特許第6284885号(P6284885)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6284885流体を送達するためのシステム及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284885
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】流体を送達するためのシステム及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/19 20060101AFI20180215BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20180215BHJP
   A61B 17/00 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   A61M5/19
   A61M5/315 510
   A61B17/00 400
【請求項の数】35
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-549631(P2014-549631)
(86)(22)【出願日】2012年12月20日
(65)【公表番号】特表2015-503394(P2015-503394A)
(43)【公表日】2015年2月2日
(86)【国際出願番号】IL2012000395
(87)【国際公開番号】WO2013098806
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2015年12月4日
(31)【優先権主張番号】217272
(32)【優先日】2011年12月29日
(33)【優先権主張国】IL
(31)【優先権主張番号】61/582,532
(32)【優先日】2012年1月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511203455
【氏名又は名称】オムリックス・バイオファーマシューティカルズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Omrix Biopharmaceuticals Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】メロン・モティ
【審査官】 佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−262525(JP,A)
【文献】 特開2000−271130(JP,A)
【文献】 特開2002−355317(JP,A)
【文献】 特開2010−234055(JP,A)
【文献】 特表平8−503385(JP,A)
【文献】 特表2002−512536(JP,A)
【文献】 特表2008−540117(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0042591(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0318063(US,A1)
【文献】 実公昭35−6364(JP,Y1)
【文献】 特開昭52−151287(JP,A)
【文献】 特開昭53−101883(JP,A)
【文献】 特表平6−503271(JP,A)
【文献】 特表2009−516536(JP,A)
【文献】 特表2012−525172(JP,A)
【文献】 特開2014−30436(JP,A)
【文献】 特表2014−526328(JP,A)
【文献】 米国特許第2515956(US,A)
【文献】 国際公開第2011/137437(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/19
A61B 17/00
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を送達するためのシステムであって、
a.同様に配向されて分配方向を画定する第1及び第2注射器を含む注射器アセンブリであって、各注射器が対応の注射器バレル(4、9)内で摺動自在な対応のプランジャ(6、10)を有し、前記第2注射器の前記プランジャ(10)が調整可能な長さを有する、注射器アセンブリと、
b.前記第1注射器の前記プランジャ(6)に取り付けられ機械的に係合される連結要素(8)であって、
i.前記第2注射器の前記調整可能な長さのプランジャ(10)の伸長又は短縮により、前記第2注射器の前記調整可能な長さのプランジャ(10)を前記連結要素(8)に対してそれぞれ機械的に係合又は係合解除させ、
ii.前記分配方向での前記連結要素(8)の動きにより、それぞれ機械的に係合されたプランジャを対応の注射器バレル(4、9)内で長手方向に摺動させて、前記連結要素(8)と同調して移動させるようになっている、連結要素(8)と、を含む、システム。
【請求項2】
流体を送達するためのシステムであって、
a.同様に配向されて分配方向を画定する第1及び第2注射器を含む注射器アセンブリであって、各注射器が対応の注射器バレル(4、9)内で摺動自在な対応のプランジャ(6、10)を有する、注射器アセンブリと、
b.前記第1注射器の前記プランジャ(6)に取り付けられ機械的に係合された連結要素(8)であって、前記第2注射器の前記プランジャ(10)が調整可能な長さを有し、前記連結要素(8)に対し選択的に係合可能であり、
i.前記システムが第1構成であるとき、前記第2注射器の前記プランジャ(10)が前記連結要素(8)から係合解除されるように前記第2注射器の前記プランジャ(10)と前記連結要素(8)との間に隙間があり、
ii.前記システムが第2構成であるとき、前記第1及び第2注射器のプランジャ(6、10)が同時に前記連結要素に係合され、前記分配方向における連結要素(8)の動きにより、係合された各プランジャを対応の注射器バレル内で長手方向に摺動させて、前記連結要素(8)と同調して移動させるようになっている、連結要素(8)と、を含む、システム。
【請求項3】
前記システムが前記第1構成であるとき、前記第2注射器の前記プランジャ(10)と前記連結要素(8)との間の前記隙間が前記第2注射器のバレル(9)及び/又はプランジャ(10)の中心軸(60)に沿った方向である、請求項2に記載の流体送達システム。
【請求項4】
前記連結要素(8)が、前記第1注射器の前記プランジャ(6)に持続的に取り付けられる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の流体送達システム。
【請求項5】
前記連結要素(8)が、前記第1注射器の前記プランジャ(6)と一体的に形成され、かつ/又は前記プランジャ(6)に接着される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の流体送達システム。
【請求項6】
前記連結要素(8)が、前記第1注射器の前記プランジャ(6)に係止される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の流体送達システム。
