(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
改善された熱安定性を有するゲルを形成する方法であって、(A)1分子当たり少なくとも平均0.1個のケイ素結合アルケニル基を有する有機ポリシロキサン、(B)1分子当たり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子を有する架橋剤、(C)ヒドロシリル化触媒、及び(D)鉄アセチルアセトナートの加熱された反応生成物を組み合わせることを含み、前記鉄アセチルアセトナートが、加熱前に、(A)及び(B)の総重量に基づいて0.05〜30重量%の量で存在し、(A)及び(B)が(C)及び(D)の存在下で、ヒドロシリル化を介して反応して前記ゲルを形成し、かつ、(D)が、(E)シリコーン流体の存在下、少なくとも120℃の温度で鉄アセチルアセトナートを加熱することにより形成される、方法。
(A)及び(B)が、(C)及び(D)の存在下で、(E)シリコーン流体と、ヒドロシリル化反応を介して反応し、前記(E)が官能性シリコーン流体である、請求項1または2に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0006】
「開示の要約及び利点」及び要約は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0007】
「ヒドロシリル化反応生成物」という用語は、(A)及び(B)が、(C)及び(D)の存在下で、ヒドロシリル化反応において反応することを説明する。典型的に、(A)及び(B)は、ゲルが、部分的又は完全に形成及び硬化するように反応する。
【0008】
(A)有機ポリシロキサン:
(A)有機ポリシロキサンは、単一ポリマーであってよく、又は以下の特性:構造、粘度、平均分子量、シロキサン単位、及び配列のうちの少なくとも1つが異なる2つ以上のポリマーを含んでもよい。(A)有機ポリシロキサンは、個別のポリマー分子当たり少なくとも平均0.1個のケイ素結合アルケニル基を有し、すなわち、平均で、10個の個別のポリマー分子当たり少なくとも1個のケイ素結合アルケニル基が存在する。より典型的に、(A)有機ポリシロキサンは、1分子当たり平均1個以上のケイ素結合アルケニル基を有する。様々な実施形態では、(A)有機ポリシロキサンは、1分子当たり少なくとも平均2個のケイ素結合アルケニル基を有する。(A)有機ポリシロキサンは、直鎖形態若しくは分枝直鎖形態、又は樹枝状形態である分子構造を有してもよい。(A)有機ポリシロキサンは、単一の(種類の)ポリマー、コポリマー、若しくは2つ以上のポリマーの組み合わせであってもよく、又はこれらを含んでもよい。(A)有機ポリシロキサンは、有機アルキルポリシロキサンとして更に定義されてもよい。
【0009】
(A)有機ポリシロキサンのケイ素結合アルケニル基は、特に限定されないが、典型的に、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、又はヘプテニル基のうちの1つ以上として定義される。それぞれのアルケニル基は、同一であってもよく、又は異なっていてもよく、かつそれぞれは、他のものすべてから独立して選択されてもよい。各アルケニル基は、末端であっても又は側枝であってもよい。一実施形態では、(A)有機ポリシロキサンは、末端及び側枝アルケニル基の両方を含む。
【0010】
(A)有機ポリシロキサンは、脂肪族不飽和を含まない一価の有機基を含むが、これに限定されないケイ素結合有機基も含んでよい。これらの一価の有機基は、少なくとも1個、及び2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、及び20個もの炭素原子を有してよく、メチル、エチル、並びにプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、及びエイコサニルの異性体などのアルキル基;シクロペンチル、及びシクロヘキシルなどのシクロアルキル基;フェニル、トリル、キシリル、ベンジル、及び2−フェニルエチルなどの芳香族(アリール)基;並びに3,3,3,−トリフルオロプロピル、及び類似のハロゲン化アルキル基によって例示されるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、有機基は、メチル基又はフェニル基である。
【0011】
(A)有機ポリシロキサンは、上記のようにアルキル基、若しくはアリール基、及び/又はアルコキシ基、及び/又はメトキシ基、エトキシ基、若しくはプロポキシ基によって例示されるヒドロキシル基、又はヒドロキシル基として更に定義され得る末端基も含んでもよい。
【0012】
様々な実施形態では、(A)有機ポリシロキサンは、以下の式のうちの1つを有してもよい。
式(I):R
12R
2SiO(R
12SiO)
d(R
1R
2SiO)
eSiR
12R
2、
式(II):R
13SiO(R
12SiO)
f(R
1R
2SiO)
gSiR
13、又は
これらの組み合わせ。
【0013】
式(I)及び(II)では、それぞれのR
1は独立して、脂肪族不飽和を含まない一価の有機基であり、それぞれのR
2は独立して、脂肪族不飽和有機基である。R
1の好適な一価の有機基としては、1〜20、1〜15、1〜10、5〜20、5〜15、又は5〜10個の炭素原子を有するアルキル基、例えば、メチル、エチル、並びにプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、オクチル、ウンデシル、及びオクタデシルの異性体;シクロペンチル、及びシクロヘキシルなどのシクロアルキル基;並びにフェニル、トリル、キシリル、ベンジル、及び2−フェニルエチルなどのアリール基が挙げられるが、これらに限定されない。それぞれのR
2は独立して、脂肪族不飽和一価の有機基であり、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、又はヘプテニル基などのアルケニル基によって例示される。R
2は、ハロゲン原子又はハロゲン基を含んでよいことも企図される。
【0014】
下付文字「d」は、典型的に、少なくとも0.1、より典型的には少なくとも0.5、更により典型的には少なくとも0.8、及び最も典型的には少なくとも2の平均値を有する。代替的に、下付文字「d」は、0.1〜2000の範囲の平均値を有し得る。下付文字「e」は、0又は正の数であり得る。更に、下付文字「e」は、0〜2000の範囲の平均値を有し得る。下付文字「f」は、0又は正の数であり得る。更に、下付文字「f」は、0〜2000の範囲の平均値を有し得る。下付文字「g」は、少なくとも0.1、典型的には少なくとも0.5、より典型的には少なくとも0.8、最も典型的には少なくとも2の平均値を有する。代替的に、下付文字「g」は、0.1〜2000の範囲の平均値を有してもよい。
【0015】
