特許第6285231号(P6285231)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6285231
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】水中油乳化型口唇化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20180215BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20180215BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20180215BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20180215BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20180215BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20180215BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   A61K8/81
   A61K8/92
   A61K8/55
   A61K8/86
   A61K8/06
   A61K8/73
   A61Q1/04
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-59652(P2014-59652)
(22)【出願日】2014年3月24日
(65)【公開番号】特開2015-182971(P2015-182971A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2016年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】川島 佑介
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−254670(JP,A)
【文献】 特開2007−070232(JP,A)
【文献】 特開2014−001153(JP,A)
【文献】 特開2011−213662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜();
(A)アクリル酸と酢酸ビニルを構成単位にもつ水不溶性皮膜形成性ポリマーエマルション
(B)固形油又は半固形油
(C)リン脂質
(D)ポリエチレングリコール
を含有することを特徴とする水中油乳化型口唇化粧料。
【請求項2】
前記成分(A)のガラス転移温度(Tg)が−20〜15℃であることを特徴とする請求項1に記載の水中油乳化型口唇化粧料。
【請求項3】
前記成分(B)の融点が30〜70℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水中油乳化型口唇化粧料。
【請求項4】
さらに、成分(E)として水性増粘剤を含有することを特徴とする請求項1〜のいずれかの項に記載の水中油乳化型口唇化粧料。
【請求項5】
さらに、アクリル酸を構成単位にもつ水不溶性皮膜形成性ポリマーエマルション(ただし、前記成分(A)を除く。)を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の水中油乳化型口唇化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水不溶性皮膜形成性ポリマーエマルションと、固形油又は半固形油と、リン脂質を含有することを特徴とする水中油乳化型口唇化粧料に関し、更に詳細には耐移り性と耐湯性に優れ、さらに収縮感が抑制された、唇の縦皺が目立ちにくい水中油乳化型口唇化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の口紅は、各種油剤やワックス、色材等から構成された油性口紅であることが多く、塗布した化粧膜は飲食によって崩れやすいという欠点があった。特に飲み物を飲む際にカップやペットボトル等へ化粧膜が付着しやすく(耐移り性が低く)、化粧崩れの主な原因となっていた。また、その中でも暖かい飲み物を飲む際には化粧崩れが顕著となり、カップ等が口紅によって汚れるといった問題もあった。唇は顔の中でも最も動きの激しい部位の一つであり、口の動きに伴い唇表面の伸縮が大きいという特徴を有する。また、唇は膜が薄く敏感であるため、化粧膜由来の収縮感を感じやすい。さらに、唇は肌と比較し深い縦皺が多いことが知られており、十分な化粧膜の厚みがないと、縦皺が目立ちやすい部位である。
【0003】
