回路は、その信号入力端と前記半導体スイッチの両端との間に分圧抵抗をT字接続してなる分圧回路と、該分圧回路のT字接続点を挟んで半導体スイッチの両端との間に逆直列接続した一対の逆阻止ダイオードとからなるとを特徴とする開閉器。
【請求項3】
請求項1に記載の開閉器において、機械式スイッチには、1極当たり2個の固定接点と橋絡可動子からなる双接点形の主回路接点を備え、該主回路接点の橋絡可動子に前記ゲートドライブ回路の信号入力端を接続したことを特徴とする開閉器。
【請求項4】
請求項1に記載の開閉器において、機械式スイッチには、2極に分けてその間を直列接続した2組の主回路接点を備え、その主回路接点相互間の接続部位に前記ゲートドライブ回路の信号入力端を接続したことを特徴とする開閉器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流系統の電源回路などに適用する双方向の電流遮断機能を備えた開閉器に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、太陽光発電システム,蓄電池を用いた非常電源システムなどの普及に伴い、これらシステムに適用する直流開閉機器の研究,開発が進んでいる。
【0003】
ところで、従来における直流用の開閉機器(電磁接触器,配線用遮断器,漏電遮断器などの機械式スイッチ)は、開閉動作に伴いその主回路接点間に発生するアークの影響により接点の消耗が進んで動作不良を引き起こすことから、開閉機器の長寿命化,信頼性を高めるためにもアークの消弧対策が重要課題となっている。
【0004】
すなわち、前記の機械式スイッチを直流系統の回路に適用した場合には、スイッチの開極動作によりその接点間に発生した直流アークは交流アークに較べて消弧し難いために、従来から様々なアーク消弧方式が提案されている。その一例として、機械式スイッチを主回路接点としてこの主回路接点に無接点式の半導体スイッチを並列接続し、機械式スイッチの開極動作時に主回路電流を半導体スイッチに転流させて機械式スイッチの主回路接点間に生じたアークを瞬時に消滅させた上で、この半導体スイッチをOFF制御して主回路電流を完全に遮断するようにした開閉器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この開閉器によれば、機械式スイッチにアーク消滅用の付加的な消弧室(消弧グリッド板)を設ける必要無しに、直流の主回路電流を半導体スイッチに転流させて遮断することができる。
【0006】
ところで、特許文献1に開示の開閉器では、半導体スイッチをON,OFF制御するゲートドライブ回路に独立した駆動電源が必要である。そこで、発明者等は前記ゲートドライブ回路の駆動電源部を省略し、その代わりに機械式スイッチの開極動作時にその主回路接点間に発生したアーク電圧を半導体スイッチのゲートに印加して半導体スイッチをターンオフ遷移させるようにした開閉器を先に提案しており(特許文献2参照)、その回路構成を図5に示す。
【0007】
図5の回路図において、1は直流電源と負荷(不図示)との間に配線した主回路(直流回路)、2は主回路1に接続した電磁接触器などの機械式スイッチ、3は機械式スイッチ2に並列接続した無接点式の半導体スイッチであり、図中の(+),(−)は主回路電源の極性を表している。ここで、機械式スイッチ2には、一極当たり一対の固定接点2a,2bと橋絡可動子2cからなる双接点形の主回路接点21を備え、後記するスイッチ操作器(図6に示す電磁接触器の操作用電磁石)により主回路接点21の橋絡可動子2cを開極,閉極位置に駆動するようにしている。
【0008】
一方、半導体スイッチ3は、IGBT,MOS−FETなどの半導体スイッチング素子4(図示例では半導体スイッチングにIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いており、以下“IGBT”と呼称する)と、抵抗5,6からなる分圧回路、過電圧保護用のツェナーダイオード7、およびコンデンサ8を図示のように組み合わせて構成したIGBT4のゲートドライブ回路9からなり、ゲートドライブ回路9の信号入力端(ゲート抵抗5)を機械式スイッチ2の橋絡可動子2cに接続している。
