(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
流体の流路となる第一端面から第二端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を有する柱状のハニカム構造部と、前記第一端面における所定の前記セルの開口部及び前記第二端面における残余の前記セルの開口部に配設され、各前記セルの片側の開口部を目封止する目封止部と、を備え、
前記隔壁が、耐火物骨材と、当該耐火物骨材同士を結合する酸化物材料を主成分とする結合材と、を有する多孔体からなり、
前記隔壁を構成する前記多孔体は、前記多孔体中に含まれる前記結合材の質量比率が、20〜35質量%であり、
前記結合材が、コージェライトを90質量%以上含み、
前記耐火物骨材が、炭化珪素粒子又は窒化珪素粒子であり、
前記耐火物骨材の平均粒子径が、5〜20μmであり、
前記隔壁の気孔率が、25〜75%であり、且つ、
前記隔壁を構成する多孔体が、焼結助剤として含有されるCe元素を含み、
前記隔壁を構成する多孔体中に、NaがNa2O換算で、0.1質量%以上、0.3質量%以下含まれており、
前記隔壁の、前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に垂直な断面の電子顕微鏡観察において、下記条件(1)を満たす任意の15視野を観察した際に、当該15視野のいずれにおいても、下記条件(2)を満たす前記耐火物骨材の数が、5個以上である、ハニカム構造体。
条件(1):100μm四方の視野であり、且つ、当該視野中の前記耐火物骨材と前記結合材の合計面積に対して、前記結合材の占める面積の比率が、30%以上である視野。
条件(2):粒子径が5μm以上の前記耐火物骨材であり、且つ、その外周の60%以上が前記結合材によって囲まれている耐火物骨材。
前記隔壁の、前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に垂直な断面の電子顕微鏡観察において、前記条件(1)を満たす任意の15視野を観察した際に、当該15視野のいずれにおいても、前記条件(2)を満たす前記耐火物骨材の数が、7個以上である、請求項1に記載のハニカム構造体。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0017】
(1)ハニカム構造体:
ハニカム構造体の一の実施形態は、
図1〜
図3に示すような、流体の流路となる第一端面11から第二端面12まで延びる複数のセル2を区画形成する隔壁1を有する柱状のハニカム構造部4を備えたハニカム構造体100である。ここで、
図1は
、ハニカム構造体の一の実施形態を流入端面側からみた模式的な斜視図である。
図2は、
図1に示すハニカム構造体を流入端面側からみた模式的な平面図である。
図3は、
図1に示すハニカム構造体の、セルの延びる方向に平行な断面を示す模式的な断面図である。
図1〜
図4に示すハニカム構造体100は、ハニカム構造部4の最外周に位置する外周壁3を更に有している。
【0018】
ハニカム構造体100は、ハニカム構造
部4の隔壁1が、
図4に示すように、耐火物骨材7と、当該耐火物骨材7同士を結合する酸化物材料を主成分とする結合材8と、を有する多孔体10からなる。
図4は
、ハニカム構造体における、隔壁の断面の電子顕微鏡観察によって得られる画像を模式的に示す図である。本実施形態のハニカム構造体は、
図4に示すような、隔壁1の、ハニカム構造部4(
図3参照)のセル2(
図3参照)の延びる方向に垂直な断面の電子顕微鏡観察において、耐火物骨材7と結合材8との構成に特徴がある。具体的には、まず、第1に、隔壁1を構成する多孔体10は、当該多孔体10中に含まれる結合材8の質量比率が、20〜35質量%である。第2に、上述した電子顕微鏡観察において、下記条件(1)を満たす任意の
15視野を観察した際に、当該
15視野のいずれにおいても、下記条件(2)を満たす耐火物骨材7aの数が、5個以上である。
条件(1):100μm四方の視野であり、且つ、当該視野中の耐火物骨材7と結合材8の合計面積に対して、結合材8の占める面積の比率が、30%以上である視野。
条件(2):粒子径が5μm以上の耐火物骨材7であり、且つ、その外周の60%以上が結合材8によって囲まれている耐火物骨材7a。
【0019】
本実施形態のハニカム構造体は、隔壁1を構成する多孔体10の強度が高く、また、当該多孔体10の熱伝導率も高く、更に、高温での使用環境下において破損し難いという効果を奏するものである。すなわち、結合材8による耐火物骨材7同士を結合するボンドネック部が太くなり、隔壁1を構成する多孔体10の強度が向上する。また、本実施形態のハニカム構造体は、圧力損失が低いという効果を奏するものである。すなわち、上記条件(2)を満たす耐火物骨材7aの数が、5個以上であることにより、隔壁1を構成する多孔体10に形成される気孔9が、当該隔壁1の一方の面から他方の面まで連通する連通孔になり易い。そのため、ハニカム構造体の隔壁1に排ガス浄化用の触媒をコートした後の初期の圧力損失、及び、隔壁1の表面に煤等のPMが堆積した際のPM堆積時の圧力損失が共に低減される。以下、本明細書において、「耐火物骨材」を、単に「骨材」ということがある。
【0020】
本実施形態のハニカム構造体において、多孔体10中に含まれる結合材8の質量比率が、20質量%未満であると、骨材間の結合が不十分になり十分な材料強度が発現しない。一方、多孔体10中に含まれる結合材8の質量比率が、35質量%超であると、熱伝導率が低下する。多孔体10中に含まれる結合材8の質量比率は、25〜35質量%であることが更に好ましい。多孔体10中に含まれる結合材8の質量比率とは、多孔体10を構成する耐火物骨材7と結合材8の合計質量に対する、結合材8の質量の比の百分率のことである。多孔体10中に含まれる結合材8の質量比率は、以下の方法で測定することができる。まず、ハニカム構造体の隔壁から切り出した材料試験片の全質量を測定する。一方で、走査型電子顕微鏡にて前記材料試験片を撮像し、得られたSEM画像より、当該SEM画像中の骨材の領域面積比を求める。そして、求めた骨材の領域面積比及び既知の骨材粒子密度より、骨材の質量比率を求める。材料試験片中の骨材以外の残部が結合材であり、材料試験片の全質量及び骨材の質量比率から、結合材の質量比率を求める。
