(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ユニット状態にされた電動モータを別の組立ラインへ搬送するときに、例えば、搬送中の振動等によって電動モータに外力が入力されて、電動モータの軸方向においてブラシホルダがヨークに対してずれる虞がある。この場合には、減速機付モータの生産性が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、生産性を向上することができる減速機付モータ及び減速機付モータの組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の減速機付モータでは、有底筒状に形成されたヨークと、前記ヨークの内部に収容され、軸方向一方側の端部が前記ヨークの底部に回転可能に支持された回転軸を有するアーマチャと、前記ヨークの開口端部に設けられ、前記回転軸の軸方向他方側を回転可能に支持すると共に、前記ヨークの開口端部内に圧入される圧入部を有するブラシホルダと、前記ヨークに対して前記回転軸の軸方向他方側に設けられ、前記ヨークに固定されて前記ブラシホルダにおける前記回転軸の軸方向他方側への移動を規制すると共に、前記回転軸に連結されて前記回転軸の回転を減速する減速部を有する減速機と、前記ブラシホルダに設けられ、前記ヨークに係合されて前記ブラシホルダにおける前記回転軸の軸方向他方側への移動を規制する係合部と、を備えている。
【0008】
上記構成の減速機付モータによれば、有底筒状に形成されたヨークの内部にアーマチャが収容されている。このアーマチャは回転軸を有しており、回転軸の軸方向一方側の端部がヨークの底部に回転可能に支持されている。また、ヨークの開口端部内にブラシホルダの圧入部が圧入されて、回転軸の軸方向他方側がブラシホルダに回転可能に支持されている。これにより、ブラシホルダがヨークに固定されて(以下、1次固定という)、減速機付モータのモータ本体が組立てられる。
【0009】
また、ヨークに対して回転軸の軸方向他方側には、減速機が設けられており、減速機はヨークに固定される(以下、2次固定という)。そして、この2次固定状態では、ブラシホルダが回転軸の軸方向他方側へ移動することが減速機によって規制されると共に、減速機の減速部が回転軸に連結されている。これにより、回転軸の回転が減速部によって減速される。
【0010】
ここで、ブラシホルダには、係合部が設けられており、係合部がヨークに係合されて、ブラシホルダにおける回転軸の軸方向他方側への移動が規制される。このため、ブラシホルダがヨークに1次固定された状態では、圧入によってブラシホルダがヨークに固定されているのに加えて、ブラシホルダにおける回転軸の軸方向他方側への移動が係合によって規制されている。このため、ブラシホルダがヨークに1次固定された状態において、仮にモータ本体に外力が入力された場合でも、回転軸の軸方向におけるブラシホルダとヨークとの位置ずれを抑制することができる。これにより、例えば、ブラシホルダをヨークに1次固定する組立ラインと、減速機をモータ本体(のヨーク)に固定する組立ラインと、が異なることで、モータ本体を別の組立ライン(場所)へ搬送する場合でも、ブラシホルダの1次固定状態を安定的に維持することができる。したがって、減速機付モータの生産性を向上することができる。
【0011】
また、本発明の減速機付モータでは、上記構成に加えて、前記ヨークには、前記開口端部から前記回転軸の径方向外側へ延出されたフランジが形成されると共に、前記フランジの外周端面の一部が、前記回転軸の軸方向から見て直線状に延びる直線状端面とされ、前記係合部は、前記直線状端面に当接可能に構成された当接部を有している。
【0012】
上記構成の減速機付モータによれば、ヨークにフランジが形成されており、フランジは、ヨークの開口端部から回転軸の径方向外側へ延出されている。また、フランジの外周端面の一部が、回転軸の軸方向から見て直線状に延びる直線状端面とされており、係合部は、直線状端面に当接可能に構成された当接部を有している。このため、ブラシホルダがヨークに対して回転軸の周方向に回転しようとすると、係合部の当接部が直線状端面に当接される。これにより、ブラシホルダのヨークに対する相対回転を抑制することができる。その結果、係合部によって、回転軸の軸方向におけるブラシホルダのヨークに対する相対移動を抑制しつつ、回転軸の周方向におけるブラシホルダのヨークに対する相対回転を抑制できる。
