(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部による前記第2の制御中に前記フランジ調整部材に当接し、前記フランジ調整部材の前記交差方向への移動を妨げる抑止部材をさらに備える、請求項2に記載の成形装置。
前記フランジ調整部材は、前記第1の金型及び前記第2の金型の少なくとも一方に収容可能に設けられ、金型同士が合わせられる方向に進退する、請求項1に記載の成形装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明による成形装置及び成形方法の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
まず、
図1〜
図4を用いながら、第1実施形態に係る成形装置の構成を説明する。本明細書における成形装置とは、供給された金属パイプ材料を、金型を用いて所望の形状に変形させることによって、所望の形状の金属パイプを得る装置である。金属パイプ材料とは、金属製又は合金製の筒状部材であり、金属パイプとは成形された後の金属パイプ材料である。なお、以下では仮成形時の金属パイプを金属パイプ100とし(
図7(c)を参照)、成形後の金属パイプを金属パイプ101とする(
図8(b)を参照)。
【0019】
〈成形装置の構成〉
図1は、第1実施形態に係る成形装置の概略平面図である。
図2は、成形装置の概略構成図である。
図1及び
図2に示されるように、成形装置10は、互いに対となる上型(第1の金型)12及び下型(第2の金型)11からなるブロー成形金型13と、上型12及び下型11の少なくとも一方を移動させる駆動機構80と、上型12と下型11との間で金属パイプ材料14を保持するパイプ保持機構30と、パイプ保持機構30で保持されている金属パイプ材料14に通電して加熱する加熱機構50と、上型12及び下型11の間に保持され加熱された金属パイプ材料14内に高圧ガス(気体)を供給するための気体供給部60と、気体供給部60からの気体を金属パイプ材料14内に供給するための一対の気体供給機構40,40と、金属パイプ100のフランジ部100bの長さを調整するための一対のフランジ調整機構90,90と、ブロー成形金型13を強制的に水冷する水循環機構72とを備えると共に、上記駆動機構80の駆動、上記パイプ保持機構30の駆動、上記加熱機構50の駆動、上記気体供給部60の気体供給、及び上記一対のフランジ調整機構90,90の駆動をそれぞれ制御する制御部70と、を備えて構成されている。
【0020】
図1に示されるように、成形装置10は、ブロー成形金型13、駆動機構80、パイプ保持機構30、加熱機構50、水循環機構72、及び制御部70によって本体部Mが構成されている。また、平面視において本体部Mを挟むように一対の気体供給機構40,40、及び一対のフランジ調整機構90,90が設けられる。気体供給機構40,40に接続される気体供給部60は、本体部M等と離間して配置されている。気体供給部60と本体部Mとの間には、壁が設けられてもよい。
【0021】
以下では説明のため、平面視において互いに直交する方向をそれぞれ方向X及び方向Yとし、便宜上方向Xを左右方向とし、方向Yを前後方向とする。また、方向X及び方向Yに直交する方向を方向Zとし、便宜上方向Zを上下方向とする。
図1に示されるように、平面視において、一対の気体供給機構40,40は成形装置10を挟んで方向Xに沿って配置されており、一対のフランジ調整機構90,90は、成形装置10を挟んで方向Yに沿って配置されている。金属パイプ材料14は、その軸方向が方向Xに沿うように本体部M内に配置される。したがって、方向Y及び方向Zは、金属パイプ材料14及び金属パイプ100,101の軸方向に交差する方向とも呼称できる。本実施形態では、方向Yを交差方向とも呼称する。
【0022】
図2に示されるように、ブロー成形金型13の一方である下型11は、基台15に固定されている。下型11は、大きな鋼鉄製ブロックで構成され、その上面に矩形状のキャビティ面16を備える。下型11には冷却水通路19が形成され、略中央に下から差し込まれた熱電対21を備えている。この熱電対21はスプリング22により上下移動自在に支持されている。更に、下型11の左右端近傍にはスペース11aが設けられており、当該スペース11a内には、パイプ保持機構30の可動部である後述する電極17,18(下側の電極)等が、アクチュエータ(図示しない)で上下に進退動可能に配置されている。下型11と下側の電極17との間及び下側の電極17の下部、並びに下型11と下側の電極18との間及び下側の電極18の下部には、通電を防ぐための絶縁材I1がそれぞれ設けられている。それぞれの絶縁材I1は、下側の電極17,18と同様にアクチュエータによって固定されている。
【0023】
下型の電極17,18は、金属パイプ材料14を上型12と下型11との間で昇降可能に支えることができる。また、熱電対21は測温手段の一例を示したに過ぎず、輻射温度計又は光温度計のような非接触型温度センサであってもよい。なお、通電時間と温度との相関が得られれば、測温手段は省いて構成することも十分可能である。
【0024】
ブロー成形金型13の他方である上型12は、駆動機構80を構成する後述のスライド82に固定されている。上型12は、大きな鋼鉄製ブロックで構成され、内部に冷却水通路25が形成されると共に、その下面に矩形状のキャビティ面24を備える。このキャビティ面24は、下型11のキャビティ面16に対向する位置に設けられる。上型12の左右端近傍には、下型11と同様に、スペース12aが設けられており、当該スペース12a内には、パイプ保持機構30の可動部である後述する電極17,18(上側の電極)等が、アクチュエータ(図示しない)で上下に進退動可能に配置されている。上型12と上側の電極17との間及び上側の電極17の上部、並びに上型12と上側の電極18との間及び上側の電極18の上部には、通電を防ぐための絶縁材I2がそれぞれ設けられている。それぞれの絶縁材I2は、上側の電極17,18と同様にアクチュエータによって固定されている。
