(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ソーセージ、チーズ、ハンバーグ、ういろう等の固体状またはペースト状の加工食品などの内容物が充填された充填包装体は、通常、帯状の樹脂製フィルムの長手方向に延びる両側縁部を縦シールして形成した、長手方向に延びる縦シール部を有する筒状の樹脂製フィルムの内部に、前記の加工食品などの内容物が充填され、該筒状の樹脂製フィルムの長手方向の両端部が、アルミワイヤクリップ等の金属製のワイヤクリップ或いは横シールフィルムまたはその他の手段によって集束され密封された構造となっている。充填包装体に備えられる筒状の樹脂製フィルムを形成する樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリアミド系樹脂(ナイロン−6等)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂などが使用されるが、酸素バリア性に優れ、耐熱性や強度のバランスの観点から、ポリ塩化ビニリデン系樹脂が好ましく使用されている。
【0003】
帯状の樹脂製フィルムから筒状の樹脂製フィルムを形成するための縦シールとしては、樹脂の特性等に応じて、高周波誘導加熱、超音波加熱、レーザー加熱、抵抗加熱等による溶着や、接着剤による接着(ヒートシールを含む。)などの方法が採用され、また、縦シールの態様としては、いわゆる合掌貼りや封筒貼りなどが知られている。合掌貼りによる場合は、通常、筒状の樹脂製フィルムの外表面上に長手方向に沿う突出部が形成され、該突出部は突出したままとされることもあるし、筒状の樹脂製フィルムに仮シール(仮接着)されることもある。封筒貼りによる場合は、帯状の樹脂製フィルムの長手方向に延びる両側縁部のいずれもが縦シールされているものと、一方の側縁部のみが縦シールされ、残りの一方の側縁部が縦シールされていないものとがある。更に後者においては、縦シールされていない一方の側縁部の近傍部分が、筒状の樹脂製フィルムに仮シール(仮接着)されるものと、仮シール(仮接着)されないものとがある。
【0004】
これらの充填包装体から筒状の樹脂製フィルムを剥がして内容物である加工食品などを取り出すためには、筒状の樹脂製フィルムの長手方向両端部の集束された部分を切断して除去したり、筒状の樹脂製フィルムを例えば長手方向に延びる両側縁部の縦シールされた部分に沿って、または、縦シールされた部分に直交する方向に切断したりして、内容物を露出させる必要がある。しかしながら、筒状の樹脂製フィルム、例えば、ポリ塩化ビニリデン系樹脂から形成された筒状の樹脂製フィルムは、フィルムが強靭であるため、消費者が内容物を取り出す際、手指の力だけでは開封ができない場合がある。この場合は、ハサミやナイフ等の切断用具を用意して切断しなければならず、または、切断用具を利用しても、内容物を良好に露出させられないこともあるなどの問題があった。
【0005】
このため、充填包装体の筒状の樹脂製フィルムには、開封片(カットテープまたはオープナということもある。)が、超音波溶着、高周波溶着、熱溶着等の溶着や接着剤による接着などにより接合されて設けることが行われていた(特許文献1及び2)。例えば、筒状の樹脂製フィルムと開封片とが、それぞれの長手方向が直交する方向に貼付されている場合、開封片の長手方向の一方の端部を指で掴んでめくることによって、接合部が起点となって筒状の樹脂製フィルムに破断部が形成され、この破断部をきっかけとして筒状の樹脂製フィルムに開口部が形成されるので、その開口部から筒状の樹脂製フィルムを剥がし取って、加工食品などの内容物を露出させ取り出すことができる。しかしながら、充填包装体の構成や形状によっては、開封片の貼付による効果が十分でない場合もあり、また、開封片の貼付を行うためにコスト増や工程追加が必要となるという問題があった。
【0006】
筒状の樹脂製フィルムの長手方向に延びる縦シール部の形状や構造を調整することにより、充填包装体からの内容物の取り出しを容易にする方法も検討されており、縦シール部を外耳部を有するものとし、該外耳部に穴や切れ目や傷痕を設けることも知られている(特許文献3及び4)が、コスト増や工程追加が必要となるという問題があった。したがって、充填包装体からの内容物の取り出しが容易である易開封性を有する充填包装体が望まれていた。
【0007】
加工食品などの内容物が充填された充填包装体は、通常、殺菌のために、レトルト加熱装置により温度100℃以上で加圧下に加熱処理され、これにより例えば魚肉ソーセージは常温で90日間の保存が可能となる。レトルト加熱の条件としては、例えば、温度100〜150℃、圧力1〜3kg/cm
2、数分間〜1時間の範囲が採用される。レトルト加熱に際しては、内容物の体積膨張、及び場合によって生じることがある筒状の樹脂製フィルムや開封片の熱収縮や変形などによって、筒状の樹脂製フィルム縦シール部の剥離、筒状の樹脂製フィルムの耳部(外耳部及び/または内耳部)や開封片等のカール変形、充填包装体の破断や更には破裂が発生することがある。
【0008】
充填包装体において、シールされた部分の剥離や破断が生じると、外気の流入により内容物が変質し、正常な品質の製品が得られないおそれがある。また、筒状の樹脂製フィルムの耳部や開封片に変形が生じると、充填包装体の取り扱いや輸送時に更なる破損が生じて、商品の見栄えや購買意欲を損なったり、充填包装体からの内容物の取り出しに支障が生じたりすることがある。さらに、レトルト加熱中に充填包装体の破損が生じると、破損品の除去のために運転を停止する必要があり生産効率が低下することになる。したがって、レトルト加熱中に充填包装体の破損等が生じることがないレトルト耐性を有する充填包装体が望まれていた。
【0009】
しかしながら、充填包装体をレトルト耐性を有するものとするために、筒状の樹脂製フィルムの縦シール部のシール強度を大きくすると、易開封性が損なわれ、充填包装体の易開封性とレトルト耐性は相反することが多かった。特有の層構成とするなどの試みもある(特許文献5)が、簡便なものではなく、易開封性とレトルト耐性との両立も十分なものではなかった。
