(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の解析装置のうち放射性物質の位置を同定する系統の解析装置は、前記複数の放射線検出器のうち放射性物質の位置を同定する位置同定用放射線検出器の出力と前記アクセス装置の位置情報とから、前記位置同定用放射線検出器の視野角における放射性物質の存在の有無を同定し、その結果を出力する位置同定アルゴリズムを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の放射線計測装置。
原子力発電所における原子炉格納容器、原子炉圧力容器、原子炉圧力抑制室、あるいは、トーラス室において、放射性物質の調査および放射性物質の位置の同定を行うことによって放射性物質が含まれる燃料デブリの有無を推定する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の放射線計測装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と記述する)について図面を用いて詳細に説明する。本発明は実施形態に限定されるものではない。本明細書および図面において、同一の構成要素又は実質的に同一の機能を有する構成要素には同一の符号を付することとし、重複する説明は省略する。
【0011】
<放射性物質の検出環境について>
発明者らは、原子炉施設に存在し、さらにその放射能分布が複雑で、経時変化で放射能分布や幾何条件が変化する可能性がある環境であっても、広範囲を迅速に調査可能で且つ高い位置分解能で燃料デブリが含む放射性物質を検知できる放射線計測装置に関して種々検討を行った。そして、本実施形態に係る放射線計測装置は、その検討結果として得た新たな知見に基づいてなされたものである。原子炉施設としては、原子力発電所における原子炉格納容器、原子炉圧力容器、原子炉圧力抑制室、あるいは、トーラス室等の施設を例示することができる。
【0012】
近年、原子炉格納容器、原子炉圧力容器、原子炉圧力抑制室、あるいは、トーラス室等の原子炉施設で適用可能な燃料デブリ検知技術が求められている。燃料デブリの有無を推定する方法の一つとして、燃料デブリから放射される特有の放射線を計測する手法がある。放射性核種の代表例としてはCe−144(セリウム)やEu−154(ユーロピウム)がある。
【0013】
ただし、Ce−144は半減期が短い(約239日)。一方、Eu−154は半減期が長く(約8.6年)、燃料集合体内部の含有量も比較的多いため、燃料デブリの有無の推定のための測定対象として有力である。Eu−154やCe−144から放射されるγ線を計測するには、核種分析可能な放射線検出器及び分析装置を適用する必要がある。
【0014】
燃料デブリの有無の推定のための調査領域は、原子炉格納容器、原子炉圧力容器、原子炉圧力抑制室、あるいは、トーラス室等の原子炉施設である。この調査領域は広範囲であるため、広範囲を迅速に調査することが求められる。一方、Eu−154やCe−144を含んだ燃料デブリの有無を推定する精度の向上を図るには、高い位置分解能で計測することが求められる。これらの調査領域は雰囲気線量率が高く、作業員のアクセスが困難である。
【0015】
このために、調査用機器は、クローラ等のアクセス装置に搭載され、当該アクセス装置によるアクセスによって原子炉施設での調査が進められる。ただし、アクセス装置の搭載重量には限度があることや雰囲気線量率が高いことにより機器が故障する可能性がある。そのため、調査用機器の構成は簡素であることが求められる。したがって、広範囲を迅速に調査可能で且つ高い位置分解能で燃料デブリに随伴するEu−154やCe−144を検知でき、アクセス装置に搭載する機器が簡素である放射線計測装置が必要とされる。
【0016】
放射線計測装置において、放射線の計測範囲の制御は、放射線検出器と組み合わせて用いられるコリメータの視野角を変えることによって実施される。広範囲を計測する場合はコリメータの視野角を大きくする(開口を拡げる)ことが考えられる。また、高い位置分解能で計測する場合はコリメータの視野角を小さくすることが考えられる。
【0017】
<本発明の実施形態に係る放射線計測装置>
[放射線計測装置の構成]
