特許第6285331号(P6285331)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6285331
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】インクジェットヘッドおよびプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20180215BHJP
【FI】
   B41J2/14 301
   B41J2/14 611
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-191155(P2014-191155)
(22)【出願日】2014年9月19日
(65)【公開番号】特開2016-60151(P2016-60151A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 和久
【審査官】 上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−125936(JP,A)
【文献】 特開2011−068037(JP,A)
【文献】 特開2007−203528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクをインク供給側からインク吐出面側に吐出するヘッド本体と、
一端がこのヘッド本体に接続される配線フィルム、および前記配線フィルム毎にこの配線フィルムが展開状態において前記インク吐出面側の第1面とは反対側の前記インク供給側の第2面に駆動回路をそれぞれが有する複数の可撓性基板と、
それぞれこれらの可撓性基板の前記配線フィルムの前記第1面に対向する複数のヒートシンクと、
それぞれこれらのヒートシンクに設けられ各配線フィルムを前記第1面側から前記第2面側に押圧する複数の押さえ部材と、
それぞれこれらの押さえ部材の押圧力により前記駆動回路に圧接する複数の接触面を有し、前記ヘッド本体および前記複数のヒートシンクを一体化して固定する熱伝導ブロックと、
この熱伝導ブロックの各接触面に一端が接続された複数のヒートパイプと、
を備えるインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記複数の押さえ部材は、前記押圧力を弾性の復元力により発生させるバネ性の材料からなり、前記駆動回路から前記ヒートシンクまでの間の熱抵抗よりも小さい熱抵抗を有する請求項1記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記複数のヒートシンクは、前記駆動回路およびこの駆動回路の周辺の電装部品を覆うカバーを兼ねた請求項1又は請求項2記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項記載のインクジェットヘッドと、
用紙を搬送する機構と、
を備えたプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一実施形態はインクジェットヘッドおよびプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ本体(インクジェットプリンタ本体)にはインクジェットヘッドが設けられており、ドライバICによる吐出駆動によってインクを吐出する。従来、インクジェットヘッドはドライバICの外側に設けられたサイドカバーがドライバICの発熱をカバー外面から放出しており(例えば特許文献1参照)、チップ熱源面を、ヒートシンク兼用のサイドカバーの内側カバー面に向けてドライバICを配置している。チップ熱源面とはフィルム状のキャリアテープに実装されたICチップの上面であるトップ面を指し、ボトム面であるテープ面の対向面である。
【0003】