【0013】
また、本発明の減速機付モータでは、上記構成に加えて、前記係合部は、前記直線状端面の面直方向に弾性変形可能に構成された本体部と、前記フランジの前記直線状端面の部位における外周縁部に係合される爪部と、を含んで構成され、前記係合部が前記ヨークにスナップフィットによって係合される。
【0014】
上記構成の減速機付モータによれば、係合部が本体部と爪部とを含んで構成されており、係合部がヨークにスナップフィットによって係合される。これにより、ブラシホルダの圧入部をヨークに圧入するときに、ブラシホルダの圧入方向への移動に伴い、係合部をヨークにスナップフィットによって係合させることができる。これにより、ヨークに係合される係合部をブラシホルダに設けた場合でも、組付工数が増加することを抑制できる。
【0015】
また、本発明の減速機付モータでは、上記構成に加えて、前記ブラシホルダには、前記直線状端面と対向して配置された一対の回転規制部が設けられている。
【0016】
上記構成の減速機付モータによれば、ブラシホルダに設けられた一対の回転規制部が、直線状端面と対向して配置されているため、ブラシホルダがヨークに対して回転軸の周方向に回転しようとすると、回転規制部が直線状端面に当接する。これにより、回転軸の周方向におけるブラシホルダのヨークに対する相対回転を一層抑制できる。したがって、ブラシホルダの1次固定状態を一層安定的に維持することができる。
【0017】
また、本発明の減速機付モータでは、上記構成に加えて、前記ブラシホルダには、前記ヨークに対して前記回転軸の径方向外側に配置されるコネクタ部が形成されており、前記係合部が前記コネクタ部に形成されている。
【0018】
上記構成の減速機付モータによれば、ブラシホルダにコネクタ部が形成されている。このコネクタ部は、ヨークに対して回転軸の径方向外側に配置されており、係合部がコネクタ部に形成されている。このため、ヨークに対して回転軸の径方向外側に配置されるコネクタ部を係合部によってヨークに保持させつつ、ブラシホルダの1次固定状態を安定的に維持することができる。
【0019】
また、本発明の減速機付モータでは、上記構成に加えて、前記ヨークが、有底円筒状に形成されている。
【0020】
上記構成の減速機付モータによれば、例えばヨークの断面形状をトラック形(略楕円形)に構成する場合と比較して、ヨークの形状を単純化することができる。
【0021】
また、本発明の減速機付モータの組立方法では、上記記載の減速機付モータに適用され、前記圧入部を前記ヨークの開口端部内に圧入すると共に、前記係合部を前記ヨークに係合させて、前記ブラシホルダを前記ヨークに1次固定させる1次固定工程と、前記ブラシホルダが前記ヨークに1次固定された後に、前記減速機を前記ヨークに固定させる2次固定工程と、を有している。
【0022】
上記構成の減速機付モータの組立方法によれば、ブラシホルダをヨークに1次固定させた後に、減速機をヨークに2次固定させる。これにより、上述したように、例えば、ブラシホルダをヨークに1次固定をする組立ラインと、減速機をヨークに固定する組立ラインと、が異なることで、モータ本体を別の組立ライン(場所)へ搬送する場合でも、ブラシホルダの1次固定状態が安定的に維持されるため、減速機付モータの生産性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を用いて本実施の形態に係る減速機付モータ10について説明する。減速機付モータ10は、例えば車両(自動車)のパワーウインドやサンルーフの駆動源として用いられ、また、減速機付モータ10は、例えば車両用シートのリクライニング機構やリフタ機構等の駆動源として用いられる。
図5及び
図6に示されるように、減速機付モータ10は、モータ本体12と、モータ本体12の回転を減速するための減速機60と、を含んで構成されている。なお、図面では、モータ本体12の軸方向を矢印A及び矢印Bで示し、モータ本体12の軸方向に対して直交する方向(以下、第1方向と称する)を矢印C及び矢印Dで示し、モータ本体12の軸方向から見て第1方向に対して直交する方向(以下、第2方向と称する)を矢印E及び矢印F(
