特許第6284889号(P6284889)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284889
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】放射性物質除去フィルタ装置
(51)【国際特許分類】
   G21C 9/00 20060101AFI20180215BHJP
   G21F 9/02 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   G21C9/00 K
   G21F9/02 551A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-1253(P2015-1253)
(22)【出願日】2015年1月7日
(65)【公開番号】特開2016-125950(P2016-125950A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】田中 賢彰
【審査官】 長谷川 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−209488(JP,A)
【文献】 特開昭56−048598(JP,A)
【文献】 特開平06−230166(JP,A)
【文献】 特開平04−238293(JP,A)
【文献】 米国特許第04873050(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 9/00−9/04
G21F 9/02
G21C 13/00
B01D 53/02
G21C 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力発電プラントの原子炉格納容器から排出されるベントガス中の放射性物質を除去する放射性物質除去フィルタ装置であって、
前記原子炉格納容器本体に一端を接続し、他端をスクラバ容器に接続した入口ベント配管と、
前記入口ベント配管に設けられ、前記原子力発電プラントの通常運転時には閉止されている入口弁と、
前記スクラバ容器に注水され前記ベントガス内の粒子状放射性物質を捕捉・保持可能なスクラビング水と、
前記スクラバ容器の上部に一端を接続し、他端を吸着体格納容器に接続した吸着体格納容器入口配管と、
前記吸着体格納容器に充填され前記スクラビング水を通過したベントガス内のガス状放射性物質を捕捉・保持可能な吸着体とを備え、
前記原子力発電プラントの通常運転時において、前記吸着体の吸湿を防止する吸着体乾燥保持手段を備え
前記吸着体乾燥保持手段は、前記吸着体格納容器入口配管の他端部に設けた蓋構造であって、
前記スクラバ容器からのベントガス圧力が無いときには、前記蓋構造により、前記吸着体格納容器入口配管の開口部が密閉される
ことを特徴とする放射性物質除去フィルタ装置。
【請求項2】
原子力発電プラントの原子炉格納容器から排出されるベントガス中の放射性物質を除去する放射性物質除去フィルタ装置であって、
前記原子炉格納容器本体に一端を接続し、他端をスクラバ容器に接続した入口ベント配管と、
前記入口ベント配管に設けられ、前記原子力発電プラントの通常運転時には閉止されている入口弁と、
前記スクラバ容器に注水され前記ベントガス内の粒子状放射性物質を捕捉・保持可能なスクラビング水と、
前記スクラバ容器の上部に一端を接続し、他端を吸着体格納容器に接続した吸着体格納容器入口配管と、
前記吸着体格納容器に充填され前記スクラビング水を通過したベントガス内のガス状放射性物質を捕捉・保持可能な吸着体とを備え、
前記原子力発電プラントの通常運転時において、前記吸着体の吸湿を防止する吸着体乾燥保持手段を備え、
前記吸着体乾燥保持手段は、
前記スクラビング水を貯水する貯水タンクと、
前記貯水タンクから前記スクラバ容器にスクラビング水を注水するスクラビング水供給配管と、
前記スクラビング水供給配管に設けたタンク止め弁を備え、
前記原子力発電プラントの通常運転時には、前記スクラバ容器内に前記スクラビング水を貯水しない
ことを特徴とする放射性物質除去フィルタ装置。
【請求項3】
請求項に記載の放射性物質除去フィルタ装置において、
前記貯水タンクを前記スクラバ容器より上方の位置に配置している
ことを特徴とする放射性物質除去フィルタ装置。
【請求項4】
請求項に記載の放射性物質除去フィルタ装置において、
