特許第6284868号(P6284868)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284868
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】配電盤
(51)【国際特許分類】
   H02B 1/38 20060101AFI20180215BHJP
   H02B 1/40 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   H02B1/38 D
   H02B1/40 B
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-209944(P2014-209944)
(22)【出願日】2014年10月14日
(65)【公開番号】特開2016-82645(P2016-82645A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】305018476
【氏名又は名称】阪急電鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593042007
【氏名又は名称】株式会社因幡電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関 博一
(72)【発明者】
【氏名】木村 三雄
(72)【発明者】
【氏名】近藤 望
(72)【発明者】
【氏名】乾 隆義
(72)【発明者】
【氏名】盛田 義輝
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 保憲
(72)【発明者】
【氏名】青木 正幸
(72)【発明者】
【氏名】西岡 敦史
(72)【発明者】
【氏名】井上 静男
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 隆文
【審査官】 澤崎 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平5−15017(JP,A)
【文献】 実開昭53−143535(JP,U)
【文献】 実開昭56−67614(JP,U)
【文献】 特開2009−27780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/00 − 7/08
H05K 5/00 − 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接点を開閉するために入状態及び切状態のいずれかに切換可能な操作スイッチを有する複数の遮断器と、
前記複数の遮断器を収納すると共に開口を有する筐体と、
前記筐体の開口を閉塞可能な扉と、
前記扉側において前記操作スイッチに対面する位置にそれぞれ取り付けられる突状の着脱部材と、を備え、
前記操作スイッチは、前記筐体側に取り付けられた状態で前記扉に向かって突出しており、
前記各々の着脱部材は、前記操作スイッチの入状態及び切状態にそれぞれ対応する2つの位置に着脱可能に構成され、前記操作スイッチの状態に対応する位置にある場合には、当該操作スイッチに干渉せずに前記扉が閉ることを許容し、前記操作スイッチの状態に対応しない位置にある場合には、当該操作スイッチと干渉して前記扉が閉ることを禁止するように、遮断器との位置関係が設定されていることを特徴とする配電盤。
【請求項2】
前記着脱部材は、ネジ孔及び対応する雄ネジ構造によって前記扉側に対して着脱可能に構成されている請求項1に記載の配電盤。
【請求項3】
前記着脱部材は、前記ネジの軸を中心とする円柱状又は円筒状に形成されている請求項2に記載の配電盤。
【請求項4】
前記着脱部材は、中空部を有する円筒形状をなし、前記中空部は、前記扉側に固定するための雄ネジを挿通可能に形成されている請求項2又は3に記載の配電盤。
【請求項5】
前記着脱部材を取り付けるための金属製の帯状土台部を更に備え、
前記扉は、板状の扉板部を有し、前記帯状土台部は、前記扉板部に対して少なくとも複数箇所が固定されている請求項1〜4のいずれかに記載の配電盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線用遮断器を複数有する配電盤に関する。
【背景技術】
【0002】