様々な実施形態では、(A)有機ポリシロキサンは、それ自体がビニルジメチルシリル末端遮断されたポリジメチルシロキサンとして更に定義され得る、アルケニルジアルキルシリル末端遮断されたポリジアルキルシロキサンとして更に定義される。(A)有機ポリシロキサンは、分子末端の片方又は両方でジメチルビニルシロキシ基により末端保護されたジメチルポリシロキサン;片方又は両方の分子末端でメチルフェニルビニルシロキシ基で末端保護されたジメチルポリシロキサン;片方又は両方の分子末端でジメチルビニルシロキシ基により末端保護されたメチルフェニルシロキサン、及びジメチルシロキサンのコポリマー;片方又は両方の分子末端でジメチルビニルシロキシ基により末端保護されたジフェニルシロキサン及びジメチルシロキサンのコポリマー;片方又は両方の分子末端でジメチルビニルシロキシ基により末端保護されたメチルビニルシロキサン、及びジメチルシロキサンのコポリマー;片方又は両方の分子末端でジメチルビニルシロキシ基により末端保護されたメチルビニルシロキサン、及びジメチルシロキサンのコポリマー;片方又は両方の分子末端でジメチルビニルシロキシ基により末端保護されたメチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ポリシロキサン;片方又は両方の分子末端でジメチルビニルシロキシ基により末端保護されたメチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサン、及びジメチルシロキサンのコポリマー;片方又は両方の分子末端でシラノール基により末端保護されたメチルビニルシロキサン、及びジメチルシロキサンのコポリマー;片方又は両方の分子末端でシラノール基により末端保護されたメチルビニルシロキサン、メチルフェニルシロキサン、及びジメチルシロキサンのコポリマー;又は以下の式:(CH
3)
3SiO
1/2、(CH
3)
2(CH
2=CH)SiO
1/2、CH
3SiO
3/2、(CH
3)
2SiO
2/2、CH
3PhSiO
2/2、及びPh
2SiO
2/2により表されるシロキサン単位からなる有機シロキサンコポリマーとして更に定義されてもよい。
【0016】
(A)有機ポリシロキサンは、R
x3SiO
1/2単位及びSiO
4/2から本質的になるか、若しくはそれらからなるものとして定義されるMQ樹脂、R
xSiO
3/2単位、及びR
x2SiO
2/2単位から本質的になるか、若しくはそれらからなるものとして定義されるTD樹脂、R
x3SiO
1/2単位、及びR
xSiO
3/2単位から本質的になるか、若しくはそれらからなるものとして定義されるMT樹脂、R
x3SiO
1/2単位、R
xSiO
3/2単位、及びR
x2SiO
2/2単位から本質的になるか、若しくはそれらからなるものとして定義されるMTD樹脂などの樹脂、又はこれらの組み合わせを更に含んでよい。R
xは、任意の一価の有機基を表し、例えば、一価の炭化水素基及び一価のハロゲン化炭化水素基が挙げられるが、これらに限定されない。一価の炭化水素基としては、1〜20、1〜15、1〜10、5〜20、5〜15、又は5〜10個の炭素原子を有するアルキル基、例えば、メチル、エチル、並びにプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、オクチル、ウンデシル、及びオクタデシルの異性体;シクロヘキシルなどのシクロアルキル基;ビニル、アリル、ブテニル、及びヘキセニルなどのアルケニル基;エチニル、プロピニル、及びブチニルなどのアルキニル基;並びにフェニル、トリル、キシリル、ベンジル、及び2−フェニルエチルなどのアリール基が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、(A)有機ポリシロキサンは、ハロゲン原子を含まない。別の実施形態では、(A)有機ポリシロキサンは、1つ以上のハロゲン原子を含む。
【0017】
(B)架橋剤:
(B)架橋剤は、1分子当たり少なくとも平均2個のケイ素結合水素原子を有し、シラン又はシロキサン、例えば、ポリ有機シロキサンとして更に定義され得るか、又はそれを含んでよい。様々な実施形態では、(B)架橋剤は、1分子当たり2、3、又は3個より多くのケイ素結合水素原子を含んでもよい。(B)架橋剤は、直鎖状、分枝状、又は部分的に分枝状の直鎖状、環状、樹枝状、又は樹脂状の分子構造を有してもよい。ケイ素結合水素原子は、末端であっても又は側枝であってもよい。代替的に、(B)架橋剤は、末端及び側枝ケイ素結合水素原子を含んでもよい。
【0018】
ケイ素結合水素原子に加えて、(B)架橋剤は、メチル、エチル、及びプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、ウンデシル、ドデシルの異性体、又は1〜20、1〜15、1〜10、5〜20、5〜15、若しくは5〜10個の炭素原子を有するアルキル基などの類似のアルキル基などの、不飽和脂肪族結合を含まない一価の炭化水素基;シクロペンチル、シクロヘキシル、若しくは類似のシクロアルキル基;フェニル、トリル、キシリル、若しくは類似のアリール基;ベンジル、フェネチル、若しくは類似のアラルキル基;又は3,3,3−トリフルオロプロピル、3−クロロプロピル、若しくは類似のハロゲン化アルキル基も含んでよい。アルキル及びアリール基が好ましく、メチル及びフェニル基が特に好ましい。
【0019】
(B)架橋剤は、HR
32SiO
1/2、R
33SiO
1/2、HR
3SiO
2/2、R
32SiO
2/2、R
3SiO
3/2、及びSiO
4/2を含むが、これらに限定されないシロキサン単位も含んでよい。上記の式で、各R
2は独立して、脂肪族不飽和のない一価の有機基から選択される。様々な実施形態では、(B)架橋剤は、以下の式:
式(III)R
33SiO(R
32SiO)h(R
3HSiO)iSiR
33、
式(IV)R
32HSiO(R
32SiO)j(R
3HSiO)kSiR
32H、
若しくはこれらの組み合わせ、を含む、又はその化合物である。
【0020】
上記式(III)及び式(IV)中、下付文字「h」は、0〜2000の範囲の平均値を有し、下付文字「i」は、2〜2000の範囲の平均値を有し、下付文字「j」は、0〜2000の範囲の平均値を有し、下付文字「k」は、0〜2000の範囲の平均値を有する。それぞれのR
3は独立して、一価の有機基である。好適な一価の有機基としては、メチル、エチル、並びにプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、オクチル、デシル、ウンデシル、ドデシル、及びオクタデシルの異性体などの1〜20、1〜15、1〜10、5〜20、5〜15、又は5〜10個の炭素原子を有するアルキル基;シクロペンチル及びシクロヘキシルなどのシクロアルキル;ビニル、アリル、ブテニル、及びヘキセニルなどのアルケニル;エチニル、プロピニル、及びブチニルなどのアルキニル;並びにフェニル、トリル、キシリル、ベンジル、及び2−フェニルエチルなどのアリールが挙げられる。