しかし、インクジェットヘッドはドライバICの熱源面が直接サイドカバーの内側カバー面への接触面として放熱する構造を有するため、ICチップの熱源面とサイドカバーとが近い位置に設けられていないと、熱源面を内側カバー面に直接接触させることができない。トップ面、ボトム面間を反対にしたドライバICをキャリアテープに実装する場合、チップ熱源面はサイドカバーの内側カバー面には対峙しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−125936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、熱源面から発せられる熱を外部に放出することを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するため、一実施形態によれば、インクをインク供給側からインク吐出面側に吐出するヘッド本体と、一端がこのヘッド本体に接続される配線フィルム、および前記配線フィルム毎にこの配線フィルムが展開状態において前記インク吐出面側の第1面とは反対側の前記インク供給側の第2面に駆動回路をそれぞれが有する複数の可撓性基板と、それぞれこれらの可撓性基板の前記配線フィルムの前記第1面に対向する複数のヒートシンクと、それぞれこれらのヒートシンクに設けられ各配線フィルムを前記第1面側から前記第2面側に押圧する複数の押さえ部材と、それぞれこれらの押さえ部材の押圧力により前記駆動回路に圧接する複数の接触面を有し、前記ヘッド本体および前記複数のヒートシンクを一体化して固定する熱伝導ブロックと、この熱伝導ブロックの各接触面に一端が接続された複数のヒートパイプと、を備えるインクジェットヘッドが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係るインクジェットヘッドの分解斜視図である。
図2】一実施形態に係るインクジェットヘッドの他の分解斜視図である。
図3】一実施形態に係るインクジェットヘッドの斜視図である。
図4】一実施形態に係るインクジェットヘッドのヘッド本体の分解斜視図である。
図5】一実施形態に係るインクジェットヘッドの縦断面図である。
図6】一実施形態に係るインクジェットヘッドの複数のヒートパイプの複数の斜視図である。
図7】一実施形態に係るプリンタの構成図である。
図8】一実施形態に係るインクジェットヘッドの熱伝導経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態に係るインクジェットヘッドおよびプリンタについて、図1乃至図8を参照しながら説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付すとともに、重複した説明は省略する。
【0009】
(一実施形態)
図1は一実施形態に係るインクジェットヘッドの分解斜視図である。図2は一実施の形態に係るインクジェットの他の分解斜視図である。図1図2はそれぞれ一方のサイドカバーとその反対側のサイドカバーから見た例を示す。これらの図中、同じ符号を有する要素は互いに同じ要素を表す。本実施形態に係るインクジェットヘッドは、インクを上方のインク供給側から下方のインク吐出面10側に吐出するヘッド本体11と、一端がこのヘッド本体11に接続される配線フィルム12、および配線フィルム12毎にこの配線フィルム12が展開状態においてインク吐出面10側の第1面13とは反対側のインク供給側の第2面14にドライバIC15(駆動回路)をそれぞれが有する4つの可撓性基板16と、を備える。
このインクジェットヘッドはそれぞれこれらの可撓性基板16の他端がインク供給側へ折曲げられたときに配線フィルム12の第1面13に対向するヒートシンク17、18と、それぞれこれらのヒートシンク17、18に設けられ各配線フィルム12を第1面13側から第2面14側に押圧する2つの押さえ部材19とを備える。更に本実施形態に係るインクジェットヘッドは、それぞれこれらの押さえ部材19の押圧力によりドライバIC15に圧接する接触面20を有し、ヘッド本体11およびヒートシンク17、18を一体化して固定する熱伝導ブロック21と、それぞれ熱伝導ブロック21の接触面20に一端が接続されヒートシンク17、18に他端が接続する2つのヒートパイプ22、23と、を備えている。
【0010】
