(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
麺塊の投入されたトレーを定位置まで運搬する手段、並びに水流により麺塊の偏り及び/又は麺塊上面の凹凸が減じられた後の均し麺塊入りトレーを、搬出する手段を有する、請求項1記載の装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[構成]
本発明の構成を図を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の装置の一態様を上方から見た概略の構成を表す図であり、
図2は、本発明の装置の一態様を側面から見た概略の構成を表す図である。
【0011】
図1、
図2に示されているように、本発明の装置は、定位置に保持されたトレーへ麺塊を上方から落下させ、投入する投入手段(玉取り機、10)と、トレー(b)に投入された麺塊(a1)に向けて水流を発生させる水流発生手段(20)とを備える。本発明の装置は、麺塊の投入されたトレーを定位置まで運搬し、そして水流により麺塊の偏り及び/又は麺塊上面の凹凸が減じられた後の均し麺塊(a2)入りトレーを搬出するための運搬手段(30)を備えていてもよい。
【0012】
本発明の装置は、
図1に示す態様では、空のトレーは、投入手段(10)の略真下を定位置として保持され、投入手段(10)より、麺塊が投入される。
本発明においては、トレーへの麺塊の収納は、トレーに、投入手段(10)により、麺塊を落下させることにより行う。麺塊の状態は特に限定されているものではなく、麺塊のみを落下させても、麺塊を水ともに落下させてもよい。麺塊は、少なくとも10mm以上、好ましくは30mm以上、より好ましくは50mm以上落下する。
【0013】
一方、本発明の装置は、
図2に示すように水槽(40)の水中に保持されたトレーへ麺塊を投入するように構成することもでき、また水流による均しを麺塊を水槽(40)中の水中に保持した状態で行うように構成することもできる。この場合、
図2に示されているように、運搬手段は、トレーの水中への搬入手段(31)、定位置への運搬手段(32)及び水中からの麺塊入りトレーの搬出手段(33)とに分けて構成してもよい。
【0014】
本発明者らの検討によると、麺塊を単にトレーへ落下させるよりも、水中でトレーへ落下させた方が、麺の広がりがよく、より均一にトレーの中に収納できた。水中の落下距離が上述の場合より短い場合は、このような効果が十分に得られない。落下距離の上限値は、取り扱いの容易さや、コストの面から設計することができる。
【0015】
本発明の装置は、麺塊のトレーへの投入も、水中で実施することができるが、その場合、トレー素材の比重(通常、トレー素材としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの、食品製造のために許容される汎用樹脂が用いられる。)によっては、空のトレーを安定して水中に搬入することが難しくなることがあり、また麺塊投入のためにトレーを定位置に保持することが難しくなることがある。このような場合は、運搬手段(30)又は搬入手段(31)に、レーンをつけることによりトレーをラインから外れにくくし、及び/又はトレーの素材を比重が大きいものに変更する等してトレーに重みを付け安定走行させることにより、解決することができる。また、麺塊投入のためにトレーを定位置に維持するためには、走行するラインに段差を付ける、レーンやサイドガイドに突起を設ける等により解決することができる。
【0016】
搬出手段(33)は、麺塊入りトレーを傾斜させすぎると、内部の麺塊が偏ってしまうという不都合が生じることから、水中からのトレー搬出の際には、トレー底面が、水平方向となす角度が10度以下、好ましくは9度以下、より好ましくは8度以下であるように、実施するとよい。トレー側面の好ましい角度は、麺の形状、トレーの形状及び/又は大きさ等の条件によって異なりうる。
【0017】
一方、本発明の装置には、麺塊を圧縮するためのプレス手段を設けてもよい(図示せず)。この場合、水中からのトレー搬出の際、麺に偏りや、麺の先端が突出し、凍結後に包装に破損を生じるいわゆる「枝麺」が生じたとしても、プレスにより解消できることから、水中からのトレー搬出の際の角度を、より大きくすることができる。