【0021】
(B)架橋剤は、両方の分子末端でトリメチルシロキシ基により末端保護されたメチル水素ポリシロキサン;
両方の分子末端でトリメチルシロキシ基により末端保護されたメチル水素ポリシロキサン及びジメチルシロキサンのコポリマー;両方の分子末端でジメチルヒドロゲンシロキシ基により末端保護されたジメチルポリシロキサン;両方の分子末端でジメチル水素シロキシ基により末端保護されたメチル水素ポリシロキサン;片方若しくは両方の分子末端でジメチル水素シロキシ基により末端保護されたメチル水素シロキサン及びジメチルシロキサン;環状メチル水素ポリシロキサン;及び/又は以下の式:(CH
3)
3SiO
1/2、(CH
3)
2HSiO
1/2、及びSiO
4/2で表され、シロキサン単位から合成された有機シロキサン;テトラ(ジメチル水素シロキシ)シラン、若しくはメチル−トリ(ジメチル水素シロキシ)シランとして代替的に更に定義されてもよい。
【0022】
(B)架橋剤は、以下の特性:構造、平均分子量、粘度、シロキサン単位、及び配列のうちの少なくとも1つが異なる2つ以上の有機水素ポリシロキサンの組み合わせであってもよく、又はこれを含んでもよいことが企図される。(B)架橋剤は、シランを含んでもよい。比較的低い重合度(DP)を有する(例えば、DPが3〜50の範囲の)、ジメチル水素シロキシ末端ポリジメチルシロキサンは、一般的に鎖延長剤と称され、(B)架橋剤の一部は、鎖延長剤であってもよく、又はこれを含んでもよい。一実施形態では、(B)架橋剤は、ハロゲン原子を含まない。別の実施形態では、(B)架橋剤は、1分子当たり1つ以上のハロゲン原子を含む。ゲルは、全体として、ハロゲン原子を含まなくてもハロゲン原子を含んでもよいことが企図される。
【0023】
(C)ヒドロシリル化触媒:
(C)ヒドロシリル化触媒は、特に限定されず、当該技術分野で既知のいずれであってもよい。一実施形態では、(C)ヒドロシリル化触媒としては、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、又はイリジウムから選択される白金族金属、これらの有機金属化合物、又はこれらの組み合わせが挙げられる。別の実施形態では、(C)ヒドロシリル化触媒は、白金金属微粉末、白金黒、白金ジクロリド、白金テトラクロリド;塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸六水和物;並びにオレフィンの白金錯体、カルボニルの白金錯体、アルケニルシロキサンの白金錯体、例えば1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、低分子量有機ポリシロキサンの白金錯体、例えば、1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、塩化白金酸とβ−ジケトンとの錯体、塩化白金酸とオレフィンとの錯体、及び塩化白金酸と1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯体などのかかる化合物の錯体、として更に定義される。
【0024】
代替的に、(C)ヒドロシリル化触媒は、例えば、式:RhX
3[(R
4)
2S]
3、(R
53P)
2Rh(CO)X、(R
53P)
2Rh(COH)H、Rh
2X
2Y
4、H
fRh
g(En)
hCl
i、又はRh[O(CO)R]
3−j(OH)
jにより表されるものなどのロジウム化合物として更に定義されてよく、式中、Xは独立して、水素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であり、各Yは独立して、メチル基、エチル基、又は類似のアルキル基、CO、C
8H
14、若しくは0.5 C
8H
12であり、各R
4は独立して、メチル、エチル、プロピル、若しくは類似のアルキル基;シクロヘプチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、若しくは類似のシクロアルキル基、又はフェニル、キシリル、若しくは類似のアリール基;各R
5は独立して、メチル基、エチル基、若しくは類似のアルキル基;フェニル、トリル、キシリル、若しくは類似のアリール基;メトキシ、エトキシ、若しくは類似のアルコキシ基であり、式中、「En」は、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、若しくは類似のオレフィンであり、下付文字「f」は、0又は1であり、下付文字「g」は、1又は2であり、下付文字「h」は、1〜4の整数であり、下付文字「i」は、2、3、又は4であり、下付文字「j」は、0又は1である。特に好適であるが、非限定的なロジウム化合物の例は、RhCl(Ph
3P)
3、RhCl
3[S(C
4H
9)
2]
3、[Rh(O
2CCH
3)
2]
2、Rh(OCCH
3)
3、Rh
2(C
8H
15O
2)
4、Rh(C
5H
7O
2)
3、Rh(C
5H
7O
2)(CO)
2、及びRh(CO)[Ph
3P](C
5H
7O
2)である。
【0025】
(C)ヒドロシリル化触媒は、以下の式:Ir(OOCCH
3)
3、Ir(C
5H
7O
2)
3、[Ir(Z)(En)
2]
2、又は[Ir(Z)(Dien)]
2により表されるイリジウム基化合物として更に定義されてもよく、式中、各「Z」は、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、若しくはメトキシ基、又は類似のアルキル基であり、各「En」は、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、又は類似のオレフィンであり、「Dien]は、(シクロオクタジエン)テトラキシ(トリフェニル)である。(C)ヒドロシリル化触媒は、パラジウム、パラジウムブラック及びトリフェニルホスフィンであってもよい。(C)ヒドロシリル化触媒及び/又は前述の化合物のうちいずれかは、樹脂マトリックス若しくはコアシェル型構造内にマイクロカプセル化され得るか、又はメチルメタクリレート樹脂、炭酸樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂、若しくは類似の樹脂などの熱可塑性有機樹脂粉末中に混合され、組み込まれてもよい。典型的に、(C)ヒドロシリル化触媒は、(A)及び(B)の総重量に基いて、0.01〜1,000ppm、代替的に0.1〜500ppm、代替的に1〜500ppm、代替的に2〜200、代替的に5〜150pppmの量で存在する/利用される。
【0026】
(D)鉄アセチルアセトナートの加熱された反応生成物
(D)鉄アセチルアセトナートの加熱された反応生成物(acac)は、典型的に、酸素、空気、又は不活性雰囲気の存在下で、鉄アセチルアセトナートを加熱することにより形成される。
【0027】
