(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板を処理する処理室を有する処理モジュール内に、前記処理モジュールを構成する壁の一つで冷却機構を有する壁に設けられた基板搬入出口を通じて、基板を搬入する工程と、
前記処理モジュール内に搬入した基板を、前記処理室内に配された基板載置部の基板載置面上に載置する工程と、
前記基板を加熱する工程と、
前記基板載置面と対向する位置に配されたシャワーヘッドから、前記シャワーヘッドが有する分散板を通じてガスを供給し、前記基板載置面上の基板に対する処理を行う工程と、
処理後の基板を前記処理モジュール内から搬出する工程と、を備え
前記処理モジュール内に基板を搬入する工程に先立ち、前記基板搬入出口が設けられた側に配置された第一位置決め部と、前記基板搬入出口が設けられた側とは前記処理室を介して対向する側に配置され、かつ、前記基板搬入出口を通じた基板の搬入出方向に沿って前記第一位置決め部と並ぶ位置に配置され、前記搬入出方向に沿った方向に逃げを有して構成された第二位置決め部とによって、第一の熱膨張率を有する材質で構成された前記分散板と、前記第一の熱膨張率とは異なる第二の熱膨張率を有する材質で構成されて前記分散板を支持する分散板支持部との位置決めをしておく
半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
[本発明の第一実施形態]
先ず、本発明の第一実施形態について説明する。
【0011】
(1)基板処理装置の全体構成
本発明の第一実施形態に係る基板処理装置の全体構成について、
図1及び
図2を参照しながら説明する。
図1は、第一実施形態に係る基板処理装置の全体構成例を示す横断面図である。
図2は、第一実施形態に係る基板処理装置の全体構成例を示す縦断面図である。
【0012】
図1及び
図2に示すように、ここで例に挙げて説明する基板処理装置は、真空搬送室103の周囲に複数の処理モジュール201a〜201dを備えた、いわゆるクラスタタイプのものである。より詳しくは、図例の基板処理装置は、基板としてのウエハ200を処理するもので、大別すると、真空搬送室(トランスファモジュール)103と、ロードロック室(ロードロックモジュール)122,123と、大気搬送室(フロントエンドモジュール)121と、IOステージ(ロードポート)105と、複数の処理モジュール(プロセスモジュール)201a〜201dと、制御部としてのコントローラ281と、を備えて構成されている。
以下、これらの各構成について具体的に説明する。なお、以下の説明において、前後左右は、X1方向が右、X2方向が左、Y1方向が前、Y2方向が後とする。
【0013】
(真空搬送室)
真空搬送室103は、負圧下でウエハ200が搬送される搬送空間となる搬送室として機能する。真空搬送室103を構成する筐体101は、平面視が六角形に形成される。そして、六角形の各辺には、ロードロック室122,123及び各処理モジュール201a〜201dがゲートバルブ160,165,161a〜161dを介してそれぞれ連結されている。
【0014】
真空搬送室103の略中央部には、負圧下でウエハ200を移載(搬送)する搬送ロボットとしての真空搬送ロボット112がフランジ115を基部として設置されている。真空搬送ロボット112は、エレベータ116及びフランジ115によって真空搬送室103の気密性を維持しつつ昇降できるように構成されている(
図2参照)。
【0015】
(ロードロック室)
真空搬送室103を構成する筐体101の六枚の側壁のうち前側に位置する二枚の側壁には、搬入用のロードロック室122と、搬出用のロードロック室123とが、それぞれゲートバルブ160,165を介して連結されている。ロードロック室122内には搬入室用の基板載置台150が設置され、ロードロック室123内には搬出室用の基板載置台151が設置されている。なお、各ロードロック室122,123は、それぞれが負圧に耐え得る構造に構成されている。
【0016】
(大気搬送室)
ロードロック室122,123の前側には、大気搬送室121がゲートバルブ128,129を介して連結されている。大気搬送室121は、略大気圧下で用いられる。
【0017】
大気搬送室121内には、ウエハ200を移載する大気搬送ロボット124が設置されている。大気搬送ロボット124は、大気搬送室121に設置されたエレベータ126によって昇降されるように構成されているとともに、リニアアクチュエータ132によって左右方向に往復移動されるように構成されている(
図2参照)。
【0018】
大気搬送室121の上部には、クリーンエアを供給するクリーンユニット118が設置されている(
図2参照)。また、大気搬送室121の左側には、ウエハ200に形成されているノッチまたはオリエンテーションフラットを合わせる装置(以下、「プリアライナ」という)106が設置されている(
図1参照)。
【0019】
(IOステージ)
大気搬送室121の筐体125の前側には、ウエハ200を大気搬送室121に対して搬入搬出するための基板搬入搬出口134と、ポッドオープナ108とが設置されている。基板搬入搬出口134を挟んでポッドオープナ108と反対側、すなわち筐体125の外側には、IOステージ105が設置されている。
【0020】