【0018】
[用語の説明、その他]
本発明で「麺で構成される麺塊」というときは、特に記載した場合を除き、麺(麺線ということもある。)の塊をいう。麺塊は、冷凍成型されている場合もある。麺塊は、通常、麺と麺との間に、ある程度の空隙を有し、そのため、冷凍されていない場合は、ある程度の圧縮が可能である。
【0019】
本発明で「加熱調理済み」というときは、特に記載した場合を除き、原料麺に、喫食可能なまでに加熱調理が施されていることをいう。加熱調理の例としては、茹でる、蒸すを挙げることができる。加熱調理の条件は、当業者であれば、麺の種類に応じ、通常の調理条件を参考に、適宜決定できる。加熱調理の後、必要に応じ、湯切り、水洗、冷却等を行うことができる。
【0020】
本発明で「トレー」というときは、特に記載した場合を除き、麺塊を冷凍成型するための容器を指す。トレーは、上側の開放口と、麺塊を収納するための壁面及び底面からなる収納部とを有し、トレー底面は、典型的には、長方形である。収納部には必要に応じ、水を排するためのスリットや穴が1又は複数個設けられている。収納部は網状材料からなる(ざる様)場合もある。
【0021】
本発明で均し工程に関し、「水流を用いて」というときは、特に記載した場合を除き、麺が動く程度の水流をトレー内の麺塊にあて、麺塊を均すこという。
水流は、均しを確実に行うとの観点からは、少なくとも1秒以上あてることが必要である。あてる時間が長いと均しは確実に行われるが、終点は、操作性、経済的な観点から決定することができる。
【0022】
水流は、麺塊の上方から、麺塊上面の中央部にあてるか、あるいは、全体にあててもよい。限定されないが、好ましくは、旋回するようにあてる。
本発明者らの検討によると、水流は、約0.5L/分以上であれば均しのために一定の効果があるが、このように比較的少ない流量では、均しに必要な時間が1秒を超える場合がある。水流が多いと水均し効果は高いが、一方、多すぎると、麺がトレーから飛び出してしまうことがある。限定されるわけではないが、好ましくは水流の好ましい範囲は、10−12L/分で、12−14L/が上限である。
【0023】
一方、用いる水の量を、水流にかえて、圧力として表すこともできる。均しに有効といえる圧力、すなわち水中で麺が動くときの圧力は、以下のように測定・算出することができる。
(1)水槽に麺を入れたザル様容器を入れ、天秤に乗せる。
(2)20mm径の円柱を上から麺に当て、麺が動いたときの質量を測定する。
(3)以下の式より、圧力を求める。
【0025】
p:圧力[Pa]、F:力[N]、S:面積[m
2]、m:質量[kg]、g:重力加速度[m/(s2)]
本発明者らの検討によると、水中でうどん(実施例で使用したもの)が動く場合の圧力は、約312Pa(30g/cm2)と計算された。このような観点からは、本発明において水をあてて均す場合の水による圧力は、300Pa〜20kPa、好ましくは500Pa〜18kPa、より好ましくは10kPa〜18kPaである。
【0026】
より高い水量、水圧を用いた場合であっても、ノズルを使用して霧状にする、ノズルを回しながら水流を当てる、等の工夫により、麺がトレーから飛び出すことなく、かつより水均しのより高い効果を得ることができる。
【0027】
水流は麺塊に対し上方からあてる。限定されるわけではないが、「上方から」は麺塊の真上、即ち90度ではなく、低い角度、好ましくは10度−45度、より好ましくは15度−25度のであてる。
【0028】
本願発明に使用するノズルの種類は特に限定されない、任意のノズルを使用可能である。ノズルの型には、液体を直射するダイレクトノズル、液体を霧状にかける噴霧型ノズル等様々な種類のものがある。また、特に直射型の場合に水を広く行き渡らせるために、ノズルの先端が回転する回転ノズルを使用してもよい(ダイレクトノズル×回転)。例えば、うどんのように太くてしっかりした麺(特に具付用の麺)を、トレーの隅々まで入れる必要がある場合には、ダイレクトノズル×回転が好ましい。後述する本願明細書の実施例1では、回転ダイレクトノズル(ダートキラーノズル、19maxMPa、日本クランツレ株式会社)を用いた。
【0029】
