特許第6285234号(P6285234)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6285234
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】ハニカム構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 37/00 20060101AFI20180215BHJP
   C04B 38/00 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   C04B37/00 A
   C04B38/00 303Z
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-61484(P2014-61484)
(22)【出願日】2014年3月25日
(65)【公開番号】特開2015-182926(P2015-182926A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2016年10月17日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】石井 豊
(72)【発明者】
【氏名】秋田 一成
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祥弘
(72)【発明者】
【氏名】名手 真之
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−130069(JP,A)
【文献】 特開2007−204360(JP,A)
【文献】 特開2004−261625(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/070539(WO,A1)
【文献】 特開平02−236205(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/111281(WO,A1)
【文献】 特開2011−036818(JP,A)
【文献】 特開2011−098866(JP,A)
【文献】 特開2013−203572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 37/00 − 37/04
C04B 38/00
B01J 21/00 − 38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形原料を成形して、流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を有する、四角柱状のハニカム成形体を複数個形成する成形工程と、
複数の前記ハニカム成形体を焼成して、複数の四角柱状のハニカム焼成体を形成する焼成工程と、
複数の前記ハニカム焼成体の少なくとも一部について、少なくとも一部の側面にシート状の接合材を貼り付けるシート状接合材貼り付け工程と、
複数の前記四角柱状のハニカム焼成体を、それぞれの側面同士を前記接合材で接合しながら組み合わせて、前記複数のハニカム焼成体が積層されたハニカムブロック体を作製するハニカムブロック体作製工程と、
前記ハニカムブロック体の外周部分を研削してハニカム構造体を得る研削工程とを有し、
前記ハニカムブロック体は、前記ハニカムブロック体作製工程において、前記複数のハニカム焼成体を組み合わせた後、焼成されることなく作製され、且つ、
前記ハニカムブロック体作製工程以降において、前記ハニカムブロック体、及び前記研削工程にて外周部分が研削された前記ハニカムブロック体が焼成されることなく、前記ハニカム構造体を完成させ、
得られたハニカム構造体のせん断強度が200kPa以上であるハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
前記接合材が、寒天を含有する請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項3】
前記接合材中に寒天が、0.08〜0.40質量%含有されている請求項1又は2に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項4】
前記接合材中に水が、20〜45質量%含有されている請求項1〜3のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項5】
前記接合材中にセラミック原料が、20〜40質量%含有されている請求項1〜4のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項6】
前記接合材の厚さが、0.5〜6.0mmである請求項1〜5のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項7】
前記接合材の圧縮強度が、5〜55Nである請求項1〜6のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体の製造方法に関し、さらに詳しくは、生産効率を向上させることが可能なハニカム構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、化学、電力、鉄鋼等の様々な分野において、環境対策や特定物資の回収等のために使用される触媒装置用の担体、又はフィルタとして、耐熱性、耐食性に優れるセラミック製のハニカム構造体が採用されている。特に、近時では、ハニカム構造体は、両端面のセル開口部を交互に目封止して目封止ハニカム構造体とし、ディーゼル機関等から排出される粒子状物質を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)として盛んに用いられている。そして、高温、腐食性ガス雰囲気下で使用されるハニカム構造体の材料として、耐熱性、化学的安定性に優れた、炭化珪素(SiC)、コージェライト、チタン酸アルミニウム(AT)等が好適に用いられている。
【0003】