前記貯水タンクの気相部を加圧可能なポンプと、
前記ポンプから前記貯水タンクへ加圧気体を供給可能な加圧気体供給配管と、
前記加圧気体供給配管に設けたポンプ吐出弁とを備えた
ことを特徴とする放射性物質除去フィルタ装置。
【請求項5】
請求項に記載の放射性物質除去フィルタ装置において、
圧縮空気源から前記貯水タンクへ圧縮空気を供給可能な圧縮空気供給配管と、
前記圧縮空気供給配管に設けた供給止め弁とを備えた
ことを特徴とする放射性物質除去フィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性物質除去フィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントにおいて、設計基準事故を大幅に超える事故である過酷事故等により、原子炉格納容器内に放射性物質を含んだ蒸気・ガスが大量に発生し、原子炉格納容器の耐圧圧力を超える可能性がある場合には、公衆被爆を最小限とするために、これらの蒸気・ガス(以下、ベントガスという)から放射性物質を極力除去した上で、大気中に放出する必要がある。
【0003】
ベントガスから放射性物質を除去するための放射性物質除去フィルタ装置として、スクラビング水によるスクラビングとフィルタによる捕集により、ガス中の放射性物質を極力除去し、放射性物質低減ガスとして出口配管を介して排気塔から大気中に排出する原子炉格納容器のフィルタベント装置がある(例えば、特許文献1参照)。ここで、ベントガスは、スクラバ容器のスクラビング水に放出されることによりスクラビングされて、粒子状放射性物質が除去される。また、フィルタでは、化学反応および吸着によって、ガス状放射性物質が除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−44118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した原子炉格納容器のフィルタベント装置によれば、過酷事故等によって発生したベントガスから放射性物質を極力除去することができるので、放射性物質低減ガスとして大気中に排出することができる。この結果、公衆被爆を最小限にできる。
【0006】
このような放射性物質除去フィルタ装置は、上述したように、例えば、過酷事故のときに作動するものであって、原子力発電プラントが通常運転されているとき(通常時)にはスタンバイ状態になっている。具体的には、放射性物質除去フィルタ装置を構成するプール水を蓄えたスクラバ容器とフィルタとは、入口に設けた隔離弁(入口弁)と出口側に設けたラプチャディスク等により、密閉された空間内に配置されている。
【0007】
このため、密閉された空間内では、スクラバ容器内のプール水による蒸気により、高湿度状態になる可能性がある。フィルタを構成する吸着体において、多孔質構造のため内部に水分を取込みやすい吸着体を用いた場合、高湿度環境では吸湿により、放射性物質の除去性能が低下してしまう可能性がある。
【0008】
本発明は上述の事柄に基づいてなされたものであって、その目的は、通常時におけるフィルタが配置される密閉空間を低湿度状態に保持できる放射性物質除去フィルタ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本願は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、原子力発電プラントの原子炉格納容器から排出されるベントガス中の放射性物質を除去する放射性物質除去フィルタ装置であって、前記原子炉格納容器本体に一端を接続し、他端をスクラバ容器に接続した入口ベント配管と、前記入口ベント配管に設けられ、前記原子力発電プラントの通常運転時には閉止されている入口弁と、前記スクラバ容器に注水され前記ベントガス内の粒子状放射性物質を捕捉・保持可能なスクラビング水と、前記スクラバ容器の上部に一端を接続し、他端を吸着体格納容器に接続した吸着体格納容器入口配管と、前記吸着体格納容器に充填され前記スクラビング水を通過したベントガス内のガス状放射性物質を捕捉・保持可能な吸着体とを備え、前記原子力発電プラントの通常運転時において、前記吸着体の吸湿を防止する吸着体乾燥保持手段を備え、前記吸着体乾燥保持手段は、前記吸着体格納容器入口配管の他端部に設けた蓋構造であって、前記スクラバ容器からのベントガス圧力が無いときには、前記蓋構造により、前記吸着体格納容器入口配管の開口部が密閉されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、通常時における放射性物質除去フィルタ装置が配置される密閉空間を低湿度状態に保持できる。この結果、フィルタを構成する吸着体の吸湿を抑制でき、放射性物質の除去性能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の放射性物質除去フィルタ装置の第1の実施の形態を備えた原子力発電プラントの概略構成を示す模式図である。