これらの欠点を解消し、化粧もちを向上するため、従来から様々な検討がなされてきた。その油性タイプの例としては、揮発性溶媒にシリコーン樹脂、ワックス、粉末を組み合わせた耐うつり性化粧料組成物(例えば特許文献1参照)や、非水系ポリマーディスパージョンにフッ素変性シリコーンとアルキル変性シリコーンを組み合わせた口紅組成物(例えば特許文献2参照)がある。また、水中油乳化型タイプとしては、特定のポリイソブチレンに揮発性炭化水素油、顔料、水膨潤性増粘剤、水性媒体を組み合わせた水中油型乳化下地化粧料(例えば特許文献3参照)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−199630号公報
【特許文献2】特開2000−281535号公報
【特許文献3】特開2013−35767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術は、シリコーン樹脂やワックスの皮膜が強固であるため、化粧膜の柔軟性に乏しく、収縮感を感じやすいという欠点があった。また耐移り性を向上するために不揮発性液体油等に代えて揮発性溶媒を多量に含有すると、粘度が低下し塗布時の膜の厚さが十分でなくなるといった弊害もあった。特許文献2の技術は、揮発性油剤は乾燥速度が遅いため、機能の発現まで時間がかかり、耐移り性が悪く、また揮発性油剤の揮発に伴い膜が薄くなるため、唇の縦皺が目立つという欠点があった。特許文献3の技術は、水中に油滴の状態で存在している脂肪層に皮膜を形成するポリイソブチレンを含有しているが、外層中の水系成分や乾燥過程での油滴の偏りによって、不均一な膜となりやすく、耐移り性や耐湯性を持つ膜としては不十分であった。また、いずれの技術も温かい飲み物を飲んだ場合には、化粧もちが悪いという欠点を有している。
このように、本発明が解決しようとする課題は、温かい飲み物を飲んだ場合にも耐えうる耐湯性、日常生活での耐移り性を向上させるとともに、収縮感のなさ、唇の縦皺の目立ちにくさに優れた水中油乳化型口唇化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる実情に鑑み、本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、耐移り性に優れる皮膜を形成する成分である水不溶性皮膜形成性ポリマーエマルションに、固形油又は半固形油を組み合わせ乳化物とすることで、膜の厚みや耐湯性を持たせつつ、化粧膜の収縮感を軽減することができた。しかしながら、固形油又は半固形油は結晶性を持つため、化粧膜をつくる際の融着を収縮感として感じやすいものであり、収縮感については不十分であった。そこでリン脂質を組み合わせることで、固形油又は半固形油の結晶性を緩和し、さらに皮膜を均一にすることができ、耐移り性や耐湯性に優れながらも、収縮感を緩和することができ、本発明を完成するに至った。
【0007】
さらに、ポリエチレングリコールを組み合わせることで、皮膜を柔軟にして収縮感をさらに低減することができた。また、水性増粘剤を組み合わせることで、化粧膜を厚くして、化粧膜の強度向上や唇の縦皺の目立ちにくさを向上させ、さらにそれが特定の水性増粘剤であると耐油性や耐移り性をさらに向上させることができた。
【0008】
すなわち、本発明は次の成分(A)〜();
(A)アクリル酸と酢酸ビニルを構成単位にもつ水不溶性皮膜形成性ポリマーエマルション
(B)固形油又は半固形油
(C)リン脂質
(D)ポリエチレングリコール
を含有することを特徴とする水中油乳化型口唇化粧料を提供するものである。
【0009】
成分(A)のガラス転移温度(Tg)が−20〜15℃であることを特徴とする前記水中油乳化型口唇化粧料を提供するものである。
【0010】
成分(B)の融点が30〜70℃であることを特徴とする前記水中油乳化型口唇化粧料を提供するものである。
【0011】
さらに、成分(E)として水性増粘剤を含有することを特徴とする前記水中油乳化型口唇化粧料を提供するものである。
【0012】
さらに、アクリル酸を構成単位にもつ水不溶性皮膜形成性ポリマーエマルション(ただし、前記成分(A)を除く。)を含有することを特徴とする前記水中油乳化型口唇化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水中油乳化型口唇化粧料は、塗布後の乾燥速度に優れ、耐移り性の効果が発現しやすく、カップやペットボトル等への色移りがない。また重ね塗りの際に膜が動いたり、剥がれるたりすることがないため、口紅やグロス等の重ね付けがしやすい。皮膜形成成分として、水不溶性皮膜形成性ポリマーエマルションを用いているため、水中油乳化型口唇化粧料中で連続層である水層に皮膜形成成分が存在しており、油層中に存在する場合よりも均一な膜を形成することができる。また他の水溶性皮膜形成成分では溶解し膜の剥がれを引き起こしてしまいやすい湯に対して、優れた抵抗性(耐湯性)を有する。さらに柔軟性を付与する成分として、固形油又は半固形油及びリン脂質を用いることによって、耐移り性や耐湯性を維持しつつ、柔軟性を付与することができ、収縮感のなさや唇の縦皺の目立ちにくさを向上している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明における成分(A)の水不溶性皮膜形成性ポリマーエマルションは、水不溶性の高分子化合物を水性溶媒に分散してあるもので、水性溶媒が揮散することで皮膜を形成するものであり、通常の化粧料に含有されるものであれば特に限定されずに使用できる。例えば、アクリル酸アルキル共重合体エマルション、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体エマルション、アクリル酸アルキル・酢酸ビニルエマルション、ビニルピロリドン・スチレン共重合体エマルション、ポリ酢酸ビニルエマルション、ポリウレタンエマルション、ポリウレタン・アクリル酸アルキルコアエマルション等のポリマーエマルション等が挙げられる。また、これらの水不溶性皮膜形成性ポリマーエマルションは必要に応じ、1種又は2種以上を用いることができる。
