特許第6285041号(P6285041)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6285041ポリ(フェニレンエーテル)組成物および物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6285041
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】ポリ(フェニレンエーテル)組成物および物品
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/12 20060101AFI20180215BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20180215BHJP
   C08K 5/07 20060101ALI20180215BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20180215BHJP
   C08L 25/04 20060101ALI20180215BHJP
   C08L 25/10 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   C08L71/12
   C08L53/02
   C08K5/07
   C08L9/00
   C08L25/04
   C08L25/10
【請求項の数】9
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2016-547517(P2016-547517)
(86)(22)【出願日】2014年12月16日
(65)【公表番号】特表2017-503894(P2017-503894A)
(43)【公表日】2017年2月2日
(86)【国際出願番号】US2014070468
(87)【国際公開番号】WO2015108646
(87)【国際公開日】20150723
【審査請求日】2016年7月20日
(31)【優先権主張番号】61/929,314
(32)【優先日】2014年1月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508171804
【氏名又は名称】サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ジーグラー、クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】バルフォー、キム ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンドン、マーク ヴィクター
【審査官】 大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−152156(JP,A)
【文献】 特開2006−299235(JP,A)
【文献】 特表2014−515433(JP,A)
【文献】 特開2010−254994(JP,A)
【文献】 特開2012−153832(JP,A)
【文献】 特表2012−503089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 71/12
C08K 5/07
C08L 9/00
C08L 25/04
C08L 25/10
C08L 53/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(フェニレンエーテル)を29〜95.5質量%と;
ポリスチレン含量が50〜75質量%であるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーを含む第1の水素化ブロックコポリマー(HBC1)を4〜50質量%と;
ポリスチレン含量が55〜65質量%であり、質量平均分子量が100,000〜190,000amuであるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(HBC2b)を含む第2の水素化ブロックコポリマー(HBC2)を2〜10質量%、または
ポリスチレン含量が33〜47質量%であるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(HBC2c)を含む第2の水素化ブロックコポリマー(HBC2)を1〜5質量%、または
ポリスチレン含量が20〜37質量%であり、質量平均分子量が70,000〜150,000amuであるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(HBC2d)を含む第2の水素化ブロックコポリマー(HBC2)を1〜20質量%、または
ポリスチレン含量が38〜48質量%であるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(HBC2e)を含む第2の水素化ブロックコポリマー(HBC2)を0.5〜15質量%と;
を含む成分を溶融混合した生成物を含む組成物であって;
前記第2の水素化ブロックコポリマーがHBC2bを含む場合、前記第1の水素化ブロックコポリマーと前記第2の水素化ブロックコポリマーが2:1〜4:1の質量比で存在し、かつ溶融混合した成分が、さらに、C−C24α−ヒドロキシケトンを0.2〜1.5質量%含み、
前記第2の水素化ブロックコポリマーがHBC2cを含む場合、前記第の水素化ブロックコポリマーと前記第の水素化ブロックコポリマーが2:1〜15:1の質量比で存在し、
前記第2の水素化ブロックコポリマーがHBC2dを含む場合、前記第の水素化ブロックコポリマーと前記第の水素化ブロックコポリマーが2:1〜7:1の質量比で存在し、但し、前記第1の水素化ブロックコポリマーの量が10質量%以上である場合、前記第の水素化ブロックコポリマーと前記第の水素化ブロックコポリマーの質量比が5:1未満であり、
前記第2の水素化ブロックコポリマーがHBC2eを含む場合、前記第1の水素化ブロックコポリマーと前記第2の水素化ブロックコポリマーが1.25:1〜25:1の質量比で存在し、かつ溶融混合した成分が、さらに、C−C24α−ヒドロキシケトンを0.2〜0.7質量%含み、但し、HBC2eの量が0.5質量%である場合、前記第1の水素化ブロックコポリマーの量は5質量%超であり、但し、前記第1の水素化ブロックコポリマーとHBC2eとの合計が46質量%未満であり;
溶融混合した成分がポリオレフィンを0〜0.5質量%含み、
但し、溶融混合した組成物がHBC2bを含む場合、前記ポリ(フェニレンエーテル)の最大量は94質量%であり、溶融混合した組成物がHBC2cまたはHBC2dを含む場合、前記ポリ(フェニレンエーテル)の最大量は95質量%であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記第2の水素化ブロックコポリマーが、ポリスチレン含量が55〜65質量%であり、質量平均分子量が100,000〜190,000amuである前記ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(HBC2b)を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第2の水素化ブロックコポリマーが、ポリスチレン含量が33〜47質量%である前記ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(HBC2c)を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記第2の水素化ブロックコポリマーが、ポリスチレン含量が38〜48質量%である前記ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(HBC2e)を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記第1の水素化ブロックコポリマーの質量平均分子量が50,000〜200,000amuであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記第1の水素化ブロックコポリマーが、ポリスチレン含量が50〜75質量%である前記ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーを10〜20質量%含み、かつ50,000〜100,000amuの質量平均分子量を有することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリ(フェニレンエーテル)が、クロロホルム中25℃で測定した固有粘度が0.3〜0.6dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を含み;
前記第1の水素化ブロックコポリマーの質量平均分子量が50,000〜100,000amuであり;