一方、ラーメンやそばなどのように、細い麺の場合には、麺の切断及び水からの飛び出しの防止のために、噴霧型ノズルの使用が好ましい。噴霧型ノズル(スプレーノズル)とは、液体を霧の状態にして噴射する部品のことであり噴射される液体の流量、流速、方向、広がり、粒子径などのパラメータを使用目的に応じてコントロールする目的で使用されるものである。限定されるわけではないが、例えば、株式会社 いけうち社製の、「一体形 標準扇形ノズル VVPシリーズ」が使用可能である。VVPシリーズは、中央が強く両端にかけて次第に弱まる山形流量分布の扇形噴霧を発生し、複数配列時にパターンの両端をオーバーラップさせて使用することで、全巾において均等な流量分布を実現することを特長とする。材質としては、真鍮、ステンレス、各種樹脂材などがある。例えば、VVP2580を使用可能である。「VVP2580」のVVPの後の数値は、水均しの水流(シャワー)を当てる角度及び水量を示す。
【0030】
本願明細書の実施例2−5では噴霧型を用いた。特に言及していない限り、本願明細書に記載した本願発明にける、「麺塊にあてる水流の水量」、「麺塊にあてる水流の水圧」、「水流を麺塊にあてる角度」の好ましい値は、噴霧型ノズルを用いた場合の値である。
【0031】
本願発明において、ノズルは単数で用いても複数で用いてもよい。ノズルを複数用いる場合、使用するノズルの総計で上述した好ましい水流の流量及び/又は圧力を達成する。
本発明によれば、驚くべきことに、麺塊密度が通常の均し工程を経たものに比較して、小さくなっており、麺塊がよりコンパクトになっている。
【0032】
水均し工程を経た後、冷凍成型された麺塊の麺塊密度は、後述する圧縮工程を経ている、いないに関わらず、0.65g/cm3以下であり、好ましくは0.63g/cm3以下である。本発明で「麺塊密度」というときは、特に記載した場合を除き、加熱調理済みの一定量の麺で構成される麺塊の重量を麺塊体積で割ることにより求められる麺塊体積あたりの重量をいう。麺塊体積は、麺塊としての体積をいい、麺及び麺間の空隙を含む体積であり、麺そのものの体積とは異なる。麺塊体積は、具体的には、麺塊全体を包含する最小の立体(例えば、直方体、円柱)を想定し、その立体の体積として定義される。例えば、麺塊が100mm×100mm×20mmにちょうど包含される麺塊の麺塊体積は、200cm3と計算される。麺塊密度は、通常、麺そのものの密度より小さい値となる。なお、本発明に関し、麺塊のサイズ(縦、横、厚)、体積、麺塊密度をいうときは、特に記載した場合を除き、冷凍麺塊についてのものを指す。冷凍麺塊のサイズとして、冷凍成型する際に用いるトレーのサイズで代替できる場合があるが、冷凍により、麺塊のサイズが〜数%縮む場合があるが、当業者であれば、必要に応じ、適宜補正・換算できる。
【0033】
本発明においては、均しの程度又は麺塊密度の上限は、ゆで調理時の麺塊のほぐれ性、及び/又は食感により、決定することができる。圧縮しすぎは、ほぐれが悪くなり、調理に時間を要することとなる。その結果、麺が茹で延びし、柔らかくなって食感を損なう。なお、ほぐれ性を無視した場合、圧縮は、理論的には、麺の間にまったく空隙が無くなった状態まで行うことができ、圧縮率は麺そのものの体積に基づいた値になる。またそのような場合の麺塊密度は、麺の密度そのものであり、実施例で用いたゆでうどんの場合は、約0.80 g/cm3である。
【0034】
好ましい麺塊密度を、麺の種類に応じて規定すると、うどんの場合、0.40〜0.65g/cm3、好ましくは0.45g/cm3〜0.63g/cm3であり、そばの場合、0.40〜0.66g/cm3、好ましくは0.45〜0.58g/cm3であり、ラーメンの場合、0.40〜0.63g/cm3、好ましくは0.45〜0.59g/cm3であり、パスタ(好ましくはスパゲッティ)の場合、0.40〜0.66g/cm3、好ましくは0.45〜0.63g/cm3である。
【0035】
本発明の製造方法においては、均しの程度は、最大厚みを考慮して、決定してもよい。本発明においては、麺塊の最大厚みは、平均厚みの1.5倍以下であることが好ましく、より好ましくは1.3倍以下、1.2倍以下、さらに好ましくは1.1倍以下である。本発明で「最大厚み」というときは、特に記載した場合を除き、冷凍麺塊のうち、最も厚みのある箇所の厚さをいう。本発明で「平均厚み」というときは、特に記載した場合を除き、麺塊の長辺方向の中心線において、両端(端から0.50〜2.0cmの範囲)と中央との3か所の厚みの平均値をいう。なお、理想的には、最大厚みは、平均厚みの1.0倍となる。
