(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、レーザ半田付けにおいて、レーザ半田付けの高速化(溶接時間の短縮化)が望まれている。このような高速でのレーザ半田付けにより良好な半田品質を得るためには、溶接中の半田温度を管理することが重要である。
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1のような従来技術は、基板の炭化等の不良を防止するために電極温度を計測しているので、溶接中の半田温度を管理するものではない。すなわち、レーザ半田付けを高速化すると、溶接中の半田温度と電極温度とは一致しないため、特許文献1のように半田温度ではなく電極温度を測定するのでは溶接中の半田温度を管理することはできない。
【0007】
ここで、特許文献1のような従来技術において溶接中の半田温度を計測すると、当該半田温度が最適温度となるようにレーザ光の出力が高速でフィードバック制御される。そうすると、溶接中の半田温度が大きくハンチングして望ましくない温度まで上昇してしまうことがある。
【0008】
また、溶接中の半田は溶融してその形状が変化するため、当該半田から放射される赤外線の光量にはバラツキがあると考えられる。そして、このような赤外線に基づいて半田温度を計測してレーザ光の出力を高速でフィードバック制御した場合、当該赤外線の光量のバラツキがフィードバック制御に反映され易いので、溶接中の半田温度を管理することは容易でない。
【0009】
なお、上述した課題は、レーザろう付け等のように溶加材を用いてワークを溶接するレーザ溶接においても発生し得る。
【0010】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、レーザ溶接の高速化を図ることができると共に溶接中の溶加材の温度を管理して良好な溶接品質を得ることができるレーザ溶接方法及びレーザ溶接システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るレーザ溶接方法は、レーザ発振器から発振されたレーザ光により溶加材を溶融させてワークを溶接するレーザ溶接方法において、前記レーザ光をオンして当該レーザ光により前記溶加材を加熱する第1溶接ステップと、視軸が前記レーザ光の光軸と同軸となるように設けられた放射温度計により前記レーザ光にて加熱された前記溶加材の温度を測定する第2溶接ステップと、前記放射温度計の測定温度がオフ制御温度に初めて到達した時に前記レーザ光をオフする第3溶接ステップと、前記第3溶接ステップの後、前記測定温度が前記オフ制御温度
以下に低下してから前記レーザ光を再度オンし
て前記レーザ光がオンされてから前記測定温度が前記オフ制御温度に到達した時に前記レーザ光をオフする制御を、所定時間繰り返す第4溶接ステップとを行
い、前記第4溶接ステップでは、前記レーザ光のオンオフによる前記測定温度の変動幅が所定幅以上となるように、前記レーザ発振器にオン信号が入力されてから前記レーザ光が発振されるまでのディレイ時間、前記レーザ光の立上り速度及び前記レーザ光の立下り速度を調整することを特徴とする。
【0012】
本発明に係るレーザ溶接方法によれば、放射温度計による溶加材の測定温度がオフ制御温度に初めて到達した時にレーザ光をオフするので、溶接中の溶加材の温度を管理することができる。すなわち、レーザ溶接を高速化した場合であっても、溶加材が望ましくない温度まで上昇することを抑えることができる。これにより、レーザ溶接の高速化を図ることができると共に溶接中の溶加材の温度を管理して良好な溶接品質を得ることができる。また、放射温度計の視軸とレーザ光の光軸とが同軸であるため、溶加材にレーザ光が照射された状態で当該溶加材の温度を容易且つ確実に測定することができる。また、所定のオフ制御温度においてレーザ光のオフを繰り返し行うことにより、第4溶接ステップで溶加材への入熱量を調整することができるので、溶加材を適切な温度に管理することができる。
さらに、レーザ光のオンオフによる測定温度の変動幅が所定幅以上となるため、溶加材を流動(対流)させて濡れ拡がり易くさせることができる。また、溶加材を流動させることにより、溶融した溶加材中の気泡(ブローホール)を効果的に減少させることができる。さらに、ディレイ時間、立上り速度及び立下り速度を調整するので、簡易な制御で前記測定温度の変動幅を所定値以上にすることができる。
【0021】
上記のレーザ溶接方法において、前記第4溶接ステップでは、前記変動幅の下限値が前記溶加材の融点以上となるように、前記ディレイ時間及び前記立上り速度を調整してもよい。
