特許第6284907号(P6284907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284907
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】湯温制御装置及び湯温制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/00 20060101AFI20180215BHJP
   A47K 3/00 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   F24H1/00 602C
   A47K3/00 N
   A47K3/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-128364(P2015-128364)
(22)【出願日】2015年6月26日
(65)【公開番号】特開2017-9258(P2017-9258A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2017年10月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515177354
【氏名又は名称】竹内 保久
(74)【代理人】
【識別番号】100118393
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 康裕
(72)【発明者】
【氏名】竹内 保久
【審査官】 大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−221166(JP,A)
【文献】 特開平01−300153(JP,A)
【文献】 特開2002−364914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H1/00
A47K3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部の湯が放熱する浴槽に該浴槽内の湯よりも高温な補給湯を前記浴槽の上方に設けられた給湯口から供給する湯温制御装置であって、
前記浴槽の温度を検出する温度センサーと、
前記浴槽の湯の第1下限温度L2と第1上限温度H2とが設定された制御部と、
流路の流量を設定する第1流量調整部と、前記制御部からの信号により流路を開放/閉鎖する第1開閉部と、を備える第1バルブ部と、
流路の流量を設定する第2流量調整部と、前記制御部からの信号により流路を開放/閉鎖する第2開閉部と、を備える第2バルブ部と、
流路の流量を設定する第3流量調整部と、前記制御部からの信号により流路を開放/閉鎖する第3開閉部と、を備える第3バルブ部と、
を備え、
前記第1バルブ部を通過した流湯と前記第2バルブ部と前記第3バルブ部を通過した流湯は、前記給湯口から供給され、
前記制御部は、
前記第1開閉部の流路の開放を少なくとも前記第1上限温度H2を超えるまでは維持させ、
前記第2開閉部の流路の開放/閉鎖の切り替えを前記第1下限温度L2と前記第1上限温度H2間で行わせ
前記第3開閉部の流路の開放を前記第1上限温度H2よりも低い温度まで維持させることを特徴とする湯温制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1開閉部の流路を前記第1上限温度H2よりも高い第2上限温度H1で閉鎖させることを特徴とする請求項に記載の湯温制御装置。
【請求項3】
前記浴槽内の底部の湯を前記給湯口に導くポンプ部を設けることを特徴とする請求項1又は2に記載の湯温制御装置。
【請求項4】
第1バルブ部と、第2バルブ部と、第3バルブ部とを用い、内部の湯が放熱する浴槽に該浴槽内の湯よりも高温な補給湯を前記浴槽の上方に設けられた給湯口から供給することにより、下限と上限との間の温度範囲で前記浴槽の湯温を制御する湯温制御方法であって、
前記第2バルブ部が閉鎖され前記第1バルブ部が開放された補給状態では、前記浴槽の湯温が温度降下となるように前記第1バルブ部の流出量が調整され、
前記第1バルブ部と前記第2バルブ部が開放された補給状態では、前記浴槽の湯温が温度上昇となるように前記第2バルブ部の流出量が調整され、