【0036】
最大厚みが小さいと、製品がコンパクトになる点で好ましく、特に複数の、例えば2〜10個の、麺塊を重ねた状態で二次包装したような製品において、製品全体の嵩をおさえることができる点で好ましい。最大厚みは、麺塊のトレーへの水中への落下による投入や均し工程により、小さくすることができるが、麺塊を圧縮することが有効である場合がある。
【0037】
本発明で「圧縮」というときは、特に記載した場合を除き、麺間の空隙を少なくするように麺塊の上面を抑え、麺塊の体積を減じ、かつ麺塊正面をより平坦にすることをいう。圧縮には、板状体を用いることができ、また適切であれば、別のトレーの底面を利用することができる。
【0038】
板状体の形状は、麺塊の表面をさらに均しつつ、必要に応じ圧縮することができるのであれば、特に制限はないが、略板状の部分を有し、着脱が容易なように柄を設けてもよい。板状体を取り除く際の食品の付着を防止するために、食品との接着面積が少なくなるような形状としてもよい。このためには、例えば、波板状としたり、板状の部分にスリットを設けたりすることができる。
【0039】
本発明においては、麺塊の圧縮は、板状体で、枠内又は開口部を有する容器内に充填された加熱調理済みの麺塊の上面又は開口部面を均しつつ抑えることによりなされる。これにより、麺立ち(一部の麺が、周囲に比較して、5mm以上突出すること。)の発生が防止される。突出した麺は、冷凍固化すると、包装材料を損傷することがあり、また破損しやすいために端材(麺の破片)を生じさせることがあり、製造上好ましくない。麺塊の圧縮は、麺立ちを抑えるために、有効である。
【0040】
本発明における圧縮は、少なくとも麺立ち抑制上有効な程度まで、行われる。
一方、本発明における均し及び圧縮は、調理性を損なう程度にまでは、実施されない。
なお、ほぐれのよさは、麺の種類によって異なることがある。概して、パスタは高い圧縮率でも、解凍時ほぐれのよさを保持しており、うどんでは高い圧縮によりほぐれが悪くなる傾向がある。これは、麺の種類によりでん粉とそれを支持するタンパク質の状態が異なることに起因すると考えられる。うどんにおいては表面へのでん粉の溶出量が比較的多く、そのため麺の粘着性が高いためにほぐれが悪くなるに対し、表面へのでん粉の溶出が起こりにくいパスタは、麺の粘着力が少なく、より圧縮してもほぐれがよいと考えられる。
【0041】
本発明の製造方法において麺塊を構成する麺の種類に特に制限はないが、うどん(例えば、讃岐うどん、稲庭うどん)、そば(例えば、十割蕎麦、二八蕎麦)、中華麺(例えば、ラーメン)及びパスタ(例えば、スパゲッティ、スパゲッティーニ、タリアテッレ、リングイネ等のロングパスタ;マカロニ等のショートパスタ;ラザニア、ニョッキ)からなるものとすることができる。麺の太さについても、麺食品として通常の許容される太さであれば、特に制限はなく、例えば、厚みが6.0mm以下であれば、種々の麺幅のものについて本発明を適用できる。好適に適用できることが確認されている麺の例は、幅5.2mm×厚み4.0のうどん、幅2.0mm×厚み2.0のそば、幅2.0mm×厚み2.0のラーメン、幅2.4mm×厚み2.4のパスタである。なお、本発明に関し、麺のサイズ(幅、厚み、長さ)、重量、比重(密度)をいうときは、特に記載した場合を除き、茹で調理後のもののサイズ、重量を指す。
【0042】
うどんとは、一般に、小麦粉に食塩水を加えて混捏し、平板上に延ばしてから細長く切断するか、細長く引き伸ばして麺線としたものをいい、通常、茹で調理後に、つけ汁にひたすか、汁とともに似て喫食するものである。本発明において「うどん」は通常の意味で用いている。冷凍うどんとしては、200g〜250gの麺塊を冷凍したものが流通している。従来の冷凍うどん塊の大きさは、鍋に投入しやすいように、典型的には、縦130〜140mm、横90〜100mm、高さ25〜32mmであり、麺塊密度は0.55〜0.60(g/cm3)、重量あたりの麺塊表面積は1.8〜2.0(cm2/g)である。
