(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284938
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】湿気硬化性ポリアクリレート
(51)【国際特許分類】
C07F 7/18 20060101AFI20180215BHJP
C08F 8/42 20060101ALI20180215BHJP
C08L 33/08 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
C07F7/18 MCSP
C08F8/42
C08L33/08
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-528519(P2015-528519)
(86)(22)【出願日】2013年8月13日
(65)【公表番号】特表2015-531767(P2015-531767A)
(43)【公表日】2015年11月5日
(86)【国際出願番号】US2013054621
(87)【国際公開番号】WO2014031383
(87)【国際公開日】20140227
【審査請求日】2016年8月12日
(31)【優先権主張番号】61/684,829
(32)【優先日】2012年8月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/738,348
(32)【優先日】2013年1月10日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514056229
【氏名又は名称】ヘンケル アイピー アンド ホールディング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(74)【代理人】
【識別番号】100129610
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 暁子
(72)【発明者】
【氏名】クレマシク、 フィリップ ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ジャコビン、 アンソニー エフ.
(72)【発明者】
【氏名】シャール、 ジョエル ディー.
【審査官】
桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−074325(JP,A)
【文献】
特開昭60−058951(JP,A)
【文献】
カナダ国特許出願公開第02171483(CA,A1)
【文献】
特開平06−211879(JP,A)
【文献】
特開2000−191669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/18
C08F 8/42
C08L 33/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノアルキルアルコキシシランで官能化された炭化水素化合物の調製方法であって、
(a)
【化1】
(式中、Lは、アルキ
ル、アルキレ
ン、アルケニ
ル、アルケニレ
ン、芳香族または芳香環系であり、Xは脱離基であり、R’はアルキルであり、nは、1〜4である。)、または
【化2】
(式中、L’は、アルキ
ル、アルキレ
ン、アルケニ
ル、アルケニレ
ン、芳香族または芳香環系であり、Xは脱離基であり、R”はアルキルであり、nは1〜4である。)、
(b)アミノアルキルアルコキシシラン、
(c)塩基、および
(d)有機溶媒
を容器内に供給することと、
アミノアルキルアルコキシシランで官能化された炭化水素化合物を形成するのに十分な時間、(a)〜(d)を混合することと、
を含む、方法。
【請求項2】
アミノアルキルアルコキシシランで官能化された炭化水素化合物の調製方法であって、
(a)
【化3】
(式中、Lは、ポリブチルアクリレートまたはブチル−エチル−メトキシエチルアクリレートターポリマーであり、Xは脱離基であり、R’はアルキルであり、nは、1〜4である。)、または
【化4】
(式中、L’は、ポリブチルアクリレートまたはブチル−エチル−メトキシエチルアクリレートターポリマーであり、Xは脱離基であり、R”はアルキルであり、nは1〜4である。)、
(b)アミノアルキルアルコキシシラン、
(c)塩基、および
(d)有機溶媒
を容器内に供給することと、
アミノアルキルアルコキシシランで官能化された炭化水素化合物を形成するのに十分な時間、(a)〜(d)を混合することと、
を含む、方法。
【請求項3】
アミノアルキルアルコキシシランがアミノプロピルトリメトキシシランである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