【請求項7】
前記連結要素(8)が、前記第1注射器の前記プランジャ(6)に取り外し可能に取り付けられる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の流体送達システム。
【請求項8】
前記連結要素(8)が、前記第1注射器の前記プランジャ(6)に固定される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の流体送達システム。
【請求項9】
i.前記第1及び第2注射器によって画定される前記分配方向と、
ii.互いに機械的に係合するときの、前記連結要素(8)と前記調整可能な長さのプランジャ(10)との対応する接触面(86、84)の間の接触の一次方向と、が同様に配向される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の流体送達システム。
【請求項10】
前記第2注射器の前記プランジャ(10)が、前記第2注射器の前記プランジャ(10)の長さを変更するように構成されたねじ機構を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の流体送達システム。
【請求項11】
第2注射器の中心軸と平行かつ/又は同一線上の軸の周りでの回転自在な要素の回転が、前記第2注射器の前記調整可能な長さのプランジャ(10)の長さを調整するように機能して、前記連結要素(8)に対して係合させるか、係合解除させる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の流体送達システム。
【請求項12】
前記第2注射器の前記プランジャ(10)が、
i.雌ねじスリーブ(74)と、
ii.前記雌ねじスリーブ内に配置された雄ねじシャフト(72)であって、前記スリーブ(74)内の前記シャフトの回転が前記スリーブに対する前記シャフトの長手方向の動きを生じさせ、これにより前記第2注射器の前記プランジャ(10)の前記長さを調整するようになっている、雄ねじシャフト(72)と、を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の流体送達システム。
【請求項13】
前記注射器アセンブリが、前記第1及び第2注射器と同様に配向される第3注射器を更に含み、前記第3注射器のプランジャ(7)が前記連結要素(8)に機械的に連結され、前記連結要素(8)の動きにより、前記第3注射器の前記プランジャ(7)を対応の注射器バレル(5)内で長手方向に摺動させて、前記連結要素(8)と同調して移動させるようになっている、請求項1〜12のいずれか一項に記載の流体送達システム。
【請求項14】
前記連結要素(8)が、前記第3注射器の前記プランジャ(7)に持続的に取り付けられる、請求項13に記載の流体送達システム。
【請求項15】
前記連結要素(8)が、前記第3注射器の前記プランジャ(7)と一体的に形成され、かつ/又は前記プランジャ(7)に接着される、請求項13に記載の流体送達システム。
【請求項16】
前記連結要素(8)が、前記第3注射器の前記プランジャ(7)に係止される、請求項13に記載の流体送達システム。
【請求項17】
前記連結要素(8)が、前記第3注射器の前記プランジャ(7)に取り外し可能に取り付けられる、請求項13に記載の流体送達システム。
【請求項18】
前記連結要素(8)が、前記第3注射器の前記プランジャ(7)に固定される、請求項13に記載の流体送達システム。
【請求項19】
前記第2注射器の中心軸(60)が、実質的に前記第1及び前記第3注射器の中心軸から等距離である、請求項13〜18のいずれか一項に記載の流体送達システム。
【請求項20】
前記第1注射器の前記バレル(4)の断面積及び/又は前記第2注射器の前記バレル(9)の断面積が、前記第3注射器の前記バレル(5)の断面積と等しい、請求項13〜19のいずれか一項に記載の流体送達システム。
【請求項21】
前記第1注射器の前記バレル(4)の断面積及び/又は前記第2注射器の前記バレル(9)の断面積が、前記第3注射器の前記バレル(5)の断面積と異なる、請求項13〜19のいずれか一項に記載の流体送達システム。
【請求項22】
流体送達カテーテル(19)を更に含み、前記流体送達カテーテル(19)が、実質的にその全体にわたってその中に組み込まれ、かつ前記第1及び第3注射器の対応のバレル(4、5)から排出される流体成分をそれぞれ受けるように構成されて、前記カテーテル(19)の先端(82)に流体成分を送達する別個のチャネルを画定する、第1及び第2ルーメンを含む、請求項13〜21のいずれか一項に記載の流体送達システム。
【請求項23】
c.前記第2注射器の前記バレル(9)から排出される流体を受けるように構成された流体排出導管(21)を更に含み、前記第1注射器の前記バレル(4)の出口が前記流体排出導管(21)の出口位置と流体連通していて、流体排出導管(21)経由で前記第2注射器の前記バレル(9)を出る流体が前記流体送達カテーテル内の前記第1ルーメンの近位端への途中で前記第1注射器の前記バレル(4)を出る流体と混合するようになっている、請求項22に記載の流体送達システム。
【請求項24】
前記流体排出導管(21)の出口からの流体が前記第2注射器の前記バレル(9)へ戻るのを実質的に防止するために、前記流体排出導管(21)を通る流れを調節するように構成された逆止弁(20)を更に含む、請求項23に記載の流体システム。
【請求項25】
前記第2注射器の前記プランジャ(10)の長い方の長さと短い方の長さとの比率が、少なくとも1.2である、請求項1〜24のいずれか一項に記載の流体送達システム。
【請求項26】
前記第2注射器の前記プランジャ(10)の長い方の長さと短い方の長さとの長さの差が、少なくとも1cmである、請求項1〜25のいずれか一項に記載の流体送達システム。
【請求項27】
前記第2注射器の前記プランジャ(10)の長い方の長さと短い方の長さとの差が、前記第2注射器の前記バレルの内部の長さの少なくとも15%である、請求項1〜26のいずれか一項に記載の流体送達システム。
【請求項28】
前記連結要素(8)が、前記第2注射器プランジャ(10)の近位部分に位置する前記第2注射器プランジャ(10)の突出部(42)に一致する寸法の凹部(44)を有する、請求項1〜27のいずれか一項に記載の流体送達システム。
【請求項29】
前記第1注射器の前記バレル(4)の断面積が、前記第2注射器の前記バレル(9)の断面積と等しい、請求項1〜28のいずれか一項に記載の流体送達システム。
【請求項30】
前記第1注射器のバレル(4)の断面積が、前記第2注射器の前記バレル(9)の断面積と異なる、請求項1〜29のいずれか一項に記載の流体送達システム。
【請求項31】
c.前記第2注射器の前記バレル(9)から排出される流体を受けるように構成された流体排出導管(21)を更に含み、前記第1注射器の前記バレル(4)の出口が前記流体排出導管(21)の出口位置と流体連通していて、流体排出導管(21)経由で前記第2注射器の前記バレル(9)を出る流体が前記第1注射器の前記バレル(4)を出る流体と混合するようになっている、請求項1〜30のいずれか一項に記載の流体送達システム。