溶融混合した成分が、さらにベンゾインを含み;
溶融混合した成分が、
前記ポリ(フェニレンエーテル)を75〜85質量%と,
前記第1の水素化ブロックコポリマーを10〜20質量%と,
前記第2の水素化ブロックコポリマーを1〜5質量%と、
前記ベンゾインを0.3〜0.6質量%と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物を含む物品。
【請求項9】
冷却貯蔵用の容器であることを特徴とする請求項に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
冷却貯蔵用のプラスチック物品は、衝撃事象の際の破砕を減少させるために低温衝撃強度を要する。プラスチックの衝撃強度は、一般に、温度が低くなるにつれて低下する。Balfourらの米国特許出願公開第2012/0308753号明細書には、周囲温度での光学的透明性および衝撃強度の望ましい組み合わせを示すポリ(フェニレンエーテル)組成物が記載されているが、それらの衝撃強度は、低温環境で使用するには時折不適切である。光学的透明性と向上した低温衝撃強度を示すポリ(フェニレンエーテル)組成物が依然として必要とされている。特に、少なくとも60%の透過率、20%以下の相関ヘイズ、および少なくとも20Jの−20℃破壊多軸衝撃エネルギーを示すポリ(フェニレンエーテル)組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【0002】
一実施形態は、ポリ(フェニレンエーテル)を29〜95.5質量%と;
ポリスチレン含量が50〜75質量%であるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーを含む第1の水素化ブロックコポリマーを4〜50質量%と;
ポリスチレン含量が50〜65質量%であり、質量平均分子量が200,000〜400,000amuであるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(HBC2a)を含む第2の水素化ブロックコポリマー(HBC2)を0.5〜18質量%、または
ポリスチレン含量が55〜65質量%であり、質量平均分子量が100,000〜190,000amuであるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(HBC2b)を含む第2の水素化ブロックコポリマー(HBC2)を2〜10質量%、または
ポリスチレン含量が33〜47質量%であるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(HBC2c)を含む第2の水素化ブロックコポリマー(HBC2)を1〜5質量%、または
ポリスチレン含量が20〜37質量%であり、質量平均分子量が50,000〜200,000amuであるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(HBC2d)を含む第2の水素化ブロックコポリマー(HBC2)を1〜20質量%、または
ポリスチレン含量が38〜48質量%であるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(HBC2e)を含む第2の水素化ブロックコポリマー(HBC2)を0.5〜15質量%と;
を含む成分を溶融混合した生成物を含む組成物であって;
前記第2の水素化ブロックコポリマーがHBC2aを含む場合、前記第1の水素化ブロックコポリマーと前記第2の水素化ブロックコポリマーが1:1〜15:1の質量比で存在し、
前記第2の水素化ブロックコポリマーがHBC2bを含む場合、前記第1の水素化ブロックコポリマーと前記第2の水素化ブロックコポリマーが2:1〜4:1の質量比で存在し、かつ溶融混合した成分が、さらに、C−C24α−ヒドロキシケトンを0.2〜1.5質量%含み、
前記第2の水素化ブロックコポリマーがHBC2cを含む場合、前記第の水素化ブロックコポリマーと前記第の水素化ブロックコポリマーが2:1〜15:1の質量比で存在し、
前記第2の水素化ブロックコポリマーがHBC2dを含む場合、前記第の水素化ブロックコポリマーと前記第の水素化ブロックコポリマーが2:1〜7:1の質量比で存在し、但し、前記第1の水素化ブロックコポリマーの量が10質量%以上である場合、前記第の水素化ブロックコポリマーと前記第の水素化ブロックコポリマーの質量比が5:1未満であり、
前記第2の水素化ブロックコポリマーがHBC2eを含む場合、前記第1の水素化ブロックコポリマーと前記第2の水素化ブロックコポリマーが1.25:1〜25:1の質量比で存在し、かつ溶融混合した成分が、さらに、C−C24α−ヒドロキシケトンを0.2〜0.7質量%含み、但し、HBC2eの量が0.5質量%である場合、前記第1の水素化ブロックコポリマーの量は5質量%超であり、但し、前記第1の水素化ブロックコポリマーとHBC2eとの合計が46質量%未満であり;
溶融混合した成分がポリオレフィンを0〜0.5質量%含み、
但し、溶融混合した組成物がHBC2bを含む場合、前記ポリ(フェニレンエーテル)の最大量は94質量%であり、溶融混合した組成物がHBC2cまたはHBC2dを含む場合、前記ポリ(フェニレンエーテル)の最大量は95質量%であることを特徴とする組成物である。
【0003】
別の実施形態は、該組成物を含む物品である。
【0004】
以下、これらの実施形態および他の実施形態を詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明者らは、ポリ(フェニレンエーテル)と、第1の水素化ブロックコポリマー(HBC1)と、第2の水素化ブロックコポリマー(HBC2)とを特定量含む組成物が、少なくとも60%の透過率、20%以下の相関ヘイズおよび少なくとも20Jの−20℃破壊多軸衝撃エネルギーを併せて示すことを見出した。HBC2a〜HBC2eと称される5種の化学的に異なるタイプの第2の水素化ブロックコポリマーが適しており、それぞれ、第1の水素化ブロックコポリマーとの量および比率の異なる組み合わせで用いられる。該組成物が高透過率、低ヘイズ、および−20℃での高衝撃強度を併せ持つことで、冷蔵庫および冷凍庫のための貯蔵容器等、使用中に低温に曝される物品を成形するのに有用となる。
【0006】
一実施形態は、ポリ(フェニレンエーテル)を29〜95質量%と;
ポリスチレン含量が50〜75質量%であるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーを含む第1の水素化ブロックコポリマーを4〜50質量%と;
ポリスチレン含量が50〜65質量%であり、質量平均分子量が200,000〜400,000amuであるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(HBC2a)を含む第2の水素化ブロックコポリマー(HBC2)を0.5〜18質量%、または
ポリスチレン含量が55〜65質量%であり、質量平均分子量が100,000〜190,000amuであるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(HBC2b)を含む第2の水素化ブロックコポリマー(HBC2)を2〜10質量%、または
ポリスチレン含量が33〜47質量%であるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(HBC2c)を含む第2の水素化ブロックコポリマー(HBC2)を1〜5質量%、または
ポリスチレン含量が20〜37質量%であり、質量平均分子量が50,000〜200,000amuであるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(HBC2d)を含む第2の水素化ブロックコポリマー(HBC2)を1〜20質量%、または
ポリスチレン含量が38〜48質量%であるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(HBC2e)を含む第2の水素化ブロックコポリマー(HBC2)を0.5〜15質量%と;
を含む成分を溶融混合した生成物を含む組成物であって;
前記第2の水素化ブロックコポリマーがHBC2aを含む場合、前記第1の水素化ブロックコポリマーと前記第2の水素化ブロックコポリマーが1:1〜15:1の質量比で存在し、
前記第2の水素化ブロックコポリマーがHBC2bを含む場合、前記第1の水素化ブロックコポリマーと前記第2の水素化ブロックコポリマーが2:1〜4:1の質量比で存在し、かつ溶融混合した成分が、さらに、C−C24α−ヒドロキシケトンを0.2〜1.5質量%含み、
前記第2の水素化ブロックコポリマーがHBC2cを含む場合、前記第の水素化ブロックコポリマーと前記第の水素化ブロックコポリマーが2:1〜15:1の質量比で存在し、
