特許第6285093号(P6285093)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6285093
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ及び印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20180215BHJP
   B41J 2/15 20060101ALI20180215BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   B41J2/01 303
   B41J2/15
   B05C5/00 101
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-197907(P2012-197907)
(22)【出願日】2012年9月7日
(65)【公開番号】特開2014-51055(P2014-51055A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年7月16日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142653
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】深澤 勉
【審査官】 道祖土 新吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−073638(JP,A)
【文献】 特開2000−301775(JP,A)
【文献】 特開2002−361852(JP,A)
【文献】 特開2001−239653(JP,A)
【文献】 特開2004−172317(JP,A)
【文献】 特開2006−218430(JP,A)
【文献】 特開2006−043496(JP,A)
【文献】 特開2004−148666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
B05C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷体に対してインクジェット方式で印刷を行うインクジェットプリンタであって、
インク滴を吐出するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドを前記被印刷体と対向させて保持する部材であり、前記インクジェットプリンタにおいて予め設定されたY方向へ延伸するY方向延伸部材と、
前記Y方向と直交するX方向へ前記Y方向延伸部材を移動させるX方向駆動部と、
前記X方向へ延伸する構造により前記X方向への前記Y方向延伸部材の移動をガイドするガイド部材と、
前記Y方向延伸部材を前記ガイド部材に沿って前記X方向へ移動可能とする被ガイド部と、
前記インクジェットヘッド及び前記Y方向延伸部材よりも重力方向の下方に設けられる台状で平板状の部材である台部と
を備え、
印刷時において、前記インクジェットヘッドは、前記Y方向延伸部材に沿って移動しつつ、前記被印刷体へ向けてインク滴を吐出し、
前記X方向駆動部は、ボールネジを有しており、前記ボールネジの回転量に応じて前記Y方向延伸部材を前記X方向へ移動させるものであり、
前記ボールネジは、前記Y方向における前記Y方向延伸部材の中央位置に合わせた位置に設けられ、
前記ボールネジは、ボールネジ軸とボールネジナットとを含んで構成され、前記ボールネジの回転は前記ボールネジ軸の回転により行われるものであり、
前記ボールネジ軸の両端は軸受けを介して前記台部上に固定され、前記ボールネジナットは、前記Y方向延伸部材の下方において前記Y方向延伸部材に対して固定されていることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記台部上において前記Y方向延伸部材を支える部材であり、前記ガイド部材に沿って前記X方向へ移動可能な前記被ガイド部を有する支持部材
を更に備え、
前記ガイド部材は、前記台部上において前記X方向へ延伸する構造により前記X方向への前記Y方向延伸部材の移動をガイドする部材であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
少なくとも、2個の前記支持部材と、2個の前記ガイド部材とを備え、
前記2個のガイド部材のそれぞれは、前記台部の前記Y方向におけるそれぞれの端部側に設けられ、
前記2個の支持部材のそれぞれにおける前記被ガイド部は、前記2個のガイド部材のそれぞれによりガイドされることを特徴とする請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記インクジェットプリンタを載置する載置面上で前記台部を支える脚部を更に備え、
前記脚部は、
前記台部における前記ガイド部材が設けられている面と反対側の面において、前記ガイド部材と平行かつ長尺状に連設された連接部と、
前記連接部から重力方向の下方へそれぞれ突出して前記載置面と当接することにより、前記載置面上で前記台部を支持する複数の突出部と
を有することを特徴とする請求項2又は3に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記連接部は、前記台部を挟んで前記ガイド部材と対向する位置に設けられ、
前記突出部は、前記連接部及び前記台部を挟んで前記ガイド部材と対向する位置に設けられることを特徴とする請求項4に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記連接部は、重力方向において前記被ガイド部の直下近傍となる位置に配設されていることを特徴とする請求項4又は5に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記被印刷体が載置される被印刷体載置部を更に備え、
前記Y方向延伸部材及び前記被ガイド部のそれぞれは、前記被印刷体載置部において前記被印刷体が載置される部分を中心にして、重力方向におけるその上下にそれぞれ離間して配設されていることを特徴とする請求項2から6のいずれかに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記Y方向延伸部材に沿って移動することにより前記インクジェットヘッドが印刷を行う領域の前記Y方向における幅は、50cm以上であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項9】
前記インクジェットヘッドが前記インク滴を吐出する方向における高さが10cm以上の前記被印刷体に対して印刷可能であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項10】
前記被印刷体が載置される被印刷体載置部を更に備え、
前記被印刷体載置部は、前記重力方向において上面の位置を上下させる機構を有しており、前記X方向に移動しないものであり、
前記被印刷体載置部、前記ボールネジ軸、及び前記被ガイド部は、共に前記台部上に固着して設けられていることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項11】