【0021】
本実施形態のハニカム構造体は、上記電子顕微鏡観察において、上記条件(1)を満たす任意の
15視野を観察した際に、当該
15視野のいずれにおいても、上記条件(2)を満たす耐火物骨材7aの数が、5個以上である。条件(2)を満たす耐火物骨材7aの数が5個未満であると、多孔体10の強度が低くなり、圧力損失も増大する。条件(2)を満たす耐火物骨材7aの数が、7個以上であることが好ましく、7〜20個であることが更に好ましく、10〜20個であることが特に好ましい。条件(2)を満たす耐火物骨材7aは、その粒子径が5μm以上であることから、上記した視野中にて観察される個数には上限があり、多孔体10中に含まれる結合材8の質量比率を考慮した実質的な上限値が、20個となる。粒子径が5μm未満の耐火物骨材7は、多孔体10の強度向上に寄与する影響が比較的に小さいため、粒子径が5μm以上の耐火物骨材7であることを、条件(2)の1つの要件としている。
【0022】
以下、本明細書において、「ハニカム構造部のセルの延びる方向」のことを、単に、「セルの延びる方向」ということがある。本明細書において、特に断りのない限り、「断面」という場合は、「ハニカム構造部のセルの延びる方向に垂直な断面」のことを意味する。本明細書において、「電子顕微鏡観察」とは、電子顕微鏡を用いた、ハニカム構造部の断面の観察のことを意味し、特に、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)による観察のことを意味する。以下、電子顕微鏡観察によって撮像される写真を「SEM写真」といい、当該SEM写真に写しだされた画像を「SEM画像」ということがある。
【0023】
本明細書において、「主成分」とは、各構成要素中に含まれる成分が、90質量%以上の成分のことを意味する。すなわち、本実施形態のハニカム構造体において、多孔体中に含まれる結合材は、90質量%以上が、酸化物材料である。主成分は、その構成要素中に95質量%以上含まれた成分であることが好ましく、98質量%以上含まれた成分であることが更に好ましい。
【0024】
(1−1)電子顕微鏡観察:
本実施形態のハニカム構造体の隔壁の、ハニカム構造部のセルの延びる方向に垂直な断面の電子顕微鏡観察は、以下の方法によって行うことができる。まず、ハニカム構造体から、5mm角の立方体の電子顕微鏡観察用の試料を切り出して作製する。この試料は、切り出した立方体の表面に、隔壁の断面が見えるようなものとする。次に、得られた試料を樹脂に埋めて固めた後、その表面を研磨する。次に、試料の表面のうち、隔壁の断面が現れている箇所について、400倍の倍率で、SEM写真を撮像する。次に、撮像したSEM写真のSEM画像を画像処理し、当該SEM画像中の、耐火物骨材と結合材とを識別する。例えば、SEM画像の画像処理としては、SEM画像中の、耐火物骨材が存在する箇所と、結合材が存在する箇所とを、それぞれ色分けする方法を挙げることができる。SEM写真の撮像を行うための装置(走査型電子顕微鏡)としては、例えば、日立ハイテク社製の、商品
名:SU9000を挙げることができる。SEM画像の画像処理は、例えば、キーエンス社製の、商品
名:画像処理システムXGを用いて行うことができる。
【0025】
SEM画像中の耐火物骨材と結合材とを識別した後に、それぞれの構成要素が占める範囲の面積を測定してもよい。この測定により、「耐火物骨材と結合材の合計面積に対する、結合材の占める面積の比率」を求めることができる。すなわち、耐火物骨材と結合材とを識別したSEM画像が、上記条件(1)を満たす視野であるか否かの判定を行うことができる。このような測定も、上述したSEM画像の画像処理と同様に、例えば、キーエンス社製の、商品
名:画像処理システムXGを用いて行うことができる。
【0026】
SEM画像中の耐火物骨材と結合材とを識別した後に、耐火物骨材の粒子径を求めることもできる。耐火物骨材の粒子径は、耐火物骨材を球状粒子に換算して求めた粒子径(球相当径)のことを意味する。耐火物骨材の粒子径を求める方法は以下の通りである。まず、SEM画像上の耐火物骨材の粒子面積(すなわち、断面積)を画像処理により計測する。次に、計測した粒子面積と同一面積の球状粒子に換算した粒子径を求める。求めた球状粒子換算の粒子径を、耐火物骨材の粒子径とする。更に、SEM画像中の耐火物骨材と結合材とを識別した後に、粒子径が5μm以上の耐火物骨材について、当該耐火物骨材の周囲の長さと、当該耐火物骨材の周囲が結合材によって囲まれている箇所の長さと、を測定してもよい。このような測定を行うことで、SEM画像中に存在する、上記条件(2)を満たす耐火物骨材を求めることができる。
【0029】
上記条件(1)を満たす任意の
15視野を観察した際に、上記条件(2)を満たす耐火物骨材の数の
15視野での平均値が、5個以上であることが好ましく、7〜20個であることが更に好ましく、10〜20個であることが特に好ましい。条件(2)を満たす耐火物骨材の数の
15視野での平均値を求めることで、条件(2)を満たす耐火物骨材の数が及ぼす、多孔体の強度及び圧力損失への影響を確認し易くなる。
【0030】
隔壁の断面の電子顕微鏡観察は、条件(1)を満たす任意の
15視野を観察す
る。
【0031】
(1−2)耐火物骨材:
本実施形態のハニカム構造体に用いられる耐火物骨材は、1000℃以上の定形耐火物からなる粒子であ
る。耐火物骨材は、炭化珪素粉末、及び窒化珪素粉末のうちの少なくとも一方
であり、炭化珪素粉末が特に好ましい。耐火物骨材を構成する材料の定性は、例えば、X線回折(XRD)によって行うことができる。
【0032】