Xがハロゲン、トシレートまたはメシレートである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
Xが、塩素、臭素またはヨウ素から選択されるハロゲンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
塩基が、炭酸カリウムまたはトリアルキルアミンである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
有機溶媒がアセトニトリルである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
混合を還流の温度で行う、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
還流での混合を2から24時間の間行う、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
還流での混合を2から24時間の間行い、90%超のアミノアルキルアルコキシシランで官能化された炭化水素化合物の収率を達成する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
構造Iまたは構造IIで示される化合物が制御ラジカル重合技術によって作製される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
(a)式IまたはIIで表されるアミノアルキルアルコキシシランで官能化された炭化水素化合物、および
(b)湿気硬化触媒
を含む、湿気硬化性組成物。
【化5】
(式中、Lは、アルキル、アルキレン、アルケニル、アルケニレン、芳香族または芳香環系であり、Xはアミノアルキルアルコキシシランに基づくアミノ基であり、R’はアルキルであり、nは、1〜4である。)
【化6】
(式中、L’は、アルキル、アルキレン、アルケニル、アルケニレン、芳香族または芳香環系であり、Xはアミノアルキルアルコキシシランに基づくアミノ基であり、R”はアルキルであり、nは1〜4である。)
【請求項13】
(a)式IまたはIIで表されるアミノアルキルアルコキシシランで官能化された炭化水素化合物、および
(b)湿気硬化触媒
を含む、湿気硬化性組成物。
【化7】
(式中、Lは、ポリブチルアクリレートまたはブチル−エチル−メトキシエチルアクリレートターポリマーであり、Xはアミノアルキルアルコキシシランに基づくアミノ基であり、R’はアルキルであり、nは、1〜4である。)
【化8】
(式中、L’は、ポリブチルアクリレートまたはブチル−エチル−メトキシエチルアクリレートターポリマーであり、Xはアミノアルキルアルコキシシランに基づくアミノ基であり、R”はアルキルであり、nは1〜4である。)
【請求項14】
Xがアミノプロピルトリメトキシシランに基づくアミノ基である、請求項12または13に記載の組成物。
【請求項15】
充填剤成分、強化剤成分、可塑剤成分および架橋剤成分の1種または複数をさらに含む、請求項12〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿気硬化性化合物の調製方法、およびその方法の生成物から調製される湿気硬化性組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
湿気硬化性モノマー、オリゴマーおよびポリマー、ならびにそれらから作製された組成物は周知であり、広範囲に記述され、しばらく前から商業的に用いられている。
【0003】
そのようなポリマーの1つが、アルコキシシラン末端ポリアクリレートである。市販の湿気硬化性アルコキシシラン末端ポリアクリレート(例えば株式会社カネカ、日本、から入手可能なもの)は、現在、2段階法で調製されている。米国特許第5,986,014号、同第6,274,688号、および同第6,420,492号も参照されたい。開示されている方法においては、不飽和カルボン酸との臭素の置換に次いでアルコキシシランを用いたヒドロシリル化を行う。この2段階法は、製造業者にとっては費用がかかり、多大な時間が必要になり得る。また、ステップが追加されることにより、オペレータの操作が増え、それによって例えば架橋または不純物混入の可能性が大きくなり、より純度の低い生成物になる場合がある。後者の例では、生成物を精製するための更なるステップが必要とされることがある。前述の合成の理想の形態を、以下に示す。
【0004】
【化1】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなポリマーを作る代替の合成スキームを発見することは、原料反応物の入手可能性および合成が複雑となることの低減を含む様々な理由から望ましいであろう。例えば、合成ステップ数を減らすことによって労力および時間または作業を省くことができ、それによって、これらのまたは他のポリマーを得るためのより効率的な方法をつくりだすことになる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような要望に対する解決策を提供するものである。