被印刷体に対してインクジェット方式にてインクジェットプリンタを用いて印刷を行う印刷方法であって、
インク滴を吐出するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドを前記被印刷体と対向させて保持する部材であり、前記インクジェットプリンタにおいて予め設定されたY方向へ延伸するY方向延伸部材と、
前記Y方向と直交するX方向へ前記Y方向延伸部材を移動させるX方向駆動部と、
前記X方向へ延伸する構造により前記X方向への前記Y方向延伸部材の移動をガイドするガイド部材と、
前記Y方向延伸部材を前記ガイド部材に沿って前記X方向へ移動可能とする被ガイド部と、
前記インクジェットヘッド及び前記Y方向延伸部材よりも重力方向の下方に設けられる台状で平板状の部材である台部と
前記被印刷体が載置される被印刷体載置部と
を用い、
印刷時において、前記インクジェットヘッドを前記Y方向延伸部材に沿って移動させつつ、前記インクジェットヘッドに、前記被印刷体へ向けてインク滴を吐出させ、
前記X方向駆動部は、ボールネジを有しており、前記ボールネジの回転量に応じて前記Y方向延伸部材を前記X方向へ移動させるものであり、
前記ボールネジは、前記Y方向における前記Y方向延伸部材の中央位置に合わせた位置に設けられ、
前記ボールネジは、ボールネジ軸とボールネジナットとを含んで構成され、前記ボールネジの回転は前記ボールネジ軸の回転により行われるものであり、
前記ボールネジ軸の両端は軸受けを介して前記台部上に固定され、前記ボールネジナットは、前記Y方向延伸部材の下方において前記Y方向延伸部材に対して固定されており、
前記被印刷体載置部は、前記重力方向において上面の位置を上下させる機構を有しており、前記X方向に移動しないものであり、
前記被印刷体載置部、前記ボールネジ軸、及び前記被ガイド部は、共に前記台部上に固着して設けられていることを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタ及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットプリンタは、様々な被印刷体に対して印刷を行う用途に用いられている。例えば、従来、立体物等の様々な被印刷体に対して印刷可能なインクジェットプリンタが知られている。このようなプリンタとしては、例えば、ミマキエンジニアリング社製のUJF−3042HG型の印刷装置等が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。この印刷装置は、30cm×42cmの領域に置かれた立体物に対して印刷が可能なインクジェットプリンタである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】インターネット:URL:http://www.mimaki.co.jp/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多様な被印刷体に対して印刷を行おうとする場合、例えば、印刷可能な領域をより大きくすることが望まれる。また、そのためには、例えば、印刷時にインクジェットヘッドを主走査(スキャン)させる距離(主走査距離)をより大きくすることが必要となる。
【0005】
しかし、主走査距離を大きくするためには、主走査を行うインクジェットヘッドを支える部材(ガイドレール等)を長くすること等の変更が必要となる。また、その結果、ガイドレール等を含む部分であるいわゆるYバーと呼ばれる構成部分の重量が大きくなる。
【0006】
そして、本願の発明者は、鋭意研究により、インクジェットヘッドの主走査距離を大きくした場合、上記のような構成の変化により、印刷品質が低下する場合があることを見出した。また、特に、例えば立体物に対して印刷を行うインクジェットプリンタのように、重心位置が高い構成の場合、この問題が大きくなることを見出した。そのため、例えば印刷可能な領域をより大きくする場合、その目的により適したインクジェットプリンタの構成が望まれる。そこで、本発明は、上記の課題を解決できるインクジェットプリンタ及び印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
インクジェットプリンタにおいて、Yバーは、通常、重力方向の上方の位置に設けられる。そのため、この部分が重くなると、インクジェットプリンタにおける高い位置の重量が大きくなり、インクジェットプリンタにおける重心位置が高くなる。また、立体物への印刷を行うインクジェットプリンタの場合、印刷可能な立体物の最大高さを考慮した位置にYバーが設けられるため、重心位置が特に高くなる。
【0008】
そして、本願の発明者は、このような構成に関し、Yバー等の重量が大きくなることにより、印刷時に生じる振動の影響が大きくなりやすいことを見出した。また、その結果、例えば印刷可能な領域をより大きくしようとする場合、従来のインクジェットプリンタのガイドレール等の長さ(Y方向における幅)を単に変更するのみでは、適切に印刷を行えない場合があると言えることを見出した。また、本願の発明者は、振動と印刷品質の低下の関係について、更なる鋭意研究を行った。そして、Yバーを移動させる際に生じる振動の影響により、画質の低下が生じていることを突き止めた。
【0009】
より具体的に説明すると、インクジェットプリンタにおいて、被印刷体の各部に印刷を行うためには、被印刷体に対して相対的にインクジェットヘッドを移動させることが必要となる。そのため、例えば、所定のY方向(主走査方向)については、Yバーにおけるガイドレールに沿ってインクジェットヘッドを移動させることにより、被印刷体に対して相対的にインクジェットヘッドを移動させる。また、インクジェットヘッドは、Y方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作(スキャン動作)を行うことにより、Y方向の各位置において、被印刷体にインク滴を吐出する。
【0010】
また、Y方向と直交するX方向については、例えば、主走査動作の合間に、被印刷体に対して相対的にインクジェットヘッドを移動させる。より具体的に、例えば、立体物に対して印刷を行うインクジェットプリンタにおいては、YバーをX方向へ所定距離だけ移動させることにより、被印刷体に対して相対的にインクジェットヘッドを移動させる。これにより、被印刷体において次の主走査動作により印刷が行われる領域を順次変更する送り動作を行う。
【0011】
ここで、この送りの動作においては、インクジェットヘッドのみではなく、Yバーの全体を移動させるため、送り動作に必要な駆動力も大きくなる。そのため、各回の送り動作の完了時において、Yバーの移動を止める際に生じる衝撃も、その分だけ大きくなる。また、その衝撃に応じて、Yバー等の振動が生じやすくなる。更に、例えばYバーの重量が大きい場合や、重心位置が高い場合には、この振動が大きくなる。
【0012】