耐火物骨材の平均粒子径は、0.5〜200μmであることが好ましく、2〜100μmであることが更に好ましく、3〜50μmであることが特に好ましい。耐火物骨材の平均粒子径が0.5μm未満であると、界面面積が増加し、熱伝導率が低下することがある。耐火物骨材の平均粒子径が200μm超であると、気孔が粗大化し捕集効率が悪化するとともに、強度が低下することがある。耐火物骨材の平均粒子径は、以下の方法で、上述した隔壁の断面の電子顕微鏡観察のSEM画像から求めることができる。まず、SEM画像を画像処理し、当該SEM画像中の、耐火物骨材と結合材とを識別する。次に、これまでに説明した方法により、耐火物骨材を球状粒子(粒子面積が等価な球状粒子)に換算し、その粒子径を求める。
15視野のSEM画像について、耐火物骨材の粒子径の平均値を算出し、算出した耐火物骨材の粒子径の平均値を、「耐火物骨材の平均粒子径」とする。
【0033】
詳細は後述するが、従来公知の製造方法に準じて、単にハニカム構造体を製造したとしても、これまでに説明した多孔体の構成を満足する、本実施形態のハニカム構造体を製造することは困難である。例えば、本実施形態のハニカム構造体を製造するためには、耐火物骨材の原料として、ふるい分けにより分級した2種の平均粒子径の耐火物骨材原料を使用することが好ましい。例えば、篩いにより分級した1種の平均粒子径の耐火物骨材原料を使用したとしても、これまでに説明した電子顕微鏡観察において、上記条件(2)を満たす耐火物骨材の数が、5個以上になる多孔体を作製することは困難である。ハニカム構造体の製造時において、篩いにより分級した2種の平均粒子径の耐火物骨材原料を使用する際には、目開き(メッシュ)の異なる2種類のJIS標準ふるいを用いて、耐火物骨材の分級を行うことが好ましい。2種類のJIS標準ふるいとしては、目開きが#800以上のJIS標準ふるいと、目開きが#1000以上のJIS標準ふるいとが好ましい。分級した2種の平均粒子径の耐火物骨材原料を混合した混合原料粒子においては、対数標準偏差が0.6上のブロードな分布を示すことが好ましい。また、耐火物骨材原料の比表面積が、4000cm
2/cm
3以上であることが好ましく、5000cm
2/cm
3以上であることが更に好ましい。比表面積は、ガス吸着法によって測定することができる。
【0034】
(1−3)結合材:
本実施形態のハニカム構造体に用いられる結合材は、隔壁を構成する多孔体中において、耐火物骨材同士を結合するためのものである。この結合材は、
コージェライトを主成分とする。
なお、参考例として、結合材が、Al、Si、及びMgからなる群より選択される少なくとも1種の金属の酸化物、又はこれら酸化物の混合物を主成分とするもの
を挙げることができる。上述した群より選択される少なくとも1種の金属の酸化物は、耐火物骨材との濡れ性に優れているため、耐火物骨材の表面のより広い範囲を取り囲むことができる。したがって、粒子径が5μm以上の耐火物骨材であっても、その外周の60%以上が結合材によって囲まれ易くなる。
【0035】
本実施形態のハニカム構造体を製造するためには、以下のような、製造時に特徴的な製造工程を有す
る。まず、結合材は、ハニカム構造体の製造時において、焼成助剤としてアルカ
リ金属の酸化物を更に含
む。また、ハニカム構造体の製造時において、結合材となる結合材生成用原料中に、微量のNaが含まれてい
る。このような微量のNaが含まれている結合材生成用原料を用い
て、隔壁を構成する多孔体中に、NaがNa
2O換算で、0.1質量%以上、0.3質量%以下含まれ
るようにする。多孔体中のNaのNa
2O換算の含有比率は、湿式定量分析の方法によって測定することができる。
【0036】
また、結合材生成用原料と耐火物骨材原料とを含む成形原料からなるハニカム成形体を焼成する際には、従来のハニカム構造体の製造方法における焼成温度よりも、若干高めの焼成温度とすることが好ましい。このような高めの焼成温度にてハニカム成形体を焼成すると、特定の結合材生成用原料及び耐火物骨材原料を使用した際に、結合材生成用原料と耐火物骨材原料との濡れ性が大きく向上し、結合材によって、耐火物骨材のより多くの表面が覆われた多孔体が作製される。
【0037】
(1−4)多孔体、多孔体からなる隔壁、及びハニカム構造部:
ハニカム構造部の隔壁は、耐火物骨材と、当該耐火物骨材同士を結合する酸化物材料を主成分とする結合材とを有する多孔体からなる。この多孔体は、多孔体中に含まれる結合材の質量比率が、20〜35質量%である。この多孔体は、隔壁の断面の電子顕微鏡観察において、上記条件(1)を満たす任意の
15視野を観察した際に、当該
15視野のいずれにおいても、上記条件(2)を満たす耐火物骨材の数が、5個以上である。
【0038】
隔壁の気孔率が、25〜75%であ
り、25〜70%であることが好ましく、27〜69%であることが特に好ましい。隔壁の気孔率とは、ハニカム構造体の隔壁を構成する多孔体の気孔率のことである。隔壁の気孔率が、25%未満であると、ハニカム構造体の圧力損失が増大することがある。隔壁の気孔率が、75%超であると、ハニカム構造体の隔壁が脆くなり欠落し易くなることがある。隔壁の気孔率は、水銀ポロシメーターにより測定した値である。
【0039】
隔壁の平均細孔径が、5〜35μmであることが好ましく、7〜30μmであることが更に好ましく、7〜25μmであることが特に好ましい。隔壁の平均細孔径が、5μm未満であると、ハニカム構造体の圧力損失が大きくなることがある。隔壁の平均細孔径が、35μm超であると、ハニカム構造体の隔壁が脆くなり欠落し易くなることがある。隔壁の平均細孔径は、水銀ポロシメーターにより測定した値である。
【0040】
隔壁の厚さについては特に制限はないが、50〜500μmであることが好ましく、75〜400μmであることが更に好ましく、100〜200μmであることが特に好ましい。隔壁の厚さをこのような範囲にすることにより、ハニカム構造体の隔壁の強度を保ちつつ、圧力損失の上昇を抑制することができる。
【0041】
ハニカム構造部のセル密度については特に制限はないが、10〜64セル/cm
