(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6285158
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】有機EL表示装置
(51)【国際特許分類】
G09G 3/3233 20160101AFI20180215BHJP
G09G 3/30 20060101ALI20180215BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20180215BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
G09G3/3233
G09G3/30 J
G09G3/30 K
G09G3/20 641D
G09G3/20 642K
G09G3/20 612U
G09G3/20 624B
G09G3/20 641G
H05B33/14 A
【請求項の数】16
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-243783(P2013-243783)
(22)【出願日】2013年11月26日
(65)【公開番号】特開2015-102723(P2015-102723A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植竹 猶基
【審査官】
橋本 直明
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2009/0128458(US,A1)
【文献】
特開2007−286470(JP,A)
【文献】
特開2007−047775(JP,A)
【文献】
特開2012−058639(JP,A)
【文献】
特開2008−268437(JP,A)
【文献】
特開2012−113965(JP,A)
【文献】
特表2007−524872(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/113448(WO,A1)
【文献】
特開2008−227182(JP,A)
【文献】
特開2009−109521(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0267892(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/3233
G09G 3/20
G09G 3/30
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の画素回路を有し第1の色を表示する第1の画素と、
前記第1の画素に隣接し、第2の画素回路を有し、前記第1の色とは異なる第2の色を表示する第2の画素と、を有する有機EL表示装置であって、
前記第1の画素回路は、
第1の発光領域を備える大発光素子と、
前記第1の発光領域よりも小さい第2の発光領域を備える小発光素子と、
前記小発光素子に電流を供給するか否かと、前記大発光素子に電流を供給するか否かと、前記第1の画素回路が表示する階調に応じて、前記小発光素子と前記大発光素子との一方、或いは両方に供給する前記電流の量とを制御する電流制御回路と、を有し、
前記第2の画素回路は、第3の発光領域を備える発光素子を一つのみ有し、且つ前記発光素子に供給する電流の量を調整する電流調整回路を有し、
前記第1の画素の発光領域は、前記第1の発光領域と前記第2の発光領域とからなり、
前記第2の画素の発光領域は、前記第3の発光領域のみからなり、
前記電流制御回路は、前記階調が閾値以下の場合に前記小発光素子へ前記電流を供給し、前記大発光素子へ前記電流を供給せず、前記階調が前記閾値より大きい場合には、前記大発光素子と前記小発光素子との両方に前記電流を供給する、
ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
前記第1の画素回路に含まれる電流制御回路は、前記第1の画素回路が表示する階調が前記閾値より大きい場合に、前記大発光素子に供給する電流の量が、前記階調の増加に応じて単純単調増加するように前記大発光素子に電流を供給する、
