(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について、詳細に説明するが、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下に内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施することができる。
【0012】
なお、本明細書における「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリロイル」とは「アクリロイル」及びそれに対応する「メタクリロイル」を意味する。
【0013】
〔積層体の製造方法〕
本実施形態の積層体の製造方法は、
基材の少なくとも片面に、(A)成分:数平均粒子径が1nm〜400nmの金属酸化物(以下、(A)成分、(A)と記載する場合がある。)、(B)成分:数平均粒子径が10nm〜800nmの重合体エマルジョン粒子(以下、(B)成分、(B)と記載する場合がある。)、及び少なくとも一種の溶媒を含むコーティング組成物を塗布し、コーティング組成物層を形成する第1の工程と、
5〜40℃の環境下で前記コーティング組成物層を乾燥し、当該コーティング組成物層中の固形分量を2〜40質量%とする第2の工程と、
前記溶媒のうち、沸点が最も低い溶媒の沸点以上の温度環境下で前記コーティング組成物層を乾燥する第3の工程と、
を、有する。
【0014】
(第1の工程)
本実施形態における第1の工程においては、基材の少なくとも片面に、下記(A)成分と下記(B)成分と、少なくとも一種の溶媒とを含むコーティング組成物を塗布し、基材上にコーティング組成物層を形成する。
(A)成分:数平均粒子径が1nm〜400nmの金属酸化物
(B)成分:数平均粒子径が10nm〜800nmの重合体エマルジョン粒子
【0015】
<塗布方法>
第1の工程において、コーティング組成物を基材上に塗布する方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、噴霧法、フローコーティング法、ロールコート法、バーコート法、刷毛塗り法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、スクリーン印刷法、キャスティング法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等が挙げられる。
【0016】
<基材>
本実施形態で用いる基材は、特に限定されるものではないが、例えば、板状、シート状、フィルム状のものが挙げられる。
本実施形態においても用いる基材は、表面が平滑なものであっても、表面に所定の高低差の凹凸を有していているものであってもよい。
例えば、後述するように、基材の光線透過率を向上させる観点から基材の表面に0.1〜100μmの高低差の凹凸を形成する場合があるが、このような基材も本実施形態の積層体の製造方法に用いる基材として好適である。
基材の材料は、特に限定されないが、例えば、ガラス、樹脂が挙げられる。
特に、透明性及び耐候性の観点からガラスが好ましい。
ガラスとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、一般的なガラスの他、強化ガラス、合わせガラス、複層ガラス、化学強化ガラス等が挙げられ、これらは目的に応じて用いることができる。
また、樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、エチレン−フルオロエチレン共重合体等が挙げられる。
これらの樹脂には耐候性を付与する目的で紫外線吸収剤等の耐候剤等をさらに練り込んでもよい。
基材としては、厚み5mm以下、より好ましくは2mm以下の化学強化ガラスが軽量化の観点から好ましい。
【0017】
基材の可視光に対する光線透過率は、60%〜99%が好ましく、より好ましくは80%〜99%であり、さらに好ましくは89%〜99%である。光線透過率が前記範囲内であることにより、透過性により優れる傾向にある。
基材のヘイズ率は20%〜80%が好ましく、より好ましくは30%〜70%であり、さらに好ましくは40%〜60%である。ヘイズ率が前記範囲内であることにより、透過性により優れ、眩しさを軽減する傾向にある。
また、基材の光線透過率を向上させる目的で基材にテクスチャーを形成していてもよい。
ここで「テクスチャー」とは、基材の片面又は両面に規則的に形成される凹凸のことをいう。凹凸の高低差は0.1〜100μmが好ましく、より好ましくは1〜60μmであり、さらに好ましくは5〜40μmである。表面粗さ(Ra)としては、0.1〜10μmが好ましく、より好ましくは0.3〜5μm、さらに好ましくは0.5〜2μmである。
凹凸の高低差が上記範囲内であることにより、透過性により優れる傾向にある。
【0018】
<コーティング組成物>
本実施形態で用いるコーティング組成物は、(A)成分:数平均粒子径が1nm〜400nmの金属酸化物と、(B)成分:数平均粒子径が10nm〜800nmの重合体エマルジョン粒子とを含む。
コーティング組成物の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、(A)成分及び(B)成分を、水や親水性有機溶剤等の溶媒に、溶解又は分散させて、これらを混合し、かつ必要に応じて所定の溶媒により希釈することにより調製する方法が挙げられる。
(A)成分及び(B)成分が、水や親水性有機溶剤等の溶媒に、溶解又は分散されている状態の温度については、特に限定されるものではないが、例えば、10℃〜60℃が好ましく、20〜40℃がより好ましく、25〜30℃がさらに好ましい。上記温度とすることにより、より分散性が均一で品質に優れる傾向にある。
【0019】
コーティング組成物を基材に塗布する(第1の工程)におけるコーティング組成物の固形分濃度は、0.2〜10質量%であることが好ましく、1〜6質量%であることがより好ましく、1.5〜4質量%であることがさらに好ましい。
【0020】
また、(第1の工程)におけるコーティング組成物の20℃における粘度は、好ましくは1〜1000mPa・sであり、より好ましくは2〜100mPa・sであり、さらに好ましくは4〜20mPa・sである。コーティング組成物の粘度が、1mPa・s以上であることにより、良好な塗装性が得られる傾向にある。また、コーティング組成物の粘度が、1000mPa・s以下であることにより、取扱い性により優れる傾向にある。
【0021】
後述するように、(A)成分は、数平均粒子径が1nm〜400nmの金属酸化物である。
(A)成分は、(B)成分と相互作用することにより、(B)成分の硬化剤として作用すると考えられる。当該相互作用としては、例えば、(A)成分が一般に有しうる水酸基と、(B)成分が有しうる水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基及びエーテル基のいずれかと、の水素結合、又は、(A)成分が一般に有しうる水酸基と、(B)成分を構成しうる後述の(b1)成分の重合生成物との縮合(化学結合)等が考えられる。
また、コーティング組成物層中では、(A)成分と、(B)成分とが相互作用をし、(A)成分が(B)成分の粒子間に連続相を形成して存在することが好ましい。
これにより、得られる積層体の光線透過率、耐候性、防汚性がより向上する傾向にある。
連続相の形成は、(A)成分の配合量を調整することにより促進することができる。
なお、連続相の形成は、断面の形態観察により確認することができる。
【0022】
[(A)成分:金属酸化物]
本実施形態で用いるコーティング組成物は、(A)成分:金属酸化物を含有する。
(A)成分の数平均粒子径は、1nm〜400nmであり、好ましくは1nm〜100nmであり、より好ましくは3nm〜80nmであり、さらに好ましくは5nm〜50nmである。
(A)成分の数平均粒子径が1nm以上であることにより、(A)成分の溶媒分散液及びコーティング組成物の貯蔵安定性がより良好となる。
また、数平均粒子径が400nm以下であることにより、得られる積層体の透明性、光線透過率等の光学特性がより向上する。
特に、数平均粒子径が100nm以下であることにより、得られる積層体の光線透過率がさらに向上する傾向にある。