図6参照)で示している。そして、以下の説明では、矢印A方向を軸方向一方と称し、矢印B方向の軸方向他方と称している。また、矢印C方向を第1方向一方と称し、矢印D方向の第1方向他方と称している。さらに、矢印E方向を第2方向一方と称し、矢印F方向の第2方向他方と称している。
【0025】
(モータ本体12について)
図6に示されるように、モータ本体12は、所謂ブラシ付直流モータとして構成されている。そして、モータ本体12は、「ヨーク」としてのモータヨーク14と、アーマチャ20と、ブラシホルダ30と、カバー50と、を含んで構成されている。
【0026】
モータヨーク14は、軸方向他方側へ開放された略有底円筒状に形成されている。また、モータヨーク14の内周面には、複数の永久磁石(図示省略)が固定されており、永久磁石の磁極がモータヨーク14の周方向に沿って交互に異なるように永久磁石が配置されている。
【0027】
図3にも示されるように、モータヨーク14の開口端部14Aには、フランジ16が一体に形成されており、フランジ16は、モータヨーク14の径方向外側へ延出されて、モータ本体12の軸方向を板厚方向とした略六角形板状に形成されている。具体的には、フランジ16の外周端面の一部を構成する「直線状端面」としての第1端面部18Aが、モータヨーク14に対して第1方向一方側に配置されており、第1端面部18Aは、モータヨーク14の軸方向から見て第2方向に直線状に延びている(
図2参照)。また、フランジ16の外周端面は、第1端面部18Aの両端から第1方向他方側へそれぞれ延びる一対の第2端面部18Bと、第2端面部18Bの先端から互いに接近する方向に傾斜された一対の第3端面部18Cと、一対の第3端面部18Cの先端を接続する第4端面部18Dと、を有している。
【0028】
また、フランジ16には、後述するギヤハウジング64を固定するための複数(本実施の形態では3箇所)の固定孔16Aが形成されており、固定孔16Aは略円形状に形成されてモータ本体12の軸方向に貫通形成されている。さらに、フランジ16における軸方向一方側の面が一側面16Bとされて、フランジ16における軸方向他方側の面が他側面16C(
図4参照)とされている。
【0029】
図6に示されるように、アーマチャ20は、アーマチャ20の軸心部を構成する回転軸21と、アーマチャコア22と、アーマチャコイル24と、整流子26と、を含んで構成されて、モータヨーク14内に回転自在に収容されている。回転軸21は、略丸棒状に形成されて、モータヨーク14と同軸上に配置されている。そして、回転軸21の軸方向一方側の端部が、図示しない軸受を介してモータヨーク14の底部に回転自在に支持されている。一方、回転軸21は、軸方向他方側において、後述するブラシホルダ30に回転自在に支持されている。
【0030】
アーマチャコア22は、回転軸21の径方向外側に配置されると共に、回転軸21に固定されている。このアーマチャコア22は、複数のティースを有する板状の鉄心板を複数枚積層して形成されている。これにより、アーマチャコア22は複数のスロットを有しており、スロットが回転軸21の周方向に等角度間隔に配置されている。そして、アーマチャコア22の所定スロット毎に順次巻線が重巻にて施されてアーマチャコイル24が形成されている。
【0031】
整流子26は、略円筒状に形成されると共に、アーマチャコア22に対して軸方向他方側の位置において、圧入によって回転軸21に固定されている。この整流子26は複数の整流子片26Aを有している。整流子片26Aは回転軸21の周方向に沿って配置されており、隣接する各整流子片26A同士が電気絶縁されている。そして、アーマチャコイル24の所定スロット毎に巻回された巻線が、順次各整流子片26Aに電気的に接続されている。
【0032】