そして、本願の発明者は、鋭意研究により、例えばYバーの重量が大きい場合や、重心位置が高い場合において、送り動作の停止時に生じた振動が、その後の主走査動作の開始後にも続き、印刷品質に影響を与える場合があることを見出した。より具体的には、例えば、Yバーの重量が大きい場合や、重心位置が高い場合、Yバーの振動が生じやすく、かつ、生じた振動の減衰に要する時間も長くなると考えられる。そのため、この場合、例えば従来と同じ構成で送り動作を行い、その後に従来と同じタイミングで主走査動作を行うと、Yバーの振動が十分に減衰されない状態で印刷が行われることとなり、印刷品質が低下すると考えられる。そこで、本願の発明者は、この問題点の認識に基づき、更に、送り動作の停止時に生じる振動を軽減する方法について、鋭意研究を行った。そして、この鋭意研究において、本願の発明者は、送り動作の動力源となる駆動部の構成に着目した。
【0013】
例えば、従来の印刷装置においては、タイミングベルト等のベルト駆動により、Yバーを移動させ、送り動作を実現している。これに対し、本願の発明者は、送り動作の停止時に生じる振動の大きな原因が、このベルト駆動を行う構成にあることを見出した。
【0014】
より具体的には、例えば、送り動作をベルト駆動により行う場合、応力によりベルトが伸縮する結果、停止位置の精度が低下する場合があることを見出した。また、送り動作をベルト駆動により行う場合、例えばウォームギア及びプーリーを用いた構成となり、ウォームギアとプーリーとの間の偏心の影響によっても、停止位置の精度に誤差が生じる。更には、ベルト駆動の停止位置の精度は、動力の伝達経路で用いる減速ギアにおける遊びの量の影響もうける。
【0015】
そして、例えばYバーの重量が大きい場合や、重心位置が高い場合、停止位置の誤差の範囲の影響により、振動が生じやすくなる。また、その振動が、その後の主走査動作の開始後にも続きやすくなる。そして、その結果、印刷品質に影響を与えることとなると考えられる。また、送り動作をベルト駆動により行う場合、この振動の影響が大きくなり、高精度の印刷を適切な速度で行うことが困難になる場合がある。そこで、本願の発明者は、ベルト駆動に代わるより適切な方法により送り動作を行い、振動を抑えることを考えた。上記の課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
【0016】
(構成1)被印刷体に対してインクジェット方式で印刷を行うインクジェットプリンタであって、インク滴を吐出するインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドを被印刷体と対向させて保持する部材であり、インクジェットプリンタにおいて予め設定されたY方向へ延伸するY方向延伸部材と、Y方向と直交するX方向へY方向延伸部材を移動させるX方向駆動部と、X方向へ延伸する構造によりX方向へのY方向延伸部材の移動をガイドするガイド部材と、Y方向延伸部材をガイド部材に沿ってX方向へ移動可能とする被ガイド部と、インクジェットヘッド及びY方向延伸部材よりも重力方向の下方に設けられる台状で平板状の部材である台部とを備え、印刷時において、インクジェットヘッドは、Y方向延伸部材に沿って移動しつつ、被印刷体へ向けてインク滴を吐出し、X方向駆動部は、ボールネジを有しており、ボールネジの回転量に応じてY方向延伸部材を前記X方向へ移動させるものであり、ボールネジは、Y方向におけるY方向延伸部材の中央位置に合わせた位置に設けられ、ボールネジは、ボールネジ軸とボールネジナットとを含んで構成され、ボールネジの回転はボールネジ軸の回転により行われるものであり、ボールネジ軸の両端は軸受けを介して台部上に固定され、ボールネジナットは、Y方向延伸部材の下方においてY方向延伸部材に対して固定されている。
【0017】
インクジェットヘッドは、Y方向延伸部材に沿って移動しつつインク滴を吐出することにより、主走査動作(スキャン動作)を行う。X方向駆動部は、例えば、主走査動作の合間に、Y方向延伸部材を移動させる。また、これにより、X方向駆動部は、主走査動作の合間に、送り動作を行う。
【0018】
このように構成した場合、ボールネジを用いることにより、例えばベルト駆動を行う場合と比べ、送り速度を変えずに送りの解像度を細かくして、より高い分解能でY方向延伸部材を移動させることが可能となる。また、その結果、Y方向延伸部材の移動を停止させるタイミングにおいて、振動をより発生しにくくできる。そのため、このように構成すれば、例えば、その後の主走査動作の開始後における振動の影響を適切に抑えることができる。また、これにより、高い精度での印刷を適切に行うことができる。
【0019】
(構成2)インクジェットヘッド及びY方向延伸部材よりも重力方向の下方に設けられる台状の部材である台部と、台部上においてX方向へ延伸する構造によりX方向へのY方向延伸部材の移動をガイドするガイド部材と、台部上においてY方向延伸部材を支える部材であり、ガイド部材に沿ってX方向へ移動可能な被ガイド部を有する支持部材とを更に備える。
【0020】
このように構成すれば、例えば、X方向駆動部によりY方向延伸部材を適切に移動させることができる。また、これにより、高い精度での印刷を、より適切に行うことができる。尚、X方向において、支持部材は、例えば、ガイド部材に沿って移動する。また、ガイド部材は、例えばレールである。
【0021】
(構成3)少なくとも、2個の支持部材と、2個のガイド部材とを備え、2個のガイド部材のそれぞれは、台部のY方向におけるそれぞれの端部側に設けられ、2個の支持部材のそれぞれにおける被ガイド部は、2個のガイド部材のそれぞれによりガイドされる。
【0022】
このように構成すれば、例えば、Y方向延伸部材をより適切に支持できる。また、X方向駆動部によりY方向延伸部材をより適切に移動させることができる。
【0023】
(構成4)インクジェットプリンタを載置する載置面上で台部を支える脚部を更に備え、脚部は、台部におけるガイド部材が設けられている面と反対側の面において、ガイド部材と平行かつ長尺状に連設された連接部と、連接部から重力方向の下方へそれぞれ突出して載置面と当接することにより、載置面上で台部を支持する複数の突出部とを有する。
【0024】
本願の発明者は、ボールネジを用いることで高精度の送り動作を実現し、振動の影響を抑えた後にも、より高精度の印刷を行うために、更なる鋭意研究を行った。そして、振動の影響が大きい従来の構成においては認識されていなかった新たな問題点として、台部に生じるゆがみ(たわみ)等の影響の問題点を見出した。より具体的には、例えば、X方向においてY方向延伸部材を移動させる場合、その移動により、台部において重量がかかる位置が変化する。そして、その結果、Y方向延伸部材に応じて台部にゆがみが生じる。そして、このゆがみが、印刷品質に一定の影響を与えると考えられる。
【0025】
ここで、例えば送り動作時に生じる振動の影響が大きい場合、このゆがみの影響は、振動が印刷品質に与える影響に比べて小さい。そのため、この場合、ゆがみの影響は、問題になりにくい。これに対し、ボールネジを用いることで高精度の送り動作を実現し、振動の影響を抑えた場合、台部に生じるゆがみが印刷品質に与える影響も、無視できなくなる。
【0026】
そこで、本願の発明者は、鋭意研究により、上記のような連接部を用い、台部のゆがみを抑えることを考えた。また、この構成により、印刷品質に対する台部のゆがみの影響を適切に抑え得ることを見出した。すなわち、上記のような連接部を用いることにより、例えば、台部を補強し、台部の剛性を適切に向上させることができる。また、これにより、Y方向延伸部材等の重量をガイド部材上で受けることで台部に生じるゆがみを適切に抑えることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、高い精度での印刷を、より適切に行うことができる。