ここで「数平均粒子径」とは、金属酸化物の1次粒子と2次粒子との混合物の数平均粒子径であってもよく、1次粒子及び2次粒子のいずれか一方のみの数平均粒子径であってもよい。
なお、本実施形態における数平均粒子径は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0023】
(A)成分:金属酸化物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、二酸化珪素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化鉛、酸化鉄、珪酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ニオブ及び酸化セリウムが挙げられる。
このような金属酸化物を用いることにより、(A)成分と(B)成分とがより相互作用しやすい傾向にある。この中でも、表面水酸基の多い二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、及びそれらの複合酸化物が好ましい。これら金属酸化物は、(B)成分との相互作用が特に強い傾向にある。
また、このような金属酸化物は表面水酸基が多く、連続相を形成することでコーティング組成物層の表面の水酸基密度が高くなり、コーティング組成物層の親水性が高くなるので、この観点からも上記金属酸化物がより好ましい。
前記(A)成分の金属酸化物は、1種のみを単独で用いても又は2種以上を併用してもよい。
上述したように、コーティング組成物層の親水性が高くなることにより、付着した汚れが雨水などと一緒に流れ落ちる防汚効果が良好になるため好ましい。
【0024】
(A)成分に用いられる金属酸化物としては、光照射により、光触媒活性及び/又は親水性を発現する化合物(以下、単に「光触媒」ともいう。)を用いることも好ましい。
このような「光触媒」である金属酸化物を用いることにより、本実施形態においては、汚染有機物質の分解活性や耐汚染性により優れる積層体が得られる傾向にある。
なお、本明細書において、「親水性」とは、測定対象物表面に対する水(23℃)の接触角が、好ましくは60゜以下であり、より好ましくは30゜以下であり、さらに好ましくは20゜以下であることを意味する。
【0025】
上記光触媒としては、以下に限定されるものではないが、例えば、TiO
2、ZnO、SrTiO
3、BaTiO
3、BaTiO
4、BaTi
4O
9、K
2NbO
3、Nb
2O
5、Fe
2O
3、Ta
2O
5、K
3Ta
3Si
2O
3、WO
3、SnO
2、Bi
2O
3、BiVO
4、NiO、Cu
2O、RuO
2、CeO
2等の酸化物;Ti、Nb、Ta、及びVからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を有する層状酸化物(例えば特開昭62−74452号公報、特開平2−172535号公報、特開平7−24329号公報、特開平8−89799号公報、特開平8−89800号公報、特開平8−89804号公報、特開平8−198061号公報、特開平9−248465号公報、特開平10−99694号公報、特開平10−244165号公報等参照。)が挙げられる。
これらの光触媒の中でもTiO
2(酸化チタン)は無害であり、化学的安定性にも優れるため好ましい。酸化チタンとしては、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型のいずれも使用できる。
【0026】
また、(A)成分に用いられる金属酸化物としては、導電性を有する金属酸化物を用いることも好ましい。このような金属酸化物を用いることにより、本実施形態においては、帯電防止性能により優れる積層体が得られる傾向にある。
【0027】
このような導電性を有する金属酸化物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、錫をドープした酸化インジウム(ITO)、アンチモンをドープした酸化錫(ATO)、酸化スズ、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0028】
(第1の工程)で用いるコーティング組成物の調製の際の、(A)成分の形態としては、以下に限定されるものではないが、例えば、粉体、分散液、ゾルが挙げられる。ここでいう「分散液」、及び「ゾル」とは、(A)成分が水や親水性有機溶剤等の溶媒中に、好ましくは0.01〜80質量%、より好ましくは0.1〜50質量%の濃度で、一次粒子及び/又は二次粒子として分散された状態を意味する。
【0029】
上記親水性有機溶剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール(197.3℃)、ブチルセロソルブ(171℃)、n−プロパノール(97℃)、イソプロパノール(82.4℃)、n−ブタノール(117℃)、エタノール(78℃)、メタノール(64.7℃)等のアルコール類;アセトン(56.5℃)、メチルエチルケトン(79.5℃)、メチルイソブチルケトン(116.2℃)等のケトン類;テトラヒドロフラン(66℃)、ジオキサン(101.1℃)等のエーテル類;ジメチルアセトアミド(165℃)、ジメチルホルムアミド(153℃)等のアミド類;ジメチルスルホキシド(189℃)及びニトロベンゼン(211℃)が挙げられる。溶媒の沸点は1気圧における測定値を示す。
上述した親水性有機溶剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
本実施形態で使用できる(A)成分の金属酸化物としては、取扱い性の観点からコロイダルシリカを含むことが好ましい。このコロイダルシリカは、ゾル−ゲル法で調製して使用することもでき、市販品を利用することもできる。コロイダルシリカをゾル−ゲル法で調製する場合、Werner Stober etal;J.Colloid and Interface Sci.,26,62−69(1968)、Rickey D.Badley et al;Lang muir 6,792−801(1990)、色材協会誌,61[9]488−493(1988)等に記載の方法を参照して調製することができる。コロイダルシリカは、二酸化ケイ素を基本単位とするシリカの水又は親水性有機溶剤の分散体である。コロイダルシリカは、水性分散液(分散体)の状態で、酸性及び塩基性のいずれであっても用いることができ、共に混合する(B)成分の水性分散体の安定領域に応じて、そのpHを適宜選択することができる。
【0031】
前記水の分散体である酸性のコロイダルシリカとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、市販品である日産化学工業(株)製のスノーテックス(商標)−O、スノーテックス−OS、スノーテックス−OL、スノーテックス−OXS、スノーテックス−OUP,旭電化工業(株)製のアデライト(商標)AT−20Q、クラリアントジャパン(株)製のクレボゾール(商標)20H12、クレボゾール30CAL25等が挙げられる。
【0032】
前記水の分散体である塩基性のコロイダルシリカとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン又はアミンの添加で安定化したシリカが挙げられ、より具体的には、市販品として日産化学工業(株)製のスノーテックス−20、スノーテックス−30、スノーテックス−C、スノーテックス−C30、スノーテックス−CM40、スノーテックス−N、スノーテックス−N30、スノーテックス−K、スノーテックス−XL、スノーテックス−YL、スノーテックス−ZL、スノーテックスPS−M、スノーテックスPS−L、スノーテックス−UP等;旭電化工業(株)製のアデライトAT−20、アデライトAT−30、アデライトAT−20N、アデライトAT−30N、アデライトAT−20A、アデライトAT−30A、アデライトAT−40、アデライトAT−50等;クラリアントジャパン(株)製のクレボゾール30R9、クレボゾール30R50、クレボゾール50R50等;デュポン社製のルドックス(商標)HS−40、ルドックスHS−30、ルドックスLS、ルドックスSM−30等が挙げられる。
【0033】