【請求項32】
前記流体排出導管(21)の出口からの流体が前記第2注射器のバレル(9)へ戻るのを実質的に防止するために、前記流体排出導管(21)を通る流れを調節するように構成された逆止弁(20)を更に含む、請求項31に記載の流体システム。
【請求項33】
流体送達カテーテル(19)を更に含み、前記流体送達カテーテル(19)が、その内部に位置して、前記第1及び第2注射器の前記バレル(4、9)からの流体の前記混合物を受けるように機能する、少なくとも1つのルーメンを含む、請求項31〜32のいずれか一項に記載の流体送達システム。
【請求項34】
スパイクカップ(14)であって、前記スパイクカップの底部と前記スパイクカップ内の内部位置との間にスパイクカップ導管を含み、前記導管の上端部が、充填可能な流体を収容するバイアル瓶収容容器(16)の隔膜を穿刺するための尖端部である、スパイクカップ(14)と、
前記注射器の1つの所定のバレルに直接的又は間接的に取り付けられ、前記スパイクカップ導管の下端部を受容するよう構成された充填ポート(15)であって、その係合時に、流体が前記スパイクカップ導管を通って前記所定のバレルへと流れて、前記所定のバレルに充填するようになっている、充填ポート(15)と、を更に含む、請求項1〜33のいずれか一項に記載の流体送達システム。
【請求項35】
前記充填ポートが開放構成及び閉鎖構成へと回転可能であり、前記開放構成にあるときのみ、前記充填ポートがその中に流体を受容するために開放されるようになっている、請求項34に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、注射器ベースのシステム及び関連する使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の実施形態は、注射器ベースのシステム及び関連する使用方法に関する。
【0003】
次の発行された特許及び特許公報:米国特許第4,874,368号、同第5,637,092号、同第5,782,073号、同第6,514,231号、同第6,824,016号、同第6,874,657号、同第6,972,005号、同第6,357,489号、同第6,568,434号、国際公開第98/10703号、同第00/09074号、及び同第07/059801号は、関連する可能性がある背景資料を提供し、その全体を参照により本明細書に援用する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、流体を送達するためのシステムに関連し、このシステムは対応の注射器バレル内で摺動自在の調整可能な長さのプランジャを有する注射器を備える。
【0005】
また、本発明は、連結要素が、複数のプランジャを対応のバレル内で同調して摺動させてそこから流体を同時に分配する、マルチ注射器システムに関連する。このシステムでは、プランジャの少なくとも1つは、連結要素に対し選択的に係合可能である可変長プランジャである。
【0006】
ここで、流体を送達するためのシステムであって、a.同様に配向されて分配方向を画定する第1及び第2注射器を含む注射器アセンブリであって、各注射器が対応の注射器バレル内で摺動自在な対応のプランジャを有し、第2注射器のプランジャが調整可能な長さを有する、注射器アセンブリと、b.第1注射器のプランジャに取り付けられ機械的に係合される連結要素であって、i.第2注射器の調整可能な長さのプランジャの伸長又は短縮により、第2注射器の調整可能な長さのプランジャを連結要素に対してそれぞれ機械的に係合又は係合解除させ、ii.分配方向での連結要素の動きにより、それぞれ機械的に係合されたプランジャを対応の注射器バレル内で長手方向に摺動させて、連結要素と同調して移動させるようになっている、連結要素と、を含む、システムが開示される。
【0007】
ここで、流体を送達するためのシステムであって、a.同様に配向されて分配方向を画定する第1及び第2注射器を含む注射器アセンブリであって、各注射器が対応の注射器バレル内で摺動自在な対応のプランジャを有する、注射器アセンブリと、b.第1注射器のプランジャに取り付けられ機械的に係合された連結要素であって、第2注射器のプランジャが調整可能な長さを有し、連結要素に対し選択的に係合可能であり、i.システムが第1構成であるとき、第2注射器のプランジャが連結要素から係合解除されるように第2注射器のプランジャと連結要素との間に隙間があり、ii.システムが第2構成であるとき、第1及び第2注射器のプランジャが同時に連結要素に係合され、分配方向の連結要素の動きにより、係合された各プランジャを対応の注射器バレル内で長手方向に摺動させて、連結要素と同調して移動させるようになっている、連結要素と、を含む、システムが開示される。
【0008】
いくつかの実施形態では、システムが第1構成であるとき、第2注射器のプランジャと連結要素との間の隙間が第2注射器のバレル及び/又はプランジャの中心軸に沿った方向である。
【0009】
いくつかの実施形態では、連結要素は、第1注射器のプランジャに持続的に取り付けられる。
【0010】
いくつかの実施形態では、連結要素は、第1注射器のプランジャと一体的に成形され、かつ/又は第1注射器のプランジャに接着される。
【0011】
いくつかの実施形態では、連結要素は、第1注射器のプランジャに係止される。
【0012】
いくつかの実施形態では、連結要素は、第1注射器のプランジャに取り外し可能に取り付けられる。
【0013】
いくつかの実施形態では、連結要素は、第1注射器のプランジャに固定される。
【0014】
いくつかの実施形態では、i.第1及び第2注射器によって画定される分配方向と、ii.互いに機械的に係合するときの、連結要素と調整可能な長さのプランジャとの対応する接触面の間の接触の一次方向と、が同様に配向される。
【0015】
いくつかの実施形態では、第2注射器のプランジャは、第2注射器のプランジャの長さを変更するように構成されたねじ機構を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、第2注射器のプランジャは、第2注射器のプランジャの長さを変更するように構成されたねじ機構を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、第2注射器の中心軸と平行かつ/又は同一線上の軸の周りでの回転自在な要素の回転は、第2注射器の調整可能な長さのプランジャの長さを調整するように機能して、連結要素に対して係合させるか、係合解除させる。
【0018】
いくつかの実施形態では、第2注射器のプランジャは、i.雌ねじスリーブと、ii.雌ねじスリーブ内に配置された雄ねじシャフトであって、スリーブ内のシャフトの回転がスリーブに対するシャフトの長手方向の動きを生じさせ、これにより第2注射器のプランジャの長さを調整するようになっている、雄ねじシャフトと、を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、注射器アセンブリは、第1及び第2注射器と同様に配向される第3注射器を更に含み、第3注射器のプランジャが連結要素に機械的に連結され、その連結要素の動きにより、第3注射器のプランジャを対応の注射器バレル内で長手方向に摺動させて、連結要素と同調して移動させるようになっている。
