特許第6285289号(P6285289)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6285289
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/04 20060101AFI20180215BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20180215BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20180215BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   C09J133/04
   C09J11/06
   C09J175/04
   G02B5/30
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-124538(P2014-124538)
(22)【出願日】2014年6月17日
(65)【公開番号】特開2016-3285(P2016-3285A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2017年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】三木 徳久
(72)【発明者】
【氏名】萩原 充紀
(72)【発明者】
【氏名】中野 宏人
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−001733(JP,A)
【文献】 特開2012−241154(JP,A)
【文献】 特開2011−236269(JP,A)
【文献】 特開2007−297446(JP,A)
【文献】 特開2014−001331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 133/04
C09J 11/06
C09J 175/04
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系共重合体と、
芳香族ジイソシアネート化合物に由来する部分構造及びイソシアヌレート環構造を有する多価イソシアネート化合物と、
下記一般式(1)で表されるN−置換イミダゾール化合物と、
ドデシルトリメチルアンモニウムFSI、オクチルトリメチルアンモニウムFSI、ヘキシルトリメチルアンモニウムFSI、N−ヘキシル−4−メチルピリジニウムFSI、N−オクチル−4−メチルピリジニウムPF、アミルトリエチルアンモニウムTFSI、トリブチルメチルアンモニウムTFSI及びメチルトリ−N−オクチルアンモニウムTFSIからなる群より選択される少なくとも1種のイオン性化合物と、を含む、
粘着剤組成物。
【化1】

式中、Rはアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。
及びRは互いに連結して環を形成してもよい。
【請求項2】
前記イオン性化合物の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.1質量部以上である請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記N−置換イミダゾール化合物の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.01質量部〜0.6質量部である請求項1又は請求項2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記多価イソシアネート化合物の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.01質量部〜0.5質量部である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル系共重合体は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を0.3質量%〜12質量%有する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
タッチパネルと、
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を含む粘着剤付偏光板と、
を有する表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス表示装置など、画像を表示する表示装置としては様々な表示方式の装置が広く普及している。このうち、液晶表示装置は、一般に所定の方向に配向した液晶成分がガラス等の2枚の支持基板の間に挟持された液晶セルと、偏光板、位相差フィルム、輝度向上フィルム等の光学フィルムとを貼り合わせた構造を有している。光学フィルム同士の積層や光学フィルムを液晶セルに貼着する際には、透明なアクリル系粘着剤が用いられることが多い。
また、液晶表示装置には入力装置としてタッチパネルが搭載されることがある。近年では、液晶表示装置の内部にタッチパネルを有するものも増えてきている。タッチパネルと液晶表示装置を構成する部材(偏光板など)との貼着にも、アクリル系粘着剤が用いられることが多い。タッチパネルを構成する透明電極フィルムは、粘着剤に含まれる酸性成分により腐食されるため、偏光板とタッチパネルとを貼着する場合には、酸性成分を含まない粘着剤が求められる。
【0003】
ところで、アクリル系粘着剤は、必要な粘着性能を得るため、室温で1週間程度の長い養生時間が必要であり、長期の養生時間により、生産性が低下したり、在庫量が増大したりするという課題が生じていた。粘着剤の養生時間を短縮する方法としては、水酸基とカルボキシル基を有する樹脂に架橋剤としてイソシアヌレート構造を有するトリレンジイソシアネート系化合物を組み合わせる方法が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、光学フィルムは絶縁性が高いプラスチック材料からなりフィルム同士の摩擦などにより静電気を発生しやすい。発生した静電気がフィルムに帯電すると、ちりやほこりを吸着したり、電子機器に誤作動を起こさせるなどの悪影響を及ぼしたりする。そのため、フィルムの帯電を防止する手段として、フィルムに付与する粘着剤に帯電防止性を与えることが提案されており、帯電防止性を有する粘着剤層を形成できる粘着剤組成物として、帯電防止剤を含む粘着剤組成物が提案されている(例えば、特許文献2、及び特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2011/062127号パンフレット
【特許文献2】特開2004−114665号公報
【特許文献3】特開2009−155585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のイソシアヌレート構造を有するトリレンジイソシアネート系化合物を有するトリレンジイソシアネート系化合物を含む粘着剤組成物に、特許文献2、及び特許文献3に記載の帯電防止剤を配合すると、粘着剤組成物が白濁し、透明性の高い粘着剤層を形成することが難しい場合があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。すなわち、本発明は、透明性が高く、帯電防止性を有し、養生時間が短い粘着剤組成物、及び帯電による誤作動が防止される表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、粘着剤組成物を、芳香族ジイソシアネート合物に由来する部分構造及びイソシアヌレート環構造を有する多価イソシアネート化合物と、一般式(1)で表されるN−イミダゾール化合物とを含む組成とする場合に、帯電防止剤としてカチオンが金属カチオン又は炭化水素基の合計の炭素数が7以上の有機カチオンであるイオン性化合物を用いることで、養生時間を短くできると共に、透明性を維持しつつ、帯電防止効果を付与することができるとの知見を得て、かかる知見に基づき完成されたものである。