また、親水性有機溶剤を分散媒体とするコロイダルシリカの市販品としては、以下に限定されるものではないが、例えば、日産化学工業(株)製のMA−ST−M(数平均粒子径が20〜25nmのメタノール分散タイプ)、IPA−ST(数平均粒子径が10〜15nmのイソプロピルアルコール分散タイプ)、EG−ST(数平均粒子径が10〜15nmのエチレングリコール分散タイプ)、EG−ST−ZL(数平均粒子径が70〜100nmのエチレングリコール分散タイプ)、NPC−ST(数平均粒子径が10〜15nmのエチレングリコールモノプロピルエーテール分散タイプ)が挙げられる。
【0034】
上述したコロイダルシリカは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(A)成分の金属酸化物がコロイダルシリカを主成分として含む場合、少量成分として、アルミナ、アルミン酸ナトリウム等を含んでもよい。
また、コロイダルシリカには、安定剤として無機塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア等)や有機塩基(テトラメチルアンモニウム等)が共存してもよい。
【0035】
[(B)成分:重合体エマルジョン粒子]
本実施形態で用いるコーティング組成物は、(B)成分:重合体エマルジョン粒子を含有する。
(B)成分は、数平均粒子径が10nm〜800nmの重合体エマルジョン粒子である。
このような(B)成分と、前記(A)成分とを含むコーティング組成物を用いることにより、得られる積層体の光線透過率、防汚染性がより良好となる。
【0036】
(B)成分の数平均粒子径は10nm〜800nmであり、10nm〜100nmが好ましく、20nm〜80nmがより好ましい。
数平均粒子径が10nm以上の(B)重合体エマルジョン粒子を用いることにより、生産性がより向上する傾向にある。また、数平均粒子径が800nm以下であることにより、得られる積層体の光線透過率が向上する傾向にある。
【0037】
(B)成分のガラス転移温度(Tg)は、均一塗膜形成の観点から−20℃〜100℃が好ましく、25℃〜100℃であることがより好ましく、80℃〜90℃であることがさらに好ましい。ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定装置(DSC)により測定することができる。
(B)成分のガラス転移温度(Tg)を上記範囲とすることにより、乾燥温度を急激に変化させた場合であってもクラックなどのない均一な塗膜を形成することができる。
【0038】
(B)成分は、特に限定されないが、好ましくは、(b1)成分:加水分解性珪素化合物、(b2)成分:水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基及びエーテル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を含有するビニル単量体、(b3)成分:乳化剤、並びに(b4)成分:水、を含む重合原液中で、(b1)成分及び(b2)成分を重合して得られる重合体エマルジョン粒子である。
(b1)成分と(b2)成分とは、別個に重合しても共重合してもよい。
このようにして得られる(B)成分としては、加水分解性珪素化合物(b1)中の水酸基と、(b2)成分に由来するビニル単量体の重合体とが、水素結合等により複合化されたものを用いることが好適である。
【0039】
[(b1)成分:加水分解性珪素化合物]
(b1)成分としては、以下に限定されるものではないが、例えば、下記式(1)で表される化合物やその縮合生成物、シランカップリング剤が挙げられる。
SiW
xR
y ・・・(1)
(式(1)中、Wは、炭素数1〜20のアルコキシ基、水酸基、炭素数1〜20のアセトキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のオキシム基、フェノキシ基、アミノキシ基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を示す。
Rは、直鎖状又は分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、及び、置換されていないか又は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換されている炭素数6〜20のアリール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の炭化水素基を示す。
xは1以上4以下の整数であり、yは0以上3以下の整数である。
また、x+y=4である。
Wが複数の場合、あるいはRが複数の場合、それぞれのW又はRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0040】
上記式(1)で表される化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘプチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリ−n−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ペンチルジメトキシシラン、ジ−n−ペンチルジエトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジメトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジエトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジエトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等のジアルコキシシラン類;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のモノアルコキシシラン類が挙げられる。
これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
また、(b1)成分:加水分解性珪素化合物としては、フェニル基を有する珪素アルコキシド(例えばフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等)を用いることができる。(b1)成分として、フェニル基を有する珪素アルコキシドを用いることにより、水及び乳化剤の存在下における重合安定性が良好となる傾向にある。
【0042】
なお、(b1)成分として、前記式(1)で表される化合物の縮合生成物を用いる場合、当該縮合生成物のポリスチレン換算重量平均分子量(GPC法による)は、好ましくは200〜5000、より好ましくは300〜2000である。重量平均分子量が上記範囲内であることにより、取扱い性により優れる傾向にある。
【0043】
前記(b1)成分であるシランカップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ビニル重合性基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、チオール基、イソシアネート基等の有機物と反応性を有する官能基が分子内に存在するシラン誘導体が挙げられる。
特に、エポキシ基、イソシアネート基を有している場合には、コーティング組成物層の強度の向上、基材との密着性向上の観点から好ましい。
【0044】
(b1)成分:加水分解性珪素化合物は、(b1−1)成分:ビニル重合性基を有する加水分解性珪素化合物を含んでもよい。前記(b1−1)成分を用いることにより、本実施形態により得られる積層体の長期防汚染性がより良好となる傾向にある。
【0045】
前記(b1−1)成分としては、以下に限定されるものではないが、例えば、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリn−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、2−トリメトキシシリルエチルビニルエーテル等のビニル重合性基を有するシランカップリング剤が挙げられる。
【0046】
前記シランカップリング剤、及び(b1−1)成分は、後述する(b2)成分との共重合又は連鎖移動反応により化学結合を生成し得る。このため、(b1−1)ビニル重合性基を有する加水分解性珪素化合物を上述した(b1)成分と混合若しくは複合化させて用いた場合、(b1)成分の重合生成物と後述する(b2)成分の重合生成物とを化学結合により複合化し得る。