ブラシホルダ30は樹脂材により製作されている。このブラシホルダ30は、略筒状に形成されたホルダ本体部32と、ホルダ本体部32に対して第1方向一方側に配置されたコネクタ部36と、を含んで構成されている。ホルダ本体部32における軸方向一方側の端部には、「圧入部」としての圧入リブ34が一体に形成されている。この圧入リブ34は、略円筒状に形成されて、ホルダ本体部32から軸方向一方側へ突出されている。そして、圧入リブ34がモータヨーク14の開口端部14A内に圧入(嵌入)されて、ブラシホルダ30が、モータヨーク14の開口部を塞ぐように固定されると共に、モータヨーク14に対して軸方向他方側へ突出されている。また、この状態では、ホルダ本体部32の軸方向一方側の側面32Aが、モータヨーク14のフランジ16の他側面16Cに当接されている。
【0033】
また、ブラシホルダ30がモータヨーク14に固定された状態では、ホルダ本体部32内にアーマチャ20の整流子26が配置されている。そして、ホルダ本体部32には、複数のブラシ(図示省略)が設けられており、当該ブラシがアーマチャ20の整流子26に摺接可能に当接されている。
【0034】
コネクタ部36は、軸方向一方側へ開放された略有底矩形筒状に形成されて、モータヨーク14のフランジ16に対して第1方向一方側に配置されている。そして、
図2に示されるように、ブラシホルダ30には、一対の給電用ターミナルTが設けられており、給電用ターミナルTの一端部がコネクタ部36内に配置されている。なお、給電用ターミナルTの他端部は、前述したブラシに電気的に接続されている。
【0035】
図1及び
図2に示されるように、コネクタ部36における第1方向他方側の部分には、軸方向一方側へ突出された突出部38が一体に形成されている。この突出部38は、フランジ16の第1端面部18Aに対して第1方向一方側に隣接して配置されると共に、モータ本体12の軸方向から見て第2方向に沿って延びている。また、突出部38の長手方向中間部(幅方向中間部)には、第1方向他方側へ開放された切欠き部38Aが形成されている。これにより、軸方向一方側から見て、突出部38が第1方向他方側へ開放された略U字形状に形成されている。そして、突出部38の長手方向両端部(幅方向両端部)がそれぞれ回転規制部38Bとされており、この一対の回転規制部38Bが、第1端面部18Aの面直方向において第1端面部18Aと対向している。これにより、回転規制部38Bが第1端面部18Aに当接することで、回転軸21の周方向におけるブラシホルダ30のモータヨーク14に対する相対回転が規制されるようになっている。
【0036】
また、コネクタ部36における切欠き部38Aの内側には、「係合部」としての係合爪40が一体に形成されている。係合爪40は、「本体部」としての係合片42を有しており、係合片42は、略矩形柱状に形成されて切欠き部38Aの底面から軸方向一方側へ突出されると共に、第1方向に弾性変形可能に構成されている。また、係合片42は、フランジ16の第1端面部18Aに対して第1方向一方側に隣接して配置されており、係合片42の先端側の部分が、第1方向(第1端面部18Aの面直方向)において第1端面部18Aと対向している。そして、係合片42における第1端面部18Aと対向する部分が当接部42A(
図3参照)とされている。このため、ブラシホルダ30がモータヨーク14に対して回転軸21の周方向に相対回転しようとすると、当接部42Aが第1端面部18Aに当接するように構成されている。これにより、係合爪40によっても、回転軸21の周方向におけるブラシホルダ30のモータヨーク14に対する相対回転が規制されるようになっている。
【0037】
また、係合爪40は爪部44を有しており、爪部44は係合片42の先端部から第1方向他方側へ突出されている。そして、爪部44が、モータヨーク14のフランジ16に対して軸方向一方側に配置されて、フランジ16の第1端面部18Aの部位における外周縁部に係合されている。これにより、ブラシホルダ30のモータヨーク14に対する軸方向他方側への相対移動が規制されるようになっている。また、爪部44の先端部には、傾斜部46が形成されており、傾斜部46は第2方向から見て、モータ本体12の軸方向一方側へ向かうに従い第1方向一方側へ傾斜されている。
【0038】
一方、
図3、
図4、及び
図6に示されるように、前述したホルダ本体部32には、第2方向一方側及び第2方向他方側の側部において、一対の係止アーム32B(
図3、
図4、及び
図6では、第2方向一方側に配置された係止アーム32Bのみ図示されている)が一体に形成されている。この係止アーム32Bは、第2方向から見て、軸方向一方側へ開放された略U字板状に形成されており、係止アーム32Bにおける軸方向一方側の部分がホルダ本体部32に結合されている。