【0009】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系共重合体と、芳香族ジイソシアネート化合物に由来する部分構造及びイソシアヌレート環構造を有する多価イソシアネート化合物と、下記一般式(1)で表されるN−置換イミダゾール化合物と、イオン性化合物と、を含み、前記イオン性化合物のカチオンは、金属カチオン又は炭化水素基の合計の炭素数が7以上の有機カチオンである、粘着剤組成物。
【0010】
【化1】

【0011】
式中、Rはアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。
及びRは互いに連結して環を形成してもよい。
【0012】
<2> 前記イオン性化合物の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.1質量部以上である<1>に記載の粘着剤組成物。
<3> 前記N−置換イミダゾール化合物の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.01質量部〜0.6質量部である<1>又は<2>に記載の粘着剤組成物。
<4> 前記多価イソシアネート化合物の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.01質量部〜0.5質量部である<1>〜<3>のいずれか1つに記載の粘着剤組成物。
<5> 前記(メタ)アクリル系共重合体は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を0.3質量%〜12質量%有する<1>〜<4>のいずれか1つに記載の粘着剤組成物。
【0013】
<6> タッチパネルと、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を含む粘着剤付偏光板と、を有する表示装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、透明性が高く、帯電防止性を有し、養生時間が短い粘着剤組成物、及び帯電による誤作動が防止される表示装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。更に組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
また(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方を意味し、(メタ)アクリルとはアクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味する。
【0016】
<粘着剤組成物>
本発明における粘着剤組成物は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系共重合体と、芳香族ジイソシアネート化合物に由来する部分構造及びイソシアヌレート環構造を有する多価イソシアネート化合物と、一般式(1)で表されるN−置換イミダゾール化合物と、金属塩又はカチオンが有する炭化水素基の合計の炭素数が7以上であるイオン性化合物と、を含む。
本発明における粘着剤組成物は、必要に応じて更に、シランカップリング剤、その他の添加剤等の他の成分を含んでもよい。
【0017】
本発明における粘着剤組成物の用途としては、例えば、偏光板用が挙げられ、偏光板と液晶セルとの貼着や、偏光板とタッチパネルとの貼着に用いられる。
【0018】
本発明における粘着剤組成物は、上記のような構成であることで、透明性を維持しつつ、帯電防止性を有することができ、かつ、養生時間を短縮することが可能となる。
本発明の効果が得られる理由は明確ではないが、本発明者らは、以下のように推定している。
本発明における粘着剤組成物は、芳香族ジイソシアネート化合物に由来する部分構造及びイソシアネレート環構造を有する多価イソシアネート化合物と、一般式(1)で表されるN−置換イミダゾール化合物とを含むことで、前記多価イソシアネート化合物と水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系共重合体との架橋反応が促進されるため、粘着剤組成物の養生時間を短縮することができると考えられる。
また、前記多価イソシアネート化合物と前記N−置換イミダゾール化合物とを含む組成物に、帯電防止剤としてカチオンが金属カチオン又は炭化水素基の合計の炭素数が7以上の有機カチオンであるイオン性化合物を用いることで、前記多価イソシアネート化合物とイオン性化合物が反応しにくくなるため、透明性を維持しつつ、帯電防止効果を付与することができると考えられる。
【0019】
上記に加え、(メタ)アクリル系共重合体における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有量が所定量以下であることで粘着剤組成物のポットライフに優れる。また、粘着剤組成物中におけるN−置換イミダゾール化合物の含有量が所定量以下であることで、粘着剤組成物のポットライフに優れる。
また、(メタ)アクリル系共重合体が、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を有しており、これがイソシアネレート環構造を有する多価イソシアネート化合物で架橋されることで、粘着剤層としたときの弾性と粘性のバランスに優れると考えられる。
【0020】
≪(メタ)アクリル系共重合体≫
本発明における粘着剤組成物は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位の少なくとも1種を含む(メタ)アクリル系共重合体(以下、単に「共重合体」ともいう)を含む。
(メタ)アクリル系共重合体における水酸基を有する単量体に由来する構成単位以外の成分は、水酸基を有する単量体と共重合可能なその他の単量体に由来する構成単位の中から選択することができる。
本発明における(メタ)アクリル系共重合体は、共重合体の総質量に対して(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位を50質量%以上含むことが好ましい。
ここでいう(メタ)アクリル系単量体とは、後述する水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体、アルキル(メタ)アクリレート、環状基を有する(メタ)アクリレートなどを総称したものを意味する。
【0021】
(水酸基を有する単量体に由来する構成単位)
本発明における(メタ)アクリル系共重合体は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位の少なくとも1種を含む。
(メタ)アクリル系共重合体は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含むことで、後述する特定の構造を有する多価イソシアネート化合物と架橋反応することができる。このため、粘着剤層としたときの凝集力が向上して耐久性に優れる。さらには該粘着剤組成物を、表示装置の偏光板に適用した場合に光漏れを抑制することができる。
【0022】
(メタ)アクリル系共重合体を構成する水酸基を有する単量体は、1分子中に少なくとも1つの水酸基を有する単量体から選択される。水酸基を有する単量体の1分子中における水酸基数は特に制限されないが、1であることが好ましい。
【0023】
水酸基を有する単量体として、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド等の水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、エチレン性二重結合を有するアルコール誘導体等を挙げることができる。これらの中でも、水酸基を有する単量体は、水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体であることが好ましく、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートであることがより好ましく、ヒドロキシアルキルアクリレートであることがさらに好ましい。