前記第2の水素化ブロックコポリマーがHBC2dを含む場合、前記第の水素化ブロックコポリマーと前記第の水素化ブロックコポリマーが2:1〜7:1の質量比で存在し、但し、前記第1の水素化ブロックコポリマーの量が10質量%以上である場合、前記第の水素化ブロックコポリマーと前記第の水素化ブロックコポリマーの質量比が5:1未満であり、
前記第2の水素化ブロックコポリマーがHBC2eを含む場合、前記第1の水素化ブロックコポリマーと前記第2の水素化ブロックコポリマーが1.25:1〜25:1の質量比で存在し、かつ溶融混合した成分が、さらに、C−C24α−ヒドロキシケトンを0.2〜0.7質量%含み、但し、HBC2eの量が0.5質量%である場合、前記第1の水素化ブロックコポリマーの量は5質量%超であり、但し、前記第1の水素化ブロックコポリマーとHBC2eとの合計が46質量%未満であり;
溶融混合した成分がポリオレフィンを0〜0.5質量%含み、
但し、溶融混合した組成物がHBC2bを含む場合、前記ポリ(フェニレンエーテル)の最大量は94質量%であり、溶融混合した組成物がHBC2cまたはHBC2dを含む場合、前記ポリ(フェニレンエーテル)の最大量は95質量%であることを特徴とする組成物である。
【0007】
該組成物は一般に、20%以下の相関ヘイズ値、60%以上の透過率値、および20J以上の−20℃破壊多軸衝撃エネルギー値を示し、相関ヘイズおよび透過率は3.175mmの試料厚さで求められたものである。相関ヘイズおよび透過率の測定値は、3.175mm(0.125in)厚さのASTMダイナタップディスクを用いて求められ、Gretag Macbeth Color−Eye(商標)7000A分光光度計で測定されたものである。透過率値は、1931 CIE XYZ色空間についてのY三刺激値に対応する。破壊多軸衝撃エネルギー値は、ASTM D 3763−10に準拠し、試験速度3.3m/sおよび試料厚さ3.175mmで、−20℃で求められたものである。一部の実施形態では、該組成物は、2〜20%の相関ヘイズ値、60〜85%の透過率値、および20〜75Jの−20℃破壊多軸衝撃エネルギー値を示す。一部の実施形態では、該組成物は、3〜10%の相関ヘイズ値、70〜85%の透過率値、および50〜75Jの−20℃破壊多軸衝撃エネルギー値を示す。
【0008】
溶融混合した成分は、ポリ(フェニレンエーテル)を含む。適したポリ(フェニレンエーテル)としては、下式を有する繰り返し構造単位を含むものが挙げられる。
【化1】
式中、Zはそれぞれ独立に、ハロゲン、非置換または置換C−C12ヒドロカルビル(但し、該ヒドロカルビル基は第三級ヒドロカルビルではない)、C−C12ヒドロカルビルチオ、C−C12ヒドロカルビルオキシ、または少なくとも2つの炭素原子がハロゲンと酸素原子を分離しているC−C12ハロヒドロカルビルオキシであり;Zはそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、非置換または置換C−C12ヒドロカルビル(但し、ヒドロカルビル基は第三級ヒドロカルビルではない)、C−C12ヒドロカルビルチオ、C−C12ヒドロカルビルオキシ、または少なくとも2つの炭素原子がハロゲンと酸素原子を分離しているC−C12ハロヒドロカルビルオキシである。本明細書での「ヒドロカルビル」は、単独であるいは別の用語の接頭辞、接尾辞またはフラグメントとして使用されたとしても、炭素と水素だけを含有する残基を指す。該残基は、脂肪族または芳香族、直鎖、環式、二環式、分岐鎖、飽和あるいは不飽和であってもよい。それはまた、脂肪族、芳香族、直鎖、環式、二環式、分岐鎖、飽和および不飽和の炭化水素部分の組み合わせを含んでいてもよい。しかしながら、該ヒドロカルビル残基が置換と記載された場合、置換された残基の炭素員および水素員以外にヘテロ原子を含み得る。このように、置換と具体的に記載された場合、置換と具体的に記載された場合、該ヒドロカルビル残基は、カルボニル基、アミノ基またはヒドロキシル基等の1つ以上も含有し得、また、ヒドロカルビル残基の骨格内にヘテロ原子を含み得る。一例として、Zが、3,5−ジメチル−1,4−フェニル基と酸化重合触媒のジ−n−ブチルアミン成分との反応によって形成されたジ−n−ブチルアミノメチル基であり得る。
【0009】
一部の実施形態では、Ubbelohde粘度計によって、クロロホルム中25℃で測定した、ポリ(フェニレンエーテル)の固有粘度が0.25〜1dL/gである。この範囲内で、ポリ(フェニレンエーテル)の固有粘度は0.3〜0.6dL/g、より具体的には0.35〜0.55dL/g、さらにより具体的には0.4〜0.5dL/gであり得る。
【0010】
一部の実施形態では、ポリ(フェニレンエーテル)は、2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル単位、2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位、またはこれらの組み合わせを含む。一部の実施形態では、ポリ(フェニレンエーテル)は、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を含む。一部の実施形態では、ポリ(フェニレンエーテル)は、Ubbelohde粘度計によって、クロロホルム中25℃で測定した固有粘度が0.3〜0.6dL/g、具体的には0.35〜0.5dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を含む。
【0011】
ポリ(フェニレンエーテル)は、典型的にはヒドロキシル基に対してオルト位に位置した1または複数のアミノアルキル含有末端基を有する分子を含むことができる。また、多くの場合、典型的にはテトラメチルジフェノキノン副生物が存在する2,6−ジメチルフェノール含有反応混合物から得られたテトラメチルジフェノキノン(TMDQ)末端基が存在する。ポリ(フェニレンエーテル)は、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、またはイオノマー、並びにこれらの組み合わせの形態であり得る。
【0012】
溶融混合した成分は、その合計質量(組成物の合計質量に等しい)に対してポリ(フェニレンエーテル)を29〜95.5質量%の量で含む。この範囲内で、ポリ(フェニレンエーテル)の量は、40〜95質量%、具体的には60〜95質量%、具体的には75〜93質量%であり得る。また、ポリ(フェニレンエーテル)量の上限が、他の成分の最小量によって決定づけられることが理解される。それ故に、95.5質量%の上限は、HBC2aおよびHBC2eの最小量0.5質量%での使用に適用する。95質量%の上限は、HBC2cおよびHBC2dの最小量1質量%での使用に適用する。94質量%の上限は、HBC2bの最小量2質量%での使用に適用する。
【0013】
ポリ(フェニレンエーテル)に加えて、溶融混合した成分は、第1の水素化ブロックコポリマー(HBC1)と第2の水素化ブロックコポリマー(HBC2)とを含み、ここで、第2の水素化ブロックコポリマーは、5種類のいずれかであり得る。第1の水素化ブロックコポリマーと、5種類の第2の水素化ブロックコポリマーとは、それぞれ、分子構造(ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレン対ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレン)、ポリスチレン含量、質量平均分子量、または前述したものの2つもしくは3つの組み合わせによって、残りのものと区別される。供給元によって特定されていない場合、分子構造およびポリスチレン含量は、Hまたは13C核磁気共鳴分光法によって求めることができ、質量平均分子量は、ポリスチレン標準を用いるゲル浸透クロマトグラフィーによって求めることができる。水素化ブロックコポリマーの調製方法は既知であり、当業者であれば合成条件を改変して、分子構造、ポリスチレン含量および質量平均分子量を制御できる。本明細書に記載の水素化ブロックコポリマーの各タイプの種は、現在市販されている。
【0014】
第1の水素化ブロックコポリマー(HBC1)は、ポリスチレン含量が50〜75質量%であるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーを含む。この範囲内で、第1の水素化ブロックコポリマーのポリスチレン含量は60〜75質量%、具体的には62〜72質量%であり得る。一部の実施形態では、HBC1の質量平均分子量は50,000〜200,000amuである。この範囲内で、HBC1の質量平均分子量は、50,000〜150,000amu、具体的には50,000〜100,000amuであり得る。一部の実施形態では、第1の水素化ブロックコポリマーは、ポリスチレン含量が50〜75質量%であるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーからなる。一部の実施形態では、HBC1は、ポリスチレン含量が50〜75質量%であるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーを10〜20質量%含み、50,000〜100,000amuの質量平均分子量を有する。第1の水素化ブロックコポリマーの例としては、Asahi Kasei Elastomer社から入手できるTUFTEC(商標)H1043樹脂がある。