【0009】
また、図6は前記の機械式スイッチ2に適用する電磁接触器の構成図であり、この電磁接触器の頂部に前記半導体スイッチ3の組立体を搭載して電磁接触器の主回路端子に接続するようにしている。なお、図6において、24は電磁接触器のフレーム、25は操作電磁石、26は接圧ばね26aを有する可動子支え、27は前記機械式スイッチの双接点形主回路接点21に対応する主回路端子である。
【0010】
次に、図5に示した開閉器の電流遮断動作を図7(a)〜(d)に基づき説明する。すなわち、機械式スイッチ2(電磁接触器)を閉極した通電状態では、図7(a)の実線矢印で示すように主回路1に流れる主回路電流(直流)が(+)極側から機械式スイッチ2の主回路接点21を経て(−)極側に流れる。なお、この状態ではIGBT4はOFFである。この主回路電流の通電状態から機械式スイッチ2を開極すると、図7(b)で示すように固定接点2a,2bと橋絡可動子2cとの間に直流アークarcが生じてその接点間にアーク電圧が発生する。なお、このアーク電圧は接点材料と接点間のギャップ長により決まるが、開極動作開始直後のアーク電圧は約30Vであり、開極ギャップの拡大に伴ってアーク電圧も増加する。
【0011】
そして、この開極動作に伴って主回路接点間に発生したアーク電圧により、IGBT4のゲートドライブ回路9(図5参照)を通じて図示点線矢印で表す制御電流が流れ、これによりIGBT4のゲートに接続したコンデンサ8が抵抗5,6により分圧された電圧で充電されてゲート電位が上昇する。ここで、コンデンサ8の充電電圧が所定のゲートしきい値を超えるとIGBT4がターンオンして導通状態に切り換わり、いままで機械式スイッチ2の主回路接点21に流れていた主回路電流は、図7(c)の実線矢印で示すようにIGBT4に転流する。
【0012】
これにより、機械式スイッチ2の接点間に生じていたアークは瞬時に消滅する。また、アークの消滅に伴い機械式スイッチ2の接点間に生じていたアーク電圧も消失するので、コンデンサ8の充電電荷は図7(c)の点線矢印で表すようにゲートドライブ回路9の分圧抵抗6を通じて放電される。その結果、IGBT4のゲート−エミッタ間のゲート電圧が低下してIGBT4がターンオフ遷移し、図7(d)で示すように主回路電流が完全に遮断されることになる。
【0013】
この開閉器では、機械式スイッチ2の開極動作時に発生する接点間のアーク電圧をIGBT4のゲートに加えてON/OFF制御させるようにしているので、先記した特許文献1のように独立したゲート駆動電源、およびその電源制御が不要となって半導体スイッチの制御回路を簡略化できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平8−106839号公報
【特許文献2】特開2013−41782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、前記特許文献2に開示されている開閉器は、半導体スイッチ3として主回路1の通電方向に極性を合わせた1個のIGBT4を機械式スイッチ2に並列接続し、機械式スイッチ2の開極動作時に発生する接点間のアーク電圧をゲートドライブ回路に加えて半導体スイッチ3のON,OFF制御を行うようにしている。
【0016】
これにより、半導体スイッチ3には独立したゲート駆動電源が不要となってその制御回路を簡略化できるものの、主回路電流および半導体スイッチ3の通電方向は一方向に限定される。
【0017】
一方、頭記した非常電源システムに適用する蓄電池の充放電回路のように蓄電池の充電時と放電時とで回路電流が逆方向に切り替わる直流回路、あるいは太陽光発電などの分散型直流電源の系統連係で電力の逆潮流を行う直流系統の回路に適用する開閉器には双方向の電流遮断機能が要求される。しかしながら、前記の特許文献2に開示されている開閉器では、双方向の電流遮断機能が要求される直流回路に適用できない。