【0015】
これらの中でもガラス転移温度(Tg)が−20〜15℃の範囲にあるものが、耐移り性と柔軟性の面から好ましい。尚、本発明において、ガラス転移温度は、当該ブロックを構成する各モノマーの単独重合体(ホモポリマー)のTgおよび該モノマーの質量分率(共重合割合)に基づいてフォックス(FOX)の式から求められる値である。用いるホモポリマーのTgは、公知資料である日刊工業新聞社の「粘着技術ハンドブック」などに記載されている値を採用した。Tgが−20〜15℃の範囲にある水不溶性皮膜形成性ポリマーエマルションとしては、市販されている「ビニゾール2140L」((アクリレーツ/VA)コポリマー)(Tg=−9℃)(大同化成工業社製)や「ヨドゾールGH800F」(アクリレーツコポリマーアンモニウム)(Tg=−15℃)(アクゾノーベル社製)等が挙げられる。さらには、酢酸ビニルを構成単位にもつポリマーエマルションを1種以上用いることが唇への付着性を向上する面において好ましい。
【0016】
本発明における成分(A)の含有量は、特に限定されないが、固形分として0.4〜13質量%(以下「質量%」を単に「%」で示す)の範囲であると耐移り性と収縮感の面で好ましく、2〜10%の範囲であると耐移り性や塗布のしやすさに優れるためより好ましい。
【0017】
本発明に用いられる成分(B)の固形油又は半固形油は、25℃において固形状又は半固形状の油剤であり、通常の化粧料に含有されるものであれば特に限定されずに使用できる。動物油、植物油、合成油等を起源とする、炭化水素系油、エステル系油、高級アルコール系油、エーテル系油、シリコーン系油等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
【0018】
固形油としては炭化水素系固形油、エステル系固形油、高級アルコール系固形油、シリコーン系固形油等が使用できる。例えばパラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、エチレン・プロピレンコポリマー、モンタンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の炭化水素系固形油、水添ホホバ油、ミツロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、エイコセン/ビニルピロリドン)コポリマー、α−オレフィン・ビニルピロリドン共重合体、トリベヘン酸グリセリル等のエステル系固形油、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール系固形油、(アクリレーツ/アクリル酸ベヘニル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸ステアリル/メタクリル酸ジメチコン)等のシリコーン系固形油が挙げられる。また半固形油としては炭化水素系半固形油、エステル系半固形油、エーテル系半固形油、シリコーン系半固形油等が使用できる。例えば、ワセリン等の炭化水素系半固形油;ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、テトラ(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル、(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル等のジペンタエリトリット脂肪酸エステル、ステアリン酸硬化ヒマシ油、イソステアリン酸硬化ヒマシ油、ヒドロキシステアリン酸硬化ヒマシ油等の硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル等のコレステロール脂肪酸エステル、オレイン酸フィトステリル、マカデミアンナッツ油脂肪酸フィトステリル等のフィトステロール脂肪酸エステル、水添ヤシ油、水添パーム油等の水添植物油、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ペンタヒドロキシステアリン酸スクロース、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)等のエステル系半固形油;ヒドロキシアルキルダイマーシリノレイルエーテル等のエーテル系半固形油;ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー等のシリコーン系半固形油等が挙げられる。
【0019】