図3は一実施形態に係るインクジェットヘッドの斜視図である。図4はインクジェットヘッドのヘッド本体の分解斜視図である。図4図3の例とは天地を反対にした例が示されている。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。ヘッド本体11はマスクプレート24により覆われており、このマスクプレート24内に、インク供給路34およびインク排出路35、36を持つマニフォールド25と、このマニフォールド25の図4上方に張り付けられたベースプレート26と、それぞれマニフォールド25の下方に連結されたインク供給管路27、インク排出管路28とが設けられている。インク供給管路27は上端のパイプ、このパイプに連結するチューブ、及びマニフォールド25の一部を成すコネクションパイプからなる。インク排出管路28もインク供給管路27と同様である。マニフォールド25はインク流路の分岐部兼結合部である。マニフォールド25はコネクションパイプからのインクをインク供給路34によりベースプレート26へ送り、ベースプレート26からのインクをインク排出管路28へ送る。ベースプレート26には、それぞれ隔壁、隔壁間の圧力室及び圧力室毎の電極を持つ圧電体29、30、これらの圧電体29、30を囲む枠体31、ノズル配列方向に配列された複数の吐出口32を持つオリフィスプレート33が設けられている。このオリフィスプレート33の上面がインク吐出面10である。
【0011】
4つの可撓性基板16(図1図2)は何れも耐熱性のフレキシブルプリント配線板(FPC)であり、例えばポリイミド(PI)など耐熱性の配線フィルム(TCP:Tape Carrier Package)12にドライバIC(Dr.IC)15をCOF(chip on film)によりパッケージ化している。各可撓性基板16(図1)下方一端はヘッド本体11内の電極に配線される。各可撓性基板16の同図上方の他端はリジットなプリント配線基板37に接続されている。これらのプリント配線基板37はドライバIC15の周辺回路であり、電装部品を有する。電装部品とはフラットケーブル64(図3)へのコネクタ45やIC部品46等である。プリント配線基板37には放熱用及びインク付着防止用の金属製のカバー板47を設けても良い。プリント配線基板37はフラットケーブル64を介して電気的にプリンタ本体側との間で制御信号を送受信しドライバIC15により圧電体29、30の各溝を個別に駆動可能になっている。図2の例では、4つの可撓性基板16は何れも折り曲げられた姿勢であり、ヘッド本体11から水平方向に引き出された展開状態では、同図下方のインク吐出面10を向く側が可撓性基板16の第1面13を成す。この展開姿勢から折り曲げられた起立姿勢において内側のヘッド本体11を向く側が第2面14を成す。ドライバIC15は何れも第2面14側に設けられている。
【0012】
図1図2のヒートシンク17、18は、4つのドライバIC15からの発熱を保持し外気との間で熱交換を行うとともに、4つのドライバIC15および2つのプリント配線基板37上に実装されたこれらのドライバIC15周辺の電装部品を覆うサイドカバーを兼ねている。ヒートシンク17、18は何れもドライバIC15とは可撓性基板16により非接触である。ヒートシンク17、18はいずれもアルミニウム製の成形体であり、ネジ又はボルトにより互いにカシメ合い、相互に密着固定されている。ヒートシンク17、18は、4つの可撓性基板16、プリント配線基板37、熱伝導ブロック21、押さえ部材19及びヒートパイプ22、23を内側にして囲む。これらのヒートシンク17、18の各背面にはフィン38が形成されてもよい。ヒートシンク17、18は熱伝導ブロック21を挟んで対称的な形状を有する。ヒートシンク17、18にはトップカバー39が取付けられる。
【0013】
ヒートシンク17、18毎に設けられた2つの押さえ部材19は何れもICチップ押さえ部材である。ヒートシンク18側の押さえ部材19は押圧力を弾性の復元力により発生させるバネ性の材料からなる板バネであり、ドライバIC15からヒートシンク18までの間の熱抵抗よりも小さい熱抵抗を有する。熱抵抗とは熱の物質中の伝導しにくさを示す指標である。熱は熱抵抗が相対的に小さいほど伝導しやすく、熱抵抗が相対的に大きいほど伝導しにくい。押さえ部材19とヒートシンク18の内側面との間は例えばリベット止め、ハトメ止め又は溶接による。ヒートシンク17側の押さえ部材19もヒートシンク18側の押さえ部材19と同じである。
【0014】