ことを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記電流制御回路は、ソースおよびドレインを含む駆動トランジスタを含み、
前記駆動トランジスタは、前記第1の画素回路が表示する階調に応じて前記小発光素子および前記大発光素子のうち前記電流が供給されるものに供給する電流の量を調節する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
前記大発光素子の一端は、スイッチを介して前記駆動トランジスタのソースおよびドレインのうち一方に接続される、
ことを特徴とする請求項3に記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
前記電流制御回路は、
前記階調が閾値と等しい場合には、前記小発光素子へ第1の電流を供給し、
前記階調が、前記閾値より大きく且つ前記閾値の次の階調である場合は、前記小発光素子へ前記第1の電流よりも小さい第2の電流を供給することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の有機EL表示装置。
【請求項6】
前記電流制御回路は、
前記階調が閾値と等しい場合には、前記小発光素子へ第1の電流を供給し、
前記階調が、前記閾値より大きく且つ前記閾値の次の階調である場合は、前記小発光素子へ第2の電流を供給し、
前記第1の電流の電流密度は、前記第2の電流の電流密度よりも大きいことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の有機EL表示装置。
【請求項7】
複数のサブ画素を備える画素をさらに有し、
前記第1の画素と前記第2の画素は、前記複数のサブ画素に含まれる、ことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の有機EL表示装置。
【請求項8】
前記電流制御回路は、前記階調に応じて前記電流の量を制御する駆動トランジスタを有し、
前記駆動トランジスタのソース電極又はドレイン電極の一方に、前記大発光素子と前記小発光素子とが並列に接続されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の有機EL表示装置。
【請求項9】
前記一方と前記大発光素子との間には、スイッチが配置されていることを特徴とする請求項8に記載の有機EL表示装置。
【請求項10】
前記スイッチはトランジスタであり、
前記トランジスタのゲート電極には、前記スイッチへ入力される信号を記憶するメモリ回路が接続されていることを特徴とする請求項9に記載の有機EL表示装置。
【請求項11】
第1の画素回路を有し第1の色を表示する第1の画素と、
前記第1の画素に隣接し、第2の画素回路を有し、前記第1の色とは異なる第2の色を表示する第2の画素と、を有する有機EL表示装置であって、
前記第1の画素回路は、
第1の発光領域を備える大発光素子と、
前記第1の発光領域よりも小さい第2の発光領域を備える小発光素子と、
前記小発光素子に電流を供給するか否かと、前記大発光素子に電流を供給するか否かと、前記第1の画素回路が表示する階調に応じて、前記小発光素子と前記大発光素子との一方、或いは両方に供給する前記電流の量とを制御する電流制御回路と、を有し、
前記第2の画素回路は、第3の発光領域を備える発光素子を一つのみ有し、且つ前記発光素子に供給する電流の量を調整する電流調整回路を有し、
前記第1の画素の発光領域は、前記第1の発光領域と前記第2の発光領域とからなり、
前記第2の画素の発光領域は、前記第3の発光領域のみからなり、
前記電流制御回路は、前記階調が閾値以下の場合に前記小発光素子へ前記電流を供給し、前記大発光素子へ前記電流を供給せず、前記階調が前記閾値より大きいと共に、前記閾値よりも大きい第2の閾値より小さい場合には、前記大発光素子のみに前記電流を供給し、前記階調が前記第2の閾値より大きい場合には、前記大発光素子と前記小発光素子との両方に前記電流を供給する、
ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項12】
前記第1の画素回路に含まれる電流制御回路は、前記第1の画素回路が表示する階調が前記閾値より大きい場合に、前記大発光素子に供給する電流の量が、前記階調の増加に応じて単純単調増加するように前記大発光素子に電流を供給する、