【0015】
溶融混合した成分は、その合計質量に対して、第1の水素化ブロックコポリマーを4〜50質量%の量で含む。この範囲内で、第1の水素化ブロックコポリマーの量は、5〜50質量%、具体的には7〜30質量%、具体的には10〜20質量%であり得る。
【0016】
上述したように、5種類の第2の水素化ブロックコポリマーがある。これらのうち最初のものは、HBC2aと称され、ポリスチレン含量が50〜65質量%であり、質量平均分子量が200,000〜400,000amuであるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーである。ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーは、制御分布ブロックコポリマーとしても既知のテーパードブロックコポリマーである。このようなコポリマーの合成は、例えば、Handlinらの米国特許出願公開第2003/0181584号公報に記載されている。ポリスチレン含量は、50〜65質量%の範囲内で、HBC2aの質量に対して52〜63質量%、具体的には54〜61質量%、であり得る。質量平均分子量は、200,000〜400,000amuの範囲内で、200,000〜300,000amuであり得る。市販のHBC2aの例としては、Kraton Performance Polymers社から入手できるKRATON(商標)A1535がある。
【0017】
溶融混合した成分の1つとして利用する場合、HBC2aの使用量は、溶融混合した成分の合計質量に対して0.5〜18質量%である。この範囲内で、HBC2aの量は1〜10質量%、具体的には1〜5質量%、より具体的には1〜3質量%であり得る。望ましい光学的特性および延性特性を達成するためには、HBC1とHBC2aとの質量比は、1:1〜15:1である。この範囲内で、該質量比は1.5:1〜15:1、具体的には5:1〜14:1であり得る。
【0018】
第2の水素化ブロックコポリマーの次のタイプは、HBC2bと称され、ポリスチレン含量が55〜65質量%であり、質量平均分子量が100,000〜190,000amuであるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーである。ポリスチレン含量は、55〜65質量%の範囲内で、HBC2bの質量に対して57〜63質量%であり得る。質量平均分子量は、100,000〜190,000amuの範囲内で、140,000〜180,000amuであり得る。市販のHBC2bの例としては、Kraton Performance Polymers社から入手できるKRATON(商標)A1537がある。
【0019】
溶融混合した成分の1つとして利用する場合、HBC2bの使用量は、溶融混合した成分の合計質量に対して2〜10質量%である。この範囲内で、HBC2bの量は2〜8質量%、具体的には2〜6質量%であり得る。HBC2bが存在する場合、ポリ(フェニレンエーテル)の最大量は94質量%である。望ましい光学的特性および延性特性を達成するためには、HBC1とHBC2bとの質量比は、2:1〜4:1である。この範囲内で、該質量比は3:1〜4:1であり得る。
【0020】
HBC2bが溶融混合した成分の1つである場合、それは、望ましいヘイズおよび透過率を達成するために、0.2〜1.5質量%のC−C24α−ヒドロキシケトンと組み合わせて使用される。C−C24α−ヒドロキシケトンの例としては、ヒドロキシアセトン(1−ヒドロキシ−2−プロパノン;ケミカル・アブストラクツ・サービス(CAS)登録番号116−09−6)、アセトイン(3−ヒドロキシ−2−ブタノン;CAS登録番号513−86−0)、2−ヒドロキシアセトフェノン(CAS登録番号528−24−1)、ベンゾイン(2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトフェノン,CAS登録番号119−53−9)、2−ヒドロキシ−1−フェニル−2−p−トリル−エタノン(CAS登録番号2431−02−9)、およびこれらの組み合わせが挙げられる。一部の実施形態では、C−C24α−ヒドロキシケトンは、ベンゾインを含む。C−C24α−ヒドロキシケトンの量は、溶融混合した成分の合計質量に対して、0.2〜1.5質量%の範囲内で、0.2〜1質量%、具体的には0.3〜0.6質量%であり得る。
【0021】
第2の水素化ブロックコポリマーの次のタイプは、HBC2cと称され、ポリスチレン含量が33〜47質量%であるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーである。33〜47質量%の範囲内で、ポリスチレン含量は、HBC2cの質量に対して34〜46質量%、具体的には35〜45質量%であり得る。市販のHBC2cの例としては、Kraton Performance Polymers社から入手できるKRATON(商標)A1536がある。一部の実施形態では、HBC2cの質量平均分子量は100,000〜200,000amu、具体的には120,000〜180,000amuである。
【0022】
溶融混合した成分の1つとして利用する場合、HBC2cの使用量は、溶融混合した成分の合計質量に対して1〜5質量%である。この範囲内で、HBC2cの量は1〜4質量%、具体的には1〜3質量%であり得る。HBC2cが存在する場合、ポリ(フェニレンエーテル)の最大量は95質量%である。望ましい光学的特性および延性特性を達成するためには、HBC1とHBC2cとの比は2:1〜15:1である。この範囲内で、該比は3:1〜15:1、具体的には4:1〜10:1であり得る。
【0023】
第2の水素化ブロックコポリマーの次のタイプは、HBC2dと称され、ポリスチレン含量が20〜37質量%であり、質量平均分子量が50,000〜200,000amuであるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーである。ポリスチレン含量は、20〜37質量%の範囲内で、HBC2dの質量に対して25〜35質量%、具体的には26〜33質量%であり得る。50,000〜200,000の範囲内で、質量平均分子量は70,000〜150,000amuであり得る。市販のHBC2dの例としては、Kraton Performance Polymers社から入手できるKRATON(商標)G1650およびKRATON(商標)G1652;Dynasol社から入手できるCALPRENE(商標)H6120;Kuraray社から入手できるSEPTON(商標)8004;LCY社のSEBS9550;並びにTSRC社のSEBS6150が挙げられる。
【0024】
溶融混合した成分の1つとして利用する場合、HBC2dの使用量は、溶融混合した成分の合計質量に対して1〜20質量%である。この範囲内で、HBC2dの量は2〜10質量%、具体的には2〜6質量%であり得る。HBC2dが存在する場合、ポリ(フェニレンエーテル)の最大量は95質量%である。望ましい光学的特性および延性特性を達成するためには、HBC1とHBC2dとの比は、2:1〜7:1である。この範囲内で、該比は2:1〜6:1、具体的には2.5:1〜5:1であり得る。しかしながら、第1の水素化ブロックコポリマーの量が10質量%以上である場合、HBC1とHBC2dとの質量比は5:1未満である。
【0025】
第2の水素化ブロックコポリマーの最後のタイプは、HBC2eと称され、ポリスチレン含量が38〜48質量%であるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーである。38〜48質量%の範囲内で、ポリスチレン含量は、HBC2eの質量に対して38〜46質量%、具体的には39〜46質量%であり得る。一部の実施形態では、HBC2eの質量平均分子量は50,000〜150,000amuである。この範囲内で、質量平均分子量は、70,000〜120,000amuであり得る。市販のHBC2eの例としては、Asahi Kasei Elastomers社から入手できるTUFTEC(商標)H1051がある。
【0026】
溶融混合した成分の1つとして利用する場合、HBC2eの使用量は、溶融混合した成分の合計質量に対して0.5〜15質量%である。この範囲内で、HBC2eの量は2〜15質量%、具体的には6〜14質量%であり得る。望ましい光学的特性および延性特性を達成するためには、HBC1とHBC2eとの比は、1.25:1〜25:1である。この範囲内で、該比は、1.25:1〜10:1、具体的には2.5:1〜5:1であり得る。
【0027】