図2A】本発明の放射性物質除去フィルタ装置の第1の実施の形態を構成する吸着体格納容器の構成を示す模式図である。
図2B図2Aの吸着体格納容器のA部を示す斜視図である。
図3】本発明の放射性物質除去フィルタ装置の第2の実施の形態を示す模式図である。
図4】本発明の放射性物質除去フィルタ装置の第3の実施の形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の放射性物質除去フィルタ装置の実施の形態を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明の放射性物質除去フィルタ装置の第1の実施の形態を備えた原子力発電プラントの概略構成を示す模式図である。
本実施の形態における放射性物質除去フィルタ装置は沸騰水型原子力発電プラントに適用される例を示す。沸騰水型原子力発電プラントは、原子炉建屋内に原子炉圧力容器11を取り囲む原子炉格納容器10を備えている。原子炉格納容器10の下部周辺位置には、炉心冷却系(ECCS)として、冷却水を収容する環状の圧力抑制室12が設置されている。圧力抑制室12と原子炉格納容器10とは、原子炉格納容器10の下部の周方向複数個所に取付けた複数本のベント管13により接続されている。
【0014】
原子炉圧力容器11の内部には、複数の燃料集合体(図示せず)が装荷された炉心(図示せず)が配置されている。原子炉圧力容器11には、主蒸気管11Aや図示しない給水配管などが接続されている。
【0015】
放射性物質除去フィルタ装置1は、原子炉格納容器10の本体に取付けられた配管を通してベントガスを大気に排出するラインに設けられたものであって、スクラバ容器1Aとノズル2と吸着体格納容器3とラプチャディスク4と入口弁5とを備えている。
【0016】
原子炉格納容器10の本体には、入口ベント配管21の一端側が接続されていて、他端側がスクラバ容器1Aに導入されている。入口ベント配管21には通常のプラント運転時には閉止されていて、原子炉格納容器10からのベントガスの排出が必要になったときに、開操作される入口弁5が設けられている。また、入口ベント配管21の入口弁5より下流側には、窒素注入配管25が接続されている。窒素注入配管25には通常閉止の窒素注入弁25aが設けられている。
【0017】
スクラバ容器1Aは、ベントガス内の粒子状放射性物質を捕捉・保持するものであって、内部にスクラビング用のスクラビング水20を貯水している。スクラバ容器1Aの下部であって、本実施の形態においてはスクラビング水20の中には、導入された入口ベント配管21に一端側を接続したノズル2が設置されている。スクラバ容器1の上部には、吸着体格納容器入口配管22の一端側が接続されていて、他端側が吸着体格納容器3に導入されている。
【0018】
吸着体格納容器3は、ベントガス内のガス状放射性物質を捕捉・保持するものであって、内部に化学反応及び吸着作用でガス状放射性物質を除去する吸着体15が充填されている。吸着体格納容器入口配管22を介して供給されたベントガスは吸着体15を通過することで、ガス状放射性物質が除去される。吸着体格納容器3には、出口ベント配管23の一端側が接続されている。
【0019】
出口ベント配管23の他端側はラプチャディスク4に接続されている。また、出口ベント配管23には、窒素排出配管26が接続されている。窒素排出配管26には通常閉止の窒素排出弁26aが設けられている。また、ラプチャディスク4の下流側の排出配管24は排気塔16などから大気へベントガスを排出する。
【0020】