IOステージ105上には、ウエハ200を複数枚収納するFOUP(Front Opening Unified Pod:以下「ポッド」という。)100が複数搭載されている。ポッド100は、シリコン(Si)基板などのウエハ200を搬送するキャリアとして用いられる。ポッド100内には、未処理のウエハ200や処理済のウエハ200がそれぞれ水平姿勢で複数格納されるように構成されている。ポッド100は、図示しない工程内搬送装置(RGV)によって、IOステージ105に対して、供給及び排出される。
【0021】
IOステージ105上のポッド100は、ポッドオープナ108によって開閉される。ポッドオープナ108は、ポッド100のキャップ100aを開閉するとともに、基板搬入搬出口134を閉塞可能なクロージャ142とクロージャ142を駆動する駆動機構109とを備えている。ポッドオープナ108は、IOステージ105に載置されたポッド100のキャップ100aを開閉し、基板出し入れ口を開放・閉鎖することにより、ポッド100に対するウエハ200の出し入れを可能とする。
【0022】
(処理モジュール)
真空搬送室103を構成する筐体101の六枚の側壁のうち、ロードロック室122,123が連結されていない残りの四枚の側壁には、それぞれに対して、ウエハ200に所望の処理を行う処理モジュール201a〜201dが、ゲートバルブ161a〜161dを介して、真空搬送室103を中心にして放射状に位置するように連結されている。各処理モジュール201a〜201dは、いずれもコールドウォール式の処理容器203a〜203dによって構成され、それぞれに一つの処理室202a〜202dが形成されている。各処理室202a〜202d内では、半導体や半導体装置の製造工程の一工程として、ウエハ200に対する処理を行う。各処理室202a〜202d内で行う処理としては、例えば、ウエハ上へ薄膜を形成する処理、ウエハ表面を酸化、窒化、炭化等する処理、シリサイド、メタル等の膜形成、ウエハ表面をエッチングする処理、リフロー処理等の各種基板処理が挙げられる。
【0023】
なお、各処理モジュール201a〜201dの詳細な構成については、後述する。
【0024】
(コントローラ)
コントローラ281は、基板処理装置を構成する各部の動作を制御する制御部(制御手段)として機能する。そのために、制御部としてのコントローラ281は、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)等を有してなるコンピュータ装置によって構成されている。そして、例えば、信号線Aを通じて真空搬送ロボット112と、信号線Bを通じて大気搬送ロボット124と、信号線Cを通じてゲートバルブ160,161a,161b,161c,161d,165,128,129と、信号線Dを通じてポッドオープナ108と、信号線Eを通じてプリアライナ106と、信号線Fを通じてクリーンユニット118と、それぞれ電気的に接続され、これらの各部に対して信号線A〜Fを通じて動作指示を与えるように構成されている。
【0025】
なお、コントローラ281の詳細な構成については、後述する。
【0026】
(2)処理モジュールの構成
次に、各処理モジュール201a〜201dの詳細な構成について説明する。
【0027】
各処理モジュール201a〜201dは、それぞれが枚葉式の基板処理装置として機能するものであり、いずれも同様の構成を有するものである。
ここで、各処理モジュール201a〜201dのうちの一つを例に挙げて、具体的な構成を説明する。処理モジュール201a〜201dの一つを例に挙げることから、以下の説明においては、処理モジュール201a〜201dを単に「処理モジュール201」と記述し、各処理モジュール201a〜201dを構成するコールドウォール式の処理容器203a〜203dについても単に「処理容器203」と記述し、各処理容器203a〜203d内に形成される処理室202a〜202dを単に「処理室202」と記述し、さらに各処理モジュール201a〜201dのそれぞれに対応するゲートバルブ161a〜161dについても単に「ゲートバルブ161」と記述する。
図3は、第一実施形態に係る基板処理装置の処理室の概略構成の一例を模式的に示す説明図である。
【0028】
(処理容器)
処理モジュール201は、上述したように、コールドウォール式の処理容器203によって構成されている。処理容器203は、例えば横断面が円形であり扁平な密閉容器として構成されている。処理容器203は、アルミナ(AlO)等のセラミック材料で形成された上部容器2031と、アルミニウム(Al)やステンレス(SUS)等の金属材料で形成された下部容器2032とで構成されている。
【0029】
処理容器203内には、処理室202が形成されている。処理室202は、その上方側(後述する基板載置台212よりも上方の空間)に位置し、基板としてシリコンウエハ等のウエハ200を処理する処理空間2021と、その下方側で下部容器2032に囲まれた空間である搬送空間2022と、を備えている。
【0030】
下部容器2032の側面、すなわち処理容器203を構成する壁の一つには、ゲートバルブ161に隣接した基板搬入出口206が設けられている。ウエハ200は、基板搬入出口206を介して、搬送空間2022に搬入されるようになっている。
【0031】