【0020】
いくつかの実施形態では、連結要素は、第3注射器のプランジャに持続的に取り付けられる。
【0021】
いくつかの実施形態では、連結要素は、第3注射器のプランジャと一体的に成形され、かつ/又は第3注射器のプランジャに接着される。
【0022】
いくつかの実施形態では、連結要素は、第3注射器のプランジャに係止される。
【0023】
いくつかの実施形態では、連結要素は、第3注射器のプランジャに取り外し可能に取り付けられる。
【0024】
いくつかの実施形態では、連結要素は、第3注射器のプランジャに固定される。
【0025】
いくつかの実施形態では、第注射器の中心軸が実質的に第1及び第3注射器の中心軸から等距離である。
【0026】
いくつかの実施形態では、第1注射器のバレルの断面積及び/又は第2注射器のバレルの断面積は、第3注射器のバレルの断面積と等しい。
【0027】
いくつかの実施形態では、第1注射器のバレルの断面積及び/又は第2注射器のバレルの断面積は、第3注射器のバレルの断面積と異なる。
【0028】
いくつかの実施形態では、システムは、流体送達カテーテルを更に含み、流体送達カテーテルが、実質的にその全体にわたってその中に組み込まれ、かつ第1及び第3注射器の対応のバレルから排出される流体成分をそれぞれ受けるように構成されて、ルーメンの先端に流体成分を送達する別個のチャネルを画定する、第1及び第2ルーメンを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、システムは、e.第2注射器のバレルから排出される流体を受けるように構成された流体排出導管を更に含み、第1注射器のバレルの出口が流体排出導管の出口位置と流体連通していて、流体排出導管経由で第1注射器のバレルを出る流体が流体送達カテーテル内の第1ルーメンの近位端への途中で第2注射器のバレルを出る流体と混合するようになっている。
【0030】
いくつかの実施形態では、システムは、流体排出導管の出口からの流体が第2注射器のバレルへ戻るのを実質的に防止するために、流体排出導管を通る流れを調節するように構成された逆止弁を更に含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、第2注射器のプランジャの長い方の長さと短い方の長さとの比率は、少なくとも1.05又は少なくとも1.1又は少なくとも1.15又は少なくとも1.2又は少なくとも1.25又は少なくとも1.3である。
【0032】
いくつかの実施形態では、長い方の長さと短い方の長さとの長さの差は、少なくとも1cmである。
【0033】
いくつかの実施形態では、長い方の長さと短い方の長さの差は、第2注射器のバレルの内部の長さの少なくとも5%又は少なくとも10%又は少なくとも15%又は少なくとも20%又は少なくとも25%又は少なくとも30%である。
【0034】
いくつかの実施形態では、連結要素は、第2注射器プランジャの近位部分に位置する第2注射器プランジャの突出部に一致する寸法の凹部を有する。
【0035】
いくつかの実施形態では、第1注射器のバレルの断面積は、第2注射器のバレルの断面積と等しい。
【0036】
いくつかの実施形態では、第1注射器のバレルの断面積は、第2注射器のバレルの断面積と異なる。
【0038】
いくつかの実施形態では、システムは、c.第2注射器のバレルから排出される流体を受けるように構成された流体排出導管を更に含み、第1注射器のバレルの出口が流体排出導管の出口位置と流体連通していて、流体排出導管経由で第2注射器のバレルを出る流体が第1注射器のバレルを出る流体と混合するようになっている。
【0039】
いくつかの実施形態では、システムは、流体排出導管の出口からの流体が第2注射器のバレルへ戻るのを実質的に防止するために、流体排出導管を通る流れを調節するように構成された逆止弁を更に含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、システムは、流体送達カテーテルを更に含み、流体カテーテルが、その内部に位置して、第1及び第2注射器のバレルからの流体の混合物を受けるように機能する、少なくとも1つのルーメンを含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、システムは、スパイクカップ(spike cup)であって、スパイクカップの底部とスパイクカップ内の内部位置との間にスパイクカップ導管を含み、導管の上端部が、充填可能な流体を収容するバイアル瓶収容容器の隔膜を穿刺するための尖端部である、スパイクカップと、注射器の1つの所定のバレルに直接的又は間接的に取り付けられ、スパイクカップ導管の下端部を受容するよう構成された充填ポートであって、その係合時に、流体がスパイクカップ導管を通って所定のバレルへと流れて、所定のバレルに充填するようになっている、充填ポートと、を更に含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、充填ポートは、開放構成及び閉鎖構成へと回転可能であり、開放構成にあるときのみ、充填ポートがその中に流体を受容するために開放されるようになっている。
【0043】
ここで、流体を送達するための方法であって、a.注射器アセンブリを準備することであって、注射器アセンブリが、i.同様に配向されて分配方向を画定する第1及び第2注射器であって、各注射器が対応の注射器バレル内で摺動自在な対応のプランジャを有し、第2注射器のプランジャが調整可能な長さを有する、第1及び第2注射器と、ii.第1注射器のプランジャに取り付けられ機械的に係合される連結要素と、を含む、ことと、b.第2注射器の調整可能な長さのプランジャを連結要素に対して機械的に係合又は係合解除させるように、第2注射器の調整可能な長さのプランジャを伸長又は短縮させることと、c.機械的に係合された各プランジャを対応の注射器バレル内で長手方向に摺動させて、連結要素と同調して移動させるように、分配方向に連結要素を移動させることと、を含む、方法が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1A】連結要素から分離された選択的に係合可能な注射器プランジャを含むマルチ注射器システムを示す。
図1B】連結要素から分離された選択的に係合可能な注射器プランジャを含むマルチ注射器システムを示す。
図2A】連結要素から分離された選択的に係合可能な注射器プランジャを含むマルチ注射器システムを示す。
図2B】連結要素から分離された選択的に係合可能な注射器プランジャを含むマルチ注射器システムを示す。
図3A】選択的に係合可能な注射器プランジャが連結要素に連結されたときの同じシステムを示す。
図3B】選択的に係合可能な注射器プランジャが連結要素に連結されたときの同じシステムを示す。
図4A】選択的に係合可能な注射器プランジャが連結要素に連結されたときの同じシステムを示す。
図4B】選択的に係合可能な注射器プランジャが連結要素に連結されたときの同じシステムを示す。
図5】同じシステムを操作する方法を示す。