これらの材料の中で、炭化珪素は、熱膨張率が比較的大きいため、炭化珪素を骨材として形成されるハニカム構造体は、体積の大きなものを形成すると使用時に熱衝撃により欠陥が生じることがある。また、捕集した粒子状物質を燃焼除去する際の熱衝撃により欠陥が生じることがある。そのため、炭化珪素を骨材として形成されるハニカム構造体については、所定の大きさ以上のものを製造する場合、通常、まず、複数の小さな四角柱状の目封止ハニカムセグメント(ハニカム構造体)を作製する。そして、それらハニカムセグメントの接着面に接着剤を施与し、ハニカムセグメント同士を接合して、一つの大きなハニカム構造体としている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2003/31371号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のハニカム構造体の製造方法では、ハニカムセグメントを接合する際に、ハニカムセグメント間にスペーサを配置して、ハニカムセグメント間の間隔(接着剤(接合材)の厚さ)のばらつきを少なくするようにしている。この方法においては、ハニカムセグメントの接合面にスペーサーを形成する工程が必要である。
【0006】
また、ハニカムセグメントに接合材を塗布(施与)する前に、ハニカムセグメントに対して下地処理を行うことがある。下地処理は、セラミック成分を含む薄いスラリーを、ハニカムセグメント表面に塗布するものである。これにより、「接合材を塗布した時に、接合材中の水分がハニカムセグメントに吸収される」ことを抑制し、得られるハニカム構造体における接合材の剥離等の発生を、抑制することができる。この製造方法においては、下地処理を行う工程が必要である。
【0007】
また、ハニカムセグメントに接合材を塗布して、ハニカムセグメント同士を接合する際には、接合材がハニカムセグメント間から押し出されて、ハニカムセグメントの端面側に排出される。このときに、ハニカムセグメントの端面に開口するセルの開口部分が接合材によって塞がれることがある。そのため、従来、ハニカムセグメントの端面のセルの開口部が接合材によって塞がれないように、あらかじめハニカムセグメントの端面に樹脂製のフィルムを貼り付けることがあった。この製造方法においては、フィルムを当該端面に貼り付ける工程及びフィルムを当該端面から剥がす工程とが必要である。
【0008】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、生産効率を向上させることが可能なハニカム構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、本発明は、以下のハニカム構造体の製造方法を提供する。
【0010】
[1] 成形原料を成形して、流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を有する、四角柱状のハニカム成形体を複数個形成する成形工程と、複数の前記ハニカム成形体を焼成して、複数の四角柱状のハニカム焼成体を形成する焼成工程と、複数の前記ハニカム焼成体の少なくとも一部について、少なくとも一部の側面にシート状の接合材を貼り付けるシート状接合材貼り付け工程と、複数の前記四角柱状のハニカム焼成体を、それぞれの側面同士を前記接合材で接合しながら組み合わせて、前記複数のハニカム焼成体が積層されたハニカムブロック体を作製するハニカムブロック体作製工程と、前記ハニカムブロック体の外周部分を研削してハニカム構造体を得る研削工程とを有し、前記ハニカムブロック体は、前記ハニカムブロック体作製工程において、前記複数のハニカム焼成体を組み合わせた後、焼成されることなく作製され、且つ、前記ハニカムブロック体作製工程以降において、前記ハニカムブロック体、及び前記研削工程にて外周部分が研削された前記ハニカムブロック体が焼成されることなく、前記ハニカム構造体を完成させ、得られたハニカム構造体のせん断強度が200kPa以上であるハニカム構造体の製造方法。
【0011】
[2] 前記接合材が、寒天を含有する[1]に記載のハニカム構造体の製造方法。
【0012】
[3] 前記接合材中に寒天が、0.08〜0.40質量%含有されている[1]又は[2]に記載のハニカム構造体の製造方法。
【0013】
[4] 前記接合材中に水が、20〜45質量%含有されている[1]〜[3]のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【0014】
[5] 前記接合材中にセラミック原料が、20〜40質量%含有されている[1]〜[4]のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【0015】
[6] 前記接合材の厚さが、0.5〜6.0mmである[1]〜[5]のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【0016】
[7] 前記接合材の圧縮強度が、5〜55Nである[1]〜[6]のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明のハニカム構造体の製造方法によれば、接合材がシート状であるため、ハニカムセグメント間の間隔を均一にし易いため、接合させるハニカムセグメント間にスペーサを配置する必要がない。
【0018】
また、接合材がシート状であるため、ハニカムセグメント表面の下地処理を、無くすか少なくすることができる。
【0019】
また、シート状の接合材によって複数のハニカムセグメントの側面同士を接合するため、「ハニカムセグメント間に挟まれた接合材が、ハニカムセグメントの間からはみ出す」ことを抑制することができる。そのため、セルの開口部が接合材によって塞がれることを防止するためのフィルムを、ハニカムセグメントの端面に貼り付ける必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態において、ハニカム構造体の製造過程で形成される四角柱状のハニカム成形体を模式的に示した斜視図である。
図2】本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態において、ハニカム構造体の製造過程で形成される四角柱状のハニカム焼成体を模式的に示した斜視図である。