分電盤等の配電盤は、例えば特許文献1に例示するように、接点を開閉するための突状の操作スイッチを有する複数の遮断器と、複数の遮断器を収容すると共に開口を有する箱形の筐体と、筐体の開口を閉塞する扉と、を有する。このような配電盤は、電車の各駅や工場などの施設に多数設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−346305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
配電盤の遮断器自体の交換や配線交換、夜間停電作業を行う場合に、配線用遮断器を開放してから作業を行うが、作業開始前の遮断器の操作スイッチの状態(どの遮断器の操作スイッチが入状態又は切状態であるか)を、テプラ(登録商標)等の目印や写真撮影等により記録することが考えられる。しかし、一つの配電盤には遮断器が複数あり、更に配電盤自体が多数設けられていることから、記録すべきスイッチが膨大になり、目印自体が剥がれてしまったり、記録は正しいものの人為的ミスにより間違えたりし、配線用遮断器のスイッチ状態が工事前後で異なってしまうおそれがある。この場合、必要な箇所に電気が来ないといった事態が生じ得る。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、人為的ミスに起因する遮断器のスイッチ状態の復元ミスを防止する配電盤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、次のような手段を講じている。
【0007】
すなわち、本発明の配電盤は、接点を開閉するために入状態及び切状態のいずれかに切換可能な操作スイッチを有する複数の遮断器と、前記複数の遮断器を収納すると共に開口を有する筐体と、前記筐体の開口を閉塞可能な扉と、前記扉側において前記操作スイッチに対面する位置にそれぞれ取り付けられる突状の着脱部材と、を備え、前記操作スイッチは、前記筐体側に取り付けられた状態で前記扉に向かって突出しており、前記各々の着脱部材は、前記操作スイッチの入状態及び切状態にそれぞれ対応する2つの位置に着脱可能に構成され、前記操作スイッチの状態に対応する位置にある場合には、当該操作スイッチに干渉せずに前記扉が閉ることを許容し、前記操作スイッチの状態に対応しない位置にある場合には、当該操作スイッチと干渉して前記扉が閉ることを禁止するように、遮断器との位置関係が設定されていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、工事前等、遮断器の操作スイッチが正しい状態にある場合に各操作スイッチの状態に対応する位置に着脱部材を取り付けておき、扉が閉るようにしておけば、工事後に操作スイッチが1つでも間違った状態にあれば操作スイッチと着脱部材が干渉して扉が閉らないので、作業者は扉が閉らないことをもって操作スイッチの状態に誤りがあることを認識でき、遮断器の操作スイッチの復元ミスを的確に防止することが可能となる。
【0009】
着脱部材が簡単に外れることなく、遮断器の操作スイッチの正しい位置を記録可能にするためには、前記着脱部材は、ネジ孔及び対応する雄ネジ構造によって前記扉側に対して着脱可能に構成されていることが好ましい。
【0010】
取り扱いやすさを向上させるためには、前記着脱部材は、前記ネジの軸を中心とする円柱状又は円筒状に形成されていることが好ましい。
【0011】
コストを低減させるためには、前記着脱部材は、中空部を有する円筒形状をなし、前記中空部は、前記扉側に固定するための雄ネジを挿通可能に形成されていることが好ましい。
【0012】
耐久力を向上させるためには、前記着脱部材を取り付けるための金属製の帯状土台部を更に備え、前記扉は、板状の扉板部を有し、前記帯状土台部は、前記扉板部に対して少なくとも複数箇所が固定されていることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の配電盤を示す斜視図。
図2】扉が閉まることが許容される状態を示す模式横断面図。
図3】扉が閉まることが禁止される状態を示す模式横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の好適な実施形態について図面を用いて説明する。
【0015】
図1に示すように、配電盤は、操作スイッチ10を有する複数の遮断器1と、複数の遮断器1を収納すると共に開口20を有する筐体2と、筐体2の開口20を閉塞可能な扉3と、を有する。
【0016】