【0007】
一態様において、アミノアルキルアルコキシシランで官能化された炭化水素化合物を調製する方法が提供される。この方法は、
(a)
【0008】
【化2】
(式中、Lは、アルキルまたはポリ(アルキル)、アルキレンまたはポリ(アルキレン)、アルケニルまたはポリ(アルケニル)、アルケニレンまたはポリ(アルケニレン)、芳香族または芳香環系であり、Xは脱離基であり、R’はアルキルであり、nは1〜4である。)、または
【0009】
【化3】
(式中、L’は、アルキルまたはポリ(アルキル)、アルキレンまたはポリ(アルキレン)、アルケニルまたはポリ(アルケニル)、アルケニレンまたはポリ(アルケニレン)、芳香族または芳香環系であり、Xは脱離基であり、R”はアルキルであり、nは1〜4である。)、
(b)アミノアルキルアルコキシシラン、
(c)塩基、および
(d)有機溶媒
を容器内に供給することと、
アミノアルキルアルコキシシランで官能化された炭化水素化合物を形成するのに十分な時間、(a)〜(d)を混合することと、を含む。
【0010】
本発明は、「発明を実施するための形態」およびその後に続く例示的な実施例を読むことによって、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】MWが30,000のジブロモ−ブチル−エチル−メトキシエチルアクリレート(モル比75/20/5)ターポリマー、およびターポリマー/APTES生成物のGPC分析を示すグラフである。
【
図2】Mnが14,000のジブロモポリブチルアクリレート(PolyBA)、およびPolyBA/APTES生成物のGPC分析を示すグラフである。
【
図3】Mnが13,000のポリブチルアクリレート/APTMSおよびMnが13,000のポリブチルアクリレート/APTES含有湿気硬化性組成物の各々と、対照としてのKaneka XMAP OR110Sとを比較したレオメーター分析を示すグラフである。
【
図4】MWが20,000のブチル−エチル−メトキシエチルアクリレート(モル比45/30/25)ターポリマー/APTES含有湿気硬化性組成物と対照としてのKaneka XMAP OR110Sのレオメーター分析を示すグラフである。
【
図5】MWが30,000のブチル−エチル−メトキシエチルアクリレート(モル比75/20/5)ターポリマー/APTES含有湿気硬化性組成物と対照としてのKaneka XMAP OR110Sのレオメーター分析を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は一態様において、容器内の
(a)
【0013】
【化4】
(式中、Lは、アルキルまたはポリ(アルキル)、アルキレンまたはポリ(アルキレン)、アルケニルまたはポリ(アルケニル)、アルケニレンまたはポリ(アルケニレン)、芳香族または芳香環系であり、Xは脱離基であり、R’はアルキルであり、nは1〜4である。)、または
【0014】
【化5】
(式中、L’は、アルキルまたはポリ(アルキル)、アルキレンまたはポリ(アルキレン)、アルケニルまたはポリ(アルケニル)、アルケニレンまたはポリ(アルケニレン)、芳香族または芳香環系であり、Xは脱離基であり、R”はアルキルであり、nは1〜4である。)、
(b)アミノアルキルアルコキシシラン、
(c)塩基、および
(d)有機溶媒
から、アミノアルキルアルコキシシランで官能化された炭化水素化合物を形成するのに十分な時間、(a)〜(d)を混合して作製される、アミノアルキルアルコキシシランで官能化された炭化水素化合物の調製方法を提供する。
【0015】
LおよびL’、即ちリンカーもしくは連結基は、同一でも異なっていてもよく、アルキルまたはポリ(アルキル)、アルキレンまたはポリ(アルキレン)、アルケニルまたはポリ(アルケニル)、アルケニレンまたはポリ(アルケニレン)、芳香族または芳香環系から選択される。アルキルのリンカーは、nが1であるとき、炭素原子1から20個の脂肪族基であってもよい。アルキルのリンカーは、直鎖、分枝鎖であってもよくあるいは、1つまたは複数の脂環式基を含有してもまたは該基から作製されてもよい。アルケニルのリンカーは、nが1であるとき、炭素原子2から20個の不飽和脂肪族基であってもよい。アルケニルのリンカーは、直鎖、分枝鎖であってもよく、あるいは1つまたは複数の脂環式基を含有してもまたは該基から作製されてもよい。芳香族のリンカーは、nが1であるときに、6から20個の炭素原子を有してもよい。
【0016】