【0039】
カバー50は、モータ本体12の軸方向一方側へ開放された略有底矩形筒状に形成されて、ブラシホルダ30のホルダ本体部32を軸方向他方側から覆うように組み付けられている。具体的には、カバー50の外周部に、一対の係止フック部52(
図3、
図4、及び
図6には、係止フック部52が一箇所のみ記載されている)が一体に形成されており、係止フック部52は、係止アーム32Bに対応する位置に配置されて、カバー50から外側へ突出されている。そして、係止フック部52が、係止アーム32B内に配置されて係止アーム32Bに係止されることで、カバー50の軸方向他方側への移動が規制されるようになっている。これにより、ブラシホルダ30のホルダ本体部32がカバー50によって覆われて、モータ本体12において、給電用ターミナルTに対する防塵効果をカバー50によって高めるように構成されている。また、カバー50の底部には、図示しない孔部がモータ本体12の軸方向に貫通形成されており、後述する減速機60のウォーム軸72が孔部内を挿通するようになっている。
【0040】
(減速機60について)
図5及び
図6に示されるように、減速機60は、モータ本体12に対して軸方向他方側に配置されている。この減速機60は、減速機60の外郭を構成するハウジング62を備えており、ハウジング62内には減速部70が収容されている。そして、モータ本体12の回転が減速部70によって減速されて出力されるようになっている。
【0041】
ハウジング62は、略箱形状に形成されると共に、第2方向に分割可能に構成されている。具体的には、ハウジング62は、ハウジング62の第2方向一方側の部分を構成するギヤハウジング64を有しており、ギヤハウジング64が、全体として第2方向他方側へ開口された略箱形状に形成されている。また、ハウジング62はハウジングカバー68(
図6参照)を有しており、ハウジングカバー68は、ギヤハウジング64の開口部を塞ぐようにギヤハウジング64に固定されている。
【0042】
図6に示されるように、ギヤハウジング64には、前述したモータ本体12のカバー50(ブラシホルダ30のホルダ本体部32)を収容するためのカバー収容部66が一体に形成されている。カバー収容部66は、軸方向一方側へ開放された略有底円筒状に形成されると共に、モータ本体12の軸方向において、モータヨーク14のフランジ16と対向する位置に配置されている。また、カバー収容部66の先端部には、ギヤハウジング64をモータヨーク14に固定するための被固定孔66Aが3箇所形成されている。この被固定孔66Aは、それぞれフランジ16の固定孔16Aと同軸上に配置されると共に、軸方向一方側へ開放された断面円形を成す凹状に形成されている。また、被固定孔66Aの内周部には、雌ネジが形成されている。そして、モータ本体12のカバー50をカバー収容部66内に収容した状態で、図示しないネジが、軸方向一方側からフランジ16の固定孔16A内に挿入されて、被固定孔66Aのネジ部に螺合されている。これにより、ギヤハウジング64(減速機60)がモータヨーク14に固定される。また、ギヤハウジング64がモータヨーク14に固定された状態では、ブラシホルダ30における軸方向他方側への移動を規制するように、ギヤハウジング64がカバー50を介してブラシホルダ30をモータヨーク14に固定するように構成されている。
【0043】
図5に示されるように、ギヤハウジング64には、減速部70を構成するウォーム軸72が収容されている。このウォーム軸72は、アーマチャ20の回転軸21と同軸上に配置されており、ウォーム軸72の軸方向一方側の端部が、回転軸21の軸方向他方側の端部に一体回転可能に連結されている。一方、ウォーム軸72の軸方向他方側の端部は、ギヤハウジング64に回転自在に支持されている。さらに、ギヤハウジング64には、減速部70を構成するウォームホイール74が回転自在に収容されている。このウォームホイール74は、第2方向を軸方向にして配置されており、ウォームホイール74の外周部が、ウォーム軸72の外周部に形成されたウォームに螺合されている。また、ウォームホイール74の軸心部には、ウォームホイール74と一体回転可能に構成された出力軸76が設けられている。これにより、モータ本体12の回転が、減速部70によって減速されて、出力軸76から出力されるようになっている。