【0047】
前記(b1−1)成分における「ビニル重合性基」としては、特に限定されないが、例えば、ビニル基、アリル基が挙げられる。前記「ビニル重合性基」の中でも3−(メタ)アクリルオキシプロピル基が好ましい。このようなビニル重合性基を有する(b1−1)成分を用いることにより、(b1)成分の重合生成物と、後述する(b2)成分の重合生成物とが化学結合により複合化しやすい傾向にある。
【0048】
[(b2)成分:所定の官能基を含有するビニル単量体]
(b2)成分は、水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、エポキシ基及びエーテル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を含有するビニル単量体である。
【0049】
前記水酸基含有ビニル単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート若しくは4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル若しくは4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等の水酸基含有ビニルエーテル類;2−ヒドロキシエチルアリルエーテル等の水酸基含有アリルエーテル類;ポリエチレングリコール等のポリエーテルポリオールと、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸とから得られるポリオキシアルキレングリコールのモノエステル類;上述の各種の水酸基含有ビニル単量体類とε−カプロラクトン等のラクトン類との付加物;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有不飽和単量体と酢酸等の酸類との付加物;(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸類と「カーデュラ E」(オランダ国シェル社製の商品名)に代表されるα−オレフィンのエポキサイド以外の種々のモノエポキシ化合物との付加物が挙げられる。
【0050】
前記カルボキシル基含有ビニル単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸又はフマル酸等の不飽和カルボン酸類;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノ−n−ブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノ−n−ブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノ−n−ブチルのような不飽和ジカルボン酸類と、飽和1価アルコール類とのモノエステル類(ハーフエステル類);アジピン酸モノビニル若しくはコハク酸モノビニル等の飽和ジカルボン酸のモノビニルエステル類;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水フタル酸若しくは無水トリメリット酸等の飽和ポリカルボン酸の無水物類と上述の各種の水酸基含有ビニル系単量体類との付加反応生成物;上述の各種のカルボキシル基含有単量体類とラクトン類とを付加反応して得られる単量体類が挙げられる。
【0051】
前記アミド基含有ビニル単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、N−アルキル又はN−アルキレン置換(メタ)アクリルアミドが挙げられる。より具体的には、例えば、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−メチル−N−エチルアクリルアミド、N−メチル−N−エチルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−アクリロイルピロリジン、N−メタクリロイルピロリジン、N−アクリロイルピペリジン、N−メタクリロイルピペリジン、N−アクリロイルヘキサヒドロアゼピン、N−アクリロイルモルホリン、N−メタクリロイルモルホリン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−メチレンビスメタクリルアミド、N−ビニルアセトアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドが挙げられる。
【0052】
前記アミノ基含有ビニル単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジ−n−プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、3−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、4−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート若しくはN−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エチルモルホリン等の3級アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル類;ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾールN−ビニルキノリン等の3級アミノ基含有芳香族ビニル系単量体類;N−(2−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ジ−n−プロピルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、N−(4−ジメチルアミノ)ブチル(メタ)アクリルアミド若しくはN−[2−(メタ)アクリルアミド]エチルモルホリン等の3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド類;N−(2−ジメチルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N−(2−ジエチルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N−(2−ジ−n−プロピルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N−(3−ジメチルアミノ)プロピルクロトン酸アミド又はN−(4−ジメチルアミノ)ブチルクロトン酸アミド等の3級アミノ基含有クロトン酸アミド類;2−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、2−ジエチルアミノエチルビニルエーテル、3−ジメチルアミノプロピルビニルエーテル若しくは4−ジメチルアミノブチルビニルエーテル等の3級アミノ基含有ビニルエーテル類が挙げられる。
【0053】
前記エポキシ基含有ビニル単量体としては、例えば、グリシジル基含有ビニル単量体等が挙げられる。当該グリシジル基含有ビニル単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルジメチルグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0054】
前記エーテル基含有ビニル単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体等のポリエーテル鎖を側鎖に有するビニルエーテル類、アリルエーテル類又は(メタ)アクリル酸エステル類のビニル単量体類が挙げられる。より具体的には、ブレンマーPE−90、PE−200、PE−350、PME−100、PME−200、PME−400、AE−350(以上、日本油脂(株)製商品名)、MA−30、MA−50、MA−100、MA−150、RA−1120、RA−2614、RMA−564、RMA−568、RMA−1114、MPG130−MA(以上、日本乳化剤(株)製商品名)が挙げられる。ここで、ポリオキシエチレン鎖のオキシエチレン単位の数は、塗膜の柔軟性の観点から2以上であることが好ましく、耐ブロッキング性の観点から30以下であることが好ましい。