【0025】
パイプ保持機構30の右側部分において、電極18,18が互いに対向する面のそれぞれには、金属パイプ材料14の外周面に対応した半円弧状の凹溝18aが形成されていて(
図3(c)参照)、当該凹溝18aの部分に丁度金属パイプ材料14が嵌り込むように載置可能とされている。パイプ保持機構30の右側部分において、絶縁材I1,I2が互いに対向する露出面には、上記凹溝18aと同様に、金属パイプ材料14の外周面に対応した半円弧状の凹溝(図示しない)が形成されている。また、各電極18の正面(金型の外側方向の面)には、凹溝18aに向って周囲がテーパー状に傾斜して窪んだテーパー凹面18bが形成されている。よって、パイプ保持機構30の右側部分で金属パイプ材料14を上下方向から挟持すると、丁度金属パイプ材料14の右側端部の外周を全周に渡って密着するように取り囲むことができるように構成されている。
【0026】
パイプ保持機構30の左側部分において、電極17,17が互いに対向する面のそれぞれには、金属パイプ材料14の外周面に対応した半円弧状の凹溝17aが形成されていて(
図3(c)参照)、当該凹溝17aの部分に丁度金属パイプ材料14が嵌り込むように載置可能とされている。パイプ保持機構30の左側部分において、絶縁材I1,I2が互いに対向する露出面には、上記凹溝18aと同様に、金属パイプ材料14の外周面に対応した半円弧状の凹溝(図示しない)が形成されている。また、各電極17の正面(金型の外側方向の面)には、凹溝17aに向って周囲がテーパー状に傾斜して窪んだテーパー凹面17bが形成されている。よって、パイプ保持機構30の左側部分で金属パイプ材料14を上下方向から挟持すると、丁度金属パイプ材料14の左側端部の外周を全周に渡って密着するように取り囲むことができるように構成されている。
【0027】
一対の気体供給機構40の各々は、シリンダユニット42と、シリンダユニット42の作動に合わせて進退動するシリンダロッド43と、シリンダロッド43におけるパイプ保持機構30側の先端に連結されたシール部材44とを有する。シリンダユニット42はブロック41を介して基台15上に載置固定されている。各シール部材44の先端には先細となるようにテーパー面45が形成されている。一方のテーパー面45は、各電極18のテーパー凹面18bに丁度嵌合当接することができる形状に構成されている(
図3(b)参照)。同様に、他方のテーパー面45は、各電極17のテーパー凹面17bに丁度嵌合当接することができる形状に構成されている。シール部材44には、シリンダユニット42側から先端に向かって延在し、詳しくは
図3(a),(b)に示されるように、気体供給部60から供給された高圧ガスが流れるガス通路46が設けられている。このガス通路46は、成形装置10内に載置された金属パイプ材料14の内部に連通し得る。
【0028】
気体供給部60は、ガス源61と、このガス源61によって供給されたガスを溜めるアキュムレータ62と、このアキュムレータ62から気体供給機構40のシリンダユニット42まで延びている第1チューブ63と、この第1チューブ63に介設されている圧力制御弁64及び切替弁65と、アキュムレータ62からシール部材44内に形成されたガス通路46まで延びている第2チューブ67と、この第2チューブ67に介設されている圧力制御弁68及び逆止弁69とからなる。圧力制御弁64は、シール部材44の金属パイプ材料14に対する押力に適応した作動圧力のガスをシリンダユニット42に供給する役割を果たす。逆止弁69は、第2チューブ67内で高圧ガスが逆流することを防止する役割を果たす。なお、第2チューブ67には特定の気体を通過させるフィルター、又は特定の気体を通過させないフィルターが設けられてもよい。例えば、窒素のみを通過させるフィルター、又は酸素等の金属を酸化させるガスを通過させないフィルターが第2チューブ67に設けられることにより、金属パイプ100,101のスケールの発生が抑制される。
【0029】
圧力制御弁64は、シール部材44側から要求される押力に適応した作動圧力の高圧ガスをシリンダユニット42に供給する役割を果たす。圧力制御弁68は、ガス通路46を介して所望の圧力を有する高圧ガスを金属パイプ材料14に供給する役割を果たす。圧力制御弁64,68、切替弁65、及び逆止弁69等は、制御部70によって制御される。
【0030】
加熱機構50は、電源51と、この電源51からそれぞれ延びて各電極17,18に接続している導線52と、この導線52に介設したスイッチ53とを有してなる。
【0031】
駆動機構80は、上型12を固定するスライド82と、上記スライド82を移動させるための駆動力を発生する駆動部81と、上記駆動部81に対する流体量を制御するサーボモータ83とを備えている。駆動部81は、加圧シリンダ26を駆動させる流体(加圧シリンダ26として油圧シリンダを採用する場合は動作油)を当該加圧シリンダ26へ供給する流体供給部によって構成されている。駆動部81及びサーボモータ83の駆動により、スライド82は、上型12及び下型11同士が合わせられるように上型12を移動させる。スライド82は、加圧シリンダ26によって吊られる構成とされ、ガイドシリンダ27によって横振れしないようにガイドされている。
【0032】