ことを特徴とする請求項11に記載の有機EL表示装置。
【請求項13】
第1の画素回路を有し第1の色を表示する第1の画素と、
前記第1の画素に隣接し、第2の画素回路を有し、前記第1の色とは異なる第2の色を表示する第2の画素と、を有する有機EL表示装置であって、
前記第1の画素回路は、
第1の発光領域を備える大発光素子と、
前記第1の発光領域よりも小さい第2の発光領域を備える小発光素子と、
前記小発光素子に電流を供給するか否かと、前記大発光素子に電流を供給するか否かと、前記第1の画素回路が表示する階調に応じて、前記小発光素子と前記大発光素子との一方、或いは両方に供給する前記電流の量とを制御する電流制御回路と、を有し、
前記第2の画素回路は、第3の発光領域を備える発光素子を一つのみ有し、且つ前記発光素子に供給する電流の量を調整する電流調整回路を有し、
前記第1の画素の発光領域は、前記第1の発光領域と前記第2の発光領域とからなり、
前記第2の画素の発光領域は、前記第3の発光領域のみからなり、
前記電流制御回路は、前記階調が閾値以下の場合に前記小発光素子へ前記電流を供給し、前記大発光素子へ前記電流を供給せず、前記階調が前記閾値より大きい場合には少なくとも前記大発光素子に前記電流を供給し、
前記電流制御回路は、前記階調に応じて前記電流の量を制御する駆動トランジスタを有し、
前記駆動トランジスタのソース電極又はドレイン電極の一方に、前記大発光素子と前記小発光素子とが並列に接続されている、
ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項14】
前記一方と前記大発光素子との間には、スイッチが配置されている、
ことを特徴とする請求項13に記載の有機EL表示装置。
【請求項15】
前記スイッチはトランジスタであり、
前記トランジスタのゲート電極には、前記スイッチへ入力される信号を記憶するメモリ回路が接続されていることを特徴とする請求項14に記載の有機EL表示装置。
【請求項16】
前記電流制御回路は、
前記階調が前記閾値より大きいと共に、前記閾値よりも大きい第2の閾値より小さい場合には、前記大発光素子のみに前記電流を供給し、
前記階調が前記第2の閾値より大きい場合には、前記大発光素子と前記小発光素子との両方に前記電流を供給する、
ことを特徴とする請求項13から15のいずれかに記載の有機EL表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は有機EL表示装置の開発が盛んに行われている。また、有機EL表示装置の各画素に多階調を表現させる有機EL表示装置や、フルカラー表示を実現する有機EL表示装置も普及しつつある。
【0003】
特許文献1には、有機EL表示装置が表示する各画素に多階調を表現させるため、電流プログラム方式を用いて各画素に含まれる発光素子を流れる電流の大きさを制御すること、そして所定の階調レベル以下では面積階調方式の画素回路で階調を表示し、所定の階調レベルより高い階調を電流プログラム方式の画素回路で階調を表示することが開示されている。
【0004】
特許文献2には、電流密度の変化による色バランスの変化を防ぐために、パルス幅変調制御や面積階調制御を用いて階調を表現することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−148306号公報
【特許文献2】特開2004−226673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
低い階調(輝度)を表現させるために発光素子を流れる電流を少なくすると、発光素子を流れる電流の密度が低下する。有機EL(Electro-Luminescence)発光素子は、電流密度があるレベルより低下すると輝度のコントロールが難しくなる。
【0007】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであって、その目的は、画素が表現すべき階調が低い場合にその画素の階調に応じた輝度をより正確に表現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下
の通りである。
【0009】
