(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記出力演算装置は、前記記憶装置から読み出された前記効率データに基づいて、車両または編成としてエネルギー効率が最大となるように前記トルク出力または前記トルク配分を決定することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の鉄道車両の制御システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一般に、列車における駆動ユニットの引っ張り力(トルク)と列車速度との関係は、
図3に示すようになっている。
図3において、複数の楕円状の等高線は、エネルギー効率の高低を表しており、中心側ほどエネルギー効率が良好となる。つまり、比較的大きな引っ張り力を必要とする領域(重負荷状態)で駆動する方が、エネルギー効率が良好になるように設計されている。
しかしながら、通常の編成の列車では、重負荷状態で運転される時間の割合はそれほど高くない。例えば旅客車の場合、通勤時間帯以外は重負荷状態にはならない。そのため、複数の駆動ユニットに対して一律にトルク指令出力を送信する上記のような制御方式にあっては、エネルギー効率の低い軽負荷もしくは中負荷の状態で運転される時間が長くなり、システム全体としてのエネルギー効率が低下するという課題がある。
【0007】
なお、特許文献1には、複数の駆動ユニットの最大駆動力の合計よりもその時点で必要とする駆動力が低い場合には、一部の駆動ユニットの稼働を停止させることで、ロスを低減し省エネ運転を行えるようにした発明が記載されている。しかし、特許文献1に記載されている発明は、各車両の積載重量を検出する重量センサを備えておらず、各車両の重量を考慮した駆動ユニットの制御を行っていないため、エネルギー効率を充分に高めることができない。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みなされたもので、1車両または1編成の列車に複数の駆動ユニットを備えた鉄道車両において、車両または列車に要求される加減速性能を満足しながら、機器の電力損失を低減しエネルギー効率を充分に高めることができる制御システムおよび制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明は、
1つの車両または1編成の列車に設けられた複数の駆動ユニットと、該複数の駆動ユニットのそれぞれに対応して設けられた複数のユニット制御装置と、前記複数のユニット制御装置に対して制御情報を送信する主制御装置と、を備えた鉄道車両の制御システムであって、
前記主制御装置は、出力演算装置と記憶装置とを備え、
前記記憶装置には、前記駆動ユニットの数および配置に関するデータおよび前記駆動ユニットの効率データが記憶されており、
前記出力演算装置は、前記記憶装置から読み出された駆動ユニットの数および配置に関するデータおよび効率データに基づいて、作動させる駆動ユニットを決定するとともに各駆動ユニットのトルク出力を算出し、算出結果に基づいてトルク出力指令を対応する駆動ユニットへ送信するようにした。
【0010】
ここで、上記「トルク」には、列車加速時における加速トルクの他、列車減速時における制動トルクが含まれる。
上記した手段によれば、記憶装置に記憶された駆動ユニットの数および配置に関するデータおよび効率データに基づいて、作動させる駆動ユニットおよび各駆動ユニットのトルク出力を算出するので、駆動ユニットのエネルギー効率が良好となるように制御することができ、消費する電力を低減することができる。
【0011】
また、望ましくは、前記主制御装置に対して加減速の指令を与えるための操作指令手段を備え、
前記出力演算装置は、前記操作指令手段からの加減速指令情報に応じて、必要な駆動力を算出し、該駆動力が得られるように、前記複数のユニット制御装置に対するトルク配分を決定するように構成する。
ここで、上記「トルク配分」には、出力トルクを「0」とすることも含まれる。
【0012】
