【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明の地盤アンカーの緊張力変動表示装置は、緊張力を付与された状態で地中に埋設される緊張材と、この緊張材の地盤側の先端部に接続され、地中に定着されるアンカー体と、前記緊張材の地表面側の頭部に接続され、地表面に露出した状態で地表面に定着される頭部定着体を備える地盤アンカーにおいて、
前記アンカー体と前記頭部定着体との間に架設され、前記アンカー体側の端部において前記アンカー体に直接、もしくは間接的に接続され、前記頭部定着体側の端部において前記頭部定着体に直接、もしくは間接的に接続されたばねに直接、もしくは間接的に接続されるケーブルと、前記頭部定着体に直接、もしくは間接的に回転自在に支持され、前記緊張材の伸縮に連動して回転する回転体とを備え
、
前記ケーブルの前記ばね側の端部に張力伝動部材が接続され、この張力伝動部材の他方側の端部に前記ばねが接続され、前記張力伝動部材に前記回転体が接触、もしくは噛合していることを構成要件とする。
【0011】
ケーブルがアンカー体側の端部において「アンカー体に直接、もしくは間接的に接続される」とは、ケーブルがアンカー体に直接、接続される場合と、
図1等に示すようにアンカー体12に接続されるボルト等の連結材19に接続される場合があることを言う
。ケーブル2が頭部定着体13側の端部において「頭部定着体に接続されたばねに直接、もしくは間接的に接続される」とは、ケーブル2
がばね4に接続されたチェーンやベルト等の張力伝動部材5に接続され
ることを言う。「ばねが頭部定着体に直接、もしくは間接的に接続される」とは、ばね4が頭部定着体13に直接、接続される場合と、図示するように例えば頭部定着体13が定着された定着版16に接続(接合)され、頭部定着体13を被覆するキャップ18の先端(上端)に一体的に接合されたケース6にばね4が接続される場合があることを言う。図面ではケース6の一部である底板61にばね4を接続している。
【0012】
「回転体が頭部定着体に直接、もしくは間接的に回転自在に支持される」とは、回転体3が頭部定着体13に直接、回転自在に支持される場合と、図示するように例えば頭部定着体13に接合されたケース6のいずれかの部分に回転自在に支持されることを言う。図面ではケース6の一部である支持材7、もしくはその一部である支持板71に回転体3を回転自在に支持(軸支)させている。
【0013】
ばね4はケーブル2に与えるべき張力を負担することから、ばね2には軸方向に復元力を発揮するコイルスプリングの使用が適するが、使用方法によっては板ばね、皿ばね等のばねの使用も可能であり、ばね4の形態は問われない。
【0014】
図1−(a)に示すように緊張材11が初期の緊張力が与えられた、地中への設置状態から更なる伸長も収縮もしていない平常時には、ばね4は復元力によってケーブル2をばね4側へ引き寄せた状態(中立状態)にあり、ケーブル2は伸縮可能なばね4と釣り合いを保っている。このとき、ケーブル2はアンカー体12と頭部定着体13間に架設された状態でアンカー体12側の端部においてアンカー体12に接続されると共に、ばね4に接続されながら、ばね4と釣り合いを保っているため、緊張材11に伸縮が生ずれば、ケーブル2の地中に存在する区間が緊張材11に追従し、それに伴い、ケーブル2の地中から突出した区間の長さが拡縮(変化)する。
【0015】
ケーブル2と緊張材11は地中(グラウト材15)内では緊張材11の伸縮に追従できるよう、地盤の周辺(グラウト材15)との付着が切られた状態で埋設される。このため、ケーブル2の、地中に存在する区間においては地表面が沈下や隆起等に起因してアンカー体12に対して移動する結果としてアンカー体12側の端部(アンカー体12への接続部分)が相対的にアンカー体12と共に地表面(定着版16)に対して緊張材11の軸方向に移動することで、緊張材11に生じる伸縮に追従する。
【0016】
ケーブル2は地中に存在する区間と地中から突出した区間の全長に亘ってばね4から地表側へ引き寄せられた状態にあるため、ケーブル2の地中から突出した区間の長さが移動層の不動層に対する変動(移動)に伴って変化する。ケーブル2自体は基本的には伸縮しないため、