【0010】
すなわち、内容物が充填されて封入されてなる充填包装体において、充填包装体からの内容物の取り出しが容易である易開封性を有するとともに、レトルト加熱中に充填包装体の破損等が生じることがないレトルト耐性を有する、易開封性でレトルト耐性である充填包装体が求められていた。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.筒状の樹脂製フィルム
本発明の充填包装体は、筒状の樹脂製フィルム及び内容物を備える充填包装体であって、該筒状の樹脂製フィルムは、長手方向に延びる外耳部を有する縦シール部を備え、長手方向の両端部が集束されたものである。
【0021】
筒状の樹脂製フィルムを形成する樹脂製フィルムとしては、従来、ソーセージ、プロセスチーズ、ハム、ハンバーグ等の加工食品などの内容物が充填されて封入され密閉状に個別包装された充填包装体に備えられる筒状の樹脂製フィルムを形成するために使用されている樹脂製フィルムを使用することができ、その材料や大きさ等は特に限定されない。
【0022】
〔樹脂材料〕
すなわち、筒状の樹脂製フィルムを形成する樹脂材料としては、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリアミド系樹脂(ナイロン−6等)、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)などが挙げられる。酸素バリア性や水蒸気バリア性の観点から、筒状の樹脂製フィルムは、ポリ塩化ビニリデン系樹脂から形成されることが好ましい。
【0023】
〔ポリ塩化ビニリデン系樹脂〕
筒状の樹脂製フィルムを形成する樹脂材料として好ましく使用されるポリ塩化ビニリデン系樹脂(以下、「PVDC」ということがある。)とは、塩化ビニリデンのホモ重合体でもよいが、通常、塩化ビニリデン60〜98質量%と、塩化ビニリデンと共重合可能な他の単量体2〜40質量%との共重合体である。塩化ビニリデンと共重合可能な他の単量体としては、例えば、塩化ビニル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ラウリル等のアクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素数1〜18);メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素数1〜18);アクリロニトリル等のシアン化ビニル;スチレン等の芳香族ビニル;酢酸ビニル等の炭素数1〜18の脂肪族カルボン酸のビニルエステル;炭素数1〜18のアルキルビニルエーテル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等のビニル重合性不飽和カルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のビニル重合性不飽和カルボン酸のアルキルエステル(部分エステルを含み、アルキル基の炭素数1〜18)などが挙げられる。より好ましくは塩化ビニル、アクリル酸メチルまたはアクリル酸ラウリルから選ばれる少なくとも1種である。塩化ビニリデンと共重合可能な他の単量体は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。他の単量体の共重合割合は、より好ましくは3〜35質量%、更に好ましくは3〜25質量%、特に好ましくは4〜22質量%の範囲である。他の単量体の共重合割合が少なすぎると溶融加工性が低下する傾向にあり、他方、他の単量体の共重合割合が大きすぎるとガスバリア性が低下する傾向にある。また、溶融加工性を向上させるために2種以上のPVDCを混合してもよい。
【0024】
本発明で好ましく使用されるPVDCは、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法等の任意の重合法により合成することができるが、粉体レジンとしてコンパウンドを形成する場合には、懸濁重合法により合成することが好ましい。このように懸濁重合法により合成した場合には、PVDCからなる粉体レジンの粒度を調整するための粉砕工程を必要としない傾向にある。このようなPVDCからなる粉体レジンの粒度は、40μm〜2mmの範囲であることが好ましく、50μm〜1mmの範囲であることがより好ましく、60〜700μmの範囲であることが更に好ましい。なお、粉体レジンの粒度は、例えば、標準篩いを用いる乾式篩い分け法により測定するものである。
【0025】
〔添加剤〕
筒状の樹脂製フィルムを形成する樹脂材料、好ましくはPVDCには、必要に応じて、従来、充填包装体に備えられる筒状の樹脂製フィルムにおいて、種々の特性や成形加工性の改良を目的として添加される熱安定剤、可塑剤、加工助剤、着色剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、分散助剤等の各種添加剤を含有させることができる。
【0026】
例えば、熱安定剤としては、エポキシ化植物油、エポキシ化動物油、エポキシ化脂肪酸エステル、エポキシ樹脂プレポリマー等のエポキシ化合物;エポキシ基含有樹脂等が挙げられ、好ましくはエポキシ化植物油である。熱安定剤を使用する場合の含有量は、樹脂材料、好ましくはPVDC100質量部に対して、0.05〜6質量部の範囲であることが好ましく、0.08〜5質量部の範囲であることがより好ましく、0.1〜4質量部の範囲であることが特に好ましい。熱安定剤の含有量が小さすぎると、熱安定性を十分に改善することができず、成形加工が困難になるとともに、黒化の原因となることがある。他方、熱安定剤の含有量が大きすぎると、筒状の樹脂製フィルムのガスバリア性や耐寒性が低下したり、ブリードやフィッシュアイの原因となったりすることがある。他の添加剤の種類や添加量についても、従来、充填包装体に備えられる筒状の樹脂製フィルムにおいて、使用される各種添加剤におけると同様に選択することができる。これらの添加剤は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの添加剤は、その使用量の一部または全部をPVDC等の樹脂材料の重合工程で単量体組成物中に含有させてもよいし、重合後にPVDC等の樹脂材料にブレンドしてもよい。