鉄アセチルアセトナートは、鉄(III)アセチルアセトナート及び/若しくは鉄(II)アセチルアセトナートのうちの1つ、又は混合物として更に定義されてもよい。当該技術分野において2,4−ペンタンジオン鉄(II)誘導体、Fe(acac)
2、及び第一鉄アセチルアセトナートとしても既知の鉄(II)アセチルアセトナートは、式[CH
3COCH=C(O)CH
3]
2Feを有し、CAS番号14024−17−0を持つ。当該技術分野において2,4−ペンタンジオン鉄(III)誘導体、Fe(acac)
3、第一鉄アセチルアセトナート、トリス(アセチルアセトナート)鉄(III)、及び鉄(III)2,4−ペンタジオナートとしても既知の鉄(III)アセチルアセトナートは、式Fe(C
5H
7O
2)
3を有し、CAS番号14024−18−1を持つ。
【0028】
いずれの特定の理論にも拘束されるものではないが、鉄アセチルアセトナートは、加熱時に、少なくとも部分的に酸化して酸化鉄(複数可)を形成すると考えられる。更に、Si−O−Fe結合が形成されてもよいとも考えられる。また加熱時に、アセチルアセトナート(リガンド)の全部又は一部が蒸発することも考えられる。一実施形態では、鉄アセチルアセトナートは、空気中の酸素と反応して、鉄アセチルアセトナートを酸化し、酸化鉄を形成する。鉄アセチルアセトナートは、加熱時に酸化鉄及び他の化合物を形成してもよい。
【0029】
鉄アセチルアセトナートは、加熱前に、(A)及び(B)の総重量に基づいて、約0.05〜約30重量パーセントの量で存在する。様々な実施形態では、酸化鉄(複数可)は、(A)及び(B)の総重量に基づいて、約0.05〜約5、約0.1〜約5、約0.1〜約1、約0.05〜約1、約1〜約5、約2〜約4、約2〜約3、約5〜約25、約10〜約20、又は約15〜約20重量パーセントの量で存在してもよい。鉄アセチルアセトナートの100重量パーセント未満が、加熱時に酸化鉄(複数可)に変換されてもよいことが企図される。例えば、加熱時に、鉄アセチルアセトナートの一部は反応しない場合があり、反応してSi−O−Fe結合を形成するものがあってよく、及び/又は本明細書に説明されない他の化合物を形成するものがあってもよい。代替的に、鉄アセチルアセトナートの全部、又はほぼ全部(>85、90、95、若しくは99重量%)が、1つ以上の形態の酸化鉄(複数可)に変換されてよい。変換率は、X線散乱及びTEM/EDX(透過電子顕微鏡/エネルギー分散X線分光法)を用いて判定されてもよい。いずれの特定の理論にも限定されるものではないが、アセチルアセトナートリガンドの存在の増加が、ゲルの発泡及び分解を増加させ得ると考えられる。典型的に、最大量のアセチルアセトナートは、他の種の中に蒸発及び/又は変換される。
【0030】
酸化鉄は、酸化鉄(II)、酸化鉄(II、III)、又は酸化鉄(III)のうちの1つ以上として更に定義されてもよい。酸化鉄は、粒径に対して特に限定されない。様々な実施形態では、酸化鉄は、約10,000nm未満、約5,000nm未満、約1,000nm未満、約500nm未満、約100nm未満、約50nm未満、又は約30nm未満の平均粒径を有する。別の実施形態では、酸化鉄は、ナノサイズの酸化鉄として更に説明される。ポリジメチルシロキサン流体中の酸化鉄粒子の非限定的な一実施形態の電子顕微鏡写真を
図1に示す。
【0031】
(E)シリコーン流体:
ゲルは、(E)シリコーン流体を利用して形成されてもよい。(E)シリコーン流体は、代替的には、官能性シリコーン流体及び/又は非官能性シリコーン流体のうちの1つのみ、又はこれらの混合物として説明されてもよい。一実施形態では、(E)は、官能性ではないポリジメチルシロキサンとして更に定義される。別の実施形態では、(E)は、ビニル官能性ポリジメチルシロキサンとして更に定義される。用語「官能性シリコーン流体」は、典型的には流体がヒドロシリル化反応において反応するために官能化されることを説明し、すなわち、不飽和基及び/又はSi−H基を含む。しかしながら、流体は、1つ以上の不飽和基及び/又はSi−H基に加えて、又はその不在下で、1つ以上の更なる官能基を含んでもよいことが企図される。様々な非限定的な実施形態では、(E)は、米国特許第6,020,409号、同第4,374,967号、及び/又は同第6,001,918号のうちの1つ以上に説明される通りであり、そのそれぞれは参照により本明細書に明示的に組み込まれる。(E)は、いかなる構造又は粘度にも具体的に限定されない。
【0032】
(E)は、ヒドロシリル化反応において(A)及び(B)との反応物質として関与してもしなくてもよい。一実施形態では、(E)は、官能性シリコーン流体であり、(C)及び(D)の存在下で(A)及び/又は(B)と反応する。別の言い方をすれば、ヒドロシリル化反応生成物は、(A)、(B)、及び(E)官能性シリコーン流体のヒドロシリル化反応生成物として更に定義されてもよく、(A)、(B)、及び(E)は、(C)及び(D)の存在下でヒドロシリル化を介して反応する。別の実施形態では、(A)及び(B)は、(C)、(D)、及び(E)非官能性シリコーン流体の存在下で、ヒドロシリル化を介して反応する。
【0033】
(A)〜(E)のうちの1つ以上は、混合物を形成するためにともに組み合わせられてもよく、混合物は、ゲルを形成するために(A)〜(E)のうちの残りの構成成分と更に反応してもよく、(E)は混合物、又は残りの構成成分としてのいずれかで任意選択的な構成成分である。換言すれば、(A)〜(E)のうちの1つ以上の任意の組み合わせは、ゲルが形成される限り、(A)〜(E)のうちの1つ以上の任意の他の組み合わせと反応してもよい。
【0034】
任意選択的な添加剤:
(A)〜(E)のうちの任意の1つ以上、又は(A)〜(E)のうちの2つ以上を含む混合物は独立して、1つ以上の添加剤と組み合わされてよく、阻害物質、スペーサー、電気及び/若しくは熱伝導及び/又は非伝導充填剤、強化剤及び/又は非強化剤、充填剤処理剤、接着促進剤、溶媒若しくは希釈剤、界面活性剤、融剤、酸受容体、ヒドロシル化安定剤、熱安定剤及び/又はUV安定剤などの安定剤、UV増感剤などを含むが、これらに限定されない。前述の添加剤の例は、参照により本明細書に明示的に組み込まれるが、本開示を限定するものではない、2011年1月26日に出願された米国仮特許出願第61/436,214号に説明されている。(A)〜(C)のうちの1つ以上又は添加剤のうちの任意の1つ以上は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる、PCT/US2009/039588号に説明される通りであり得ることも企図される。本開示のゲル及び/又は電子物品は、前述の添加剤のうちのいずれかの1つ以上を含まなくてもよいことも企図される。
【0035】
ゲルを形成する方法:
上で最初に紹介したゲルを形成する方法を再度参照して、典型的に、(A)を提供する工程と、(B)を提供する工程と、(C)を提供する工程と、鉄アセチルアセトナートを提供する工程と、任意に(E)を提供する工程と、を含む。それぞれは独立して、又は他の工程うちの1つ以上と併せて提供されてもよい。