図1−(b)に示すようにケーブル2の地中から突出した区間の長さが大きくなれば、ばね4が収縮し、(c)に示すようにケーブル2の地中から突出した区間の長さが小さくなれば、ばね4が伸長する。
【0017】
図1−(c)に示すように地表面が隆起等に起因してアンカー体12側から遠ざかる向きに移動したときには、ケーブル2のアンカー体12側の端部はアンカー体12に追従して地表面(定着版16)に対し、地表面から遠ざかる向きに相対的に移動する。(b)に示すように地表面が沈下等に起因してアンカー体12側に移動したときには、ケーブル2のアンカー体12側の端部はばね4に引き寄せられることでアンカー体12に追従して地表面に対し、地表面に接近する向きに相対的に移動する。このようにケーブル2の地中に存在する区間が緊張材11の伸縮に追従することは、ケーブル2の地中から突出した区間が定着版16と頭部定着体13に対して軸方向に相対移動することであり、ケーブル2の地中から突出した区間の長さが変化することである。
【0018】
請求項1における「回転体が緊張材の伸縮に連動して回転する」の回転は
図1−(b)、もしくは(c)に示すように緊張材11の伸縮に起因してケーブル2の地中から突出した区間が定着版16(と頭部定着体13)に対して軸方向に移動する結果として、回転体3が回転軸(回転の中心)である支持軸3aの回りに、もしくは支持軸3aと共に、ケース6(頭部定着体13)に対して正負のいずれかの向きに回転することを言う。
図3、
図4は回転体3が支持軸3aと共にケース6に対して回転する場合の具体例を示している。
【0019】
図1−(a)に示す平常状態(ばね4の中立状態)ではケーブル2のばね4側の端部はケース6への接続部分(底板61)側へ引き寄せられた状態(中立状態)にあり、ケーブル2の定着版16に対する軸方向の移動(緊張材11の伸縮)に連動する回転体3は中立位置からいずれの側にも回転していない状態にある。回転体3が中立位置から回転していない状態は、ケーブル2が緊張材11の中立状態から軸方向に移動していない状態であり、ケーブル2はばね4の復元力と釣り合いを保つから、ケーブル2には初期の状態でばね4に与えられる復元力と釣り合う張力が生じている。
【0020】
アンカー体12は前記のように地中の不動層に定着され、頭部定着体13は移動層の表面である地表面(定着版16)に定着されるため、地下水位の変動、地盤沈下等に起因して移動層が不動層に対して滑り等が生じたときに、アンカー体12と頭部定着体13間に架設されている緊張材11の緊張力に変化が生じる。緊張材11の緊張力に変化(変化量)は緊張材11の伸縮(伸縮量)として表れる。
【0021】
図1−(b)に示すように地表面が不動層側へ移動する等により緊張材11が収縮すれば、地表面からアンカー体12までの距離が短縮されることで、ケーブル2の地中に存在する区間が短くなり、地中から突出する区間が長くなるため、ケーブル2に接続されたばね4が復元力で収縮する。一方、(c)に示すように地表面が不動層の反対(不動層から遠ざかる)側へ移動する等により緊張材11が伸長すれば、地表面からアンカー体12までの距離が拡大することで、ケーブル2の地中に存在する区間が長くなり、地中から突出する区間が短くなるため、ケーブル2に接続されたばね4が地表面側へ引き寄せられて伸長する。
【0022】
図1−(b)に示すように緊張材11の収縮によりアンカー体12と頭部定着体13との間の距離が減少したときには、緊張材11が中立状態(初期状態)のときより弛緩するため、緊張材11の張力が初期状態より低下する。このとき、アンカー体12が地表面に接近することで、ケーブル2の地表面から地上へ突出する区間が長くなる結果、ばね4が自らの復元力により初期状態(中立状態)より収縮状態になるため、回転体3がばね4側へ回転する。回転体3のばね4側への回転は緊張材11の緊張力が低下したときに起こるから、このときの回転体3は緊張材11の緊張力の低下を表示することになる。
【0023】