2であることが好ましく、16〜55セル/cm
2であることが更に好ましく、30〜58セル/cm
2であることが特に好ましい。セル密度をこのような範囲にすることにより、ハニカム構造体をフィルタとして用いた際の捕集効率や、ハニカム構造体を触媒担体として用いた際の浄化効率を向上させることができる。
【0042】
ハニカム構造部に形成されるセルの形状については特に制限はない。ここで、「セルの形状」とは、ハニカム構造部のセルの延びる方向に直交する断面における、セルの形状のことである。セルの形状としては、例えば、四角形、六角形、八角形、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0043】
ハニカム構造部の形状は、特に限定されず、例えば、底面が円形の柱状(円柱形状)、底面がオーバル形状の柱状、底面が多角形(四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)の柱状等の形状とすることができる。
【0044】
ハニカム構造部の第一端面から第二端面までの長さ、及びハニカム構造部のセルの延びる方向に直交する断面の大きさは、例えば、ハニカム構造体を排ガス浄化用の触媒担体として用いた際に、最適な浄化性能を得るように適宜選択すればよい。例えば、ハニカム構造部の第一端面から第二端面までの長さは、50〜600mmであることが好ましく、75〜500mmであることが更に好ましい。ハニカム構造部のセルの延びる方向に直交する断面の面積は、4,500〜200,000mm
2であることが好ましく、5,000〜100,000mm
2であることが更に好ましい。
【0045】
ハニカム構造体は、
図5及び
図6に示すようなハニカム構造体200であ
る。
図5は、本発明のハニカム構造体の他の実施形態を流入端面側からみた模式的な斜視図である。
図6は、
図5に示すハニカム構造体の、セルの延びる方向に平行な断面を示す模式的な断面図である。ハニカム構造体200は、柱状のハニカム構造部34と、ハニカム構造部34に形成されたセル32の開口部に配設された目封止部35と、を備えたハニカム構造体200である。ハニカム構造部34は、流体の流路となる第一端面41から第二端面42まで延びる複数のセル32を区画形成する多孔質の隔壁
31を有するものである。
図5及び
図6に示すハニカム構造体200は、ハニカム構造部34の最外周に位置する外周壁33を更に有している。目封止部35は、第一端面41における所定のセル
32bの開口部、及び第二端面42における残余のセル
32aの開口部に配設され、ハニカム構造部34に形成された各セル
32(
32a,
32b)の片側の開口部を目封止するものである。このような目封止部35を備えたハニカム構造体200は、ディーゼルエンジン排ガスのような含塵流体中に含まれる粒子状物質を捕集除去するためのフィルタとして好適に用いることができる。このハニカム構造体200においても、ハニカム構造部34の隔壁
31が、
図1〜
図4に示すハニカム構造部4の隔壁1を構成する多孔体と同様に構成された多孔体からなる。すなわち、隔壁31を構成する多孔体は、多孔体中に含まれる結合材の質量比率が、20〜35質量%である。また、この隔壁31の断面の電子顕微鏡観察において、上記条件(1)を満たす任意の
15視野を観察した際に、当該
15視野のいずれにおいても、上記条件(2)を満たす耐火物骨材の数が、5個以上である。
【0046】
目封止部を形成する材料については特に制限はなく、従来公知のハニカム構造体の目封止部に用いられる材料を用いることができる。また、目封止部の形成方法についても、従来公知のハニカム構造体に目封止部を形成する方法に準じて行うことができる。
【0047】
ハニカム構造体のハニカム構造部が、隔壁を有する柱状のハニカムセグメントを、複数個有し、複数個のハニカムセグメントの互いの側面同士が対向するように隣接して配置された状態で接合されたセグメント構造であってもよい。セグメント構造のハニカム構造部を備えたハニカム構造体としては、例えば、
図7に示すようなハニカム構造体300を挙げることができる。
図7は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を流入端面側からみた模式的な斜視図である。
図7に示すハニカム構造体300は、複数個のハニカムセグメント56が、互いの側面同士が対向するように隣接して配置された状態で、接合層57によって接合されたハニカム構造部54を備えたものである。ハニカムセグメント56は、第一端面61から第二端面62まで延びる流体の流路となる複数のセル52(セル52a,セル52b)を区画形成する多孔質の隔壁51及び隔壁51を取り囲むように配設された外壁58を有するものである。接合層57は、隣接して配置されるハニカムセグメント56の外壁58同士を接合するためのものである。この接合層57は、ハニカム構造部54に生じる熱応力を緩衝するための緩衝材としての機能を有していてもよい。
図7に示すハニカム構造体300では、複数個のハニカムセグメント56が接合された接合体の最外周に、外周壁53が配置されている。
【0048】
セグメント構造のハニカム構造部54において、複数のハニカムセグメント56のうち、少なくとも1つのハニカムセグメント56の隔壁51が、
図1〜
図4に示すハニカム構造部の隔壁1を構成する多孔体と同様に構成された多孔体からなる。ハニカム構造部54を構成する全てのハニカムセグメント56の隔壁51が、
図1〜
図4に示すハニカム構造部の隔壁1を構成する多孔体と同様に構成された多孔体からなることがより好ましい。
図7において、符号55は、セル52の開口部に配設された「目封止部」を示す。このような、所謂、セグメント構造のハニカム構造体であっても、
図1〜
図3に示すような、所謂、一体型のハニカム構造体と同様の作用効果を得ることができる。接合層については、従来公知のセグメント構造のハニカム構造部における接合層と同様に構成されたものを用いることができる。
【0049】