【0027】
(構成5)連接部は、台部を挟んでガイド部材と対向する位置に設けられ、突出部は、連接部及び台部を挟んでガイド部材と対向する位置に設けられる。
【0028】
このように構成した場合、例えば重力方向において、ガイド部材の直下に脚部が設けられ、ガイド部材、連接部、及び突出部が一直線上に並ぶこととなる。そのため、このように構成すれば、ガイド部材及び台部をより適切に補強し、台部のゆがみをより適切に抑えることをできる。また、これにより、例えば、高い精度での印刷を、より適切に行うことができる。
【0029】
(構成6)連接部は、重力方向において被ガイド部の直下近傍となる位置に配設されている。このように構成すれば、例えば、送り動作時にYバー等に振動が生じた場合にも、早期に振動を抑えることができる。また、この場合、突出部は、連接部の直下近傍に配設されていることが好ましい。
【0030】
上記のように、X方向駆動部においてボールネジを用いることにより、送り動作時において振動を発生しにくい構成を実現できる。しかし、より適切に振動を抑えるためには、ボールネジの駆動力の伝達によりX方向へ移動する部分において、Y方向延伸部材等の重量を支える被ガイド部の構造等も重要である。これに対し、このように構成した場合、被ガイド部や、被ガイド部をガイドするガイド部材の直下またはその近傍に脚部の連接部があるため、振動が生じた場合にも、振動が減衰しやすい構成、すなわち、減衰率の高い構成になっていると言える。また、その結果、振動が発生した場合にも、いつまでも振動が続くことはなく、早期に振動を収めることができる。また、これにより、例えば、送り動作の後、次の主走査動作を早々に開始することが可能となる。
【0031】
(構成7)被印刷体が載置される被印刷体載置部を更に備え、Y方向延伸部材及び被ガイド部のそれぞれは、被印刷体載置部において被印刷体が載置される部分を中心にして、重力方向におけるその上下にそれぞれ離間して配設されている。
【0032】
このように構成した場合、被印刷体載置部において被印刷体が載置される部分を中心にして、一方にY方向延伸部材が配置され、他方に被ガイド部が配置された構成となるため、例えば、Y方向延伸部材を含む部分であり、送り動作においてX方向へ移動する部分であるYバーの重心と、Yバーの移動をガイドするガイド部材とが離間し、両者の距離が大きくなる。そのため、この場合、ベルト駆動により送り動作を行おうとすると、振動の問題が生じやすくなる。より具体的には、例えば、タイミングベルト等のベルトは、駆動時において、応力がかかることにより伸びる。一方、停止時には、応力の緩和により縮み、元の状態に戻る。そのため、ベルト駆動により送り動作を行うと、停止時の応力緩和によりベルトが収縮することによる振動が被ガイド部に伝わることとなる。また、更には、Yバーの重心と、ガイド部材とが離間した構成により、その振動が増幅され、Yバーに振動が発生すると考えられる。更には、タイミングベルトを用いる場合、ベルトの歯と歯が切りかわるタイミングにおいて、少なからず円滑性が低下し、ギクシャクした動作になる。そして、この円滑性の低下も、振動の原因となり、増幅されてYバーに伝わることとなる。そのため、Yバーの重心と、ガイド部材とが離間した構成の場合、ベルト駆動により送り動作を行うと、特に振動の問題が生じやすいと考えられる。
【0033】
これに対し、X方向駆動部においてボールネジを用いた場合、ベルト駆動を行う場合に生じる上記の問題を、適切に解決できる。また、これにより、Yバーの重心と、ガイド部材とが離間した構成の場合においても、振動の影響を適切に抑え、高い精度での印刷を適切に行うことが可能となる。
【0034】
尚、インクジェットプリンタにおいて、送り動作を行う構成としては、例えば上記のようにYバーの側を動かす構成の他に、X方向におけるインクジェットヘッドの位置を固定して、被印刷体を載せるテーブル(被印刷体載置部)の側を移動させる構成も知られている。しかし、この場合、テーブルにおいて被印刷体を載せる部分と、テーブルの移動をガイドするガイド部材との間の距離は、比較的小さいと言える。そのため、例えばテーブルの移動をベルト駆動により行ったとしても、上記のような振動の問題は生じにくい。また、その結果、送り動作においてテーブルの側を移動させる場合には、振動により印刷品質が低下する問題は、実質的に生じないと考えられる。従って、送り動作においてテーブルの側を移動させる場合、振動を抑える目的でボールネジを用いる必要はないと考えられる。
【0035】
(構成8)Y方向延伸部材に沿って移動することによりインクジェットヘッドが印刷を行う領域のY方向における幅は、50cm以上である。印刷を行う領域のY方向における幅は、より望ましくは、60cm以上である。
【0036】
このように構成した場合、例えば、Y方向においてインクジェットヘッドを移動させる距離が長くなるため、Y方向延伸部材の重量が大きくなる。そのため、例えば従来の構成で送り動作を行う場合、振動の影響が大きくなり、高い精度での印刷を適切に行うことが困難になるおそれがある。これに対し、このように構成すれば、振動の影響を適切に抑えることができる。また、これにより、高い精度での印刷を適切に行うことができる。
【0037】
(構成9)インクジェットヘッドがインク滴を吐出する方向における高さが10cm以上の被印刷体に対して印刷可能である。
【0038】
このように構成した場合、例えば、Y方向延伸部材及びインクジェットプリンタ全体の重心位置が高くなるため、例えば従来の構成で送り動作を行う場合、振動の影響が大きくなり、高い精度での印刷を適切に行うことが困難になるおそれがある。これに対し、このように構成すれば、振動の影響を適切に抑えることができる。また、これにより、高い精度での印刷を適切に行うことができる。
【0039】
尚、重心位置が高い構成の場合、例えば従来の構成で送り動作を行うと、印刷を行う領域のY方向における幅がより小さい場合であっても、振動の影響が生じやすいと言える。例えば、印刷を行う領域のY方向における幅が30cm程度以上の場合、振動の影響が生じやすいと考えられる。これに対し、このように構成すれば、印刷を行う領域のY方向における幅が30cm程度以上の場合であっても、振動の影響を適切に抑えることができる。
【0040】
(構成10)被印刷体に対してインクジェット方式で印刷を行う印刷方法であって、インク滴を吐出するインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドを被印刷体と対向させて保持する部材であり、インクジェットプリンタにおいて予め設定されたY方向へ延伸するY方向延伸部材と、Y方向と直交するX方向へY方向延伸部材を移動させるX方向駆動部とを用い、印刷時において、インクジェットヘッドをY方向延伸部材に沿って移動させつつ、インクジェットヘッドに、被印刷体へ向けてインク滴を吐出させ、X方向駆動部は、ボールネジを有しており、X方向において、ボールネジの回転量に応じてY方向延伸部材を移動させる。このように構成すれば、例えば、構成1と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、様々な形状の被印刷体に対し、高い精度での印刷を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタ10の構成の一例を示す図である。図1(a)は、インクジェットプリンタ10の正面図である。図1(b)は、インクジェットプリンタ10の右側面図である。