図3】本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態において、ハニカム焼成体の側面に接合材を貼り付けた状態を模式的に示した斜視図である。
図4】本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態において、ハニカム構造体の製造過程で形成されるハニカムブロック体を模式的に示した斜視図である。
図5】本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態において、複数の四角柱状のハニカム焼成体のそれぞれの側面同士を接合材で接合しながら組み合わせて、最外周から内側に向かって加圧する状態を模式的に示した平面図である。
図6】本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態において製造されるハニカム構造体を模式的に示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に本発明を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0022】
本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態は、成形工程と、焼成工程と、シート状接合材貼り付け工程と、ハニカムブロック体作製工程と、研削工程とを有するものである。そして、得られたハニカム構造体のせん断強度が、200kPa以上である。以下、各工程について、図1図6を参照しながら説明する。成形工程は、成形原料を成形して、流体の流路となる一方の端面1aから他方の端面1bまで延びる複数のセル1cを区画形成する隔壁1dを有する、四角柱状のハニカム成形体1を複数個形成する工程である。焼成工程は、複数のハニカム成形体1を焼成して、複数の四角柱状のハニカム焼成体2を形成する工程である。シート状接合材貼り付け工程は、複数のハニカム焼成体2の少なくとも一部について、少なくとも一部の側面2aにシート状の接合材3を貼り付ける工程である。ハニカムブロック体作製工程は、複数の四角柱状のハニカム焼成体2を、それぞれの側面2a同士を接合材3で接合しながら組み合わせて、複数のハニカム焼成体2が積層されたハニカムブロック体5を作製する工程である。研削工程は、ハニカムブロック体5の外周部分を研削してハニカム構造体100を得る工程である。
【0023】
ここで、図1は、本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態において、ハニカム構造体の製造過程で形成される四角柱状のハニカム成形体1を模式的に示した斜視図である。図2は、本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態において、ハニカム構造体の製造過程で形成される四角柱状のハニカム焼成体2を模式的に示した斜視図である。図3は、本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態において、ハニカム焼成体2の側面2aに接合材3を貼り付けた状態を模式的に示した斜視図である。図4は、本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態において、ハニカム構造体の製造過程で形成されるハニカムブロック体5を模式的に示した斜視図である。図5は、本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態において、複数の四角柱状のハニカム焼成体2のそれぞれの側面2a同士を接合材3で接合しながら組み合わせて、最外周から内側に向かって加圧する状態を模式的に示した平面図である。図6は、本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態において製造されるハニカム構造体100を模式的に示した平面図である。
【0024】
本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態によれば、接合材がシート状であるため、ハニカムセグメント間の間隔を均一にし易いため、接合させるハニカムセグメント間にスペーサを配置する必要がない。また、接合材がシート状であるため、ハニカムセグメント表面の下地処理を、無くすか少なくすることができる。また、シート状の接合材によって複数のハニカムセグメントの側面同士を接合するため、「ハニカムセグメント間に挟まれた接合材が、ハニカムセグメントの間からはみ出す」ことを抑制することができる。そのため、セルの開口部が接合材によって塞がれることを防止するためのフィルムを、ハニカムセグメントの端面に貼り付ける必要がない。以下、本実施形のハニカム構造体の製造方法について工程毎に説明する。
【0025】
(1)成形工程:
まず、セラミック原料にバインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して成形原料とすることが好ましい。セラミック原料としては、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト化原料、コージェライト、ムライト、アルミナ、チタニア、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、チタン酸アルミニウム、鉄−クロム−アルミニウム系合金からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、炭化珪素又は珪素−炭化珪素系複合材料が好ましい。尚、コージェライト化原料とは、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミックス原料であって、焼成されてコージェライトになるものである。珪素−炭化珪素系複合材料とする場合、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末を混合したものをセラミック原料とする。
【0026】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、セラミック原料100質量部に対して3〜15質量部であることが好ましい。