なお、駆動部81は、上述のように加圧シリンダ26を介してスライド82に駆動力を付与するものに限られず、例えば、スライド82に駆動部を機械的に接続させてサーボモータ83が発生する駆動力を直接的に又は間接的にスライド82へ付与するものであってもよい。例えば、偏心軸(又は偏心クランク)と、偏心軸を回転させる回転力を付与する駆動源(例えば、サーボモータ及び減速機等)と、偏心軸の回転運動を直線運動に変換してスライドを移動させる変換部(例えば、コネクティングロッド又は偏心スリーブ等)と、を有する駆動機構を採用してもよい。なお、本実施形態では、駆動部81がサーボモータ83を備えていなくともよい。
【0033】
図4は、
図2のIV-IV線に沿った断面図であり、ブロー成形金型13を側面方向から見た概略断面図である。
図4に示されるように、下型11の上面にはキャビティ面16が形成され、上型12の下面には下型11のキャビティ面16と対向するキャビティ面24が形成されている。これらのキャビティ面16,24が組み合わされることによって矩形状の空間であるメインキャビティ部(第1のキャビティ部)MCが形成される。また、下型11と上型12との間には、メインキャビティ部MCと連通するようにサブキャビティ部(第2のキャビティ部)SCが形成される。サブキャビティ部SCは、方向Yにおいてメインキャビティ部MCの両側に形成される。
【0034】
サブキャビティ部SC内には、金属パイプ100のフランジ部100bの長さを調整するためのフランジ調整部材91,92が配置されている。フランジ調整部材91,92は、方向Yに沿って対向する金属製、合金製又はセラミックス製の板状部材である。フランジ調整部材91,92は、方向Xに沿った辺が最も長い略直方体形状を有する。フランジ調整部材91,92の方向Xに沿った長さは、例えば金属パイプ材料14の長さと同程度、もしくは金属パイプ材料14の長さ未満に設定される。また、フランジ調整部材91,92の上下方向の厚さ(方向Zに沿った厚さ)は、金属パイプ材料14の径より小さくなっている。
【0035】
フランジ調整部材91は、棒状のロッド93を介して一方のフランジ調整機構90に取り付けられており、メインキャビティ部MCの前側のサブキャビティ部SC内に位置し得る。本実施形態では、フランジ調整部材91のロッド93側の面91aは、下型11及び上型12のロッド93側の面と面一又は略面一になっているが、これに限られない。フランジ調整部材91は、一方のフランジ調整機構90内に設けられるアクチュエータ(図示しない)等によって方向Yに沿って進退可能になっている。
図4ではフランジ調整部材91はサブキャビティ部SC内に配置されており、この際のフランジ調整部材91とメインキャビティ部MCとの方向Yに沿った距離は、最終的に成形されるフランジ部101bの長さよりも短くなるように調整される。なお、フランジ調整部材91はサブキャビティ部SC外へ退避可能である。すなわち、フランジ調整部材91は、方向Yにおいてサブキャビティ部SCよりも前側へ移動可能である。
【0036】
フランジ調整部材92は、棒状のロッド94を介して他方のフランジ調整機構90に取り付けられており、メインキャビティ部MCの後側のサブキャビティ部SC内に位置し得る。本実施形態では、フランジ調整部材92のロッド94側の面92aは、下型11及び上型12のロッド94側の面と面一又は略面一になっているが、これに限られない。フランジ調整部材92は、他方のフランジ調整機構90内に設けられるアクチュエータ(図示しない)等によって方向Yに沿って進退可能になっている。フランジ調整部材92がサブキャビティ部SC内に配置される場合、フランジ調整部材92とメインキャビティ部MCとの方向Yに沿った距離は、最終的に成形されるフランジ部101bの長さよりも短くなるように調整される。なお、フランジ調整部材92は、フランジ調整部材91と同様にサブキャビティ部SC外へ退避可能である。すなわち、フランジ調整部材92は、方向Yにおいてサブキャビティ部SCよりも後側へ移動可能である。
【0037】
制御部70は、一対の気体供給機構40,40及び気体供給部60を制御することによって、金属パイプ材料14内に高圧ガスを供給することができる。この高圧ガスの供給を制御することによって、制御部70は、金属パイプ材料14の仮成形及び成形を制御できる。ここで高圧ガスの供給の制御とは、高圧ガスの圧力、高圧ガスの供給時間又は供給量、及び高圧ガスの供給タイミングを制御することである。制御部70は、上記加熱機構50を制御することによって、金属パイプ材料14を焼入れ温度(AC3変態点温度以上)まで加熱することができる。制御部70は、駆動部81のサーボモータ83を制御することによって、加圧シリンダ26へ供給する流体の量を制御することにより、スライド82の移動を制御することができる。また、制御部70は、
図2に示す(A)から情報が伝達されることによって、熱電対21から温度情報を取得し、加圧シリンダ26及びスイッチ53等を制御する。
【0038】
また、制御部70は、一対のフランジ調整機構90を制御することによって、ブロー成形金型13によって形成されるサブキャビティ部SCにフランジ調整部材91,92を進入させること、及びサブキャビティ部SCからフランジ調整部材91,92を退避させることができる。
【0039】
水循環機構72は、水を溜める水槽73と、この水槽73に溜まっている水を汲み上げ、加圧して下型11の冷却水通路19及び上型12の冷却水通路25へ送る水ポンプ74と、配管75とからなる。省略したが、水温を下げるクーリングタワーや水を浄化する濾過器を配管75に介在させることは差し支えない。
【0040】
〈成形装置を用いた金属パイプの成形方法〉
次に、成形装置1を用いた金属パイプの成形方法について説明する。まず、
図5(a),(b)及び
図6を用いながら、金属パイプ材料14の成形方法の概略を説明する。
図5(a),(b)は材料としての金属パイプ材料14を投入するパイプ投入工程から、金属パイプ材料14に通電して加熱する通電加熱工程までを示す。最初に焼入れ可能な鋼種の金属パイプ材料14を準備する。本実施形態では、鋼鉄製の金属パイプ材料を準備する。