上記した手段によれば、操作指令手段からの加減速指令情報に応じて、必要な駆動力を算出し、複数のユニット制御装置に対するトルク配分を決定するので、エネルギー効率の低い領域で駆動ユニットが作動するのを回避することができ、列車全体としてのエネルギー効率を向上させることができる。また、車両または列車に要求される加減速性能が損なわれることもない。
また、この際に、出力演算装置は、記憶装置から読み出された前記効率データに基づいて、車両または編成としてエネルギー効率が最大となるようにトルク出力またはトルク配分を決定すると良い。
【0013】
さらに、望ましくは、車両または列車の速度を検出可能な速度検出手段を備え、
前記出力演算装置は、前記速度検出手段からの速度情報に基づき、速度に応じて前記トルク配分を決定するように構成する。
上記した手段によれば、そのときの車両または列車の速度に応じて前記トルク配分を決定するので、列車全体としてのエネルギー効率をより適切に向上させることができる。
【0014】
さらに、望ましくは、1編成の列車を構成する車両ごとに設けられ積載重量を検出可能な荷重検出手段を備え、
前記記憶装置には、前記各車両の空車状態での車両重量データが記憶されており、
前記出力演算装置は、前記荷重検出手段からの積載重量情報と、前記記憶装置から読み出された空車状態の車両重量データとに基づいて、総重量の重い車両の駆動ユニットに対して優先的にトルクを配分するように構成する。
これにより、総重量の重い車両の駆動ユニットに対して優先的にトルクを配分するので、車輪とレールとの間のすべりを減らすことができ、それによってエネルギー効率を向上させることができる。
【0015】
また、望ましくは、前記記憶装置には、列車の編成に関する編成データが記憶されており、
前記出力演算装置は、前記記憶装置から読み出された前記効率データおよび重量データ並びに編成データに基づき、先頭車両からの順序を考慮して、各駆動ユニットへのトルク配分を決定するように構成する。
少ない数の駆動ユニットを作動させる場合、中央から後尾側にかけての車両の駆動ユニットを作動させた方が、車輪とレールとの間のすべりを減らすことができるので、先頭車両からの順序応じて各駆動ユニットへのトルク配分を決定することによって、エネルギー効率を向上させることができる。
【0016】
さらに、望ましくは、外部から運転制御モードを設定可能なモード設定手段を備え、
前記出力演算装置は、前記モード設定手段が、エネルギー効率の高い運転モードに設定されている場合に、前記記憶装置から読み出された駆動ユニットの数、配置に関するデータおよび効率データに基づく作動駆動ユニットの決定と、駆動ユニットごとのトルク出力の算出、を行うように構成する。
これにより、モード設定手段がエネルギー効率の高い省エネ運転モードに設定されている場合に、複数の駆動ユニットに対するトルク配分が行われることとなるので、朝夕の通勤時間帯のように車両荷重が大きく、すべての駆動ユニットを作動させる必要が予め分かっている状況では、省エネ運転モードの設定を解除することで主制御装置の負担を軽減することができる。
【0017】
また、本出願の他の発明は、1つの車両または1編成の列車に設けられた複数の駆動ユニットと、該複数の駆動ユニットのそれぞれに対応して設けられた複数のユニット制御装置と、出力演算手段と記憶装置とを有し前記複数のユニット制御装置に対して制御情報を送信する主制御装置と、車両ごとに設けられ積載重量を検出可能な荷重検出手段と、を備えた鉄道車両の制御方法であって、
前記記憶装置には、前記駆動ユニットの効率に関する効率データおよび各車両の空車状態での車両重量データを記憶しておき、
前記出力演算装置は、
前記荷重検出手段からの積載重量情報と、前記記憶装置から読み出された前記駆動ユニットの数、配置に関するデータおよび効率データ並びに車両重量データとに基づいて、前記複数の駆動ユニットに対するトルク配分を決定し、該決定した配分に応じて駆動ユニットごとのトルク出力を算出し、算出したトルク出力指令を対応する駆動ユニットへ送信するとともに、
前記各駆動ユニットへのトルク出力指令を履歴情報として前記記憶装置に記憶し、前記トルク配分の決定を行う際に、前記記憶装置の履歴情報を参照して、各駆動ユニットの負荷が時間的に平均化されるようにトルク配分を決定するようにしたものである。
【0018】