【0027】
水の含有量は、セラミック原料100質量部に対して20〜90質量部であることが好ましい。
【0028】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されず、例えば、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル、炭素等を挙げることができる。造孔材の含有量は、セラミック原料100質量部に対して0〜45質量部であることが好ましい。
【0030】
次に、成形原料を成形して、中心軸に直交する断面の形状が長方形である、四角柱状のハニカム成形体1を形成することが好ましい。ハニカム成形体の個数は、作製するハニカム構造体の形状、大きさに合わせて適宜決定することができる。複数のハニカム成形体は、いずれも同じ形状であることが好ましい。成形原料を成形する際には、まず、成形原料を混練して坏土を形成する。成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。そして、坏土を押出成形して、図1に示すような、四角柱状のハニカム成形体1を形成する。ハニカム成形体1は、流体の流路となる一方の端面1aから他方の端面1bまで延びる複数のセル1cを区画形成する隔壁1dを有するものであり、中心軸に直交する(セルの延びる方向に直交する)断面が長方形の、四角柱状である。ハニカム成形体1の中心軸に直交する断面の形状は正方形であることが好ましい。坏土を成形してハニカム成形体を形成する方法は特に制限されず、押出成形等の従来公知の成形法を用いることができる。所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形してハニカム成形体を形成する方法等を好適例として挙げることができる。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。ハニカム成形体のセル形状、隔壁厚さ、セル密度は、特に限定されない。
【0031】
次に、得られたハニカム成形体を乾燥させることが好ましい。乾燥の方法は特に限定されず、例えば、マイクロ波加熱乾燥、高周波誘電加熱乾燥等の電磁波加熱方式と、熱風乾燥、過熱水蒸気乾燥等の外部加熱方式とを挙げることができる。これらの中でも、成形体全体を迅速かつ均一に、クラックが生じないように乾燥することができる点で、電磁波加熱方式で一定量の水分を乾燥させた後、残りの水分を外部加熱方式により乾燥させることが好ましい。乾燥の条件として、電磁波加熱方式にて、乾燥前の水分量に対して、30〜95質量%の水分を除いた後、外部加熱方式にて、3質量%以下の水分にすることが好ましい。電磁波加熱方式としては、誘電加熱乾燥が好ましく、外部加熱方式としては、熱風乾燥が好ましい。乾燥温度は、90〜180℃が好ましい。乾燥時間は1〜10時間が好ましい。
【0032】
次に、ハニカム成形体の中心軸方向長さ(セルの延びる方向における長さ)が、所望の長さではない場合は、両端面(両端部)を切断して所望の長さとすることが好ましい。切断方法は特に限定されないが、両頭丸鋸切断機等を用いる方法を挙げることができる。また、複数のハニカム成形体は、全てが同じ形状、同じ大きさであることが好ましい。ハニカム成形体の長さは、特に限定されず、所望の長さとすることができる。
【0033】
次に、ハニカム成形体について、一方の端面における所定のセルの開口部と、他方の端面における残余のセルの開口部に目封止部を形成することが好ましい。目封止部を形成したハニカム成形体は、一方の端面側に目封止部が形成された所定のセルと、他方の端面側に目封止部が形成された残余のセルとが、交互に並び、両端面に市松模様が形成されることが好ましい。ハニカム成形体に目封止部を形成した場合は、得られるハニカム構造体が目封止ハニカム構造体となる。
【0034】
ハニカム成形体に目封止を施す方法は、特に限定されないが、例えば、以下の方法を挙げることができる。ハニカム成形体の一方の端面にシートを貼り付けた後、当該シートの目封止部を形成しようとするセルに対応した位置に孔を開ける。そして、目封止部の構成材料をスラリー化した目封止用スラリーに、ハニカム成形体の当該シートを貼り付けた端面を浸漬し、シートに開けた孔を通じて、目封止しようとするセルの開口端部内に目封止用スラリーを充填する。そして、ハニカム成形体の他方の端面については、一方の端面において目封止部を形成しなかったセルについて、上記一方の端面に目封止部を形成した方法と同様の方法で目封止部を形成する(目封止スラリーを充填する)。目封止部の構成材料としては、ハニカム成形体の材料と同じものを用いることが好ましい。目封止部は、ハニカム成形体を焼成した後のハニカム焼成体に形成してもよい。目封止部をハニカム焼成体に形成する場合は、目封止部を固化させ、隔壁と密着させるため、目封止を施した後に、必要に応じて熱処理、焼成等を行うことが好ましい。
【0035】
(2)焼成工程:
次に、各ハニカム成形体を焼成して、図2に示す四角柱状のハニカム焼成体2を複数個得る。複数のハニカム焼成体は、いずれも同じ形状であることが好ましい。焼成の前に、バインダ等を除去するため、脱脂(仮焼成)を行うことが好ましい。仮焼成は大気雰囲気において、400〜500℃を最高温度として、0.5〜20時間温度を保持して行うことが好ましい。仮焼成及び焼成の方法は特に限定されず、電気炉、ガス炉等を用いて焼成することができる。炭化珪素又は珪素−炭化珪素系複合材料の場合、焼成条件は、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気において、1300〜1500℃の最高温度で、1〜10時間加熱保持することが好ましい。
【0036】
ハニカム焼成体の隔壁は、多孔質であることが好ましい。ハニカム焼成体の隔壁の気孔率は、25〜80%が好ましく、30〜70%が更に好ましく、35〜65%が特に好ましい。気孔率の範囲をこのような値とすることにより、強度を維持しながら圧力損失を小さくすることができる。気孔率が25%未満であると、圧力損失が上昇することがある。気孔率が80%を超えると、強度が低下するとともに、熱伝導率が低下することがある。気孔率は、アルキメデス法により測定した値である。