図5(a)に示すように、この金属パイプ材料14を、例えばロボットアーム等を用いて、下型11側に備わる電極17,18上に載置(投入)する。電極17には凹溝17aが形成されており、電極18には凹溝18aが形成されているので、当該凹溝17a,18aによって金属パイプ材料14が位置決めされる。
【0041】
次に、制御部70は、パイプ保持機構30を制御することによって、当該パイプ保持機構30に金属パイプ材料14を保持させる。具体的には、
図5(b)のように、各電極17,18を進退動可能としているアクチュエータ(図示しない)を作動させ、各上下に位置する電極17,18を接近・当接させる。この当接によって、金属パイプ材料14の両方の端部は、上下から電極17,18によって挟持される。また、この挟持は各電極17に形成される凹溝17a、各電極18に形成される凹溝18a、及び絶縁材I1,I2に設けられる凹溝の存在によって、金属パイプ材料14の全周に渡って密着するような態様で挟持されることとなる。ただし、金属パイプ材料14の全周に渡って密着する構成に限られず、金属パイプ材料14の周方向における一部に各電極17,18が当接するような構成であってもよい。
【0042】
続いて、
図5(b)に示されるように、制御部70は、加熱機構50を制御することによって、金属パイプ材料14を加熱する。具体的には、制御部70は、加熱機構50のスイッチ53をONにする。そうすると、電源51から電力が、金属パイプ材料14を挟持する各電極17,18に供給され、金属パイプ材料14に存在する抵抗により、金属パイプ材料14自体が発熱する(ジュール熱)。この時、熱電対21の測定値が常に監視され、この結果に基づいて通電が制御される。
【0043】
図6は、成形装置によるブロー成形工程の概要とその後の流れを示している。
図6に示されるように、加熱後の金属パイプ材料14に対してブロー成形金型13を閉じるように移動させ、金属パイプ材料14を当該ブロー成形金型13のメインキャビティ部MC内に配置する。このブロー成形金型13の移動の前に、フランジ調整部材91,92をサブキャビティ部SC内に移動させておく(詳細については後述する)。その後、気体供給機構40のシリンダユニット42を作動させることによってシール部材44で金属パイプ材料14の両端をシールする(
図3も併せて参照)。これにより、ブロー成形金型13、フランジ調整部材91,92、及びシール部材44によって、金属パイプ材料14を密閉する。金属パイプ材料14の密閉完了後、ガスを金属パイプ材料14内へ吹き込んで、加熱により軟化した金属パイプ材料14をキャビティの形状に沿うように仮成形する。仮成形後、制御部70の制御によりフランジ調整部材91,92をサブキャビティ部SCから退避させる。フランジ調整部材91,92の退避後、ブロー成形金型13を閉じて再びガスを供給することにより、金属パイプ100の成形(本成形)を行う。
【0044】
金属パイプ材料14は高温(950℃前後)に加熱されて軟化しているので、金属パイプ材料14内に供給されたガスは、熱膨張する。このため、例えば供給するガスを圧縮空気とし、950℃の金属パイプ材料14を熱膨張した圧縮空気によって容易に膨張させ、金属パイプ100,101を得ることができる。
【0045】
ブロー成形されて膨らんだ金属パイプ材料14の外周面が下型11のキャビティ面16に接触して急冷されると同時に、上型12のキャビティ面24に接触して急冷(上型12と下型11は熱容量が大きく且つ低温に管理されているため、金属パイプ材料14が接触すればパイプ表面の熱が一気に金型側へと奪われる。)されて焼き入れが行われる。このような冷却法は、金型接触冷却又は金型冷却と呼ばれる。急冷された直後はオーステナイトがマルテンサイトに変態する(以下、オーステナイトがマルテンサイトに変態することをマルテンサイト変態とする)。冷却の後半は冷却速度が小さくなったので、復熱によりマルテンサイトが別の組織(トルースタイト、ソルバイトなど)に変態する。従って、別途焼戻し処理を行う必要がない。また、本実施形態においては、金型冷却に代えて、あるいは金型冷却に加えて、冷却媒体を金属パイプ101に供給することによって冷却が行われてもよい。例えば、マルテンサイト変態が始まる温度までは金型(上型12及び下型11)に金属パイプ材料14を接触させて冷却を行い、その後型開きすると共に冷却媒体(冷却用気体)を金属パイプ材料14へ吹き付けることにより、マルテンサイト変態を発生させてもよい。
【0046】
次に、
図7(a)〜(c)及び
図8(a),(b)を参照して、上型12及び下型11による具体的な成形の様子の一例について詳細に説明する。
図7(a)に示されるように、金属パイプ材料14を上型12と下型11との間であって、キャビティ面16上に保持する。そして、制御部70の制御(第1の制御)により、フランジ調整部材91,92をサブキャビティ部SC内に進入させるように方向Yに沿って移動させる。フランジ調整部材91,92の移動後、駆動機構80によって上型12を下型11に近づけるように移動させ、上型12とフランジ調整部材91,92とを接触させる。これにより、
図7(b)に示されるように、方向Xから見て下型11、上型12、及びフランジ調整部材91,92によって金属パイプ材料14を密閉する。金属パイプ材料14が密閉される空間は、メインキャビティ部MCと、フランジ調整部材91,92によって狭められたサブキャビティ部SCとによって形成される。
【0047】
次に、制御部70の制御(第2の制御)により、気体供給機構40及び気体供給部60によって金属パイプ材料14の内部にガスが注入される。加熱機構50による加熱により軟化し、且つ、高圧ガスが注入された金属パイプ材料14は、