前記第1バルブと前記第2バルブ部と第3バルブ部が開放された補給状態でも、前記浴槽の湯温が温度上昇となるように前記第3バルブ部の流出量が調整され、
前記第1バルブ部は、少なくとも前記浴槽の湯温が前記温度範囲の上限を超えるまでは流出するようにON/OFF制御され、
前記第2バルブ部は、前記浴槽内の湯温が前記温度範囲のときのみに前記温度範囲になるようにON/OFF制御され
前記第3バルブ部は、前記浴槽内の湯温が前記温度範囲の下限を下回ったときに流出するようにON/OFF制御されることを特徴とする湯温制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯温制御装置及び湯温制御方法に関し、詳しくは、補給湯を浴槽の上方に設けられた給湯口から供給する湯温制御装置及び湯温制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
補給湯を浴槽の上方から常時流し込む方法は、かけ流しの温泉に浸かっているという満足感を与える。このために、多くの温泉ではこの方法が採られている。浴槽の湯は外気温より高く、また温泉の浴槽は蓋が無く開放により放熱するために、そのままでは自然に湯が冷めてしまうことになる。このため浴槽内の湯温の管理を行わなければならない。
【0003】
湯温の低下を防ぐ理想的な方法は、冷めていく分だけ湯を適量補給していくことではあるが、かけ流しの温泉によって行うことは外気温の影響もあるため非常に難しい。また、源泉を用いる場合には、補給する源泉の圧力変化の影響も受けるため、かけ流しの温泉による湯温管理は非常に難しく、各温泉旅館では例えば2時間おきに湯温を計測し、バルブ調整によって流量を調整しており、非常に労力のかかる作業になっている。
【0004】
そこで、特許文献1(特開2008−100018号公報)の図1に示されるように、浴槽の湯温を温度センサーで検出して、温水と冷水の流入バルブを自動的に開閉制御する方法が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−100018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1は浴槽への補給湯に水を混入している。このために源泉の温泉としての有効成分が希釈し、また大量の水が必要になるという問題があった。なお、希釈することなく源泉の温度を下げる方法としては熱交換器と水を使用する方法が考えられるが、この方法は大量の使用水、装置の巨大化、高額化という短所があるので好ましくない。
【0007】
また、外乱により浴槽の湯温が所望する温度から大きく外れることがある。外乱の例としては、シャワー使用などの供給湯量の変化に伴う供給湯の圧力や冷水の圧力の変化、室温・気温の変化、風力の変化、入浴人数の変化がある。外乱により浴槽の湯温が所望する温度から大きく外れると、浴槽の湯温が設定温度になるまでに時間が掛かるという問題があった。
【0008】
また、最近では入浴者によって目標温度を設定可能な客室専用の浴槽を設置している客室もあるが、設定温度が変更された瞬間は、浴槽の湯温が設定温度と大きくずれることになり、設定温度の変更にもできるだけ短時間で対応できる安価な湯温制御装置の要望があった。さらに、人が感じる適温は季節によって変化するので、同一人物であっても、季節によって温度変更がなされる。
【0009】
そこで、本発明は、水を混入することなく、湯温の管理をすることのできる湯温制御装置および制御方法を提供することを目的とする。また、外乱があったり、入浴者が温度設定を変更したりしも浴槽の湯が短時間で所望する温度になる湯温制御装置および制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の湯温制御装置は、内部の湯が放熱する浴槽に該浴槽内の湯よりも高温な補給湯を前記浴槽の上方に設けられた給湯口から供給する湯温制御装置であって、前記浴槽の温度を検出する温度センサーと、前記浴槽の湯の第1下限温度L2と第1上限温度H2とが設定された制御部と、流路の流量を設定する第1流量調整部と、前記制御部からの信号により流路を開放/閉鎖する第1開閉部と、を備える第1バルブ部と、流路の流量を設定する第2流量調整部と、前記制御部からの信号により流路を開放/閉鎖する第2開閉部と、を備える第2バルブ部と、を備え、前記第1バルブ部を通過した流湯と前記第2バルブ部を通過した流湯は、前記給湯口から供給され、前記制御部は、前記第1開閉部の流路の開放を少なくとも前記第1上限温度H2を超えるまでは維持させ、前記第2開閉部の流路の開放/閉鎖の切り替えを前記第1下限温度L2と前記第1上限温度H2間で行わせることを特徴とする。