【0018】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、その目的は図5図6で述べた開閉器(特許文献2)の回路構成を改良し、主回路の機械式スイッチに並列接続した半導体スイッチに双方向の通電,遮断機能を付加して蓄電池の充放電回路、あるいは太陽光発電装置間の電力潮流システムなどにも適用できるようにし、さらに加えて主回路電流の遮断直後に半導体スイッチに印加される主回路の電源電圧により半導体スイッチが誤点弧して主回路電流の遮断不能となる不具合を簡易な手段で確実に防止できるように改良した開閉器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、本発明によれば、直流系統の主回路に接続した機械式スイッチの主回路接点に半導体スイッチを並列接続し、前記機械式スイッチの開極動作時に主回路電流を半導体スイッチに転流して機械式スイッチの主回路接点間に発生したアークを消滅させた上で、半導体スイッチに転流した主回路電流を半導体スイッチのOFF制御により遮断するようにした開閉器において、
前記半導体スイッチを、逆直列接続した2個の半導体スイッチング素子と、各半導体スイッチング素子に逆並列接続したFWD(free-wheeling diode)からなる双方向スイッチとして前記機械式スイッチの主回路接点に並列接続した上で、ゲートドライブ回路を介して前記機械式スイッチの開極動作時にその主回路接点間に発生するアーク電圧を半導体スイッチング素子のゲートに印加して半導体スイッチをON/OFF制御させるようにするとともに、前記ゲートドライブ回路には機械式スイッチの開極後に半導体スイッチング素子がターンオフした状態で、前記半導体スイッチング素子のゲートに主回路の電源電圧が順方向に印加されるのを阻止するダイオードを接続するものとし(請求項1)、ここでゲートドライブ回路、および機械式スイッチの主回路接点は具体的に次記のような態様で構成することができる。
(1)半導体スイッチのゲートドライブ回路は、その信号入力端と前記半導体スイッチの両端との間に分圧抵抗をT字接続した分圧回路と、該分圧回路のT字接続点を挟んで半導体スイッチの両端との間に逆直列接続した一対の逆阻止ダイオードとから構成する(請求項2)。
(2)一方、前記機械式スイッチには、1極当たり2個の固定接点と橋絡可動子からなる双接点形の主回路接点を備え、該主回路接点の橋絡可動子に前記ゲートドライブ回路の信号入力端を接続する(請求項3)。
(3)また、前項2と別な形態として、機械式スイッチには、2極に分けて直列接続した2組の主回路接点を備え、その主回路接点相互間の接続部位に前記ゲートドライブ回路の信号入力端を接続する(請求項4)。
【発明の効果】
【0020】
上記構成の開閉器によれば、次記の効果を奏することができる。
(1)先ず、機械式スイッチの主回路接点に並列接続した半導体スイッチを、逆直列に接続した2個のスイッチング素子(例えばIGBT)と、各スイッチング素子に逆並列接続したFWDからなる双方向半導体スイッチとし、さらに機械式スイッチの開極動作時にその主回路接点に発生したアーク電圧をゲート入力信号として半導体スイッチをON/OFF制御することにより、主回路に流れる主回路電流(直流)の通電方向に左右されることなく、しかも半導体スイッチング素子のゲート制御に独立した駆動電源を備える必要なしに、機械式スイッチの開極動作に同期して主回路電流を機械式スイッチの主回路接点から半導体スイッチに転流させた上で、半導体スイッチのゲート制御により主回路電流を完全に遮断させることができる。
(2)また、前記ゲートドライブ回路には機械式スイッチの開極後に半導体スイッチング素子がターンオフした状態で、前記半導体スイッチング素子のゲートに主回路の電源電圧による順方向のバイアス電圧が印加されるのを阻止するように逆直列接続した一対の逆阻止ダイオードを接続することで、電流遮断後に半導体スイッチング素子のゲートが誤点弧するのを防止して開閉器の動作信頼性を高めることができる。
(3)一方、機械式スイッチの主回路接点は、双接点形接点としてその橋絡可動子にゲートドライブ回路の信号入力端を接続するか、もしくは2極に分け直列接続した2組の主回路接点相互間の接続部位にゲートドライブ回路の信号入力端を接続することができ、ここで2組の主回路接点を直列接続した後者の方式を採用することにより、ゲートドライブ回路の信号入力配線が機械式スイッチの開極,閉極動作の動きを妨げるおそれなしに、機械式スイッチの主回路接点から外部に引き出した開閉器の接続端子を使って簡単に配線できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施例1に係わる開閉器の回路図である。