これらの中でも融点が70℃以下にあるものが、柔軟性の面から好ましく、さらに融点が30〜70℃の範囲にあるものが柔軟性と耐湯性の面から優れている。さらには融点が30〜70℃の範囲のエステル系油を用いると、化粧膜の均一性がより向上するため、耐移り性に優れたものとなる。さらにはキャンデリラワックス、ミツロウ、ライスワックス、カルナバワックス、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、カデミアンナッツ油脂肪酸フィトステリル、エイコセン/ビニルピロリドン)コポリマー、ペンタヒドロキシステアリン酸スクロース、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)等のエステル系油を含む固形油又は半固形油は、成分(A)のポリマーエマルションと相溶性がよく、化粧膜の均一性を著しく向上させ、耐移り性や耐湯性を発揮し得るため好適に用いられる。
【0020】
本発明における成分(B)の含有量は、特に限定されないが、0.5〜14%の範囲であると化粧膜を膜厚にし、縦皺の目立ちにくくする面において好ましく、2〜12%の範囲であると耐湯性に優れるためより好ましい。
【0021】
本発明における成分(C)のリン脂質は、特に記載した場合を除き、グリセリン又はスフィンゴシンを中心骨格として脂肪酸とリン酸が結合し、さらにリン酸にアルコールがエステル結合した構造をもつものをいう。リン脂質を構成する脂肪酸としては、炭素数7〜22の飽和及び不飽和カルボン酸が挙げられる。リン脂質を構成するアルコールとしては、窒素が含まれることが多く、このような例としては、コリン、エタノールアミン、イノシトール、セリン等がある。
【0022】
本発明には、天然の大豆や卵黄から抽出した大豆レシチン、卵黄レシチン、これらを水素添加した水素添加レシチン、水素添加大豆レシチン、水素添加卵黄レシチンや合成リン脂質等、一般にリン脂質として知られるものが使用できる。より詳細には、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、及びホスファチジルイノシトール等を好ましく用いることができる。また、ホスフォリパーゼ等により2位のエステル結合が加水分解されたリゾリン脂質を用いてもよい。これらのリン脂質は必要に応じ、1種又は2種以上を用いることができる。
【0023】
本発明における成分(C)の含有量は、特に限定されないが、0.05〜5%の範囲であるとワックスの結晶性を阻害し、化粧膜の柔軟性を付与することができ、収縮感を低減させるため好ましく、0.1〜3%の範囲であると耐湯性に優れるためより好ましい。
【0024】
本発明ではさらに成分(D)としてポリエチレングリコールを含有することができ、成分(D)を含有することで耐移り性を維持しつつ、化粧膜を柔軟にし、収縮感を低減させるため好ましい。本発明における成分(D)のポリエチレングリコールは、通常の化粧料に含有されるものであれば特に限定されずに使用できる。具体的にはInternational Nomenclature Cosmetic Ingredientに収載されているPEG−4,PEG−6,PEG−8,PEG−12,PEG−15、PEG−20、PEG−30、PEG−32、PEG−40、PEG−80、PEG−120、PEG−400等が挙げられ、これらは必要に応じ、1種又は2種以上用いることができる。また、平均分子量は、医薬部外品原料規格2006のポリエチレングリコール4000の平均分子量試験により測定される。中でも平均分子量が400〜20000の範囲にあるものが、耐移り性と耐湯性の面から好ましく、1000〜10000の範囲であると、べたつきがなく滑らかに使用できる点において優れるためより好ましい。
【0025】
本発明における成分(D)の含有量は、特に限定されないが、0.1〜15%の範囲であると耐移り性と耐湯性の面において好ましく、0.5〜10%の範囲であると べたつきがなく滑らかに塗布できるためより好ましい。
【0026】
本発明ではさらに成分(E)として水性増粘剤を含有することができ、成分(E)を含有することで、粘性を付与し塗布時の膜の厚みを向上できるため好ましい。本発明で用いられる成分(E)の水性増粘剤は、通常の化粧料に含有されるものであれば特に限定されずに使用でき、必要に応じ、1種又は2種以上を用いることができる。成分(E)としては、例えば、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、カラギーナン、ジェランガム、ハイメトキシペクチン、ローメトキシペクチン、スクレロチウムガム、寒天、水膨潤性粘土鉱物、水性アルカリ増粘型ポリマーエマルション等が挙げられる。
【0027】