【0027】
〔他の樹脂〕
さらに、筒状の樹脂製フィルムを形成する樹脂材料、好ましくはPVDCには、種々の特性や成形加工性の改良を目的として、必要に応じて、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリエチレン(低密度ポリエチレンまたは高密度ポリエチレン)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル酸エステルの単独重合体または共重合体、メタクリル酸エステルの単独重合体または共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体等の他の樹脂を含有させることができる。アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルは、アルキル基の炭素数1〜18のアルキルエステルであることが好ましい。本発明の充填包装体に備えられる筒状の樹脂製フィルムにおいて、長手方向に延びる外耳部を有する縦シール部の剥離強度を所定の範囲に調整することが容易であること、具体的には、例えば縦シール部を高周波誘導加熱により形成する場合、シール電流の調整範囲の選定が容易であることから、他の樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、「EVA」ということがある。)がより好ましい。他の樹脂を使用する場合の含有量は、樹脂材料、好ましくはPVDC100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、16質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが更に好ましく、5質量部以下であることが特に好ましい。中でも樹脂材料がPVDCであり、他の樹脂がEVAである場合は、EVAの含有量は、PVDC100質量部に対して5質量部以下であることが好ましい。すなわち、筒状の樹脂製フィルムは、PVDC100質量部に対してEVAを5質量部以下含有するPVDCから形成されるものであることが特に好ましく、3質量部以下であることが更に好ましい。また、EVAのエチレン含量は、成形フィルムの透明性を維持するためには85質量%以下が好ましく、押出機モーター負荷の安定性の点からはエチレン含量65質量%以上が好ましいが、特に限定されない。
【0028】
他の樹脂の性状、形状や大きさは、筒状の樹脂製フィルムを形成する樹脂材料との均一分散性等を考慮して、所望により適宜選択することができる。例えば、粒状、粉末状またはペレット状等の固体状でもよいし、液状または融解状態のものでもよい。また、所望により、他の樹脂の表面を表面処理したものでもよい。
【0029】
〔筒状の樹脂製フィルムの大きさ及び厚み〕
筒状の樹脂製フィルムの大きさや厚みは、先に説明したように特に限定されず、充填される内容物の大きさに応じて定められる。筒状の樹脂製フィルムの周長は、通常15〜400mm、多くの場合30〜300mm、広く採用されるのは40〜200mmの範囲であり、筒状の樹脂製フィルムの長手方向の長さは、通常50〜400mm、多くの場合70〜300mm、広く採用されるのは80〜250mmの範囲である。また、筒状の樹脂製フィルムの厚みは、充填される内容物に応じたフィルムの強度やバリア性等を勘案して定められるが、通常15〜300μm、多くの場合18〜200μm、広く採用されるのは20〜150μmの範囲である。
【0030】
筒状の樹脂製フィルムとしては、熱収縮性フィルム(一軸延伸フィルムまたは二軸延伸フィルム)を使用することもできる。さらに、筒状の樹脂製フィルムの強度の増大、ガスバリア性の改良、耐熱性の改良、収縮性の調整などのために、積層フィルムを使用することもでき、例えば、PVDCフィルムと、ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリプロピレンフィルム等の他の樹脂製フィルムとの積層フィルムを使用することができる。また、筒状の樹脂製フィルムは、印刷が施されたものでもよい。
【0031】
〔ヒートシール層〕
さらに、本発明の充填包装体において必須ではないが、筒状の樹脂製フィルムは、少なくとも一部分にヒートシール層を備えるものでもよい。本発明における筒状の樹脂製フィルムは、少なくとも一部分にヒートシール層を備えることによって、後に説明する縦シール部の形成または仮シール部の形成の一方または両方をヒートシールによって行うことができる。
【0032】
なお、筒状の樹脂製フィルムとしては、該筒状の樹脂製フィルムに充填される内容物と密着しない非密着フィルムと、充填される内容物と密着する密着フィルムとがあり、本発明の充填包装体に備えられる筒状の樹脂製フィルムにおいてはいずれも使用することができる。充填される内容物と密着することにより内部に空気が存在しないので、腐敗防止の観点からは、密着フィルムである筒状の樹脂製フィルムが好ましいことが多いが、筒状の樹脂製フィルムと内容物との密着力が大きすぎると、該樹脂製フィルムが加工食品などの内容物から剥離しにくく、内容物を取り出しにくい場合がある。
【0033】
〔筒状の樹脂製フィルムの製造〕
本発明における筒状の樹脂製フィルムは、従来、充填包装体に備えられる筒状の樹脂製フィルムを製造する方法として採用されている方法によって得ることができる。具体的には、帯状の樹脂製フィルムの長手方向に延びる両側縁部が重なるように筒状に巻いて筒状フィルムを形成し、次いで、筒状フィルムの前記の両側縁部を縦シールすることにより、筒状の樹脂製フィルムを形成することができる。
【0034】
〔帯状の樹脂製フィルムの製造〕