ところで、解決すべき課題で述べたように、このような放射性物質除去フィルタ装置1は、原子力発電プラントが通常運転されているとき(通常時)には、入口弁5とラプチャディスク4により、密閉空間を構成する。そして、この密閉空間には水素爆発対策として、窒素ガスが充填されている。具体的には、例えば、原子力発電プラントの運転前に、窒素注入配管25から窒素注入弁25aを介して窒素を注入し、窒素排出配管26から窒素排出弁26aを介して排出することで、窒素置換を行い、その後、窒素注入弁25aと窒素排出弁26aとを閉止することで、行なわれる。
【0021】
この窒素ガスの充填された空間内では、スクラバ容器1A内のスクラビング水20による蒸気により、高湿度状態になる可能性がある。このような状態が起きると、通常時において、吸着体格納容器3の吸着体15が水分を取り込んでしまって、放射性物質の除去性能を低下させてしまう可能性があり、性能低下が確認された場合、吸着体の交換が必要になるという課題があった。
【0022】
本発明の放射性物質除去フィルタ装置の第1の実施の形態は、このような問題を解決するためのものである。具体的には、吸着体乾燥保持手段として吸着体格納容器3に導入された吸着体格納容器入口配管22の先端部に蓋構造30を設けたことを特徴とする。以下に図2A及び図2Bを用いて説明する。
【0023】
図2Aは本発明の放射性物質除去フィルタ装置の第1の実施の形態を構成する吸着体格納容器の構成を示す模式図、図2B図2Aの吸着体格納容器のA部を示す斜視図である。図2A及び図2Bにおいて、図1に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0024】
図2Aに示すように、吸着体格納容器3は、吸着体格納容器入口配管22を介してベントガスが導入される入口部3aと、ベントガス内のガス状放射性物質を化学反応及び吸着作用で除去する吸着体15が充填された吸着部3bと、入口部と吸着部とを通過したベントガスが滞留する出口部3cとを備えている。出口部3cには出口ベント配管23の一端側が接続されている。
【0025】
また、図2A及び図2Bに示すように、吸着体格納容器3の入口部3aに導入された吸着体格納容器入口配管22の先端部には、開閉可能な蓋構造30が設けられている。
【0026】
蓋構造30は、吸着体格納容器入口配管22の先端開口部の上部に設けたヒンジ機構部31と、一端側をヒンジ機構部31に接続することで上下可動であって、吸着体格納容器入口配管22の先端開口部を密閉可能な蓋部32と、吸着体格納容器入口配管22の先端開口部において、吸着体格納容器入口配管22の下側長さを上側長さより長くなるように形成したテーパ部33とを備えている。
【0027】
蓋部32は、軽量な材質の部材で形成しているので、スクラバ容器1Aからベントガスが流入した場合あるいは窒素置換時には、ベントガスの圧力により蓋部32が押圧されヒンジ機構31により上方に開動作し、ベントガスの流れを阻害しない構成としている。
【0028】
また、吸着体格納容器入口配管22の先端開口部にテーパ部33を設けているので、原子力発電プラントが通常運転されているとき(通常時)にはベントガスの圧力が無く、蓋部32が自重でテーパ部33を覆う。このことにより、吸着体格納容器入口配管22の先端開口部が密閉される。この結果、吸着体格納容器3の入口部3aが密閉されるので、スクラバ容器1A内のスクラビング水20から生じる蒸気が吸着体格納容器3へ流入することを防止できる。
【0029】
次に、本発明の放射性物質除去フィルタ装置の第1の実施の形態の動作について図面を用いて説明する。
図1において、原子力発電プラントの通常運転中に主蒸気管11Aの1本が大破断(以下、大LOCAという)した場合、原子炉圧力容器11で発生した蒸気が破断口から流出し原子炉圧力容器11内の水位及び圧力が低下し、全ての制御棒が炉心に挿入されることで原子炉は停止する。この場合、非常時炉心冷却系(ECCS)の主要設備の一つである残留熱除去系(RHR)を用いることで、原子炉圧力容器11への注水、原子炉格納容器10へのスプレイ注水、及び圧力抑制室12の冷却を行う事ができる。原子炉圧力容器11への注水によって冷却材水位を炉心より上方に維持することで、炉心を継続的に安定冷却しつつ、原子炉格納容器10から除熱することで、大LOCAを安全に収束させることができる。
【0030】
しかし、設計基準事故を超える事故として、例えば、全交流電源喪失(SBO)の発生を想定した場合には、上述したRHRの3つの機能が使用できなくなるため、原子炉圧力容器11内の冷却材水位が維持できずに炉心が水面上に露出して炉心に装荷されている燃料が損傷し、多量の放射性物質を含んだ蒸気・ガスが原子炉格納容器10に放出され、事故の進展に伴い原子炉格納容器10内の圧力と温度を上昇させることになる。