【0024】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートにおけるアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。アルキル基の炭素数としては、2〜8であることが好ましく、2〜6であることがより好ましく、2〜4であることが更に好ましい。また水酸基の置換位置は特に制限されない。
【0025】
水酸基を有する単量体として、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3−ジメチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチル−3−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−3−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、アリルアルコール、メタリルアルコール等が挙げられる。
水酸基を有する単量体は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
(メタ)アクリル系共重合体における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有量は、養生時間の短縮及びポットライフの観点から、(メタ)アクリル系共重合体の総質量に対して、0.3質量%〜12質量%が好ましく、0.5質量%〜8質量%がより好ましい。
(メタ)アクリル系共重合体における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有量が0.3質量%以上であると架橋反応が進行しやすく、養生時間をより短縮することができる。また、水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有量が12質量%以下であると、ポットライフがより良好になる。
【0027】
(メタ)アクリル系共重合体は、養生時間の短縮、ポットライフ及び粘着剤層としたときの耐久性の観点から、水酸基を有する単量体に由来する構成単位として、アルキル基の炭素数が2〜6のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を0.3質量%〜12質量%含むことが好ましく、アルキル基部分の炭素数が2〜4のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を0.3質量%〜12質量%含むことがより好ましく、アルキル基部分の炭素数が2〜4のヒドロキシアルキルアクリレートに由来する構成単位を0.5質量%〜8質量%含むことが更に好ましい。
【0028】
(その他の単量体に由来する構成単位)
本発明における(メタ)アクリル系共重合体は、その他の単量体に由来する構成単位の少なくとも1種を含むことが好ましい。
本発明におけるその他の単量体は、本発明の趣旨を越えない限り、前記水酸基を有する単量体と共重合可能な単量体の中から選択して用いることができる。
【0029】
その他の単量体としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、環状基を有する単量体、酸性基を有する単量体、塩基性基を有する単量体、シアン化ビニル単量体、及びビニルエステル単量体などが挙げられる。これらの中でも、アルキル(メタ)アクリレート、及び環状基を有する単量体が好ましく、アルキル(メタ)アクリレートがより好ましい。
その他の単量体は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
−アルキル(メタ)アクリレート−
本発明における(メタ)アクリル系共重合体は、その他の単量体に由来する構成単位として、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むことが好ましい。
アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数は、粘着剤組成物の凝集力及び接着力を調整しやすい観点から、1〜20が好ましく、1〜18がより好ましく、1〜12が更に好ましい。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
【0031】
アルキル(メタ)アクリレートとして、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0032】
−環状基を有する単量体−
本発明における(メタ)アクリル系共重合体は、その他の単量体に由来する構成単位として、環状基を有する単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。
環状基を有する単量体は、分子内に少なくとも1つの環状基を有し、水酸基を有する単量体と共重合可能な重合性化合物であれば特に制限はない。環状基を有する単量体における環状基として、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、脂肪族炭化水素基等が挙げられ、中でも芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数6〜炭素数10の芳香族炭化水素基であることがより好ましい。
環状基を有する単量体における環状基の含有数は、1〜2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0033】
環状基を有する単量体として、例えば、環状基を有する(メタ)アクリレート、環状基を有する(メタ)アクリルアミド、及びスチレン誘導体等が挙げられる。これらの中でも環状基を有する(メタ)アクリレートが好ましく、芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0034】
芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリレートは、芳香族炭化水素基が、アルキレン基、オキシアルキレン基、又はポリオキシアルキレン基を介してエステル結合した(メタ)アクリレートであること好ましく、芳香族炭化水素基がオキシアルキレン基を介してエステル結合した(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
【0035】
環状基を有する単量体として、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(EO)変性クレゾール(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(EO)変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、β−ナフチルオキシエチル(メタ)アクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレート等の芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート、N‐メチル‐N‐フェニル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体などを挙げることができる。
【0036】