また、本実施形態に係るインクジェットヘッド(図1図2)は、ヒートシンク18側の押さえ部材19と、可撓性基板16の第1面13との間に熱伝導部材48を設けてもよい。熱伝導部材48は押さえ部材19の左右一対の板バネ片65からの押圧力を可撓性基板16側へ作用させ、ドライバIC15からの発熱をヒートシンク18へ伝熱する。熱伝導部材48は例えばアルミニウム製である。また、このインクジェットヘッドは、可撓性基板16の第2面14と、熱伝導ブロック21の接触面20との間に熱伝導部材49を設けてもよい。また、図1の接触面20のインク吐出面10からの高さ位置と、可撓性基板16を折り曲げた状態での2つのドライバIC15のインク吐出面10からの高さ位置とは同じにしてもよい。例えばアルミニウム製の熱伝導部材49は接触面20の高さ方向の範囲と、ドライバIC15の高さ方向の範囲に重畳するように設けられてもよい。インクジェットヘッドは、これらの熱伝導部材48、熱伝導部材49と同じものをそれぞれ、ヒートシンク17と熱伝導ブロック21との間に対称的に設けてもよい。
【0015】
図5は一実施形態に係るインクジェットヘッドの図3のAA´線に沿う縦断面図である。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。図2図5に示されるように、熱伝導ブロック21(DATUM−PLATE−BLOCK)は、基準プレート40(DATUM−PLATE)を介してヘッド本体11のノズル吐出方向をプリンタ本体側に対して位置決め固定するための金属製の成形体である。金属製の基準プレート40にはインク供給管路27、インク排出管路28用の2つのパイプ孔及びパイプ孔両側の締め付け孔を含む複数の貫通孔が設けられ、熱伝導ブロック21の両端にはボスが立設されている。これらの締め付け孔及びボス間をネジ41が螺合することで基準プレート40及び熱伝導ブロック21は密着固定され、ヘッド本体11のノズル吐出方向が位置決めされるようになっている。また、熱伝導ブロック21は図5左右の接触面20から受熱し、ヒートパイプ22、23に伝熱する。これらの接触面20は平坦な熱源面である。熱源面とは、ドライバIC15のチップ熱源面であり、配線フィルム12を介してドライバIC15のトップ面を向く面を指す。更に熱伝導ブロック21は図5左右の接触面20の内側に左右一対の溝部42を設けている。溝部42は何れもノズル配列方向に溝長さを有し、溝内にヒートパイプ22の下端及びヒートパイプ23の下端が嵌挿されている。
【0016】
図6は一実施形態に係るインクジェットヘッドのヒートパイプ22の斜視図である。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。ヒートパイプ22は側面視で湾曲形状を有する。ヒートパイプ22は同図下方側にドライバIC15のトップ面から受熱する入熱端43と、上方側に熱をインク供給管路27に放熱する放熱端44とを有する。入熱端43は溝部42内でこの溝壁に密着しており、放熱端44はインク供給管路27の上端パイプに密着している。ヒートパイプ22は入熱端43からの受熱した熱量を放熱端44に放熱する。ヒートパイプ23も湾曲形状を有し、熱伝導ブロック21の他の溝部42内に密着した入熱端43と、インク排出管路28に密着した放熱端44とを有する。
【0017】
図7は本実施形態に係るプリンタの構成図である。プリンタ50(本実施形態に係るプリンタ)は本実施形態に係るインクジェットヘッドを用いてインクを吐出させるカラーインクジェットプリンタである。プリンタ50は、上記4つのドライバIC15に接続され紙送り制御を行うコントローラ51と、筐体61の下部に設けられ用紙M(記録媒体)をセットしたカセット52と、筐体61の上部に設けられたトレイ53と、用紙Mをドラム外周面上に保持して回るドラム54と、カセット52からドラム54の外周面上を通ってトレイ53までの搬送路55と、この搬送路55に沿って用紙Mを搬送する搬送機構56とを備えている。コントローラ51は搬送機構56を駆動制御する。このプリンタ50は、ドラム54の外周面に沿って同図時計回り方向で上流側から下流側に向かって順番に、用紙Mをドラム54の外周面に押し用紙Mをドラム54の外周面上に吸着させる保持機構57と、用紙Mに画像を形成する画像形成部58と、用紙Mを除電する除電剥離部59と、ドラム54を清掃するクリーナ60とを備えている。