図1は、本発明の実施形態に係る放射線計測装置を示す構成図の例である。本実施形態に係る放射線計測装置10は、例えば2つの放射線検出器11,12と、遮蔽体13と、2つのコリメータ14,15と、2つの放射線検出素子16,17と、を備えている。そして、放射線検出器11,12の各検出信号は、同軸ケーブルなどの耐ノイズ性が高い信号ケーブル18A,18Bによって後述する計測システム20に供給される。
【0018】
2つの放射線検出器11,12のうち、遮蔽体13の開口部13A側の放射線検出器11は、放射性物質の調査を行う調査用放射線検出器である。放射線検出器11の後ろ側(開口部13Aの反対側)に配置された放射線検出器12は、放射性物質の位置の同定を行う位置同定用放射線検出器である。
【0019】
本実施形態に係る放射線計測装置10は、原子力発電所における原子炉格納容器、原子炉圧力容器、原子炉圧力抑制室、あるいは、トーラス室等の原子炉施設において、放射性物質の調査および放射性物質の位置の同定を行うことによって燃料デブリの有無を推定する。本実施形態に係る放射線計測装置10では、放射性物質として、放射能の半減期が所定期間(例えば、8年程度)よりも長い放射性核種、例えばEu−154(ユーロピウム)を測定対象(調査および位置の同定の対象)とする。なお、これはEu−154を測定対象として限定するものではない。
【0020】
したがって、調査用放射線検出器11はEu−154の調査を行い、位置同定用放射線検出器12はEu−154の位置の同定を行うことになる。遮蔽体13は、鉛や鉄、タングステンなどの材料で作製され、視野角外から入射する放射線から、調査用放射線検出器11および位置同定用放射線検出器12を遮蔽する。
【0021】
コリメータ14,15は、遮蔽体13内に入射する放射線を放射線検出素子16,17に導くための器具であり、広範囲を計測し且つ高い位置分解能で計測するための視野角を供する。コリメータ14は、調査用放射線検出器11の前面側に設けられている。コリメータ14は、広範囲を計測するために大きい視野角を有する広開口の調査用コリメータである。コリメータ15は、位置同定用放射線検出器12の前面側に設けられている。コリメータ15は、高い位置分解能で計測するために小さい視野角を有する狭開口の位置同定用コリメータである。
【0022】
すなわち、調査用コリメータ14および位置同定用コリメータ15は、遮蔽体13の開口部13A側から視野角の大きい順に、調査用放射線検出器11および位置同定用放射線検出器12の各前面側に設けられている。また、調査用コリメータ14と位置同定用コリメータ15とは、好ましくは、光軸が一致するように設けられている。
【0023】
ここでは、調査用コリメータ14の形状について、代表例として、テーパー型を図示している。ただし、調査用コリメータ14は、テーパー型の形状に限られるものではない。調査用コリメータ14で規定される視野角を、
図1に視野角θ1で示している。また、位置同定用コリメータ15の形状について、代表例として、ピンホール型を図示している。ただし、位置同定用コリメータ15は、ピンホール型の形状に限られるものではない。位置同定用コリメータ15で規定される視野角を、
図1に視野角θ2で示している。なお、視野角θ1および視野角θ2は、調査用コリメータ14および位置同定用コリメータ15の形状で任意に設定可能である。
【0024】
放射線検出素子16は、調査用放射線検出器11の前部に設けられている。放射線検出素子17は、位置同定用放射線検出器12の前部に設けられている。そして、放射線検出素子16と放射線検出素子17とは、調査用コリメータ14および位置同定用コリメータ15の光軸方向に沿って配置されている。放射線検出素子16および放射線検出素子17は、核種分析が可能なセンサである。
【0025】
放射線検出素子16および放射線検出素子17は、CdTe、CZT、TlBr、LaBr
3(Ce)、LaCl
3(Ce)、LSO、LYSO、GAGG(Ce)、LuAG(Pr)、NaI(Tl)、YAP(Ce)、GSOのいずれかから構成される。このような材料を用いることで、Eu−154から放射されるγ線(γ線エネルギー:1274,1596keV)を高精度に計測できるため、Eu−154の計測精度の向上に寄与できる。
【0026】
調査用放射線検出器11、位置同定用放射線検出器12、遮蔽体13、調査用コリメータ14、位置同定用コリメータ15および放射線検出素子16,17等を備える放射線計測装置10は、好ましくは、アクセス装置30に搭載されて用いられる。アクセス装置30としては、クローラや壁面吸着型など多様な選択肢が考えられる。
【0027】