【0022】
このような方法によれば、溶加材をさらに濡れ拡がり易くさせることができると共に簡易な制御で前記変動幅の下限値を溶加材の融点以上にすることができる。
【0027】
本発明に係るレーザ溶接システム
は、
レーザ発振器から発振されたレーザ光により溶加材を溶融させてワークを溶接するレーザ溶接システムにおいて、前記レーザ光により加熱された前記溶加材の温度を測定する放射温度計と、前記放射温度計の測定温度がオフ制御温度に初めて到達した時に前記レーザ発振器を制御して前記レーザ光をオフするレーザ制御部と、を備え、前記放射温度計は、当該放射温度計の視軸が前記レーザ光の光軸と同軸となるように設けられ、前記レーザ制御部は、
前記測定温度が前記オフ制御温度に初めて到達して前記レーザ光がオフされた後、前記測定温度が前記オフ制御温度以下に低下してから前記レーザ光を再度オンして前記測定温度が前記オフ制御温度に到達した時に前記レーザ光をオフする制御を、所定時間繰り返し、前記レーザ光のオンオフによる前記測定温度の変動幅が所定幅以上となるように、前記レーザ発振器にオン信号が入力されてから前記レーザ光が発振されるまでのディレイ時間、前記レーザ光の立上り速度及び前記レーザ光の立下り速度を調整
することを特徴とする。
【0028】
上記レーザ溶接システムにおいて、前記レーザ制御部は、前記変動幅の下限値が前記溶加材の融点以上となるように、前記ディレイ時間及び前記立上り速度を調整してもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、放射温度計による溶加材の測定温度がオフ制御温度に初めて到達した時にレーザ光をオフするので、レーザ溶接の高速化を図ることができると共に溶接中の溶加材の温度を管理して良好な溶接品質を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係るレーザ溶接方法及びレーザ溶接システムについて好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0032】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態に係るレーザ溶接システム10Aは、レーザ光Lにより溶加材としての半田Sを溶融させて複数のワークを溶接するレーザ半田付けシステムとして構成されている。本実施形態では、レーザ溶接システム10Aを用いてスルーホール実装を行う例について説明するが、レーザ溶接システム10Aを用いて表面実装を行うことも当然可能である。
【0033】
本実施形態において、複数のワークとして、スルーホール200の外周側に円環状のランド202が設けられたプリント配線板204と、スルーホール200に挿入されるリード端子(電極)206を有する電子部品208とが用いられる。すなわち、レーザ溶接システム10Aは、リード端子206をランド202に対して半田付けするものである。
【0034】
レーザ溶接システム10Aは、プリント配線板204及び電子部品208を支持するステージ12と、プリント配線板204に向けてレーザ光Lを照射するレーザ装置14と、半田S(糸半田)をランド202に供給するための半田供給装置16と、制御部18とを備える。
【0035】
ステージ12は、レーザ装置14を構成する後述する出射ユニット24に対してプリント配線板204を水平方向に移動させるための図示しない駆動機構と、プリント配線板204を支持しながら傾動させるための図示しない傾動機構とを有している。これにより、プリント配線板204を出射ユニット24に対して容易に位置決め(位置補正)することができる。
【0036】
レーザ装置14は、レーザ光Lを発振するレーザ発振器20と、レーザ発振器20から発振されたレーザ光Lを伝送する光ファイバ22と、光ファイバ22から出射されたレーザ光Lをプリント配線板204に向けて出射する出射ユニット24とを有している。
【0037】
レーザ発振器20は、LD電源と、LD電源の駆動電流に基づいて所定波長のレーザ光Lを発振するLDとを有する。LD電源は、制御部18からのレーザ制御信号に基づいて駆動電流をLDに供給する。LDは、LD電源から供給された駆動電流に対応した出力のレーザ光Lを発振する。本実施形態において、LDは、915nmの波長のレーザ光Lを発振する。また、LDは、いわゆるFC−LD(ファイバーカップリングレーザダイオード)として構成することができる。ただし、レーザ発振器20は、上記の構成に限定されることなく、種々の構成を採用することができる。