上記した方法によれば、トルク出力指令を履歴情報として記憶装置に記憶し、トルク配分の決定を行う際に履歴情報を参照して、各駆動ユニットの負荷が時間的に平均化されるようにトルク配分を行うので、一部の駆動ユニットのみが頻繁に作動されてしまうのを回避することができ、駆動システム全体の寿命を長くすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、1車両または1編成の列車に複数の駆動ユニットを備えた鉄道車両において、車両または列車に要求される加減速性能を満足しながら、機器の電力損失を低減しエネルギー効率を充分に高めることができるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る鉄道車両制御システムおよび制御方法が適用される列車の概略構成を示す。
図1に示すように、1編成の列車は、運転台および主制御装置としての列車制御装置20が設置された例えば先頭の制御車両10Aに、モータおよびこれを駆動するVVVF(可変電圧可変周波数)制御方式のインバータなどからなる駆動ユニット31や列車制御装置20からの指令を受けて駆動ユニット31を制御するユニット制御装置32、駆動ユニット31への給電を行う集電装置としてのパンタグラフ33等を有する電動車両10Bや駆動ユニットを持たない従動車両(付随車両)を連結して編成される。なお、パンタグラフ33は複数の電動車両10Bに対して共用する形態で設けられることもある。その場合、パンタグラフ33のない電動車両10Bが存在することとなる。
【0022】
また、パンタグラフ33と駆動ユニット31との間には、VVVFインバータで発生する高調波を遮断するフィルタリアクトル34が設けられている。
各ユニット制御装置32は、列車制御装置20からのトルク指令出力に応じて、駆動ユニット31のインバータを制御して、必要な加速力が得られるようにモータに流す電流、電圧、周波数の制御を行う。なお、いずれかの駆動ユニット31が故障した場合には、故障ユニットを除いた駆動ユニットを対象にして制御を行うようにする。
【0023】
さらに、例えば制御車両10Aには列車の速度を検出する速度センサ35が、また制御車両10Aおよび電動車両10Bには荷重センサ36が設けられているとともに、速度センサ35から検出信号および荷重センサ36からの検出信号が、列車制御装置20に入力されるように構成されている。なお、従動車両にも荷重センサが設けられ、該荷重センサからの検出信号も列車制御装置20に入力される。
また、制御車両10Aの運転台には、トルク指令を与えるノッチと呼ばれる運転操作指令器11および運転制御モードを切り換えるためのモード切換えスイッチ12が設けられ、運転操作指令器11からのノッチ信号および走行方向指令信号とモード切換えスイッチ12からのモード信号とが、列車制御装置20に入力されている。
【0024】
なお、本実施例における運転制御モードは、以下に説明する効率マップを使用して複数の駆動ユニットに対するトルク配分を行う省エネ運転モードと、かかるトルク配分をしないノーマル運転モードである。
列車制御装置20は、運転操作指令器11からのトルク指令(ノッチ指令)および現在の車速に応じて各駆動ユニット31が出力すべきトルクを決定してトルク指令出力を送信し、運転操作指令器11からの加速指令がなくなると、駆動ユニット31の作動を停止させて惰行運転に切り換える制御を行う。
【0025】
図2には、
図1の実施形態の鉄道車両制御システムにおける列車制御装置20の構成例が示されている。
図2に示されているように、列車制御装置20は、各電動車両の駆動ユニット31へ伝えるべき出力トルク(駆動力)を演算によって算出する出力演算手段21、出力演算手段21が必要とする制御情報を集めて出力演算手段21へ渡す車両情報処理手段22、車両に関する情報を格納した記憶装置(データベース)23、出力演算手段21により演算された出力トルクに基づいて各ユニット制御装置32への駆動制御情報(コマンド)を生成し出力する指令出力手段24などから構成されている。
なお、列車制御装置20から各ユニット制御装置32へのトルク指令はユニット毎に異なるので、列車制御装置20はトルク指令にユニットを指定するアドレスコードを付加して出力することとなる。なお、列車制御装置20と各ユニット制御装置32との間をそれぞれ別個の制御線で接続するように構成してもよい。