(1)第1の色を表示するための第1の画素回路であって、大発光素子と、前記大発光素子より発光領域が狭い小発光素子と、前記小発光素子および前記大発光素子のそれぞれに電流を供給するか否かと、前記第1の画素回路が表示する階調に応じて前記小発光素子および前記大発光素子のうち前記電流が供給されるものに供給する前記電流の量を制御する電流制御回路と、を含む第1の画素回路を含み、前記第1の画素回路に含まれる電流制御回路は、前記第1の画素回路が表示する階調が閾値以下の場合に前記小発光素子に電流を供給し、前記第1の画素回路が表示する階調が前記閾値より大きい場合には少なくとも前記大発光素子に電流を供給する、ことを特徴とする有機EL表示装置。
【0010】
(2)(1)において、前記第1の画素回路に含まれる電流制御回路は、前記第1の画素回路が表示する階調が前記閾値より大きい場合に、前記大発光素子に供給する電流の量が、前記階調の増加に応じて単純単調増加するように前記大発光素子に電流を供給する、ことを特徴とする有機EL表示装置。
【0011】
(3)(1)または(2)において、前記電流制御回路は、ソースおよびドレインを含む駆動トランジスタを含み、前記駆動トランジスタは、前記第1の画素回路が表示する階調に応じて前記小発光素子および前記大発光素子のうち前記電流が供給されるものに供給する電流の量を調節する、ことを特徴とする有機EL表示装置。
【0012】
(4)(3)において、前記大発光素子の一端は、スイッチを介して前記駆動トランジスタのソースおよびドレインのうち一方に接続される、ことを特徴とする有機EL表示装置。
【0013】
(5)(1)から(4)のいずれかにおいて、前記第1の色と異なる第2の色を表示するための第2の画素回路であって、1つの発光素子と、前記1つの発光素子に供給する電流の量を調整する電流調整回路と、を含む第2の画素回路をさらに含む、ことを特徴とする有機EL表示装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、画素が表現すべき階調が低い場合にその画素の階調に応じた輝度をより正確に表現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態にかかる有機EL表示装置の構成の一例を示す回路図である。
【
図5】小発光素子および大発光素子を流れる電流量と階調との関係を示す図である。
【
図6】小発光素子および大発光素子を流れる電流の電流密度と階調との関係の一例を示す図である。
【
図7】発光素子が出力する光の青成分の強度と、相対電流密度との関係の一例を示す図である。
【
図8】白色の発光素子の発光スペクトルと相対電流密度との関係の一例を示す図である。
【
図10】
図9に示す赤および緑のサブ画素を構成する画素回路の一例を示す図である。
【
図11】
図9に示す赤および緑のサブ画素を構成する画素回路に含まれる発光素子を流れる電流と諧調との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。出現する構成要素のうち同一機能を有するものには同じ符号を付し、その説明を省略する。以下では、白色の有機EL素子とカラーフィルタとを組み合わせた有機EL表示装置について説明する。
【0017】
本発明の実施形態にかかる有機EL表示装置は、表示領域DAと額縁領域とを含むアレイ基板と、アレイ基板の額縁領域上に配置される集積回路パッケージと、額縁領域に接続されるフレキシブル基板と、アレイ基板に対向し、カラーフィルタCFを含むカラーフィルタ基板とを含む。アレイ基板上の額縁領域は表示領域DAを囲んでいる。
【0018】
図1は、本発明の実施形態にかかる有機EL表示装置の構成の一例を示す回路図である。アレイ基板上の表示領域DA内には、複数の画素PXがマトリクス状に配置されている。なお、
図1では1列×2行の2つの画素PXしか示されていないが、実際には1280列×720行などの多数の画素PXが配置されている。各画素PXは、赤の画素回路PCR、緑の画素回路PCG、青の画素回路PCB、を含む。赤の画素回路PCR,緑の画素回路PCG,青の画素回路PCBはそれぞれ赤のサブ画素PR、緑のサブ画素PG、青のサブ画素PBを表示するための回路であり、
図1に示す例では赤の画素回路PCR,緑の画素回路PCG,青の画素回路PCBは横方向に並んでいる。
【0019】