ここで挙げる水性アルカリ増粘型ポリマーエマルションとは、成分(A)とは異なるものであり、水性溶媒中に高分子の微粒子が安定に分散した系で、界面活性剤で乳化させたモノマーを重合することによって得られる液や自然界に存在する乳状の樹液を含むもので、中性下では、乳白液状のエマルションであり、アルカリ剤で中和することにより増粘し、化粧料に粘度を付与するものである。水性アルカリ増粘型ポリマーエマルションを固形分換算で0.3質量%(以下、単に「%」で示す。)に調製した水分散体に、アルカリ剤としてトリエタノールアミンで中和してpHを7.5にした際の粘度上昇が、アルカリ剤で中和する前の粘度と比較して、100倍以上になるものをいう。尚、本発明において粘度は、B型粘度計、例えば、単一円筒型回転粘度計ビストロンVS−A1(芝浦システム社製)で測定した値である。具体例としては、アクリル酸とアクリル酸アルキルエステルの共重合体をポリマー分とするポリマーエマルション、アクリル酸とメタクリル酸アルキルエステルの共重合体をポリマー分とするポリマーエマルション、アクリル酸、アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルの共重合体をポリマー分とするポリマーエマルション、アクリル酸、メタクリル酸及びアクリル酸アルキルエステルの共重合体をポリマー分とするポリマーエマルション、アクリル酸、アクリル酸アルキルエステル及びアクリル酸ポリエチレングリコールエステルの共重合体をポリマー分とするポリマーエマルション、アクリル酸、メタクリル酸アルキルエステル及びアクリル酸(ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル)エステルの共重合体をポリマー分とするポリマーエマルション、アクリル酸、メタクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸(ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル)エステルの共重合体をポリマー分とするポリマーエマルション、アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸(ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル)エステルの共重合体をポリマー分とするポリマーエマルション、アクリル酸、アクリル酸アルキルエステル及びイタコン酸(ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル)エステルの共重合体をポリマー分とするポリマーエマルション等が挙げられる。このうち、アクリル酸アルキルやメタクリル酸アルキルのアルキル基については、炭素数1〜12の1種でも、また2種以上であっても良い。中でもポリマー分を構成するモノマーがアクリル酸を有するポリマーであると、水中油乳化型口唇化粧料を増粘させ塗布に適した粘度にするだけでなく、化粧膜の強度向上に寄与することから、耐湯性を向上できる点で好ましい。市販品としては、例えば、「プライマルASE−60」(固形分28%)(ポリマーラテックス社製)、「SALCARE SC81」(固形分30%)(チバスペシャリティケミカルズ社製)、「ACULYN22」(固形分30%)、「ACULYN28」(固形分20%)、「ACULYN33A」(固形分28%)(いずれもローム&ハース社製)等が挙げられる。
【0028】
本発明で用いられる成分(E)の含有量は、特に限定されないが、0.1〜15%の範囲であるとなめらかに伸び広がり、塗布時の膜の厚みと使用性の面において好ましく、0.5〜10%の範囲にあると、のび広がりの軽さを維持しつつ粘度を向上することができるためより好ましい。
【0029】
本発明の水中油乳化型口唇化粧料は、上記記載の成分の他に、化粧料、皮膚外用剤、食品等の製剤に使用される成分、液体油、粉体成分、粉体分散や感触調整としての成分(C)以外の界面活性剤、保湿、皮膜形成としての成分(D)、成分(E)以外の水性成分、紫外線吸収剤、保湿剤、褪色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、美容成分、防腐剤、香料等を本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有することができる。
【0030】
液体油は、25℃において液体の油剤であり、特に限定されずに使用できる。動物油、植物油、合成油等を起源とする、炭化水素系油、エステル系油、高級アルコール系油、エーテル系油、シリコーン系油、フッ素系油、ラノリン誘導体等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。