図2図1による主回路電流の遮断動作説明図であって、(a),(b),(c),(d)はそれぞれ機械式スイッチが閉極している主回路電流の通電状態、機械式スイッチの開極動作開始直後の通電状態、半導体スイッチへの転流状態、および主回路電流遮断後の各状態における通電経路を表す図である。
図3】本発明の実施例2に対応する開閉器の回路図である。
図4】本発明の実施例3に対応する開閉器の回路図である。
図5】特許文献2に開示されている開閉器の回路図である。
図6図1図5に示した開閉器の機械式スイッチに電磁接触器を適用した開閉器の組立構成図である。
図7図5の動作説明図であって、(a),(b),(c),(d)はそれぞれ機械式スイッチが閉極している主回路電流の通電状態、機械式スイッチの開極動作開始直後の通電状態、半導体スイッチへの転流状態、および主回路電流遮断後の各状態における通電経路を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明による実施の形態を図1図4に基づいて説明する。なお、図示実施例の図中で図5図6に対応する部材には同じ符号を付してその説明は省略する。
【0023】
まず、本発明の実施例1に対応する開閉器の回路構成を図1に示す。図1において直流の主回路1に接続する機械式スイッチ2には例えば図6に示した電磁接触器を適用し、その固定接点2a,2bと橋絡可動子2cからなる双接点形の主回路接点21を電磁接触器の操作器により閉極,開極位置に切り換え操作する。
【0024】
また、前記機械式スイッチ2の主回路接点21を挟んでスイッチの主回路端子11と12(図6における電磁接触器の主回路端子27に対応)の間に並列接続した半導体スイッチ3は、逆直列接続したIGBT4−1,4−2と、各IGBT4−1,4−2にそれぞれ逆並列接続したFWD(free-wheeling diode)10−1,10−2とで双方向半導体スイッチ3を構成しており、図示回路ではIGBT4−1のコレクタとIGBT4−2のコレクタを直列に接続し、IGBT4−1とIGBT4−2のエミッタをそれぞれ主回路端子11,12に接続している。
【0025】
なお、図示回路では、IGBT4−1と4−2のコレクタ同士を相互接続し、各IGBTのエミッタを機械式スイッチ2の両端から分岐した主回路に接続しているが、これとは逆にエミッタ同士を相互接続した上で、IGBT4−1と4−2を機械式スイッチ2の両端に並列接続して半導体スイッチ回路を構成するようにしてもよい。
【0026】
また、IGBT4−1,4−2の各ゲートg1,g2と機械式スイッチ2の橋絡可動子2cとの間には、機械式スイッチ2の橋絡可動子2cに接続した信号入力端側の分圧抵抗5と、該分圧抵抗5にT字接続してIGBT4−1,4−2の各エミッタに接続した分圧抵抗6−1,6−2からなる分圧回路と、前記分圧抵抗5とのT字接続点を挟んで分圧抵抗6−1と6−2の間に逆極性に直列接続した逆阻止ダイオード13−1,13−2と、および分圧抵抗6−1,6−2に並列接続した定電圧素子のツェナーダイオード7からなるゲートドライブ回路9を構築し、後記のように機械式スイッチ2の開極動作時に固定接点2a,2bと橋絡可動子2cとの間に発生したアーク電圧を、前記ゲートドライブ回路9を通じてIGBT4−1,4−2のゲートg1,g2に印加して半導体スイッチ3のIGBT4−1,4−2をON/OFF制御するようにしている。なお、図示のゲートドライブ回路9では、前記の逆阻止ダイオード13−1,13−2は、アノード同士を向かい合わせに接続し、カソードをそれぞれ分圧抵抗6−1,6−2に接続している。
【0027】
次に、図1に示した開閉器の電流遮断動作を図2(a)〜(d)により説明する。なお、図示回路では主回路端子11を(+)極(電源側)、主回路端子12を(−)極(負荷側)として通電している。
【0028】