【0037】
ハニカム焼成体の隔壁の平均細孔径は、5〜70μmが好ましい。平均細孔径をこのような値とすることにより、作製されるハニカム構造体をフィルターとして使用した場合に、粒子状物質(PM:パティキュレートマター)を効果的に捕集することができる。平均細孔径が5μm未満であると、粒子状物質(PM)により目詰まりを起こしやすくなることがある。平均細孔径が70μmを超えると、粒子状物質(PM)がフィルターに捕集されず通過することがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0038】
ハニカム焼成体の隔壁の材質が炭化珪素である場合、炭化珪素粒子の平均粒子径が1〜50μmであることが好ましい。このような平均粒子径とすることより、得られるハニカム焼成体について、好適な気孔率、気孔径に制御しやすいという利点がある。平均粒子径が1μmより小さいと、気孔径が小さくなり過ぎ、50μmより大きいと気孔率が小さくなることがある。気孔径が小さ過ぎると粒子状物質(PM)により目詰まりを起こしやすく、気孔率が小さすぎると圧力損失が上昇することがある。平均粒子径は、粒度分布測定装置を用いて測定した値である。
【0039】
ハニカム焼成体のセル形状(ハニカム焼成体の中心軸(セルが延びる方向)に対して垂直な断面におけるセル形状)としては、特に制限はなく、例えば、三角形、四角形、六角形、八角形、円形、あるいはこれらの組合せを挙げることができる。目封止部を設ける場合は、八角形と四角形との組み合わせも好適な一例である。
【0040】
ハニカム焼成体の隔壁の厚さは、100〜600μmであることが好ましく、150〜500μmが更に好ましく、200〜400μmが特に好ましい。隔壁の厚さが、100μmより薄いと、得られるハニカム構造体の強度が低下することがあり、600μmより厚いと、圧力損失が大きくなることがある。また、ハニカム焼成体のセル密度は、特に制限されないが、5〜80セル/cmであることが好ましく、20〜60セル/cmであることが更に好ましく、30〜50セル/cmであることが特に好ましい。セル密度が5セル/cmより小さいと、得られるハニカム構造体をフィルターとして使用した時に、ろ過面積が小さくなることがある。セル密度が80セル/cmより大きいと、圧力損失が大きくなることがある。
【0041】
ハニカム焼成体の大きさ(縦×横×長さ(中心軸方向長さ))は、30mm×30mm×100mm〜45mm×45mm×400mmが好ましい。
【0042】
(3)シート状接合材貼り付け工程:
次に、複数のハニカム焼成体2の少なくとも一部について、少なくとも一部の側面2aにシート状の接合材3を貼り付けることが好ましい(図3参照)。接合材3は、「ハニカムブロック体を作成する際に、全ての「ハニカム焼成体とハニカム焼成体との間」に接合材が充填された状態になる」ように、各ハニカム焼成体の側面に、適宜、貼り付けることが好ましい。
【0043】
接合材には、寒天、水、セラミック原料、造孔材、接合材自体の強度を向上させる為に、無機バインダーとしてシリカゾル、アルミナゾル、有機バインダーとしてメチルセルロース、セルロース、PVA、PVB、吸水性樹脂等が含有されることが好ましい。寒天を投入し、ペースト状の接合材をシート状にすることで、テープ成形、鋳込み成形、その他の技術による扱いが可能となり、従来方法よりも接合材の収率が上がる。そして、寒天特有の硬度及び離水性を生かすことで、接合幅を維持するためのスペーサーと下地を不要とすることが可能となる。
【0044】
接合材に含有される寒天の含有量は、0.08〜0.40質量%が好ましい。0.08質量%より少ないと、接合材をシート状に形成することが難しくなることがある。0.40質量%より多いと、接合材とハニカム焼成体との接着強度が低下し、接合材とハニカム焼成体での界面で剥がれてしまうことがある。
【0045】
接合材に含有される水の含有量は、20〜45質量%が好ましい。20質量%より少ないと、水分が少ないため接合材がシート状に硬化しなくなることがある。45質量%より多いと、接合材をシート状に形成し難くなることがある。
【0046】
接合材に含有されるセラミック原料としては、上記ハニカム焼成体を作製する際に用いられるセラミック原料(炭化珪素等:「成形工程」参照)と同様のものを用いることが好ましい。接合材に用いるセラミック原料は、ハニカム焼成体を作製する際に用いられるセラミック原料と同じであることが好ましいが、異なっていてもよい。接合材に含有されるセラミック原料の含有量は、20〜40質量%が好ましく、20質量%より少ないと、接合材強度が低下することがある。40質量%より多いと、接合材の熱膨張が大きくなり、接合材及びハニカム焼成体にクラックを発生させる原因となることがある。接合材に用いられるセラミック原料の平均粒子径は、ハニカム焼成体を作製する際に用いられるセラミック原料の平均粒子径に対して、10〜80%の範囲であることが好ましい。このような範囲にすることにより、得られるハニカム構造体における接合部の接合強度を、より強くすることができる。
【0047】
接合材に含有される造孔材としては、発泡樹脂を含有することが望ましい。発泡樹脂の含有量は0〜10質量%であることが好ましい。発泡樹脂の含有量をこのような範囲にすると、発泡樹脂が材料特性に影響を与えることは無い。
【0048】
接合材は、炭化珪素、アルミナ、チタニア、コージライト、ムライト、マイカ、発泡樹脂などの造孔材、有機バインダ(MC、CMC、PVA、PVB)、コロイダルシリカ、アルミナシリケートファイバー、その他の繊維類、分散材等を含有することが好ましい。有機バインダとしては、MC(メチルセルロース)、CMC(カルボキシメチルセルロース)、PVA(ポリビニルアルコール)、PVB(ポリビニルブチラール)等を挙げることができる。接合材は、ハニカム焼成体同士の接合を促進する成分である。
【0049】
シート状の接合材(貼り付け前)の厚さは、0.5〜6.0mmであることが好ましく、1〜4.0mmであることが更に好ましく、1.5〜3.0mmであることが特に好ましい。0.5mmより薄いと、接合材とハニカム焼成体との接着面積が低下し、接合強度が低くなることがある。6.0mmより厚いと、ハニカム焼成体間から、はみ出す接合材の量が多くなり、接合材の使用量が多くなることがある。