具体的には、流動パラフィン、重質流動イソパラフィン、α−オレフィンオリゴマー、スクワラン、ポリイソブチレン、ポリブテン等の炭化水素類、オリーブ油、ヒマシ油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、ホホバ油、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、モノイソステアリン酸アルキルグリコール、イソステアリン酸イソセチル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、2−エチルヘキサン酸セチル、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、クエン酸トリエチル、コハク酸2−エチルヘキシル、、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸2−オクチルドデシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリイソオクタン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、テトライソステアリン酸ジグリセリル、デカイソステアリン酸デカグリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、ミリスチン酸イソステアリン酸ジグリセリル等のエステル類、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステアリル・2−オクチルドデシル)等のアミノ酸系油剤、イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、アルコキシ変性オルガノポリシロキサン、フッ素変性シリコーン等のシリコーン油類、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル等のラノリン誘導体等が挙げられる。
【0031】
粉体成分に関しては、板状、紡錘状、針状等の形状、粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的には、カーボンブラック、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成マイカ、合成セリサイト、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、窒化硼素等の無機粉体類、オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、酸化鉄被覆雲母、酸化鉄被覆雲母チタン、無水ケイ酸被覆雲母チタン、有機顔料処理雲母チタン、酸化チタン被覆ガラス末、酸化チタン・酸化鉄被覆ガラス末、酸化チタン・無水ケイ酸被覆ガラス末、アルミニウムパウダー等の光輝性粉体類、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、N−アシルリジン、ナイロン等の有機粉体類、有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体類、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を用いることができる。
また、これら粉体は1種又は2種以上の複合化したものを用いても良く、フッ素化合物、シリコーン系油剤、金属石ケン、ロウ、界面活性剤、油脂、炭化水素等を用いて公知の方法により表面処理を施したものであっても良い。
【0032】
粉体分散や感触調整としての成分(C)以外の界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。例えば、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレンアルキル共変性オルガノポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、ステアリン酸、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等が挙げられる。
【0033】
皮膜形成、感触調整としての成分(D)、成分(E)以外の水性成分としては、水に可溶な成分であれば何れでもよく、例えば、エチルアルコール、ブチルアルコール等の低級アルコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、(ビニルピロリドン−酢酸ビニル)コポリマー等の水溶性皮膜形成剤、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液が挙げられる。タンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、トレハロース、エラスチン、ケラチン等の他の保湿剤を含有する事もできる。
【0034】
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、パラアミノ安息香酸系、ケイ皮酸系、サリチル酸系、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等、保湿剤としては、例えばタンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等、酸化防止剤としては、例えばα−トコフェロール、アスコルビン酸等、美容成分としては、例えばビタミン類、消炎剤、生薬等、防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール、1,2―ペンタンジオール等が挙げられる。
【0035】