上記構成の本実施形態に係る放射線計測装置10では、調査用放射線検出器11および位置同定用放射線検出器12を遮蔽体13で遮蔽する構成を採っているため、高線量率環境下であっても、調査用放射線検出器11および位置同定用放射線検出器12は正常に動作できる。また、広開口の調査用コリメータ14を調査用放射線検出器11の前面側に備えることで、調査用放射線検出器11によって広範囲にEu−154の計測を実現できる。
【0028】
また、本実施形態に係る放射線計測装置10では、放射線検出素子16と放射線検出素子17とが調査用コリメータ14の光軸方向に沿って配置され、放射線検出素子16と放射線検出素子17との間に位置同定用コリメータ15が配置されている。これにより、放射線検出素子16を透過し、且つ位置同定用コリメータ15で絞られたγ線を放射線検出素子17で計測できるため、位置同定用コリメータ15で定められる位置分解能でEu−154の位置を同定できる。
【0029】
さらに、本実施形態に係る放射線計測装置10では、1台の遮蔽体13内に調査用放射線検出器11および位置同定用放射線検出器12を収納しており、視野角を調整するための機構(従来技術におけるコリメータをスライドさせるための機構に相当)が不要である。これにより、放射線計測装置10の小型化、さらにはアクセス装置30に搭載する機器の簡素化を実現できる。
【0030】
上述した効果によって、本実施形態に係る放射線計測装置10は、原子力発電所における原子炉格納容器、原子炉圧力容器、原子炉圧力抑制室、あるいは、トーラス室等の環境で、効果的に燃料デブリの有無の推定を実現できる。そして、本実施形態に係る放射線計測装置10によれば、広範囲を迅速に調査可能で且つ高い位置分解能で燃料デブリに随伴する半減期の長い放射性核種Eu−154を検知できる。
【0031】
また、放射線計測装置10がアクセス装置30に搭載されることで、作業員の立ち入りが困難な環境にもアクセスできるため、Eu−154の計測範囲を飛躍的に向上できるとともに、燃料デブリの位置推定時間を短縮できる。
【0032】
なお、上記した実施形態では、放射線検出器を2つ設け、これに対応してコリメータおよび放射線検出素子を2つずつ設ける構成としたが、これに限られるものではなく、放射線検出器、コリメータおよび放射線検出素子を3つ以上設ける構成とすることも可能である。例えば、調査用放射線検出器11を複数設けるとともに、視野角の異なる複数の調査用コリメータ14を複数の調査用放射線検出器11の各前面側に、遮蔽体13の開口部13A側から視野角の大きい順に配置する構成を採ることができる。この構成を採ることにより、放射性物質の調査を視野角の大きい順に段階的に実施することができる。また、ある視野角の調査用放射線検出器11と位置同定用放射線検出器12との組み合わせ、あるいは、別の視野角の調査用放射線検出器11と位置同定用放射線検出器12との組み合わせ、という具合に調査用放射線検出器11の視野角を選択的に設定する使い方をすることもできる。
【0033】
[計測システムの構成]
次に、調査用放射線検出器11および位置同定用放射線検出器12の各出力に基づいてγ線エネルギー分布を計測し、その計測結果から放射性物質、即ちEu−154のピークを解析する計測システムの構成について説明する。以下に、計測システムの具体的な実施例について説明する。
【0034】
(実施例1)
図2は、実施例1に係る計測システムの構成を示すブロック図の例である。計測システム20は、放射線計測装置10から信号ケーブル18A,18Bによって伝送される調査用放射線検出器11および位置同定用放射線検出器12の各出力を入力とする。
図2に示すように、計測システム20は、調査用放射線検出器11の出力を処理する計測装置21および解析装置23と、位置同定用放射線検出器12の出力を処理する計測装置22および解析装置24と、表示装置25と、を備えている。
【0035】
計測装置21,22は、調査用放射線検出器11および位置同定用放射線検出器12の各出力からγ線エネルギー分布をそれぞれ計測する。解析装置23,24は、計測装置21,22によるγ線エネルギー分布の測定結果からEu−154のピークをそれぞれ解析する。表示装置25は、計測装置21,22によるγ線エネルギー分布の測定結果や、解析装置23,24によるEu−154のピークの解析結果を表示する。
【0036】