(2)ハニカム構造体の製造方法:
次に、本実施形態のハニカム構造体を製造する方法について説明する。以下、本実施形態のハニカム構造体を製造する方法について、
図7に示すような、セグメント構造のハニカム構造体300を製造する方法を例として説明する。
【0050】
まず、耐火物骨材となる炭化珪素粉末と、焼成により結合材が生成する結合材生成用原料の粉末と、焼成助剤としてのアルカ
リ金属の酸化物と、を混合し、必要に応じて、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して、成形原料を作製する。結合材生成用原料は、例えば、焼成により「結合材であるコージェライト」が生成されるものを挙げることができる。また、結合材生成用原料の粉末の代わりに、コージェライト化原料を用いて成形原料を作製してもよい。コージェライト化原料とは、焼成によりコージェライト結晶が生成する原料を意味する。以下、「結合材生成用原料の粉末」を、「結合材生成用原料粉末」ということがある。結合材生成用原料粉末としては、例えば、タルク35.9質量%、水酸化アルミニウム44.3質量%、及びシリカ粉末19.8質量%の混合粉末を挙げることができる。なお、結合材生成用原料粉末に含まれる原料粉末の種類や配合量については、上記の混合粉末に限定されることはない。また、結合材生成用原料としては、焼成により「結合材であるコージェライトとムライト粒子」が生成されるものであってもよい。また、耐火物骨材としては、炭化珪素粉末を用いた例を説明するが、窒化珪素粉末を用いることもできる。
【0051】
耐火物骨材となる炭化珪素粉末の平均粒子径は、5〜20μm
とし、10〜15μm
が好ましい。平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。耐火物骨材として窒化珪素粉末を用いる場合、窒化珪素粉末は、上記炭化珪素粉末と同程度の平均粒子径のものであることが好ましい。
【0052】
成形原料に添加するバインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアル コール等の有機バインダを挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの添加量は、成形原料全体に対して2〜10質量%であることが好ましい。
【0053】
成形原料に添加する界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸 石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の添加量は、成形原料全体に対して2質量%以下であることが好ましい。
【0054】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の添加量は、成形原料全体に対して10質量%以下であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、10〜30μmであることが好ましい。造孔材の平均粒子径が10μmより小さいと、隔壁に気孔を十分形成できないことがある。造孔材の平均粒子径が30μmより大きいと、成形時に口金に詰まることがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。造孔材が吸水性樹脂の場合、その造孔材の平均粒子径は、吸水後の値である。
【0055】
水の添加量は、成形しやすい坏土硬度となるように適宜調整されるが、成形原料全体に対して20〜80質量%であることが好ましい。
【0056】
次に、得られた成形原料を混練して坏土を形成する。成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0057】
次に、得られた坏土を押出成形してハニカム成形体を形成する。押出成形には、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚さ、セル密度等を有する口金を用いることが好ましい。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。ハニカム成形体は、流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁と最外周に位置する外壁とを有する構造である。ハニカム成形体の隔壁厚さ、セル密度、外壁の厚さ等は、乾燥、焼成における収縮を考慮し、作製しようとするハニカム構造体の構造に合わせて適宜決定することができる。なお、
図5及び
図6に示すハニカム構造体200のハニカム構造部34を作製する場合には、ハニカム構造
部34の形状に合わせて、円柱状のハニカム成形体を作製する。そして、得られた円柱状のハニカム成形体を焼成することで、円柱状のハニカム構造部を備えたハニカム構造体を製造することができる。一方、
図7に示すようなハニカム構造体300を製造する場合には、押出成形したハニカム成形体が、1個のハニカムセグメント56となる。このため、
図7に示すようなハニカム構造体300を製造する場合には、押出成形において、複数個のハニカム成形体を形成する。そして、後述するように、得られたハニカム成形体を焼成することで、複数個のハニカムセグメント56を得、得られた複数個のハニカムセグメント56を接合層57によって接合してハニカム構造体300を作製する。
【0058】
次に、得られたハニカム成形体について、焼成前に乾燥を行うことが好ましい。乾燥の方法については、特に制限はなく、例えば、マイクロ波加熱乾燥、高周波誘電加熱乾燥等の電磁波加熱方式と、熱風乾燥、過熱水蒸気乾燥等の外部加熱方式とを挙げることができる。これらの中でも、ハニカム成形体全体を迅速かつ均一に、クラックが生じないように乾燥することができる点で、電磁波加熱方式で一定量の水分を乾燥させた後、残りの水分を外部加熱方式により乾燥させることが好ましい。乾燥の条件として、電磁波加熱方式にて、乾燥前の水分量に対して、30〜99質量%の水分を除いた後、外部加熱方式にて、3質量%以下の水分にすることが好ましい。電磁波加熱方式としては、誘電加熱乾燥が好ましく、外部加熱方式としては、熱風乾燥が好ましい。