【0026】
車両情報処理手段22には、速度センサ35から検出信号や各車両の荷重センサ36から検出信号、上記運転操作指令器11からのノッチ信号および走行方向指令信号、モード切換えスイッチ12からの設定信号が入力されている。
また、記憶装置23には、列車の編成に関する情報、1編成の列車を構成する各車両の空車状態での重量データや連結されている電動車両10Bの駆動ユニット31の性能に関するデータ(モータ標準トルク出力、ユニット位置等)を記憶する車両情報データベースDB1と、駆動ユニット31のモータやインバータなど機器の効率に関するデータを記憶する機器効率データベースDB2とが格納されている。
【0027】
そして、車両情報処理手段22は、入力信号から得た情報のうちトルクの算出に必要な情報および車両情報データベースDB1から読み出した情報を出力演算手段21へ渡し、出力演算手段21は車両情報処理手段22から受け取った情報および記憶装置23内の機器効率データベースDB2から読み出した効率に関するデータに基づいて、各電動車両の駆動ユニット31が出力すべきトルク(駆動力)を算出する。
具体的には、モード切換えスイッチ12が省エネ運転モードに設定されていると、出力演算手段21は、ノッチ指令に基づくトルクの算出に当たり、各車両の荷重センサ36から検出信号とデータベース内の各車両重量データとから、現時点での各車両の総重量(空車重量+積載重量)をそれぞれ算出し、列車全体の駆動力を演算し複数の駆動ユニット31に対するトルクの配分を決定する。
【0028】
さらに、この実施例においては、機器効率データベースDB2内に、駆動ユニット31の性能に関するデータとして、
図3に示すような効率に関するマップ形式のデータ(効率マップ)が格納されている。
図3に示すように、効率マップは、引っ張り力(トルク)と列車の速度をパラメータとして駆動ユニットの効率を表したものであり、この効率マップは、使用するモータの種類や制御方式などによって異なるので、予め実測によって効率を測定、あるいは設計段階で計算によって効率を算出して、作成しておくようにする。
【0029】
なお、効率マップは、
図3に示すようなマップをメッシュ状に分割して効率データを付与しておくようにしてもよい。
また、
図3に示すような速度−トルク曲線の上に効率の等高線を表した効率マップの代わりに、速度−トルク曲線の上に速度−効率曲線を記載したようなデータを、記憶装置23(機器効率データベースDB2)に格納しておくようにしてもよい。
「効率」は、効率の支配的な要因となるモータにより代表する方法の他、モータの効率にインバータの効率(スイッチング損失を考慮したもの)を加味したもの、システム全体の総合効率を用いる方法など、効率に関係する機器の寄与度や配設状況を考慮したものであればどのようなものであってもよい。
【0030】
出力演算手段21は、マイクロプロセッサ(CPU)と該CPUが実行する制御プログラムを格納したROM(リードオンリメモリ)やCPUの作業領域を提供するワークRAM(ランダムアクセスメモリ)などから構成することができる。本実施例では、出力演算手段21の上記ROM内に、複数の駆動ユニット31に対するトルク配分を、以下に述べるような手順で決定するサブルーチンを有する制御プログラムが格納されている。
【0031】
(第1実施例)
次に、出力演算手段21によって、駆動ユニット数および各ユニットへの最適なトルク配分を決定する処理の手順の一例を、
図4のフローチャートを用いて説明する。なお、特に限定されるものではないが、このフローチャートの処理は、列車が発車して所定速度(効率運転開始速度)に達した時点から開始され、その速度に達するまでは各駆動ユニットに対して均等にトルクを配分する制御を行なう。また、このフローチャートの処理は、例えばタイマ割込みによって、所定時間毎に実行するように構成することができる。
この処理が開始されると、CPUは先ずモード切換えスイッチ12の状態を読み込んで、省エネ運転モードに設定されているか否か判定する(ステップS1,S2)。ここで、モード切換えスイッチ12の状態がノーマル運転モードに設定されている(ステップS2:No)と判定すると、何もせずに当該処理を終了する。
【0032】