画素回路PCR,PCG,PCBの列のそれぞれに対応して1本のデータ線DLと1本の制御線WLとが設けられている。データ線DLおよび制御線WLの本数はそれぞれ画素PXの列の数に画素PXあたりのサブ画素PR,PG,PBの数(
図1の例では3)をかけた数になる。複数のデータ線DLは、表示領域DA内を上下方向に並んで延び、その一端はデータ線駆動回路XDVに接続されている。また複数の制御線WLも表示領域DA内を上下方向に並んで延び、一端がデータ線駆動回路XDVに接続される。
【0020】
データ線駆動回路XDVには映像データが入力され、データ線駆動回路XDVは映像データに含まれるサブ画素PR,PG,PBの階調に応じた映像信号および制御信号を生成し、それぞれデータ線DLおよび制御線WLに出力する。
【0021】
また画素回路PCR,PCG,PCBの行のそれぞれに対応して1本の走査線GLが設けられている。走査線GLの数は画素PXの行数である。複数の走査線GLは、表示領域DAを左右方向に並んで延び、その一端は走査線駆動回路YDVに接続される。また画素回路PCR,PCG,PCBのそれぞれには電源電圧を供給する電源線PLが接続されている。
【0022】
図2はある画素PXの一例を示す図である。
図2は、有機EL表示装置の表示領域DA内の画素PXを外側からみた場合の配置を示す図である。各画素PXは、赤のサブ画素PR、緑のサブ画素PG、青のサブ画素PBを含んでおり、またサブ画素PR,PG,PBは、それぞれ大発光領域LR,LG,LBと、小発光領域SR,SG,SBとを含んでいる。カラーフィルタ基板上には、サブ画素PR,PG,PBのための赤、緑、青のカラーフィルタCFが設けられており、サブ画素PR,PG,PBの間に相当する領域には光を遮るブラックマトリクスBMが設けられている。大発光領域LR,LG,LBは小発光領域SR,SG,SBよりも広くなっている。なお、説明の容易のため、大発光領域LR,LG,LBのいずれかを大発光領域LAと呼び、小発光領域SR,SG,SBのいずれかを小発光領域SAと呼ぶ。小発光領域SAの大きさは大発光領域LAの大きさの1/5から1/4が好適である。
【0023】
図3は、画素回路PCR,PCG,PCBの一例を示す回路図である。画素回路PCR,PCG,PCBのそれぞれは、大発光素子LLと、小発光素子SLと、電流制御回路CTとを含む。
【0024】
電流制御回路CTは、データ線DLおよび制御線WLから入力される映像信号や制御信号に基づいて、大発光素子LLおよび小発光素子SLのそれぞれに電流を流すか否かと、大発光素子LLおよび小発光素子SLに電流が供給される際にそれらに供給する電流の量とを制御する。電流制御回路CTは、駆動トランジスタDRと、領域選択スイッチRSと、記憶容量C1と、画素スイッチPSと、メモリ回路MEと、を含む。大発光素子LLは大発光領域LR,LG,LBの光を出力する素子であり、小発光素子SLは、小発光領域SR,SG,SBの光を出力する素子である。大発光素子LLおよび小発光素子SLは、いずれも白色(赤色、緑色、青色の3原色全て)を発光するタイプの有機EL素子である。
【0025】
駆動トランジスタDRは、映像信号に応じて、大発光素子LLおよび小発光素子SLのうち電流が供給されるものに供給する電流の量を調節する。駆動トランジスタDRはpチャネル型の薄膜トランジスタであり、ソース電極は電源線PLに接続され、ドレイン電極は小発光素子SLのアノードに接続される。またドレイン電極は、領域選択スイッチRSを介して大発光素子LLにも接続される。領域選択スイッチRSは、大発光素子LLに電流を流すか否かを選択するためのスイッチである。また領域選択スイッチRSは、薄膜トランジスタであり、ゲート電極はメモリ回路MEに接続されている。なお、駆動トランジスタDRなどの薄膜トランジスタはnチャネル型の薄膜トランジスタであっても構わない。
【0026】
ここで、駆動トランジスタDRと小発光素子SLとを直接繋ぐ代わりに、小発光素子SLが領域選択スイッチRSと異なる選択スイッチを介して駆動トランジスタDRのドレイン電極に接続されていてもよい。この場合、その選択スイッチもメモリ回路MEに接続される。
【0027】