図6A】第1可変長プランジャを示す。
図6B】第1可変長プランジャを示す。
図7A】連結要素から係合解除されたときのプランジャの近位端を示す。
図7B】連結要素に係合されたときのプランジャの近位端を示す。
図8】システムを充填するための技術を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の実施形態は、複数の動作モードを提供するマルチ注射器システム/装置に関連する。装置が第1動作モードであるとき、N個(Nは2以上に等しい正の整数である。即ち、N≧2)の同様に配向された注射器は、分配方向での、いわゆる連結要素の動きが、マルチ注射器をそれぞれの対応のバレル内で同調して動かすように、共に連結され、その結果流体成分がN個の注射器の各バレルから同時に分配される。連結要素は、N個すべてのバレル内でプランジャが同調して摺動するように、マルチプランジャを互いに接続する。
【0046】
第2動作モードであるとき、分配方向での連結要素の動きは、MがN未満の正の整数であるとき(即ち、1≦M<N)M個のバレル内のみでプランジャを同調して動かす。このように、第2動作モードでは、連結要素の動きは、流体成分をM個の注射器の対応のバレルから分配させる。
【0047】
1つの非限定的な実施例では、単一のマルチ注射器装置は、ユーザーの裁量でN個の成分を同時に投与するN成分モード、又はM個の成分を同時に投与するM成分モードのどちらかで、操作されてよい。
【0048】
図1〜4は、3個の同様に配向された注射器を含むN=3及びM=2である、特定のマルチプランジャ装置を示す。図1〜4の非限定的な実施例では、マルチ注射器装置は3個の注射器を含み、そのうちの2個は連結要素8に持続的に取り付けられたプランジャ6、7を有する。図1Aでは、バレル4を有する第1注射器及びバレル9を有する第2注射器を見ることができる。図2Aでは、第3プランジャ7が内部で摺動する第3注射器のバレル5を見ることができる。
【0049】
第1及び第3注射器のプランジャ6、7は連結要素8に持続的に取り付けられているため、概して、分配方向での連結要素8の動きは、プランジャ6、7を互いに及び連結要素8と共にそれぞれバレル4、5内で同調して動かして、そこから流体を同時に分配する。
【0050】
マルチ注射器装置の1つの突出した特徴は、プランジャ10(即ち、第2注射器のバレル9内に配置される)が連結要素8に選択的に連結可能/係合可能であることである。プランジャ10が図3〜4のように連結/係合される場合、分配方向での連結要素8の動きは、選択的に連結可能/係合可能であるプランジャ10をプランジャ6、7と共に同調して動かす。対応のバレル4、5、9内のプランジャ6、7、10の同時の動きは、流体を3つの注射器バレル4、5、9すべてから同時に排出又は分配させる。
【0051】
後述のように、いくつかの実施形態では、プランジャ10は可変長プランジャである。可変長プランジャ10の伸長は、その近位端を連結要素8と接触させて機械的に係合するように機能する。
【0052】
同様に配向された注射器は、分配方向を画定するために、すべて互いにほぼ平行である。図1Aに示すように、分配方向は、「近位−遠位ベクトル」方向と共に配向されている。
【0053】
図1〜2は、「2成分」操作モードであるときのマルチ注射器装置を示す。2成分モードであるとき、連結要素8は選択的に連結可能なプランジャ10から係合解除され、持続的に取り付けられたプランジャ6、7に連結される。2成分モードであるとき、連結要素8の1回の動作は、プランジャ6、7を対応の注射器バレル4、5内で同時に摺動させ、その結果流体がそこから同時に排出される。一使用事例では、バレル4からのフィブリノゲン成分及びバレル5からのトロンビン成分を同時に分配することが可能である。例えば、したがって、別々にバレル4、5を出る各成分が別々にカテーテル19内の対応のルーメンに入り、その遠位端82を出る。この使用事例では、カテーテル19を出た後、成分(即ち、フィブリノゲン及びトロンビン)を互いとのみ混合することができる。
【0054】
また、図1B、2A及び2Bに示すのは(即ち、「2成分」操作モードに関連する)、(i)プランジャ10の近位端と(ii)連結要素8との間の「隙間」である。マルチ注射器装置が図1〜2の「2成分」操作モードであるとき、連結要素8の「近位−遠位」軸線又は「分配」軸線の動きは、プランジャ10を動かすことなく、持続的に取り付けられたプランジャ6、7の縦の動きを引き起こす。流体は、したがってバレル9からでなく、バレル4、5から排出される。
【0055】
図3〜4は、「3成分」操作モードのマルチ注射器装置を説明する。図1〜5の非限定的な実施例では、マルチ注射器装置のプランジャ10は、いわゆる「可変長プランジャ」である。プランジャ長が「短い」のとき、マルチ注射器装置は上述のように2成分モードである。2成分モードから3成分モードへ移行するために、可変長プランジャの長さを増大させることが可能である。これを達成する非限定的な実施例は、図6及び8を参照して後述される。
【0056】
3成分モードであるとき、連結要素8は、プランジャ10の近位位置と接触する。したがって、プランジャ10は連結要素8に「連結される」ということができる。このモードでは、分配方向での連結要素8の動きは、対応のバレル4、5、9内の3個のプランジャ6、7、10の摺動する動きを引き起こし、したがって流体成分は、それぞれ3つのバレル4、5、及び9からそれぞれ同時に排出される。このモードでは、連結要素8は、プランジャ10を押して、プランジャ10をそのバレル9内に摺動させる。
【0057】
1つの非限定的な使用事例では、(i)マルチ注射器装置が2成分モードであるとき、フィブリノゲン及びトロンビン成分のみが患者に投与され、及び(ii)マルチ注射器装置が3成分モードであるとき、フィブリノゲン(即ち、バレル4から)、トロンビン(即ち、バレル5から)及びバレル9からのサプリメント(例えば、抗生物質、抗炎症剤、化学療法剤、増殖因子、抗がん剤鎮痛剤、タンパク質、ホルモン、酸化防止剤など)を同時に投与することが可能である。同じマルチ注射器装置は、このようにユーザーの裁量で2成分モード又は3成分モードのどちらかで採用されてよく、施術者(例えば、外科医)が同じマルチ注射器装置を両方の目的で利用できる。
【0058】
一実施例では、フィブリノゲン成分及びトロンビン成分を同時に投与することができ、ユーザーの裁量でこの2成分の投与中にサプリメントをいつでも投与することができる。このように、投与中の1時点において、ユーザーはフィブリノゲン成分及びトロンビン成分と共にサプリメントを投与することを決定することができるのに対し、別の時点では、ユーザーはサプリメントなしで2成分のみを投与することを決定することができる。つまり、フィブリンシーラントの一部分がサプリメントを含む一方で、他の部分はフィブリンシーラントのみからなる。
【0059】
連結要素8からのプランジャ10の係合及び係合解除の工程は、液体成分の投与中に交互に実行することができる。例えば、プランジャ10を連結要素8から係合解除して、マルチ注射器装置が「2成分モード」で、投与を開始することができる。第2工程で、プランジャ10を連結要素8に係合することができ、連結要素8からプランジャ10を係合解除する第3工程が続く。