図3に、γ線エネルギー分布を示す。ここでは一例として、Cs−137の662keVのγ線ピークP11、Cs−134の796keVのγ線ピークP12、Eu−154の1274keVのγ線ピークP13、Eu−154の1596keVのγ線ピークP14を示す。このγ線エネルギー分布から解析装置23,24を用いてγ線ピークの強度として計数率を算出する。
【0037】
図4に、調査用放射線検出器11および位置同定用放射線検出器12によるγ線エネルギー分布例(1)を示す。
図4では、調査用放射線検出器11によるγ線エネルギー分布を実線で示し、位置同定用放射線検出器12によるγ線エネルギー分布を破線で示している。Eu−154が視野角θ1(
図1参照)の領域内で且つ視野角θ2の領域外である場合、Eu−154によるγ線ピークP13およびγ線ピークP14は、調査用放射線検出器11によるγ線エネルギー分布(実線)でのみ確認され、位置同定用放射線検出器12によるγ線エネルギー分布(破線)では検出されない。
【0038】
図5に、調査用放射線検出器11および位置同定用放射線検出器12によるγ線エネルギー分布例(2)を示す。
図5でも
図4と同様に、調査用放射線検出器11によるγ線エネルギー分布を実線で示し、位置同定用放射線検出器12によるγ線エネルギー分布を破線で示している。Eu−154が視野角θ1(
図1参照)の領域内で且つ視野角θ2の領域内である場合、Eu−154によるγ線ピークP13およびγ線ピークP14は、調査用放射線検出器11によるγ線エネルギー分布(実線)および位置同定用放射線検出器12によるγ線エネルギー分布(破線)で検出される。
【0039】
上述した実施例1に係る計測システム20は、調査用放射線検出器11および位置同定用放射線検出器12の各出力からγ線エネルギー分布をそれぞれ計測する計測装置21,22を備えることで、Eu−154から放射されるγ線(γ線エネルギー:1274,1596keV)を計測できる。また、γ線エネルギー分布の測定結果からEu−154による出力をそれぞれ解析する解析装置23,24と、γ線エネルギー分布や解析装置23,24による解析結果を表示する表示装置25を備えることで、Eu−154の強度を視覚的に確認できるとともに、作業効率を向上できる。これにより、Eu−154の計測精度と作業効率の向上を図ることができる。
【0040】
<放射線計測装置の適用箇所例>
ここで、放射性物質の調査および放射性物質の位置の同定を行う際の、本実施形態に係る放射線計測装置10の適用箇所について具体的に説明する。
【0041】
図6に、放射線計測装置10の適用箇所例を示す。放射線計測装置10の適用箇所は一般的な原子力発電所である。ここでは一例として、沸騰水型原子炉の概念図を用いて説明する。
【0042】
沸騰水型原子炉40は、原子炉建屋41、原子炉格納容器42、原子炉圧力容器43、原子炉水再循環系44、原子炉圧力抑制室45、トーラス室46、貫通部47などから構成されている。これらの施設内における燃料デブリ50の有無を確認するために、放射線計測装置10は、例えば、原子炉格納容器42、原子炉圧力容器43、原子炉圧力抑制室45、あるいは、トーラス室46の内部にアクセス装置30に搭載されてアクセスする。
【0043】
アクセス装置30は、電源ケーブル31を介してアクセス装置制御装置32によって制御される。アクセスする際には、既設の貫通部47や工事等で施工した侵入経路を介して行われる。放射線計測装置10は、信号ケーブル18A,18Bを介して計測システム20と接続される。ここでは一例として、計測システム20を原子炉建屋41に設置する構成を採っているが、原子炉建屋41の外部に設置する構成を採ることも可能である。
【0044】
燃料デブリ50は、核燃料であるU(ウラン)やPu(プルトニウム)、核分裂生成物、溶融した炉内構造物から構成される。なお、燃料デブリ50の元素の構成比や形状、幾何条件は燃料デブリ50の存在箇所によってばらつきがあると考えられる。燃料デブリ50の有無を検知するためには、燃料デブリ50に含まれる成分を検出することが必要となる。検出用の成分としては、Ce−144やEu−154がある。ただし、Ce−144は半減期が約239日と短い。一方、Eu−154は、半減期が約8.6年と長く、燃料集合体内部の含有量も比較的多い。このため、本実施例では、Eu−154を燃料デブリ50の有無を推定するための測定対象としている。なお、これはEu−154を測定対象として限定するものではない。Eu−154は、123keV、723keV、873keV、1004keV、1274keVのγ線を放射する特徴を有する。