【0036】
(I)鉄アセチルアセトナートを加熱して(D)を形成する:
本方法は、(I)鉄アセチルアセトナートを加熱して、(D)鉄アセチルアセトナートの加熱された反応生成物を形成する工程も含む。鉄アセチルアセトナートは、典型的に、少なくとも約120℃、少なくとも130℃、少なくとも140℃、少なくとも150℃、少なくとも160℃、少なくとも170℃、少なくとも180℃、少なくとも190℃、又は少なくとも200℃の温度で加熱される。様々な実施形態では、鉄アセチルアセトナートは、約120〜180、130〜170、140〜160、150〜160、120〜200、160〜190、又は約180℃の温度で加熱される。一実施形態では、鉄アセチルアセトナートは、アセチルアセトナート(リガンド)の全部又はほぼ全部(>85、90、95、若しくは99重量%)が蒸発するような温度に加熱される。別の実施形態では、鉄アセチルアセトナートは、鉄アセチルアセトナートを酸化して酸化鉄を形成するために十分な温度に加熱される。アセチルアセトナートリガンドは、鉄が酸化鉄を形成するにつれて蒸発してよい。鉄アセチルアセトナートは、直接的及び間接的加熱の両方を含む任意の加熱機構を用いて加熱されてよく、空気、酸素、及び/又は不活性雰囲気で加熱されてもよい。鉄アセチルアセトナートの加熱時間は、特に限定されない。いくつかの非限定的な実施形態は、鉄アセチルアセトナートを、30分〜1分ずつ増加して120分、例えば、60〜180分、60〜120分、30〜60分、100〜120分、又は80〜100分の時間加熱する工程を含む。
【0037】
一実施形態では、鉄アセチルアセトナートは、加熱して(D)を形成する前に、溶媒、例えば、有機溶媒と組み合わされる。本方法は、加熱する工程の前に、鉄アセチルアセトナートから溶媒の大部分(例えば、>95若しくは99重量%)又は全部を除去する工程を更に含んでよい。溶媒は、熱、真空、及び/又は散布を用いて除去されてもよい。
【0038】
様々な実施形態では、鉄アセチルアセトナートは、室温以上〜200℃の範囲の任意の好適な温度、例えば、20〜200、30〜190、40〜180、50〜170、60〜160、70〜150、80〜140、90〜130、100〜120、又は100〜110℃の温度で加熱され、真空及び/又は散布の適用を伴うか、又は伴わずに溶媒を除去する。他の実施形態では、加熱、真空、及び/又は散布は、1〜180分、5〜60分、5〜30分、15〜30分、15〜60分、15〜45分、60〜180分、60〜120分、30〜60分、100〜120分、又は80〜100分の時間、適用される。
【0039】
本方法は、鉄アセチルアセトナートを加熱して溶媒を除去する工程を、鉄アセチルアセトナートを加熱して(D)を形成する工程から独立して含んでもよい。換言すれば、鉄アセチルアセトナートを加熱して、(D)を形成する加熱工程の前に、それとは異なる温度及び/又は異なる時間で溶媒を除去してもよい。一実施形態では、鉄アセチルアセトナートを約120℃の温度に加熱して溶媒を除去し、次に、約180℃の温度で更に加熱して(D)を形成する。代替的に、加熱して溶媒を除去する工程は、加熱して(D)を形成する工程と同じであってもよい。
【0040】
(II)(A)、(B)、(C)、及び(D)を組み合わせて、(A)及び(B)のヒドロシリル化反応を生じさせる:
本方法は、(II)(A)、(B)、(C)、及び(D)を組み合わせて、(C)及び(D)の存在下で、(A)及び(B)のヒドロシリル化反応を生じさせる工程も含む。(A)及び(B)を加熱して、ヒドロシリル化反応を生じさせてよく、この熱が、(I)鉄アセチルアセトナートを加熱して(D)を形成する工程及び/又は鉄アセチルアセトナートを加熱して溶媒を除去する工程のための熱を提供し得ることが企図される。(A)及び(B)を組み合わせる、及び/又は反応させる工程が、ヒドロシリル化反応の間に用いられるように、当該技術分野において既知の任意の他の工程を含んでもよい。
【0041】
鉄アセチルアセトナート及び(E)シリコーン流体を組み合わせる:
様々な実施形態では、本方法は、鉄アセチルアセトナート及び(E)を組み合わせて混合物を形成する工程も含む。組み合わせる工程は、加熱して(D)を形成する前又は後に行われてもよい。混合物自体を加熱して(D)を形成してもよいことが企図される。代替的に、鉄アセチルアセトナート及び/又は(E)を独立して加熱した後、組み合わせてもよい。鉄アセチルアセトナート及び(E)を任意の順序及び任意の様式で一緒に組み合わせて、混合物を形成してもよいことが企図される。例えば、鉄アセチルアセトナートの全体量又は一連の部分を(E)に添加してよいか、又は逆もまた同様であり得る。鉄アセチルアセトナート及び(E)は、混合、撹拌、渦流などを含む当該技術分野において既知の任意の方法を用いて組み合わされてよい。典型的に、鉄アセチルアセトナートは、鉄アセチルアセトナートが、鉄アセチルアセトナート及び(E)の混合物の100重量パーツ当たり約0.01〜約30、約0.5〜約10、又は約0.5〜約5重量パーツの量で存在するような量で(E)に添加される。同様に、(E)は典型的に、(E)が鉄アセチルアセトナート及び(E)の混合物の100重量パーツ当たり約70〜約99.99、約90〜約99.5、又は約95〜99.5重量パーツの量で存在するような量で添加される。鉄アセチルアセトナート及び(E)は、前述の温度のうちのいずれかで、前述の時間のいずれかの間加熱されてよい。
【0042】
鉄アセチルアセトナート及び(E)は、典型的に、反応器内で一緒に組み合わされて混合物を形成する。しかしながら、本方法は、このような工程に限定されない。鉄アセチルアセトナート及び(E)は、任意の好適な容器、反応器、又は槽内で組み合わされて混合物を形成してもよい。様々な好適な容器、反応器、及び槽は、当該技術分野において既知である。
【0043】
一実施形態では、本方法は、(A)、(B)、及び(C)を(D)及び(E)と混合し、(A)及び(B)のヒドロシリル化反応を、(C)、(D)、及び(E)の存在下で組み合わせてゲルを形成する工程を含む。この組み合わせる工程は、典型的に、鉄アセチルアセトナート及び(E)の混合物が加熱された後に行われる。代替的に、(A)〜(D)は、(E)と組み合わされてもよい。(A)〜(E)のそれぞれを添加する工程の任意の組み合わせ及びすべての組み合わせはいずれも、本開示において独立して、及び/又は(A)〜(E)の他の工程のうちの1つ以上と併せて用いられてもよいことが企図される。
【0044】
(A)及び(B)は、前述の添加剤のうちの1つ以上、又は上記若しくは参照により本明細書に組み込まれる文書のうちのいずれか1つに説明される他のモノマー若しくはポリマーにより、又はその存在下で硬化し得る。上記のように、(E)は、(A)及び(B)のヒドロシリル化反応に関与してもしなくてもよい。典型的に、(A)及び(B)は、ケイ素結合水素原子対ケイ素結合アルケニル基の比が約1.3:1未満であるような量で存在する、及び/又は反応する。この比は、(E)の任意の不飽和及び/又はSi−H官能性を含んでも含まなくてもよい。代替的に、この比は、約1:1又は約1:1未満であってよい。更に他の実施形態では、この比は、0.9:1、0.8:1、0.7:1、0.6:1、又は0.5:1未満である。