【0060】
投与は、注射によって(例えば、針が装置の吐出端部上に取り付けられたとき)、点滴注入によって、又は噴霧によって(例えば、入り口ガス流が注射器バレルから分配された流体と混合されるようにガス入口90(例えば、加圧ガス)を追加したとき)、実行することができる。投与はまた、成形型に成分を注入することによっても実行することができる。
【0061】
図1〜4に示す装置の1つの特徴は、バレル4、5、9の直径が、互いに等しいことであり、したがって、分配方向での連結要素8の動きは、同量の流体を各バレル4、5、9からそれぞれ排出させる。これは限定するものではない。他の実施形態では、バレル4、5、9のうち2つ又はそれ以上の直径は互いに異なってよい。2つ又はそれ以上のバレルの直径の比率を、そこから分配される流体成分の所望の比率に応じて、制御するように装置を製造することが可能である。
【0062】
図5は、マルチ注射器装置を操作する技術のフローチャートである。図5に示すように、プランジャ10が伸長されると(即ち、プランジャ10の近位部分が連結要素8の「遠位向き」面(図7Aの84を参照)に接触する程度まで十分に)、マルチ注射器装置は、「2成分モード」から「3成分モード」へと移行する。これは図5で2:3モード移行と呼ばれる。マルチ注射器装置が「3成分モード」で、プランジャ10が収縮されると(即ち、連結要素8とプランジャ10との接触を排除するように)、マルチ注射器装置は、「3成分モード」から「2成分モード」へと移行する。これは、図5で3:2モード移行と呼ばれる。図に示すように、2成分モードであるとき、分配方向(即ち、「近位−遠位」方向にほぼ平行である)での連結要素8の動きは、2個のプランジャ6、7をそれぞれのバレル4、5内で同調して摺動させ、流体をそこから排出させる。3成分モードであるとき、分配方向での連結要素8の動きは更に、プランジャ10をプランジャ6、7と同調して摺動させ、その結果流体は3つの注射器バレル4、5、9から同時に排出される。
【0063】
典型的には、連結要素8は、プランジャ10を押すことによって、摩擦又は他の追加機構に頼らずにプランジャ10の周囲に勢いを付与する。プランジャ10と接触する連結要素8の「接触」面84の向きは、局所法線によって定義される。図7Aに示すように、この接触面は遠位方向に向いている。連結要素8と接触するプランジャ10の「接触」面(図1Bの86A及び/又は86Bを参照)の向きは、反対の方向である。即ち、近位方向に向いている。
【0064】
このように、連結要素から調整可能な長さのプランジャへの「接触方向」は、実質的にマルチ注射器装置の近位−遠位軸線に沿った分配方向である。したがって、連結要素8からプランジャ10への接触の方向は、分配方向と同様に配向されているということができる。これは、連結要素8が接触方向に沿って力を加えることによってプランジャ10を押すことを可能にし、それによって、プランジャ10を分配方向に摺動させ、プランジャ10がその内部で摺動するバレル9から流体を排出又は分配する。
【0065】
本開示では、用語「流体」は広く定義され、液体及び流動性ゲルが挙げられるが、これらに限定されない任意の流動性物質を指してよい。
【0066】
上記のように、いくつかの実施形態では、プランジャ10は可変長プランジャであってよい。可変長プランジャの一実施形態を、図6A〜6Bに示す。この実施例では、可変長プランジャ10は、雌ねじ用(internally threadable)スリーブ74内で回転可能な雄ねじシャフト72を含む(この機構は、内部構造を見るため破断面に示す)。プランジャ10の中心軸60の周りのシャフト72の回転により、スリーブ74内のシャフト72の長手方向の動きが、スリーブ74に対するシャフト72の位置を変更し、可変長プランジャを伸長又は短縮させる。図6の回転の方向は、単なる実施例であり、プランジャ10の長さを伸長又は短縮する他の回転機構(例えば、異なる配向を有する回転軸の周りの回転を必要とする)が想到される。
【0067】
図7A〜7Bは、プランジャ10が連結要素8から係合解除されているとき、連結要素8に近接した図6A〜6Bの可変長プランジャの近位領域を示す。図7Aに示すように、(i)プランジャ10の近位部分と、(ii)連結要素8の遠位部分と、の間に隙間が存在する。図7Bでは、プランジャ10が伸長した後、かかる隙間は存在せず、代わりに連結要素8の遠位向き面84とプランジャ10との間に接触が存在する。図7の非限定的実施例では、可変長プランジャ10は、肩部40及び連結要素8の凹部44内でぴったり合う寸法の肩部40から突出している近位突起要素42を含む。
【0068】
また図7A〜7Bに示されるのは、連結要素8に持続的に取り付けられたプランジャ6、7である。「持続的に取り付けられた」プランジャ6、7の一実施例は、連結要素8に接着されたプランジャである。別の実施例では、プランジャ6、7は連結要素8と一体的に形成される。これにより、マルチ注射器装置の製造に必要な部品数を低減することができる。「持続的に取り付けられた」形体は要件ではないことに留意されたい。別の実施例では、プランジャ6、7は連結要素8に、例えば、スナップ又は任意の他の機構によって、取り外し可能に取り付けられる。
【0069】
図1〜4に示す追加要素をここで議論する。マルチ注射器装置は、注射器バレル4、5、9から送達される流体が通過して装置を出る多岐管18を含む。いくつかの実施形態では、多岐管18は、マルチルーメンを有して別々の流「路」を提供するカテーテル19を含む。注射器バレル4、5から排出される流体成分(例えば、フィブリノゲン及びトロンビン)は、別々に分配されるようにその後別々にカテーテル19を通って流れ、その遠位端82を出る。これは、「手術用接着剤」の適用に有用であり得る。
【0070】
図1〜4の実施例では、バレル9から排出される流体は、「流体送達」カテーテル19に入る前に互いに混合されるように、注射器バレル4の出口とカテーテル19の近位端との間の流路に注入されてよい。例えば、バレル9から排出される流体は、流体排出導管21、及び一方向弁20、つまり「逆止弁」を通って前記流路に沿った場所に流れ込む。一方向弁20は、バレル4を出る流体成分の「逆流」がバレル9に流れ込むのを防ぐ。
【0071】
また、図1〜4に見ることができるのは、(i)第1、第2及び第3注射器を一緒に同じ全体的な向きに保持する、取り付け/保持要素、つまり支柱30、(ii)第1、第2及び第3注射器の肩部52、54、56、並びに(iii)第2注射器のバレル9及び/又はその中のプランジャ10の中心軸60の各要素である。取り付け/保持要素30は、図2Bに表記される多様な部分30A〜30Hを含む。
【0072】
上述のように、図6A〜6Bは、プランジャ長10を変更する第1機構を説明する。いくつかの実施形態では、「回転/ねじ」機構は使いやすさを提供し、マルチ注射器装置の製造時により少ない部品で済む場合がある。本明細書に記載されるプランジャの伸長又は短縮機構は1つの実施例であり、当事者は、この課題を達成するために多様な機構が採用され得ることを認識するであろう。
【0073】