HBC2eが溶融混合した成分の1つである場合、望ましいヘイズおよび透過率を達成するために、それは、0.2〜0.7質量%のC−C24α−ヒドロキシケトンと組み合わせて使用される。この範囲内で、C−C24α−ヒドロキシケトンの量は、0.3〜0.6質量%であり得る。しかしながら、HBC2eの量が0.5質量%である場合、HBC1の量は5質量%超である。また、HBC1およびHBC2eの合計は46質量%未満である。
【0028】
HBC2a、HBC2b、HBC2c、HBC2dおよびHBC2eを一度に1つ使用するとして説明したが、これらの第2のブロックコポリマーの2つ以上の組み合わせを使用できることが理解される。
【0029】
溶融混合した成分はポリオレフィンを0〜0.5質量%含む。一部の実施形態では、ポリオレフィンを含まない。本明細書でポリオレフィンは、C−C20オレフィンからなるモノマーの重合生成物であるポリマーを指す。
【0030】
上記の通り、望ましいヘイズおよび透過率を達成するためには、HBC2bまたはHBC2eの使用と共に、C−C24α−ヒドロキシケトンを使用する。また、C−C24α−ヒドロキシケトンは、任意に、HBC2a、HBC2cまたはHBC2dと組み合わせて使用できる。C−C24α−ヒドロキシケトンが存在する場合、溶融混合した成分の合計質量に対して0.2〜1.5質量%、具体的には0.2〜1質量%、より具体的には0.3〜0.6質量%の量で使用される。一部の実施形態では、C−C24α−ヒドロキシケトンはベンゾインである。
【0031】
溶融混合した成分は、任意に、さらに炭化水素樹脂を含む。本明細書での「炭化水素樹脂」は、脂肪族炭化水素樹脂、水素化脂肪族炭化水素樹脂、脂肪族/芳香族炭化水素樹脂、水素化脂肪族/芳香族炭化水素樹脂、脂環式炭化水素樹脂、水素化脂環式樹脂、脂環式/芳香族炭化水素樹脂、水素化脂環式/芳香族炭化水素樹脂、水素化芳香族炭化水素樹脂、テルペン樹脂、水素化テルペン樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン、水素化ロジン、ロジンエステル、水素化ロジンエステル、またはこれらの組み合わせを指す。一部の実施形態では、炭化水素樹脂の軟化点は120〜155℃である。このような樹脂は、存在する場合、溶融混合した成分の合計質量に対して1〜15質量%の量で使用できる。代わりに、炭化水素樹脂を最小限にできるか、または除くことができる。したがって、一部の実施形態では、溶融混合した成分は、炭化水素樹脂を0〜1質量%含む。一部の実施形態では、溶融混合した成分は、炭化水素樹脂を含まない。
【0032】
溶融混合した成分は、任意に、熱可塑性プラスチック分野にて既知の1つ以上の添加剤をさらに含んでもよい。例えば、溶融混合した成分は、任意に、安定剤、離型剤、滑剤、加工助剤、難燃剤、ドリップ防止剤、核剤、UVブロッカー、染料、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、発泡剤、鉱油、金属不活性化剤、ブロッキング防止剤、およびこれらの組み合わせから選択される添加剤をさらに含んでもよい。このような添加剤は、存在する場合、該組成物の望ましい透過率、ヘイズおよび低温多軸衝撃特性を実質的に損なわない量で使用される。すべて添加剤の合計量は、溶融混合した成分の合計質量に対して、典型的には5質量%以下、具体的には2質量%以下、より具体的には1質量%以下である。これらの添加剤のいずれか、またはすべてが、任意に、溶融混合した成分に含まれない。添加剤をポリオレフィンと見なすことができる限り、その量は、溶融混合した成分がポリオレフィンを0〜0.5質量%含むという一般要件によって制限される。
【0033】
溶融混合した成分は、上記のもの以外の成分を最小限にしてもよく、または含まなくてもよい。例えば、一部の実施形態では、溶融混合した成分は、エチレン性不飽和ゴムを0〜1質量%含む。エチレン性不飽和ゴムとしては、ポリブタジエンおよびポリイソプレンが挙げられ、それらの量への貢献は、それぞれのホモポリマー、ランダムコポリマー(例えば、スチレンとの、またはスチレンとアクリロニトリルとの)、グラフトコポリマー(例えば、高衝撃ポリスチレンとしても既知のゴム変性ポリスチレン)、およびブロックコポリマー(例えば、ブタジエンとスチレンとの非水素化および一部水素化ブロックコポリマーおよびイソプレンとスチレンとの非水素化および一部水素化ブロックコポリマー)に由来してもよい。一部の実施形態では、溶融混合した成分はエチレン性不飽和ゴムを含まない。
【0034】
最小限にしてもよく、または含まなくてもよい別の成分はホモポリスチレンである。したがって、一部の実施形態では、溶融混合した成分は、アタクチックホモポリスチレン、イソタクチックホモポリスチレン、シンジオタクチックホモポリスチレンおよびこれらの組み合わせを含めたホモポリスチレンを0〜2質量%、具体的には0〜1質量%含む。一部の実施形態では、溶融混合した成分はホモポリスチレンを含まない。
【0035】
最小限にしてもよく、または含まなくてもよい別の成分は、アルケニル芳香族モノマーと共役ジエンとのラジアルブロックコポリマーである。したがって、一部の実施形態では、溶融混合した成分は、アルケニル芳香族モノマーと共役ジエンとのラジアルブロックコポリマーを0〜1質量%含む。一部の実施形態では、溶融混合した成分は、アルケニル芳香族モノマーと共役ジエンとのラジアルブロックコポリマーを含まない。
【0036】
最小限にしてもよく、または含まなくてもよい別の成分は、質量平均分子量が200,000amuを超えるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーである。後述の実施例によって実証されるように、このようなトリブロックコポリマーは、該組成物の望ましい特性を損なうおそれがある。一部の実施形態では、溶融混合した成分は、質量平均分子量が200,000amuを超えるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーを0〜1質量%含む。一部の実施形態では、溶融混合した成分は、質量平均分子量が200,000amuを超えるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーを含まない。
【0037】
最小限にしてもよく、または含まなくてもよい別の成分は充填材であり、該充填材としては、補強充填材(ガラス繊維、タルクおよびマイカ等)および非補強充填材(シリカおよびアルミナ等)が挙げられ、これらは透過率を低下させ、ヘイズを上昇させる傾向がある。したがって、一部の実施形態では、溶融混合した成分は、充填材を0〜1質量%含む。一部の実施形態では、溶融混合した成分は充填材を含まない。
【0038】
一部の実施形態では、溶融混合した成分はポリアミドを含まない。一部の実施形態では、溶融混合した成分はポリエステルを含まない。
【0039】
一部の実施形態、特に、該組成物を食品および飲料の容器の成形に使用する実施形態では、溶融混合した成分は、有機リン酸エステルを0〜1質量%含む。一部の実施形態では、溶融混合した成分は有機リン酸エステルを含まない。一部の実施形態では、溶融混合した成分は難燃剤を含まない。
【0040】
該組成物の非常に好ましい実施形態では、ポリ(フェニレンエーテル)は、クロロホルム中25℃で測定した固有粘度が0.3〜0.6dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を含み;第1の水素化ブロックコポリマーのポリスチレン含量が60〜75質量%であり、質量平均分子量が50,000〜100,000amuであり;第2の水素化ブロックコポリマーが、ポリスチレン含量が50〜65質量%であり、質量平均分子量が200,000〜400,000amuであるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(HBC2a)を含み、第1の水素化ブロックコポリマーと第2の水素化ブロックコポリマーが5:1〜14:1の質量比で存在し;溶融混合した成分が、さらに、ベンゾインを含み;溶融混合した成分は、ポリ(フェニレンエーテル)を75〜85質量%と、第1の水素化ブロックコポリマーを10〜20質量%と、第2の水素化ブロックコポリマーを1〜5質量%と、ベンゾインを0.3〜0.6質量%と、を含む。
【0041】
該組成物は、該組成物の成分を溶融混合または溶融混練することによって調製できる。溶融混合または溶融混練は、リボンブレンダー、HENSCHEL(商標)ミキサー、BANBURY(商標)ミキサー、ドラムタンブラー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダーなどの通常の機器を用いて行うことができる。例えば、本組成物は、二軸スクリュー押出機内で、270〜310℃、具体的には280〜300℃の温度で成分を溶融混合することによって調製できる。
【0042】