【0055】
(b2)成分:所定の官能基を含有するビニル単量体と、(B)成分:重合体エマルジョン粒子との比((b2)/(B))(質量比)は、好ましくは0.05/1〜2/1であり、より好ましくは0.2/1〜1.5/1であり、さらに好ましくは0.7/1〜1.1/1である。質量比が上記範囲内であることにより、重合安定性により優れる傾向にある。
【0056】
(b2)成分:所定の官能基を含有するビニル単量体と、上述した(A)成分:金属酸化物との比((b2)/(A))(質量比)は、好ましくは0.05/1〜1/1であり、より好ましくは0.1/1〜0.8/1であり、さらに好ましくは0.2/1〜0.5/1である。質量比が上記範囲内であることにより、上述した(A)成分と(B)成分との水素結合性や配合安定性により優れる傾向にある。
【0057】
前記重合体エマルジョン粒子(B)の重合の際、加水分解性珪素化合物(b1)の配合量は、重合安定性の観点から、重合体エマルジョン粒子(B)100質量部に対して好ましくは、(b1)/(B)=0.01/100〜200/100であり、より好ましくは0.1/100〜70/100であり、さらに好ましくは1/100〜20/100である。
(b1)に対する(b2)の質量比(b2)/(b1)は、水素結合の観点から、0.1/100〜500/100であることが好ましく、より好ましくは5/100〜200/100である。
【0058】
(B)成分を得るための重合方法としては、乳化剤がミセルを形成するのに十分な量の水の存在下に、上述した(b1)成分と(b2)成分を重合する、いわゆる乳化重合が適している。(b1)成分と(b2)成分とは、別個に重合しても共重合してもよい。
乳化重合の方法としては、例えば、(b1)成分及び(b2)成分、さらには必要に応じて(b3)成分:乳化剤を、そのまま又は乳化した状態で、一括若しくは分割して又は連続的に、反応容器中に滴下し、重合触媒の存在下、大気圧から必要により10MPaまでの圧力下で、約30〜150℃の反応温度で重合させる方法が挙げられる。ただし、必要に応じて、これ以上の圧力で、又はこれ以下の温度条件で重合してもよい。
【0059】
さらに、乳化重合を行うに際して、得られる(B)成分の数平均粒子径を、10nm〜800nmの範囲に成長させ、かつ制御する観点から、シード重合法を用いることが好ましい。
シード重合法とは、予め水相中にエマルジョン粒子(シード粒子)を存在させて重合させる方法である。
シード重合法を行う際の重合系中のpHとしては、好ましくは1.0〜10.0であり、より好ましくは3.0〜6.0である。そのpHは、リン酸二ナトリウム、ボラックス、炭酸水素ナトリウム、アンモニア等のpH緩衝剤を用いて調節することが可能である。
【0060】
(A)成分と(B)成分との比((A)/(B))(質量比)は、好ましくは100/100〜1000/100であり、より好ましくは120/100〜500/100であり、さらに好ましくは120/100〜250/100である。
(A)成分及び(B)成分の質量比が上記範囲内であることにより、光線透過率、防汚染性により優れた積層体を製造できる傾向にある。また、優れた防汚染性がより長期に亘り持続する傾向にある。
【0061】
[溶媒]
本実施形態に用いるコーティング組成物には、溶媒が含まれている。
コーティング組成物中の溶媒としては、上述した(A)成分を水や親水性有機溶剤中に分散させた状態で用いる際の当該分散用の溶媒の他、コーティング組成物を調製する際に用いる希釈溶媒が挙げられる。
【0062】
本実施形態で用いるコーティング組成物には、上述した(A)成分及び(B)成分、溶媒に加えて、その用途及び使用方法等に応じて、通常、塗料や成型用樹脂に添加配合される添加剤成分を加えることができる。
前記添加剤成分としては、以下に限定されるものではないが、例えば、光安定剤、紫外線吸収剤、増粘剤、レベリング剤、チクソ化剤、消泡剤、凍結安定剤、艶消し剤、架橋反応触媒、顔料、硬化触媒、架橋剤、充填剤、皮張り防止剤、分散剤、湿潤剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レオロジーコントロール剤、成膜助剤、防錆剤、染料、可塑剤、潤滑剤、還元剤、防腐剤、防黴剤、消臭剤、黄変防止剤、静電防止剤又は帯電調整剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
[(C)成分]
本実施形態で用いるコーティング組成物は、(C)加水分解性珪素化合物をさらに含んでもよい。(C)成分を含むことにより、コーティング組成物層の強度、防汚性がより向上する傾向にある。
なお、(C)成分を添加する段階では、(b1)成分は完全に(B)重合体エマルジョン粒子に取り込まれていて、(C)成分とは区別できる。
【0064】
(C)成分として用いられる加水分解性珪素化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、下記式(2)で表される加水分解性珪素化合物(c1)、式(3)で表される加水分解性珪素化合物(c2)が挙げられる。
R
1nSiX
4-n ・・・(2)
(ここで、式(2)中、R
1は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアリール基を示す。これらの化学種(水素原子を除く。)は、ハロゲン基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基等の官能基で置換されていてもよい。
Xは加水分解性基を示し、該加水分解性基は加水分解により水酸基が生じる基であり、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、フェノキシ基、オキシム基が挙げられる。
R
1が複数の場合、あるいはXが複数の場合、それぞれのR
1又はXは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
nは0〜3の整数である。)
X
3Si−R
2n−SiX
3 ・・・(3)
(ここで、式(3)中、Xは互いに同一でも異なっていてもよい加水分解性基を示し、該加水分解性基は加水分解により水酸基が生じる基であり、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、フェノキシ基、オキシム基が挙げられる。
R
2は炭素数1〜6のアルキレン基又はフェニレン基を示す。
nは0又は1である。)
【0065】
加水分解性珪素化合物(c1)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(n−プロポキシ)シラン、テトラ(i−プロポキシ)シラン、テトラ(n−ブトキシ)シラン、テトラ(i−ブトキシ)シラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラキス(トリクロロアセトキシ)シラン、テトラキス(トリフルオロアセトキシ)シラン、トリアセトキシシラン、トリス(トリクロロアセトキシ)シラン、トリス(トリフルオロアセトキシ)シラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリス(トリクロロアセトキシ)シラン、テトラクロロシラン、テトラブロモシラン、テトラフルオロシラン、トリクロロシラン、トリブロモシラン、トリフルオロシラン、メチルトリクロロシラン、メチルトリブロモシラン、メチルトリフルオロシラン、テトラキス(メチルエチルケトオキシム)シラン、トリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、フェニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、ビス(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチルビス(メチルエチルケトオキシム)シラン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルシランが挙げられる。
【0066】