遮断器1の操作スイッチ10は、接点を開閉するために入状態及び切状態のいずれかに切換可能であり、筐体2側に取り付けられた状態で扉3に向かって突出している。
【0017】
筐体2は、図1及び図2に示すように、開口20を有する箱形をなし、天板部21、背板部22、側板部23及び底板部(図示せず)で、遮断器1を含む電気機器を収納する空間を形成している。図2に示すように、配電盤を構成する各電気機器(遮断器1を含む)は中板4に取り付けられ、中板4が背板部22に取り付けられる。図1及び図2に示すように、遮断器1を含む電気機器の正面側(扉3側)には、遮断器1に対応する覗き窓50が形成された化粧板5が取り付けられ、遮断器1の操作スイッチ10が覗き窓50から正面側(扉3側)に露出している。化粧板5は、内部の電気機器の導電部を遮蔽して安全性を確保すると共に、見栄えを向上させるために設けられる。
【0018】
図1及び図2に示すように、扉3側において操作スイッチ10に対面する位置には、突状の着脱部材6がそれぞれ取り付けられている。扉3は、板状の扉板部30を有し、扉板部30には、着脱部材6を取り付けるための金属製の帯状土台部31が取り付けられている。帯状土台部31は、鉛直方向に長い扉板部30に合致するように、鉛直方向に沿って延びている。帯状土台部31は、少なくとも上下の2箇所においてスタッド溶接を用いて固定されている。これにより、帯状土台部31がリブのように扉板部30を補強することになる。帯状土台部31は、左右に異なる色(例えば赤、緑)で塗り分けられている。勿論、帯状土台部31の固定箇所、固定方法は適宜変更可能である。帯状土台部31には、着脱部材6側の雄ネジvoを固定可能なネジ孔32が形成され、着脱部材6は、ネジ孔32及び対応する雄ネジ構造によって扉3側に着脱可能に構成されている。ネジ孔32は、1つの操作スイッチ10に対し左右2箇所に形成されており、これにより、着脱部材6は、操作スイッチ10の入状態及び切状態にそれぞれ対応する2つの位置に着脱可能に構成される。なお、本実施形態では、遮断器1は、筐体中心に対して左右対称に配置されているので、操作スイッチ10の入状態は左右対称となる。
【0019】
着脱部材6は、図2に示すように操作スイッチ10の状態に対応する位置にある場合には、当該操作スイッチ10に干渉せずに扉3が閉ることを許容し、図3に示すように操作スイッチ10の状態に対応しない位置にある場合には、当該操作スイッチ10と干渉して扉3が閉ることを禁止するように、相手側の遮断器1との位置関係(位置、着脱部材6の寸法を含む)が設定されている。例えば、図2に示すように、操作スイッチ10の入状態に対応する位置p1に着脱部材6が取り付けられている場合には、同図に示すように操作スイッチ10が入状態であれば着脱部材6が干渉せずに扉3が閉まる。一方、図3に示すように操作スイッチ10が切状態であれば着脱部材6が操作スイッチ10の状態に対応しない位置p2にあるので、着脱部材6と操作スイッチ10が干渉して扉3が閉らない。逆も同様で、図2に示すように操作スイッチ10の切状態に対応する位置p3に着脱部材6が取り付けられている場合には、操作スイッチ10が切状態であれば着脱部材6と干渉せずに扉3が閉まる。一方、図3に示すように操作スイッチ10が入状態であれば着脱部材6が操作スイッチ10の状態に対応しない位置p4にあるので、着脱部材6と操作スイッチ10が着脱部材6と干渉して扉3が閉らない。
【0020】
着脱部材6は、図1に示すように、ネジvoの軸を中心とする円筒状に形成されている。着脱部材6がネジvoの軸を中心とする外縁を有する円筒状(又は円柱状)でなく、例えば三角柱又は四角柱であれば、取り付け時の回転角度に応じて角部が操作スイッチ10に誤って干渉してしまうおそれがある。一方、着脱部材6がネジの軸を中心とする円柱状又は円筒状であれば、取り付け時の回転角度がどのような角度であっても、角部がないので着脱部材6が操作スイッチに干渉することなく、取り扱いやすくなる。
【0021】
本実施形態では、着脱部材6は、中空部を有する円筒形状をなし、中空部は、扉側に固定するための雄ネジvoを挿通可能に形成されている。これによれば、汎用の雄ネジ(ビス)を利用することができ、コスト削減に効果がある。
【0022】