図2】インクジェットプリンタ10を斜め上側から見たインクジェットプリンタ10の斜視図である。
図3】インクジェットプリンタ10を斜め下側から見たインクジェットプリンタ10の斜視図である。
図4】インクジェットプリンタ10からYバー部14及びメディアステージ28を取り外した状態を示す斜視図である。
図5】インクジェットプリンタ10の正面図である。
図6】インクジェットプリンタ10の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタ10の構成の一例を示す図であり、インクジェットプリンタ10の要部を、簡略化して示す。図1(a)は、インクジェットプリンタ10の正面図である。図1(b)は、インクジェットプリンタ10の右側面図である。
【0044】
尚、図1においては、説明の便宜上、インクジェットプリンタ10の各部の構成について、特徴がわかりやすくなるよう、適宜サイズや具体的な配置等を調整して示している。また、インクジェットプリンタ10のより詳細な構成については、図2図6に別途示す。
【0045】
インクジェットプリンタ10は、立体物等の被印刷体50に対してインクジェット方式で印刷を行うインクジェットプリンタあり、例えば、高さが10cm以上の被印刷体50に対して印刷可能な構成を有する。被印刷体50の高さの上限は、15cm以上であってもよい。尚、被印刷体50の高さとは、インクジェットヘッドがインク滴を吐出する方向における高さである。本例において、この方向は、図中に示したZ方向であり、重力方向と平行である。
【0046】
また、インクジェットプリンタ10により印刷可能領域のY方向における幅は、例えば、30cm以上、望ましくは、50cm以上(例えば、50〜80cm)、より望ましくは、60cm以上である。また、この印刷可能領域のX方向における幅は、例えば、30cm以上(例えば、25〜50cm)、より望ましくは、40cm以上である。
【0047】
尚、本例において、Y方向とは、主走査動作(スキャン動作)時にインクジェットヘッドがガイドレールに沿って移動する方向である。印刷可能領域のY方向における幅とは、例えば、主走査動作時にインクジェットヘッドが印刷を行う領域の幅である。また、X方向とは、Y方向及びZ方向と直交する方向である。印刷可能領域のX方向における幅とは、例えば、X方向において被印刷体に対して相対的にインクジェットを移動させる送り動作における、インクジェットヘッドの移動範囲の幅である。
【0048】
また、本例のインクジェットプリンタ10全体の高さは、例えば85cm以上、より望ましくは、90cm以上である。また、インクジェットプリンタ10全体のY方向における幅は、例えば120cm以上、より望ましくは、140cm以上である。また、インクジェットプリンタ10全体のX方向における幅は、例えば80cm以上、より望ましくは、90cm以上である。
【0049】
また、本例において、インクジェットプリンタ10は、フラットベットタイプのインクジェットプリンタであり、インクジェットヘッド12、Yバー部14、紫外線照射部16、メディアステージ28、台部22、2個のレール18、2個の支持部材20、X方向駆動部26、脚部24、及び制御部30を備える。フラットベットタイプのインクジェットプリンタとは、例えば、X方向において被印刷体50に対して相対的にインクジェットヘッド12を移動させる送り動作を、Yバー部14をX方向へ移動させることにより行うインクジェットプリンタである。尚、本例においては、説明の便宜上、インクジェットヘッド12及び紫外線照射部16について、Yバー部14とは別の構成とした。しかし、例えば実際のインクジェットプリンタ10の設計時等においては、インクジェットヘッド12及び紫外線照射部16を含めた部分をYバー部14としてもよい。
【0050】
インクジェットヘッド12は、被印刷体50へ向けてインク滴を吐出する印刷ヘッドであり、例えば、CMYKの各色のインク滴を吐出することにより、カラー印刷を行う。インクジェットヘッド12は、例えばクリアインク等の、CMYKの各色以外のインクのインク滴を吐出してもよい。また、本例において、インクジェットヘッド12は、紫外線硬化型インクのインク滴を吐出する。
【0051】
Yバー部14は、インクジェットヘッド12に主走査動作を行わせるための構成である。本例において、Yバー部14は、ガイドレール102、Y方向駆動部104、及び側面部110を有する。ガイドレール102は、インクジェットヘッド12を被印刷体50と対向させて保持するレール部材である。また、本例において、ガイドレール102は、Y方向へ延伸するY方向延伸部材の一例である。
【0052】
Y方向駆動部104は、ガイドレール102に沿ってインクジェットヘッド12を移動させる駆動部である。本例において、Y方向駆動部104は、Y方向におけるガイドレール102の一端側に設けられ、主走査動作時において、制御部30の指示に応じて、インクジェットヘッド12をY方向へ移動させる。また、主走査動作による印刷時において、インクジェットヘッド12は、ガイドレール102に沿って移動しつつ、被印刷体50へ向けてインク滴を吐出する。また、側面部110は、Yバー部14の側面部分であり、ガイドレール102の一端及び他端と、Y方向駆動部104とを支持することにより、インクジェットヘッド12と被印刷体50とを対向させる。
【0053】
紫外線照射部16は、紫外線硬化型インクを硬化させるための紫外線(UV光)を発生する光源である。本例において、紫外線照射部16は、インクジェットヘッド12と共にガイドレール102に支持された状態で、Y方向におけるインクジェットヘッド12の両側に設けられる。また、これにより、紫外線照射部16は、主走査動作時において、インクジェットヘッド12から吐出されて被印刷体50に着弾したインクを硬化させる。
【0054】
メディアステージ28は、被印刷体50を保持するテーブルであり、上面において被印刷体50を保持することにより、被印刷体50をインクジェットヘッド12と対向させる。また、本例において、メディアステージ28は、被印刷体が載置される被印刷体載置部の一例である。メディアステージ28は、Z方向において上面の位置を上下させる機構を有しており、被印刷体50の形状に合わせて上面の位置を変更することにより、インクジェットヘッド12と被印刷体50との間の距離を調整する。また、メディアステージ28の上面には、例えば、被印刷体50の形状の合わせて被印刷体50を保持する治具(アタッチメント)が取り付けられてもよい。このように構成すれば、被印刷体50として多様な形状の立体物を適切に用いることができる。
【0055】
台部22は、インクジェットヘッド12及びガイドレール102等の各構成よりも重力方向の下方に設けられることでこれらの構成を上面に載置する台状の部材である。台部22のY方向における幅は、少なくとも、ガイドレール102よりも広いことが好ましい。また、台部22のX方向における幅は、少なくとも、X方向においてガイドレール102が移動する範囲よりも広いことが好ましい。