図1〜7の実施例では、1つ以上のプランジャは可逆的又は「選択的」に連結要素と係合可能である。この特性を提供する機構には、可変長プランジャが挙げられる。
【0074】
図8は、いくつかの実施形態に従って、流体をマルチ注射器装置に充填する技術に関する。
【0075】
使用前に、バレル4、5、9は液体/流体成分で充填される。バレルの充填は、スパイクカップ14を流体制御装置/充填ポート15上に取り付けること、及びスパイクカップ14内にバイアル瓶/収容容器16を配置することによって、実行することができる。スパイクカップは、好ましくはバイアル瓶の隔膜を穿刺するのに適した突針を含んでよい。スパイクカップ内のバイアル瓶は、突針によって穿刺され、プランジャを引くことによって針を介してバイアル瓶からバレルへの液体流が可能になる。プランジャは、分配方向と反対の方向に引かれ、結果として、バイアル瓶16からバレルへと流体成分が引き込まれる。一実施例では、プランジャ6及び7(互いに、例えば、連結要素8を介して接続されている)が同時に引かれ、バレル4及び5の充填をもたらす。典型的には、プランジャ10は別々に引かれてバレル9の充填をもたらす。
【0076】
図8は、各注射器に対応する流体制御装置の上部を示し、スパイクカップと接続するための指定構造を有する接続インターフェースを明らかにする。第2注射器の流体制御装置15に接続されるスパイクカップ14及びバイアル瓶16を、図に示す。
【0077】
液体成分によるバレルの充填の後で、スパイクカップ14及びバイアル瓶16は、スパイクカップを回転させて除去する。したがって、その次の工程で、バレルからの液体成分の分配が可能になる。
【0078】
流体制御装置の構造及び機能、並びに流体成分により装置のバレルを充填するため及び流体成分を分配するためのその使用は、国際公開第98/10703号に説明される。
【0079】
本願の説明及び請求項では、それぞれの動詞、「含む(comprise)」「含む(include)」及び「有する(have)」、並びにその複合は、動詞の目的語又は複数目的語が必ずしも部材、構成成分、要素又は動詞の主語若しくは複数主語の部分の完全なリストではないことを示すために使用される。
【0080】
本発明は、実施例によって提供され、発明の範囲を制限することを意図しない、その実施形態の「発明を実施するための形態」を使用して説明されてきた。説明した実施形態は、異なる機構を備えるが、そのすべてが本発明の実施形態すべてで必須というわけではない。本発明のいくつかの実施形態は、機構のいくつかのみ又は機構の可能な組み合わせを使用する。説明される本発明の実施形態の変形、及び説明した実施形態で述べられた機構の異なる組み合わせを含む本発明の実施形態は、当業者が思いつくものであろう。
【0081】
〔実施の態様〕
(1) 流体を送達するためのシステムであって、
a.同様に配向されて分配方向を画定する第1及び第2注射器を含む注射器アセンブリであって、各注射器が対応の注射器バレル4、9内で摺動自在な対応のプランジャ6、10を有し、前記第2注射器の前記プランジャ10が調整可能な長さを有する、注射器アセンブリと、
b.前記第1注射器の前記プランジャ6に取り付けられ機械的に係合される連結要素8であって、
i.前記第2注射器の前記調整可能な長さのプランジャ10の伸長又は短縮により、前記第2注射器の前記調整可能な長さのプランジャ10を前記連結要素8に対してそれぞれ機械的に係合又は係合解除させ、
ii.前記分配方向での前記連結要素8の動きにより、それぞれ機械的に係合されたプランジャを対応の注射器バレル4、9内で長手方向に摺動させて、前記連結要素8と同調して移動させるようになっている、連結要素8と、を含む、システム。
(2) 流体を送達するためのシステムであって、
a.同様に配向されて分配方向を画定する第1及び第2注射器を含む注射器アセンブリであって、各注射器が対応の注射器バレル4、9内で摺動自在な対応のプランジャ6、10を有する、注射器アセンブリと、
b.前記第1注射器の前記プランジャ6に取り付けられ機械的に係合された連結要素8であって、前記第2注射器の前記プランジャ10が調整可能な長さを有し、前記連結要素8に対し選択的に係合可能であり、
i.前記システムが第1構成であるとき、前記第2注射器の前記プランジャ10が前記連結要素8から係合解除されるように前記第2注射器の前記プランジャ10と前記連結要素8との間に隙間があり、
ii.前記システムが第2構成であるとき、前記第1及び第2注射器のプランジャ6、10が同時に前記連結要素に係合され、前記分配方向における連結要素8の動きにより、係合された各プランジャを対応の注射器バレル内で長手方向に摺動させて、前記連結要素8と同調して移動させるようになっている、連結要素8と、を含む、システム。
(3) 前記システムが前記第1構成であるとき、前記第2注射器の前記プランジャ10と前記連結要素8との間の前記隙間が前記第2注射器のバレル9及び/又はプランジャ10の中心軸60に沿った方向である、実施態様2に記載の流体送達システム。
(4) 前記連結要素8が、前記第1注射器の前記プランジャ6に持続的に取り付けられる、実施態様1〜3のいずれかに記載の流体送達システム。
(5) 前記連結要素8が、前記第1注射器の前記プランジャ6と一体的に形成され、かつ/又は前記プランジャ6に接着される、実施態様1〜3のいずれかに記載の流体送達システム。
【0082】
(6) 前記連結要素8が、前記第1注射器の前記プランジャ6に係止される、実施態様1〜3のいずれかに記載の流体送達システム。
(7) 前記連結要素8が、前記第1注射器の前記プランジャ6に取り外し可能に取り付けられる、実施態様1〜3のいずれかに記載の流体送達システム。
(8) 前記連結要素8が、前記第1注射器の前記プランジャ6に固定される、実施態様1〜3のいずれかに記載の流体送達システム。
(9) i.前記第1及び第2注射器によって画定される前記分配方向と、
ii.互いに機械的に係合するときの、前記連結要素8と前記調整可能な長さのプランジャ10との対応する接触面86、84の間の接触の一次方向と、が同様に配向される、実施態様1〜8のいずれかに記載の流体送達システム。
(10) 前記第2注射器の前記プランジャ10が、前記第2注射器の前記プランジャ10の長さを変更するように構成されたねじ機構を含む、実施態様1〜9のいずれかに記載の流体送達システム。
【0083】
(11) 第2注射器の中心軸と平行かつ/又は同一線上の軸の周りでの回転自在な要素の回転が、前記第2注射器の前記調整可能な長さのプランジャ10の長さを調整するように機能して、前記連結要素8に対して係合させるか、係合解除させる、実施態様1〜10のいずれかに記載の流体送達システム。
(12) 前記第2注射器の前記プランジャ10が、
i.雌ねじスリーブ74と、
ii.前記雌ねじスリーブ内に配置された雄ねじシャフト72であって、前記スリーブ74内の前記シャフトの回転が前記スリーブに対する前記シャフトの長手方向の動きを生じさせ、これにより前記第2注射器の前記プランジャ10の前記長さを調整するようになっている、雄ねじシャフト72と、を含む、実施態様1〜11のいずれかに記載の流体送達システム。