nが2〜4であるときに、アルキレンのリンカーは、必要に応じて、直鎖、分枝鎖であってもよくあるいは炭素原子1から20個の1つまたは複数の脂環式基を含有してもまたは該基から作製されてもよい。アルケニレンのリンカーは、必要に応じて、直鎖、分枝鎖であってもよくあるいは炭素原子2から20個の1つまたは複数の脂環式基を含有してもまたは該基から作製されてもよい。芳香族のリンカーは、6から20個の炭素原子を有してもよい。
【0017】
アルキル、アルキレン、アルケニルおよびアルケニレン基のポリマー形態は、各々がブロック、グラフトまたはランダムな順序で繰り返し側鎖を構成することを除いては、同様に定義される。ポリマー形態は通常、それらの分子量(ここではMn約1,000からMn約50,000の間である)によって定義される。特に望ましいポリマー形態は、1種または複数の(メタ)アクリレートモノマーから作製されるポリ(アクリレート)である。
【0018】
脱離基Xは、ハロゲン、トシレートまたはメシレートである。ハロゲンは、フッ素を除いて、塩素、臭素またはヨウ素から選択されてもよい。望ましくは、脱離基は臭素である。
【0019】
R’およびR”は、同一でも異なっていてもよく、上記のようなアルキル基(1から10個までの炭素原子であり、任意選択により1個または複数の酸素原子が挿入されてもよい)から選択されてもよい。特に望ましいR’およびR”基は、エチル、プロピル、ブチルおよびヘキシル、ならびにメトキシエチルである。
【0020】
構造Iで示される化合物は、アルキル−2−ブロモヘキサノエート、有利にはエチル2−ブロモヘキサノエートまたはエチル−2−ブロモプロピオネートのような、アルキル−2−ブロモアルカノエートであり、例えばエチル−2−ブロモアルカノエートであってもよい。構造IIで示される化合物は、例えば、ヘキサンジオールジ−2−ブロモヘキサノエートであってもよい。
【0021】
一実施形態において、構造Iで示される化合物は、ジ−(2−ブロモアルカノエート、ポリアクリレート)である。その代表的な構造について、下記の実施例3を参照されたい。ここで、ジ−(2−ブロモアルカノエート、ポリアクリレート)は、Mn約1,000からMn約50,000の範囲の分子量、例えばMn約30,000を有さなければならない。
【0022】
アミノアルキルアルコキシシランは、多数のありうる選択肢から選択されることができる。例えば、少し例を挙げれば、アルコキシシランのアミノアルキル部分は、アルキル残基としてメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルおよびヘキシルを含む様々な結合を有していてもよい。アルコキシシランのアルコキシ部分は、シランのケイ素原子上に1回、2回または3回存在してもよく、メトキシ、エトキシおよびプロポキシを含む様々な基から選択され得る。
【0023】
アミノアルキルアルコキシシランの一般構造は、下式に見ることができる。
【0024】
【化6】
(式中、R
1およびR
2は炭素原子を1から4個有するアルキル基から選択され、R
3はアルキレンおよびアリーレン残基から選択され、R
4は、水素および炭素原子を1から4個有するアルキル基から選択され、かつxが3のときは、yは0であり、xが2のときは、yは1である。)
【0025】
アミノアルキルアルコキシシランの例としては、アミノプロピルトリエトキシシラン(「APTES」)、アミノプロピルトリメトキシシラン(「APTMS」)、およびアミノプロピルジエトキシメチルシラン(「APDEMS」)が挙げられる。
【0026】
アミノアルキルアルコキシシランは、構造Iまたは構造IIで示される化合物に対して、モル過剰で用いられなければならない。例えば、1.1から6モル過剰、例えば1.5から2.5モル過剰が、望ましい。
【0027】
本発明の方法を実施するにあたり、塩基は、炭酸カリウムまたはトリアルキルアミン、例えばジイソプロピルエチルアミンから選択してもよい。塩基は、アミノアルキルアルコキシシランに対してほぼ等モル量で存在する。
【0028】
本方法は有機溶媒(極性で、非プロトン性である)中で実施される。望ましくは、有機溶媒は、アセトニトリルである。
【0029】
本方法を実施するにあたり、環境温度で混合し、次いで還流まで、例えばアセトニトリルを含有する反応溶媒に対しては、83℃またはその周辺まで加熱する。約2から約24時間の間、還流させる。望ましくは、アミノアルキルアルコキシシランで官能化された炭化水素化合物の約90%超の収率を達成するために、約2から約24時間の間、還流下で混合する。
【0030】
アミノアルキルアルコキシシランで官能化された炭化水素化合物を、
【0031】
【化7】
(式中、Lはアルキルまたはポリ(アルキル)、アルキレンまたはポリ(アルキレン)、アルケニルまたはポリ(アルケニル)、アルケニレンまたはポリ(アルケニレン)、芳香族または芳香環系であり、Xは脱離基であり、R’はアルキルであり、nは1〜4である。)または