【0038】
出射ユニット24は、光ファイバ22から出射されてコリメートレンズ26で平行化されたレーザ光Lをプリント配線板204に向けて反射するミラー28と、ミラー28で反射したレーザ光Lを集光する集光レンズ30と、集光レンズ30を保護するための保護ガラス32とを含む。
【0039】
ミラー28は、レーザ光Lを反射すると共にレーザ光Lの波長とは異なる波長の光を透過する。ミラー28は、例えば、可視光VL及び所定領域の赤外光ILを透過する汎用の誘電体多層膜ミラーとして構成することができる。具体的には、ミラー28は、1800nm〜2300nmの赤外領域の波長を有する赤外光ILを透過可能となっている。
【0040】
また、出射ユニット24は、ミラー34、集光レンズ36、撮像ユニット38、集光レンズ40、放射温度計42をさらに有している。ミラー34は、プリント配線板204、電子部品208及び半田S(以下、ワーク等ということがある。)から導かれてミラー34を透過した可視光VLを反射する一方でワーク等から導かれてミラー34を透過した赤外光ILを透過する。
【0041】
集光レンズ36は、ミラー34で反射された可視光VLを撮像ユニット38に集光する。撮像ユニット38は、集光レンズ36で集光された可視光VLを受光してワーク等を撮像する。撮像ユニット38で撮像された情報(画像)は、制御部18に出力される。なお、前記画像は、図示しない表示部に表示させるようにしてもよい。撮像ユニット38としては、例えば、CCDカメラを用いることができる。
【0042】
集光レンズ40は、ミラー34を透過した赤外光ILを集光する。放射温度計42は、集光レンズ40で集光された赤外光ILを受光してランド202又は半田Sの温度を測定する。放射温度計42としては、例えば、赤外線温度センサを用いることができる。
【0043】
このように構成される出射ユニット24において、撮像ユニット38及び放射温度計42は、各視軸がランド202又は半田Sに照射されるレーザ光Lの光軸と同軸になっている。これにより、撮像ユニット38を用いて溶接中の半田Sの状態を容易且つ確実に撮像することができると共に、放射温度計42を用いて溶接中の半田Sの温度を容易且つ確実に測定することができる。
【0044】
制御部18は、撮像ユニット38及び放射温度計42を駆動制御する。また、制御部18は、記憶部44、温度判定部46、レーザ制御部48及び半田供給制御部50を有している。
【0045】
記憶部44には、例えば、オフ制御温度Toff及びオン制御温度Ton等が記憶されている。オフ制御温度Toff及びオン制御温度Tonの各々は、半田Sの融点Tmから半田付け上限温度(良好な半田Sを行うことができない望ましくない上限温度)Tlまでの間の温度に設定される(
図6参照)。換言すれば、オフ制御温度Toffは、レーザ光Lをオフする際に半田温度が半田付け上限温度Tlに到達しないような温度に設定され、オン制御温度Tonは、レーザ光Lをオンする際に半田温度が半田Sの融点Tm以上に維持されるような温度に設定される。
【0046】
本実施形態では、オフ制御温度Toffは、オン制御温度Tonよりも高い温度に設定されている。この場合、レーザ光Lのオンオフによる半田測定温度Tの変動幅ΔTを比較的大きくすることができる。なお、オフ制御温度Toffは、オン制御温度Tonと同じ温度又はオン制御温度Tonよりも低い温度に設定してもよい。
【0047】
温度判定部46は、半田測定温度Tがオフ制御温度Toffに到達したか否かを判定する。また、温度判定部46は、半田測定温度Tがオン制御温度Ton以下に低下したか否かを判定する。
【0048】
レーザ制御部48は、温度判定部46の判定結果に基づいてレーザ発振器20に所定のレーザ制御信号(オン信号又はオフ信号)を出力することによりレーザ光Lをオンオフする。また、レーザ制御部48は、半田測定温度Tに基づいて、オン信号がレーザ発振器20に入力されてからレーザ光Lが出力されるまでのディレイ時間(遅れ時間)td、レーザ光Lの立上り速度Va及びレーザ光Lの立下り速度Vbを調整する調整信号をレーザ発振器20に出力する(
図2参照)。
【0049】
半田供給制御部50は、半田供給装置16を制御して半田Sの供給及び停止を行う。
【0050】
本実施形態に係るレーザ溶接システム10Aは、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、当該レーザ溶接システム10Aを用いたレーザ溶接方法(レーザ半田付け方法)について
図3〜
図6を参照しながら説明する。なお、