一方、ステップS2で、モード切換えスイッチ12の状態が省エネ運転モードに設定されている(Yes)と判定すると、ステップS3へ進み、運転操作指令器11からのノッチ信号を読み込む。そして、ノッチが入っている(「1」以上である)か否か判定し(ステップS4)、ノッチが入っていない(No)と判定すると、ステップS3へ戻り、ノッチの読込み−判定を繰り返す。また、ノッチが入っている(ステップS4:Yes)と判定すると、ステップS5へ進んで、各車両の荷重センサ36の値を読み込むとともに、データベースDB1から車両重量や駆動ユニット(モータ)の性能等、駆動力の算出に必要な情報を読み込む。
【0033】
続いて、CPUは、ステップS5で読み込んだ情報に基づいて、運転操作指令器11のノッチの位置に対応した列車全体の必要駆動力(トルク)を演算によって算出する(ステップS6)。そして、算出された必要駆動力が、車両に搭載された複数のモータの最大駆動力の合計値よりも大きいか否か判定する(ステップS7)。
ここで、算出された必要駆動力が複数のモータの最大駆動力の合計値よりも大きい(ステップS7:Yes)と判定すると、ステップS10へ移行して、全電動車両のユニット制御装置32に対して出力するモータのトルクの値を最大トルクに設定して、その値を指令出力手段24へ渡し、出力指令コマンドを出力させる。このときの各モータのトルクの値は、各駆動ユニット間で同一である。なお、駆動するモータには、故障したモータは含まれない。
【0034】
一方、ステップS7で、算出された必要駆動力が複数のモータの最大駆動力の合計値よりも小さい(No)と判定すると、ステップS8へ進み、データベースDB2から効率マップを読み込んで、最大効率となるように、作動させる駆動ユニットの数Nを決定する。
次に、決定した駆動ユニットの数Nに応じてトルクの配分を決定する(ステップS9)。具体的には、駆動する車輪のレールに対する粘着力の大きい駆動ユニットを優先して作動させるのが望ましく、車輪の粘着力は車両の総重量(空車状態での重量+積載重量)に比例するので、総重量が重い車両の駆動ユニットを選択する。
【0035】
なお、ここで、上記のような処理で選択される駆動ユニットに偏りが生じると機器寿命との関係で好ましくないので、総重量にあまり差がないような場合には、各駆動ユニットができるだけ均等に選択されるように選択駆動ユニットを決定するのが良い。また、少ない数の駆動ユニットを作動させる場合には、中央から後尾側にかけての車両の駆動ユニットを作動させた方が、車輪とレールとの間のすべりを減らすことができるので、中央から後尾側にかけての車両の駆動ユニットにトルクを配分すると良い。
【0036】
ステップS9でトルクの配分が決定されると、ステップS10へ進んで、選択された電動車両のユニット制御装置32に対して供給するモータのトルクの出力値を算出して、その値を指令出力手段24へ渡し、出力指令コマンドを出力させる。
以上のようなトルクの配分処理を行なって、列車制御装置20から各電動車両のユニット制御装置32に対して出力指令コマンドを送って、駆動ユニットを制御することによって、列車に要求される加速性能を満足しながら、モータを効率の高い領域で動作させることができ、それによって常に全モータを動作させる従来の制御方式に比べて、エネルギー効率を向上させ、エネルギーの省力化を図ることができる。
【0037】
次に、上記ステップS8における駆動ユニットの数Nの決定の仕方の一例を、
図5のフローチャートを用いて説明する。なお、以下に説明する方法は一例であって、これに限定されるものではない。
ここで説明する方法においては、効率マップデータとして、
図3にA,B,Cで示すような速度−トルク曲線の近似式(関数)を複数用意するとともに、近似式ごとに最高効率とその範囲とを示すデータを、上記近似式と共にデータベースDB2に記憶しておく。最高効率とその範囲は、例えば
図3に示すAの速度−トルク曲線にあっては、E3が最高効率で、R3−R5が最高効率の範囲である。また、Bの速度−トルク曲線にあっては、E4が最高効率で、R1−R4が最高効率の範囲、Cの速度−トルク曲線にあっては、E3が最高効率で、R2−R5が最高効率の範囲である。
【0038】
図5の駆動ユニット数の決定処理においては、先ず駆動ユニットの数Nをその列車の最大数Nmaxとおく(ステップS11)。次に、