【0031】
原子炉格納容器10の過温、過圧破損を防止するために、原子炉格納容器10内のベントガスから放射性物質を極力除去して大気中に放出する。
具体的には、まず、入口弁5を開操作する。このことにより、原子炉格納容器10内で生じた放射性物質を含むベントガスは、入口ベント配管21を経てスクラバ容器1Aのノズル2からスクラビング水20中に噴出される。ノズル2によりベントガスがスクラビング水と混合されることにより、ベントガス内の粒子状放射性物質がスクラビング水中に捕捉・保持されて取り除かれる。
【0032】
スクラビング水を通過したベントガスは、吸着体格納容器入口配管22に流入し、先端部に設けた蓋構造30の蓋部32を上方に開動作させて、吸着体格納容器3の入口部3aに導かれる。
【0033】
吸着体格納容器3の入口部3aに導かれたベントガスは、吸着体15が充填された吸着部3bを通過して出口部3cから出口ベント配管23へ流出する。ここで、吸着体15はベントガス内のガス状放射性物質を化学反応及び吸着作用で除去する。出口ベント配管23へ流出したベントガスはラプチャディスク4に流入し、ラプチャディスク4を破断開放して排出配管24と共にガス流路を構成する。このことにより、ガス状放射性物質が除去されたベントガスは、出口ベント配管23とラプチャディスク4と排出配管24と排気塔16などを介して大気に放出される。
【0034】
このように、本実施の形態においては、吸着体乾燥保持手段として吸着体格納容器3に導入された吸着体格納容器入口配管22の先端部に蓋構造30を設けたので、原子力発電プラントの過酷事故などが発生した場合であってもベントガスから放射性物質を極力除去できると共に、通常時において、フィルタを構成する吸着体の吸湿を抑制できる。このことにより、フィルタの放射性物質の除去性能の低下を防止できる。
【0035】
上述した本発明の放射性物質除去フィルタ装置の第1の実施の形態によれば、通常時における放射性物質除去フィルタ装置1が配置される密閉空間を低湿度状態に保持できる。この結果、吸着体格納容器3を構成する吸着体15の吸湿を抑制でき、放射性物質の除去性能を維持することができる。
【実施例2】
【0036】
以下、本発明の放射性物質除去フィルタ装置の第2の実施の形態を図面を用いて説明する。図3は本発明の放射性物質除去フィルタ装置の第2の実施の形態を示す模式図である。図3において、図1及び2に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0037】
本発明の放射性物質除去フィルタ装置の第2の実施の形態において原子力発電プラントの構成と放射性物質除去フィルタ装置1の配置は図3に示すように、大略第1の実施の形態と同じであるが、吸着体格納容器3における蓋構造30を設けていない点と、スクラビング水20を貯水する貯水タンク6と、貯水タンク6からスクラバ容器1Aにスクラビング水20を供給するスクラビング水供給配管8と、スクラビング水供給配管8に設けたタンク止め弁7とを設け、原子力発電プラントの通常時には、スクラバ容器1A内にスクラビング水20を貯水しない点が異なる。
【0038】
本実施の形態において、貯水タンク6は、スクラバ容器1Aより上方の位置に配置している。また、スクラビング水供給配管8の一端側は貯水タンク6の下部に接続されていて、スクラビング水供給配管8の他端側はスクラバ容器1Aの側面部に接続されている。このことにより、ポンプ等を必要とせず重力でスクラビング水20を貯水タンク6からスクラバ容器1Aへ供給することができる。
【0039】
本実施の形態においては、吸着体乾燥保持手段としてスクラビング水20を貯水する貯水タンク6と、貯水タンク6からスクラバ容器1Aにスクラビング水20を供給するスクラビング水供給配管8と、スクラビング水供給配管8に設けたタンク止め弁とを備え、通常時にスクラバ容器1Aの中にスクラビング水20を貯水しないことを特徴とする。
【0040】
本発明の放射性物質除去フィルタ装置の第2の実施の形態の動作においては、例えば、上述したような過酷事故が発生したときに、まず、入口弁5を開操作する前に、タンク止め弁7を自動もしくは手動で開動作させて、貯水タンク6からスクラビング水20をスクラバ容器1Aに注水する。その後、入口弁5を開動作させてベントガスをスクラバ容器1Aへ導入する。