【0043】
そばは、原料粉にそば粉を多く含む麺をいう。そばは、一般には、そば切りとも呼ばれる。本発明において「そば」は通常の意味で用いている。冷凍そばとしては、160g〜200gのものが流通している。従来の冷凍そば塊の大きさは、典型的には、縦130〜140mm、横90〜100mm、高さ25〜32mmである。
【0044】
「ラーメン」は、中華麺の一種であり、中華麺は、一般には、中華そばと称されることもある。中華麺は、タンパク質含量の高い強力粉や準強力粉を用い、かんすいを添加する点に特徴がある。本発明において「ラーメン」「中華麺」は通常の意味で用いている。本明細書の実施例においては、ゆで調理されるラーメンについて検討しているが、焼きそばや湯揚調理に用いられる蒸し用の中華麺においても同様に本発明を適用することができると考えられる。冷凍ラーメンとしては、160g〜200gのものが流通している。従来の冷凍ラーメン塊の大きさは、典型的には、縦130〜140mm、横90〜100mm、高さ25〜32mmである。
【0045】
そば及びラーメンのような比較的細い麺は、太麺のうどんの場合と比較して、冷凍麺塊に高さ(厚み)が出やすい。そのため、従来品においては、一般に、製品重量を少なくすることにより製品嵩が抑えられている。
【0046】
パスタは、一般に、デュラム小麦のセモリナ粉に、水を加えて混捏した生地を押し出し成形したものをいい、それを乾燥した物(乾麺)も多く流通している。本発明において「パスタ」は通常の意味で用いている。冷凍パスタの従来品は、家庭用には、具材の入った電子レンジ調理用のものが主流である。業務用においては、茹で調理対応の冷凍麺が流通している。
【0047】
本発明に用いる麺塊を構成する麺は、好ましい態様においては、うどん、そば、ラーメンが含まれる。うどんには、讃岐うどん、稲庭うどん等も含まれる。
なお、本明細書の実施例では、調製した生麺から圧縮冷凍麺塊を調製しているが、本発明に用いられる原料麺は、性状(生麺であるか、乾麺であるか等)、製法(機械延であるか、押出成形であるか、手延であるか、等)に特に制限はない。特に、生麺のみならず、乾麺からも同様に調製することができる。
【0048】
本発明においては、麺塊を構成する加熱調理済み麺の量は、適宜設定することができる。麺量の下限は、特に制限はないが、例えば30g、50g、80gとすることができる。上限も様々とすることができるが、例えば1000g、500g、300gとすることができる。麺量の範囲は、例えば、100g〜300gである。圧縮するので、麺塊あたりの重量を従来の冷凍麺塊より増すことができる。典型的には、200g程度である。
【0049】
本発明の冷凍麺塊は、種々の形状でありうる。冷凍麺塊の解凍は沸騰水で茹でることによる場合が多く、その際の用具として、家庭では鍋を、外食産業の調理施設においては業務用の「てぼ」と呼ばれる、すくいざるを用いることが多い。従って、冷凍麺塊は、これらのものの中へそのまま入れることができる大きさであることが好ましい。
【0050】
圧縮された冷凍麺塊の評価は、麺立ちの有無や程度、製造工程における端材発生の有無や程度、包装材料の破損によるロスの有無や程度、調理時のほぐれのよさ、解凍したものの食感等の観点から行うことができる。それぞれの評価の手法及び基準は、本明細書の実施例の記載を参照することができるが、ほぐれに関しては、本発明の投入・均し工程を経ない従来の冷凍麺塊を基準に、それと同じかどうかで判断することができる。
【0051】
本発明の製造方法には、さらに圧縮冷凍麺塊を一又は複数個ずつ包装する工程を組み込んでもよい。包装は、麺塊の包装形態としては、冷凍食品の製造のための種々の手段を適用することができる。
【0052】
本発明の水均し工程の条件は、使用する麺の種類、麺の物性等の条件によって異なり、当業者は本願明細書の開示に基づいて適宜適切な条件を採用しうる。うどんのように太く重い麺は、麺全体が水に浸かっていて浮力により動きやすくなっている状態での水均しが好ましい。一方、そば及びラーメンのように軽い麺は、麺上部が水から出ている状態での水均しがよい。軽い麺は、全体が水に浸かっていると、上部の麺が水均しシャワー(上方からの水流)の勢いでトレーから飛び出してしまう場合があるためである。軽い麺の場合、麺上部が水から出ている状態で、麺上部表面はシャワーの勢いで均し、麺下部は浮力が働く状態がよい。