該組成物は、物品、特に冷却貯蔵用容器の成形に有用である。容器は、食品または飲料の容器であり得る。冷却貯蔵の温度は、例えば、10〜−20℃であり得る。該組成物の高透過率および低ヘイズによって、容器内容物の識別が容易となり、低温での高衝撃強度によって、不慮の落下または他の衝撃の際の破損が減少する。このような物品を形成するのに適した方法としては、単層および多層のシート押出、射出成形、ブロー成形、フィルム押出、異型押出、引き抜き成形、圧縮成形、熱成形、加圧成形、ハイドロフォーミング、真空成形などが挙げられる。成形物品の製造方法を組み合わせることができる。
【0043】
本発明は、少なくとも以下の実施形態を包含する。
【0044】
実施形態1:
ポリ(フェニレンエーテル)を29〜95.5質量%と;
ポリスチレン含量が50〜75質量%であるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーを含む第1の水素化ブロックコポリマー(HBC1)を4〜50質量%と;
ポリスチレン含量が50〜65質量%であり、質量平均分子量が200,000〜400,000amuであるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(HBC2a)を含む第2の水素化ブロックコポリマー(HBC2)を0.5〜18質量%、または
ポリスチレン含量が55〜65質量%であり、質量平均分子量が100,000〜190,000amuであるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(HBC2b)を含む第2の水素化ブロックコポリマー(HBC2)を2〜10質量%、または
ポリスチレン含量が33〜47質量%であるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(HBC2c)を含む第2の水素化ブロックコポリマー(HBC2)を1〜5質量%、または
ポリスチレン含量が20〜37質量%であり、質量平均分子量が50,000〜200,000amuであるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(HBC2d)を含む第2の水素化ブロックコポリマー(HBC2)を1〜20質量%、または
ポリスチレン含量が38〜48質量%であるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(HBC2e)を含む第2の水素化ブロックコポリマー(HBC2)を0.5〜15質量%と;
を含む成分を溶融混合した生成物を含む組成物であって;
前記第2の水素化ブロックコポリマーが、ポリスチレン含量が50〜65質量%であり、質量平均分子量が200,000〜400,000amuであるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(HBC2a)を含む場合、前記第1の水素化ブロックコポリマーと前記第2の水素化ブロックコポリマーが1:1〜15:1の質量比で存在し、
前記第2の水素化ブロックコポリマーが、ポリスチレン含量が55〜65質量%であり、質量平均分子量が100,000〜190,000amuであるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(HBC2b)を含む場合、前記第1の水素化ブロックコポリマーと前記第2の水素化ブロックコポリマーが2:1〜4:1の質量比で存在し、かつ溶融混合した成分が、さらに、C−C24α−ヒドロキシケトンを0.2〜1.5質量%含み、
前記第2の水素化ブロックコポリマーが、ポリスチレン含量が33〜47質量%であるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(HBC2c)を含む場合、前記第の水素化ブロックコポリマーと前記第の水素化ブロックコポリマーが2:1〜15:1の質量比で存在し、
前記第2の水素化ブロックコポリマーが、ポリスチレン含量が20〜37質量%であり、質量平均分子量が50,000〜200,000amuであるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(HBC2d)を含む場合、前記第の水素化ブロックコポリマーと前記第の水素化ブロックコポリマーが2:1〜7:1の質量比で存在し、但し、前記第1の水素化ブロックコポリマーの量が10質量%以上である場合、前記第の水素化ブロックコポリマーと前記第の水素化ブロックコポリマーの質量比が5:1未満であり、
前記第2の水素化ブロックコポリマーがポリスチレン含量が38〜48質量%であるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(HBC2e)を含む場合、前記第1の水素化ブロックコポリマーと前記第2の水素化ブロックコポリマーが1.25:1〜25:1の質量比で存在し、かつ溶融混合した成分が、さらに、C−C24α−ヒドロキシケトンを0.2〜0.7質量%含み、但し、ポリスチレン含量が38〜48質量%であるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーの量が0.5質量%である場合、前記第1の水素化ブロックコポリマーの量は5質量%超であり、但し、前記第1の水素化ブロックコポリマーとポリスチレン含量が38〜48質量%である前記ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーとの合計が46質量%未満であり;
溶融混合した成分がポリオレフィンを0〜0.5質量%含み、
但し、溶融混合した組成物がHBC2bを含む場合、前記ポリ(フェニレンエーテル)の最大量は94質量%であり、溶融混合した組成物がHBC2cまたはHBC2dを含む場合、前記ポリ(フェニレンエーテル)の最大量は95質量%であることを特徴とする組成物。
【0045】
実施形態2:
20%以下の相関ヘイズ値、60%以上の透過率値、および20J以上の−20℃破壊多軸衝撃エネルギー値を示し、前記相関ヘイズおよび前記透過率が3.175mmの試料厚さで求められたものである実施形態1の組成物。
【0046】
実施形態3:
第2の水素化ブロックコポリマーが、ポリスチレン含量が50〜65質量%であり、質量平均分子量が200,000〜400,000amuであるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(HBC2a)、またはポリスチレン含量が33〜47質量%であるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(HBC2c)、またはポリスチレン含量が20〜37質量%であり、質量平均分子量が50,000〜200,000amuであるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(HBC2d)を含む場合、溶融混合した成分が、さらに、C−C24α−ヒドロキシケトンを0.2〜1.5質量%含む実施形態1または2の組成物。
【0047】
実施形態4:
溶融混合した成分が、ポリ(フェニレンエーテル)を75〜93質量%含む実施形態1〜3のいずれかの組成物。
【0048】
実施形態5:
第2の水素化ブロックコポリマーが、ポリスチレン含量が50〜65質量%であり、質量平均分子量が200,000〜400,000amuであるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(HBC2a)を含む実施形態1〜4のいずれかの組成物。
【0049】
実施形態6:
第2の水素化ブロックコポリマーが、ポリスチレン含量が55〜65質量%であり、質量平均分子量が100,000〜190,000amuであるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(HBC2b)を含む実施形態1〜4のいずれかの組成物。
【0050】
実施形態7:
第2の水素化ブロックコポリマーが、ポリスチレン含量が33〜47質量%であるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(HBC2c)を含む実施形態1〜4のいずれかの組成物。
【0051】
実施形態8:
第2の水素化ブロックコポリマーが、ポリスチレン含量が20〜37質量%であり、質量平均分子量が50,000〜200,000amuであるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(HBC2d)を含む実施形態1〜4のいずれかの組成物。
【0052】
実施形態9:
第2の水素化ブロックコポリマーが、ポリスチレン含量が38〜48質量%であるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(HBC2e)を含む実施形態1〜4のいずれかの組成物。
【0053】
実施形態10:
第1の水素化ブロックコポリマーの質量平均分子量が50,000〜200,000amuである実施形態1〜9のいずれかの組成物。
【0054】
実施形態11:
第1の水素化ブロックコポリマーが、ポリスチレン含量が50〜75質量%であるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーを10〜20質量%含み、50,000〜100,000amuの質量平均分子量を有する実施形態1〜9のいずれかの組成物。
【0055】
実施形態12:
溶融混合した成分は、エチレン性不飽和ゴムを0〜1質量%含む実施形態1〜11のいずれかの組成物。
【0056】
実施形態13:
溶融混合した成分は、ホモポリスチレンを0〜2質量%含む実施形態1〜12のいずれかの組成物。
【0057】
実施形態14:
溶融混合した成分は、アルケニル芳香族モノマーと共役ジエンとのラジアルブロックコポリマーを0〜1質量%含む実施形態1〜13のいずれかの組成物。
【0058】
実施形態15:
溶融混合した成分は、質量平均分子量が200,000amuを超えるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーを0〜1質量%含む実施形態1〜14のいずれかの組成物。
【0059】
実施形態16:
溶融混合した成分は、脂肪族炭化水素樹脂、水素化脂肪族炭化水素樹脂、脂肪族/芳香族炭化水素樹脂、水素化脂肪族/芳香族炭化水素樹脂、脂環式炭化水素樹脂、水素化脂環式樹脂、脂環式/芳香族炭化水素樹脂、水素化脂環式/芳香族炭化水素樹脂、水素化芳香族炭化水素樹脂、テルペン樹脂、水素化テルペン樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン、水素化ロジン、ロジンエステル、水素化ロジンエステル、またはこれらの組み合わせを含む炭化水素樹脂を0〜1質量%含む実施形態1〜15のいずれかの組成物。
【0060】
実施形態17:
溶融混合した成分は、有機リン酸エステルを0〜1質量%含む実施形態1〜17のいずれかの組成物。
【0061】
実施形態18:
ポリ(フェニレンエーテル)が、クロロホルム中25℃で測定した固有粘度が0.3〜0.6dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を含み;第1の水素化ブロックコポリマーのポリスチレン含量が60〜75質量%であり、質量平均分子量が50,000〜100,000amuであり;第2の水素化ブロックコポリマーが、ポリスチレン含量が50〜65質量%であり、質量平均分子量が200,000〜400,000amuであるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーを含み、第1の水素化ブロックコポリマーと第2の水素化ブロックコポリマーが5:1〜14:1の質量比で存在し;溶融混合した成分が、さらに、ベンゾインを含み;溶融混合した成分はポリ(フェニレンエーテル)を75〜85質量%と、第1の水素化ブロックコポリマーを10〜20質量%と、第2の水素化ブロックコポリマーを1〜5質量%と、ベンゾインを0.3〜0.6質量%と、を含む実施形態1の組成物。
【0062】
実施形態18a:
クロロホルム中25℃で測定した固有粘度が0.3〜0.6dL/gであるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を75〜85質量%と;ポリスチレン含量が60〜75質量%であり、質量平均分子量が50,000〜100,000amuであるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーを10〜20質量%と;ポリスチレン含量が50〜65質量%であり、質量平均分子量が200,000〜400,000amuであるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーを1〜5質量%と、ベンゾインを0.3〜6質量%と、を含む成分を溶融混合した生成物を含み、第1の水素化ブロックコポリマーと第2の水素化ブロックコポリマーが5:1〜14:1の質量比で存在する組成物。
【0063】
実施形態19:
実施形態1〜18および18aのいずれかの組成物を含む物品。
【0064】
実施形態20:
冷却貯蔵用の容器である実施形態19の物品。
【0065】
本明細書において開示されるすべての範囲は端点を含み、端点はそれぞれ独立して組み合わせ可能である。本明細書において開示されるそれぞれの範囲は、開示された範囲内にある任意の点又はサブ範囲の開示を構成する。
【0066】
本発明を、以下の非限定的な実施例によって、さらに説明する。
【実施例】
【0067】
材料および方法
表1は、下記の実施例で使用した材料を要約する。
【表1】
【0068】
組成物を、二軸スクリュー押出機で、直径30mmのスクリューを300rpm、約19kg/hのスループットで運転して配合した。すべての成分を、押出機の供給口に添加する前に、乾燥混合した。押出機を、供給口からダイスまで240/270/290/290/290/290℃の温度区域で運転した。射出成形に使用する前に、押出成形物を水冷し、ペレット化し、真空オーブン中にて100℃で2時間乾燥した。
【0069】
試験試料を、120T Van Dorn成形機で、バレル設定点316℃(600°F)、射出速度5.08cm/s(2in/s)で射出成形した。
【0070】
特性を、ASTMプロトコルに準拠して求めた。具体的には、ノッチ付きアイゾッド衝撃強度値(J/mの単位で表される)を、ASTM D 256−10に準拠し、23℃で、振り子エネルギー2Jで求め;組成物当たり5個の試料の値を平均した。破壊多軸衝撃エネルギー値(Jの単位で表される)を、ASTM D 3763−10に準拠し、23℃および−20℃で、試験速度3.3m/s、試料厚さ3.175mmで求め;組成物当たり5〜10個の試料の値を平均した。熱撓み温度値(℃で表される)を、ASTM D 648−07に準拠し、荷重1.82MPa、試料厚さ3.175mmで求め;組成物当たり3個の試料の値を平均した。メルトボリュームフローレート値(cm/10分で表される)を、ASTM D 1238−10に準拠し、300℃、5kg荷重で求め;組成物当たり1個の試料の5つの測定値を平均した。
【0071】
相関ヘイズ値(%の単位で表される)、透過率値(%の単位で表される)、および黄色度値(単位なし)を、3.175mm(0.125in)厚さのASTM ダイナタップディスクで求め、Gretag Macbeth Color−Eye(商標)7000A分光光度計で測定した。透過率値は、1931 CIE XYZ色空間でのY三刺激値に対応する。
【0072】
実施例1〜3、比較実施例1〜3
これらの実施例は、ベンゾイン濃度の変化、並びに第1の水素化ブロックコポリマー(概してHBC1、具体的にはS(EB)S H1043)とタイプ(e)の第2の水素化ブロックコポリマー(概してHBC2e、具体的にはS(EB)S H1051)との組み合わせの存在および非存在を例証する。結果を表2に要約し、ここで、「HBC1:HBC2」は、第1の水素化ブロックコポリマーと第2の水素化ブロックコポリマーとの質量比である。結果は、HBC1およびHBC2を欠く比較実施例1〜3では、それぞれ低温衝撃強度が不十分であり、−20°C破壊多軸衝撃エネルギー値が20J未満であったことを示す。また、比較実施例1では、透過率が不十分であり、60%未満の値であった。ベンゾインとHBC1とHBC2eとを含有する実施例1および2は、20%以下の相関ヘイズ値、少なくとも60%の透過率値、および少なくとも20Jの−20℃破壊多軸衝撃エネルギー値の望ましい組み合わせを示した。実施例3は、相関ヘイズおよび−20℃破壊多軸衝撃エネルギーについての基準を満たし、透過率についての基準を満足するのに極めて近かった(59.5%対60%)。
【表2】
【0073】
実施例4〜8、比較実施例4
これらの実施例は、3種の異なる耐衝撃性改良剤とのベンゾイン濃度の影響を例証する。表3において、「n/a」は、23℃破壊多軸衝撃エネルギーの値が低いことから、−20℃破壊多軸衝撃エネルギーを測定しなかったことを意味する。結果を表3に要約する。結果は、12質量%のHBC2e S(EB)S H1051と0.8質量%のベンゾインとの組み合わせを有する比較実施例4は、20J未満の−20℃破壊多軸衝撃エネルギー値を示したことを示す。残りの組成物である実施例4〜8は、それぞれ、20%以下のヘイズ値、少なくとも60%の透過率値、および少なくとも20Jの−20℃破壊多軸衝撃エネルギー値の望ましい組み合わせ示した。
【表3】
【0074】
実施例9および10、比較実施例5
これらの実施例は、S(EB)S H1043含量の効果を例証する。結果を表4に要約する。結果は、HBC1を有さない比較実施例5が、高レベルのヘイズおよび低レベルの透過率示したことを示す。これに対して、それぞれ5および10質量%のHBC1S(EB)S H1043を有する実施例9および10は、20%以下の相関ヘイズ値、少なくとも60%の透過率値、および少なくとも20Jの−20℃破壊多軸衝撃エネルギー値の望ましい組み合わせを示した。
【表4】
【0075】
実施例11〜20、比較実施例6および7