まず、図2(a)は機械式スイッチ2を閉極した主回路1の通電状態を表し、この状態では主回路1に流れる主回路電流が(+)極側から(−)極側に向けて実線矢印のように機械式スイッチ2の主回路接点21を通じて流れる。なお、この状態では半導体スイッチ3の各IGBT4−1,4−2はいずれもOFF状態である。
【0029】
図2(a)の通電状態から機械式スイッチ2が開極すると、その固定/可動接点の開離に伴い、図2(b)で示すように主回路接点21の固定接点2a,2bと橋絡可動子2cとの間にはアークarcが生じてその接点間にアーク電圧が発生し、ここで固定接点2b/橋絡可動子2c間のアーク電圧が該可動子2cに接続されたゲートドライブ回路9を経てIGBT4−2のゲートg2/エミッタ間に順バイアスとして印加される。これにより、分圧抵抗5,6−2を経由する分圧回路、およびIGBT4−2の入力容量(ゲート/エミッタ間のキャパシタンス)との時定数にしたがってIGBT4−2のゲート電位が上昇し、そのゲート電位がツェナーダイオード7で制限される電圧値(ツェナーダイオード7の制限電圧はIGBTのゲートしきい値電圧に合わせて15〜18Vに設定)まで上昇するとIGBT4−2はターンオン遷移してON状態に切り換わる。
【0030】
そして、IGBT4−2がON状態になると、図2(c)で示すように、いままで機械式スイッチ2の主回路接点21に流れていた主回路電流は、半導体スイッチ3に転流し、図示のように主回路電流が主回路1の分岐点AからIGBT4−1に逆並列接続したFWD10−1、IGBT4−2を通じて主回路の分岐点Bに戻るように転流し、これに伴っていままで機械式スイッチ2の主回路接点21に生じていたアークは瞬時に消滅する。
【0031】
また、アーク消滅に伴い主回路接点21の接点間に発生していたアーク電圧も消失するので、IGBT4−2のゲートg2に印加される電圧は、図中のC1−C2間に発生する電圧と、分圧抵抗6−1,6−2の分圧比から決まる電圧のみになる。なお、この場合にC1−C2間の電圧はIGBT4−1に逆並列接続したFWD10−1の順方向電圧と、IGBT4−2のON電圧(飽和電圧)との和で、その値は2〜4V程度の低い電圧である。そのため、IGBT4−2の入力容量に蓄えられていた電荷は分圧抵抗6−2に放電されてIGBT4−2のゲート電位が低下し、それに伴いIGBT4−2がターンオフに遷移してOFF状態に切り替わり、その結果として半導体スイッチ3に転流した主回路電流が遮断されることになる(図2(d)参照)。
【0032】
ところで、この場合に図示実施例のゲートドライブ回路9に接続した逆阻止ダイオード13−1,13−2が無いとすると、IGBT4−2のOFF動作により、前記C1−C3間には主回路1の電源電圧が印加されることになる。このために、IGBT4−2のゲートg2には順バイアスが加わってゲート電位が再び高まり、その結果、IGBT4−2が誤点弧(ターンオン)して半導体スイッチ3に転流した主回路電流が遮断されなくなるおそれがある。
【0033】
かかる点、図示回路のようにゲートドライブ回路9における分圧抵抗6−1と6−2との間に逆阻止ダイオード13−1,13−2を互いに逆極性に直列接続したことにより、主回路1の電源電圧はダイオード13−1に阻止されてIGBT4−2のゲートg2に印加されることはない。したがって、IGBT4−2の入力容量に蓄えられていた電荷は放電を継続してゲートg2の電位が低下し、そのゲート電位が0VになってIGBT4−2が完全にOFF状態となる。これにより、半導体スイッチ3に転流した主回路電流が完全に遮断されて開閉器の一連の遮断動作が完了することになる。
【0034】
なお、図2(a)〜(d)の動作説明は直流回路1の主回路端子11が(+)極、端子12が(−)極として通電する場合について述べたが、これとは逆に主回路電流の方向が主回路端子12から11に向けて通電する場合(主回路端子12が(+)極、主回路端子11が(−)極)には、前記と逆に機械式スイッチ2の開極動作過程で主回路接点間に発生したアーク電圧のうち、固定接点2a/可動接触子2c間に発生したアーク電圧がダイオード13−1を通じてIGBT4−1のゲートg1/エミッタ間に印加され、これによりIGBT4−1がターンオンして主回路電流が半導体スイッチ3に転流する。
【0035】