【0045】
ゲル:
硬度は、TA−23プローブを用いて以下に説明されるように測定及び計算される。ゲルは、典型的に、225℃で1000時間の加熱老化後に測定されるように、約1500グラム未満の硬度を有する。しかしながら、ゲルは、このような硬度に限定されない。一代替実施形態では、ゲルは、225℃で500時間の加熱老化後に測定されるように、約1500グラム未満の硬度を有する。他の代替実施形態では、ゲルは、225℃又は250℃で250時間、500時間、又は1000時間の加熱老化後に測定されるように、1400、1300、1200、1100、1000、900、800、700、600、500、400、300、200、100、90、80、70、60、50、40、30、又は20グラム未満の硬度を有する。様々な実施形態では、ゲルは、225℃で500時間の加熱老化後に測定されるように、105グラム未満、100グラム未満、95グラム未満、90グラム未満、85グラム未満、80グラム未満、75グラム未満、70グラム未満、65グラム未満、60グラム未満、55グラム未満、50グラム未満、45グラム未満、40グラム未満、35グラム未満、30グラム未満、25グラム未満、又は20グラム未満の硬度を有する。ゲルの硬度は、異なるが類似する加熱老化時間及び温度を用いて測定することができる。ゲルの硬度は、加熱老化後、最初に減少してもしなくてもよい。ゲルの硬度は、加熱老化前よりも加熱老化後に低いままであり得るか、又は典型的に長時間が経過した後のみにより高い硬度に徐々に増加し得る。様々な実施形態では、これらの硬度値は、±5%、±10%、±15%、±20%、±25%、±30%などで変動する。
【0046】
硬度は、TA−23プローブをゲルの中に3mmの深さまで挿入するために必要な重量として計算される。より具体的には、硬度を計算するために用いられる方法は、汎用TA.XT2テキスチャーアナライザー(Texture Technologies Corp.(Scaresdale,NY)から市販される)又はその相当物及びTA−23(1.3cm(0.5インチ)円形)プローブを用いる。テキスチャーアナライザーは、245N(55ポンド)の力容量を有し、プローブを1.0mm/sの速度で移動させる。トリガー値(Trigger Value)は5グラムであり、オプション(Option)は、カウントまで繰り返し、5までのカウントを設定するように設定され、テスト出力(Test Output)はピーク(Peak)であり、力は圧縮下で測定され、容器は、0.12L(4oz)幅口の丸ガラス瓶である。すべての測定は、25℃±5℃及び50%±4%の相対湿度で行われる。更により具体的には、ゲルのサンプルを調製し、硬化して、室温に冷却し(25℃±5℃)、室温で少なくとも0.5時間、2〜3時間、又は安定した硬度に到達するまで安定化させる。次に、サンプルを、プローブ下で直接試験台上に位置付ける。次に、汎用TA.XT2テキスチャーアナライザーを、メーカーの操作指示に従って、前述の特定パラメータを用いてプログラム化する。5つの独立した測定を、ゲルの表面上の異なる地点で行う。5つの独立した測定の中央値を報告する。各測定を行った後、試験プローブを柔らかい紙タオルできれいに拭く。報告された後の反復性(すなわち、2つの独立した結果の間の最大差)は、95%の信頼度で6gを超えてはならない。典型的に、サンプルの厚さは、サンプルが圧縮されたときに、力測定が瓶の底又は試験台の表面により影響されないことを保証するために十分である。測定を行うとき、プローブは、典型的にサンプルの側面の1.3(0.5インチ)以内ではない。
【0047】
ゲルを形成する反応前の(A)〜(D)、及び任意に(E)の組み合わせは、典型的に、Brookfield DV−II+コーン及びプレート粘度計を用いて、50rpmのスピンドルCP−52により25℃で測定された約100,000、75,000、50,000、25,000、又は10,000cps未満の粘度を有する。様々な実施形態では、ゲルを形成する反応前の(A)〜(D)(及び任意に(E))の組み合わせは、典型的に、Brookfield DV−II+錐体及びプレート粘度計を用いて、50rpmのスピンドルCP−52により25℃で測定された9,500cps未満、9,000cps未満、8,500cps未満、8,000cps未満、7,500cps未満、7,000cps未満、6,500cps未満、6,000cps未満、5,500cps未満、5,000cps未満、4,500cps未満、4,000cps未満、3,500cps未満、3,000cps未満、2,500cps未満、2,000cps未満、1,500cps未満、1,000cps未満、500cps未満、400cps未満、300cps未満、200cps未満、100cps未満、90cps未満、80cps未満、70cps未満、60cps未満、50cps未満、40cps未満、30cps未満、20cps未満、10cps未満の粘度を有する。
【0048】
電子物品:
本開示は、電子物品(以下「物品」と称される)も提供する。この物品は、電力電子物品であってよい。物品は、電子構成要素及び該電子構成要素上に配設されたゲルを含む。ゲルが、電子構成要素を部分的又は完全に被包するように、ゲルは、電子構成要素上に配設されてもよい。代替的に、電子物品は、電子構成要素及び第1の層を含んでよい。ゲルは、電子構成要素と第1の層との間に挟まれてよく、第1の層上に配設され、第1の層と直接接触してもよく、及び/又は電子構成要素と直接接触していてもよい。ゲルが第1の層上に配設され、第1の層と直接接触している場合、ゲルは依然として電子構成要素上に配設され得るが、ゲルと電子構成要素との間に1つ以上の層又は構造を含んでもよい。ゲルは、電子構成要素上に平面部材、半球形の塊、凸状部材、ピラミッド、及び/又は錐体として配設されてもよい。電子構成要素は、ケイ素チップ又は炭化ケイ素チップなどのチップ、1つ以上のワイヤー、1つ以上のセンサー、1つ以上の電極などとして更に定義されてよい。
【0049】
電子物品は、特に限定されず、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、ショットキーダイオードなどの整流器、PiNダイオード、マージされたPiN/ショットキー(MPS)整流器、及び接合障壁ダイオード、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)、サイリスタ、金属酸化物電界効果トランジスタ(MOSFET)、高電子移動度トランジスタ(HEMT)、静電誘導トランジスタ(SIT)、電力トランジスタなどとして更に定義されてもよい。電子物品は、代替的に、電力変換器、変換器、ブースター、トラクション制御、産業用モーター制御、配電及び送電システムのための前述のデバイスのうちの1つ以上を含む電力モジュールとして更に定義することができる。電子物品は、代替的に、前述のデバイスのうちの1つ以上を含むとして更に定義することができる。