これらの中でも環状基を有する単量体は、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、β−ナフチルオキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香環基がオキシアルキレン基を介してエステル結合した(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0037】
その他の単量体として、前記アルキル(メタ)アクリレート及び環状基を有する単量体のほかに、アクリル酸、メタクリル酸、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等の酸性基を有する単量体;アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン等の塩基性基を有する単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル単量体などを用いてもよい。
【0038】
(メタ)アクリル系共重合体が、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む場合、(メタ)アクリル系共重合体を構成する主成分として含まれることが好ましく、その含有率は、(メタ)アクリル系共重合体の総質量中に、75質量%以上であることが好ましく、80質量%〜99.7質量%であることが好ましく、90質量%〜99.5質量%であることがより好ましい。(メタ)アクリル系共重合体中におけるアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有比率が前記範囲内であると、弾性率に好適な範囲に調整することができ、粘着剤層としたときの耐久性、タック性確保の点で有利である。
【0039】
(メタ)アクリル系共重合体が環状基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、その含有率は、(メタ)アクリル系共重合体の総質量中に、1質量%〜10質量%であることが好ましく、2質量%〜9質量%であることがより好ましく、3質量%〜7質量%であることが更に好ましい。
【0040】
本発明における(メタ)アクリル系共重合体の構成単位のうち、酸性基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、(メタ)アクリル系共重合体の総質量中0.5質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以下であることがより好ましく、実質的に含まないことが更に好ましい。
ここで実質的に含まないとは、不可避的に混入する酸性基を有する単量体に由来する構成単位の存在を許容することを意味する。
(メタ)アクリル系共重合体における酸性基を有する単量体に由来する構成単位の含有量を0.5質量%以下とすることで、本発明の粘着剤組成物に由来する粘着剤層がタッチパネル等の透明電極と接触する場合に、電極の腐食を抑制することができる。このため、本発明の粘着剤組成物は、タッチパネルが搭載された表示装置用の偏光板に好適に使用することができる。
【0041】
本発明における(メタ)アクリル系共重合体の好ましい態様として、以下の2つが挙げられる。
第一の態様として、(メタ)アクリル系共重合体が、水酸基を有する(メタ)アクリル単量体に由来する構成単位と、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位と、を含む態様が挙げられる。
第二の態様として、(メタ)アクリル系共重合体が、水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位と、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位と、環状基を有する単量体に由来する構成単位と、を含む態様が挙げられる。
【0042】
≪(メタ)アクリル系共重合体の重合方法≫
(メタ)アクリル系共重合体は、水酸基を有する単量体、及びその他の単量体を含む単量体組成物を重合することで製造することができる。単量体組成物の重合方法は、特に制限されるものではなく、通常用いられる重合方法から適宜選択することができる。重合方法としては、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等を挙げることができる。中でも製造が比較的簡単である溶液重合が好ましい。
【0043】
溶液重合は、一般に、重合槽内に所定の有機溶媒、単量体、重合開始剤、及び必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中又は有機溶媒の還流下で、攪拌しながら数時間加熱反応させる。前記重合開始剤としては、特に制限されるものではなく、例えばアゾ系化合物を用いることができる。
なお、(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、反応温度、反応時間、溶剤量、触媒の種類や量を調整することにより、所望の分子量に調整することができる。
【0044】
本発明における(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は特に制限されず、例えば80万〜180万とすることができ、100万〜180万であることが好ましく、130万〜180万であることがより好ましい。(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量が前記範囲であることで、粘着剤組成物の塗工時における取り扱い性、粘着剤層としたときの耐久性に優れる。
また(メタ)アクリル系共重合体の分散度(Mw/Mn)は特に制限されず、例えば2〜10とすることができ、4〜9であることが好ましく、5〜8であることがより好ましい。分散度が前記範囲であることで、粘着剤層としたときの耐久性に優れる。
【0045】
本発明における(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて下記の方法により測定する値である。
(1)(メタ)アクリル系共重合体溶液を剥離シート(離型シート)上に塗工し、100℃で2分間乾燥させ、フィルム状の(メタ)アクリル系共重合体を得る。
(2)前記(1)で得られたフィルム状の(メタ)アクリル系共重合体をテトラヒドロフランにて固形分0.2質量部になるように溶解させる。
(3)下記条件にて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、標準ポリスチレン換算値として、(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を測定する。
【0046】
<条件>
・GPC :HLC−8220 GPC(東ソー株式会社製)
・カラム :TSK−GEL GMHXL 4本使用(東ソー株式会社製)
・移動相溶媒:テトラヒドロフラン
・流速 :0.8ml/min
・カラム温度:40℃
【0047】
粘着剤組成物における(メタ)アクリル系共重合体の含有率は、粘着剤組成物の総質量中に、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
【0048】
≪多価イソシアネー卜化合物≫
本発明における粘着剤組成物は、芳香族ジイソシアネート化合物に由来する部分構造及びイソシアヌレート環構造を有する多価イソシアネート化合物(以下、単に「多価イソシアネート化合物」ともいう)の少なくとも1種を含む。
多価イソシアネート化合物は、(メタ)アクリル系共重合体に対して架橋剤として作用する。すなわち、本発明の粘着組成物は、(メタ)アクリル系共重合体が水酸基を有する単量体に由来する構成単位と、特定の構造を有する多価イソシアネート化合物と、含むことで、粘着剤層としたときの優れた耐久性と、養生時間の短縮とが両立できる。
【0049】