筒状の樹脂製フィルムを形成するための帯状の樹脂製フィルムは、製造方法が特に限定されない。通常は押出成形によって、シート状または管状の押出フィルムを製造し、必要に応じて延伸処理して熱収縮性を付与した後、管状の押出フィルムの場合は内側同士を重ねて所定の幅を有する2枚重ねの帯状の樹脂製フィルムを得ることができ、更に必要に応じ長手方向に切断することにより、所望の幅を有する帯状の樹脂製フィルムを製造することができる。筒状の樹脂製フィルムが積層フィルムである場合は、共押出成形または押出ラミネーションにより積層した帯状の樹脂製フィルムを製造してもよいし、複数のフィルムを接着剤、例えばウレタン系接着剤により接着させて積層した帯状の樹脂製フィルムを製造してもよい。筒状の樹脂製フィルムを印刷が施されたものとする場合は、得られた帯状の樹脂製フィルムに印刷を施してもよい。
【0035】
〔長手方向に延びる外耳部を有する縦シール部〕
本発明の充填包装体に備えられる筒状の樹脂製フィルムは、長手方向に延びる外耳部を有する縦シール部を備えるものである。すなわち、本発明における筒状の樹脂製フィルムは、長手方向に延びる縦シール部を備え、該縦シール部は、同じく長手方向に延びる外耳部を有するものである。
【0036】
〔長手方向に延びる縦シール部〕
筒状の樹脂製フィルムに備えられる長手方向に延びる縦シール部は、従来、充填包装体に備えられる筒状の樹脂製フィルムに備えられる長手方向に延びる縦シール部と同様の趣旨で備えられるものである。すなわち、帯状の樹脂製フィルムを長手方向に延びる両側縁部が重なるように筒状に巻いて筒状フィルムを形成し、次いで、該筒状フィルムの前記の両側縁部を、高周波誘導加熱、超音波加熱、レーザー加熱、抵抗加熱等による溶着、接着剤による接着(ヒートシールを含む。)等の常法に従って、長手方向(縦方向)に連続してシール(接着)することにより、筒状の樹脂製フィルムが形成されるものである。縦シール部は、筒状の樹脂製フィルムの長手方向の全長に亘って備えられ、これにより、筒状の樹脂製フィルムに充填されて封入される内容物を密封状態に保存することができる。筒状の樹脂製フィルムに備えられる長手方向に延びる縦シール部の幅は、適宜定めることができる。
【0037】
〔長手方向に延びる外耳部〕
本発明における筒状の樹脂製フィルムに備えられる長手方向に延びる縦シール部が有する、同じく長手方向に延びる外耳部とは、先に説明した筒状フィルムの前記の帯状の樹脂製フィルムの両側縁部を、常法に従って長手方向(縦方向)に連続してシール(接着)するに際して、外表面に露出する側縁部の長手方向に直交する端部をシールしないことで形成される筒状の樹脂製フィルムの長手方向に延びる非シール部である。外耳部の幅は、通常1〜10mm、多くの場合2〜6mmの範囲内である。なお、長手方向に延びる外耳部(非シール部)は、通常、筒状の樹脂製フィルムの長手方向の全長に亘って均一の幅で形成されるが、外耳部(非シール部)の幅が異なるように形成してもよい。本発明の充填包装体は、筒状の樹脂製フィルムが長手方向に延びる外耳部を有する縦シール部を備えることによって、後に詳述する縦シール部の剥離強度を所望の範囲に容易に調整することができる。また、長手方向に延びる外耳部は、印刷が施されたものでもよい。
【0038】
〔仮シール部〕
長手方向に延びる外耳部が、筒状の樹脂製フィルムに仮シールされているものとしてもよい。仮シール部とは、手で軽く引っ張ることにより容易に剥離することができる程度のシール強度(剥離強度または接着強度ということもできる。)を有するシール部(接着部)を意味し、長手方向に延びる外耳部が、前記の仮シール部を有することによって、充填包装体の外観を良好なものとすることができ、また、充填包装体の製造の過程及び充填包装体のレトルト加熱や搬送や保管等の取り扱いの過程において生じることがある耳部(外耳部及び/または内耳部)の浮き上がりによるトラブルを回避することができる。仮シール部の形成は、常法によって行うことができる。
【0039】
〔長手方向の両端部の集束〕
本発明の充填包装体は、長手方向に延びる外耳部を有する縦シール部を備え、長手方向の両端部が集束された筒状の樹脂製フィルムを備える。すなわち、本発明の充填包装体は、筒状の樹脂製フィルムに加工食品等の内容物を充填した後に、筒状の樹脂製フィルムの長手方向の両端部を集束することによって形成され、内容物を密封状態に保存することができる。筒状の樹脂製フィルムの長手方向の両端部の集束は、従来、充填包装体に備えられる筒状の樹脂製フィルムについてされていた長手方向の両端部の集束方法、例えば、アルミワイヤクリップ等の金属製のワイヤクリップ或いは横シールフィルムまたはその他の手段による集束方法を採用することができる。
【0040】
2.筒状の樹脂製フィルムに充填されて封入された内容物
本発明の充填包装体に備えられる、前記の筒状の樹脂製フィルムに充填されて封入された内容物としては、特に限定されず、ソーセージ、チーズ、バター、ハンバーグ、ういろう、羊羹、ゼリー等の固体状またはペースト状の加工食品など、従来、充填包装体に充填される内容物を用いることができ、さらに、食品以外の例えばコーキング材などの建築資材や化粧品等を内容物として用いることもできる。内容物の組成や形状は適宜選択することができる。特に好ましい内容物としては、例えば、魚肉のすり身に油、食塩及びでん粉等の通常の添加剤を配合してなる魚肉ソーセージなどが挙げられる。
【0041】
3.充填包装体
本発明の充填包装体は、長手方向に延びる外耳部を有する縦シール部を備え、長手方向の両端部が集束された筒状の樹脂製フィルムに、内容物が充填されて封入されてなる充填包装体である。充填包装体の形状及び大きさは、通常、筒状の樹脂製フィルムの形状及び大きさに従って定まる。
【0042】
〔開封片〕
本発明の充填包装体は、所望により、開封片が筒状の樹脂製フィルムに貼付されているものとすることができる。開封片としては、従来、加工食品などの内容物を充填し封入してなる充填包装体に備えられ、筒状の樹脂製フィルムの一部に亀裂を発生させることにより筒状の樹脂製フィルムに開口部を形成するために使用されていた開封片を使用することができ、また、開封片を筒状の樹脂製フィルムに貼付する方法は、超音波溶着や接着剤による接着(ヒートシールを含む。)など、同様に従来知られている方法を採用することができる。
【0043】