【0018】
この画像形成部58は、シアン用のヘッドユニット58C、マゼンタ用のヘッドユニット58M、イエロー用のヘッドユニット58Y、及びブラック用のヘッドユニット58Kを有する。これらのヘッドユニット58C、58M、58Y及び58Kはそれぞれ本実施形態に係るインクジェットヘッド(図1図6)の構成を有する。ヘッドユニット58Cは基準プレート40によって筐体61内に位置決め固定されており、ヘッド面を用紙Mに対して平行とし、そのノズル配列方向及び印字送り方向がそれぞれプリンタ50の主走査方向及び副走査方向に合わせられている。主走査方向は筐体61の手前及び奥行き間の方向であり、副走査方向はドラム54の外周面上で外接する方向である。コントローラ51は搬送機構56による副走査方向の用紙Mの紙送り速度を主走査方向の印字密度の1/2に設定してもよい。ヘッドユニット58M、58Y及び58Kもヘッドユニット58Cの例と同じである。
【0019】
また、プリンタ50は、ヘッドユニット58C、58M、58Y及び58Kへのそれぞれの4つのインクタンク62C、62M、62Y、62Kと、インクタンク62C、62M、62Y、62K毎のインク循環装置63とを有する。インク循環装置63は、チューブ、インク循環路及び循環ポンプ等を有する。
【0020】
次に上述の構成を有するインクジェットヘッドおよびプリンタ50の動作を説明する。例えばコントロールパネルへのユーザ操作を契機としてコントローラ51が印刷ジョブを生成する。コントローラ51は、ヘッドユニット58C、58M、58Y及び58Kのそれぞれへの印刷されるべきデータを生成する。コントローラ51はこれらのヘッドユニット58C、58M、58Y及び58Kへの駆動を始める。
【0021】
ヘッドユニット58Cは、一つの吐出口32について電圧駆動信号の印加により、圧電体29、30の複数の圧力室に電界の変化を発生させる。圧電体29、30の隔壁が変形し、電界の消滅によって変形が元通りになることが繰返される。湾曲変形によって圧力室の容積が拡張又は縮小しインク液圧が減圧又は加圧される。インクの液圧の加圧によってヘッドユニット58Cは用紙Mへ液滴を噴射する。ヘッドユニット58M、58Y及び58Kもヘッドユニット58Cの例と同様である。ヘッドユニット58M、58Y及び58Kはそれぞれドラム54の対応する回転位置に対面したときに、用紙Mへ液滴を噴射する。カラーの画像が用紙M上に形成される。
【0022】
図8は本実施形態に係るインクジェットヘッドの熱伝導経路を示す図であり、熱伝導及び熱伝達状態を示している。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。4つのドライバIC15は駆動により摂氏90度に温度が上昇するため、ヒートパイプ22、23はそれぞれ同図下方のドライバIC15の熱源面、即ち接触面20から熱を伝導により受熱する。伝導とは熱を接触面から直接受けることを指す(実線部分参照)。ヒートパイプ22、23はそれぞれ入熱端43から入熱した熱量を伝導により上方へ輸送する。ヒートパイプ22、23は放熱端44から熱を伝導によってそれぞれヒートシンク17,18へ運ぶ。これらのヒートシンク17、18は同図上方においてそれぞれ内側から熱伝達され、外側の外気との間で熱交換を行う。熱伝達とは気体を介した熱の伝達である(破線部分参照)。インクジェットヘッドはこれらのヒートシンク17,18が直接ドライバIC15の熱源面に接触しない非接触であっっても、ドライバIC15の発熱を発散することができるようになる。また、ヒートシンク17、18がそれぞれ放熱端44において受熱したインクを対応する色のインク循環装置63を循環させることによって本実施形態に係るインクジェットヘッドは、熱を発散させることでドライバIC15が過熱によって破壊されることが防止される。
【0023】
以上を総括すると、本実施形態に係るインクジェットヘッドは、ICチップ(以下、ドライバIC15のチップ筐体を述べる場合に使用する)と、ヒートシンク17、18とが離れていても熱伝導できる構造とした。また、本実施形態に係るインクジェットヘッドは、ICチップの熱源面以外からもこれらのヒートシンク17、18に熱伝導することができるようになる。
【0024】