多価イソシアネート化合物は、芳香族ジイソシアネート化合物に由来する部分構造及びイソシアヌレート環構造を有する化合物から選択して用いることができる。中でも多価イソシアネート化合物は、複数の芳香族ジイソシアネート化合物におけるそれぞれのイソシアネート基が付加反応によってイソシアヌレート環構造を形成した多価イソシアネート化合物であることが好ましい。この場合、多価イソシアネート化合物を形成する芳香族ジイソシアネート化合物は1種のみであっても2種以上の混合物であってもよい。
【0050】
また芳香族ジイソシアネート化合物は芳香環上に2つのイソシアネート基を有する化合物であればよく、ベンゼン環上に2つのイソシアネート基を有する化合物であることが好ましく、トリレンジイソシアネートであることがより好ましく、2,4−トリレンジイソシアネート又は2,6−トリレンジイソシアネートの少なくとも一方であることが更に好ましい。
【0051】
多価イソシアネート化合物として具体的には、下記一般式(2)で表される芳香族ジイソシアネート化合物の3量体である化合物、下記一般式(3)で表される芳香族ジイソシアネート化合物の5量体である化合物、及び芳香族ジイソシアネート化合物の7量体等を挙げることができる。更に多価イソシアネート化合物は芳香族ジイソシアネート化合物とアルキレンジイソシアネート化合物から形成されるイソシアヌレート環構造を有する化合物であってもよく、トリレンジイソシアネートとへキサメチレンジイソシアネートから形成されるイソシアヌレート環構造を有する化合物であることもまた好ましい。
多価イソシアネート化合物は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
【化2】
【0053】
【化3】
【0054】
一般式(2)及び一般式(3)において、R11からR25はそれぞれ独立して、水素原子文はメチル基を示す。R11〜R13のうち1つはメチル基であって残りが水素原子であることが好ましい。R14〜R16のうち1つはメチル基であって残りが水素原子であることが好ましい。R17〜R19のうち1つはメチル基であって残りが水素原子であることが好ましい。R20〜R22のうち1つはメチル基であって残りが水素原子であることが好ましい。R23〜R25のうち1つはメチル基であって残りが水素原子であることが好ましい。
【0055】
芳香族ジイソシアネート化合物に由来する部分構造、及びイソシアネレート環構造を有する多価イソシアネート化合物は、常法により調製したものであっても、市販のものであってもよい。多価イソシアネート化合物の市販品としては、例えば、住友バイエルウレタン株式会社製の商品名「デスモジュールIL1451CN」、「デスモジュールILBA」、「デスモジュールHL」、「スミジュールFL−2」、「スミジュールFL−3」、及び「SBUイソシアネート0817」、日本ポリウレタン工業株式会社製の商品名「コロネート2030」、「コロネート2037」、並びにSAPICI社製の商品名「Polurene KC」及び「Polurene HR」を挙げることができる。
【0056】
粘着剤組成物における、多価イソシアネート化合物の含有量は、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対し、0.01質量部〜0.5質量部の範囲であることが好ましく、は0.05質量部〜0.3質量部の範囲であることがより好ましく、0.05質量部〜0.2質量部の範囲であることがさらに好ましい。
多価イソシアネート化合物の含有量が0.01質量部以上であると、架橋反応が充分に進行し、凝集力が十分に高くなるため、粘着剤層としたときの接着性及び耐久性に優れる。また多価イソシアネート化合物の含有量が0.5質量部以下であると、多価イソシアネート化合物とイオン性化合物とが反応しにくく、粘着剤組成物の白濁をより抑制することができ、粘着剤組成物の透明性に優れる。
【0057】
本発明における粘着剤組成物は、前記多価イソシアネート化合物のほかに、その他の架橋剤をさらに含んでいてもよい。その他の架橋剤としては、芳香族ジイソシアネート化合物に由来する部分構造、及びイソシアヌレート環構造とを有する多価イソシアネート化合物以外のイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤等を挙げることができる。
粘着剤組成物がその他の架橋剤を含む場合、その含有量は本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限されない。その他の架橋剤の含有量は、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましい。
【0058】
≪イミダゾール化合物≫
本発明における粘着剤組成物は、下記一般式(1)で表されるN−置換イミダゾール化合物の少なくとも1種を含む。下記一般式(1)で表されるN−置換イミダゾール化合物は、粘着剤組成物において、硬化促進剤として機能することができる。粘着剤組成物が下記一般式(1)で表されるN−置換イミダゾール化合物を含むことで、酸性成分を実質的に含まなくても、粘着剤層としたときの優れた耐久性と十分なポットライフを維持しつつ、養生時間をより短縮することができる。
【0059】
【化4】
【0060】
一般式(1)において、Rは、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示し、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。またR及びRは互いに連結して、これらが結合する炭素原子とともに環を形成しでもよい。
【0061】
一般式(1)において、アルキル基は直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。またアルキル基の炭素数は1〜2であることが好ましい。一般式(1)におけるアリール基は、炭素数が6〜10であることが好ましく、フェニル基又はナフチル基であることがより好ましい。一般式(1)におけるアラルキル基は、炭素数が1〜2のアルキレン基と炭素数が6〜10のアリール基からなることが好ましく、ベンジル基、フェニルエチル基であることがより好ましい。
【0062】
一般式(1)で表されるN−置換イミダゾール化合物は、ポットライフと養生時間短縮の観点から、Rがアルキル基またはアラルキル基であって、Rがアリール基、R、Rがそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基文はアリール基であることが好ましく、Rがアラルキル基であって、Rがアリール基、R、Rがそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基であることがより好ましく、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールであることがさらに好ましい。
【0063】
粘着剤組成物において、一般式(1)で表されるN−置換イミダゾール化合物の含有量は、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.01質量部〜0.6質量部が好ましく、0.02質量部〜0.5質量部がより好ましい。
一般式(1)で表されるN−置換イミダゾール化合物の含有量が0.01質量部以上であれば、養生時間短縮の効果が十分である。また、一般式(1)で表されるN−置換イミダゾール化合物の含有量が0.6質量部以下であると、ポットライフが十分に得られる。
【0064】
≪イオン性化合物≫
本発明における粘着剤組成物は、カチオンが金属カチオン又は炭化水素基の合計の炭素数が7以上の有機カチオンであるイオン性化合物(以下特定イオン性化合物ともいう)の少なくとも1種を含む。
粘着剤組成物が、特定イオン性化合物を含有することで、粘着剤組成物の透明性を維持しつつ、帯電防止性を付与することができる。
以下、カチオンが金属カチオンの特定イオン性化合物を特定金属塩ともいう。また、カチオンが炭化水素基の合計の炭素数が7以上の有機カチオンの特定イオン性化合物を特定有機塩ともいう。
【0065】