【0050】
接合材の圧縮強度は、5〜55Nであることが好ましく、10〜30Nであることが更に好ましく、15〜20Nであることが特に好ましい。圧縮強度がこのような範囲であるため、シート状の接合材の厚さと、ハニカムブロック体作製工程における加圧時の圧力とによって、隣接するハニカム焼成体(ハニカムセグメント)間の距離を調整することができる。そのため、ハニカム焼成体同士を接合する際に、スペーサーを用いる必要がない。圧縮強度が、5Nより低いと、接合材が柔らかいため、シート状の形状を維持し難くなることがある。圧縮強度が、55Nより高いと、接合材が固いため、ハニカム焼成体同士を接合し難くなることがある。
【0051】
接合材は、ハニカム焼成体の側面に貼り付けたときに、当該側面から、はみ出す大きさであってもよいが、当該側面からはみ出さない大きさであることが好ましい。また、接合材をハニカム焼成体の側面に貼り付けたときに、接合材の外周から当該ハニカム焼成体の側面の外周までの距離(ハニカム焼成体の側面の、露出している外周部分の幅)が0〜5mmであることが好ましい。当該「距離(幅)」は、2〜5mmであることが更に好ましく、3〜5mmであることが特に好ましい。5mmより長い(広い)と、接合材がハニカム焼成体の側面全体に広がり難くなり、得られるハニカム構造体のハニカムセグメント間に隙間ができることがある。尚、3mmより短い(狭い)と、接合材がハニカム焼成体間から多くはみ出し易くなることがある。
【0052】
接合材は、あらかじめシート状に形成したものを、ハニカム焼成体の側面に貼り付ける。接合材をシート状に形成する方法としては、鋳込み成形、押出成形等を挙げることができる。
【0053】
シート状の接合材を作製する際には、セラミック原料、セメント材、造孔材、水、寒天水溶液等を混合して接合材成形原料とし、接合材成形原料をシート状に成形することが好ましい。寒天水溶液中の寒天の含有量は、0.1〜5.0質量%が好ましい。0.1質量%より少ないと、接合材を、シート状に硬化させることが出来ないことがある。5.0質量%より多いと、接合材が硬化し過ぎてしまい、ハニカム焼成体との接着性が低下してしまうことがある。また、寒天水溶液中には、シリカゾル等の無機バインダが含有されていることが好ましい。寒天水溶液中の無機バインダの含有量は、5〜50質量%が好ましい。5質量%より少ないと、接合材強度が上昇しないことがある。50質量%より多いと、シリカゾルに内在する水分による影響で、接合材の気孔が多くなり、接合材強度が低下することがある。
【0054】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法においては、接合材をハニカム焼成体に貼り付ける前に、ハニカム焼成体に下地処理を施す必要はないが、下地処理を行ってもよい。下地処理に用いる下地材は、セラミック原料、水、バインダ等を含有するものであることが好ましい。セラミック原料としては、ハニカム焼成体の作製に用いたセラミック原料と同じものであることが好ましい。下地材に含有されるセラミック原料の含有量は、30〜60質量%が好ましい。下地材に含有される水の含有量は、5〜40質量%が好ましい。下地材に含有されるバインダとしては、無機バインダが好ましい。下地材に含有されるバインダの含有量は、10〜50質量%が好ましい。
【0055】
(4)ハニカムブロック体作製工程:
次に、複数の四角柱状のハニカム焼成体を、それぞれの側面同士を接合材で接合しながら組み合わせて、図4に示すような、複数のハニカム焼成体2が積層されて形成されたハニカムブロック体5を作製する。
【0056】
ハニカム焼成体2を積層してハニカムブロック体5を作製する際には、図5に示すように、加圧治具31によって、積層したハニカム焼成体2に圧力をかけることが好ましい。図5に示される方向から圧力をかけた後には、これと垂直な方向から圧力をかけることが好ましい。これにより、ハニカム焼成体を強固に接合するとともに、接合材の厚さを所望の厚さにする(隣接するハニカム焼成体間の距離を所望の距離にする)ことが好ましい。加圧治具31としては、油圧、空気圧又は電動シリンダにより、所望の圧力をハニカム焼成体2へ伝達できる鋼製板を用いることが好ましい。ハニカム焼成体2にかける圧力は、1〜20MPaが好ましい。1MPaより小さいと、加圧不十分のため、ハニカム焼成体が剥がれることがある。12MPaより大きいと、接合幅が薄くなる傾向がある。
【0057】
ハニカムブロック体5において、接合材3の厚さ(隣接するハニカム焼成体2,2間の距離)は、0.5〜1.5mmであることが好ましい。0.5mmより薄い(小さい)と、緩衝効果が低くなることがある。1.5mmより厚い(大きい)と、得られるハニカム構造体を、排ガス処理用のフィルター等として用いた時に圧力損失が大きくなることがある。尚、上記接合材3の厚さは、平均値であり、測定方法は以下の通りである。画像測定システム(例えば、「Nicon(株) CNC画像測定システム NEXIV」、等)に、ハニカム構造体の両端面画像を認識させて、両端面の接合部の厚さ(接合幅)を12点ずつ測定し、得られた値を平均化する。測定箇所は、外周部分8点、中心部分4点の計12点とする。
【0058】
ハニカムブロック体5を作製する際には、隣接するハニカム焼成体2,2間に隙間が生じないようにすることが好ましい。また、接合材がシート状であるため、ハニカムブロック体5を作製する際に、ハニカムブロック体から外側に、はみ出す接合材の量が少ない。さらに、接合材が、シートを形成できるだけの保形性を有しているため、「はみ出した接合材がハニカムブロック体5の端面を流れ落ちる」ことが抑制される。そのため、「接合材によって、ハニカムブロック体5の端面のセル開口部が塞がれる」ことも抑制される。そのため、ハニカム焼成体2の端面に、セル開口部が塞がれることを防止するためのフィルムを、貼り付ける必要がない。
【0059】
図5に示されるハニカムブロック体5は、ハニカム焼成体2が「4列×4列=16個」並んでいるが、ハニカム焼成体2の数はこれに限定されることはない。所望の列数及び個数とすることができる。
【0060】