図1−(c)に示すように緊張材11の伸長によりアンカー体12と頭部定着体13との間の距離が増加したときには、緊張材11が中立状態のときより緊張するため、緊張材11の張力が初期状態より上昇する。このとき、アンカー体12が地表面から遠ざかることで、ケーブル2の地表面から地上へ突出する区間が短くなる結果、ばね4がケーブル2から初期状態(中立状態)より引張力を受け、伸長状態になるため、回転体3がケーブル2側へ回転する。回転体3のケーブル2側への回転は緊張材11の緊張力が上昇したときに起こるから、このときの回転体3は緊張材11の緊張力の上昇を表示することになる。
図1−(b)、(c)の状況から、結局、回転体3は緊張材11の伸縮に連動して回転し、緊張材11の伸長か収縮のいずれかを示す正負のいずれかの向きに回転する。
【0024】
回転体3は中立位置から正負の向き、すなわちケーブル2側とばね4側のいずれかの向きに回転することにより緊張材11の緊張力の変動を表示する機能を果たすため、中立位置からは緊張材11の伸縮に起因する地表面とアンカー体12との距離の変化に伴うばね4の伸縮に連動して正負の向きに回転する必要がある。この関係で、回転体3の中立位置からばね4が収縮できるよう、回転体3の中立位置ではばね4は自然長の状態から伸長している必要があるため、緊張材11に設置状態からの伸縮が生じていない平常時の状態(中立状態)ではばね4は伸長し、復元力を発揮した状態に置かれる。平常時の状態でばね4が伸長し、復元力を発揮した状態にある関係で、前記のように平常時にはばね4と釣り合うケーブル2にはばね4の復元力に相当する張力が作用した状態にある。
【0025】
緊張材11の平常時に回転体3が中立位置から回転を生じていない状態にあり、その状態からは緊張材11の伸縮に伴ってケーブル2の地中に存在する区間が拡縮し、ばね4が伸縮することで、回転体3が正負のいずれかの向きに回転する。前記のように地表面の変動等に起因して緊張材11が収縮すれば、ばね4が収縮する結果、回転体3はばね4側へ回転し、緊張材11が伸長すれば、ばね4が伸長する結果、回転体3はケーブル2側へ回転するため、回転体3の向きである正と負は例えばそれぞれ緊張材11の伸長(+)の向きと収縮(−)の向きを指す。この関係から、
図1に示すように回転体3の回転の向きに正負の記号を表示しておくことで、回転体3の回転状況から直ちに緊張材11が伸長状態にあるか、収縮状態にあるかが判明することになる。特に緊張材11の伸縮に応じ、回転体3が正負のいずれの向きに回転しているかは、回転体3に後述の表示針8(請求項
2)が一体化した場合に、表示針8の先端が回転体3の回転角θを拡大して表示することができるため、観測者には容易に認識可能になる。
【0026】
緊張材11の初期状態ではケーブル2には必ずしも張力が与えられている必要はないが、ケーブル2が緊張材11の伸縮に追従して地中に存在する区間が拡縮し、緊張材11の初期状態(平常時)からの伸縮への反応性をよくする上では、ある程度の張力が与えられていることが適切であり、この初期の張力は前記のようにばね4の自然長からの伸び量に相当するばね4の復元力として与えられる。ケーブル2とばね4が回転体3を経由することで、緊張材11の緊張力の変化に拘わらず、ケーブル2の張力とばね4の復元力は常に平衡し、釣り合いを保った状態にあり、緊張材11が平常時から収縮し、緊張材11の緊張力が減少したときにはばね4も収縮し、復元力が減少する。緊張材11が平常時から伸長し、緊張材11の緊張力が増加したときにはばね4も伸長し、復元力が増加する。
【0027】
ケーブル2は地中では
図1に示すように緊張材11と平行に、または平行に近い状態で配置され、地中から突出する区間において回転体3の位置で折り返して、または回転体3を経由して頭部定着体13等のいずれかの部分に接続されているばね4に接続されるため、ケーブル2が接触等する回転体3の回転軸である支持軸3aは緊張材11の軸方向に直交する面内の任意の方向を向く。「ケーブルが回転体を経由してばねに接続される」とは、ケーブル2(張力伝動部材5を含む)の、回転体3を挟んだ両側の区間の、緊張材11の軸線に平行な直線とのなす角度α、βが任意であり、例えば