図6では、放射温度計42による半田測定温度Tを細線で表示し、レーザ出力を太線で表示している。後述する
図9についても同様である。また、初期状態において、プリント配線板204がステージ12に配置された状態で電子部品208のリード端子206がスルーホール200に挿通されている。
【0051】
先ず、半田付けを行うプリント配線板204と出射ユニット24との位置決めを行う(
図3のステップS1)。すなわち、ステージ12を移動又は傾動させることにより、レーザ光Lの照射位置をプリント配線板204のランド202に位置決めする。
【0052】
続いて、レーザ制御部48は、レーザ発振器20を制御してレーザ光Lをオンすると共に半田Sの供給を開始する(ステップS2:第1溶接ステップ)。すなわち、レーザ制御部48は、オン信号をレーザ発振器20に出力する。レーザ発振器20にオン信号が入力されると、LD電源からLDに駆動電流が供給されて当該LDから所定出力のレーザ光Lが発振される。また同時に、半田供給制御部50は、半田供給装置16を駆動制御してランド202への半田Sの供給を開始する。
【0053】
なお、半田Sの供給開始前にランド202にレーザ光Lを照射し、ランド202を予備的に加熱してもよい。こうすれば、ランド202に対する半田Sの濡れ性を良くすることができる。またこのとき、ランド202の温度を放射温度計42によって測定し、所望の温度に到達した時点で半田Sの供給を開始することもできる。
【0054】
レーザ発振器20から発振されたレーザ光Lは、光ファイバ22から出射されてコリメートレンズ26で平行化された後、ミラー28で反射して集光レンズ30により供給が開始された半田Sに向けて集光照射される(
図5A参照)。そして、放射温度計42は、レーザ光Lによって加熱された半田温度を測定する(ステップS3:第2溶接ステップ)。
【0055】
レーザ光Lが照射された半田Sは、溶融してランド202の全体に濡れ拡がり始める(
図5B参照)。また、温度判定部46は、半田測定温度Tがオフ制御温度Toffに到達したか否かを判定する(ステップS4)。半田測定温度Tがオフ制御温度Toffに到達していないと温度判定部46が判定した場合、ステップS4の処理を繰り返し行う。
【0056】
一方、半田測定温度Tがオフ制御温度Toffに到達したと温度判定部46が判定した場合(ステップS4:YES)、レーザ制御部48は、レーザ発振器20を制御してレーザ光Lをオフする(ステップS5:第3溶接ステップ)。すなわち、レーザ制御部48は、オフ信号をレーザ発振器20に出力する。レーザ発振器20にオフ信号が入力されると、LD電源からLDに供給されていた駆動電流が停止して当該LDからのレーザ光Lの発振が停止される。
【0057】
図6から諒解されるように、レーザ光Lをオフすると、半田測定温度Tは、オフ制御温度Toffよりも幾らか上昇した後で下降する。しかしながら、本実施形態では、オフ制御温度Toffを半田付け上限温度Tlよりも適度に低い温度に設定しているので、半田温度が半田付け上限温度Tlまで上昇しない。また、プリント配線板204の温度ではなく半田Sの温度を放射温度計42で測定しているので、レーザ半田付けを高速化した場合であっても半田温度が半田付け上限温度Tlまで上昇することが抑えられる。さらに、レーザ制御部48は、フィードバック制御を行わないので、レーザ半田付けを高速化しても半田温度の過度なハンチングを抑制できる。
【0058】
その後、制御部18は、半田付け完了条件を満足しているか否かを判定する(ステップS6)。本実施形態において、半田付け完了条件とは、レーザ光Lによって加熱溶融した半田Sがランド202の略全体に適度に濡れ拡がった状態をいう(
図5C参照)。また、制御部18は、当該条件を満たしているか否かを撮像ユニット38で撮像された画像情報に基づいて行う。
【0059】
半田付け完了条件を満足していると制御部18が判定した場合、半田供給装置16は、半田Sの供給を停止する(ステップS7)。この段階で、今回の半田付けが終了する。
【0060】
半田付け完了条件を満足していないと制御部18が判定した場合、レーザ制御部48は、レーザ光Lの繰り返し温度ストップ制御を行う(ステップS8:第4溶接ステップ)。具体的には、温度判定部46は、半田測定温度Tがオン制御温度Ton以下に低下したか否かを判定する(
図4のステップS9)。半田測定温度Tがオン制御温度Tonよりも高いと温度判定部46が判定した場合、ステップS9の処理を繰り返し行う。
【0061】