粘着剤組成物において、特定イオン性化合物の含有量は、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上がより好ましく、0.2質量部〜8質量部がより好ましい。
特定イオン性化合物の含有量が0.1質量部以上であると、帯電防止性向上の効果により優れる。
【0066】
(金属塩)
特定金属塩のカチオンとしては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属カチオンが挙げられる。
カチオンとして、金属カチオンを含む場合、例えば、Li、Na、Kであることが好ましく、Liであることがより好ましい。
また、特定金属塩のアニオンとしては、例えば、Cl、Br、I、BF、PF、SCN、ClO、CFCOO、SbF、NbF、TaF、F(HF)、CSO、CCOO、CFSO、(CFSO、(CFSO、(CSO、(CFSO)(CFCO)N、AlCl、AlCl、ClO、NO、CHCOO、CHSO、AsF、(CN)、(CSO、(CSO、(CSO、(CFSO)(CSO)N、(CFSO)(CSO)N、(CSO)(CFOSO)N等が挙げられる。
これらの中でもClO、(CFSO(以下、TFSIともいう)が好ましい。
【0067】
特定金属塩を用いる場合、イオン伝導性、及び帯電防止性に優れる点で、LiBr、LiI、LiBF、LiPF、LiSCN、LiClO、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CFSOCなどのリチウム塩が好ましく用いられる。
また、特定金属塩は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
アルカリ土類金属塩として、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩およびこれらのハロゲン化物が挙げられる。
【0069】
(有機塩)
特定有機塩は、炭化水素基の合計の炭素数が7以上のカチオンと、アニオンとからなる。
カチオンが有する炭化水素基合計の炭素数が7以上であることで、既述の多価イソシアネートと併用しても粘着剤組成物の白濁が抑えられ、透明性を維持することができる。
【0070】
特定有機塩のカチオンとして、例えば、アンモニウム、スルホニウム、ホスホニウム、ピリジニウム、イミダゾリウム等の骨格を有するカチオンを用いることができる。
【0071】
カチオンが有する炭化水素基は、合計の炭素数が7以上であれば、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、環状であってもよく、透明性の観点から直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。また、前記カチオンが有する炭化水素基は、合計の炭素数が7以上であればよく、炭素数が7以下の炭化水素基を複数有するものでもよい。
カチオンが有する炭化水素基は、透明性の観点から、炭素数が11以上であることが好ましく、炭素数が11以上25以下であることがより好ましい。
【0072】
炭化水素基の合計の炭素数が7以上のカチオンとして、例えば、ドデシルトリメチルアンモニウム(炭素数15)、オクチルトリメチルアンモニウム(炭素数11)、ヘキシルトリメチルアンモニウム(炭素数9)、N−ヘキシル−4−メチルピリジニウム(炭素数7)、N−オクチル−4−メチルピリジニウム(炭素数9)、アミルトリエチルアンモニウム(炭素数11)、トリブチルメチルアンモニウム(炭素数13)、メチルトリ−N−オクチルアンモニウム(炭素数25)、シクロヘキシルトリメチルアンモニウム(炭素数9)などが挙げられる。
これらの中でも、粘着剤層としたときの透明性の観点から、ドデシルトリメチルアンモニウム(炭素数15)、オクチルトリメチルアンモニウム(炭素数11)、アミルトリエチルアンモニウム(炭素数11)、トリブチルメチルアンモニウム(炭素数13)、メチルトリ−N−オクチルアンモニウム(炭素数25)が好ましい。
【0073】
また、特定有機塩のアニオンとして、例えば、Cl、Br、I、BF、PF、SCN、ClO、(FSO、CFCOO、SbF、NbF、TaF、F(HF)、CSO、CCOO、CFSO、(CFSO、(CFSO、(CSO、(CFSO)(CFCO)N、AlCl、AlCl、ClO、NO、CHCOO、CHSO、AsF、(CN)、(CSO、(CSO、(CSO、(CFSO)(CSO)N、(CFSO)(CSO)N、(CSO)(CFOSO)N等が挙げられる。
これらの中でもPF、(CFSO(以下、TFSIともいう)、(FSO(以下、FSIともいう)が好ましい。
【0074】
特定イオン性化合物として特定有機塩を用いる場合、透明性、及び帯電防止性に優れる点で、ドデシルトリメチルアンモニウムFSI、オクチルトリメチルアンモニウムFSI、ヘキシルトリメチルアンモニウムFSI、N−ヘキシル−4−メチルピリジニウムFSI、N−オクチル−4−メチルピリジニウムPF、アミルトリエチルアンモニウムTFSI、トリブチルメチルアンモニウムTFSI、メチルトリ−N−オクチルアンモニウムTFSIが好ましい。
また、これらは1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
本発明における粘着剤組成物は、偏光板等の製造時におけるリワーク性の観点、金属腐食性の観点から、特定イオン性化合物として特定有機塩を含むことが好ましい。
粘着剤組成物において、特定有機塩の含有量は、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上がより好ましく、0.2質量部〜8質量部がより好ましい。
特定有機塩の含有量が0.1質量部以上であると、帯電防止性向上の効果により優れる。
【0076】
≪シランカップリング剤≫
本発明の粘着剤組成物は、さらにシランカップリング剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。
粘着剤組成物がシランカップリング剤を含むことで、粘着剤組成物を偏光板の粘着剤層として用いた表示装置(例えば液晶表示装置)が高温高湿環境下に曝されても、粘着剤層と偏光板又は液晶セルとの間に、剥がれが発生し難くなる。更に粘着剤組成物が平滑なガラスに、より優れた接着性を示すようになる。
【0077】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基を有するシランカップリング剤;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のチオール基を有するシランカップリング剤;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有するカップリング剤;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤、トリス−(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
シランカップリング剤は、上市されている市販品を用いてもよく、市販品の例としては、信越化学工業株式会社製の商品名「KBM−803」、「KBM−802」、「X−41−1810」、「X−41−1805」、「X−41−1818」等のチオール基を有するシランカップリング剤、信越化学工業株式会社製の「KBM−403」、「KBM−303」、「KBM−402」、「KBE−402」、「KBE−403」(商品名)等のエポキシ基を有するシランカップリング剤などを好適に使用することができる。
【0079】
シランカップリング剤の中でも、耐久性とリワーク性の観点から、チオール基を有するシランカップリング剤から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、チオール基を有するオリゴマー型のシランカップリング剤から選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。