【0056】
2個のレール18は、ガイド部材の一例であり、台部22上においてX方向へ延伸することにより、支持部材20の移動をガイドする。また、これにより、2個のレール18は、支持部材20により支持されるYバー部14のX方向への移動をガイドする。
【0057】
また、本例において、2個のレール18のそれぞれは、台部22のY方向におけるそれぞれの端部側に設けられる。これにより、2個のレール18は、Y方向におけるYバー部14の両側において、Yバー部14の移動をガイドする。尚、2個のレール18の位置について、台部22のY方向におけるそれぞれの端部側に設けられるとは、例えば、各端部、又は、各端部の近傍に設けられることである。端部の近傍とは、例えば、一定の余裕分程度だけ端部から離れた位置である。
【0058】
支持部材20は、台部22上においてYバー部14を支える部材である。本例において、それぞれの支持部材20は、被ガイド部106及びYバー載置部108を有する。被ガイド部106は、レール18に沿ってX方向へ移動可能な構成を有する部分である。2個の支持部材20のそれぞれにおける被ガイド部106は、2個のレール18のそれぞれによりガイドされる。また、Yバー載置部108は、被ガイド部106と、Yバー部14との間に設けられる部材であり、その上にYバー部14における側面部110を載置することにより、レール18上でYバー部14を支持する。
【0059】
尚、図1に示す構成において、支持部材20は、2個の被ガイド部106のそれぞれの上に、個別のYバー載置部108を有している。しかし、他の構成の例においては、例えば、2個の被ガイド部106の両方の上に載る一の部材をYバー載置部108として用いることも考えられる。この場合、例えば、Y方向に延伸して台部22上を横断する板状の部材を、Yバー載置部108として好適に用いることができる。このように構成すれば、例えば、Yバー部14をより安定に支持できる。
【0060】
また、本例において、それぞれの支持部材20は、図1(b)に示すように、X方向において離間して並ぶ2個の被ガイド部106を有している。このように構成すれば、例えば、レール18においてYバー部14の重量を受ける位置を分散することができる。また、これにより、台部22上においてYバー部14をより適切に支持できる。
【0061】
尚、本例においては、Yバー部14におけるガイドレール102、及び支持部材20における被ガイド部106のそれぞれは、メディアステージ28において被印刷体50が載置される部分を中心にして、重力方向におけるその上下にそれぞれ離間して配設されている。そのため、本例の構成については、例えば、Yバー部14の重心と、被ガイド部106との間の距離が大きな構成であると言える。
【0062】
X方向駆動部26は、レール18に沿ってX方向へYバー部14を移動させる駆動部である。本例において、X方向駆動部26は、モータ120及びボールネジ122を有する。モータ120は、ボールネジ122を回転させる駆動源の一例である。モータ120は、例えばサーボモータであってよい。
【0063】
ボールネジ122は、ボールネジ軸202及びボールネジナット204により構成されている。この場合、ボールネジ122を回転させるとは、ボールネジ軸202を回転させることである。また、本例において、ボールネジ122におけるボールネジ軸202の両端は、軸受けを介して台部22上に固定されている。これにより、ボールネジ軸202は、台部22上の所定の位置に、回転可能に支持されている。また、ボールネジ軸202は、軸方向をX方向と平行にした状態で、台部22上に支持される。一方、本例のボールネジ122において、ボールネジナット204は、Yバー部14に対して固定されている。Yバー部14に対するボールネジナット204の固定は、例えば、Yバー載置部108に対してボールネジナット204を固定することで行うことができる。この場合、Yバー載置部108としては、Y方向に延伸して台部22上を横断する板状の部材を用いることが好ましい。
【0064】
このように構成した場合、ボールネジ122のボールネジ軸202が回転すると、その回転の向きに応じて、ボールネジナット204は、X方向へ進退する。これにより、ボールネジナット204は、ボールネジ122の回転を直動に変換する変換機構として機能する。また、ボールネジナット204の移動に応じて、Yバー部14も、X方向へ移動する。そのため、本例によれば、例えば、ボールネジ122により、Yバー部14をX方向へ適切に移動させることができる。また、このように構成した場合、例えば、剛性の高い部材である台部22上においてボールネジ軸202の両端を確実に支えること等が可能であるため、ボールネジ122の剛性を適切に高めることができる。また、これにより、例えば、振動の発生をより適切に抑えることができる。また、より高い精度でYバー部14を移動させることが可能となる。
【0065】
尚、説明の便宜上図示は省略しているが、本例において、ボールネジ軸202の両端を支持する軸受けは、台部22上に固定されている。また、ボールネジ軸202の両端を支持する軸受けについては、ボールベアリングの構成によりボールネジ軸202を支持することが好ましい。このように構成すれば、例えば、ボールネジ軸202を滑らかに回転させることにより、振動の発生をより適切に抑えることができる。
【0066】
また、ボールネジ122の構成については、例えば、ボールネジナット204の方を、台部22上に固定することもできる。この場合、ボールネジ軸202は、軸方向をX方向と平行にして、ボールネジナット204に通される。また、X方向におけるボールネジ軸202の直道(進退)に連動させてYバー部14を移動させる構成が用いられる。この場合、より具体的には、例えば、Yバー部14に取り付けられた軸受けにより、ボールネジ軸202を支持することが考えられる。これにより、ボールネジ軸202が回転した場合、ボールネジ軸202は、回転の向きに応じて、台部22上において、X方向へ進退する。また、この移動に応じて、Yバー部14も、X方向へ進退する。そのため、このように構成した場合も、Yバー部14をX方向へ移動させることができる。
【0067】
尚、X方向駆動部26は、モータ120とボールネジ122との間に、動力伝達用の各種構成等を更に有してもよい。また、X方向駆動部26は、例えば、主走査動作の合間に、Yバー部14を、X方向へ移動させる。これにより、インクジェットプリンタ10は、主走査動作の合間に、送り動作を行う。また、インクジェットプリンタ10は、X方向におけるYバー部14の移動が停止した後に、次に主走査動作を行う。
【0068】
脚部24は、台部22を支えるための構成であり、台部22の底面側に設けられることにより、載置面60上において台部22を支える。台部22の底面側とは、重力方向における下面側のことである。また、載置面60は、例えば、インクジェットプリンタ10を設置する台の上面又は床等である。
【0069】