【0050】
更に、第1の層は、特に限定されないが、半導体、絶縁体、金属、プラスチック、炭素繊維メッシュ、金属箔、穿孔金属箔(メッシュ)、充填若しくは非充填プラスチックフィルム(ポリアミドシート、ポリイミドシート、ポリエチレンナフタレートシート、ポリエチレンテレフタレートポリエステルシート、ポリスルホンシート、ポリエーテルイミドシート、又はポリフェニレンスルフィドシートなど)、又は織布若しくは不織布基材(繊維ガラス布、繊維ガラスメッシュ、若しくはアラミド紙など)として更に独立して定義されてもよい。代替的に、第1の層は、半導体及び/又は絶縁体フィルムとして更に定義されてもよい。
【0051】
本開示は、電子物品を形成する方法も提供する。本方法は、ゲルを形成する前述の工程、ゲルを提供する工程、及び/又は電子構成要素を提供する工程のうちの1つ以上を含んでもよい。典型的に、本方法は、(A)〜(D)及び任意に(E)を電子構成要素に適用し、(A)及び(B)を(C)及び(D)並びに任意に(E)の存在下で反応させて、構成要素を損傷することなくゲルを形成するために十分な条件下で電子構成要素上にゲルを形成する工程を含む。ゲルは、電子構成要素上に形成されてもよい。代替的に、ゲルは、電子構成要素から離れて形成されてよく、後に電子構成要素上に配設されてもよい。
【実施例】
【0052】
一連のゲル(ゲル1〜6)は、本開示に従って形成される。一連の比較ゲル(比較ゲル1〜4)も形成されるが、本開示を代表しない。ゲル1〜6及び比較ゲル1〜5のそれぞれを評価して、初期硬度及び加熱老化後の硬度を判定する。ゲルのそれぞれを形成するために用いられる組成物及び前述の評価の結果を以下の表1に示す。
【0053】
ゲル1及び2で用いる(D)を形成するための鉄(III)アセチルアセトナートの加熱:
200gのSFD119流体(Dow Corning、ビニル末端ポリジメチルシロキサン、(E)として)を、機械的撹拌器、温度計、ガス入口及び出口を具備する500mLフラスコの中に導入する。4g(SFD119の2重量%)の鉄(III)アセチルアセトナート(Fe(acac)
3、Aldrich、97%)を、16gの乾燥テトラヒドロフラン(THF)中の溶液として、反応器の中に注入し、茶色の均一だが濁った分散液を形成する。この分散液を連続的に撹拌しながら120℃に加熱し、N
2をフラスコを通じてパージしてTHF(溶媒)を除去する。120℃で約15分後に、パージガスを、3ガロン/時の流量で空気に変更する。分散液を450rpmの速度で撹拌し、温度を180℃に上昇させる。温度を180±2℃で80分間保持して(D)を形成した後、室温に冷却する。最終生成物は、均一に茶色の液体であり、SFD119に類似する粘度を有する。この液体は、FT−IR分光計を用いて判定されるように、Si−O−Fe結合も含む。
【0054】
ゲル3〜6で用いる(D)を形成するための鉄(III)アセチルアセトナートの加熱:
200gのSFD119流体(Dow Corning、ビニル末端ポリジメチルシロキサン、(E)として)を、機械的撹拌器、温度計、ガス入口及び出口を具備する500mLフラスコの中に導入する。6g(SFD119の3重量%)の鉄(III)アセチルアセトナート(Fe(acac)
3、Aldrich、97%)を、24gの乾燥テトラヒドロフラン(THF)中の溶液として、反応器の中に注入し、茶色の均一だが濁った分散液を形成する。この分散液を連続的に撹拌しながら120℃に加熱し、N
2をフラスコを通じてパージしてTHF(溶媒)を除去する。120℃で約20分後に、パージガスを、3ガロン/時の流量で空気に変更する。分散液を450rpmの速度で撹拌し、温度を180℃に上昇させる。温度を180±2℃で100分間保持して(D)を形成した後、室温に冷却する。最終生成物は、均一に茶色の液体であり、SFD119に類似する粘度を有する。この液体は、FT−IR分光計を用いて判定されるように、Si−O−Fe結合も含む。
【0055】
ゲル1〜6の形成:
これらのゲルを形成するために、等しい重量部のA部及びB部を混合し、脱気して混合物を形成する。次に、混合物をガラスカップに注ぎ、150℃で1時間硬化させてゲルを形成する。続いてゲルを冷却し、上で詳細に説明される方法に従って初期硬度を測定する。次に、ゲルを加熱老化させ、225℃で1000時間加熱老化した後の硬度について再度評価する。表1において、A部のすべての重量パーセントは、A部の総重量に基づく。B部のすべての重量パーセントは、B部の総重量に基づく。以下のすべての試験におけるゲル硬度の値は、それぞれのゲルの5つの独立した測定値の平均(mean)を表す。
【0056】
【表1】
(A)有機ポリシロキサンは、ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサンである。
(B)架橋剤は、トリメチルシロキシ末端ジメチルメチル水素シロキサンである。
(C)ヒドロシル化触媒は、白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体である。
(D)鉄アセチルアセトナートの加熱された反応生成物は、上記の通りである。
(E)シリコーン流体は、Dow Corning 200Fシリコーン流体である。
【0057】
阻害物質は、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンである。
【0058】
比較ゲル1A〜5Bの形成:
比較ゲル1A〜5Bは、上記ゲル1〜6と同じ手順及びほぼ同じ化学を用いて形成される。しかしながら、比較ゲル1A〜5Bは、ゲル1〜6とは以下のように異なる。
【0059】
比較ゲル1Aは、任意の鉄アセチルアセトナート又は任意の(D)鉄アセチルアセトナートの加熱された反応生成物を用いない。
【0060】
比較ゲル1Bは、この実施例では熱が適用されないことを除いて、ゲル1に対して上で説明される鉄(III)アセチルアセトナートと同じ重量パーセントを用いる。したがって、(D)鉄アセチルアセトナートの加熱された反応生成物を用いて、比較ゲル1Bを形成する。
【0061】
比較ゲル1Cは、この実施例では熱が適用されないことを除いて、ゲル4に対して上で説明される鉄(III)アセチルアセトナートと同じ重量パーセントを用いる。したがって、(D)鉄アセチルアセトナートの加熱された反応生成物を用いて、比較ゲル1Cを形成する。
【0062】
比較ゲル2Aは、この実施例では熱が適用されないことを除いて、ゲル1Cに対して上で説明される重量パーセントの鉄(III)アセチルアセトナートの代わりに、ジルコニウムアセチルアセトナートを用いる。したがって、ジルコニウムアセチルアセトナートの加熱された反応生成物は、比較ゲル2Aを形成するために用いられない。