【0011】
本発明の湯温制御装置は、第1バルブ部が流路の流量を設定する第1流量調整部を備えているので、第1バルブ部が開放され第2バルブ部が閉鎖された補給状態では、放熱による浴槽の湯温の降下が僅かになるように、補給湯の量を設定しておくことができる。また、第2バルブ部が流路の流量を設定する第2流量調整部を備えているので、第1バルブ部と第2バルブ部が開放された補給状態では、浴槽の湯温が上昇するように、補給湯の量を設定しておくことができる。
【0012】
そして、湯温制御装置は、このように流量を設定しておくことで、湯温が第1上限温度H2に達していると、第1バルブ部からの補給湯だけになるため、湯温が第1上限温度H2から徐々に降下していくが、温度降下が進むと第2バルブ部からの補給湯が加わるので、第1下限温度L2よりも湯温は下がらず、第1下限温度L2と第1上限温度H2との間で湯温を維持することができる。また、流量が設定された第1バルブ部からの補給湯だけでは、浴槽の湯温が上昇しないので継続して補給できるため、かけ流しの温泉に浸かっているという満足感が強くなる。また、浴槽の湯の放熱量は浴槽が設置される場所や季節などの環境によって変化するので、湯温制御装置の管理者は浴槽の環境に応じて第1バルブ部と第2バルブ部の流量をその都度設定しておくことができる。また、制御部のバルブ制御は開放/閉鎖の切り替えのみで、自動流量制御やPID制御を必要としないので、湯温制御装置を安価で提供することができる。
【0013】
また、本発明の湯温制御装置においては、流路の流量を設定する第3流量調整部と、前記制御部からの信号により流路を開放/閉鎖する第3開閉部と、を備える第3バルブ部を更に備え、前記第3バルブ部を通過した流湯も、前記給湯口から供給され、前記制御部は、前記第3開閉部の流路の開放を前記第1上限温度H2よりも低い温度まで維持させることが好ましい。
【0014】
このように、第3バルブ部が流路の流量を設定する第3流量調整部を備えているので、第1〜第3バルブ部が開放された補給状態で、早い温度上昇となるように源泉補給量を設定することができる。これにより、外乱で浴槽の湯の温度が第1下限温度L2よりも下がったときに第3バルブ部によって浴槽の湯の温度上昇を加速させることができる。
【0015】
また、本発明の湯温制御装置においては、前記制御部は、前記第1開閉部の流路を前記第1上限温度H2よりも高い第2上限温度H1で閉鎖させることが好ましい。
設定温度は入浴者でも変更可能であり、入浴者によって非常に低く設定されたときは、第1バルブ部からの補給湯も自動的に止めて早く浴槽の湯温を下げることができる。
【0016】
また、本発明の湯温制御装置においては、前記浴槽内の底部の湯を前記給湯口に導くポンプ部を設けることが好ましい。
【0017】
入浴者が非常に低く設定変更し、補給湯が給湯口から出なくなると、満足感が低下してしまう。それだけでなく、浴槽内の流れが無くなって表面側が空冷され低温になり、底面側との温度差が生じる。このために、浴槽内の温度が不均一になるだけでなく、浴槽の冷却に時間が掛かることとなる。浴槽内の温度が不均一になると、正しい温度検出ができずに不正確な温度制御となる。そこで、本発明は給湯口から離間している浴槽内の底部の湯を給湯口から流出させて、外気にさらして放熱させ、また、その流れによって浴槽の湯を撹拌させる。これにより、浴槽内の湯を早く冷却させ且つ温度を均一にし、入浴者に温泉感を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態の構成を示すブロック図である。