ハニカム焼成体2を積層して、上記加圧操作を行った後、80〜140℃で3〜6時間乾燥させて、各ハニカム焼成体が接合材によって強固に接合された状態のハニカムブロック体を得ることが好ましい。
【0061】
(5)研削工程:
次に、ハニカムブロック体の外周部分を研削して、図6に示されるようなハニカム構造体100を得ることが好ましい。ハニカム構造体100は、複数のハニカムセグメント4が、それぞれの側面同士が接合部6によって接合されたものである。
【0062】
ハニカムブロック体の外周部分を研削する方法は、特に限定されないが、ダイヤモンド砥粒等が埋め込まれた線状切断具を備えた切断機、切削機、研磨機等を用いて研削する方法が好ましい。
【0063】
作製されるハニカム構造体の形状は、特に限定されず、円筒形、中心軸に直交する断面の形状が楕円形の筒状体、中心軸に直交する断面の形状がレーストラック形状の筒状体、その他の形状等を挙げることができる。また、ハニカム構造体の大きさは、特に限定されない。
【0064】
得られたハニカム構造体のせん断強度は、200kPa以上であり、400kPa以上が好ましい。せん断強度は、以下の方法で得られた値である。得られたハニカム構造体より、隣接する2本のセグメントを接合された状態のまま切り出し、一方のセグメントを固定し、もう一方のセグメントに対してその長軸方向から荷重をかけることにより測定する。そして、荷重をかけて、2本のセグメントが分断されたときの、最大荷重をせん断強度とする
【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0066】
(実施例1)
炭化珪素粉、金属珪素粉を80:20の質量割合で混合して、セラミック原料とした。そして、セラミック原料に、界面活性剤、造孔材、成形助材及び水を混合して混練し、真空土練機により円柱状の坏土を作製した。造孔材としては、発泡樹脂を用いた。成形助材としては、メチルセルロースを用いた。セラミック原料100質量部に対して造孔材を2質量部混合した。セラミック原料100質量部に対して成形助材を5質量部混合した。セラミック原料100質量部に対して水を29質量部混合した。炭化珪素粉の平均粒子径は、40μmであった。平均粒子径は、粒度分析装置を用いる方法で測定した値である。
【0067】
得られた円柱状の坏土を押出成形機を用いてハニカム形状に成形し、高周波誘電加熱乾燥をした後、熱風乾燥機を用いて120℃で5時間乾燥し、両端面を所定量切断して、四角柱状のハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体は、隔壁の厚さが310μm、セル密度が46.5セル/cm(300セル/平方インチ)、底面が35mm×35mmの正方形で、長さが152mmであった。ハニカム成形体は16本(個)作製した。
【0068】
得られたハニカム成形体について、隣接するセルが互いに反対側の端部で封じられ、両端面が市松模様状を呈するように、各セルの端部に目封止部を形成した。目封止用の充填材には、ハニカム成形体と同様の材料を用いた。目封止部の深さ(セルの延びる方向における深さ)は、6mmとした。目封止後、目封止ハニカム成形体を、熱風乾燥機を用いて120℃で5時間乾燥した。
【0069】
その後、ハニカム成形体を、大気雰囲気にて脱臭装置付き大気炉に入れて、450℃で5時間加熱して、脱脂(仮焼成)を行った。その後、アルゴン不活性雰囲気にて約1450℃で2時間焼成(本焼成)して、SiC結晶粒子がSiで結合された、底面正方形の四角柱状のハニカム焼成体を得た。
【0070】
得られたハニカム焼成体は、底面が35mm×35mmの正方形で、長さが152mmであった。また、得られたハニカム焼成体は隔壁が多孔質であった。ハニカム焼成体の平均細孔径は14μmであり、気孔率は42%であった。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値であり、気孔率は、アルキメデス法により測定した値である。
【0071】
次に、ハニカム焼成体の側面に下地材を塗布した。下地材は、炭化珪素38質量%、水24質量%、コロイダルシリカ38質量%となるように、それぞれを混合して、作製した。
【0072】
次に、ハニカム焼成体の端面に樹脂製のフィルムを貼り付けた。
【0073】
次に、ハニカム焼成体の側面の四隅に、スペーサ材と塗布設備を用いてスペーサを貼り付けた。スペーサとしては、5mm(直径)×1mm(厚さ)の円板状の成形体を用いた。スペーサの材質は、炭化珪素43質量%、シリカゾル23質量%、無機助材2質量%及びセラミックファイバー32質量%を含有するものとした。
【0074】
次に、ハニカム焼成体の側面に、シート状の接合材を貼り付けた。このとき、図4に示されるようなハニカムブロック体が形成されるように、各ハニカム焼成体における特定の側面に、適宜接合材を貼り付けた。
【0075】
シート状の接合材は、以下のようにして作製した。接合材を成形する原料(接合材成形原料)は、炭化珪素28質量%、発泡樹脂1質量%、水11質量%、寒天1質量%、セメント材57質量%、シリカゾル等2質量%となるように、各原料を混合して得た。セメント材57質量%の内訳は、アルミナシリケートファイバー22質量%、コロイダルシリカ14質量%、有機バインダー類(ベントナイト、CMC)1質量%、分散材(ポリノン、モルノン)1質量%、水19質量%である。このとき、寒天については、まず、1質量%の寒天水を作製し、当該寒天水を他の原料と混合した。
【0076】
次に、接合材成形原料を鋳込み成形して、シート状の接合材を作製した。接合材の形状は、35mm×137mm×3mm(厚み)のシート状であった。接合材の圧縮強度は15Nであった。圧縮強度は、以下に示す方法で測定した値である。
【0077】
次に、16個のハニカム焼成体を接合材で接合しながら組み合わせて、加圧治具を用いて最外周から内側に向かって締め付けるように加圧して(図5参照)、図4に示すようなハニカムブロック体(ハニカム焼成体:4列×4列)を作製した。加圧治具31としては、具体的には、炭素鋼の板であって、ハニカム焼成体との接触部に合成ゴムが取り付けられたものを用いた。加圧は、油圧で行った。
【0078】