チオール基を有するオリゴマー型のシランカップリング剤は、チオール基を有する部分構造とチオール基を有さない部分構造からなるシランカップリング剤であることが好ましく、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「X−41−1810」、「X−41−1805」、「X−41−1818」を挙げることができる。
【0080】
粘着剤組成物がシランカップリング剤を含有する場合、粘着剤組成物中におけるシランカップリング剤の含有量は、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.01質量部〜5質量部の範囲が好ましく、0.03質量部〜3質量部の範囲がより好ましく、0.05質量部〜1.0質量部の範囲が更に好ましい。
【0081】
≪その他の成分≫
粘着剤組成物は、上記成分の他、更に必要に応じて、溶剤、紫外線吸収剤等の耐候性安定剤、タッキファイアー、可塑剤、軟化剤、染料、顔料、無機充填剤などを含有しでもよい。粘着剤組成物がその他の成分を含有する場合、その含有率は本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択することができる。
【0082】
<表示装置>
本発明の表示装置は、情報を入力するタッチパネルと、偏光板上に既述の本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を有する粘着剤付偏光板と、を少なくとも有する。
【0083】
≪タッチパネル≫
本発明におけるタッチパネルは特に限定されるものではないが、タッチパネルの構成として、例えば、ガラス板及び該ガラス板上に蒸着されたITO層を有するシート状の光学材と、保護材となるカバーフィルムと、光学材及びカバーフィルムの間を接着する粘着剤層とを重層した構成が挙げられる。
【0084】
≪粘着剤付偏光板≫
本発明の粘着剤付偏光板は、少なくとも、偏光板と、既述の本発明の粘着剤組成物により偏光板上に形成された粘着剤層と、を含む。
本発明の粘着剤付偏光板は、上記の粘着剤層を含むため、透明性と帯電防止性とを両立することができる。
本発明における偏光板は、少なくとも偏光子を含んで構成されることが好ましく、偏光子単体を用いてもよく、偏光子と保護用シートとを積層したものを用いてもよい。
【0085】
偏光子としては、一般に、例えばポリビニルアルコール(PVA)フィルムなどが使用される。
偏光板として偏光子と保護シートとを積層したものを用いる場合は、保護用シートとして例えばトリアセチルセルロース(TAC)やポリシクロオレフィン(COP)、アクリルフィルム等を用いることができる。
偏光子と保護用シートとを積層したものは例えば2層構造(例えばTAC/偏光子)や3層構造(例えばTAC/偏光子/TAC)に構成され、偏光板として用いることができる。
【0086】
例えばTAC/偏光子/TACの3層構造の偏光板の少なくとも一方面に、既述の本発明の粘着剤組成物を付与することにより粘着剤層を設けることで、粘着剤付偏光板が作製される。この場合、偏光板上に粘着剤組成物を付与してもよいが、好ましくは使用時に剥離される保護用シート(剥離シート)上に付与する。粘着剤組成物の付与は、液体の粘着剤組成物を用いた浸漬法、塗布法、インクジェット法などの塗布方法により好適に行える。中でも塗布法によることが好ましい。
【0087】
具体的には、本発明の粘着剤組成物を剥離シート(粘着剤層用の保護用シート)上に塗布し、乾燥させ、剥離シート上に粘着剤層を形成した後、この粘着剤層を偏光板上に転写、養生させることで粘着剤付偏光板が作製される。また、本発明の粘着剤組成物を剥離シート上に塗布し、乾燥させ、剥離シート上に粘着剤層を形成した後、粘着剤層の露出面をさらに剥離シートを密着して設けて支持体のない両面粘着テープを作製し、この粘着剤層を養生させた後、一方の剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を偏光板上に転写させることで粘着剤付偏光板が作製されてもよい。
【0088】
剥離シート上に付与された粘着剤組成物は、熱風乾燥機等を用いて70℃〜120℃で1分〜3分程度の乾燥条件で乾燥されることが好ましい。
【0089】
更に、偏光板上に設けられた粘着剤層の露出面には、被着体に対する接触面を保護する観点から、露出面を保護するための剥離シートを密着して設けておくことが好ましい。この剥離シートとしては、粘着剤層との間の剥離が容易に行なえるように、フッ素系樹脂、パラフィンワックス、シリコーン等の離型剤で離型処理を施したポリエステル等の合成樹脂シートが好適に用いられる。表示パネルのガラス板等に貼り付けるときには、剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層の表面をガラス基板等に密着させる。
また、偏光板の粘着剤層が設けられていない側の表面(露出面)には、その表面を保護する表面保護シートを更に設けてもよい。表面保護シートには、PETフィルムの片面に粘着加工されたプロテクトフィルム等が好適に用いられる。
【0090】
粘着剤層の層厚としては、特に制限されるものではないが、乾燥後の厚みで1μm以上100μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以上50μm以下であり、更に好ましくは15μm以上30μm以下である。
【0091】
≪表示装置の構成≫
本発明の表示装置の構成例として、アウトセル型のタッチパネル付液晶表示装置、及びオンセル型のタッチパネル付液晶表示装置等を挙げることができる。
アウトセル型のタッチパネル付液晶表示装置は、液晶表示パネルの両面に本発明の粘着剤付偏光板を、それぞれについて粘着剤層が液晶表示パネルの表面(例えばガラス基板の表面)に接触するように配置し、粘着剤層を介して液晶表示パネルの両面に偏光板を接着し、さらにいずれか一方の偏光板の液晶表示パネル側ではない面にタッチパネルを外付けした構造(タッチパネル/粘着剤層/偏光板/粘着剤層/液晶表示パネル/粘着剤層/偏光板の構造)を備えることが好ましい。
オンセル型のタッチパネル付液晶表示装置は、偏光板と液晶表示パネルの間にタッチパネルを組み込んだ構造(偏光板/粘着剤層/タッチパネル/粘着剤層/液晶表示パネル/粘着剤層/偏光板の構造)を備えることが好ましい。本発明の表示装置としては、オンセル型のタッチパネル付表示装置が好ましい。
【実施例】
【0092】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0093】
(製造例1)
温度計、撹枠機、窒素導入管、及び還流冷却管を備えた反応器内に、n−ブチルアクリレート(BA)を98部と、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)を2部と、酢酸エチル(EAc)を70部と、を入れ、混合した後、反応容器内を窒素置換した。その後、撹枠下に窒素雰囲気中で、反応容器内の混合物を70℃に昇温した後に、アゾビスジメチルバレロニトリル(ABVN)を0.02部と、酢酸エチル(EAc)を200部
と、を逐次添加し6時間反応させた。反応終了後、反応混合物を酢酸エチルで希釈し、(メタ)アクリル系共重合体1の溶液(固形分16質量%)を得た。
得られた(メタ)アクリル系共重合体1の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて既述条件で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は152万、分散度(Mw/Mn)は6.8であった。
【0094】
(製造例2〜製造例9)
製造例1において、(メタ)アクリル系共重合体1の合成に用いた単量体の種類及び比率を下記表1に示すように変更したこと以外は、製造例1と同様にして、(メタ)アクリル系共重合体2〜(メタ)アクリル共重合体9の溶液(固形分16質量%)をそれぞれ得た。
また、得られた各(メタ)アクリル系共重合体について、製造例1と同様にして、Mw及びMnの測定を行なった。結果は、下記表1に示す。