従来例に係るインクジェットヘッドはICチップの熱源面が直接サイドカバーの内側カバー面への接触面として放熱する構造を有する。ところで、ドライバICとCOFによって配線フィルムにパッケージ化する製造工程において、トップ面とボトム面とを入れ替えてICチップを製造すると、トップ面、ボトム面間が反対になった状態でICチップがキャリアテープに実装されるため、熱源面はサイドカバーの内側カバー面に対峙しない。熱源面を内側カバー面に直接接触させることができない。ICチップの熱源面とサイドカバーとが近い位置に設けられていないと、熱源面を内側カバー面に直接接触させることができない。つまり従来例に係るインクジェットヘッドはICチップの熱源面がサイドカバーであるヒートシンク側に向いていないため、熱源面を直接ヒートシンクに接触させて放熱することができない。
【0025】
本実施形態に係るインクジェットヘッドはこの問題の解決のための構造を有する。ICチップの裏側を押さえ部材19で押してICチップの熱源面を、熱伝導部材49を介して熱伝導ブロック21に押し付けて熱伝導を行う。次に熱伝導ブロック21の熱は熱伝導ブロック21の溝部42に設置したヒートパイプ22、23の入熱端43側に熱伝導される。熱はヒートパイプ22、23の放熱端44側からヒートシンク17、18に熱伝導される。最終的にヒートシンク17、18から空気中に熱伝達(放熱)される。
【0026】
前述の熱伝導及び熱伝達の状態図(図8)のように、ヒートパイプ22、23は扁平、曲げ加工が可能なためICチップとヒートシンク17、18とが離れていてもヒートパイプ22、23は熱伝導ブロック21と連結することができ、また、ヒートパイプ22、23はインクジェットヘッド内の空間を引き回して配置するが自由自在である。
【0027】
更には、熱伝導効率を向上するためにはヒートパイプ22、23を大きくすれば良いが、その分スペースを必要とするため、インクジェットヘッド自体が大きくなることが設計上選択可能となり得る。しかし本実施形態に係るインクジェットヘッドによれば、ヒートパイプ22、23を大きくせずにインクジェットヘッド自体の大型化という選択肢をクリアし、ICチップ熱源面以外からもヒートシンク17、18に熱伝導できるように押さえ部材19を設けると共に、押さえ部材19の材質は熱抵抗の小さい材質かつバネ性を有するものを使うこととした。熱抵抗が小さいとは、温度差がある2つの面間を運ばれる熱が相対的に移動しやすいことである。このような構成をとることにより、ICチップとヒートシンク17、18とが離れていてもインクジェットヘットを大型化すること無く、効率よく熱伝導することができる。
【0028】
なお、ヒートシンク17、18毎に設けられた2つの押さえ部材19はそれぞれ2箇所の板バネ片65によって、押さえ部材19として機能していたが、4つのドライバIC毎に4つの板バネ片65を個別に設けてもよい。ヒートパイプ22、23の他端はヒートシンク17、18に接続されていたが、ヒートパイプ22、23の他端の位置は種々変更できる。また、ヒートパイプ22、23は入熱端43、放熱端44、これらの入熱端43及び放熱端44間の流路およびこの流路を移動する冷媒とを有してもよい。入熱端43側において液相の冷媒が受熱により気化して放熱端44側に上昇し、放熱端44側において気相の冷媒が熱交換により凝縮して入熱端43側へ下降するようにヒートパイプ22、23は構成されてもよい。溝部42の形状、位置は種々変形できる。
【0029】
本実施形態に係るプリンタはPOS(point of sales)レジに用いられるPOS端末のプリンタでもよい。例えば売上登録部、会計演算部及びドロワを有するPOS端末に、このプリンタをレシートプリンタとして接続してもよい。本実施形態に係るプリンタは、ラベルプリンタ又はバーコードプリンタに用いても良い。
【0030】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0031】
11…ヘッド本体、12…配線フィルム(配線材)、15…ドライバIC15(駆動回路)、16…可撓性基板、17、18…ヒートシンク、19…押さえ部材、20…接触面、21…熱伝導ブロック、22、23…ヒートパイプ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8