【0059】
次に、ハニカム成形体のセルの延びる方向における長さが、所望の長さではない場合は、両端面(両端部)を切断して所望の長さとすることが好ましい。切断方法については特に制限はなく、例えば、丸鋸切断機等を用いる方法を挙げることができる。
【0060】
次に、ハニカム成形体を焼成して、ハニカムセグメントを作製する。焼成の前に、バインダ等を除去するため、仮焼を行うことが好ましい。仮焼は、大気雰囲気において、200〜600℃で、0.5〜20時間行うことが好ましい。焼成は、窒素、アルゴン等の非酸化雰囲気下(酸素分圧は10
−4気圧以下)、1400〜1460℃、常圧で1〜20時間加熱することが好ましい。焼成後、耐久性向上のために、大気中(水蒸気を含んでいてもよい)で、1100〜1400℃、1〜20時間、酸化処理を行ってもよい。仮焼及び焼成は、例えば、電気炉、ガス炉等を用いて行うことができる。
【0061】
次に、得られた各ハニカムセグメントの第一端面(例えば、流入端面)における所定のセル(例えば、第一セル)の開口部、及び第二端面(例えば、流出端面)における残余のセル(例えば、第二セル)の開口部に目封止を施して、目封止部を形成する。なお、押出成形時おいて、
図5及び
図6に示すような円柱状のハニカム構造
部34用の成形体を作製した場合には、目封止部を形成することによって、ハニカム構造体200(別言すれば、目封止部を備えたハニカムフィルタ)が完成する。
【0062】
ハニカムセグメントに目封止材料を充填する際には、まず、ハニカムセグメントの第一端面(例えば、流入端面)側から、所定のセル(例えば、第一セル)内に目封止材料を充填する。その後、第二端面(例えば、流出端面)側から、残余のセル(例えば、第二セル)内に目封止材料を充填する。目封止材料を充填する方法としては、以下のような、マスキング工程及び圧入工程を有する方法を挙げることができる。マスキング工程は、ハニカムセグメントの第一端面(例えば、流入端面)にシートを貼り付け、シートにおける、「目封止部を形成しようとするセル(すなわち、第一セル)」と重なる位置に孔を開ける工程である。圧入工程は、「ハニカムセグメントの、シートが貼り付けられた側の端部」を目封止材料が貯留された容器内に圧入して、目封止材料をハニカムセグメントのセル内に圧入する工程である。目封止材料をハニカムセグメントのセル内に圧入する際には、目封止材料は、シートに形成された孔を通過し、シートに形成された孔と連通するセルのみに充填される。ハニカムセグメントの第二端面(例えば、流出端面)からセル内に目封止材料を充填する方法も、上記、ハニカムセグメントの第一端面からセル内に目封止材料を充填する方法と同様の方法とすることが好ましい。ハニカムセグメントの両方の端面から、目封止材料を同時に充填してもよい。
【0063】
次に、ハニカムセグメントのセル内に充填された目封止材料を乾燥させて、目封止部を形成し、目封止ハニカムセグメントを得ることが好ましい。目封止材料を、より確実に固定化する目的で、目封止材料を乾燥させた後に焼成してもよい。乾燥前のハニカムセグメントの成形体又は乾燥後のハニカムセグメントの成形体に目封止材料を充填し、乾燥前のハニカムセグメントの成形体又は乾燥後のハニカムセグメントの成形体と共に、目封止材料を焼成してもよい。
【0064】
次に、得られた各ハニカムセグメントを接合材で接合して、
図7に示すようなハニカム構造体300を得ることができる。接合材としては、無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、SiC粒子等の無機原料に、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤等の添加材を加えたものに水を加えて混練したスラリー等を挙げることができる。
【0065】
複数個のハニカムセグメントを接合材によって接合した後、得られたハニカムセグメントの接合体の外周部分を切削して所望の形状にすることが好ましい。また、ハニカムセグメントを接合し、ハニカムセグメントの接合体の外周部分を切削した後に、その外周部分に外周コート材を配設して、ハニカムフィルタを作製することが好ましい。この外周コート材が、ハニカムフィルタの外周コート層となる。このような外周コート層を配設することにより、ハニカムフィルタの真円度が向上する等の利点がある。外周コート材は、接合材として作製したスラリーと同じものを用いることができる。
【0066】
このように構成することによって、本実施形態のハニカム構造体を製造することができる。但し、本実施形態のハニカム構造体の製造方法は、上述した製造方法に限定されることはない。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0068】
(実施例1)
実施例1においては、まず、ハニカム構造体を作製するための成形原料を以下の方法で調製した。耐火物骨材となる炭化珪素(SiC)粉末と、結合材生成用原料粉末とを、70:30(体積比)の比率で混合して「混合粉末」を作製した。炭化珪素(SiC)粉末は、平均粒子径が14μmmであり、比表面積が4000cm
2/cm
3であった。耐火物骨材となる炭化珪素(SiC)粉末としては、ふるい分けにより分級した2種の平均粒子径の粉末を混合したものを用いた。2種の平均粒子径の炭化珪素粉末は、目開きが#800以上のJIS標準ふるいで分級した粉末と、目開きが#1000以上のJIS標準ふるいで分級した粉末である。結合材生成用粉末としては、タルクを45.1体積%、カオリンを32.8体積%、水酸化アルミニウムを22.1体積%含有する粉末を用いた。そして、上記「混合粉末」に、焼成助剤としてのCeO
2、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材としてデンプン、吸水性樹脂を添加すると共に、水を添加して成形原料とした。焼成助剤としてのCeO