図1−(a)に示すように両側区間のなす角度α、βが等しいか、ほぼ等しく、0°に近い鋭角である場合と、回転体3を経由したばね4側の区間のなす角度βが直角、もしくは鈍角である場合があることを意味する。
【0028】
ケーブル2の、回転体3を挟んだ両側の区間のなす角度α、βは頭部定着体13に回転体3が収納されるケース6が接合される場合には、ばね4のケース6への接続位置と、ケーブル2が挿通するための、ケース6の一部に形成される挿通孔61aの位置によって決まる。ケース6の挿通孔61aの位置はケーブル2が定着版16を迂回しない場合の、ケーブル2が挿通するための挿通孔16aの位置によって決められるが、ケース6の挿通孔61aは
図2に示すように回転体3の中心Oと定着版16の挿通孔16aを結ぶ直線上に位置する場合と、
図1に示すようにそうでない場合がある。
【0029】
特にケーブル2が回転体3の位置で折り返す形で、図示するようにケース6のばね4に接続される場合には、ケーブル2の、回転体3を挟んだ両側の区間のなす角度α、βを等しくすることができ、その場合、回転体3の中心Oを通り、緊張材11の軸線に平行な直線に関してばね4とケーブル2を対称に位置させることができる。「緊張材11の軸線に平行な直線」とは、回転体3の中心Oを通る直線が図示するように緊張材11の軸線上に位置する場合と、緊張材11の軸線から外れた線上に位置する場合があることを言う。
【0030】
この場合、ケーブル2が回転体3の位置で折り返さない場合(α、βが相違する場合)との対比では、ケーブル2、またはケーブル2の一部になる張力伝動部材5の回転体3への巻き付け区間(巻き付け角)を大きく取ることが可能であるため、ケーブル2と回転体3との間での張力の伝達効果が高まり、ケーブル2が回転体3に対して滑りを生じにくくすることが可能である。またケーブル2が回転体3を折り返すことで、図示するように頭部定着体13に一体化するケース6内においてばね4とケーブル2を包囲する領域の幅を抑えることができるため、ばね4が伸長した状態を含め、常にばね4とケーブル2を限られた容積を持つケース6内に収納することができ、ばね4とケーブル2の外気への暴露を回避し易くなる。
【0031】
回転体3は支持軸3a回りの、あるいは支持軸3aの中心回りの回転によって緊張材11の張力の変化(変化量)を表示し、緊張材11の張力の変化を回転体3の回転角度θとして表示するが、
図3に示す回転体3の半径rが大きい程、回転体3の外周面の移動量が回転角度θを周長θ×rとして回転角度θの半径r倍に拡大するため、回転体3の半径rを大きめに設定するか、または回転体3に回転体3の半径rより大きい長さを持つ(回転体3の中心から先端までの距離が大きい)表示針8を一体化することで(請求項
2)、ケーブル2の張力の変化を拡大して表示することが可能である。後者の場合、回転体3の回転角度θが表示針8の長さR倍の移動量(=周長(θ×R))に拡大されることで、僅かな回転体3の回転(回転角度θ)が表示針8の先端の移動に反映され易くなるため、観測者への視認性を高める効果がある。回転体3の支持軸3aは前記のように緊張材11の軸方向に直交する面内の任意の方向を向くが、観測者の視覚に訴える上では、回転体3の支持軸3aは観測者側に向けられる。
【0032】
以上のように本発明では緊張材11の緊張力の変化量を緊張材11の伸縮に連動して回転する回転体3の回転量(回転角θ)として表示することができるため、電源を必要としない簡素な構成でありながら、緊張材11の頭部定着体13側に配置された回転体3の回転角度を目視することのみにより緊張材11の緊張力の状態(変化)を直ちに把握することが可能になる。特に回転体3に表示針8を一体化させた場合には、表示針8が回転体3の回転角度θを表示針8の長さR倍の周長(θ×R)に拡大して表示するため、観測者への視認性を高めることが可能である。
【0033】
また緊張力変動表示装置1は地盤アンカー10の内、地表に突出した頭部定着体13に接続される形で、ケーブル2の地表に突出した区間と共に地上に設置されることから、地盤アンカー10が法面に設置された場合に、上方からの落石等の発生により緊張力変動表示装置1が損傷、もしくは流出することがあっても、ケーブル2の地中に存在する区間は健全に保たれるため、容易に緊張力変動表示装置1を再設置、または復旧させることが可能である。