(13) 前記注射器アセンブリが、前記第1及び第2注射器と同様に配向される第3注射器を更に含み、前記第3注射器のプランジャ7が前記連結要素8に機械的に連結され、前記連結要素8の動きにより、前記第3注射器の前記プランジャ7を対応の注射器バレル5内で長手方向に摺動させて、前記連結要素8と同調して移動させるようになっている、実施態様1〜12のいずれかに記載の流体送達システム。
(14) 前記連結要素8が、前記第3注射器の前記プランジャ7に持続的に取り付けられる、実施態様13に記載の流体送達システム。
(15) 前記連結要素8が、前記第3注射器の前記プランジャ7と一体的に形成され、かつ/又は前記プランジャ7に接着される、実施態様13に記載の流体送達システム。
【0084】
(16) 前記連結要素8が、前記第3注射器の前記プランジャ7に係止される、実施態様13に記載の流体送達システム。
(17) 前記連結要素8が、前記第3注射器の前記プランジャ7に取り外し可能に取り付けられる、実施態様13に記載の流体送達システム。
(18) 前記連結要素8が、前記第3注射器の前記プランジャ7に固定される、実施態様13に記載の流体送達システム。
(19) 前記第2注射器の中心軸60が、実質的に前記第1及び前記第3注射器の中心軸から等距離である、実施態様13〜18のいずれかに記載の流体送達システム。
(20) 前記第1注射器の前記バレル4の断面積及び/又は前記第2注射器の前記バレル9の断面積が、前記第3注射器の前記バレル5の断面積と等しい、実施態様13〜19のいずれかに記載の流体送達システム。
【0085】
(21) 前記第1注射器の前記バレル4の断面積及び/又は前記第2注射器の前記バレル9の断面積が、前記第3注射器の前記バレル5の断面積と異なる、実施態様13〜19のいずれかに記載の流体送達システム。
(22) 流体送達カテーテル19を更に含み、前記流体送達カテーテル19が、実質的にその全体にわたってその中に組み込まれ、かつ前記第1及び第3注射器の対応のバレル4、5から排出される流体成分をそれぞれ受けるように構成されて、前記カテーテル19の先端82に流体成分を送達する別個のチャネルを画定する、第1及び第2ルーメンを含む、実施態様13〜21のいずれかに記載の流体送達システム。
(23) c.前記第2注射器の前記バレル9から排出される流体を受けるように構成された流体排出導管21を更に含み、前記第1注射器の前記バレル4の出口が前記流体排出導管21の出口位置と流体連通していて、流体排出導管21経由で前記第2注射器の前記バレル9を出る流体が前記流体送達カテーテル内の前記第1ルーメンの近位端への途中で前記第1注射器の前記バレル4を出る流体と混合するようになっている、実施態様22に記載の流体送達システム。
(24) 前記流体排出導管21の出口からの流体が前記第2注射器の前記バレル9へ戻るのを実質的に防止するために、前記流体排出導管21を通る流れを調節するように構成された逆止弁20を更に含む、実施態様23に記載の流体システム。
(25) 前記第2注射器の前記プランジャ10の長い方の長さと短い方の長さとの比率が、少なくとも1.2である、実施態様1〜24のいずれかに記載の流体送達システム。
【0086】
(26) 前記長い方の長さと短い方の長さとの長さの差が、少なくとも1cmである、実施態様1〜25のいずれかに記載の流体送達システム。
(27) 前記長い方の長さと短い方の長さとの差が、前記第2注射器の前記バレルの内部の長さの少なくとも15%である、実施態様1〜26のいずれかに記載の流体送達システム。
(28) 前記連結要素8が、前記第2注射器プランジャ10の近位部分に位置する前記第2注射器プランジャ10の突出部42に一致する寸法の凹部44を有する、実施態様1〜27のいずれかに記載の流体送達システム。
(29) 前記第1注射器の前記バレル4の断面積が、前記第2注射器の前記バレル9の断面積と等しい、実施態様1〜28のいずれかに記載の流体送達システム。
(30) 前記第1注射器のバレル4の断面積が、前記第2注射器の前記バレル9の断面積と異なる、実施態様1〜29のいずれかに記載の流体送達システム。
【0087】
(31) c.前記第2注射器の前記バレル9から排出される流体を受けるように構成された流体排出導管21を更に含み、前記第1注射器の前記バレル4の出口が前記流体排出導管21の出口位置と流体連通していて、流体排出導管21経由で前記第2注射器の前記バレル9を出る流体が前記第1注射器の前記バレル4を出る流体と混合するようになっている、実施態様1〜30のいずれかに記載の流体送達システム。
(32) 前記流体排出導管21の出口からの流体が前記第2注射器のバレル9へ戻るのを実質的に防止するために、前記流体排出導管21を通る流れを調節するように構成された逆止弁20を更に含む、実施態様31に記載の流体システム。
(33) 流体送達カテーテル19を更に含み、前記流体送達カテーテル19が、その内部に位置して、前記第1及び第2注射器の前記バレル4、9からの流体の前記混合物を受けるように機能する、少なくとも1つのルーメンを含む、実施態様31〜32のいずれかに記載の流体送達システム。
(34) スパイクカップ14であって、前記スパイクカップの底部と前記スパイクカップ内の内部位置との間にスパイクカップ導管を含み、前記導管の上端部が、充填可能な流体を収容するバイアル瓶収容容器16の隔膜を穿刺するための尖端部である、スパイクカップ14と、
前記注射器の1つの所定のバレルに直接的又は間接的に取り付けられ、前記スパイクカップ導管の下端部を受容するよう構成された充填ポート15であって、その係合時に、流体が前記スパイクカップ導管を通って前記所定のバレルへと流れて、前記所定のバレルに充填するようになっている、充填ポート15と、を更に含む、実施態様1〜33のいずれかに記載の流体送達システム。
(35) 前記充填ポートが開放構成及び閉鎖構成へと回転可能であり、前記開放構成にあるときのみ、前記充填ポートがその中に流体を受容するために開放されるようになっている、実施態様34に記載のシステム。
【0088】
(36) 流体を送達するためのシステムであって、
対応の注射器バレル9内で摺動自在な、調整可能な長さのプランジャ10を有する注射器、を含む、システム。
(37) 流体を送達するための方法であって、
注射器アセンブリを準備することであって、前記注射器アセンブリが、
i.同様に配向されて分配方向を画定する第1及び第2注射器であって、各注射器が対応の注射器バレル4、9内で摺動自在な対応のプランジャ6、10を有し、前記第2注射器の前記プランジャ10が調整可能な長さを有する、第1及び第2注射器と、
ii.前記第1注射器の前記プランジャ6に取り付けられ機械的に係合される連結要素8と、
を含む、ことと、
前記第2注射器の前記調整可能な長さのプランジャ10を前記連結要素8に対して機械的に係合又は係合解除させるように、前記第2注射器の前記調整可能な長さのプランジャ10を伸長又は短縮させることと、
係合された各プランジャを対応の注射器バレル4、9内で長手方向に摺動させて、前記連結要素8と同調して移動させ、その結果流体を同時に前記バレルから排出させるように、前記分配方向に連結要素8を移動させることと、を含む、方法。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8