【0045】
これらの施設内にはバックグラウンドとして、核分裂生成物であるCs−137、Cs−134等や炉内構造物の放射化で生成されたCo−60、Co−58等が分布をもっていたるところに存在する。ここで、Cs−137は662keVのγ線を放射し、半減期約30年で減衰する特徴を有する。Cs−134は主に602keV、796keV、802keV、1365keVのγ線を放射し、半減期約2年で減衰する特徴を有する。Co−60は1173keV、1332keVのγ線を放射し、半減期約5年で減衰する特徴を有する。Co−58は主に511keV、811keVのγ線を放射し、半減期約70日で減衰する特徴を有する。これらのバックグラウンド環境下で測定対象であるEu−154を検出するために、核種分析が可能なセンサである放射線検出素子16及び放射線検出素子17を用いている。
【0046】
(実施例2)
本発明の他の実施例である実施例2は、調査用放射線検出器11を用いてEu−154の有無を調査した後に、Eu−154が検知された場合に位置同定用放射線検出器12を用いてEu−154の位置を同定する例である。
【0047】
図7は、実施例2に係る計測システムの構成を示すブロック図の例である。実施例2に係る計測システム60では、計測装置21,22の後段に設けられた解析装置61,62の機能が、実施例1の解析装置23,24の機能と異なっている。
【0048】
具体的には、解析装置61は、計測装置21を通して与えられる調査用放射線検出器11の出力と、アクセス装置制御装置32から与えられるアクセス装置30の位置情報とから、調査用放射線検出器11の視野角θ1におけるEu−154の存在の有無を同定し、判定結果を出力するEu−154調査アルゴリズムを有する。
【0049】
解析装置62は、計測装置22を通して与えられる位置同定用放射線検出器12の出力と、アクセス装置制御装置32から得られるアクセス装置30の位置情報とから、位置同定用放射線検出器12の視野角θ2におけるEu−154の存在の有無を同定し、判定結果を出力するEu−154位置同定アルゴリズムを有する。
【0050】
実施例2に係る計測システム60はさらに、解析装置61,62を制御する制御装置63を備えている。この制御装置63は、後述するEu−154調査および同定プロセスを備える。制御装置63の機能の詳細については後述する。
【0051】
次に、Eu−154調査アルゴリズムおよびEu−154
位置同定アルゴリズムを用いたEu−154位置同定方法について、
図8を用いて説明する。
図8は、Eu−154位置同定方法を説明する概要図の例である。
【0052】
放射線計測装置10による測定面Sに対して燃料デブリ50が存在すると仮定する。調査用放射線検出器11の視野角θ1による計測範囲S1と位置同定用放射線検出器12の視野角θ2による計測範囲S2とは測定面S上に示される。
図8Aでは、燃料デブリ50の存在する位置が計測範囲S1の範囲内で計測範囲S2の範囲外であるため、解析装置61は、Eu−154調査アルゴリズムに基づいてEu−154の検出を行う。この検出をトリガーとして、解析装置62は、Eu−154位置同定アルゴリズムに基づいてEu−154位置同定を開始する。
【0053】
ここでは一例として、位置同定用放射線検出器12の視野角θ2による計測範囲S2を
図8Aに矢印で示す上下左右方向に平行移動させる。そして、
図8Bに示すように、燃料デブリ50が計測範囲S2の範囲内となった場合、Eu−154位置同定アルゴリズムに基づいてEu−154を検知する。さらに、Eu−154が検知されたときのアクセス装置30の位置情報から燃料デブリ50の位置を同定する。
【0054】
制御装置63は、Eu−154調査アルゴリズムによる解析結果においてEu−154の存在が確認された後に、調査用放射線検出器11の視野角θ1の範囲において、アクセス装置30を移動させるための指令信号をアクセス装置制御装置32に供給する。そして、制御装置63は、Eu−154調査および同定プロセスにより、位置同定用放射線検出器12の出力をEu−154位置同定アルゴリズムで解析し、調査用放射線検出器11の視野角θ1の範囲におけるEu−154の位置を同定する。
【0055】
上述した実施例2に係る計測システム60は、調査用放射線検出器11の出力とアクセス装置30の位置情報とから、調査用放射線検出器11の視野角θ1におけるEu−154の存在の有無を同定し、判定結果を出力するEu−154調査アルゴリズムを解析装置61に備えている。これにより、実機での調査中に広範囲計測における判定結果を得ることができるため、作業効率の向上を図ることができる。