すなわち、開封片としては、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリアミド系樹脂(ナイロン−6等)、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)などの樹脂材料から形成されたフィルムを、切断などにより所定の形状や大きさに形成してなるものが挙げられる。また開封片としては、前記のフィルムの層を備える積層フィルムを使用することもできる。多くの場合、開封片としては、筒状の樹脂製フィルムとの接着性などを考慮して、筒状の樹脂製フィルムを形成する樹脂材料と同じまたは親和性を有する樹脂材料が使用され、通常、同じ樹脂材料が使用される。筒状の樹脂製フィルムとしては、先に説明したように、ポリ塩化ビニリデン系樹脂から形成されるものが好ましく使用されるので、開封片についても、ポリ塩化ビニリデン系樹脂から形成されるものが好ましく使用される。
【0044】
開封片の形状や大きさは、開封片の貼付態様等を考慮して、適宜定めることができる。開封片の貼付態様としては、開封片と筒状の樹脂製フィルムとが、長手方向が直交する方向に貼付されているものや、開封片が縦シール部の前記の長手方向に延びる外耳部を覆うように筒状の樹脂製フィルムの長手方向に延びるものなど、従来、採用されている態様とすることができる。
【0045】
開封片を筒状の樹脂製フィルムに貼付する方法として好ましく採用される超音波溶着法としては、例えば、溶着部の形状に対応する所定の形状を有する超音波ホーンを、所望によりアンビルと組み合わせて使用して、超音波加熱する方法などが挙げられる。
【0046】
4.剥離強度
本発明の充填包装体は、筒状の樹脂製フィルムについて、該筒状の樹脂製フィルムに備えられる長手方向に延びる外耳部を有する縦シール部(以下、単に「縦シール部」ということがある。)は、T型剥離強度が23N以下、かつ、せん断剥離強度が40N以上であることを特徴とする充填包装体である。すなわち、本発明は、筒状の樹脂製フィルムに備えられる長手方向に延びる外耳部を有する縦シール部の剥離強度(以下、単に「縦シール部の剥離強度」ということがある。)について、T型剥離強度とせん断剥離強度とを独立に所定の範囲に制御することによって、筒状の樹脂製フィルムに、内容物が充填されて封入されてなる充填包装体において、充填包装体からの内容物の取り出しが容易である易開封性を有するとともに、レトルト加熱中に充填包装体の破損等が生じることがないレトルト耐性を有する、易開封性とレトルト耐性とを両立させた充填包装体が提供される。
【0047】
〔T型剥離強度〕
本発明の充填包装体は、縦シール部のT型剥離強度が23N以下である。充填包装体における縦シール部のT型剥離強度は、充填包装体から内容物を取り出した筒状の樹脂製フィルムについて、該フィルムの長手方向の略中央部の縦シール部の外耳部(仮シール部を有してもよい。)の長手方向に沿う長さ15mmの部分と、同じく筒状の樹脂製フィルムの縦シール部以外の部分(以下、「胴部」ということがある。)の長手方向に沿う長さ15mmとを引張試験機のクランプで挟み、引張速度300mm/分で剥離させる際の強度を、温度23℃にて測定する(n=3。単位:N)。
【0048】
本発明の充填包装体は、縦シール部のT型剥離強度が23N以下であることにより、弱い力で充填包装体の開封を行い、内容物を取り出すことができる易開封性を有する。易開封性の観点から、充填包装体の縦シール部のT型剥離強度は、好ましくは22N以下、より好ましくは21N以下、更に好ましくは20N以下である。充填包装体の縦シール部のT型剥離強度は、特に下限値がないが、せん断剥離強度を所定値以上のものとする観点から、通常5N以上、多くの場合7N以上である。
【0049】
〔せん断剥離強度〕
本発明の充填包装体は、縦シール部のせん断剥離強度が40N以上である。充填包装体における縦シール部のせん断剥離強度は、充填包装体から内容物を取り出した筒状の樹脂製フィルムについて、該フィルムの縦シール部に対して概ね線対称となる長手方向の略中央部の胴部2箇所を長手方向に沿う長さ15mmで、それぞれ引張試験機のクランプで挟み、引張速度300mm/分で剥離させる際の強度を、温度23℃にて測定する(n=3。単位:N)。
【0050】
本発明の充填包装体は、縦シール部のせん断剥離強度が40N以上であることにより、充填包装体をレトルト加熱処理するときに、内容部の膨張によって縦シール部のシールの一部または全部が破壊され、充填包装体に亀裂が発生したり、パンクが生じたりすることを防止することができるレトルト耐性を有する。レトルト耐性の観点から、充填包装体の縦シール部のせん断剥離強度は、好ましくは42N以上、より好ましくは44N以上、更に好ましくは46N以上である。充填包装体の縦シール部のせん断剥離強度は、特に上限値がないが、T型剥離強度を所定値以下のものとする観点から、通常70N以下、多くの場合60N以下である。
【0051】
5.易開封性及びレトルト耐性
本発明の充填包装体は、縦シール部のT型剥離強度が23N以下、かつ、せん断剥離強度が40N以上である特有の剥離強度を有することにより、易開封性及びレトルト耐性を併せて有するものである。易開封性及びレトルト耐性は、以下に説明する方法によって評価する。
【0052】
〔易開封性〕
本発明の充填包装体は、易開封性であり、筒状の樹脂製フィルムの縦シール部を指で摘まんで引き剥がす官能検査(以下、「レトルト後のシール強度の官能検査」ということがある。)において、適度な剥離感を感じることができるものである。充填包装体のレトルト後のシール強度の官能検査は、以下の方法に従って実施し、評価する。
【0053】
すなわち、10人の被験者(男性及び女性を含むものとする。)が、被験者ごとに5本の充填包装体について、それぞれの充填包装体の縦シール部の外耳部を指で摘まんで縦シール部を引き剥がすときに感じる剥離抵抗の強さに対して、以下の判定基準で点数を付与する(「1点」〜「5点」のいずれかとする。)。合計50本の充填包装体に付与された点数の平均値(小数点以下1桁までの点数で表示する。)を、当該充填包装体のレトルト後のシール強度の官能検査の値とする。
<判定基準>
5点: 強い力でも縦シール部が剥がれない、または、