図7(c)に示されるように、メインキャビティ部MC内で膨張すると共に、当該メインキャビティ部MCに連通するサブキャビティ部SC内に入り込んで膨張する。これにより、金属パイプ材料14は仮成形され、金属パイプ100になる。メインキャビティ部MCに金属パイプ100のパイプ部100aが仮成形されると共に、サブキャビティ部SCに金属パイプ100のフランジ部100bが仮成形される。仮成形されたフランジ部100bの方向Yに沿った長さは、サブキャビティ部SC内におけるフランジ調整部材91,92の位置によって調整される。具体的には、方向Yにおいてメインキャビティ部MCとフランジ調整部材91,92との間の距離が小さくなるにしたがって、フランジ部100bの方向Yに沿った長さが小さくなる。また、方向Yにおいてメインキャビティ部MCとフランジ調整部材91,92との間の距離が大きくなるにしたがって、フランジ部100bの方向Yに沿った長さが大きくなる。
【0048】
図7(c)に示される例では、メインキャビティ部MCは断面矩形状に構成されているため、金属パイプ材料14は当該形状に合わせてブロー成形されることにより、パイプ部100aは矩形筒状に仮成形される。ただし、メインキャビティ部MCの形状は特に限定されず、所望の形状に合わせて断面円形、断面楕円形、断面多角形等あらゆる形状を採用してもよい。
【0049】
次に、
図8(a)に示されるように、制御部70による制御(第3の制御)により、サブキャビティ部SC内からフランジ調整部材91,92を退避させる。これにより、上型12をさらに下型11側へ移動させることが可能になる。この際、パイプ部100a及びフランジ部100bの形状が変化しないように気体供給部60によるガスの供給を一時停止する。
【0050】
次に、
図8(b)に示されるように、制御部70による制御(第4の制御)により、駆動機構80によって上型12をさらに下型11側に移動させると共に気体供給部60によるガスの供給を再開することにより、仮成形された金属パイプ100を本成形する。この本成形では、下型11及び上型12によって金属パイプ100のパイプ部100a及びフランジ部100bを押しつぶし、パイプ部101a及びフランジ部101bを有する金属パイプ101を成形する。金属パイプ100の押しつぶしの際に、気体供給部60によってパイプ部100a内へ気体を供給することで、押しつぶされたフランジ部101bの一部がメインキャビティ部MC側に侵入することを抑制できると共に、弛み及び捩れのない金属パイプ101を仕上げることができる。なお、これら金属パイプ材料14のブロー成形から金属パイプ101の成形完了までに至るまでの時間は、金属パイプ材料14の種類にもよるが概ね数秒から数十秒程度で完了する。
【0051】
以上説明したように、本実施形態に係る成形装置10を用いた金属パイプ101の成形方法によれば、制御部70の第1の制御及び第2の制御によって、フランジ調整部材91,92によって長さが調整されたフランジ部100bを仮成形することができる。そして、制御部70の第3の制御によって、フランジ調整部材91,92をサブキャビティ部SC内から退避させることができる。この第3の制御の後にパイプ部100a及びフランジ部100bの本成形を行うことにより、本成形された金属パイプ101においてパイプ部101aの軸方向に交差する方向(つまり、方向Y)のフランジ部101bの長さを良好に調整できる。加えて、本成形時にサブキャビティ部SCにはフランジ調整部材91,92が存在しないことから、フランジ部101bの撓みを抑制できる。したがって本実施形態によれば、所望の形状のフランジ部101b及びパイプ部101aを容易に成形可能である。
【0052】
また、フランジ調整部材91,92は、フランジ部101bの長さに沿った方向に進退する。この場合、フランジ調整部材91,92はブロー成形金型13外に容易に退避できるので、フランジ調整部材91,92の交換等のメンテナンスが簡単になる。加えて、金属パイプ100を本成形する際にフランジ調整部材91,92がブロー成形金型13外に退避するので、高温のフランジ部100bとフランジ調整部材91,92との接触時間は短くなる。このため、フランジ調整部材91,92の熱による劣化等が抑制される。加えて、サブキャビティ部SC内におけるフランジ調整部材91,92の位置を容易に変化できるので、フランジ部101bの方向Yに沿った長さを容易に調整できる。
【0053】
次に、第1実施形態の変形例について
図9(a)〜(c)を用いながら説明する。本変形例では、
図9(a)〜(c)に示されるように、成形装置は、フランジ調整部材91のロッド93側の面91aに当接し、フランジ調整部材91の方向Yへの移動を妨げる抑止部材111と、フランジ調整部材92のロッド94側の面92aに当接し、フランジ調整部材92の方向Yへの移動を妨げる抑止部材112と、方向Yにおいて抑止部材111よりもロッド93側に位置し、抑止部材111の方向Yへの移動を妨げる一対の固定部材113a,113bと、方向Yにおいて抑止部材112よりもロッド94側に位置し、抑止部材111の方向Yへの移動を妨げる一対の固定部材114a,114bとを備える。
【0054】
抑止部材111,112は、方向Zに沿って移動可能な金属製、合金製又はセラミックス製の略板状部材である。
図9(c)に示されるように、抑止部材111には、側面視にてU字型の溝111aが設けられる。この溝111aは、ロッド93の数及び位置に対応して抑止部材111に設けられており、当該溝111aにはロッド93が挿入可能になっている。本変形例では、フランジ調整部材91に取り付けられるロッド93の位置及び数に対応して、2つの溝111aが設けられる。抑止部材112には、抑止部材111と同様に、フランジ調整部材91に取り付けられるロッド93の位置及び数に対応した溝が設けられる。
【0055】