半田測定温度Tがオン制御温度Ton以下に低下したと温度判定部46が判定した場合(ステップS9:YES)、レーザ制御部48は、レーザ発振器20を制御してレーザ光Lをオンする(ステップS10)。このとき、レーザ制御部48は、レーザ光Lのオンオフによる半田測定温度Tの変動幅ΔTが所定幅(例えば、10℃)以上になると共に当該変動幅ΔTの下限値が半田Sの融点Tm以上になるように、調整信号をレーザ発振器20に出力してディレイ時間td及び立上り速度Vaを調整する。
【0062】
図6から諒解されるように、レーザ光Lをオンすると、半田測定温度Tは、オン制御温度Tonよりも幾らか下降した後で上昇する。しかしながら、本実施形態では、オン制御温度Tonを半田Sの融点Tmよりも適度に高い温度に設定しているので、半田温度が半田Sの融点Tmまで下降することはない。
【0063】
続いて、温度判定部46は、半田測定温度Tがオフ制御温度Toffに到達したか否かを判定する(ステップS11)。半田測定温度Tがオフ制御温度Toffに到達していないと温度判定部46が判定した場合、ステップS11の処理を繰り返す。
【0064】
一方、半田測定温度Tがオフ制御温度Toffに到達したと温度判定部46が判定した場合(ステップS11:YES)、レーザ制御部48は、レーザ発振器20を制御してレーザ光Lをオフする(ステップS12)。このステップS12は、基本的に上述したステップS5と同様であるのでその詳細な説明を省略する。このステップS12において、レーザ制御部48は、レーザ光Lのオンオフによる半田測定温度Tの変動幅ΔTが前記所定幅以上になるように、調整信号をレーザ発振器20に出力して立下り速度Vbを調整する。
【0065】
その後、制御部18は、レーザ光Lの繰り返し温度ストップ制御を開始してから所定制御時間が経過したか否かを判定する(ステップS13)。所定制御時間を経過していないと制御部18が判定した場合(ステップS13:NO)には、ステップS9以降の処理を再度行う。所定制御時間を経過したと制御部18が判定した場合(ステップS13:YES)には、レーザ光Lの繰り返し温度ストップ制御が終了し、
図3のステップS6以降の処理を行う。
【0066】
本実施形態によれば、放射温度計42による半田測定温度Tがオフ制御温度Toffに初めて到達した時にレーザ光Lをオフするので、溶接中の半田温度を管理することができる。すなわち、レーザ半田付けを高速化した場合であっても、半田温度が半田付け上限温度Tlまで上昇することを抑えることができる。これにより、レーザ半田付けの高速化を図ることができると共に溶接中の半田温度を管理して良好な半田品質を得ることができる。また、放射温度計42の視軸とレーザ光Lの光軸とが同軸であるため、半田Sにレーザ光Lが照射された状態で半田温度を容易且つ確実に測定することができる。
【0067】
さらに、半田測定温度Tがオフ制御温度Toffに初めて到達した時にレーザ光Lをオフした後(第3溶接ステップの後)、半田付け完了条件が満足していない場合(ステップS6:NO)にレーザ光Lの繰り返し温度ストップ制御(第4溶接ステップ)を行っている。そして、このレーザ光Lの繰り返し温度ストップ制御において、レーザ制御部48は、半田測定温度Tが
オン制御温度Ton以下に低下してからレーザ光Lを再度オンして半田測定温度Tがオフ制御温度Toffに到達した時に前記レーザ光Lをオフする制御を、所定時間繰り返している。このようにオフ制御温度Toffにおいてレーザ光Lのオフを繰り返し行うことにより、半田Sへの入熱量を調整することができるので、半田Sを適切な温度に管理することができる。
【0068】
本実施形態では、レーザ光Lの繰り返し温度ストップ制御において、レーザ制御部48は、レーザ光Lがオフされてから半田測定温度Tがオン制御温度Ton以下に低下した後でレーザ光Lをオンし、レーザ光Lがオンされてから半田測定温度Tがオフ制御温度Toffに到達した時にレーザ光Lをオフしている。これにより、レーザ光Lの繰り返し温度ストップ制御において、半田温度が半田付け上限温度Tlまで上昇することを抑えつつ半田Sへの入熱量を高精度に調整することができる。
【0069】
本実施形態において、レーザ光Lの繰り返し温度ストップ制御では、レーザ光Lのオンオフによる半田測定温度Tの変動幅ΔTが所定幅以上となると共に当該変動幅ΔTの下限値が半田Sの融点Tm以上になるため、半田Sを流動(対流)させて濡れ拡がり易くさせることができる。また、半田Sを流動させることにより、溶融した半田S中の気泡(ブローホール)を効果的に減少させることができる。さらに、ステップS10においてディレイ時間td及び立上り速度Vaを調整し、ステップS12において立下り速度Vbを調整しているので、簡易な制御で半田測定温度Tの変動幅ΔTを所定値以上にすると共に当該変動幅ΔTの下限値を半田Sの融点Tm以上にすることができる。