縦シール部若しくは外耳部がちぎれる充填包装体がある(5本中1本以上)、
4点: 強い力であれば縦シール部が剥がれる
3点: 適度な力で縦シール部が剥がれる
2点: 弱い力で縦シール部が剥がれる
1点: 軽く触れただけで縦シール部が剥がれる
【0054】
充填包装体のレトルト後のシール強度の官能検査の値が4点を超えると、充填包装体は、筒状の樹脂製フィルムを剥離して内容物を取り出すことが容易でなく、易開封性を有するとはいえない。他方、充填包装体のレトルト後のシール強度の官能検査の値が1.8点未満であると、充填包装体は、一応易開封性を有すると評価することができるが、充填包装体の保管中または取り扱い中に、予期せず筒状の樹脂製フィルムが剥離し内容物が露出するおそれがあるので好ましくない。したがって、充填包装体は、レトルト後のシール強度の官能検査の値が1.8〜4点の範囲内であることが好ましく、より好ましくは2〜3.7点、更に好ましくは2.2〜3.5点の範囲内であることが望ましい。
【0055】
〔レトルト耐性〕
本発明の充填包装体は、該充填包装体を製造する際に行われるレトルト加熱に耐えるレトルト耐性を有するものである。充填包装体のレトルト耐性は、以下の方法に従って実施し、評価する。
【0056】
すなわち、充填包装体100本を、温度120℃、圧力2.0kg/cm
2(ゲージ圧)のレトルト釜内に15分間静置した後、取り出して、パンク(縦シール部が剥離しているものまたは縦シール部に亀裂があるもの)の本数(以下、「パンク本数」ということがある。)を目視で計数する。
【0057】
パンク本数が0本であれば、充填包装体はレトルト耐性を有すると評価する。他方、パンク本数が1本以上であれば、充填包装体はレトルト耐性を有しないと評価する。
【0058】
〔総合評価〕
本発明の充填包装体は、上記のシール強度の官能検査の値が1.8〜4点の範囲内であり、かつ、レトルト耐性を有すると評価することができるものであることにより、易開封性でレトルト耐性である充填包装体に該当するということができ、充填包装体としての総合評価において優れると評価することができる。充填包装体のシール強度の官能検査の値が1.8〜4点の範囲内でないか、レトルト耐性を有しない場合は、充填包装体としての総合評価において優れると評価することができない。
【0059】
6.充填包装体の製造方法
本発明の充填包装体は、長手方向に延びる外耳部を有する縦シール部を備え、長手方向の両端部が集束された筒状の樹脂製フィルムに、内容物が充填されて封入されてなる充填包装体であって、長手方向に延びる外耳部を有する縦シール部は、T型剥離強度が23N以下、かつ、せん断剥離強度が40N以上であることを特徴とする充填包装体を得ることができる限り、その製造方法は限定されない。好ましくは、帯状の樹脂製フィルムを、長手方向に延びる両側縁部が重なるように筒状に巻く筒状フィルム形成工程;筒状フィルムの前記の両側縁部を縦シールして、長手方向に延びる外耳部を有する縦シール部を備える筒状の樹脂製フィルムを形成する縦シール工程;前記の筒状の樹脂製フィルムに内容物を充填する充填工程;及び前記の筒状の樹脂製フィルムの長手方向の両端部を集束する端部集束工程;を含む前記の充填包装体の製造方法によって、容易に製造することができる。
【0060】
〔筒状フィルム形成工程〕
帯状の樹脂製フィルムを、長手方向に延びる両側縁部が重なるように筒状に巻いて筒状フィルムを形成する。帯状の樹脂製フィルムは先に説明した方法に従って製造することができる。通常は、両側縁部が帯状の樹脂製フィルムの長手方向に直交する外周面に沿って重なるようにすればよいが、所望によっては、両側縁部が前記の外周面から立ち上がって重なるようにして筒状フィルムを形成してもよい。
【0061】
〔縦シール工程〕
筒状フィルムの前記の両側縁部を縦シールして、長手方向に延びる外耳部を有する縦シール部を備える筒状の樹脂製フィルムを形成する。すなわち、帯状の樹脂製フィルムから形成された筒状フィルムの長手方向に重なって延びる両側縁部を、長手方向に延びる所定の幅で連続的に縦シールすることにより長手方向に延びる縦シール部を形成するとともに、少なくとも外表面に露出する側縁部の長手方向に直交する端部をシールしないことによって筒状の樹脂製フィルムの長手方向に延びる非シール部である外耳部を形成する。
【0062】
縦シールする方法は、高周波誘導加熱、超音波加熱、レーザー加熱、抵抗加熱等による溶着、接着剤による接着(ヒートシールを含む。)等の常法を採用することができる。筒状の樹脂製フィルムがポリ塩化ビニリデン系樹脂等の極性を有する樹脂から形成される場合は、縦シールの効率性や、シール強度の調整の容易さなどの観点から、高周波誘導加熱による縦シールが好ましい。例えば、本発明の充填包装体における縦シール部のT型剥離強度及びせん断剥離強度の調整は、高周波電力を印加するための電流または電圧の一方または両方を調整したり、高周波を印加する部位を調整したりすることによって容易に行うことができる。具体的には、筒状フィルムの長手方向に重なって延びる両側縁部を走行させながら、高周波誘導加熱装置のシール電極とアース電極との間を通過させる。この両電極の間に高周波電力を供給することにより、筒状フィルムの重なった両側縁部に高周波溶着による連続的な縦シール部が形成される。
【0063】
〔仮シール部の形成工程〕
所望によっては、先に説明したように、本発明における筒状の樹脂製フィルムは、長手方向に延びる外耳部が、筒状の樹脂製フィルムとの仮シール部を有するものとすることができる。したがって、本発明の充填包装体の製造方法は、所望によっては、縦シール工程に続いて、仮シール部の形成工程を含むものであってもよい。仮シール部の形成工程におけるシール方法は、縦シール工程について説明したと同様の常法を採用することができる。
【0064】
〔開封片の貼付工程〕
また、所望によっては、先に説明したように、本発明の充填包装体は、開封片が筒状の樹脂製フィルムに貼付されているものとすることができる。したがって、本発明の充填包装体の製造方法は、所望によっては、縦シール工程に続いて、開封片の貼付工程を含むものであってもよい。開封片を筒状の樹脂製フィルムに貼付する方法は、超音波溶着や接着剤による接着(ヒートシールを含む。)など、同様に従来知られている方法を採用することができる。例えば、溶着部の形状に対応する所定の形状を有する超音波ホーンを、所望によりアンビルと組み合わせて使用して、超音波加熱する方法などが挙げられる。