表1中、「BA」はn−ブチルアクリレート、「PHEA」はフェノキシエチルアクリレート、「MA」はメチルアクリレート、「t−BA」はt−ブチルアクリレート、「2HEA」は2−ヒドロキシエチルアクリレートを示す。
【0095】
【表1】
【0096】
<実施例1>
−粘着剤組成物の調製−
(メタ)アクリル系共重合体として、前記製造例1で得た(メタ)アクリル系共重合体1の溶液を固形分として100部と、多価イソシアネート化合物(架橋剤)としてコロネート2037(日本ポリウレタン工業株式会社製)を固形分として0.125部と、イミダゾール化合物(硬化促進剤)としてキュアゾール1B2PZ(四国化成株式会社製、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール)を固形分として0.05部と、シランカップリング剤としてX−41−1810(信越化学工業株式会社製、チオール基を有するオリゴマー型)を固形分として0.1部と、イオン性化合物としてドデシルトリメチルアンモニウムFSI(炭素数が15の炭化水素基を有するカチオン含有)を固形分として0.1部と、を充分に攪拌混合して粘着剤組成物を得た。
【0097】
(養生時間)
上記で得られた粘着剤組成物が養生に要する時間(養生時間)を以下のようにしてゲル分率を測定することで評価した。
粘着剤組成物をシリコーン系離型剤で表面処理した剥離フィルム(藤森工業株式会社製、100E−0010N023)上に、乾燥後の厚みが20μmとなるようにフィルム状の粘着剤層を作製した。次に、作製した粘着剤層を23℃、50%RH環境下に移した後、168時間経過後まで保管した。粘着剤層のゲル分率を、保管開始から24時間毎に以下のようにしてそれぞれ測定した。所定の保管時間が経過した後のゲル分率と、168時間(7日間)経過後のゲル分率とを比較して、両者のゲル分率の差が3%以下となるのに要した保管時間を養生終了時間とし、下記評価基準に従って評価した。
【0098】
ゲル分率は、下記方法により測定した。
1.精密天秤にて質量を正確に測定した250メッシュの金網(100mm×100mm)にフィルム状粘着剤層を約0.25g貼付し、ゲル分が漏れないように包む。その後、精密天秤にて質量を正確に測定して試料を作製する。
2.得られた試料を酢酸エチル80mlに3日間浸漬する。
3.試料を取り出して少量の酢酸エチルにて洗浄し、120℃で24時間乾燥させる。その後、精密天秤にて質量を正確に測定する。
4.下式によりゲル分率を計算する。
ゲル分率(質量%)=(Z−X)/(Y−X)×100
但し、Xは金網の質量(g)、Yは粘着剤層を貼付した金網の浸漬前の質量(g)、Zは浸漬後、乾燥させた粘着剤層を貼付した金網の質量(g)である。
【0099】
−評価基準−
A:養生終了時間が24時間未満である。
B:養生終了時間が24時間以上48時間未満である。
C:養生終了時間が48時間以上である。
【0100】
(試験用粘着シートの作製)
上記で得られた粘着剤組成物をシリコーン系離型剤で表面処理した剥離フィルム(藤森工業株式会社製、100E−0010N023)上に塗布した後、100℃、1分間の乾燥条件で乾燥し、23℃、50%RHの環境下で1日間養生した。養生終了後の粘着剤層の厚みは20μmであった。次に、粘着剤層の剥離フィルムと反対側の表面に離型処理が施されていない厚さ100μmのPETフィルム(商品名:A4100、東洋紡績株式会社製)を重ね、加圧ニップロールを通して圧着し、試験用粘着シートを作製した。
【0101】
(帯電防止性)
上記で得られた試験用粘着シートの剥離フィルムを剥離して、粘着剤層の表面抵抗値をR12704 RESISTIVITY CHAMBER(株式会社アドバンテスト製)を用いて、23℃、50%RH、印加電圧100Vの条件下で測定し、下記評価基準に従って帯電防止性を評価した。表面抵抗値が小さいほど静電気の発生抑制効果が高く、帯電防止性に優れる。評価基準のA及びBが実用上問題ないレベルである。
【0102】
−評価基準−
A:表面抵抗値が1×1012Ω/□未満である。
B:表面抵抗値が1×1012Ω/□以上1×1013Ω/□未満である。
C:表面抵抗値が1×1013Ω/□以上である。
【0103】
(透明性)
上記で得られた試験用粘着シートを80mm×60mmにカットしてサンプル片とし、得られたサンプル片の剥離フィルムを剥離し、露出した粘着剤層の表面を、厚さ1.8mmのガラス板(商品名:光学ソーダガラス、松浪硝子株式会社製)に重ね、卓上ラミネート機を用いて圧着し、透明性評価用試験サンプルとした。得られた透明性評価用試験サンプルのヘイズを、分光測色計CM−3500d(コニカミノルタ株式会社製)を用いて測定し、下記評価基準に従って透明性を評価した。評価基準のA及びBが実用上問題ないレベルである。
【0104】
−評価基準−
A:ヘイズが0.5未満である。
B:ヘイズが0.5以上1.0未満である。
C:ヘイズが1.0以上である。
【0105】
(ポットライフ)
上記で得られた粘着剤組成物のポットライフを、以下のようにして粘度を測定して粘度上昇率を算出することで評価した。
粘着剤組成物を粘度1500mPa・sとなるように酢酸エチルを用いて調整した後、BH型回転粘度計にて25℃、1分、10rpmでの粘度(a)を測定した。さらに25℃、50%RHの条件下で密閉容器にて24時間放置した後、BH型回転粘度計にて25℃、1分、10rpmでの粘度(b)を測定した。
得られた粘度(a)と粘度(b)を用いて、下式により粘度上昇率(%)を算出した。
粘度上昇率(%)=24時開放置後の粘度(b)/配合直後の粘度(a)×100
【0106】
一評価基準−
A:粘度上昇率(%)が110%未満である。
B:粘度上昇率(%)が110%以上120%未満である。
C:粘度上昇率(%)が120%以上である。
【0107】
<実施例2〜実施例18及び比較例1〜比較例5>
実施例1において、粘着剤組成物の組成を下記表2、下記表3に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤組成物を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表2、表3に示す。
【0108】
【表2】
【0109】
【表3】
【0110】
表2及び表3中の略号は以下に示す通りであり、配合量は固形分換算の値である。
(架橋剤)
コロネート2037:日本ポリウレタン工業株式会社製、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体
コロネートL:日本ポリウレタン工業株式会社製、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体
(硬化促進剤)
1B2PZ:四国化成工業株式会社製、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール
(シランカップリング剤)
X−41−1810:信越化学工業株式会社製、チオール基を有するオリゴマー型
(イオン性化合物)
表2及び表3中、FSIはフルオロスルホニルイミド((FSO)、TFSIはトリフルオロメタンスルホニルイミド((CFSO)を示す。
表2及び表3中、例えば、「炭素数 C15」で表される記載は、カチオンが有する炭化水素基の合計の炭素数が15であることを示す。
【0111】
表2及び表3に示すように、実施例では、透明性及び帯電防止性に優れ、養生時間が短いことがわかる。比較例2及び比較例3のように、カチオンが有する炭化水素基の合計の炭素数が7未満であるイオン性化合物を用いると、透明性に劣ることがわかる。比較例4のように、芳香族ジイソシアネート化合物に由来する部分構造、及びイソシアヌレート環構造を有する多価イソシアネート化合物以外の架橋剤を用いると、養生時間を短縮することができないことがわかる。比較例5のように、一般式(1)で表されるN−置換イミダゾール化合物(硬化促進剤)を含有しない組成では、養生時間を短縮することができないことがわかる。