図4のステップS6で算出した列車の必要駆動力をN(最初はNmax)で割って1ユニット当たりのトルクTuを求める(ステップS12)。そして、算出されたトルクTuがモータの最大トルクを超えているか判定する(ステップS13)。ここで、Tuがモータの最大トルクを超えていない(No)と判定すると、ステップS14へ進み、ステップS12で算出されたトルクTuに対応する近似式を選択する。そして、選択された近似式を用いてデータベースDB2を参照して、その近似式における最高効率と最高効率の範囲を抽出し、結果をRAMに保存する(ステップS15)。
【0039】
その後、駆動ユニットの数Nを「1」だけ減算し、N−1が「0」になったか否か判定する(ステップS16,S17)。ここで、N−1が「0」でない(ステップS17:No)と判定すると、ステップS12へ戻り、S12〜S17の処理を繰り返す。一方、ステップS17で、N−1が「0」である(Yes)と判定すると、ステップS18へ進み、ステップS15でRAMに保存した値を比較して、最高効率の中で最も効率が高くかつ最大効率の範囲が最も広いものを抽出し、そのようになったときのNの値を、求める駆動ユニットの数Nとして決定する。
【0040】
一方、ステップS13で、Tuがモータの最大トルクを超えた(Yes)と判定すると、ステップS14〜S17をスキップしてステップS18へ移行し、ステップS15でRAMに保存した結果の中から、最高効率の中で最も効率が高くかつ最大効率の範囲が最も広いものを選択して、そのようになったときのNの値を、求める駆動ユニットの数Nとして決定する。なお、ステップS12の計算において、N=NmaxでTu>最大トルクとなってステップS18へ移行した場合には、Nmaxを駆動ユニットの数Nとして決定する。
上記のような手順によって、省エネ運転を達成するための駆動ユニット数および最適なトルク配分を得ることができる。なお、
図3においては、効率の等高線を4本にしているが、実現したい精度に応じて、効率のピッチを調節して等高線の数を増減すれば良い。また、データベースDB2に記憶しておく近似式の数も、実現したい精度に応じて決定し用意しておけば良い。
【0041】
(第2実施例)
次に、出力演算手段21によって、駆動ユニット数および各ユニットへの最適なトルク配分を決定する処理の第2の実施例を、
図6のフローチャートを用いて説明する。なお、第2の実施例の処理は、第1の実施例の処理を示す
図4のフローチャートにおけるステップS1〜S6までは同じであるので、
図6ではステップS1〜S5を省略して、ステップS6以降についてのみ示し説明する。また、この実施例では、1編成のすべての駆動ユニットの駆動力の総和は、最大積載量の負荷がかかっている場合に必要な駆動力よりも大きいことを前提としている。従って、
図4のステップS7の判定は不要であるとした。ただし、この実施例においても、
図3と同様な効率マップを使用する。
【0042】
第2の実施例の処理においては、ステップS60にて運転操作指令器11からのノッチ指令に対応する加速度を得るのに必要な編成駆動力(トルク)Ttotalを、車両重量および各車両の荷重に応じて算出した後、算出された編成駆動力Ttotalを1つの駆動ユニットの最大駆動トルクTUmaxで割った値の小数点以下を切り上げることで、編成駆動力Ttotalを得るのに最小限必要なユニット数jを算出する(ステップS61)。
続いて、算出されたユニット数jが「1」であるか否かつまり1つの駆動ユニットだけで1編成の列車を、ノッチ指令に対応する加速度に加速できるか否か判定する(ステップS62)。ここで、ユニット数jが「1」である(ステップS62:Yes)と判定すると、ステップS63へ進み、いずれか1つの駆動ユニットに対して、ステップS61で算出されたトルクTtotalを出力するように駆動指令を出す。
【0043】
一方、ステップS62でユニット数jが「1」でない(No)と判定すると、ステップS64へ進み、ステップS61で算出されたユニット数jが総ユニット数nであるか否か判定する。そして、ユニット数jが総ユニット数nと等しい(j=n)と判定すると、編成駆動力Ttotalを総ユニット数nで割ることで、各駆動ユニットに出力すべき平均駆動力Tmeanを算出する(ステップS65)。