【0053】
また、うどんのようにやわらかく弾性のない麺の方がトレーへの納まりがよく、トレーから飛び出しにくい。よって、必要であれば、多い水量、強い水圧を使用可能である。特に、容器の隅々にまで、うどんのような太い麺を行き渡せたい場合には、多い水量、強い水圧を使うことが有効である。一方、限定されるわけではないが、麺へ食塩を添加して麺の比重をあげることにより、浮力を減らすことができ、うどんと同様にトレーへの納まりがよくなる。しかしながら、麺への食塩への添加は麺の味へも影響するため、食塩の添加は必須要件ではなく、本明細書の開示に基づいて水量、水圧等の条件を適宜調節することにより、本発明の効果を達成することが可能である。また、麺線が硬くなるような材料、例えば、グルテンやかんすいが含まれている場合、麺線が硬くなりハリがでる。このような場合にもトレーへの飛び出しが生じやすくなるが、水量、水圧等の条件を適宜調節することにより、本発明の効果を達成することが可能である。
【実施例】
【0054】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。当業者は本明細書の記載に基づいて容易に本発明に修飾・変更を加えることができ、それらは本発明の技術的範囲に含まれる。
【0055】
実施例1
本実施例では、うどんを用いて本願発明の水均し工程による、凍結うどんのサイズと調理性(ほぐれ時間)への影響を調べた。
【0056】
[実験方法]
1. 麺塊の製造
澱粉入り小麦粉1000gに、水423gに塩47gを予め溶解させたものを加え、製麺用の横型真空ミキサーで10分間ミキシングして、そぼろ状の生地を得、圧延、複合し、厚み約10mmで2時間25℃にて熟成させた。熟成後、常法にて圧延し、9番の麺線にて、厚み3.0mmの生うどんを得た。その後、十分な量の沸騰したお湯の中で、約12分茹で、直ちに水洗いして、冷水中で冷却して茹でうどんを得た。
【0057】
一食分(200g)の茹でうどん(幅約5.2mm×厚み約4.0mm×長さ約300mm)の麺塊を、トレー(スリット入り。トレーサイズは、高さ40mm、外寸が、底面135mm×95mm、上面140mm×100mm、内寸が底面131mm×91mm、上面136mm×96mm;冷凍麺塊サイズは、底面130mm×90mm、上面135mm×95mmとなる。)を用いて成型するに際し、空中でトレーへ麺を投入した後、トレーごと麺塊を水中へ送った。回転ダイレクトノズル(ダートキラーノズル、日本クランツレ株式会社)を用いて、上方から、円を描く水流で廻し打ちすることにより、均しを行った。なお、トレーへの麺塊投入は、トレーの約1cm上方から行った。トレーの上部は、水面より約10mm高くして、麺がトレーから飛び出しにくいようにした。比較例は、水中で水流で均す工程を省いた以外は、同様の条件で麺塊を調製した。
【0058】
水流で均す工程を用いた場合の麺(本願発明の実施例)と用いない場合の麺(比較例)を凍結し、冷凍麺塊を得た。
2. 最大厚みの測定
麺塊を裏返し、下端から定規をあて、最も厚みのある箇所の厚みを最大厚みとして測定した(
図3)。
【0059】
3. 平均厚みの測定
次に、トレーから取り外した麺塊の中心部、並びに中心部に対応する端1及び端2の厚みを測定した。厚みを測定した部位を
図4に示す。
【0060】
また、abcの平均値を算出した。なお、厚みの測定には、厚み測定計(RE2−33005B、株式会社山電製)を用いた。プランジャーは直径5mm円柱状のものを用い、プランジャー速度1mm/sec、厚み測定感度0.02N荷重で測定した。
【0061】
4. 調理性(ほぐれ時間の測定)
1玉の冷凍麺塊をゆで、麺同士のくっつきがすべてなくなってほぐれるまでの時間をほぐれ時間として測定した。
【0062】
[結果]
結果を表1及び2に示した。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
実施例の最大厚みの平均値は、比較例のそれを下回り、均しの程度が進んでいることが示された。また、麺立ちも減じられていることが分かった。平均厚みも、実施例が比較例を下回った。
【0066】