これらの実施例は、HBC1およびHBC2eの含量および比率を変動させた影響を例証する。実施例11と12が再現であり、同様に、実施例13と14、実施例15と16、並びに実施例17と18も再現であることに留意されたい。結果を表5に要約する。結果は、HBC1およびHBC2e含量の合計が少なくとも6%であり、HBC1とHBC2eとの質量比が0.05:1〜0.8:1であった組成物が、20%以下の相関ヘイズ値、少なくとも60%の透過率値、および少なくとも20Jの−20℃破壊多軸衝撃エネルギー値の望ましい組み合わせを示したことを示す。二重の実施例13および14は、実施例14がすべて特性基準を満たしたが、実施例13が−20℃破壊多軸エネルギーにおいてわずかに不十分であったという点で、処方の間隔の境界に近い。
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【0076】
実施例21および22、比較実施例8〜10
これらの実施例は、HBC1含量およびHBC1とHBC2eとの質量比の影響を例証する。実施例22は実施例4と同じである。結果を表6に要約する。結果は、HBC1とHBC2eとの質量比が1.1:1を超え、HBC1およびHBC2eの合計量が46質量%未満であった組成物が、20%以下の相関ヘイズ値、少なくとも60%の透過率値、および少なくとも20Jの−20℃破壊多軸衝撃エネルギー値の望ましい組み合わせを示したことを示す。
【表6】
【0077】
実施例23および24、比較実施例11〜14
これらの実施例は、ポリ(フェニレンエーテル)の固有粘度、HBC1含量、HBC2d含量、およびHBC1とHBC2dとの比の影響を例証する。結果を表6に要約する。結果は、HBC1とHBC2との質量比が1.9:1を超える組成物が、20%以下の相関ヘイズ値、少なくとも60%の透過率値、および少なくとも20Jの−20℃破壊多軸衝撃エネルギー値の望ましい組み合わせを示したことを示す。これより質量比が低いと、ヘイズ値および透過率値が望ましくない(比較実施例11〜14)。0.40〜0.46dL/gのポリ(フェニレンエーテル)の固有粘度の変化は、光学的特性および延性特性にほとんど影響しない(比較実施例11および12)。
【表7】
【0078】
実施例25〜27、比較実施例15および16
これらの実施例は、さらに、HBC1含量、HBC2d含量、およびHBC1:HBC2dの比の影響を例証する。結果を表8に要約する。結果は、HBC1とHBC2dとの質量比が1.25:1超および10:1未満であった組成物が、20%以下の相関ヘイズ値、少なくとも60%の透過率値、および少なくとも20Jの−20℃破壊多軸衝撃エネルギー値の望ましい組み合わせを示したことを示す。質量比がそれより高いと、低温衝撃強度が不適切であり(比較実施例16)、質量比がそれより低いと、ヘイズ値および透過率値が望ましくない(比較実施例15)。
【表8】
【0079】
実施例28、比較実施例17〜21
これらの実施例は、HBC1含量、HBC2d含量、およびHBC1とHBC2dとの比率の影響を例証する。結果を表9に要約する。結果は、HBC1とHBC2dとの質量比が1.9:1超および5:1未満であった組成物が、20%以下の相関ヘイズ値、少なくとも60%の透過率値、および少なくとも20Jの−20℃破壊多軸衝撃エネルギー値の望ましい組み合わせを示したことを示す。
【表9】
【0080】
実施例29〜31、比較実施例22および23
これらの実施例は、さらに、HBC1含量、HBC2d含量、およびHBC1とHBC2dとの比率の影響を例証する。結果を表10に要約する。結果は、HBC1とHBC2dとの質量比が1.25:1超および10:1未満であった組成物が、20%以下の相関ヘイズ値、少なくとも60%の透過率値、および少なくとも20Jの−20℃破壊多軸衝撃エネルギー値の望ましい組み合わせを示したことを示す。それより質量比が低いと、ヘイズ値および透過率値が望ましくない(比較実施例22)。質量比がそれより高いと、低温衝撃強度が不適切である(比較実施例24)。
【表10】
【0081】
比較実施例24〜28
これらの実施例は、質量平均分子量が200,000amuを超える水素化ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレン(すなわち、HBC2の範囲外の水素化ブロックコポリマー)の影響を例証する。結果を表11に要約する。結果は、どの試料も、20%以下の相関ヘイズ値、少なくとも60%の透過率値、および少なくとも20Jの−20℃破壊多軸衝撃エネルギー値の望ましい組み合わせを示さなかったことを示す。
【表11】
【0082】
実施例32〜39、比較実施例29〜31
これらの実施例は、HBC1含量、HBC2a含量、およびHBC1とHBC2aとの質量比の影響を例証する。実施例32および33は再現であり、比較実施例30および31も同様である。結果を表12に要約する。結果は、HBC1とHBC2aとの質量比が0.7:1超であり、かつ20:1未満である組成物が、20%以下の相関ヘイズ値、少なくとも60%の透過率値、および少なくとも20Jの−20℃破壊多軸衝撃エネルギー値の望ましい組み合わせを示したことを示す。この比がそれより高いと、低温衝撃強度が不適切であった(比較実施例29)。この質量比がそれより低いと、ヘイズ値が上昇した(比較実施例30および31)。
【表12-1】
【表12-2】
【0083】
実施例40〜45、比較実施例32〜36
これらの実施例は、HBC1含量、HBC2c含量、およびHBC1とHBC2cとの質量比の影響を例証する。比較実施例33および34は再現である。結果を表13に要約する。結果は、HBC2c含量が7質量%未満であり、HBC1とHBC2cとの比が20:1未満であった組成物が、20%以下の相関ヘイズ値、少なくとも60%の透過率値、および少なくとも20Jの−20℃破壊多軸衝撃エネルギー値の望ましい組み合わせを示したことを示す。HBC1とHBC2cとの比が20:1であると、低温衝撃強度が不適切であった(比較実施例33)。HBC2c含量が7質量%であると、ヘイズが上昇し、透過率が不適切であった(比較実施例34〜37)。
【表13-1】
【表13-2】
【0084】
実施例46〜50、比較実施例38
これらの実施例は、HBC2d含量およびHBC2a含量の影響を例証する。結果を表14に要約する。結果は、HBC2d S(EB)S G1650について、HBC2d含量が12〜20質量%にわたるすべての試料では、20%以下の相関ヘイズ値、少なくとも60%の透過率値、および少なくとも20Jの−20℃破壊多軸衝撃エネルギー値の望ましい組み合わせが示された。HBC2a S(EBS)S A1535について、HBC2a含量が20質量%未満である試料では、20%以下の相関ヘイズ値、少なくとも60%の透過率値、および少なくとも20Jの−20℃破壊多軸衝撃エネルギー値の望ましい組み合わせが示され、20質量%以上では、ヘイズが上昇した(比較実施例38)。
【表14】
【0085】
実施例51〜60、比較実施例39〜41
これらの実施例は、HBC2の種類の影響を例証する。結果を表15に要約する。実施例52は実施例10の再現である。実施例56は実施例24と同じである。比較実施例39は、Balfourの米国特許出願公開第2012/0308753号公報の発明を反映したものである。それは、不飽和ゴム(ポリブタジエン)を有するラジアルブロックコポリマーと組み合わせてHBC1 S(EB)S H1043を使用する。結果は、(1)先行技術を反映したものである比較実施例39では、低温延性が不十分であったこと;(2)高分子量のS(EB)S G1651を使用する比較実施例41は、高レベルのヘイズを示したこと;(3)HBC含量が10質量%であり、HBC1とHBC2d(S(EB)S G1652)との比が5:1である比較実施例40では、低温延性が不十分であったこと;(4)HBC2e S(EB)S H1051、HBC2a S(EBS)S A1535、および2.5:1のHBC1とHBC2dとの比でHBC2d S(EB)S 1652を使用する実施例51〜60は、20%以下の相関ヘイズ値、少なくとも60%の透過率値、および少なくとも20Jの−20℃破壊多軸衝撃エネルギー値の望ましい組み合わせを示したことを示す。
【表15-1】
【表15-2】
【表15-3】
【0086】
実施例61、比較実施例42〜46
これらの実施例は、HBC1含量、HBC2b含量、およびHBC1とHBC2bとの質量比の影響を例証する。結果は、HBC1とHBC2bとの質量比が5:1以上である比較実施例42〜45は、それぞれ、透過率および−20℃破壊多軸衝撃エネルギーのいずれかまたは両方で不十分であったことを示す。HBC1:HBC2bの質量比が3.8:1であるが、C−C24α−ヒドロキシケトン(ベンゾイン)を含まない比較実施例46は、透過率が不十分であった。ベンゾインを含み、HBC1:HBC2bの質量比が3.8:1である実施例61は、20%以下の相関ヘイズ値、少なくとも60%の透過率値、および少なくとも20Jの−20℃破壊多軸衝撃エネルギー値の望ましい組み合わせを示した。
【表16】