着脱部材6の材質としては、遮断器1の操作スイッチ10が樹脂であることから、樹脂製であることが好ましい。着脱部材6は、次の点を克服できれば金属製又はゴム製にすることも可能である。着脱部材6が金属製であれば、着脱部材6と操作スイッチ10が接触したときに操作スイッチ10を損傷するおそれがある。着脱部材6がゴム製であれば、着脱部材6と操作スイッチ10が接触したときに着脱部材6が操作スイッチ10と干渉するものの、弾性変形して扉3が閉まることを許容するおそれがある。
【0023】
以上のように、本実施形態の配電盤は、接点を開閉するために入状態及び切状態のいずれかに切換可能な操作スイッチ10を有する複数の遮断器1と、複数の遮断器1を収納すると共に開口20を有する筐体2と、筐体2の開口20を閉塞可能な扉3と、扉3側において操作スイッチ10に対面する位置にそれぞれ取り付けられる突状の着脱部材6と、を備え、操作スイッチ10は、筐体2側に取り付けられた状態で扉3に向かって突出しており、各々の着脱部材6は、操作スイッチ10の入状態及び切状態にそれぞれ対応する2つの位置に着脱可能に構成され、操作スイッチ10の状態に対応する位置にある場合には、操作スイッチ10に干渉せずに扉3が閉ることを許容し、操作スイッチ10の状態に対応しない位置にある場合には、操作スイッチ10と干渉して扉3が閉ることを禁止するように、遮断器1との位置関係が設定されている。
【0024】
この構成によれば、工事前等、遮断器1の操作スイッチ10が正しい状態にある場合に各操作スイッチ10の状態に対応する位置に着脱部材6を取り付けておき、扉3が閉るようにしておけば、工事後に操作スイッチ10が1つでも間違った状態にあれば操作スイッチ10と着脱部材6が干渉して扉3が閉らないので、作業者は扉3が閉らないことをもって操作スイッチ10の状態に誤りがあることを認識でき、遮断器1の操作スイッチ10の復元ミスを的確に防止することが可能となる。
【0025】
特に、本実施形態では、着脱部材6は、ネジ孔32及び対応する雄ネジ構造によって扉3側に対して着脱可能に構成されている。
【0026】
このように、ネジ孔及び雄ネジ構造であれば、着脱部材6を扉3側に適切に固定できるので、着脱部材6が簡単に外れることなく、遮断器1の操作スイッチ10の正しい位置を記録可能となる。
【0027】
本実施形態では、着脱部材6は、ネジの軸を中心とする円柱状又は円筒状に形成されている。
【0028】
着脱部材がネジの軸を中心とする円柱形状でなく、例えば三角柱、四角柱であれば、取り付け時の回転角度に応じて角部が操作スイッチに誤って干渉してしまうことが考えられる。本実施形態のように、着脱部材がネジの軸を中心とする円柱形状であれば、取り付け時の回転角度がどのような角度であっても着脱部材が操作スイッチに干渉することなく、取り扱いやすさを向上させることが可能となる。
【0029】
本実施形態では、着脱部材6は、中空部を有する円筒形状をなし、中空部は、扉3側に固定するための雄ネジvoを挿通可能に形成されている。
【0030】
この構成であれば、汎用の雄ネジvo(ビス)を利用でき、コストを低減させることが可能となる。
【0031】
本実施形態では、着脱部材6を取り付けるための金属製の帯状土台部31を更に備え、扉3は、板状の扉板部30を有し、帯状土台部31は、扉板部30に対して少なくとも複数箇所が固定されている。
【0032】
この構成によれば、帯状土台部31が、扉板部30に対して追加のリブとして機能するので、扉板部30を補強し、耐久力を向上させることが可能となる。
【0033】
本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【0034】
例えば、本実施形態では、雄ネジvoが着脱部材6側に設けられ、ネジ孔32が扉3側に設けられているが、雄ネジvoを扉側に設け、対応するネジ孔32を着脱部材6側に設けてもよい。また、着脱部材6と雄ネジvoは別体であるが、一体形成してもよい。
【0035】
本実施形態では、着脱部材6は、円筒状であるが、円柱状でもよく、三角形、四角形、五角形などの多角形柱にすることも可能である。その他、種々の形状を採用できる。
【0036】
本実施形態では、着脱部材6は、ネジ孔及び雄ネジ構造で着脱可能に構成されているが、その他の構造で着脱可能に構成されていてもよい。
【0037】
上記では、配電盤として分電盤を例に挙げて説明したが、制御盤としての配電盤にも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1…遮断器
10…操作スイッチ
2…筐体
20…開口
3…扉
31…帯状土台部
30…扉板部
6…着脱部材
32…ネジ孔
vo…雄ネジ
図1
図2
図3