2の含有量は、混合粉末を100質量部としたときに、3質量部であった。バインダの含有量は、混合粉末を100質量部としたときに、7質量部であった。造孔材の含有量は、混合粉末を100質量部としたときに、10質量部であった。水の含有量は、混合粉末を100質量部としたときに、70質量部であった。CeO
2の平均粒子径は、20μmであった。造孔材の平均粒子径は、22μmであった。結合材生成用粉末のタルクの平均粒子径は3μmであり、カオリンの平均粒子径は1μmであり、水酸化アルミニウムの平均粒子径は0.2μmであった。炭化珪素粉末、結合材生成用粉末のタルク、カオリン、水酸化アルミニウム、及び造孔材の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。炭化珪素(SiC)粉末の比表面積は、ガス吸着法によって測定した値である。
【0069】
次に、得られた成形原料を混練し、更に混練して坏土を形成した。次に、所定の金型を用いて坏土を押出成形してハニカム成形体を得た。ハニカム成形体は、セルの延びる方向に直交する断面において四角形のセルが形成され、全体形状が円柱形状であった。そして、得られたハニカム成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥した。その後、熱風乾燥機でハニカム成形体を更に乾燥させた。続いて、乾燥させたハニカム成形体の両端面を切断し、所定の寸法に整えた。ハニカム成形体は、焼成後において、端面の直径が144mmで、セルの延びる方向の長さが152mmとなるものとした。
【0070】
このようにして得られたハニカム成形体を、1450℃で、2時間焼成することによってハニカム構造体を得た。得られたハニカム構造体は、隔壁の厚さが380μmであり、セル密度が46.5セル/cm
2であり、隔壁の気孔率が68%であった。
【0071】
実施例1においては、耐火物骨材として「炭化珪素(SiC)粉末」を用いているため、耐火物骨材の主成分は、「SiC」であった。実施例1においては、結合材生成用原料粉末として「焼成によりコージェライトが生成される粉末」を用いているため、結合材の主成分は、「コージェライト」であった。耐火物骨材と結合材の合計体積に対する、結合材の体積比率は、30体積%であった。この体積比率は、画像解析からの面積比率から換算した値である。表1の「骨材主成分」の欄に、耐火物骨材の主成分を示し、「結合材主成分」の欄に、結合材の主成分を示す。表1の「結合材比率(%)」欄に、「耐火物骨材と結合材の合計体積に対する、結合材の体積比率」を示す。表1の「骨材原料平均粒子径(μm)」の欄に、耐火物骨材として用いた粉末の平均粒子径を示す。表1の「焼成助剤」の欄に、成形原料に添加した焼成助剤の成分を示す。表1の「骨材原料比表面積(cm
2/cm
3)」の欄に、「耐火物骨材として用いた粉末の比表面積」を示す。
【0072】
得られたハニカム構造体の隔壁について、当該隔壁を構成する多孔体中のNaのNa
2O換算の含有比率を測定した。以下、多孔体中のNaのNa
2O換算の含有比率について、単に「Na
2Oの含有比率(%)」ということがある。Na
2Oの含有比率は、0.1質量%であった。表1に結果を示す。Na
2Oの含有比率は、湿式定量分析によって測定した。
【0073】
表1に、製造時の焼成温度(℃)、隔壁の厚さ(μm)、セル密度(セル/cm
2)、隔壁の気孔率(%)、ハニカム構造体の端面の直径(mm)、及びハニカム構造体のセルの延びる方向の長さ(mm)を示す。
【0074】
【表1】
【0075】
実施例1のハニカム構造体について、以下の方法で、「特定耐火物骨材の数」、「特定耐火物骨材の数の平均」について測定した。また、実施例1のハニカム構造体について、以下の方法で、「圧力損失(MPa)」、及び「強度(MPa)」を測定した。測定結果を、表2に示す。実施例1のハニカム構造体は、「特定耐火物骨材の数」が5個であった。
【0076】
[特定耐火物骨材の数]
本実施例において、特定耐火物骨材とは、「粒子径が5μm以上の耐火物骨材であり、且つ、その外周の60%以上が前記結合材によって囲まれている耐火物骨材」のことをいう。すなわち、これまでに説明した電子顕微鏡観察において、条件(2)を満たす耐火物骨材が、本実施例における「特定耐火物骨材」である。まず、特定耐火物骨材の数の測定においては、ハニカム構造体から、5mm角の立方体の電子顕微鏡観察用の試料を切り出して作製した。この試料は、切り出した立方体の表面に、隔壁の断面が見えるようなものとした。次に、得られた試料を樹脂に埋めて固めた後、その表面を研磨した。次に、試料の表面のうち、隔壁の断面が現れている箇所を、400倍の倍率で、SEM写真を撮像した。次に、撮像したSEM写真のSEM画像を画像処理し、当該SEM画像中の、耐火物骨材と結合材とを識別した。SEM画像の画像処理としては、SEM画像中の、耐火物骨材が存在する箇所と、結合材が存在する箇所とを、それぞれ色分けする方法を用いた。SEM写真を撮像は、日立ハイテク社製の、商品
名:SU9000を用いて行い、SEM画像の画像処理は、キーエンス社製の、商品
名:画像処理システムXGを用いて行った。
【0077】
SEM画像中の耐火物骨材と結合材とを識別した後に、それぞれの構成要素が占める範囲の面積を測定した。この測定により、「耐火物骨材と結合材の合計面積に対する、結合材の占める面積の比率」を求め、条件(1)を満たす視野であるか否かの判定を行った。ここで、条件(1)とは、「100μm四方の視野であり、且つ、当該視野中の耐火物骨材と結合材の合計面積に対して、結合材の占める面積の比率が、30%以上である視野」のことである。SEM画像中の耐火物骨材と結合材とを識別した後に、耐火物骨材の粒子径を、粒子面積から等価球状粒子径への換算により求めた。更に、SEM画像中の耐火物骨材と結合材とを識別した後に、粒子径が5μm以上の耐火物骨材について、当該耐火物骨材の周囲の長さと、当該耐火物骨材の周囲が結合材によって囲まれている箇所の長さと、を測定した。これらの測定結果から、SEM画像中に存在する、特定耐火物骨材の数を求めた。特定耐火物骨材の数の測定においては、条件(1)を満たす任意の15視野を観察し、15視野の中で、最も特定耐火物骨材の数が少ないものを、「特定耐火物骨材の数」とした。表2の「観察視野数」の欄に、「特定耐火物骨材の数の測定にて観察された視野の数」を示す。