画素スイッチPSは薄膜トランジスタであり、走査線GLから走査信号が供給される水平期間にオンになり、画素スイッチPSがオンになるとデータ線DLから供給される映像信号などを記憶容量C1などに供給する。また記憶容量C1はデータ線DLから供給される映像信号と電源線PLの電位との電位差を記憶し、その電位差により駆動トランジスタDRが流す電流の量を制御する。メモリ回路MEは走査線GLから走査信号が供給される際に制御線WLに供給される電位を記憶し、次のフレーム(垂直走査期間経過後)にその画素回路PCR,PCG,PCBが走査されるまでその電位に基づいて領域選択スイッチRSのゲート電極に電位を供給し、領域選択スイッチRSをオンまたはオフするよう制御する。なお、大発光素子LL用の選択スイッチがある場合には、例えば領域選択スイッチRSに送る電位をNOT論理回路で処理した電位を供給してもよいし、別途第2の制御線を設けてデータ線駆動回路XDVから選択スイッチ制御用の信号を取得し、メモリ回路MEが別途その信号の電位を記憶し、選択スイッチのゲート電極にその記憶された電位を供給してもよい。
【0028】
図4は、サブ画素PR,PG,PBのうち1つの断面の一例を示す図である。アレイ基板は、ガラス基板SUB1と、ガラス基板SUB1上に形成された電流制御回路CTと、平坦化膜FLと、大発光素子LLの反射電極LREと、小発光素子SLの反射電極SREと、バンクBNと、有機発光層ELと、透明電極TEとを含む。反射電極LREと、有機発光層ELおよび透明電極TEのうち反射電極LREの上方にある部分とは大発光素子LLに相当し、反射電極SREと、有機発光層ELおよび透明電極TEのうち反射電極SREの上方にある部分とは小発光素子SLに相当する。また、カラーフィルタ基板は、ガラス基板SUB2と、カラーフィルタCFと、ブラックマトリクスBMとを含んでいる。
【0029】
図4や
図2から明らかなように大発光領域LAと小発光領域SAとの間にはブラックマトリクスBMは形成されていない。また有機発光層ELのうち、大発光素子LLに相当する領域と小発光素子SLに相当する領域とが接続されている。大発光素子LLと小発光素子SLとの間で有機発光層ELを切断しなくても、小発光素子SLの反射電極SREのみに電圧がかかれば小発光領域SAのみが発光し、もし大発光素子LLの反射電極LREのみに電圧がかかれば大発光領域LAのみが発光する。このようにすることで各サブ画素PR,PG,PBにおいて発光する領域の割合を増やすことができる。
【0030】
次に、小発光素子SLおよび大発光素子LLを用いて画像データが示す階調に応じた輝度をサブ画素PR,PG,PBに表現させる方法について説明する。サブ画素PR,PG,PBの階調は映像データとしてデータ線駆動回路XDVに入力される。データ線駆動回路XDVはサブ画素PR,PG,PBごとに、その階調に応じて小発光素子SLのみを発光させるか、大発光素子LLを発光させるかを判定する。データ線駆動回路XDVは閾値D1以下の階調では小発光素子SLのみを発光させると判定し、その閾値D1を超える階調では小発光素子SLと大発光素子LLとを発光させると判定する。なお、駆動トランジスタDRと大発光素子LLとの間に選択スイッチがある場合には、閾値D1を超える階調では大発光素子LLのみに電流を流し、さらに別の閾値D2を超える場合に大発光素子LLと小発光素子SLとの両方に電流を流すようにしてもよい。
【0031】
そして、データ線駆動回路XDVはその判定結果と階調とに応じた映像信号の電位と大発光素子LLに電流を流すか否かを制御する制御信号とを生成し、画素回路PCR,PCG,PCBが走査線駆動回路YDVにより走査されるタイミングでその画素回路PCR,PCG,PCBに接続されるデータ線DLに生成された映像信号および制御信号を供給する。画素回路PCR,PCG,PCBに含まれる電流制御回路CTは供給された映像信号と制御信号とを記憶し、小発光素子SLおよび大発光素子LLを流れる電流の量を制御する。より具体的には電流制御回路CTは制御信号により、閾値D1以下の階調では領域選択スイッチRSをオフにし、閾値D1を超える階調では領域選択スイッチRSをオンにする。
【0032】
図5は、小発光素子SLおよび大発光素子LLを流れる電流量と階調との関係を示す図である。