【0056】
また、実施例2に係る計測システム60は、位置同定用放射線検出器12の出力とアクセス装置30の位置情報とから、位置同定用放射線検出器12の視野角θ2におけるEu−154の存在の有無を同定し、判定結果を出力するEu−154位置同定アルゴリズムを解析装置62に備えている。これにより、実機での調査中にEu−154位置同定における判定結果を得ることができるため、作業効率の向上を図ることができる。
【0057】
さらに、Eu−154の存在が確認された後に、視野角θ1の範囲においてアクセス装置30を移動させ、位置同定用放射線検出器12の出力をEu−154位置同定アルゴリズムで解析し、Eu−154の位置を同定するEu−154調査および同定プロセスを制御装置63に備えている。これにより、実機での調査中に広範囲計測における判定結果からEu−154位置同定に移行することができ、Eu−154位置同定における判定結果を得ることができるため、作業効率の向上を図ることができる。
【0058】
本発明の他の実施例である実施例3は、調査用カメラで得られた画像にEu−154
位置同定アルゴリズムおよびEu−154調査アルゴリズムにおける解析結果を重ね合わせ、Eu−154の位置を可視化する例である。
【0059】
図9は、実施例3に係る計測システムの構成を示すブロック図の例である。実施例3に係る計測システム70は、調査用カメラ(撮像装置)71とケーブル72、カメラ用制御解析装置73および可視化用解析装置74を備える以外の構成については、基本的に、
図7と同等である。
【0060】
調査用カメラ71としては一般的なカメラを用いることができる。カメラ用制御解析装置73は、調査用カメラ71に対して撮影制御を行うとともに、調査用カメラ71の出力を解析する。可視化用解析装置74は、Eu−154調査アルゴリズム、Eu−154位置同定アルゴリズム、ならびに、Eu−154調査および同定プロセスにおける解析結果を調査用カメラ71の出力と重ね合わせ、Eu−154の位置を可視化する可視化アルゴリズムを有する。
【0061】
図10は、Eu−154位置同定による可視化について説明する概念図の例である。ここでは一例として、ある曲率を持った配管81を配管軸方向に対して調査用カメラ71で垂直に撮像したものを図示している。メッシュ82は、放射線計測装置10でEu−154の有無を検知する領域を示す。ピクセル内の濃淡はEu−154の強度を表しており、Eu−154の強度が強い場合は濃く示している。メッシュ82の精度は、
図8に示す計測領域S1および計測領域S2に依存する。また、Eu−154の強度が含まれるメッシュ82は、CADデータなどの電子図面と重ね合わせることも可能である。メッシュ82を表示装置25で表示することで、実機で作業員がリアルタイムに調査結果を視覚的に認識できる。
【0062】
上述した実施例3に係る計測システム70は、Eu−154調査アルゴリズム、Eu−154位置同定アルゴリズム、ならびに、Eu−154調査および同定プロセスにおける解析結果を調査用カメラ71の出力と重ね合わせ、Eu−154の位置を可視化する可視化アルゴリズムを可視化用解析装置74に備えている。そして、可視化アルゴリズムの解析結果を表示装置25で表示することで、実機で作業員がリアルタイムに調査結果を視覚的に認識できるため、作業効率の向上を図ることができる。
【0063】
また、Eu−154調査アルゴリズム、Eu−154位置同定アルゴリズム、ならびに、Eu−154調査および同定プロセスにおける解析結果と、アクセス装置30の位置情報とから、調査領域を示す電子図面に可視化アルゴリズムの解析結果を重ね合わせるようにすることもできる。そして、可視化アルゴリズムの解析結果を表示装置25で表示することで、実機で作業員がリアルタイムに調査結果を視覚的に認識できるため、作業効率の向上を図ることができる。
【0064】
なお、本発明は上記した実施形態および実施例に限定されるものではなく、様々な変形例を含む。例えば、上記した実施形態および実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細したものであり、必ずしも全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。