また、本例において、脚部24は、2個の連接部112と、4個以上(望ましくは6個以上)の突出部114とを有する。それぞれの連接部112は、レール18と平行かつ長尺状に連設された部材であり、台部22の底面側に設けられる。また、2個の連接部112のそれぞれは、台部22のY方向におけるそれぞれの端部側に設けられる。このように構成すれば、例えば、台部22においてレール18が設けられている位置において、台部22を補強し、台部22の剛性を適切に向上させることができる。尚、図1等からもわかるように、本例においては、複数の突出部114を跨るように連接部112が形成される。そのため、この構成により、脚部24の剛性が向上しているとも言える。また、これにより、レール18の剛性を高めているとも言える。
【0070】
そのため、本例によれば、Yバー部14等の重量をレール18上で受けることで台部22に生じるゆがみ(たわみ)を適切に抑えることができる。また、これにより、例えば、レール18に沿って移動するYバー部14に生じる振動を適切に抑えることができる。また、振動が生じた場合も、振動の減衰に要する時間を適切に短縮できる。
【0071】
また、突出部114は、インクジェットプリンタ10全体の足となる部分であり、連接部112から重力方向の下方へそれぞれ突出して載置面60と当接することにより、載置面60上で台部22を支持する。また、本例においては、それぞれの連接部112に対し、複数(より好ましくは3個以上)の突出部114を設ける。例えば、1個の連接部112に対し、X方向の両端及び中央に突出部を設けることが考えられる。この場合、例えば、2個の連接部112のそれぞれに対し、3個の突出部114が設けられるため、合計で6個の突出部114が設けられる。このように構成すれば、載置面60上において、インクジェットプリンタ10を適切に支えることができる。
【0072】
また、レール18、連接部112、及び突出部114の位置関係は、例えば、重力方向の上下において一直線上に並ぶように構成することが好ましい。より具体的には、例えば、連接部112とレール18とを台部22を挟んで対向させ、かつ、突出部114とレール18とを、連接部112及び台部22を挟んで対向させることが好ましい。また、この構成は、例えば、連接部112が重力方向において被ガイド部106の直下近傍となる位置に配設されている構成であるとも言える。このように構成すれば、例えば、台部のゆがみをより適切に抑えることをできる。
【0073】
制御部30は、例えばインクジェットプリンタ10のCPUであり、例えば台部22又は側面部110等の内部に設けられ、インクジェットプリンタ10の各部の動作を制御する。例えば、制御部30は、主走査動作時において、被印刷体50におけるY方向の各位置に対し、インクジェットヘッド12に印刷を行わせる。また、主走査動作の合間に行う送り動作時において、X方向駆動部26にYバー部14をX方向へ移動させることにより、被印刷体50において次の主走査動作で印刷がされる領域を順次変更する。そのため、本例によれば、被印刷体50の各位置に対し、適切に印刷を行うことができる。
【0074】
また、以上において説明をしたように、本例においては、X方向駆動部26においてボールネジ122を用いることにより、例えばベルト駆動(タイミングベルトによる駆動等)を行う場合と比べ、例えば減速の構成の違い等により、送りの解像度を細かくして、高い分解能でYバー部14を移動させることが可能となる。そのため、本例によれば、Yバー部14のX方向への移動の停止時に生じる衝撃を適切に低減できる。また、これにより、Yバー部14の移動を停止させるタイミングにおいて、振動をより発生しにくくできる。また、振動が発生した場合にも、振動の減衰に要する時間を短縮できる。更には、これにより、次の主走査動作を行う前に、振動を適切に減衰させることができる。
【0075】
そのため、本例によれば、例えば、Yバー部14の重量が大きい場合や、重心位置が高い場合であっても、その後の主走査動作の開始後における振動の影響を適切に抑えることができる。また、これにより高い精度での印刷を適切に行うことができる。
【0076】
尚、振動の影響を抑えるためには、例えば、振動が十分に減衰するまで待って、次の主走査動作を行うことも考えられる。しかし、この場合、主走査動作の合間の送り動作に要する時間が増大し、印刷速度が大きく低下することとなる。そのため、適切に印刷を行うためには、振動の減衰に要する時間を短縮することが重要である。これに対し、本例によれば、上記のように振動が生じにくい構成を適切に実現できる。また、ある程度の振動が発生したとしても、振動の減衰に要する時間を適切に短縮できる。そのため、本例においては、振動の減衰に要する時間を考慮して印刷速度を大きく低下させること等は必要とならない。また、その結果、本例によれば、例えば、Yバー部14の重量がより小さい場合や、重心位置が低い場合と同様のタイミングで印刷した場合にも、高い品質の印刷を適切に行うことができる。
【0077】
また、ベルト駆動によりYバー部14を移動させようとする場合、例えばYバー部14の重量が大きいと、ベルトが応力によって伸縮する量も大きくなると考えられる。また、その結果、Yバー部14の停止位置が高い精度で定まらずに、印刷品質が低下するおそれもある。また、例えば、ベルトの駆動が停止した瞬間において、ベルトが収縮してYバー部14が振動するおそれもある。
【0078】
これに対し、本例において用いるボールネジ122は、ベルト等と比べ、剛性が高い。そのため、本例によれば、ベルトの伸縮等により生じる問題を適切に抑えることができる。また、これにより、Yバー部14の停止位置の精度を適切に高めることができる。また、振動の発生を適切に抑えることが可能となる。
【0079】
また、ベルト駆動によりYバー部14を移動させようとする場合、例えば、ウォームギアを用いた構成となる。そして、この場合、一般に、動力の伝達効率が高いとは言えない構成になるおそれがある。そのため、この場合、例えばYバー部14の重量が大きいと、Yバー部14を適切に移動させることが困難になるおそれもある。これに対し、本例によれば、ボールネジ122を用いることにより、モータ120が発生する動力を、より高い伝達効率でボールネジ122へ伝達できる。また、これにより、例えばYバー部14の重量が大きい場合であっても、Yバー部14を適切に移動させることが可能となる。
【0080】
更に、本例においては、ボールネジ122を用いて振動を抑えることに加え、連接部112等を用いることにより、台部22に発生するゆがみの影響を適切に抑えることができる。そのため、本例によれば、Yバー部14の重量が大きい場合であっても、高い精度での印刷をより適切に行うことができる。
【0081】
尚、台部22におけるゆがみの影響を抑えるためには、例えば、レール18上に設ける2個の被ガイド部106の間隔をX方向に広げたり、1個のレール18に対して3個以上の被ガイド部106を用いること等も考えられる。しかし、この場合、被ガイド部106の間隔に応じて、台部22のX方向における幅も大きくすることが必要となる。また、その結果、インクジェットプリンタ10のサイズが大型化するという問題も生じる。これに対し、本例においては、連接部112等を用いることにより、被ガイド部106の間隔を過度に広げることなく、台部22のゆがみを適切に抑えることができる。また、これにより、必要以上にインクジェットプリンタ10が大型化することを適切に防ぐことができる。
【0082】