前記加水分解性珪素化合物(c2)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリフェノキシシリル)メタン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリフェノキシシリル)エタン、1,3−ビス(トリメトキシシリル)プロパン、1,3−ビス(トリエトキシシリル)プロパン、1,3−ビス(トリフェノキシシリル)プロパン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼンが挙げられる。
【0067】
また、(C)成分としては、下記式(4)で表される加水分解性珪素化合物(c3)も好適に用いることができる。
R
3−(O−Si(OR
3)
2)
n−OR
3 ・・・(4)
(ここで、式(4)中、R
3は、互いに同一でも異なっていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。nは2〜8の整数である。)
【0068】
(c3)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物(例えば、多摩化学工業(株)製の商品名「Mシリケート51」、コルコート(株)製の商品名「MSI51」、三菱化学(株)製の商品名「MS51」、同「MS56」)、テトラエトキシシランの部分加水分解縮合物(例えば、多摩化学工業(株)製の商品名「シリケート35」、同「シリケート45」、コルコート(株)製の商品名「ESI40」、同「ESI48」)、テトラメトキシシランとテトラエトキシシランとの共部分加水分解縮合物(例えば、多摩化学工業(株)製の商品名「FR−3」、コルコート(株)製の商品名「EMSi48」)が挙げられる。
【0069】
また、(C)成分としては、(c4):シラザン化合物も好適に用いることができる。
(c4)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザンが挙げられる。
【0070】
(C)成分は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、上記加水分解性珪素化合物(C)は、予め加水分解と縮合とを進めてからコーティング組成物に配合してもよく、加水分解と縮合を行わずに金属酸化物(A)及び/又はエマルジョン粒子(B)に配合してもよい。
【0071】
上述したコーティング組成物中における(A)成分と(C)成分との比((C)/(A))(質量比)は、好ましくは0.1/100〜500/100であり、より好ましくは1/100〜200/100であり、さらに好ましくは2/100〜20/100である。
(C)/(A)が0.1/100以上であることにより、高温条件下での接触角がより低下する傾向にある。また、(C)/(A)が500/100以下であることにより、本実施形態により得られるコーティング組成物層の強度がより優れる傾向にある。
なお、質量比率は、加水分解後の換算質量による比率とする。
【0072】
<コーティング組成物の調製方法>
本実施形態において用いるコーティング組成物は、上述した(A)成分、(B)成分、溶媒、及び必要に応じて上述した(C)成分、その他の添加剤成分を混合することにより得ることができる。
【0073】
(第2の工程)
上述した(第1の工程)により、基材上にコーティング組成物を塗布し、コーティング組成物層を形成した後、5〜40℃の環境下で、コーティング組成物層中の固形分量が2〜40質量%となるまで乾燥する。
【0074】
第2の工程における、コーティング組成物層の乾燥温度は、40℃以下とし、35℃以下であることが好ましく、30℃以下であることがより好ましい。また、乾燥温度は、5℃以上とし、10℃以上であることが好ましく、15℃以上であることがより好ましい。
40℃以下で乾燥させることにより、緻密なコーティング組成物層が形成され、外観が良好になる傾向にある。また、5℃以上で乾燥させることにより、生産性に優れる傾向にある。
【0075】
第2の工程においては、コーティング組成物層は、上記のように、固形分量が2〜40質量%になるように乾燥することが好ましく、5〜35質量%がより好ましく、8〜30質量%がさらに好ましい。
第2の工程において、コーティング組成物層を、固形分が2%以上になるように乾燥を行うことにより、コーティング組成物層が増粘し、基材に凹凸がある場合には、当該凹部への過度なコーティング組成物の偏在が抑制される。
また、後述する第3の工程で、急激に乾燥温度が上昇しても、コーティング組成物層の歪みを少なくでき、均一でクラックの少ない外観が良好なコーティング組成物層を形成できる。
さらに、第2の工程において、コーティング組成物層を、固形分量が40%以下となるように乾燥することにより、コーティング組成物の過度な粘度の上昇を抑制でき、スジの発生などを防止して良好な外観特性が得られる傾向がある。
【0076】
(第3の工程)
本実施形態における第3の工程においては、コーティング組成物に含まれる溶媒のうち、沸点が最も低い溶媒の沸点以上の温度環境下で、コーティング組成物層を乾燥する。
上記温度は、好ましくは80〜700℃が好ましく、より好ましくは100〜300℃以上、さらに好ましくは120〜200℃である。
なお、コーティング組成物に含まれる溶媒は、一種以上であればよく、一種類のみである場合、当該溶媒の沸点以上の温度環境下でコーティング組成物を乾燥する。
乾燥時間は、60分以下が好ましく、30分以下がより好ましく、10分以下がさらに好ましい。
なお、第3の工程は、コーティング組成物層が、指で触っても剥離しない状態となるまで行う。
上述したように、第3の工程において、コーティング組成物層を、当該コーティング組成物に含まれる溶媒のうち、沸点が最も低い溶媒の沸点以上の温度環境下で乾燥を行うことにより、外観の良好なコーティング組成物層が得られる。
【0077】
〔積層体〕
本実施形態の積層体は、上述した(第1の工程)〜(第3の工程)を経て得られる。
積層体は、基材とその基材の少なくとも片面上に形成された、コーティング組成物層とを具備する。
【0078】
本実施形態の積層体は、コーティング組成物層の屈折率が、基材の屈折率よりも0.1以上低いことが好ましく、0.19以上低いことがより好ましく、0.24以上低いことがさらに好ましい。
コーティング組成物層の屈折率が、基材の屈折率よりも0.1以上低いことにより、積層体全体において高い光線透過率が得られる。すなわち基材が有している元々の光線透過率よりも、積層体の光線透過率がより高くなる傾向にある。
積層体におけるコーティング組成物層の屈折率は、(A)成分及び(B)成分の粒径、配合比率等により制御することができる。
また、基材の屈折率は使用される基材によって選択される。
【0079】
また、本実施形態の積層体を構成するコーティング組成物層の屈折率は、1.25〜1.60であることが好ましく、1.30〜1.48であることがより好ましく、1.34〜1.43であることがさらに好ましい。コーティング組成物層の屈折率が1.25以上であることにより、コーティング組成物層の強度がより優れる傾向にある。また、コーティング組成物層の屈折率が1.6以下であることにより、ヘイズを小さくすることができる。
上記のように、基材の屈折率とコーティング組成物層の屈折率との差が小さいほどコーティング組成物層の強度が向上する傾向にある。
【0080】
本実施形態の積層体の全光線透過率は、当該積層体を構成する基材の光線透過率よりも高いことが好ましい。
積層体の光線透過率が基材の光線透過率より高いと、太陽電池用カバーガラスに適用した場合、より多く光を透過させることができるので、太陽電池の発電量がより向上する傾向にある。
【0081】
また、本実施形態に係る積層体において、積層体の屈折率は基材よりの屈折率よりも0.1以上低いことが好ましく、0.2以上低いことがより好ましく、0.25以上低いことがさらに好ましい。
基材よりも積層体の屈折率を低くすることによって、表面からの反射量を低減することができ、太陽電池用カバーガラスにした場合、表面の反射を防ぐことによってより多くの光を透過させることができ、太陽電池の発電量がより向上する傾向にある。
【0082】
〔用途〕
本実施形態の積層体は、太陽電池用カバーガラス、太陽熱発電用ミラーとして利用できる。