本発明の水中油乳化型口唇化粧料の例としては、特に限定されず、例えば、口紅、口紅下地、グロス、口紅オーバーコート等のいずれの形態であってもよい。また、性状としては液状、半固形状、固形状のいずれであってもよい。
【0036】
本発明の水中油乳化型口唇化粧料の製造方法は、特に限定されず、常法により調製される。例えば、上記成分(A)〜(C)、さらに必要に応じて上記成分(D)、成分(E)、任意成分を加え、これを乳化することにより調製する方法が挙げられる。
【0037】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0038】
参考例1〜13、実施例14及び15、並びに比較例1〜6:水中油乳化型口唇化粧料(液状)
下記表1〜3に示す組成の水中油乳化型口唇化粧料を下記製造方法にて調製し、a.耐湯性(60℃)、b.耐移り性、c.収縮感、d.塗布時の膜の厚み、e.唇の縦皺の目立ちにくさを下記の評価方法及び評価・判定基準により評価した。結果も併せて表1〜3に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
注1:ニッコールレシノールS−10EZ(日光ケミカルズ社製)
注2:レシチンCLO(J−オイルミルズ社製)
注3:PARACERA256(PARAMELT社製)
注4:精製カルナバワックス1号(日興リカ社製)
注5:BEES WAX S(クローダ社製)
注6:ACULYN 33A(アルカリ増粘型)(Rohm社製)
注7:FLAMENCO SPARKLE RED 420J(エンゲルハード社製)
注8:ビニゾール2140L(大同化成工業社製)
注9:ビニゾール1086WP(大同化成工業社製)
注10:ヨドゾールGH800F(アクゾノーベル社製)
注11:アコーンKS(大阪有機化学工業社製)
注12:PEG−1500(東邦化学工業社製)
【0043】
(製造方法)
A.成分(1)〜(7)を100℃で加熱溶解する。
B.成分(8)、(9)を90℃で加熱混合する。
C.AにBを加え乳化する。
D.(10)〜(24)を混合する
E.CにDを加え、混合する。
F.Eを容器に充填して水中油乳化型口唇化粧料(液状)を得た。
【0044】
(評価方法)
評価項目aについて、各試料を人工皮革(株式会社ビューラックス製バイオスキンプレート,厚さ 5mm)に、ドクターブレードにて100μmの厚さの均一な塗膜を調製し、30℃の恒温槽で1時間乾燥させ、60℃の湯に5分間浸漬させた後の塗膜の状態を評価した。評価基準は次の通り定めた。
<評価基準>
(評価):(塗膜の状態)
◎ :変化なし
○ :塗膜がやや柔らかくなる。
△ :塗膜に剥がれがみられる、又は溶出により塗膜が薄くなる
× :剥がれ、又は溶出により塗膜がほとんど残っていない
【0045】
下記の項目について、各試料について化粧品評価専門パネル20名による使用テストを行った。各試料を唇に塗布し、パネル各人が評価項目bについて塗布後6時間通常の生活をした後の化粧膜の状態を、下記絶対評価基準にて6段階に評価し、評点をつけ、パネル全員の評点の合計から、その平均値を算出し、下記の判定基準により判定した。
b.耐移り性
<評価基準>
(評点):(評価)
5 :全く色移りせず、化粧膜にも変化がない。
4 :全く色移りはしないが、化粧膜の光沢性がわずかに落ちる。
3 :全く色移りはしないが、化粧膜の光沢性が落ちる。
2 :わずかに色移りがみられ、化粧膜の欠損がごくわずかに見られる。
1 :色移りが見られ、化粧膜の欠損が一部にみられる。
0 :色移りが激しく、化粧膜の欠損が激しい。
【0046】
<判定基準>
(判定):(評点の平均点)
◎ :4点を超え5点以下 :非常に良好
○ :3点以上4点以下 :良好
△ :1.5点を超え3点未満 :やや不良
× :1.5点以下 :不良
【0047】
下記の項目について、各試料について化粧品評価専門パネル20名による使用テストを行った。各試料を唇に塗布し、パネル各人が評価項目c、d、eについて塗布直後の化粧膜の状態を、下記絶対評価基準にて5段階に評価し、評点をつけ、パネル全員の評点の合計から、その平均値を算出し、下記の判定基準により判定した。
【0048】
c.収縮感
<評価基準>
(評点):(評価)
5 :全く収縮感を感じない。
4 :ほとんど収縮感を感じない
3 :収縮感を感じる
2 :収縮感を感じ、負担に思う。
1 :収縮感を強く感じ、非常に負担に思う。
【0049】
d.塗布時の膜の厚み
<評価基準>
(評点):(評価)
5 :膜が非常に厚く、均一な塗布性に優れる。
4 :膜が十分厚く、均一に塗布しやすい。
3 :膜の厚みにわずかに欠けるが、均一に塗布できる。
2 :膜がやや薄く、均一な膜にならない。
1 :膜が薄く、明らかな塗りむらができる。
【0050】
e.唇の縦皺の目立ちにくさ
<評価基準>
(評点):(評価)
5 :唇の縦皺が全く目立たない。
4 :唇の縦皺がほとんど目立たない。
3 :唇の縦皺が見られる。
2 :唇の縦皺が目立つ。
1 :唇の縦皺が非常に目立つ。
【0051】
<判定基準>
(判定):(評点の平均点)
◎ :4点を超え5点以下 :非常に良好
○ :3点を超え4点以下 :良好