【0065】
〔充填工程〕
縦シール工程によって得られた筒状の樹脂製フィルムには、内容物を充填する。すなわち、筒状の樹脂製フィルムを通常は上方から下方に所定速度で走行させながら、筒状の樹脂製フィルムの開口部に、ポンプとノズルとを備える充填装置のノズルから内容物を連続的に供給して充填を行う。充填装置や、筒状の樹脂製フィルムを走行させ案内する機構等はそれ自体公知のものから適宜選択することができ、筒状の樹脂製フィルムの走行及び内容物の充填速度等は、通常の範囲内において適宜選択することができる。
【0066】
〔端部集束工程〕
内容物が充填された筒状の樹脂製フィルムの長手方向の両端部を順次集束することにより、筒状の樹脂製フィルムに、内容物が充填されて封入されてなる充填包装体を得ることができる。具体的には、内容物が充填された筒状の樹脂製フィルムを走行させながら、例えば一対のローラからなるしごき装置を使用して、本発明の充填包装体の下端部に相当する箇所の下方及び上端部に相当する箇所の上方の筒状の樹脂製フィルムに内容物の不存在部を形成し、該内容物の不存在部の上端部及び下端部を集束することにより、本発明の充填包装体の下端部及び上端部を形成し、所定の長さに切断して本発明の充填包装体を得る。端部集束工程において、端部を集束する方法としては、従来、充填包装体に備えられる筒状の樹脂製フィルムについてされていた長手方向の両端部の集束方法、例えば、アルミワイヤクリップ等の金属製のワイヤクリップ或いは横シールフィルムまたはその他の手段による集束方法を採用することができる。
【実施例】
【0067】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を更に説明するが、本発明は、本実施例に限定されるものではない。本発明の充填包装体における特性は、以下の方法により測定した。
【0068】
〔T型剥離強度〕
本発明の充填包装体に備えられる筒状の樹脂製フィルムの縦シール部のT型剥離強度は、充填包装体から内容物を取り出した筒状の樹脂製フィルムについて、株式会社オリエンテック製のテンシロン万能材料試験機を使用して、該フィルムの長手方向の略中央部の縦シール部の外耳部(仮シール部を有してもよい。)の長手方向に沿う長さ15mmの部分と、同じく胴部(筒状の樹脂製フィルムの縦シール部以外の部分)の長手方向に沿う長さ15mmとを試験機のクランプで挟み、引張速度300mm/分で剥離させる際の強度を、温度23℃にて測定した(n=3。単位:N)。
【0069】
〔せん断剥離強度〕
本発明の充填包装体に備えられる筒状の樹脂製フィルムの縦シール部のせん断剥離強度は、充填包装体から内容物を取り出した筒状の樹脂製フィルムについて、株式会社オリエンテック製のテンシロン万能材料試験機を使用して、該フィルムの縦シール部に対して線対称となる長手方向の略中央部の胴部2箇所を長手方向に沿う長さ15mmで、それぞれ試験機のクランプで挟み、引張速度300mm/分で剥離させる際の強度を、温度23℃にて測定した(n=3。単位:N)。
【0070】
〔レトルト後のシール強度の官能検査〕
本発明の充填包装体のレトルト後のシール強度の官能検査は、以下の方法に従って実施し、評価した。すなわち、10人の被験者(男性及び女性を含むものとする。)が、被験者ごとに5本の充填包装体について、それぞれの充填包装体の縦シール部の外耳部を指で摘まんで縦シール部を引き剥がすときに感じる剥離抵抗の強さに対して、以下の判定基準で点数を付与した(「1点」〜「5点」のいずれかとする。)。合計50本の充填包装体に付与された点数の平均値(小数点以下1桁までの点数で表示する。)を、当該充填包装体のレトルト後のシール強度の官能検査の値(以下、「シール強度の官能検査の値」ということがある。)とした。
<判定基準>
5点: 強い力でも縦シール部が剥がれない、または、
縦シール部若しくは外耳部がちぎれる充填包装体がある(5本中1本以上)、
4点: 強い力であれば縦シール部が剥がれる
3点: 適度な力で縦シール部が剥がれる
2点: 弱い力で縦シール部が剥がれる
1点: 軽く触れただけで縦シール部が剥がれる
【0071】
〔レトルト耐性〕
本発明の充填包装体のレトルト耐性は、以下の方法に従って実施し、評価した。すなわち、株式会社日阪製作所製のRCS型レトルト殺菌機Flavor Ace−60/10TGを使用して、充填包装体100本を、温度120℃、圧力2.0kg/cm
2(ゲージ圧)のレトルト釜内に15分間静置した後、取り出して、縦シール部が剥離しているものまたは縦シール部に亀裂があるものの本数(パンク本数)を目視で計数した。パンク本数が0本であれば、充填包装体はレトルト耐性を有すると評価した(レトルト耐性「○」と表記する。)。他方、パンク本数が1本以上であれば、充填包装体はレトルト耐性を有しないと評価した(レトルト耐性「×」と表記する。)。
【0072】
〔総合評価〕
充填包装体の易開封性及びレトルト耐性に関する総合評価として、充填包装体のシール強度の官能検査の値が1.8〜4点の範囲内であり、かつ、レトルト耐性「○」である場合、易開封性でレトルト耐性である充填包装体に該当するということができるので、充填包装体としての総合評価において優れると評価した(総合評価「○」と表記する。)。充填包装体のシール強度の官能検査の値が1.8〜4点の範囲内でないか、レトルト耐性「×」である場合は、充填包装体としての総合評価において優れると評価できないものとした(総合評価「×」と表記する。)。
【0073】
[実施例1]
(充填包装体の製造)