本実施形態に係る積層体は、透明性及び耐熱性に優れるので、太陽電池用のカバーガラス、太陽熱発電用のミラーの部材として有用である。
本実施形態の積層体は様々な用途に用いられ得るが、特に太陽電池用カバーガラスとして用いられると、本発明による利益をより有効かつ確実に享受することができるので好ましい。
【実施例】
【0083】
以下、本発明について、具体的な実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、各種物性は下記の方法で評価した。
【0084】
(1. 数平均粒子径の測定方法)
動的光散乱式粒子径測定装置(日機装社製、商品名マイクロトラックUPA)を用い、ヘテロダイン法にて(A)成分、(B)成分の数平均粒子径を測定した。
【0085】
(2.全光線透過率及びヘイズ値)
濁度計(日本電色工業製、商品名「NDH2000」)を用い、JIS−K7105に準じて、基材の全光線透過率及びヘイズ値、積層体の全光線透過率を測定した。
【0086】
(3.初期膜厚と屈折率)
膜厚計(大塚電子製、商品名「FE−3000」)を用い、コーティング組成物層の初期膜厚(第3の工程後に得られたコーティング組成物層の膜厚)、並びにコーティング組成物層及び基材の屈折率(波長:633nm)を、大塚電子製、商品名「FE−3000」を用いて測定した。
【0087】
(4.外観)
デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、商品名「VHX−1000」)を用い、観察倍率100倍で観察し、積層体表面に形成されたマイクロクラックの有無を観察し、以下の基準により評価した。
良好:クラックが観察されない。
やや不良:クラックがやや観察される。
不良:クラックが明らかに観察される。
【0088】
(5.表面水接触角の測定)
後述する実施例及び比較例で製造したコーティング組成物層の表面に脱イオン水の滴(1.0μL)を乗せ、23℃で10秒間放置した。
その後、日本国協和界面科学製CA−X150型接触角計を用いて表面水接触角を測定した。
コーティング組成物層に対する水の接触角が小さいほど、皮膜表面の親水性が高いと評価した。
【0089】
(6.基材の表面の凹凸の高低差の測定)
形状測定レーザーマイクロスコープ(キーエンス社製、商品名「VX−8700」)を用い、自動モードで測定し、基材の表面の凹凸を測定し、1mm角の範囲で前記凹凸の最大高さと最低高さを測定し、これらの差(高低差)を算出した。
【0090】
(材料組成比率)
後述する実施例及び比較例において製造するコーティング組成物層中の、(A)成分:金属酸化物の質量と、(B)成分:重合体エマルジョン粒子の質量と、(C)成分:加水分解性珪素化合物の質量を測定した。
なお、(C)成分の質量は、加水分解したときの質量に換算した。
また、(A)成分の質量及び(B)成分の質量は分散溶媒の質量を含まず、金属酸化物、重合体エマルジョン粒子そのものの質量とする。
これらの値を用いて、(A)/(B)/(C)の比率を算出した。
【0091】
〔製造例1:重合体エマルジョン粒子((B−1)成分)の水分散体の製造方法〕
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する反応容器に、イオン交換水1600g、ドデシルベンゼンスルホン酸6gを投入した後、撹拌下で温度を80℃に加温した。
これに、ジメチルジメトキシシラン185gとフェニルトリメトキシシラン117gとの混合液を反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて滴下し、その後、反応容器中の温度を80℃に維持した状態で約1時間撹拌を続行した。
次にアクリル酸ブチル86gとフェニルトリメトキシシラン133gと3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.3gとの混合液と、ジエチルアクリルアミド137gとアクリル酸3gと反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−1025」、旭電化(株)製、固形分25%水溶液)13gと過硫酸アンモニウムの2質量%水溶液40gとイオン交換水1900gとの混合液とを、反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて同時に滴下した。
さらに、反応容器中の温度を80℃に維持した状態で約2時間撹拌を続行した後、液を室温まで冷却し、100メッシュの金網で濾過した後、イオン交換水で液中の固形分濃度を10.0質量%に調整し、(B)成分である数平均粒子径70nmの重合体エマルジョン粒子の水分散体(B−1)を得た。
【0092】
〔製造例2:重合体エマルジョン粒子((B−2)成分)の水分散体の製造方法〕
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する反応器に、イオン交換水2600g、及びドデシルベンゼンスルホン酸12g、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルの25%水溶液(エマルゲン950、花王(株)製)20部を投入した後、撹拌しながら80℃に加温して混合液(1)を得た。
得られた混合液(1)に、コア層としてメタクリル酸18g、メタクリル酸メチル216g、アクリル酸ブチル216g、過硫酸アンモニウムの2質量%水溶液40g、の混合液(2)を反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて滴下して混合液(3)を得た。
その後、反応容器中の温度が80℃の状態で混合液(3)を約1時間撹拌した。
次に、得られた混合液(3)に、シェル層としてアクリル酸ブチル245g、メタクリル酸メチル245g、アクリル酸10g、及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(b1−3)6.9g、メチルトリメトキシシラン101g、反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−1025」、旭電化(株)製、固形分25質量%水溶液)13g、過硫酸アンモニウムの2質量%水溶液40g、及びイオン交換水1900gの混合液(4)とを、反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて同時に滴下して混合物(5)を得た。
さらに熱養生として、反応容器中の温度が80℃の状態で混合物(5)を約2時間撹拌した。
その後、0.1Nのアンモニア水を徐々に加え、混合物のpHが8になるまで撹拌した。
混合物(5)100メッシュの金網で濾過し、精製水で濃度を調整して数平均粒子径120nmの重合体エマルジョン粒子(B−2)の水分散体(固形分10質量%)を得た。
【0093】
〔製造例3:重合体エマルジョン粒子((B−3)成分)の水分散体の製造方法〕
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する反応器に、イオン交換水2600g、及びドデシルベンゼンスルホン酸12g、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルの25%水溶液(エマルゲン950、花王(株)製)20部を投入した後、撹拌しながら80℃に加温して混合液(1)を得た。
得られた混合液(1)に、コア層としてメタクリル酸18g、メタクリル酸メチル216g、アクリル酸ブチル216g、過硫酸アンモニウムの2質量%水溶液40g、の混合液(2)を反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて滴下して混合液(3)を得た。
その後、反応容器中の温度が80℃の状態で混合液(3)を約1時間撹拌した。
次に、得られた混合液(3)に、シェル層としてアクリル酸ブチル245g、メタクリル酸メチル245g、アクリル酸10g、メチルトリメトキシシラン101g、反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−1025」、旭電化(株)製、固形分25質量%水溶液)13g、過硫酸アンモニウムの2質量%水溶液40g、及びイオン交換水1900gの混合液(4)とを、反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて同時に滴下して混合物(5)を得た。