麺の均し、コンパクト化が行われている一方で、調理性(ほぐれ時間)が短縮されることが分かった。水流で均すことにより、トレーの四隅にまで麺が行き渡り、麺塊容積が抑えられる一方で、麺同士のくっつきが増しているわけではないと考えられた。均しにより麺が偏って調理性を損なう部分が生じることが少なくなったことに加え、水の使用により、麺間に適度に水が存在することとなり、麺同士のくっつきが減じられたためだと考えられた。
【0067】
また、実施例及び比較例で得られた冷凍麺塊を一次包装し、5個重ねた写真を
図5に示した。5個パック製品としては、6%程度厚みが減じられていることが分かった。
[まとめ]
水流を利用した均し方法で試作した凍結うどんのサイズと調理性を評価した。サイズは、厚みが比較例以下のもの、調理性はゆで調理時のほぐれ時間が同等か短縮できることが望まれた。結果、水流を用いることにより、有効に均すことができ、最大厚みが減じられ、製品をよりコンパクトにできる可能性が見出せた。調理性については、水流を用いると、予想外にも、調理性が増すことが分かった。
【0068】
以上より、ゆで麺をトレー内全体へ均一に均すとの観点、全体をコンパクトにする観点、及び調理性の観点のいずれにおいても、水流を利用して均す方式が有効であるといえる。
【0069】
実施例2 うどん、そば及びラーメンに対する水均し工程の効果
本実施例では、うどん、そば、ラーメンと種々の麺の種類に対し、水均し工程における水均しの水位、水量及び水圧を変更した場合の効果を調べた。
【0070】
うどんは、実施例1と同様に一食分(200g)を成型前の状態まで調製した。そば及びラーメンは、材料を表3に記載の配合割合で配合し、160g分を成型前の状態まで調製した。
【0071】
【表3】
【0072】
そばは、以下のように調製した。小麦粉630g、そば粉300g、グルテン40g、卵白粉1gに、水390gを加え、製麺用の横型真空ミキサーで10分間ミキシングして、そぼろ状の生地を得、圧延、複合後、常法にて圧延し、20番の麺線にて、厚み1.5mmの生そばを得た。その後、十分な量の沸騰したお湯の中で、約80秒茹で、直ちに水洗いして、冷水中で冷却して茹でそばを得た。
【0073】
ラーメンは、を以下のように調製した。小麦粉900g、澱粉100g、グルテン20g、卵白粉5gに、水400gにかんすい15gとクチナシ色素0.6gを予め溶解させたものを加え、製麺用の横型真空ミキサーで10分間ミキシングして、そぼろ状の生地を得、圧延、複合し、厚み約10mmで1時間25℃にて熟成させた。熟成後、常法にて圧延し、20番の麺線にて、厚み1.5mmの生うどんを得た。その後、十分な量の沸騰したお湯の中で、約80秒茹で、直ちに水洗いして、冷水中で冷却して茹でラーメンを得た。
【0074】
うどん、そば及びラーメンを各々、成型前の状態まで調製後、実施例1に記載したのと同様に、空中でトレーへ麺を投入した後、トレーごと麺塊を水中へ送り、上方から、ノズルにより霧状に散布することにより、種々の条件の水位、水量及び水圧を用いて水均しを行った。得られた冷凍麺塊について、最大厚み、厚み差、平均厚み、ほぐれ時間(秒)を測定した。結果を表4に示す。
【0075】
なお、そば、ラーメンを実施例1と同様の方法で円を描く水流で廻し打ちした場合には、麺はトレーの外に飛び出してしまい、実施が出来なかった。そのため、霧状に水をかけるノズルを用いて散布を行った。以下、実施例2−5ではいずれも霧状に水をかけるノズルを用いた(VVPシリーズ、株式会社 いけうち社製、特に明記しない場合はVVP2580)。
【0076】
【表4】
【0077】
水位については、麺の種類、太さ、縮れ具合などによって嵩が異なり、水につかっている割合が異なる。実際に使用した麺をトレーに自然に入れた際の麺の嵩の高さを測ったところ、うどんが24mm、そば及びラーメンは30mm程度であった。例えば、水位が同じ24mmの場合、うどんの場合にはわずかにうどんが麺より上部に出る感じで、そば及びラーメンの場合はかなりの部分が上に出ているような感じであった。
【0078】