次に、平均駆動力Tmeanに最も近い速度−トルク曲線の近似式を選択し、
図3のような効率マップデータを参照して目標とする速度における駆動ユニットの効率を読み取る(ステップS66)。そして、読み取った効率がその速度における最大効率であるか否か判定する(ステップS67)。ここで、効率がその速度における最大効率である(Yes)と判定すると、ステップS68へ進み、全ての駆動ユニットに対してステップS65で算出された平均トルクTmeanで動作するように駆動指令を出力する。
【0044】
また、ステップS66で読み取った効率がその速度における最大効率でない(ステップS67:No)と判定すると、ステップS69へ移行して、各駆動ユニットの出力トルクを段階的に増減させてそのときの効率の合計値を算出する効率合計値算出処理を実行する。この効率合計値算出処理(ステップS69)の詳細については、後に
図7を用いて説明する。
上記効率合計値算出処理(ステップS69)が終了すると、ステップS70へ進み、効率合計値算出処理(ステップS69)で算出された効率合計値の中で最大効率となるトルク配分パターンを選択する。そして、選択されたトルク配分パターンに基づいて、駆動ユニットに対するトルク配分を決定し、配分されたトルクで動作するように駆動指令を出力する(ステップS71)。
【0045】
一方、上記ステップS64で、ユニット数jが総ユニット数nと等しくない(No)と判定すると、ステップS72へ移行して、jがn−1と等しいか否か判定する。そして、jがn−1と等しい(j=n−1)と判定すると、符号Aに従って
図8の処理(S81〜S87)へ移行する。なお、
図8のS81〜S87の処理は
図6のステップS65〜S71と同様であり、このうちS85の効率合計値算出処理は
図9に示されているように、以下に説明する
図7の効率合計値算出処理と同様の処理である。
また、上記ステップS72で、ユニット数jがn−1と等しくない(No)と判定すると、ステップS73へ移行して、jがn−2と等しいか否か判定する。そして、jがn−2と等しい(j=n−2)と判定すると、符号Bに従って
図10の処理(S91〜S97)へ移行する。なお、
図10のS91〜S97の処理は
図6のステップS65〜S71と同様であり、このうちステップS95の効率合計値算出処理は、図示しないが、以下に説明する
図7や
図9の効率合計値算出処理と同様の処理である。
【0046】
次に、
図6のステップS69における効率合計値算出処理の詳細について、
図7を用いて説明する。
図7の効率合計値算出処理においては、先ず、ステップS65で算出された平均トルクTmeanに(1+a),(1+2a)……を掛けることで、j個の駆動ユニットの内1つのユニットに割り当てるトルクT1を所定の刻みaで増加させるとともに、残りのユニットには均等にトルクを分配した場合の効率の合計Σ11(+)=ηT1(+)+ηTj×(j-1);Σ12(+)=ηT1’(+)+ηTj’×(j-1)……を、それぞれ算出し、列車制御装置20内のRAMに記憶する(ステップS111,S112,S113;S121,S122,S123;S131,S132,S133……)。
【0047】
なお、図示しないが、同様にして、平均トルクTmeanに(1−a),(1−2a)……を掛けることで、T1を所定の刻みaで減少させた場合の効率の合計Σ11(-)=ηT1(-)+ηTj×(j-1);Σ12(-)=ηT1’(-)+ηTj’×(j-1)……を、それぞれ算出し記憶する。
ここで、上記「所定の刻みa」は、機器の能力の余裕や効率の分布状況に応じて任意に設定することができるものであり、例えば0.1とすることが考えられる。なお、所定の刻みaでの増加は、1つのユニットに割り当てるトルクT1がユニットの最大駆動トルクTUmaxに達するまで行い、所定の刻みaでの減少は、トルクT1が「0」になるまで行う。
【0048】
続いて、j個の駆動ユニットの内2つのユニットのトルクT1,T2を所定の刻みaで増加させるとともに、残りのユニットには均等にトルクを分配した場合の効率の合計Σ21(+)=ηT1(+)+ηT2(+)+ηTj×(j-2);Σ22(+)=ηT1’(+)+ηT2’(+)+ηTj’×(j-2)……をそれぞれ算出し、RAMに記憶する(ステップS211,S212,S213;S221,S222,S223;S231,S232,S233……)。同様にして、T1,T2を所定の刻みaで減少させた場合の効率の合計Σ21(-),Σ22(-)……をそれぞれ算出し記憶する。