図5に示すグラフにおいて、実線が大発光素子LLに流れる電流量と階調との関係を示し、破線が小発光素子SLに流れる電流量と階調との関係を示す。閾値D1以下の階調では小発光素子SLを流れる電流の量は階調の増加に応じて単純単調増加する一方、大発光素子LLには電流が流れない。また、閾値D1を超える階調では、小発光素子SLと大発光素子LLとの両方に電流が流れ、階調が増加するにつれ、大発光素子LLおよび小発光素子SLを流れる電流の量はそれぞれ単純単調増加する。ただし、閾値D1の次の階調では大発光素子LLを流れる電流が生じるのに対応して小発光素子SLを流れる電流の階調が閾値D1の階調よりも減っている。
【0033】
このように電流を流すことで、電流密度の低下を抑えることができる。
図6は、小発光素子SLおよび大発光素子LLを流れる電流の電流密度と階調との関係を示す図である。仮に閾値D1以下の階調で大発光素子LLにも電流を流すようにすると、階調が最低階調から閾値D1まで増加するにつれ、電流密度が0からαに単純単調増加するため、閾値D1以下の階調では電流密度がα以下となる。一方、閾値D1以下の階調で小発光素子SLのみに電流を流し、大発光素子LLに電流を流さないようにすると、小発光素子SLを流れる電流の電流密度は大発光素子LLに電流を流す場合に比べ、おおよそ((小発光素子SLの面積+大発光素子LLの面積)/小発光素子SLの面積)倍になるため、閾値D1以下における電流密度の低下を抑えられる。それにより、電流密度がα以下になる階調D3は、D1より低くなる。
【0034】
図7は、有機EL素子が出力する光の青成分の強度と、相対電流密度との関係を示す図である。
図7は相対電流密度は最大の階調における100とした比を示し、相対発光強度は光の赤成分の発光強度を1とした際の比を示す。相対電流密度がある大きさを超える範囲TBは、相対電流密度がそれより小さな範囲TAに比べ、電流密度の変化に伴う相対発光強度の変化が小さく線形的であるため、補正などによる輝度の調整が容易である。一方、範囲TAでは電流密度の変化に伴い相対発光強度が非線形的に大きく変化する。この範囲TAでは発光強度そのものの変化も急峻となるため、補正しても輝度の調整が極めて難しい。本実施形態では輝度の調整が容易な範囲TBをより低い階調でも用いることが可能になるため、より正確に階調に応じた輝度を実現することが可能になる。
【0035】
また、有機EL表示装置がより正確な色調を表現することも可能となる。
図8は、白色の有機EL素子の発光スペクトルと相対電流密度との関係の一例を示す図である。
図8からわかるように、相対電流密度の低下に伴う相対発光強度の減少の大きさは青、緑、赤の成分で異なっている。電流密度が低下すると特定の色成分の発光強度が他の色成分の発光強度に比べて大きく減少するため、例えば電流密度が小さくなると発光色が黄色っぽくなるなど、発光素子が出力する光の色調が変化してしまう。本実施形態では低諧調においてこの電流密度の低下を抑えるため、色調の変化も抑えることが可能になる。なお、電流密度の低下に伴い相対発光強度が低下しやすい色は有機EL素子の製造方法などにより異なるため、発光素子の種類によっては、青以外の色の成分が電流密度によって変化する場合もありうる。
【0036】
ここで、画素PXに含まれるサブ画素PR,PG,PBの一部を大発光素子LLと小発光素子SLとを含む画素回路で実現し、残りを1つの発光素子ILを含む画素回路で実現してもよい。
図9は、画素PXの他の一例を示す図である。
図8の例において電流密度の低下に伴う相対発光強度の減少が少ないのが赤色と緑色のサブ画素PR,PGであるので、赤のサブ画素PRおよび緑のサブ画素PGは、1つの発光領域IR,IGのみを含んでおり、青のサブ画素PBと異なり大発光領域LBと小発光領域SBとに分割されていない。
【0037】
図10は、
図9に示す赤及び緑のサブ画素PR,PGを構成する画素回路PCR,PCGの一例を示す図である。画素回路PCR,PCGが有する発光素子ILの数は1であり、その発光素子ILは駆動トランジスタDRに接続されている。画素回路PCR,PCGは領域選択スイッチRSやメモリ回路MEを含まず、制御線WLも必要としない。
【0038】
図11は、
図9に示す赤及び緑のサブ画素PR,PGを構成する画素回路PCR,PCGに含まれる発光素子ILを流れる電流と階調との関係の一例を示す図である。発光素子ILを流れる電流の量は、階調が増加するにつれて単純単調増加している。したがって、赤と緑のサブ画素PR,PGでは例えば閾値D1より低い階調で相対発光強度が低くなる傾向は生じるものの、青のサブ画素PBに比べればその低下量は少ない。映像信号の補正などを行えばこの低下に伴う色調への影響を限定することができる。したがって、