図2】実施形態の動作を示す温度チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態及び図面を参照にして本発明を実施するための形態を説明するが、以下に示す実施形態は、本発明をここに記載したものに限定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。なお、この明細書における説明のために用いられた各図面においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に比例して表示されているものではない。
【0020】
本発明の実施形態の湯温制御装置の構成を、図1を用いて説明する。本実施形態の湯温制御装置1は客室内のプライベートな浴室2に設置された浴槽3に補給湯を供給する装置である。補給湯の給湯口4は浴槽3の上方に配設されている。本実施形態の湯温制御装置1は少なくとも第1バルブ部11、第2バルブ部12、第3バルブ部13、濾過器(ストレーナー)S、ポンプP、制御部14、入力部15と温度センサー16を備えている。
【0021】
源泉は並列に配設されたそれぞれの第1バルブ部11、第2バルブ部12、第3バルブ部13を通って合流し、給湯口4に流出される。また、浴槽3の給湯口4下方の底部に設けられた流出口31から浴槽3の湯が濾過器S、ポンプPを経て、第1〜第3バルブ部11〜13の流出源泉とその上流から合流して給湯口4に流出される。ポンプPからの湯は第1〜第3バルブ部11〜13の流出源泉よりも上流から流れる。これにより第1〜第3バルブ部11〜13の始動時のエアー抜きができる。また、ポンプPの圧力が源泉の給湯口4方向への流圧を妨げない。
【0022】
第1〜第3バルブ部11〜13はそれぞれの流路の流量を手動で調節する第1〜第3ニードルバルブ(第1〜第3流量調整部)N1〜N3と、流路を開放(ON)/閉鎖(OFF)する第1〜第3電動バルブ(第1〜第3開閉部)V1〜V3を備えている。ニードルバルブと電動バルブからなるバルブ部はこれらが一体になったニードル付き電動バルブでもよいが、ここでは動作を区別して説明するために別々に記す。入力部15は浴槽3の湯の希望温度を手入力する手段であり、入力された情報は制御部14に送信される。温度センサー16は浴槽3内の給湯口4下方に配設されて湯の温度を検出し、検出された情報は制御部14に送信される。給湯口4からの加温は少しずつなので加温は先の方まで届くが給湯口4の下方は意外と温度が安定した場所であり、入浴者の邪魔にならない。制御部14は入力部15によって入力された希望温度から温度制御の上限や下限などの閾値を設定して、第1〜第3バルブ部11〜13の開閉(ON/OFF)を制御する。また、ポンプPのON/OFFも制御する。制御部14のバルブ制御は開放/閉鎖の切り替えのみであり、自動流量制御やPID制御を必要としないので、湯温制御装置1を安価で提供することができる。
【0023】
次に、図2を用いて本実施形態の湯温制御装置1の動作を説明する。浴槽3は蓋がないので湯温が放熱によって下がる。例えば、湯の適温近傍で、浴槽3の湯温は補給湯が無いと10分間で0.35℃下がる環境であるとする。第1ニードルバルブN1の流量は、ポンプPをON、第2電動バルブV2をOFF、第3電動バルブV3をOFFした状態で、浴槽3の湯温が10分間で0.1℃降下するように予め手動で設定される。すなわち、第1バルブ部11からのみの源泉の補給によって浴槽3の湯温は冷える速度が遅くなるが、温度上昇はしない。
【0024】
第2ニードルバルブN2の流量は、ポンプPをON、第1電動バルブV2をON、第3電動バルブV3をOFFした状態で、浴槽3の湯温が10分間で0.1℃上昇するように予め手動で設定される。すなわち、第1バルブ部11からの源泉に第2バルブ部12からの源泉を追加すると浴槽3の湯温が上昇する。
【0025】
第3ニードルバルブN3の流量は、ポンプPをON、第1電動バルブV2をON、第2電動バルブV3をONした状態で、給湯口4から浴槽3に補給される湯の湯温が火傷しない程度の湯温(1時間も浸からない浴槽の湯であれば、45度以上)になるように予め手動で設定される。
【0026】