△ :2点を超え3点以下 :やや不良
× :2点以下 :不良
【0052】
表1〜3の結果から明らかな如く、本発明の参考例1〜13、実施例14及び15の水中油乳化型口唇化粧料(液状)は、耐湯性と耐移り性に優れながらも、化粧膜が柔軟であるために唇で収縮感を感じることなく、なめらかで膜厚な膜を形成するため唇の縦皺が目立ちにくく化粧効果に優れるものであった。
【0053】
これに対して、成分(A)の水不溶性皮膜形成性ポリマーエマルションを含有していない比較例1は、耐湯性と耐移り性が顕著に劣るものであり、また、膜の柔軟性も低く、満足のいくものが得られなかった。成分(A)の水不溶性皮膜形成性ポリマーエマルションの代わりにアルコール可溶性皮膜形成剤である(ビニルピロリドン/酢酸ビニル)コポリマーを含有した比較例2は、耐湯性及び耐移り性が劣るだけでなく、硬い皮膜となるため、収縮感の面においても満足のいくものが得れなかった。成分(B)の固形油又は半固形油を含有していない比較例3は、耐湯性に劣るだけでなく、皮膜の収縮を抑制しきれず、収縮感を感じるほか、塗布後に残る化粧膜の厚みも不十分であった。成分(B)の固形油又は半固形油の代わりに液状油であるトリ−2エチルヘキサン酸グリセリルを含有した比較例4は、収縮感は改善されるものの、耐湯性と耐移り性に劣り、塗布後に残る化粧膜の厚みも不十分であり、縦皺が目立ちやすかった。成分(C)のリン脂質を含有していない比較例5は、成分(A)と成分(B)から形成される膜に柔軟性を付与できず、唇という収縮感を感じやすい部位においては十分な柔軟性を付与することができず、収縮感において満足を得れるものはできなかった成分(C)のリン脂質の代わりに同じく活性剤として寄与するステアリン酸を増量した比較例6は、柔軟性を顕著に改善できず、収縮感の面で満足いくものはできなかった。
【0054】
参考例16:水中油乳化型口紅(ゲル状)
下記組成および製造方法により、水中油乳化型口紅(ゲル状)を調製した。
(成分) (%)
1.ネイティブジェランガム(注13) 0.5
2.水 残 量
3.L−アルギニン 0.3
4.EDTA−2Na 0.05
5.塩化カルシウム 0.03
6.フェノキシエタノール 0.3
7.1,3−ブチレングリコール 10
8.グリセリン 5
9.ポリオキシエチレン(32モル)アルキル
エーテルリン酸ナトリウム 0.3
10.ジメチルポリシロキサン2%処理黄酸化鉄 1.5
11.ジメチルポリシロキサン2%処理ベンガラ 0.3
12.ジメチルポリシロキサン2%処理酸化チタン 3
13.モノステアリン酸グリセリン 1.5
14.セタノール 1.5
15.大豆レシチン(注2) 0.5
16.ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステリル/
セチル/ステアリル/ベヘニル) 2
17.ワセリン 1
18.トリオクタン酸グリセリル 3
19.ポリ酢酸ビニルエマルション(注14) 5
注13:ケルコゲルLT−100F(大日本住友製薬社製)
注14:ビニブランGV−5651F(固形分36.4%)(大同化成工業社製)
【0055】
(製造方法)
A.成分(1)を成分(2)にて均一に膨潤する。
B.成分(3)〜(12)を均一に分散する。
C.成分(13)〜(18)を70℃で加熱溶解する。
D.A、Bを混合し、そこにCを加えて乳化する。
E.Dに成分(19)を添加し混合する。
F.Eを加温溶解し、容器に充填した後、室温まで冷却して、水中油乳化型口紅(ゲル状)を得た。
【0056】
参考例16の水中油乳化型口紅(ゲル状)は、耐湯性、耐移り性、塗布時の膜の厚み、収縮感、唇の縦皺の目立ちにくさの全てにおいて優れたものであった。
【0057】
参考例17:水中油乳化型口紅下地(液状)
下記組成および製造方法により、水中油乳化型口紅下地(液状)を調製した。
(成分) (%)
1.ポリオキシエチレン(20モル)モノステアリン酸ソルビタン 0.3
2.セトステアリルアルコール 0.3
3.ベヘニルアルコール 0.5
4.親油型モノステアリン酸グリセリン 0.5
5.トリエタノールアミン 0.01
6.スクワラン 3.5
7.メチルパラベン 0.1
8.デカメチルシクロペンタシロキサン 1
9.2−エチルヘキサン酸セチル 2
10.1,3−ブチレングリコール 15
11.ヒアルロン酸 0.5
12.精製水 残 量
13.水添加大豆リン脂質(注1) 0.2
14.キサンタンガム 0.12
15.クイーンシードエキス 0.12
16.(アクリレーツ/VA)コポリマーエマルション(注8) 12
17.香料 0.02
【0058】
(製造方法)
A.成分(1)〜(9)を75℃にて、均一に混合分散する。
B.成分(10)〜(12)を75℃にて、均一に混合分散する。
C.AにBを加え乳化し、冷却する。
D.Cに成分(13)〜(17)を加え、均一に混合分散する。
E.容器に充填して、水中油乳化型口紅下地(液状)を得た。
【0059】
参考例17で得られた水中油乳化型口紅下地(液状)は、耐湯性、耐移り性、塗布時の膜の厚み、収縮感、唇の縦皺の目立ちにくさの全てにおいて優れ、口紅やグロス等の重ね付けもしやすいものであった。