【0034】
ケーブル2は頭部定着体13を通過する区間においては、頭部定着体13が定着される定着版16のいずれかの部分に形成された挿通孔16a、もしくは接続された部品の挿通孔を挿通することにより、または定着版16を迂回する形で、地中から地表に露出する。露出するとは、ケーブル2が地表面から地中外に突出することを言い、外気に暴露されるとは限らず、図示するように頭部定着体13に一体化するケース6に収納されることもある趣旨である。ケーブル2は使用状態での摩耗を防止、もしくは抑制する上では、定着版16に接触しないことが望ましいが、接触によるケーブル2との摩擦力の発生があってもケーブル2の移動への影響と、それによる回転体3の回転への影響はないため、定着版16のいずれかの部分に接触することは許容される。ケーブル2が定着版16(挿通孔16a)に接触する状況になる場合には、ケーブル2は必要によりその摩耗を低減するための低摩擦材に接触させられる。
【0035】
ケーブル2はアンカー体12と頭部定着体13(ケース6)との間に架設され、ばね4への接続により張力を与えられていることで、ばね4の復元力と釣り合いを保ちながら、緊張材11の伸縮に追従するため、ケーブル2の地表面から突出した区間(地上へ突出する区間)の平常時からの移動量ΔL1、すなわちばね4の平常時からの伸縮量が緊張材11の緊張力の増減を示すことになる。ケーブル2の地表面から突出した区間の移動は緊張材11の伸縮に伴って発生するため、ケーブル2の伸縮がなければ、ケーブル2の地表面から突出した区間の移動量(ばね4の伸縮量)ΔL1は設置状態からの緊張材11の伸縮量ΔL0に等しい。
【0036】
図面では
図3に示すように回転体3にスプロケットを使用し、ケーブル2の全長の内、回転体3に噛み合う区間にチェーンを接続した場合の例を示しているが、回転体3はこれには限られず、プーリ、ローラ、歯車等も使用され、回転体3の形態に応じてケーブル2の一部区間にはベルト、歯形ベルト等も使用される。ケーブル2の全長の内、回転体3に噛み合う区間にチェーン、ベルト等を接続した
ことは、ケーブル2のばね4側の端部に張力伝動部材5が接続されたこと(請求項
1)の例に当たる。
【0037】
ケーブル2の、少なくとも回転体3に噛み合う区間に張力伝動部材5が接続され
ること(請求項
1)には、張力伝動部材5と回転体3とが互いに滑りを生じることなく、接触、もしくは噛合した状態を維持できる可能性が高まるため、ケーブル2の伸縮を確実に回転体の回転に伝達することができる利点がある。
【0038】
ここで、
図3に示すように回転体3の中心Oからケーブル2(の厚さ方向の中心)までの距離(回転体の半径)をrとすれば、ケーブル2の移動量(ばね4の伸縮量)ΔL1は回転体3の回転方向の周長(回転量)であるから、回転体3の回転角度Δθ(ラジアン)とケーブル2の移動量ΔL1はΔL1=r・Δθの関係にある。この関係から、回転体3の半径r、すなわち回転体3の中心からケーブル2の接触面までの距離が小さい程、回転体3の回転角度Δθが大きくなり、ケーブル2の移動量ΔL1が回転体3の回転角度Δθに反映され易くなり、視覚に訴え易くなることになる。
【0039】
このことから、回転体3に表示針8を一体化させる場合には、回転体3の半径rを小さくしながら、表示針8の先端までの距離Rを大きくする程、ケーブル2の移動量ΔL1を回転体3の回転角度Δθに拡大した上で、表示針8の回転量(周長)に拡大して表示することができるため、観測者への認識効果を高めることが可能になる。
【0040】
また前記のようにケーブル2の移動量ΔL1は緊張材11の伸縮量ΔL0でもあるから、緊張材11の元の長さ(張力が与えられず、伸縮を生じていない自然長)L0に対する伸縮量ΔL0の比率ΔL0/L0(=ε:歪み度=σ/E)から、緊張材11の張力の変化量ΔT0は緊張材11の断面積A0、弾性係数E0を用いてΔT0=E0・A0・(ΔL0/L0)として表されるため、ケーブル2の移動量(ばね4の伸縮量)ΔL1(=ΔL0)から直接、緊張材11の緊張力の変化量ΔT0を算出することが可能である。