【0041】
このように、本実施の形態においては、吸着体乾燥保持手段として通常時にスクラバ容器1Aの中にスクラビング水20を貯水しない構成を採用したので、通常時において、フィルタを構成する吸着体の吸湿を抑制できる。このことにより、フィルタの放射性物質の除去性能の低下を防止できる。
【0042】
上述した本発明の放射性物質除去フィルタ装置の第2の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0043】
また、上述した本発明の放射性物質除去フィルタ装置の第2の実施の形態によれば、貯水タンク6をスクラバ容器1Aより上方の位置に配置しているので、ポンプ等を必要とせず重力でスクラビング水20を貯水タンク6からスクラバ容器1Aへ供給することができる。この結果、過酷事故により電源が喪失した場合であっても、確実にスクラビング水20をスクラバ容器1Aへ注水できる。
【実施例3】
【0044】
以下、本発明の放射性物質除去フィルタ装置の第3の実施の形態を図面を用いて説明する。図4は本発明の放射性物質除去フィルタ装置の第3の実施の形態を示す模式図である。図4において、図1乃至3に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0045】
本発明の放射性物質除去フィルタ装置の第3の実施の形態において、原子力発電プラントの構成と放射性物質除去フィルタ装置1の配置は図4に示すように、大略第2の実施の形態と同じであるが、貯水タンク6を、スクラバ容器1Aより上方の位置に配置していない点と、加圧気体(窒素)を供給するポンプ9と、貯水タンク6の上方部に一端を接続し、他端をポンプ9の吐出口に接続する加圧気体(窒素)供給配管9Bと、加圧気体供給配管9Bに設けたポンプ吐出弁9Aとを備えた点が異なる。
【0046】
本実施の形態においては、吸着体乾燥保持手段として第2の実施の形態の構成要件に加えて、貯水タンク6の気相部を加圧可能なポンプ9と、ポンプ9から貯水タンク6へ加圧気体を供給可能な加圧気体供給配管9Bと、加圧気体供給配管9Bに設けたポンプ吐出弁9Aとを備え、通常時にスクラバ容器1Aの中にスクラビング水20を貯水しないことを特徴とする。
【0047】
本発明の放射性物質除去フィルタ装置の第3の実施の形態の動作においては、例えば、上述したような過酷事故が発生したときに、まず、入口弁5を開操作する前に、タンク止め弁7を自動もしくは手動で開動作させて、次に、ポンプ9の起動とポンプ吐出弁9Aの開動作をして、貯水タンク6の気相部を加圧することで、貯水タンク6からスクラビング水20をスクラバ容器1Aに注水する。その後、入口弁5を開動作させてベントガスをスクラバ容器1Aへ導入する。
【0048】
上述した本発明の放射性物質除去フィルタ装置の第3の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、配置上の制約から、貯水タンク6を放射性物質除去フィルタ装置1よりも高い位置に設置できない場合に適用可能である。
【0049】
なお、本実施の形態においては、ポンプ9によって貯水タンク6の気相部を加圧する例を説明したが、これに限るものではない。例えば、ポンプ9に替えて、圧縮空気源と弁と配管とを設けても良い。
【0050】
なお、本発明は上述した第1乃至第3の実施の形態に限られるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施形態は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、ある実施形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0051】
1:スクラバ容器、2:ノズル、3:吸着体格納容器、4:ラプチャディスク、
5:入口弁、6:貯水タンク、7:タンク止め弁、8:スクラビング水供給配管、9:ポンプ、9A:ポンプ吐出弁、9B:加圧気体供給配管、10:原子炉格納容器、11:原子炉圧力容器、12:圧力抑制室、13:ベント管、15:吸着体、16:排気塔、20:スクラビング水、21:入口ベント配管、22:吸着体格納容器入口配管、23:出口ベント配管、24:排出配管、25:窒素注入配管、26:窒素排出配管、30:蓋構造、31:ヒンジ機構部、32:蓋部、33:テーパ部
図1
図2A
図2B
図3
図4