表4より、うどん及びそばの場合は24mmが、そしてラーメンの場合は21mm程度が好ましかった。即ち、うどんは麺が太く重いため、麺全体が水に浸かっていて浮力により動きやすくなっている状態での水均しが好ましい。一方、そば及びラーメンの場合はいずれも、麺上部が水から出ている状態での水均しがよい。これらの麺はうどんと異なり、麺自体が細く軽いため、全体が水に浸かっていると、上部の麺が水均しシャワー(上方からの水流)の勢いでトレーから飛び出してしまう場合があるためである。軽い麺の場合、麺上部が水から出ている状態で、麺上部表面はシャワーの勢いで均し、麺下部は浮力が働く状態がよい。
【0079】
水圧、水量は使用するノズルによってほぼ一定となる。本実施例で用いたノズルはVVP2580(株式会社 いけうち社製)である。25は水均しの水流(シャワー)を当てる角度を示し、80は水量(0.3MPa時に8.0L/分)を示す。上述したようにうどんの場合は麺全体が水に浸かっていて浮力により動きやすくなっている状態での水均しが好ましく、その場合、より少ない水量、より低い水圧で、水均しによる効果が得られる。
【0080】
ノズルを2本並列に並べて使用した。水量はノズル2本で12L/分、水圧0.17−0.18MPa、そして、水深はそば21mm、ラーメン24mmの条件で、そば及びラーメンに対して水均し工程を行った。冷凍麺塊のサイズ及びほぐれ時間に対する効果を、水均しを行わなかった場合と比較して確認した。
【0081】
【表5】
【0082】
表5において、(1)かきわけ、及び(2)かきわけプレスが、水均し工程を行わない比較例で、(3)21mm(24mm)12L、及び、(4)21mm(24mm)12Lプレスが、水均し工程を行った実施例である。「プレス」は、麺塊を圧縮するためのプレスを施した場合である。(2)と(4)の比較、あるいは(1)と(3)の比較により、そば、ラーメンのいずれの場合も、水均し工程を施した方が、最大厚み、厚み差、及び平均厚みの薄くなった、ほぐれに要した時間については、水均し工程により厚みが薄くなったにもかかわらず、比較例と同様であり、コンパクトになっても麺同士のくっつきが増すわけではない、ことが示された。
【0083】
実施例3 麺線の太さ、厚みの水均しの条件への影響
本実施例では、うどんを用いて麺線の太さ、厚さを変更し、水均しの条件への影響を調べた。ノズルVVP2580を水面から約280mmの高さで用いた。結果を表6に示す。
【0084】
【表6】
【0085】
表6に示される通り、麺線の太さ、厚さを変更しても、水均しのための好ましい水位、水量、水圧の諸条件はほぼ同じであった。本実施例の結果から、水均しの条件は実質的に麺線の太さには依存しない、と言える。
【0086】
実施例4 塩濃度の水均し効果への影響
本実施例では、ラーメンを用いて塩濃度の水均し効果への影響を調べた。ラーメンは以下の表7の配合を用い、太ラーメンと細ラーメンの2種類を調製した。
【0087】
【表7】
【0088】
実施例3と同様に、ノズルVVP2580を水面から約280mmの高さで用いた。結果を表8に示す。
【0089】
【表8】
【0090】
表8より同じ太さでも食塩により麺線物性(弾力)が異なり、これにより水均し条件、効果が異なることが明らかになった。具体的には、食塩の添加により浸透圧により水が麺に浸透し、麺線がしなやかになると考えられる。その結果、食塩を添加した方が水均しでトレーに納まりにくい。この場合、水圧がより低くても効果が得られやすい。
【0091】
実施例5 ノズルと水均し効果
水圧、水量は使用するノズルによってほぼ一定となる。本実施例では,用いるノズルの種類による水均し効果への影響を調べた。結果を
図6−8に示す。
【0092】
図中、VVPの後の数値は、水均しの水流(シャワー)を当てる角度及び水量を示す。例えば、VVP2580の25は水均しの水流(シャワー)を当てる角度を示し、80は水量(0.3MPa時に8.0L/分)を示す。長さはノズルの水面からの高さを示す。
【0093】
図6から、VVP9030、VVP8020及びVVP11515は、最大厚みが厚い、及び/あるいは、厚み差が大きい、との理由から本発明の水均し工程には適していない、と考えられる。
【0094】
図7及び
図8において、水均しの水流(シャワー)を当てる角度が25度又は15度についてさらに条件を検討した。その結果、VVP2580は比較的厚みのばらつきが小さいことが判明した。他の実施例でもVVP2580を用いた。