一対の固定部材113a,113bは、方向Zにおいて互いに離間しており、フランジ調整部材91及びロッド93の移動を阻害しないように配置されている。方向Zにおいて、固定部材113aは、フランジ調整部材91よりも上型12側に位置しており、固定部材113bは、フランジ調整部材91よりも下型11側に位置している。同様に、一対の固定部材114a,114bは、方向Zにおいて互いに離間しており、フランジ調整部材92及びロッド94の移動を阻害しないように配置されている。方向Zにおいて、固定部材114aは、フランジ調整部材92よりも上型12側に位置しており、固定部材114bは、フランジ調整部材92よりも下型11側に位置している。固定部材113a,113b,114a,114bのそれぞれは平板状であるが、これに限定されず任意の形状でもよい。
【0056】
以下では、本変形例の上型12及び下型11による具体的な成形の様子の一例について詳細に説明する。まず、
図9(a)に示されるように、方向Xから見て下型11、上型12、及びフランジ調整部材91,92によって金属パイプ材料14を密閉した後、抑止部材111を方向Zに沿って上側に移動させることにより、フランジ調整部材91のロッド93側の面91aに当接する位置に抑止部材111を固定する。この際にロッド93が溝111a内に位置することにより、抑止部材111の移動がロッド93によって阻害されない。同様に、抑止部材112を方向Zに沿ってロッド94側に移動させることにより、フランジ調整部材92のロッド94側の面92aに当接する位置に抑止部材112を固定する。抑止部材111,112の固定後、制御部70の第2の制御により、気体供給機構40及び気体供給部60によって金属パイプ材料14の内部にガスが注入され、金属パイプ材料14は仮成形されて金属パイプ100になる。
【0057】
次に、
図9(b),(c)に示されるように、気体供給部60によるガスの供給を一時停止した後、抑止部材111,112を方向Zに沿って下側に移動させることにより、抑止部材111とフランジ調整部材91との当接を解除させると共に、抑止部材112とフランジ調整部材92との当接を解除させる。そして制御部70による制御により、サブキャビティ部SC内からフランジ調整部材91,92を退避させる。フランジ調整部材91,92を退避させた後、第1実施形態と同様に金属パイプ100に対して本成形を行う。
【0058】
上記変形例によれば、成形装置10は、制御部70による第2の制御中に、フランジ調整部材91の面91aに当接する位置に固定される抑止部材111を備えると共に、フランジ調整部材92の面92aに当接する位置に固定される抑止部材112を備える。金属パイプ材料14の仮成形においては、金属パイプ材料14内に供給されるガスの圧力によってフランジ調整部材91,92がサブキャビティ部SCの外側へ向かって押されることがある。しかしながら、本変形例では、抑止部材111,112が、方向Yに沿ったフランジ調整部材91,92のサブキャビティ部SCの外側への移動を抑止できる。したがって、上記変形例によれば、第1実施形態によって奏される作用効果に加えて、金属パイプ材料14の仮成形時にフランジ調整部材91,92の位置がずれにくくなるので、仮成形されるフランジ部100bの長さの調整精度を向上できる。
【0059】
なお本変形例では、フランジ調整部材91のロッド93側の面91aは、下型11及び上型12のロッド93側の面と面一になっている。これにより、面91aと下型11及び上型12のロッド93側の面との間に段差が形成されないので、抑止部材111の移動が阻害されない。したがって、下型11、上型12、フランジ調整部材91、及び抑止部材111の破損が抑制される。同様に、フランジ調整部材92のロッド94側の面92aは、下型11及び上型12のロッド94側の面と面一になっている。これにより、抑止部材112の動きが阻害されないので、下型11、上型12、フランジ調整部材92、及び抑止部材112の破損が抑制される。
【0060】
次に、第2実施形態に係る成形装置について、
図10(a)〜(c)及び
図11(a),(b)を用いながら説明する。
図10(a)に示されるように、第2実施形態では、第1実施形態と異なり、方向Zに沿って延在する孔12b,12cが設けられる上型12Aが用いられる。孔12b,12cは、方向Yにおいてメインキャビティ部MCを挟むように設けられている。孔12bとメインキャビティ部MCとは、方向Yにおいて所定の距離離れており、孔12cとメインキャビティ部MCとは、方向Yにおいて所定の距離離れている。孔12b内にはフランジ調整部材191が収容されており、孔12c内にはフランジ調整部材192が収容されている。換言すれば、フランジ調整部材191,192は、上型12A内に収容可能に設けられる。
【0061】
フランジ調整部材191,192は、サブキャビティ部SC内に進退可能に方向Zに沿って移動する金属製又は合金製の部材であり、例えばピストンである。フランジ調整部材191,192は、方向Xに沿って延びる略直方体の板状部材である。フランジ調整部材191,192の方向Xに沿った長さは、金属パイプ材料14の長さよりも短く、上型12Aの方向Xに沿った長さ以下である。フランジ調整部材191の上端部及びフランジ調整部材192の上端部は、図示しないフランジ調整機構に取り付けられている。フランジ調整部材191,192は、当該フランジ調整機構によってサブキャビティ部SC内に進入するように移動すると共に、サブキャビティ部SC内から退避するように移動する。第2実施形態に係るフランジ調整機構は、例えばスライド82(
図2参照)の上部等の本体部M内に設けられる(
図1参照)。したがって、第2実施形態では、本体部Mは方向Yにおいてフランジ調整機構に挟まれない。
【0062】
以下では、第2実施形態の上型12A及び下型11による具体的な成形の様子の一例について詳細に説明する。まず、
図10(a)に示されるように、金属パイプ材料14をメインキャビティ部MCのキャビティ面16上に保持する。次に、