【0044】
次に、減速機付モータ10の組付手順を説明しつつ本実施の形態の作用及び効果について説明する。
【0045】
減速機付モータ10を組立てる際には、モータ本体12及び減速機60をそれぞれユニット状態に組立てた後、ユニット状態のモータ本体12にユニット状態の減速機60を組付けるようになっている。そして、モータ本体12をユニット状態に組立てるときには、モータヨーク14内にアーマチャ20を収容した状態で、ブラシホルダ30をモータヨーク14に組付ける。具体的には、モータヨーク14に対してブラシホルダ30を軸方向他方側に配置して、ブラシホルダ30を軸方向一方側へ移動させることで、ブラシホルダ30(のホルダ本体部32)の圧入リブ34をモータヨーク14の開口端部14A内へ圧入(嵌入)する(圧入工程)。
【0046】
また、ホルダ本体部32の圧入リブ34をモータヨーク14の開口端部14A内に圧入するときと同時に、ブラシホルダ30の係合爪40が、スナップフィットによってモータヨーク14のフランジ16の外周縁部に係合される。具体的には、圧入リブ34の圧入初期において、爪部44の傾斜部46が、フランジ16の第1端面部18Aの部位における他側面16C側に当接し、ブラシホルダ30の軸方向一方側への移動に伴い係合爪40(係合片42)が第1方向一方側へ弾性変形する。そして、圧入リブ34の圧入完了時において、係合爪40(係合片42)が第1方向他方側へ変位して(元の状態に戻り)、爪部44がフランジ16に対して軸方向一方側に配置される。これにより、爪部44が、フランジ16の第1端面部18Aの部位における外周縁部に係合されて、ブラシホルダ30の軸方向他方側への移動が規制される(係合工程)。
【0047】
そして、本実施の形態では、上記のブラシホルダ30の圧入リブ34をモータヨーク14の開口端部14A内へ圧入する圧入工程と、ブラシホルダ30の係合爪40をモータヨーク14のフランジ16に係合させる係合工程と、を合わせて、1次固定工程とされている。
【0048】
さらに、ブラシホルダ30が、モータヨーク14に1次固定された状態で、ホルダ本体部32を軸方向他方側から覆うように、カバー50をブラシホルダ30に組付ける。具体的には、カバー50の係止フック部52がブラシホルダ30の係止アーム32B内に配置されて、カバー50がブラシホルダ30に係止される。これにより、カバー50がブラシホルダ30に組付けられて、モータ本体12がユニット状態に組立てられる。
【0049】
そして、ユニット状態の減速機60をユニット状態のモータ本体12に組付ける。具体的には、減速機60におけるギヤハウジング64のカバー収容部66内にモータ本体12のカバー50を収容させて、カバー収容部66の先端部をモータヨーク14のフランジ16の他側面16Cに当接させる。次いで、図示しないネジを軸方向一方側からフランジ16の固定孔16A内に挿入させてカバー収容部66の被固定孔66Aに螺合させる。これにより、減速機60がモータヨーク14に固定される。また、この状態では、ブラシホルダ30における軸方向他方側への移動を規制するように、ギヤハウジング64がカバー50を介してブラシホルダ30をモータヨーク14に固定している(2次固定工程)。以上により、減速機付モータ10が組立てられる。
【0050】
このように、本実施の形態の減速機付モータ10によれば、ブラシホルダ30に係合爪40が設けられており、係合爪40がモータヨーク14のフランジ16に係合されて、ブラシホルダ30の軸方向他方側への移動が規制される。すなわち、ブラシホルダ30がモータヨーク14に1次固定された状態(モータ本体12のユニット状態)では、圧入によってブラシホルダ30がモータヨーク14に固定されているのに加えて、ブラシホルダ30の軸方向他方側への移動が係合爪40によって規制されている。これにより、ブラシホルダ30がモータヨーク14に1次固定された状態において、仮にモータ本体12に外力が入力されても、モータ本体12の軸方向におけるブラシホルダ30とモータヨーク14との位置ずれを抑制することができ、ひいてはブラシホルダ30のモータヨーク14からの外れ(抜け)を抑制又は防止することができる。その結果、例えば、ブラシホルダ30をモータヨーク14に1次固定をする組立ライン(場所)と、減速機60をモータ本体12のモータヨーク14に2次固定する組立ライン(場所)と、が異なることで、2次固定する組立ライン(場所)へモータ本体12をユニット状態で搬送する場合でも、ブラシホルダ30の1次固定状態を安定的に維持することができる。したがって、減速機付モータ10の生産性を向上することができる。