【0078】
[特定耐火物骨材の数の平均]
上記した「特定耐火物骨材の数」の測定において観察された、15視野のそれぞれの特定耐火物骨材の数の平均値を、「特定耐火物骨材の数の平均」とした。
【0079】
[圧力損失(MPa)]
室温条件下において、0.5m
3/分の流速でエアーをハニカム構造体に流通させた。この状態で、エアー流入側の圧力とエアー流出側の圧力との差(MPa)を測定した。
【0080】
[強度(MPa)]
ハニカム構造体の強度の測定は、社団法人自動車技術会発行の自動車規格(JASO規格)M505−87で規定されているアイソスタティック破壊強度試験に基づいて行った。アイソスタティック破壊強度試験は、コンバータの缶体にハニカム構造体が外周面把持される場合の圧縮負荷加重を模擬した試験である。具体的な測定方法としては、まず、ゴム製の筒状容器内に、各実施例にて製造したハニカム構造体を入れ、筒状容器にアルミ製板で蓋をした。そして、水中で、筒状容器に等方加圧圧縮を行って、筒状容器内のハニカム構造体が破壊したときの加圧圧力値(MPa)を測定した。このハニカム構造体が破壊したときの加圧圧力値(MPa)が、「強度(MPa)」である。
【0081】
【表2】
【0082】
(実施例2,3)
骨材原料平均粒子径(μm)、Na
2Oの含有比率(%)、及び骨材原料比表面積(cm
2/cm
3)を、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法でハニカム構造体を製造した。実施例2では、耐火物骨材として、平均粒子径13μmの炭化珪素(SiC)粉末を用いた。実施例3では、耐火物骨材として、平均粒子径11.5μmの炭化珪素(SiC)粉末を用いた。表1に、実施例2,3における、骨材主成分、結合材主成分、結合材比率(%)、骨材原料平均粒子径(μm)、焼成助剤、及びNa
2Oの含有比率(%)を示す。表1に、実施例2,3における、製造時の焼成温度(℃)、隔壁の厚さ(μm)、セル密度(セル/cm
2)、隔壁の気孔率(%)、ハニカム構造体の端面の直径(mm)、及びハニカム構造体のセルの延びる方向の長さ(mm)を示す。
【0083】
実施例2,3のハニカム構造体について、実施例1と同様の方法で、「特定耐火物骨材の数」、「特定耐火物骨材の数の平均」、「圧力損失(MPa)」、及び「強度(MPa)」を測定した。測定結果を、表2に示す。実施例2のハニカム構造体は、「特定耐火物骨材の数」が8個であった。実施例3のハニカム構造体は、「特定耐火物骨材の数」が10個であった。
【0084】
(比較例1〜5)
骨材原料平均粒子径(μm)、焼結助剤、焼成温度(℃)、Na
2Oの含有比率(%)、及び骨材原料比表面積(cm
2/cm
3)を、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法でハニカム構造体を製造した。比較例1では、耐火物骨材として、平均粒子径11.5μmの炭化珪素(SiC)粉末を用いた。比較例2では、耐火物骨材として、平均粒子径22μmの炭化珪素(SiC)粉末を用いた。比較例3では、耐火物骨材として、平均粒子径11.5μmの炭化珪素(SiC)粉末を用いた。比較例4では、耐火物骨材として、平均粒子径11.5μmの炭化珪素(SiC)粉末を用いた。比較例5では、耐火物骨材として、平均粒子径11.5μmの炭化珪素(SiC)粉末を用いた。表1に、比較例1〜5における、骨材主成分、結合材主成分、結合材比率(%)、骨材原料平均粒子径(μm)、焼成助剤、及びNa
2Oの含有比率(%)を示す。表1に、比較例1〜5における、製造時の焼成温度(℃)、隔壁の厚さ(μm)、セル密度(セル/cm
2)、隔壁の気孔率(%)、ハニカム構造体の端面の直径(mm)、及びハニカム構造体のセルの延びる方向の長さ(mm)を示す。
【0085】
比較例1〜5のハニカム構造体について、実施例1と同様の方法で、「特定耐火物骨材の数」、「特定耐火物骨材の数の平均」、「圧力損失(MPa)」、及び「強度(MPa)」を測定した。測定結果を、表2に示す。比較例1のハニカム構造体は、「特定耐火物骨材の数」が1個であった。比較例2のハニカム構造体は、「特定耐火物骨材の数」が2個であった。比較例3のハニカム構造体は、「特定耐火物骨材の数」が0個であった。比較例4のハニカム構造体は、「特定耐火物骨材の数」が1個であった。比較例5のハニカム構造体は、「特定耐火物骨材の数」が0個であった。
【0086】
(結果)
実施例1〜3のハニカム構造体は、圧力損失が低く、且つ強度が高いものであった。一方、比較例1〜5のハニカム構造体は、実施例1〜3のハニカム構造体に比して、圧力損失が高く、且つ強度が低いものであった。ここで、実施例1〜3と比較例1〜5とを比較した場合、骨材主成分、及び結合材主成分は、全て同じ成分であり、結合材比率(%)も同じ値を示している。また、隔壁の厚さ(μm)、及び気孔率(%)についても、実施例1〜3と比較例1〜5とで同じ値となっている。実施例1〜3と比較例1〜5とで異なる点としては、表2に示される「特定耐火物骨材の数」を挙げることができ、この特定耐火物骨材の数が、ハニカム構造体の圧力損失及び強度に大きな影響を与えていることが分かる。そして、実施例1〜3のハニカム構造体のように、特定耐火物骨材の数が5個以上であると、結合材による耐火物骨材同士を結合するボンドネック部が太くなり、多孔体の強度が向上するものと推察される。また、特定耐火物骨材の数が5個以上であると、例えば、結合材比率(%)や隔壁の気孔率(%)が同じ場合に、多孔体に形成される気孔が連通孔になり易く、圧力損失が低くなるものと推察される。