【0070】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るレーザ溶接システム10B及びレーザ溶接方法について説明する。なお、第2実施形態に係るレーザ溶接システム10Bにおいて、第1実施形態に係るレーザ溶接システム10Aと同一又は同様な機能及び効果を奏する要素には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0071】
図7に示すように、レーザ溶接システム10Bは、制御部58の構成が上述した制御部18の構成と異なっている。制御部58は、カウンタ60及び時間判定部62をさらに有している。カウンタ60は、レーザ光Lがオフされてからの時間をカウントする。時間判定部62は、カウント時間tが所定時間taを経過したか否かを判定する。ここで、所定時間taとは、レーザ光Lがオフされた時から半田温度が所定温度(第1実施形態のオン制御温度Tonに相当する温度)に到達するまでの時間に設定される。
【0072】
本実施形態に係るレーザ溶接システム10Bは、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、当該レーザ溶接システム10Bを用いたレーザ溶接方法(レーザ半田付け方法)について
図8及び
図9を参照しながら説明する。本実施形態に係るレーザ溶接方法において、上述した第1実施形態に係るレーザ溶接方法と同様のステップについては、その説明を省略する。また、
図8におけるステップS21〜ステップS24は、
図4におけるステップS10〜ステップS13の処理に対応しており同様の処理が行われるため、ステップS21〜ステップS24の詳細な説明を省略する。
【0073】
本実施形態のレーザ光Lの繰り返し温度ストップ制御において、時間判定部62は、カウント時間tが所定時間taを経過したか否かを判定する(
図8のステップS20)。なお、カウント時間tは、レーザ光Lがオフされてからの経過時間である。そのため、本実施形態では、
図3のステップS5において、カウンタ60は、レーザ光Lがオフされてからの時間をカウントしている。カウント時間tが所定時間taを経過していないと時間判定部62が判定した場合、ステップS20の処理を繰り返し行う。
【0074】
カウント時間tが所定時間taを経過したと時間判定部62が判定した場合(ステップS20:YES)、レーザ制御部48は、レーザ発振器20を制御してレーザ光Lをオンする(ステップS21)。
【0075】
その後、温度判定部46は、半田測定温度Tがオフ制御温度Toffに到達したか否かを判定し(ステップS22)、到達していない場合にはステップS22の処理を繰り返し行う。一方、半田測定温度Tがオフ制御温度Toffに到達したと判定された場合、レーザ制御部48は、レーザ発振器20を制御してレーザ光Lをオフする(ステップS23)。
【0076】
その後、制御部18は、レーザ光Lの繰り返し温度ストップ制御を開始してから所定制御時間が経過したか否かを判定し(ステップS24)、所定制御時間が経過していない場合にはステップS20以降の処理を再度行い、所定制御時間を経過した場合にはレーザ光Lの繰り返し温度ストップ制御を終了し、
図3のステップS6以降の処理を行う。
【0077】
本実施形態によれば、第1実施形態で説明した効果と同様の効果を奏する。また、レーザ光Lの繰り返し温度ストップ制御において、レーザ制御部48は、レーザ光Lがオフされてから所定時間ta経過した以後にレーザ光Lをオンし、レーザ光Lがオンされてから半田測定温度Tがオフ制御温度Toffに到達した時にレーザ光Lをオフしている。これにより、レーザ光Lの繰り返し温度ストップ制御において、半田温度が半田付け上限温度Tlまで上昇することを抑えつつ簡易な制御で半田Sへの入熱量を調整することができる。
【0078】
本発明に係るレーザ溶接システム及びレーザ溶接方法は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。本発明に係るレーザ溶接システム及びレーザ溶接方法は、クリーム半田を予めランドに設けておいた状態でレーザ半田付けを行ってもよい。また、上述した実施形態では、レーザ半田付けについて説明したが、レーザ光により溶加材としてのろう材を溶融させて複数のワークを溶接するレーザロウ付けについて本発明に係るレーザ溶接システム及びレーザ溶接方法を適用してもよい。