【0032】
【化8】
(式中、L’は、アルキルまたはポリ(アルキル)、アルキレンまたはポリ(アルキレン)、アルケニルまたはポリ(アルケニル)、アルケニレンまたはポリ(アルケニレン)、芳香族または芳香環系であり、Xは脱離基であり、R”はアルキルであり、nは、1〜4である。)
から調製する方法は、上記のように、LおよびL’がポリマー、オリゴマー、もしくはエラストマーの中心部を有する化合物を使用してもよい。こうした状況では、制御ラジカル重合を用いることは特に有用であり得る。それによって所与の官能基をポリマーの規定の位置、例えば末端に導入することができる。制御ラジカル重合は、重合速度が遅く、ラジカル−ラジカルカップリングによる停止の傾向が大であるため、停止反応は容易には起こらず、そのため狭い分子量分布(Mn/Mn=約1.1から1.5)を有するポリマーが得られ、モノマー/開始剤供給比を調節することによって、分子量を自由に制御することができるため、優位性がある。
【0033】
様々な制御ラジカル重合技術を使用してもよく、少し例を挙げれば、原子移動ラジカル重合(「ATRP」)、単一電子移動リビングラジカル重合(「SET−LRP」)、および可逆的付加開裂移動(「RAFT」)が挙げられるが、これらに限定されない。ATRPにおいて、ビニルモノマーは、開始剤として有機ハロゲン化合物またはスルホニルハライド化合物を用い、触媒として遷移金属錯体を用いて重合する。本発明との関係において特に魅力的なこの方法では、上記の利点に加えて、末端にハロゲン原子を有するポリマーが形成され得る。ポリマーの末端にあるハロゲン原子は、開始剤および触媒設計に対して提供される自由度のため、特に興味深い。例えば米国特許第7,388,038号を参照されたい。
【0034】
別の態様において、本発明の方法によって作製される生成物は、硬化可能なマトリックスと共に配合してもよい。望ましくは、硬化可能なマトリックスは、湿気硬化性シリコーン、例えばアルコキシ官能性を有するシリコーンを含む。
【0035】
湿気硬化性組成物は、硬化可能なマトリックスと共に配合されるか、単に本明細書において開示されている方法によって作製されるアミノアルキルアルコキシシランで官能化された炭化水素化合物のみに基づくかによらず、湿気硬化触媒も含まなければならない。
【0036】
湿気硬化触媒としては、カルボン酸のスズIV塩、例えばジラウリン酸ジブチルスズ、有機チタン化合物、例えばチタン酸テトラブチル、ならびにキレート化剤(例えばアセト酢酸エステルおよびβ−ジケトン)およびアミンで部分的にキレート化されたこれらの塩の誘導体が挙げられる。望ましくは、チタン酸テトライソプロピル、ジラウリン酸ジブチルスズおよびテトラメチルグアニジンが0.05〜0.5%の濃度で使用される。
【0037】
当業者が望ましいと思う場合には、他の添加剤、例えば増粘剤、非反応性可塑剤、充填剤、強化剤(例えばエラストマーおよびゴム)および他の周知の添加剤がその中に配合してよい。加えて、架橋剤も、そこに組み込まれ得、それらの例として、置換トリアルコキシシラン、例えばAPTMS、APTES、APDEMSおよびビニルトリメトキシシランが挙げられる。
【0038】
本発明は、湿気硬化性組成物から反応生成物を調製する方法も提供し、そのステップとしては組成物を所望の基材の表面に塗布するステップおよび組成物を硬化させるのに十分な時間、適当な条件に組成物を曝すステップを含む。
【0039】
本発明の上記説明を考慮すれば、広範囲にわたる実践的な機会が提供されていることは、明らかである。以下の実施例は、例示的目的だけのために設けられており、いかなる形であれ本明細書の教示を制限するように解釈すべきではない。
【実施例】
【0040】
A.合成
エチル−2−ブロモヘキサノエート(「EBH」)、アセトニトリル、ジイソプロピルエーテル、ジイソプロピルエチルアミン、APTMS、APTES、塩基性アルミナ、および無水炭酸カリウムをAldrich Chemical companyから購入し、そのまま使用した。
【0041】
1H NMRおよび
13C NMR分析は、300MHzのVarian NMR Systemを用い、CDCl
3を溶媒として行った。赤外線スペクトルは、Universal ATR sampling accessoryを備えたPerkin Elmer製Spectrum One FTIR Spectrometer を用いて得られた。粘性データは、TA Instruments AR2000EX Rheometerを用いて得られた。
【0042】
実施例1
以下の反応スキームに従って、塩基(ここでは(i−Pr)
2N−Et))の存在下、アセトニトリル溶媒中で、EBHをアミノプロピルアルコキシシランで処理した。