PVDC(株式会社クレハ製の塩化ビニリデン―塩化ビニル共重合体。塩化ビニリデン含量89質量%となるように調製した。)を溶融して、環状ダイから押し出して環状フィルムを製造し、環状フィルムの内側同士を重ね合わせて、厚み40μm(厚み20μmのフィルム2枚の厚み)の帯状のPVDC製フィルムを得た。帯状のPVDC製フィルムを、長手方向に延びる両側縁部が重なるように筒状に巻いて筒状フィルムを形成した。筒状フィルムを下方に走行させながら、該筒状フィルムの重なった両側縁部を、所定の電圧及び電流に基づく高周波電力が印加されている高周波誘電加熱装置のシール電極とアース電極との間を通過させることにより、筒状フィルムの前記の両側縁部を縦シールして、長手方向に延びる幅4mmの外耳部を有する縦シール部を備える筒状のPVDC製フィルムを形成した。続いて、筒状のPVDC製フィルムに、充填装置から魚肉ソーセージ用のすり身を供給して充填した後、筒状のPVDC製フィルムの長手方向の両端部をアルミワイヤクリップで集束し、所定長に切断することによって、周長58mm、長さ210mmである充填包装体を製造した。充填包装体の各々には、魚肉ソーセージ用のすり身42〜43gが充填され封入されるものとし、充填速度は80本/分とした。
【0074】
(剥離強度の測定、シール強度の官能検査評価及びレトルト耐性の評価)
得られた充填包装体について、T型剥離強度及びせん断剥離強度を測定し、また、シール強度の官能検査の値とレトルト耐性の評価により、総合評価した。評価結果を筒状のPVDC製フィルムの組成とともに、表1に示す。
【0075】
[実施例2]
EVA(エチレン含量67質量%)を、上記のPVDC100質量部に対して1.5質量部となるように含有させたことを除いて、実施例1と同様にして充填包装体を製造した。得られた充填包装体についてのT型剥離強度及びせん断剥離強度の測定結果、並びに、シール強度の官能検査の値、レトルト耐性の評価及び総合評価の評価結果を、筒状のPVDC製フィルムの組成とともに、表1に示す。
【0076】
[実施例3]
EVAを、上記のPVDC100質量部に対して2.5質量部となるように含有させたことを除いて、実施例1と同様にして充填包装体を製造した。得られた充填包装体についてのT型剥離強度及びせん断剥離強度の測定結果、並びに、シール強度の官能検査の値、レトルト耐性の評価及び総合評価の評価結果を、筒状のPVDC製フィルムの組成とともに、表1に示す。
【0077】
[実施例4〜8]
縦シール工程において、高周波誘導加熱装置に加える電流値を調整することにより、筒状のPVDC製フィルムの縦シール部の剥離強度(T型剥離強度及びせん断剥離強度)の値を、表1に示す値となるように調整したことを除いて、実施例3と同様にして充填包装体を製造した。得られた充填包装体についてのT型剥離強度及びせん断剥離強度の測定結果、並びに、シール強度の官能検査の値、レトルト耐性の評価及び総合評価の評価結果を、筒状のPVDC製フィルムの組成とともに、表1に示す。
【0078】
[比較例1及び2]
縦シール工程において、高周波誘導加熱装置に加える電流値を調整することにより、筒状のPVDC製フィルムの縦シール部の剥離強度(T型剥離強度及びせん断剥離強度)の値を調整したことを除いて、実施例1と同様にして充填包装体を製造した。得られた充填包装体についてのT型剥離強度及びせん断剥離強度の測定結果、並びに、シール強度の官能検査の値、レトルト耐性の評価及び総合評価の評価結果を、筒状のPVDC製フィルムの組成とともに、表1に示す。
【0079】
[比較例3及び4]
縦シール工程において、高周波誘導加熱装置に加える電流値を調整することにより、筒状のPVDC製フィルムの縦シール部の剥離強度(T型剥離強度及びせん断剥離強度)の値を調整したことを除いて、実施例2と同様にして充填包装体を製造した。得られた充填包装体についてのT型剥離強度及びせん断剥離強度の測定結果、並びに、シール強度の官能検査の値、レトルト耐性の評価及び総合評価の評価結果を、筒状のPVDC製フィルムの組成とともに、表1に示す。
【0080】
[比較例5及び6]
縦シール工程において、高周波誘導加熱装置に加える電流値を調整することにより、筒状のPVDC製フィルムの縦シール部の剥離強度(T型剥離強度及びせん断剥離強度)の値を調整したことを除いて、実施例3と同様にして充填包装体を製造した。得られた充填包装体についてのT型剥離強度及びせん断剥離強度の測定結果、並びに、シール強度の官能検査の値、レトルト耐性の評価及び総合評価の評価結果を、筒状のPVDC製フィルムの組成とともに、表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
表1から、長手方向に延びる外耳部を有する縦シール部を備え、長手方向の両端部が集束された筒状の樹脂製フィルムに、内容物が充填されて封入されてなる充填包装体であって、長手方向に延びる外耳部を有する縦シール部は、T型剥離強度が23N以下、かつ、せん断剥離強度が40N以上である実施例1〜8の充填包装体は、シール強度の官能検査の値が1.8〜4点の範囲内であることにより、易開封性で適度の剥離感を有し、かつ、レトルト耐性を有するものであることから、易開封性でレトルト耐性である充填包装体に該当するということができるので、充填包装体としての総合評価において優れると評価できることが分かった。
【0083】
また、筒状の樹脂製フィルムがEVAをPVDC100質量部に対して5質量部以下含有するPVDCから形成される実施例2〜8の充填包装体は、易開封性でレトルト耐性である充填包装体を提供するに当たって、筒状の樹脂製フィルムの縦シール部の剥離強度(T型剥離強度及びせん断剥離強度)を、T型剥離強度が23N以下、かつ、せん断剥離強度が40N以上である範囲において、多様な態様で調整することが可能なものであることが分かった。
【0084】
これに対して、筒状の樹脂製フィルムの縦シール部のT型剥離強度が23Nを超える比較例1、3及び5の充填包装体は、シール強度の官能検査の値が4点を超えることから、
筒状の樹脂製フィルムを剥離して内容物を取り出すことが容易でなく、易開封性を有するとはいえず、充填包装体としての総合評価において優れると評価できないことが分かった。
【0085】
また、筒状の樹脂製フィルムの縦シール部のせん断剥離強度が40N未満である比較例2、4及び6の充填包装体は、レトルト耐性の評価が「×」であり、充填包装体としての総合評価において優れると評価できないことが分かった。