これらの手動による流量の設定は浴槽3の湯の放熱環境の相違に応じて初期設定され、また放熱環境の変化に応じて設定変更される。このように、湯温の制御に源泉の温度を下げるための水は使用していないので、浴槽3の湯は温泉の有効成分が希釈することがない。なお、本実施形態では源泉の温度を下げるのにポンプPを用いて浴槽3の湯を加えているが、温泉に引き込まれる源泉の温度がそれほど高くなければ浴槽3の湯を加えなくてもよい。また、第3ニードルバルブN3の流量を、給湯口4から浴槽3に補給される湯により火傷しない程度の湯温になるように設定しているが、第3ニードルバルブN3の流量を増やし、補給口4から浴槽3に供給される補給湯をより源泉に近い高温の湯温としても構わない。しかしながら、補給口4からの補給湯に直接手をつける人もいるため、第3ニードルバルブN3の流量は、給湯口4から浴槽3に補給される湯により火傷しない程度の湯温になるような設定が好ましい。
【0027】
入浴者が入力部15に希望温度を入力することにより、この入力に基づいて制御部14は浴槽3の湯温の制御目標温度範囲として第1上限温度H2(例えば、42.0℃)と第1下限温度L2(例えば、41.8℃)を設定する。このとき、浴槽3の湯温は図2のL3(例えば、41.6℃)よりも低い状態からの湯温制御装置1の動作とする。
【0028】
制御部14は第1〜第3バルブ部11〜13のそれぞれの第1〜第3電動バルブV1〜V3とポンプPをONさせる。これにより、第1〜第3バルブ部11〜13を通った源泉はポンプPで引き込まれた浴槽3の湯で火傷しない程度に温度が下げられて浴槽3の上方の給湯口4から浴槽3に給湯される。このように、第1〜第3バルブ部11〜13の全てを開放させて浴槽3の湯温を目標温度範囲まで急速に温度上昇させる。
【0029】
浴槽3に配設されている温度センサー16からの情報が第1下限温度L2より僅かに低い第2下限温度H3(例えば、41.7℃)になると、制御部14は第3バルブ部13の第3電動バルブV3をOFFにする。このときは第1バルブ部11と第2バルブ12を通った源泉とポンプPを通った浴槽3の湯が浴槽3に給湯される。これにより、浴槽3の湯温は10分で0.1℃上昇する。このようにして、第3バルブ部13は浴槽3の湯温が第1下限温度L2より低い時に加速的に湯温を上昇させるために使用される。第3バルブ部13が第1下限温度L2より僅かに低い第2下限温度H3で閉鎖される理由は、温度センサー16の応答遅れや高温湯が大量に補給されることによる浴槽3の湯に温度ムラなどによって湯温の温度上昇が第1下限温度L2を超えるの(オーバーラン)を防止するためである。
【0030】
温度センサー16からの情報が第1上限温度H2になると、制御部14は第2バルブ部12の第2電動バルブV2をOFFにする。このときは第1バルブ部11のみを通った源泉とポンプPを通った浴槽3の湯が浴槽3に給湯される。これにより、浴槽3の湯温は10分で0.1℃降下する。この第1バルブ部11からの補給湯は継続的に流出されることになるので、給湯口4からの補給量も多くなって、源泉かけ流しの温泉に浸かっているという満足感も強い。また、第1バルブ部11から補給が継続しているので、この時の浴槽の湯の温度降下は僅かとなる。
【0031】
そして、温度センサー16からの情報が第1下限温度L2になると、制御部14は第2バルブ部12の第2電動バルブV2を再びONにする。このときは第1バルブ部11と第2バルブ12を通った源泉とポンプPを通った浴槽3の湯が浴槽3に給湯される。これにより、浴槽3の湯温は再び10分で0.1℃上昇する。このようにして、浴槽3の湯温は第1下限温度L2から第1上限温度H2までの間の温度範囲で自動的に保持される。
【0032】
一方、温泉においては、浴槽3の湯温に関して急激な変化が生じることがあるため、湯温制御装置1はこの急激な変化に対応する必要もある。具体的には、例えば、他の入浴者が非常に高い温度に設定変更したときや、例えば多人数の入浴者などの外乱によって浴槽3の湯温が第3下限温度L3(例えば、41.6℃)より下がったときは、制御部14は第3バルブ部13の第3電動バルブV3をONさせる。これにより、湯温制御装置1は、第1〜第3バルブ部11〜13の全てを開放させて浴槽3の湯温を目標温度範囲まで急速に温度上昇させる。なお、この時第3バルブ部13を用いなければ、10分で0.1℃の上昇なので、例えば、入浴者が2℃高くすれば、200分かかってしまうことになる。またこの時、第1〜第3バルブ部11〜13を通った源泉は、ポンプPで引き込まれた浴槽3の湯で火傷しない程度の温度となって浴槽3の上方の給湯口4から浴槽3に給湯される。