【0043】
【化9】
【0044】
より詳しくは、そして、下記の反応スキームに示されるように、冷却器、温度制御用熱電対、撹拌棒、磁気撹拌機、および窒素導入口を備えた100mLの4つ口丸底フラスコに、窒素下でエチル−2−ブロモヘキサノエート(10g、45mmol)、APTMS(12.2g、67.5mmol)、(i−Pr)
2N−Et(8.7g、67.5mmol)、および(i−Pr)
2O(50mL)を加える。反応混合物を、撹拌しながら加熱還流した。還流温度で終夜撹拌した後、次いで反応混合物を環境温度に冷却した。(i−Pr)
2N−Et臭化水素塩を、溶液から沈殿させ、濾過した。減圧下で溶媒を除去し、生成物を真空乾燥させた。収量=13.3g(92%);
1H NMR(CDCl
3)δ4.2(q、2、COOCH
2)、3.6(s、9、SiOCH
3)、3.2(t、1、NCH)、2.5(m、2、NCH
2)、1.6(m、4、CH
2)、1.3(m、4、CH
2)、1.2(t、3、COOCH
2CH
3)、0.9(t、3、CH
3)、0.7(t、2、SiCH
2);
13C NMR(CDCl
3)175、62、60、52、51、34、28、23.3、22.7、14.4、13.9、7;IR(neat)2938、1732、1466、1182、1080、1029、812。
【0045】
【化10】
【0046】
実施例2
実施例1のように、メトキシエチル−2−ブロモヘキサノエート(「MEBH」)を、上記と同等の条件下、APTESで処理した。
【0047】
【化11】
【0048】
実施例3
次いで、下記の反応スキームに従って、原子移動ラジカル重合を使用して調製されたMnが30,000のジブロモ末端ポリブチルアクリレートをAPTESと反応させた。
【0049】
【化12】
【0050】
冷却器、温度制御用熱電対、撹拌棒、磁気撹拌機、および窒素導入口を備えた250mLの4つ口丸底フラスコに、窒素下でMW30,000のブチル−エチル−メトキシエチルアクリレート(モル比75/20/5)ターポリマー(20g、0.67mmol)、APTES(0.6g、2.7mmol)、炭酸カリウム(0.4g、2.7mmol)、およびアセトニトリル(500mL)を添加した。反応混合物を、撹拌しながら加熱還流した。還流で終夜撹拌した後、次いで反応混合物を環境温度に冷却した。塩基性アルミナ(20g)を添加し、この混合物を約4時間撹拌し、次いで濾過した。減圧下で溶媒を除去し、生成物を真空乾燥させた。収量=14.1g(72%);
1H NMR(CDCl
3)δ4.0(m)、3.8(q)、3.6(m)、3.4(s)、2.3(m)、1.9(m)、1.6(m)、1.4(m)、1.2(t)、0.9(t)、0.6(t);
13C NMR(CDCl
3)175、64、61、59、41、35、31、19、14.2、14、4;IR(neat)2959、1728、1449、1243、1157、1063、941、842、739。
【0051】
Mn14,000のジブロモポリブチルアクリレートを、原子移動ラジカル重合によって調製した。このジブロモ−ポリブチルアクリレートを上記のようにAPTESと反応させた。
【0052】
得られたポリマーは、ポリマーの分子量および多分散性を決定するためにゲル浸透クロマトグラフィー(「GPC」)によって分析した。出発原料および生成物のGPC曲線を、GPCデータとともに、
図1および2に示す。
【0053】
B.湿気硬化性接着剤配合物
アルコキシシラン付加物(表中、「実験樹脂(Experimental Resin)」と称する)、MESAMOLL(商標)可塑剤、およびCAB−O−SILTS530(商標)二酸化ケイ素の各々を、混合カップに加え、DAC150スピードミキサ内で混合した。それから、2つの架橋剤および触媒を加え、配合物の2回目の混合(両方とも2750rpmで3分間)を行った。サンプルNo.1〜4はこのようにして形成させた。また、アルコキシシラン付加物の代わりに、KANEKA OR110S(商標)ポリアクリレートを同量で用いて、同様にして対照サンプルを形成した。様々な成分の表示および相対量を下記表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
間隙1.0mmで8mmの直径平行板のレオメーターにサンプルを直接載せた。振動レオメーター実験では、圧力は、マイクロニュートンメートル(30microN*m)の最小限のトルク仕様である、0.04%にセットした。周波数は30rad/sにセットした。6日または7日間の全実験時にわたって10分毎に1つの測定点を集めた。異なる湿気硬化配合物の相対的な硬化速度および最終的な硬化度を決定するために、複素せん断弾性率を時間の関数としてプロットした。
図3〜5を参照すると、これらの結果が示されている。