【0063】
比較ゲル2Bは、この実施例では熱が適用されないことを除いて、ゲル4に対して上で説明され、加熱されて比較ゲル2Bを形成する重量パーセントの鉄(III)アセチルアセトナートの代わりに、ジルコニウムアセチルアセトナートを用いる。
【0064】
比較ゲル3Aは、この実施例では熱が適用されないことを除いて、ゲル1Cに対して上で説明される重量パーセントの鉄(III)アセチルアセトナートの代わりに、アルミニウムアセチルアセトナートを用いる。したがって、アルミニウムアセチルアセトナートの加熱された反応生成物は、比較ゲル3Aを形成するために用いられない。
【0065】
比較ゲル3Bは、ゲル4に対して上で説明され、加熱されて比較ゲル3Bを形成する重量パーセントの鉄(III)アセチルアセトナートの代わりに、アルミニウムアセチルアセトナートを用いる。
【0066】
比較ゲル4Aは、この実施例では熱が適用されないことを除いて、ゲル1Cに対して上で説明される重量パーセントの鉄(III)アセチルアセトナートの代わりに、銅アセチルアセトナートを用いる。したがって、銅アセチルアセトナートの加熱された反応生成物は、比較ゲル4Aを形成するために用いられない。
【0067】
比較ゲル4Bは、ゲル4に対して上で説明され、加熱されて比較ゲル4Bを形成する重量パーセントの鉄(III)アセチルアセトナートの代わりに、銅アセチルアセトナートを用いる。
【0068】
比較ゲル5Aは、この実施例では熱が適用されないことを除いて、ゲル1Cに対して上で説明される重量パーセントの鉄(III)アセチルアセトナートの代わりに、セリウムアセチルアセトナートを用いる。したがって、セルニウムアセチルアセトナートの加熱された反応生成物は、比較ゲル5Aを形成するために用いられない。
【0069】
比較ゲル5Bは、ゲル4に対して上で説明され、加熱されて比較ゲル5Bを形成する重量パーセントの鉄(III)アセチルアセトナートの代わりに、セリウムアセチルアセトナートを用いる。
【0070】
ゲル硬度評価の結果を以下の表2に記載する。以下のすべての試験に記載されるゲル硬度の値は、上で説明される手順を用いて判定されるように、それぞれのゲルの5つの独立した測定値の平均(mean)を表す。
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
(a)本ゲルサンプルは、225℃で24時間までに表面内及び表面上に大きな気泡を生成した。
(b)該当データなしこれら2つのゲルサンプルは、液体になった後、225℃で750時間までに亀裂し、著しい重量喪失を伴った。
【0073】
上記データは、比較ゲルが、本開示のゲル1〜6と同じ加熱老化後の硬化の予想外の減少を呈しないことを確証する。本開示のゲル1〜6の鉄(III)アセチルアセトナート(
図4参照)により、これらのゲルは、広範な加熱老化後も低い弾性率特性(すなわち、低い硬度)を維持することができる。低い弾性率特性の維持により、ゲルを電子物品内で用いることができ、加熱老化後の電極及び電線に対する影響を最小限に抑える。
【0074】
酸化鉄の形態の評価:
ゲル6の追加のサンプルを更に評価して、様々な形態の酸化鉄がゲルの硬度に及ぼす影響を判定し、ゲル6で用いられる鉄(III)アセチルアセトナートが、加熱後に原位置で少なくとも部分的に酸化鉄に変換されたかどうかを評価する。より具体的に、ゲル6の複数のサンプルを形成して評価する。
【0075】
第1の系列では、(E)シリコーン流体中で加熱された鉄(III)アセチルアセトナートを含む、ゲル6のサンプルを上記の通り製剤化する。これらのサンプル中で形成された(D)加熱された反応生成物は、
図1の電子顕微鏡写真に示される。
【0076】
第2の系列では、ゲル6のサンプルは、ナノサイズFe
2O
3(Sigma Aldrichから購入、及び粒径50nm未満)を鉄(III)アセチルアセトナートの代わりに用いることを除いて、上記の通り製剤化する。言い換えれば、(D)加熱された反応生成物は、この第2の系列では用いない。代わりに、ナノサイズFe
2O
3を(D)加熱された反応生成物の代用とする。この第2の系列で用いられるナノサイズFe
2O
3は、
図2の電子顕微鏡写真に示される。
【0077】
第3の系列では、ゲル6のサンプルは、ミクロサイズFe
2O
3(Sigma Aldrichから購入、及び粒径50μm未満)を鉄(III)アセチルアセトナートの代わりに用いることを除いて、上記の通り製剤化する。言い換えれば、(D)加熱された反応生成物は、この第3の系列では用いない。代わりに、ミクロサイズFe
2O
3を(D)加熱された反応生成物の代用とする。第3の系列で用いられるミクロサイズFe
2O
3は、
図3の電子顕微鏡写真に示される。
【0078】
より具体的に、Fe
2O
3の様々な粒子の電子顕微鏡写真を
図1〜3として示し、
図1は、第1の系列の加熱された鉄(III)アセチルアセトナートからのFe
2O
3を示し、
図2は、第2の系列のナノサイズFe
2O
3を示し、
図3は、第3の系列のミクロサイズFe
2O
3を示す。
図4は、実施例のゲル4中に分散した(D)鉄アセチルアセトナートの加熱された反応生成物(鉄アセチルアセトナート(Fe(acac))(すなわち、ナノ粒子)の代表的な透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【0079】
各系列のサンプルを評価して、老化なし(タイムゼロ)、225℃で70時間の加熱老化後、225℃で250時間の加熱老化後、225℃で500時間の加熱老化後、及び225℃で1000時間の加熱老化後の硬度を判定する。ゲル硬度評価の結果を以下に示す。以下のすべての試験におけるゲル硬度の値は、それぞれのサンプルの5つの独立した測定値の平均(mean)を表す。
【0080】
【表4】
【0081】
上記のデータは、本開示のゲルが、酸化鉄の相違を除いて化学的に同一である比較ゲルと比較して、改善された加熱老化を有することを確証する。このデータは、Fe
2O
3をゲル組成物に添加するだけでは、鉄アセチルアセトナートを加熱して(D)加熱された反応生成物を形成し、(D)加熱された反応生成物を用いてゲルを形成する、本開示と同じ結果を達成しないことを明らかにする。
【0082】
上記値の1つ以上は、変動が本発明の範囲内に留まる限り、±15%、±10%、±15%、±20%、±25%などで変動し得る。他のすべての部材とは無関係に、マーカッシュ群の各部材から、予期しない結果が得られることがある。各部材は、個別にかつ/又は組み合わせで依存してもよく、添付の「特許請求の範囲」に含まれる特定の実施形態を十分に支援する。独立請求項と、単一及び多重に従属する従属請求項とのすべての組み合わせの主題が、本明細書で明確に企図される。本開示は、説明の文言を含めて、限定よりもむしろ説明のためのものである。上記の教示を鑑みれば、本開示の多数の修正及び変形が可能となり、本開示は、本明細書で具体的に説明した以外の形でも実施され得る。