【0049】
その後、さらに、3個、4個……のようにj−1個まで、所定の刻みaで増減させるとともに、残りのユニットには均等にトルクを分配した場合の効率の合計Σ31(+),Σ32(+)……;Σ41(+),Σ42(+)……と、Σ31(-),Σ32(-)……;Σ41(-),Σ42(-)……をそれぞれ算出し記憶する。
上記のようにして算出され、メモリ(RAM)に記憶された効率の合計値Σ11(+),Σ12(+)……;Σ21(+),Σ22(+),……;Σ31(+),Σ32(+)……;Σ41(+),Σ42(+)……およびΣ11(-),Σ12(-)……;Σ21(-),Σ22(-)……;Σ31(-),Σ32(-)……;Σ41(-),Σ42(-)……は、
図6のステップS70での選択処理の際に参照されることとなる。
【0050】
図8のステップS81〜S87の処理は
図6のステップS65〜S71と同様であり、このうちS85の詳細を示す
図9の効率合計値算出処理は、
図7の効率合計値算出処理と同様の処理であるので、詳しい説明は省略する。
また、
図10のステップS91〜S97の処理も
図6のステップS65〜S71と同様であり、このうちS95の効率合計値算出処理は、
図7や
図9の効率合計値算出処理と同様の処理であるので、詳しい説明は省略する。
なお、
図8のステップS86の選択では、
図7の結果を含めて効率の合計値が最大になるものを選択し、
図10のステップS96の選択では、
図7および
図9の結果を含めて効率の合計値が最大になるものを選択するようにする。
上記のような手順による処理を実行することによって、本第2実施例を適用した場合にも、省エネ運転を達成するための駆動ユニット数および各ユニットへの最適なトルク配分を得ることができる。
【0051】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態においては、列車を加速させる際の駆動力の配分の仕方について説明したが、本発明は、モータによる列車の回生制動を行う際の制動力の配分にも適用することができる。そして、制動の際にも、重量の大きい車両のモータ(駆動ユニット)に対して制動トルクを優先的に配分し、車両間の重量にそれほど差がなければ、中央から後尾側にかけての車両のモータ(駆動ユニット)に対して制動トルクを優先的に配分するように決定するのが好ましい。
【0052】
また、前記実施形態においては、電動車両10Bにモータとインバータを備えた駆動ユニット31およびユニット制御装置32を設けたものを示したが、モータは各車両に設けるとともに、インバータを備えた駆動ユニットとユニット制御装置は1つの車両に集中して設置するようにしてもよい。
さらに、前記実施形態においては、モード切換えスイッチ12を設けて、モード切換えスイッチ12が省エネモードに設定されている場合は、上述したようなトルク配分の設定を行なうと説明したが、故障したユニットが多い場合とか、積載重量が大きいためトルクを調整して配分する余裕がなく常時最大トルクで全駆動ユニットを駆動させるような状況では、列車制御装置20が自動的に省エネモードを解除して通常モードで制御するように構成してもよい。
【0053】
さらに、
図4のフローチャートには示されていないが、出力演算手段21が荷重センサ36からの積載重量情報と、記憶装置23から読み出された効率データおよび車両重量データ等に基づいて、複数の駆動ユニットに対するトルク配分を決定し、該決定した配分に応じて駆動ユニットごとのトルク出力を算出し、算出したトルク出力指令を対応する駆動ユニットへ送信した場合に、送信したトルク出力指令を履歴情報として、記憶装置23に記憶しておいて、トルク配分の決定を行う際に、記憶装置23の履歴情報を参照して、各駆動ユニットの負荷が時間的に平均化されるようにトルク配分を決定するように構成しても良い。
以上、本発明を鉄道車両に適用したものを説明したが、本発明は、複数の駆動ユニットを有する自動車その他の車両一般に広く利用することができる。