次に、ハニカムブロック体の外周部分を研削して、図6に示すような、円筒状のハニカム構造体100を作製した。得られたハニカム構造体の底面の直径は、143mmであった。
【0079】
得られたハニカム構造体の接合部の厚さ(接合幅)は、略一定であり、平均値で1.0mmであった。平均値は、以下の方法で求めた。「Nicon(株) CNC画像測定システム NEXIV」に、ハニカム構造体の両端面画像を認識させる。そして、両端面の接合部の厚さ(接合幅)を12点ずつ測定し、平均化する。測定箇所は、外周部分8点、中心部分4点の計12点とした。
【0080】
得られたハニカム構造体について、以下の方法で、せん断強度試験を行ったところ、せん断強度は850kPaであった。結果を表1に示す。
【0081】
(圧縮強度)
「INSTRON社 インストロン5500シリーズ」に、ゲル強度の測定に使用する治具を取り付ける。接合材のバルク体を治具にセットし、圧縮荷重をかけることにより測定する。接合材のバルク体の形状は、直径50mm×高さ50mmの円柱体であった。測定条件は、「1.0mm/min」とした。
【0082】
(せん断強度)
ハニカム構造体より、隣接する2本のセグメントを接合された状態のまま切り出し、一方のセグメントを固定し、もう一方のセグメントに対してその長軸方向から荷重をかけることにより測定する。荷重をかけて、2本のセグメントが分断されたときの、最大荷重をせん断強度とする。せん断強度は、200kPa以上が合格である。
【0083】
【表1】
【0084】
(実施例2〜15)
各条件を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてハニカム構造体を作製した。実施例1の場合と同様にして、「接合幅」、「圧縮強度」及び「せん断強度」を測定した。「接合幅」は、いずれも1.0mmであった。「圧縮強度」及び「せん断強度」の測定結果を表1に示す。
【0085】
(比較例1)
実施例1と同様にして、16個のハニカム焼成体を作製した。
【0086】
次に、ハニカム焼成体の側面に下地材を塗布した。下地材は、炭化珪素38質量%、水24質量%、コロイダルシリカ38質量%となるように、それぞれを混合して、作製した。
【0087】
次に、ハニカム焼成体の端面に樹脂製のフィルムを貼り付けた。
【0088】
次に、ハニカム焼成体の側面の四隅に、スペーサ材と塗布設備を用いてスペーサを貼り付けた。スペーサとしては、5mm(直径)×1mm(厚さ)の円板状の成形体を用いた。スペーサの材質は、炭化珪素43質量%、シリカゾル23質量%、無機助材2質量%及びセラミックファイバー32質量%を含有するものとした。
【0089】
次に、ペースト状の接合材をハニカム焼成体の側面に塗布した。接合材の組成は、セメント材64質量%、炭化珪素34質量%、発泡樹脂1質量%及び水1質量%とした。接合材の厚さは、平均値で1mmとした。接合材は、側面全体に塗布した。
【0090】
次に、16個のハニカム焼成体を接合材で接合しながら組み合わせて、加圧治具を用いて最外周から内側に向かって締め付けるように加圧して、図4に示すようなハニカムブロック体(ハニカム焼成体:4列×4列)を作製した。ハニカム焼成体を接合した際に、ペースト状の接合材が、はみ出して、流れ落ちて来たので、流れ出した接合材を、かき取った。そして、ハニカム焼成体の端面に貼り付けていたフィルムを剥がした。
【0091】
次に、ハニカムブロック体の外周部分を研削して、円筒状のハニカム構造体を作製した。得られたハニカム構造体の底面の直径は、143mmであった。
【0092】
得られたハニカム構造体について、せん断強度試験を行ったところ、せん断強度は795kPaであった。結果を表1に示す。また、接合幅は、1.0mmであった。
【0093】
表1より、シート状の接合材を使用した場合(実施例1)、従来のペースト状の接合材を使用した場合と同様のせん断強度を有することがわかる。
【0094】
また、実施例2〜15のハニカム構造体の製造方法では、下地材の塗布を行わず、ハニカム焼成体の端面にフィルムを貼ることも行わず、スペーサを用いることも行わなくても、これらを行って得られた比較例1の場合と、同様のハニカム構造体が得られた。これにより、実施例2〜15のハニカム構造体の製造方法は、生産効率が大幅に向上したことがわかる。
【0095】
(比較例2〜5)
各条件を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてハニカム構造体を作製した。実施例1の場合と同様にして、「接合幅」、「圧縮強度」及び「せん断強度」を測定した。「接合幅」は、いずれも1.0mmであった。「圧縮強度」及び「せん断強度」の測定結果を表1に示す。
【0096】
表1より、実施例2〜15では、せん断強度に優れたハニカム構造体が得られることがわかる。また、シート状の接合材を用いると、スペーサーを用いなくても、接合幅が1.0mmで均一であった。また、シート状の接合材を用いることにより、「ハニカムセグメント間に挟まれた接合材が、ハニカムセグメントの間からはみ出す」ことを抑制することができ、フィルムを端面に貼り付ける必要がなかった。また、実施例2〜15では、ハニカムセグメント表面の下地処理を無くしても、ハニカムセグメント同士を良好に接合できている(せん断強度が高い)ことがわかる。表1より、実施例2〜15においては、スペーサーの使用、フィルムの貼り付け、及び下地処理を、いずれも行わなくても、せん断強度の高いハニカム構造体が得られており、生産効率が向上していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明のハニカム構造体の製造方法は、自動車、化学、電力、鉄鋼等の様々な分野において、触媒装置用の担体、又はフィルターとして好適に利用することができるハニカム構造体を、製造するために利用することができる。
【符号の説明】
【0098】
1:ハニカム成形体、1a:一方の端面、1b:他方の端面、1c:セル、1d:隔壁、2:ハニカム焼成体、2a:側面、2b:目封止部、3:接合材、4:ハニカムセグメント、5:ハニカムブロック体、6:接合部、31:加圧治具、100:ハニカム構造体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6