図9に示す画素PXの例では、より正確な色調の表現を可能にしつつ、
図2の例と比べて制御線WLなどの配線や薄膜トランジスタの数を削減し、アレイ基板の回路構成を簡略化することが可能となる。
【0039】
ここまでは画素PXを3つのサブ画素PR,PG,PBで表現する例について説明したが、1つの画素PXを4つのサブ画素PR,PG,PB,PWで構成してもよい。この場合にも大発光素子LLと小発光素子SLとを用いて輝度をより正確に表現したり、より正確な色調を表現することができる。
【0040】
図12は、画素PXの他の一例を示す図である。画素PXは4つのサブ画素PR,PG,PB,PWからなる。
図13の例では、白のサブ画素PWは白の大発光領域LWと白の小発光領域SWとを有する。また赤のサブ画素PRは赤の大発光領域LRと赤の小発光領域SRとを有し、緑のサブ画素PGは緑の大発光領域LGと緑の小発光領域SGとを有し、青のサブ画素PBは青の大発光領域LBと青の小発光領域SBとを有する。白のサブ画素PWは、図示しない白の画素回路PCWにより実現される。白の画素回路PCWの構成は画素回路PCR,PCG,PCBと同様の構成であり、データ線駆動回路XDVから供給される映像信号と制御信号とに基づいて大発光素子LLと小発光素子SLとを流れる電流を制御する。
【0041】
白のサブ画素PWでは、カラーフィルタCFを介さない光が出力されるため、
図8で説明した色調の変化が生じると、その色調の変化がそのまま有機EL表示装置を観る者に伝わってしまう。
図12の例では、白の画素回路PCWにおいても低輝度の際に小発光素子SLのみを発光させることで、色調の変化を直接的に抑えることができる。
【0042】
図13は、画素PXの他の一例を示す図である。
図13の例では、白のサブ画素PWは白の大発光領域LWと白の小発光領域SWとを有し、青のサブ画素PBは青の大発光領域LBと青の小発光領域SBとを有する。一方、赤のサブ画素PRおよび緑のサブ画素PGは、それぞれ1つの発光領域IR,IGのみを含んでいる。
図8の例の場合において、相対発光強度の変化の大きい青と、色調が変化しやすい白とは小発光素子SLを設ける必要性が高いからである。こうすることで、4つのサブ画素PR,PG,PB,PWからなる画素PXの輝度や色調をより正確に表現しつつ、回路の簡略化をはかることができる。
【0043】
図14は、画素PXの他の一例を示す図である。
図14の例では、青のサブ画素PBは青の大発光領域LBと青の小発光領域SBとを有する。一方、白のサブ画素PW、赤のサブ画素PR、緑のサブ画素PGは、それぞれ1つの発光領域IW,IR,IGのみを含んでいる。そして、データ線駆動回路XDVは閾値D1より小さい階調では白のサブ画素PWを発光させない映像信号を画素回路PCWに向けて出力し、代わりに赤、緑、青のサブ画素PR,PG,PBを発光させるように映像信号を出力する。こうすれば赤、緑、青のサブ画素PR,PG,PBに含まれる小発光素子SLまたは発光素子ILに流れる電流を増加させることができ、輝度や色調の表現を
図13の例より正確に制御することが可能になる。また階調がD1より低い場合にはサブ画素PWを用いるメリットである低消費電力化は得られないものの、低い階調ではもともと消費電力削減の効果は小さいため、全体として見れば十分に低消費電力化を図ることができる。
【符号の説明】
【0044】
DA 表示領域、DL データ線、PL 電源線、WL 制御線、GL 走査線、PCR,PCG,PCB,PCW 画素回路、PX 画素、XDV データ線駆動回路、YDV 走査線駆動回路、IR,IG,IW 発光領域、LR,LG,LB,LW,LA 大発光領域、SR,SG,SB,SW,SA 小発光領域、PR,PG,PB,PW サブ画素、PX 画素、CT 電流制御回路、C1 記憶容量、ME メモリ回路、DR 駆動トランジスタ、IL 発光素子、LL 大発光素子、SL 小発光素子、PS 画素スイッチ、RS 領域選択スイッチ、BM ブラックマトリクス、BN バンク、CF カラーフィルタ、EL 有機発光層、FL 平坦化膜、SUB1 ガラス基板、SUB2 ガラス基板、LRE 反射電極、SRE 反射電極、TE 透明電極。