さらに熱養生として、反応容器中の温度が80℃の状態で混合物(5)を約2時間撹拌した。
その後、0.1Nのアンモニア水を徐々に加え、混合物のpHが8になるまで撹拌した。
混合物(5)100メッシュの金網で濾過し、精製水で濃度を調整して数平均粒子径140nmの重合体エマルジョン粒子(B−3)の水分散体(固形分10質量%)を得た。
【0094】
〔製造例4:コーティング組成物の製造方法〕
コロイダルシリカ(日産化学工業(株)製、商品名「スノーテックス−OXS」(ST−OXS)、(A)成分))を水中に分散させたもの(固形分濃度10質量%、数平均粒子径10nm)と、上述した〔製造例1〕で合成した重合体エマルジョン粒子((B−1)成分)の水分散体と、テトラエトキシシラン(信越化学社製、商品名「KBE−04」、(C)成分)とを、(A)成分200質量部、(B)成分100質量部、(C)成分の加水分解縮合後の質量換算で60質量部の配合比にて配合した後、温度23℃の99.9%エタノール(和光純薬社製 試薬特級)で希釈し、ポリアクリル酸増粘剤(東亞合成化学社製 商品名「アロンA10−H」)で調整して、固形分濃度が4%、粘度は10mPa・sになるように調整してコーティング組成物を得た。
なお、希釈した溶媒の中で沸点の最も低いものはエタノール(沸点78℃)である。
【0095】
〔製造例5:コーティング組成物の製造方法〕
コロイダルシリカ(日産化学工業(株)製、商品名「スノーテック−OXS」(ST−OXS)、(A)成分))を水中に分散させたもの(固形分濃度10質量%、数平均粒子径10nm)と、上述した〔製造例1〕で合成した重合体エマルジョン粒子((B)成分)の水分散体と、テトラエトキシシラン(信越化学社製、商品名「KBE−04」、(C)成分)とを、(A)成分200質量部、(B)成分100質量部、(C)成分の加水分解縮合後の質量換算で60質量部の配合比にて配合した後、温度23℃の純水で希釈して、固形分濃度が1%、粘度は2mPa・sになるように調整してコーティング組成物を得た。
なお、希釈した溶媒の中で沸点の最も低いものは水(沸点100℃)である。
【0096】
〔実施例1〕
第1の工程として、上述した〔製造例4〕で得られたコーティング組成物を、基材の白板ガラス(厚さ3.2mm、6×6cm角、可視光における光線透過率89%、ヘイズ値50%、表面の凹凸の高低差30μm)に、リバースロールコートで塗布し、コーティング組成物層を得た。当該コーティング組成物層の固形分濃度は4%、粘度は10mPa・sであった。
第2の工程として、26℃の乾燥温度で乾燥させて、固形分濃度を8質量%まで高めた。
固形分濃度が8質量%であることは、乾燥前後の質量変化から確認した。
第3の工程として、110℃で3分間乾燥して積層体を作製した。
得られた積層体の表面を観察してマイクロクラックが無いことを確認した。
【0097】
〔実施例2〕
上述した〔製造例4〕で得られたコーティング組成物を、基材の白板ガラス(厚さ3.2mm、6×6cm角、可視光における光線透過率91.5%、ヘイズ50%、表面の凹凸の高低差30μm)に、リバースロールコートで塗布した。
第2の工程として、30℃の乾燥温度で乾燥させて、固形分濃度を18質量%まで高めた。
固形分濃度が18質量%であることは乾燥前後の質量変化から確認した。
第3の工程として、110℃で3分間乾燥して積層体を作製した。
得られた積層体の表面を観察してマイクロクラックが無いことを確認した。
【0098】
〔実施例3〕
上述した〔製造例4〕で得られたコーティング組成物を、基材の白板ガラス(厚さ3.2mm、6×6cm角、可視光における光線透過率91.5%、ヘイズ50%、表面の凹凸の高低差30μm)に、リバースロールコートで塗布した。
第2の工程として、35℃の乾燥温度で乾燥させて、固形分濃度を30質量%まで高めた。
固形分濃度が30質量%であることは乾燥前後の質量変化から確認した。
第3の工程として、110℃で3分間乾燥して積層体を作製した。
得られた積層体の表面を観察してマイクロクラックが無いことを確認した。
各種物性を測定した結果を表1に示す。
【0099】
〔実施例4〕
上述した〔製造例5〕で得られたコーティング組成物を、基材の白板ガラス(厚さ3.2mm、6×6cm角、可視光における光線透過率91.5%、ヘイズ50%、表面の凹凸の高低差30μm)に、リバースロールコートで塗布した。
第2の工程として、26℃の乾燥温度で乾燥させて、固形分濃度を3質量%まで高まった。
固形分濃度が3質量%であることは乾燥前後の質量変化から確認した。
第3の工程として、110℃で3分間乾燥して積層体を作製した。
得られた積層体の表面を観察してマイクロクラックが多いことを確認した。
【0100】
〔実施例5〕
第3の工程の乾燥温度を600℃に変更した以外は実施例2と同様にして積層体を製造した。
得られた積層体の表面を観察してマイクロクラックが無いことを確認した。
【0101】
〔実施例6〕
第3の工程の乾燥温度を700℃に変更した以外は実施例2と同様にして積層体を製造した。
得られた積層体の表面を観察してマイクロクラックが無いことを確認した。
【0102】
〔実施例7〕
重合体粒子を(B−2)に変更した以外は実施例2と同様にして積層体を製造した。
得られた積層体の表面を観察してマイクロクラックが無いことを確認した。
【0103】
〔実施例8〕
重合体粒子を(B−3)に変更した以外は実施例2と同様にして積層体を製造した。
得られた積層体の表面を観察してマイクロクラックが無いことを確認した。
【0104】
〔実施例9〕
重合体エマルジョン粒子(B)として重合体エマルジョン粒子(B−4)(アクリルエマルジョン、固形分32%、pH7.7、粘度150mPa・s、酸価39、ガラス転移温度74℃、最低成膜温度−10℃)を製造した。
重合体粒子を(B−4)に変更した以外は実施例2と同様にして積層体を製造した。
得られた積層体の表面を観察してマイクロクラックが無いことを確認した。
【0105】
〔実施例10〕
コロイダルシリカ(日産化学工業(株)製、商品名「スノーテックス−OXS」(ST−OXS)、(A)成分))を水中に分散させたもの(固形分濃度10質量%、数平均粒子径10nm)と、上述した〔製造例1〕で合成した重合体エマルジョン粒子((B−1)成分)の水分散体と、テトラメトキシシランオリゴマー(三菱化学社製、商品名「MS−56」、(C)成分)とを、(A)成分200質量部、(B)成分100質量部、(C)成分の加水分解縮合後の質量換算で60質量部の配合比にて配合した後、温度23℃の純水とエチレングリコール(和光純薬社製 試薬特級)とを、質量比で100:1で混合した溶媒で希釈し、ポリアクリル酸増粘剤(東亞合成化学社製 商品名「アロンA10−H」)で調整して、固形分濃度が4%、粘度は10mPa・sになるように調整してコーティング組成物を得た。
なお、希釈した溶媒の中で沸点の低いものは水(沸点100℃)である。
上述したコーティング組成物を、基材の白板ガラス(厚さ3.2mm、6×6cm角、可視光における光線透過率91.5%、ヘイズ50%、表面の凹凸の高低差30μm)に、リバースロールコートで塗布した。
第2の工程として、30℃の乾燥温度で乾燥させて、固形分濃度を18質量%まで高めた。
固形分濃度が18質量%であることは乾燥前後の質量変化から確認した。
第3の工程として、200℃で3分間乾燥して積層体を作製した。
得られた積層体の表面を観察してマイクロクラックが無いことを確認した。
【0106】
〔比較例1〕
上述した〔製造例4〕で得られたコーティング組成物を、基材の白板ガラス(厚さ3.2mm、6×6cm角、可視光における光線透過率89%、ヘイズ50%、表面の凹凸の高低差30μm)に、リバースロールコートで塗布した。
その直後に、第3の工程として、110℃で3分間乾燥して積層体を作製した。
得られた積層体の表面を観察して、膜厚ムラが大きくマイクロクラックが多いことを確認した。
【0107】
〔実施例1〜10〕、〔比較例1〕の物性の測定及び評価結果を下記表1、表2に示す。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】
表1、表2に示すように、各実施例の積層体は、外観、全光線透過率に優れることが確認された。