【0033】
逆に、他の入浴者が非常に低い温度に設定変更したときや、例えば源泉圧の増加などの外乱によって浴槽3の湯温が第1上限温度H2を超えて第2上限温度H1(例えば、42.1℃)以上になったときは、制御部14は第1バルブ部11の第1電動バルブV1をOFFにする。もし、このとき急激な湯温変化などのために第2バルブ部12や第3バルブ部13がONになっていれば、いずれもOFFにさせる。このようにして、すべての源泉の給湯を閉鎖して浴槽3の湯温を急速に降下させる。このときはポンプPを通った浴槽3の湯のみが浴槽3に給湯される。もしポンプPからの給湯がなければ給湯口4からの流出する湯が無いのでかけ流し温泉に浸かっているという満足感が悪くなるが、ポンプPからの給湯があるのでこの満足感が損なわれない。また、もしポンプPからの給湯がなければ浴槽3内の流れが無くなって表面側が空冷され低温になり、底面側との温度差が生じる。このために、浴槽5内の温度が不均一になるだけでなく、浴槽3の冷却に時間が掛かることとなる。浴槽5内の温度が不均一になると、正しい温度検出ができずに不正確な温度制御となる。そこで、本実施形態は浴槽3内の底部の湯を給湯口から流出させて、その流れによって浴槽3の湯を撹拌させる。これにより、浴槽3内の湯の温度を均一にし、入浴者に満足感を与えることができる。浴槽3の湯温が降下して設定範囲内の第1下限温度L1(例えば、41.9℃)になると、制御部14は第1、第2バルブ部11、12の第1、第2電動バルブV1、V2をONにする。このときは第1バルブ部11と第2バルブ12を通った源泉とポンプPを通った浴槽3の湯が浴槽3に給湯される。これにより、浴槽3の湯温は10分で0.1℃上昇する。これ以降は前述の制御部14の制御によって浴槽3の湯温は第1下限温度L2から第1上限温度H2までの間を自動的に保持される。
【0034】
上記のように、本発明の湯温制御装置1は浴槽3の湯温を低下させるために冷水(水道の水や井戸水など)を補給湯に混入させていない。このために浴槽3の湯の温泉としての有効成分が希釈されることはない。また、本発明の湯温制御装置1の源泉の供給は、継続の補給湯を流出するための基本の第1バルブ部11と、設定された温度に浴槽3の湯温を保持するための温度調整の第2バルブ部12と、入浴者の温度設定変更や外乱で早く温度上昇をさせたいときの加速の第3バルブ13を備えている。このように解り易い3つの役割分担なので、種々の浴槽3に湯温制御装置1を取り付けるときの流量の初期設定や浴槽3の環境が変化したときの流量の設定変更が容易である。第1バルブ部11の流量は浴槽3の湯温が僅か降下するまでの量であるので、継続的な補給としては多い流量に設定されている。このために、入浴者に継続的な満足感を与える。また、本発明の湯温制御装置1は入浴者の温度設定変更や外乱で早く温度降下をさせたいときに全バルブ部11〜13を閉鎖して源泉による加熱を止め、ポンプPはONのままに維持する。これにより、浴槽3の湯の撹拌が維持されて早く浴槽3の湯温が降下する。
【0035】
なお、本実施形態において湯温制御装置1は、客室内のプライベートな浴室2に設置された浴槽3に用いているが、多くの人が一度に入浴する大浴場の浴槽に用いても構わない。一方、最近は客室内にも浴室を設けることで高級感をだす旅館も増えている。このような客室では、利用者に不満を与えないよう湯温管理が非常に重要となるが、客室内に設けられた浴室は、浴槽も小さくまた浴室内といっても露天風呂のようになっていることが多い。したがって、外気温による湯温の変化が大きいなど湯温制御に多くの困難が伴うが、本発明の湯温制御装置1はこのような客室内の浴槽の湯温制御に非常に適している。
【0036】
また、本実施形態において湯温制御装置1は、源泉を用いているが加温した源泉でも構わない。
【符号の説明】
【0037】
1:湯温制御装置
11:第1バルブ部
12:第2バルブ部
13:第3バルブ部
14:制御部
15:入力部
16:温度センサー
N1:第1ニードルバルブ
N2:第2ニードルバルブ
N3:第3ニードルバルブ
V1:第1電動バルブ
V2:第2電動バルブ
V3:第3電動バルブ
P:ポンプ
3:浴槽
4:給湯口
図1
図2