また、Yバー部14の重量が大きい場合に生じる問題を解決するためには、例えば、送り動作においてYバー部14の全体を移動させるのではなく、Yバー部14の一部のみを移動させればよいようにも思われる。また、重心位置が高い場合に生じる問題を解決するためには、例えば、レール18をより高い位置に設けて、Yバー部14又はその一部を移動させればよいようにも思われる。
【0083】
しかし、これらの場合、装置の構成が複雑になり、装置の大型化やコストの増大を招くおそれがある。また、台部22上に直接レール18を設ける場合と比べ、レール18について、高い剛性を実現することが困難になるおそれもある。また、X方向駆動部26とレール18との距離や高さが離れた構成となり、高い精度で位置合わせを行うことが困難になり、送り動作の精度の低下要因となるおそれもある。
【0084】
これに対し、本例において、X方向駆動部26におけるボールネジ122、及びレール18は、上記のとおり、共に台部22上(特に、台部22における同一の面上)に配設されている。そのため、レール18について、高い剛性を適切に実現できる。また、この場合、ボールネジ122とレール18との間の位置合わせを高い精度で行いやすくなるため、高い精度での送り動作を適切に実現できる。更には、例えばYバー部14の一部のみを移動させる場合や、レール18を高い位置に設ける場合と比べ、より単純な構成により送り動作を行うことができる。そのため、本例によれば、例えば、インクジェットプリンタ10の構成を必要以上に複雑化させることなく、高い精度での送り動作を適切に実現できる。
【0085】
以上のように、本例においては、例えば、Yバー部14の重量が大きい場合や、重心位置が高い場合であっても、振動や台部のゆがみの影響を適切に抑えることができる。また、これにより、ガイドレール102のY方向における幅を大きくした構成や、ガイドレール102の位置を高くした構成においても、高い精度での印刷を適切に行うことができる。そのため、本例によれば、印刷可能領域のY方向における幅が大きい構成や、印刷可能な被印刷体50の最大高さが大きい構成を適切に実現できる。また、これにより、例えば、様々な形状の被印刷体50に対し、高い精度での印刷を適切に行うことができる。
【0086】
図2図6は、インクジェットプリンタ10のより詳細な構成の一例を示す図である。図2は、インクジェットプリンタ10を斜め上側から見たインクジェットプリンタ10の斜視図である。図3は、インクジェットプリンタ10を斜め下側から見たインクジェットプリンタ10の斜視図である。図4は、インクジェットプリンタ10からYバー部14及びメディアステージ28等を取り外した状態を示す斜視図である。図5は、インクジェットプリンタ10の正面図である。図6は、インクジェットプリンタ10の右側面図である。
【0087】
尚、図2図6に示した構成(以下、図2等の構成という)において、一部の構成の詳細部分等は、図1に示した構成と異なっている。しかし、この相違は、具体的な構成の設計時における便宜上等のものであり、以下に説明をする点を除き、図2図6において、図1と同じ符号を付した構成は、図1における構成と、同一又は同様のものである。
【0088】
図2等の構成において、インクジェットプリンタ10全体の高さは、95cm程度である。また、Y方向における幅は、150cm程度である。X方向における幅は、100cm程度である。また、インクジェットプリンタ10により印刷可能領域のY方向における幅は、60cmである。また、この印刷可能領域のX方向における幅は、42cmである。
【0089】
また、X方向駆動部26において、ボールネジ122のボールネジ軸202は、モータ120が1回転する毎に、10mm程度X方向へ移動する。モータ120の回転量と、ボールネジ軸202の移動量との比率(減速比)は、例えば3:1程度である。
【0090】
また、メディアステージ28は、Z方向において5cmの範囲で、上面を移動可能であり、かつ、高さ10cm以内の治具(アタッチメント)を上面に取り付け可能な構成を有している。そのため、被印刷体50の形状に合わせて治具を取り付け、又は取り外すことにより、最大高さ15cmの範囲(例えば高さが0.1mm〜15cmの範囲)の被印刷体50に対して印刷が可能になっている。
【0091】
また、図2等の構成においては、図4等からわかるように、2個の被ガイド部106の両方に載る一の部材をYバー載置部108として用いている。この部材は、Y方向に延伸して台部22上を横断する板状体である。また、このような形状の部材をYバー載置部108として用いるため、図5及び図6からわかるように、メディアステージ28は、Yバー載置部108として用いる部材の一部を内部の隙間に通す構造を有している。また、ボールネジ122におけるボールネジナットは、Yバー載置部108に固定されている。
【0092】
以上のように、図2等の構成によれば、例えば、例えば、60cm(Y方向)×42cm(X方向)という広い印刷可能領域に対し、印刷を行うことができる。また、高さが最大で15cmの被印刷体50に対し、印刷を行うことができる。
【0093】
ここで、図2等の構成においては、このように広い印刷領域への印刷を行うため、Yバー部14の重量が大きくなり、かつ、重心位置も高くなっている。そのため、例えばYバー部14以外の部分の構成が従来の構成と同様であるとすれば、例えばYバー部14等に何らかの衝撃が加わった場合、振動が生じやすくなると考えられる。また、振動が生じた場合、振動の減衰に要する時間が長くなると考えられる。
【0094】
これに対し、図2等の構成においても、ボールネジ122を有するX方向駆動部26用いることにより、例えば、送り動作後におけるYバー部14の停止時に生じる衝撃を適切に低減できる。また、これにより、振動の発生を適切に抑えることができる。また、連接部112等を有する脚部24を用いることにより、台部22の剛性を適切に高めることができる。また、これにより、Yバー部14の移動時に生じる台部22のゆがみの影響を適切に抑えることができる。また、Yバー部14等に振動が生じた場合にも、振動の減衰に要する時間を短縮できる。そのため、図2等に示した具体的な構成においても、様々な形状の被印刷体50に対し、高い精度での印刷を適切に行うことができる。
【0095】
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、例えばインクジェットプリンタに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0097】
10・・・インクジェットプリンタ、12・・・インクジェットヘッド、14・・・Yバー部(Y方向延伸部材)、16・・・紫外線照射部、18・・・レール(ガイド部材)、20・・・支持部材、22・・・台部、24・・・脚部、26・・・X方向駆動部、28・・・メディアステージ(被印刷体載置部)、30・・・制御部、50・・・被印刷体、60・・・載置面、102・・・ガイドレール、104・・・Y方向駆動部、106・・・被ガイド部、108・・・Yバー載置部、110・・・側面部、112・・・連接部、114・・・突出部、120・・・モータ、122・・・ボールネジ、202・・・ボールネジ軸、204・・・ボールネジナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6