【0051】
また、モータヨーク14のフランジ16は、モータヨーク14の軸方向から見て直線状に延びる第1端面部18Aを有しており、係合爪40における係合片42の当接部42Aが、第1端面部18Aに当接可能に構成されている。このため、ブラシホルダ30がモータヨーク14に対して回転軸21の周方向に回転しようとすると、係合爪40の当接部42Aが第1端面部18Aに当接するため、ブラシホルダ30のモータヨーク14に対する相対回転を抑制することができる。これにより、係合爪40によって、モータ本体12の軸方向におけるブラシホルダ30のモータヨーク14に対する相対移動を抑制しつつ、回転軸21の周方向におけるブラシホルダ30のモータヨーク14に対する相対回転を抑制できる。すなわち、ブラシホルダ30のモータヨーク14に対する異なる2方向の相対移動を、係合爪40によって抑制することができる。
【0052】
また、係合爪40は、第1方向に弾性変形可能に構成された係合片42と、フランジ16の一側面16Bに係合される爪部44と、を含んで構成されており、係合爪40がモータヨーク14にスナップフィットによって係合される。これにより、ブラシホルダ30の圧入リブ34をモータヨーク14に圧入するときに、ブラシホルダ30の圧入方向(軸方向一方側)への移動に伴い、係合爪40をモータヨーク14にスナップフィットによって係合させることができる。これにより、モータヨーク14に係合される係合爪40をブラシホルダ30に設けた場合でも、組付工数が増加することを抑制できる。
【0053】
また、ブラシホルダ30には、係合爪40の幅方向外側に配置された一対の回転規制部38Bが設けられおり、一対の回転規制部38Bが第1端面部18Aと対向して配置されている。このため、ブラシホルダ30がモータヨーク14に対して回転軸21の周方向に回転しようとすると、回転規制部38Bが第1端面部18Aに当接する。これにより、回転軸21の周方向におけるブラシホルダ30のモータヨーク14に対する相対回転を一層抑制できる。したがって、ブラシホルダ30の1次固定状態を一層安定的に維持することができる。
【0054】
また、ブラシホルダ30には、モータヨーク14に対して回転軸21の径方向外側に配置されたコネクタ部36が設けられており、係合爪40がコネクタ部36に形成されている。このため、モータヨーク14に対して回転軸21の径方向外側に配置されたコネクタ部36を係合爪40によってモータヨーク14(フランジ16)に保持させつつ、ブラシホルダ30の1次固定状態を安定的に維持することができる。
【0055】
また、モータヨーク14は有底円筒状に形成されている。このため、例えばモータヨーク14の断面形状をトラック形(略楕円形)にする構成と比較して、モータヨーク14の形状を単純化することができる。
【0056】
なお、本実施の形態では、係合爪40がブラシホルダ30に1箇所形成されているが、係合爪40をブラシホルダ30に複数設けるように構成してもよい。例えば、追加した係合爪40をブラシホルダ30のフランジ16の外周縁部に係合するように構成してもよい。
【0057】
また、本実施の形態では、係合爪40がフランジ16の第1端面部18Aの部位における外周縁部に係合されるようになっているが、係合爪40が係合されるフランジ16の部位はこれに限らない。例えば、係合爪40をフランジ16の第2端面部18Bや第3端面部18Cの部位における外周縁部に係合するように構成してもよい。すなわち、モータ本体12の軸方向から見て、回転軸21の径方向に対して交差する直線状の外周端面の部位に係合爪40が係合されるように構成されていればよい。
【0058】
また、本実施の形態では、ブラシホルダ30に一対の回転規制部38Bが形成されているが、ブラシホルダ30において、回転規制部38Bを省略してもよい。