図10(b)に示されるように、方向Zにおいて上型12Aを下型11側に接近させると共に、フランジ調整部材191,192を方向Zに沿ってサブキャビティ部SC内に進入させて下型11に当接させる。これにより、方向Xから見て下型11、上型12、及びフランジ調整部材191,192によって金属パイプ材料14を密閉する。
【0063】
次に、
図10(c)に示されるように、金属パイプ材料14内にガスを注入し、パイプ部100a及びフランジ部100bを有する金属パイプ100を仮成形する。金属パイプ100の仮成形後、
図11(a)に示されるように、フランジ調整部材191,192を、サブキャビティ部SC内から孔12b,12c内にそれぞれ退避させる。そして、上型12Aをさらに下型11側に移動させると共に気体供給部60によるガスの供給を再開する。これにより、
図11(b)に示されるように、仮成形された金属パイプ100から、パイプ部101a及びフランジ部101bを有する金属パイプ101を本成形する。
【0064】
第2実施形態によっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏し得る。また、第2実施形態におけるフランジ調整部材191,192は、上型12Aに収容可能に設けられ、方向Zに沿って進退する。この場合、第1実施形態と比較して、サブキャビティ部SC内を方向Yに沿って移動するフランジ調整部材91,92と、方向Yにおいて本体部Mを挟むと共にフランジ調整部材91,92を駆動させるためのフランジ調整機構90,90を設ける必要がない。換言すれば、金属パイプ100の仮成形後に、方向Yに沿ったサブキャビティ部SCの外側にフランジ調整部材191,192を配置しなくてもよい。このため、第2実施形態では第1実施形態と異なり、金属パイプ材料14の成形装置10内への投入と、パイプ部101a及びフランジ部101bを有する金属パイプ101の成形装置10からの取り出しとが、フランジ調整部材91,92及びフランジ調整機構90,90によって阻害されない。
【0065】
次に、第3実施形態に係る成形装置について、
図12(a)〜(c)及び
図13(a),(b)を用いながら説明する。
図12(a)に示されるように、第3実施形態では、第1実施形態と異なり下型11Aには、方向Zに沿って延在する孔11b及び孔11bの上端に連通する凹部11cと、方向Zに沿って延在する孔11d及び孔11dの上端に連通する凹部11eとが設けられる。
【0066】
孔11bの方向Zに沿った中心軸と凹部11cの方向Zに沿った中心軸とは互いに重なっており、孔11bの方向Yに沿った幅は、凹部11cの方向Yに沿った幅よりも小さい。同様に、孔11dの方向Zに沿った中心軸と凹部11eの方向Zに沿った中心軸とは互いに重なっており、孔11dの方向Yに沿った幅は、凹部11eの方向Yに沿った幅よりも小さい。
【0067】
凹部11c,11eは、方向Yにおいてメインキャビティ部MCを挟むように設けられており、方向Xに沿って延在している。凹部11cとメインキャビティ部MCとは、方向Yにおいて所定の距離離れており、凹部11eとメインキャビティ部MCとは、方向Yにおいて所定の距離離れている。孔11b及び凹部11c内にはフランジ調整部材291が収容されており、孔11d及び凹部11e内にはフランジ調整部材292が収容されている。換言すれば、フランジ調整部材291,292は、下型11A内に収容可能に設けられる。
【0068】
フランジ調整部材291,292は、サブキャビティ部SC内に進退可能に方向Zに沿って移動する金属製又は合金製の柱状部材であり、例えばピストンである。フランジ調整部材291の下端部及びフランジ調整部材292の下端部は、図示しないフランジ調整機構に取り付けられている。フランジ調整部材291,292は、当該フランジ調整機構によってサブキャビティ部SC内に進入するように移動すると共に、サブキャビティ部SC内から退避するように移動する。第3実施形態に係るフランジ調整機構は、第2実施形態と同様に成形装置10の本体部M内に設けられる(
図1参照)。
【0069】
フランジ調整部材291は、基部291aと、基部291aよりも上型12側の先端部291bを有する。基部291a及び先端部291bは、方向Xに沿って延びる略直方体の板状部材であり、方向Xに沿った長さは、金属パイプ材料14の長さよりも短く、下型11Aの方向Xに沿った長さ以下である。先端部291bの方向Yに沿った幅は基部291aの方向Yに沿った幅よりも大きい。また、基部291aの幅は孔11bの幅未満であり、先端部291bの幅は凹部11cの幅と略同一である。先端部291bは、フランジ調整部材291が下型11A側に退避する際に凹部11cに隙間なく収容される。なお、基部291aの一部には空洞が形成されてもよい。また、基部291aは、複数の柱状部材から構成されてもよい。
【0070】
フランジ調整部材292は、基部292aと、基部292aよりも上型12側の先端部292bを有する。基部292a及び先端部292bは、方向Xに沿って延びる略直方体の板状部材であり、方向Xに沿った長さは、例えば金属パイプ材料14の長さと同程度である。先端部292bの方向Yに沿った幅は基部292aの方向Yに沿った幅よりも大きい。また、基部292aの幅は孔11dの幅未満であり、先端部292bの幅は凹部11eの幅と略同一である。先端部292bは、フランジ調整部材292が下型11A側に退避する際に凹部11eに隙間なく収容される。なお、基部292aの一部には空洞が形成されてもよい。また、基部292aは、複数の柱状部材から構成されてもよい。
【0071】
以下では、第3実施形態の上型12及び下型11Aによる具体的な成形の様子の一例について詳細に説明する。まず、