上記のように機械式スイッチ2の開極動作時には、そのときの主回路電流方向に合わせてIGBT4−1,4−2のいずれか一方をON/OFF制御することにより、機械式スイッチ2に通流する主回路電流の方向に左右されることなく、双方向の電流をアーク発生なしに遮断することができる。
【0036】
次に、前記ゲートドライブ回路9の設定について補足説明する。すなわち、機械式スイッチ2の開極動作時にIGBT4−1,4−2をターンオンさせて主回路電流を半導体スイッチ3に転流させる際には、IGBT4−1,4−2のゲートg1,g2に印加される電圧(順バイアス)が機械式スイッチ2の主回路接点21間に発生するアーク電圧と、ゲートドライブ回路9における分圧抵抗5,6−1,6−2の抵抗値、およびその分圧比により決まる。そこで、この分圧抵抗5,6−1,6−2の抵抗値,およびその分圧比は、機械式スイッチ2の接点間に発生したアーク電圧を受けてIGBT4−1,4−2のゲート電位が所定のしきい値電圧に上昇するよう設定する。具体的には機械式スイッチ2の主回路接点21間に発生するアーク電圧が30Vの場合、抵抗5と抵抗6−1,6−2の抵抗比が約1:1か、それ以上となるように設定する。
【0037】
また、IGBT4−1,4−2がOFFの状態からON状態に遷移するターンオン時間は、IGBTの入力容量と、充電抵抗として機能するゲートドライブ回路9の各分圧抵抗との時定数により決定されることから、このターンオン時間が例えば数十μsec〜数百μsec程度の範囲に納まるようにゲート抵抗値を設定し、機械式スイッチ2の開極動作開始から約数百μsec以内にIGBT4−2のターンオンが完了するように設定する。
【0038】
次に、本発明の応用実施例として、実施例2,実施例3の回路構成を図3図4に示す。先記した実施例1では、機械式スイッチ2(図1参照)の主回路接点21が一対の固定接点2a,2bと橋絡可動子2cからなる双接点形接点であり、その橋絡可動子2cに半導体スイッチ3のゲートドライブ回路9に通じる信号入力端を接続して機械式スイッチ2の開極動作時に発生する接点間のアーク電圧を取り出すようにしている。
【0039】
これに対して、図3図4に示す実施例で2,実施例3では、機械式スイッチ2の主回路接点を2極に分けてその相互間を直列接続した2組の接点21−1と21−2を備え、その接点相互間の接続部(図中のD点)にゲートドライブ回路9の信号入力端(分圧抵抗5)を接続するようにしている。なお、実施例2(図3参照)では2組の接点21−1,21−2が片切形接点、実施例(図4参照)では2組の接点21−1,21−2が双接点形接点である。
【0040】
すなわち、実施例1(図1参照)では、主回路接点21の橋絡可動子2c(可動部材)にゲートドライブ回路9の信号入力側端子を接続していることから、電磁接触器などの小形な機械式スイッチを採用した場合は、その接点組立構造の制約から主回路接点21の橋絡可動子にゲートドライブ回路9の信号入力端を接続配線することが困難となるほか、その接続リード線が干渉して主回路接点の開極,閉極動作の動きを阻害するおそれもある。
【0041】
これに対して、実施例2,実施例3(図3図4参照)のように機械式スイッチの主回路接点を2組の接点21−1,21−2に分けた上で、この機械式スイッチに例えば図6に示した汎用電磁接触器(2〜3極型)や配線用遮断器(単相用)を採用すれば、この開閉器から外部に引き出した各極の主回路端子(ねじ端子)を利用して接点間の直列接続、およびゲートドライブ回路に通じる信号線の配線を容易に行うことができるほか、実施例1(図1参照)のように、ゲートドライブ回路9に通じるリード線が接点の開閉動作に干渉してその動きを妨げるおそれも無い。
【符号の説明】
【0042】
1 主回路
11,12 主回路端子
2 機械式スイッチ
21,21−1,21−2 主回路接点
3 半導体スイッチ
4−1,4−2 IGBT(半導体スイッチング素子)
5,6−1,6−2 分圧抵抗
7 ツェナーダイオード
9 ゲートドライブ回路
13−1,13−2 ダイオード
10−1,10−2 FWD
g1,g2 IGBTのゲート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7