図12(a)に示されるように、金属パイプ材料14をメインキャビティ部MCのキャビティ面16上に保持する。また、フランジ調整部材291,292を方向Zに沿ってサブキャビティ部SC内に進入させる。この際、先端部291b,292bのみをサブキャビティ部SC内に進入させる。
【0072】
次に、
図12(b)に示されるように、方向Zにおいて上型12を下型11A側に接近させて、上型12を先端部291b,292bに当接させる。これにより、方向Xから見て下型11、上型12、フランジ調整部材291の先端部291b、及びフランジ調整部材292の先端部292bによって金属パイプ材料14を密閉する。
【0073】
次に、
図12(c)に示されるように、金属パイプ材料14内にガスを注入し、パイプ部100a及びフランジ部100bを有する金属パイプ100を仮成形する。金属パイプ100の仮成形後、
図13(a)に示されるように、フランジ調整部材291,292を、サブキャビティ部SC内から孔11b,11c内にそれぞれ退避させ、先端部291bを凹部11c内に収容させると共に先端部292bを凹部11e内に収容させる。そして、上型12をさらに下型11A側に移動させると共に気体供給部60によるガスの供給を再開する。これにより、
図13(b)に示されるように、仮成形された金属パイプ100を本成形し、パイプ部101a及びフランジ部101bを有する金属パイプ101を成形する。
【0074】
第3実施形態によっても、第2実施形態と同様の作用効果を奏し得る。また、第3実施形態においては、先端部291bの方向Yに沿った幅が孔11bの方向Yに沿った幅よりも大きく、先端部292bの方向Yに沿った幅が孔11dの方向Yに沿った幅よりも大きい。これにより、フランジ調整部材291,292が下型11A内に退避したとき、先端部291bが凹部11cに引っ掛かると共に先端部292bが凹部11eに引っ掛かる。これにより、フランジ調整部材291が下型11A内に収容される場合、先端部291b及び凹部11cによってフランジ調整部材291の位置決めが可能になる。同様に、フランジ調整部材292が下型11A内に収容される場合、先端部292b及び凹部11eによってフランジ調整部材292の位置決めが可能になる。したがって、先端部291b,292b及び凹部11c,11eの形状を定めることにより、退避時のフランジ調整部材291,292の位置調整が容易になる。
【0075】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態及び変形例に何ら限定されるものではない。上記実施形態及び変形例における成形装置10は加熱機構50を必ずしも有していなくてもよく、金属パイプ材料14はすでに加熱されていてもよい。
【0076】
また、上記実施形態及び変形例に係る駆動機構80は、上型のみを移動させているが、上型に加えて、または上型に代えて下型が移動するものであってもよい。下型が移動する場合、当該下型は基台に固定されず、駆動機構のスライドに取り付けられる。
【0077】
また、上記実施形態及び変形例に係る金属パイプ101は、その片側のみにフランジ部101bを有していてもよい。この場合、上型12及び下型11によって形成されるサブキャビティ部は一つとなり、フランジ調整部材も一つとなる。
【0078】
また、上記実施形態及び変形例に係る金属パイプ101のフランジ部101bは、金属パイプ101の一部のみに成形されてもよい。この場合、各フランジ調整部材のメインキャビティ側の面は、フランジ部が成形される箇所に対応して方向Yに沿って窪んでもよい。また、上記面にて窪んでいない領域は、金属パイプ材料の仮成形時にメインキャビティ部MCを画成する面の一部になってよい。このようなフランジ調整部材を用いることにより、金属パイプ材料の仮成形時にメインキャビティ部MCの密閉性を維持すると共に、所望の領域のみにフランジ部を成形できる。
【0079】
また、第1実施形態においてフランジ調整部材91,92は略直方体形状であるが、これに限られない。例えば、フランジ調整部材のメインキャビティ部MCに対向する面が、当該メインキャビティ部MCを密閉する形状である限り、フランジ調整部材の形状は限定されない。例えば、フランジ調整部材は平面視にて三角形状でもよいし、半円状であってもよい。
【0080】
また、第1実施形態において、上型12の移動によって上型12とフランジ調整部材91,92とを接触させているが、これに限られない。例えば、上型12とフランジ調整部材91,92との間に僅かな隙間が設けられるように、上型12を下型11に近づけてもよい。
【0081】
また、第1実施形態の変形例において、固定部材113a,113bは互いに一体化してもよく、固定部材114a,114bは互いに一体化してもよい。この場合、一体化された固定部材113a,113bには、フランジ調整部材91及びロッド93が挿通可能な開口部が設けられる。同様に、一体化された固定部材114a,114bには、フランジ調整部材92及びロッド94が挿通可能な開口部が設けられる。本変形例において、固定部材113a,113b,114a,114bは、必ずしも設けられなくともよい。
【0082】
また、第2実施形態においてフランジ調整部材191,192は上型12A側に設けられることに代え、下型11側に設けられてもよい。また、第2実施形態において、フランジ調整部材191,192は上型12A側及び下型11側の両方に設けられてもよい。
【0083】
また、第3実施形態においてフランジ調整部材291,292は下型11A側に設けられることに代え、上型12側に設けられてもよい。また、第3実施形態において、フランジ調整部材291,292は上型12側及び下型11A側の両方に設けられてもよい。
【0084】
また、上型12及び下型11の間に準備される金属パイプ材料14は、上下方向の径よりも左右方向の径の方が長い断面楕円形状を有してもよい。