下部容器2032における基板搬入出口206の近傍には、ゲートバルブ161が閉じたときの容器内の気密性を確保するためのOリング2033が配設されている。さらに、下部容器2032における基板搬入出口206の近傍には、後述するヒータ213による加熱の影響がOリング2033に及ぶのを抑制すべく、当該近傍領域を冷却するための冷却配管2034が配設されている。冷却配管2034には、図示せぬ温調ユニットから冷媒が供給される。これにより、冷却配管2034及び温調ユニットは、基板搬入出口206の近傍領域を冷却する冷却機構として機能するようになっている。なお、温調ユニット及び冷媒は、公知技術によるものであればよく、ここでは詳細な説明を省略する。
【0032】
下部容器2032の底部には、リフトピン207が複数設けられている。さらに、下部容器2032は、アース電位になっている。
【0033】
(基板載置台)
処理空間2021内には、ウエハ200を支持する基板支持部(サセプタ)210が設けられている。基板支持部210は、ウエハ200を載置する載置面211と、載置面211を表面に持つ基板載置台212と、基板載置台212に内包された加熱部としてのヒータ213と、を主に有する。基板載置台212には、リフトピン207が貫通する貫通孔214が、リフトピン207と対応する位置にそれぞれ設けられている。
【0034】
基板載置台212は、シャフト217によって支持される。シャフト217は、処理容器203の底部を貫通しており、さらに処理容器203の外部で昇降機構218に接続されている。昇降機構218を作動させてシャフト217及び支持台212を昇降させることにより、基板載置台212は、載置面211上に載置されるウエハ200を昇降させることが可能となっている。なお、シャフト217下端部の周囲はベローズ219により覆われており、これにより処理空間2021内は気密に保持されている。
【0035】
基板載置台212は、ウエハ200の搬送時には、載置面211が基板搬入出口206の位置(ウエハ搬送位置)となるように下降し、ウエハ200の処理時には、ウエハ200が処理空間2021内の処理位置(ウエハ処理位置)まで上昇する。
具体的には、基板載置台212をウエハ搬送位置まで下降させた時には、リフトピン207の上端部が載置面211の上面から突出して、リフトピン207がウエハ200を下方から支持するようになっている。また、基板載置台212をウエハ処理位置まで上昇させたときには、リフトピン207は載置面211の上面から埋没して、載置面211がウエハ200を下方から支持するようになっている。なお、リフトピン207は、ウエハ200と直接触れるため、例えば、石英やアルミナ等の材質で形成することが望ましい。なお、リフトピン207に昇降機構を設けて、リフトピン207を動くように構成してもよい。
【0036】
(シャワーヘッド)
処理空間2021の上方(ガス供給方向上流側)には、ガス分散機構としてのシャワーヘッド230が設けられている。シャワーヘッド230は、例えば上部容器2031に設けられた穴2031aに挿入される。そして、シャワーヘッド230は、図示せぬヒンジを介して上部容器2031に固定され、メンテナンス時にはヒンジを利用して開けられるように構成されている。
【0037】
シャワーヘッドの蓋231は、例えば導電性及び熱伝導性のある金属で形成されている。また、シャワーヘッドの蓋231には、第一分散機構としてのガス供給管241が挿入される貫通孔231aが設けられている。貫通孔231aに挿入されるガス供給管241は、シャワーヘッド230内に形成された空間であるシャワーヘッドバッファ室232内に供給するガスを分散させるためのもので、シャワーヘッド230内に挿入される先端部241aと、蓋231に固定されるフランジ241bと、を有する。先端部241aは、例えば円柱状に構成されており、その円柱側面には分散孔が設けられている。そして、後述するガス供給部(供給系)から供給されるガスは、先端部241a及び分散孔を介して、シャワーヘッドバッファ室232内に供給される。
【0038】
さらに、シャワーヘッド230は、後述するガス供給部(供給系)から供給されるガスを分散させるための第二分散機構としての分散板234を備えている。分散板234は、例えば非金属材料である石英で形成されている。この分散板234の上流側がシャワーヘッドバッファ室232であり、下流側が処理空間2021である。分散板234には、複数の貫通孔234aが設けられている。分散板234は、処理空間2021を介して基板載置面211と対向するように、その基板載置面211の上方側に配置されている。したがって、シャワーヘッドバッファ室232は、分散板234に設けられた複数の貫通孔234aを介して、処理空間2021と連通することになる。
【0039】
分散板234の貫通孔234aが設けられた部分は、上部容器2031に設けられた穴2031aに挿入される。そして、分散板234は、穴2031aへの挿入部分の外周側に、上部容器2031の上面に載置されることになるフランジ部234b,234cを有する。フランジ部234b,234cは、上部容器2031と蓋231との間に介在して、これらの間を絶縁し、かつ、断熱する。つまり、上部容器2031における穴2031aの外周側に位置する台座部分(すなわち、フランジ部234b,234cが載置される部分)2031bは、分散板234を支持する分散板支持部として機能することになる。
【0040】
なお、分散板234のフランジ部234b,234cと上部容器2031の台座部分2031bとが重なる箇所には、上部容器2031と分散板234との位置決めをする位置決め部235,236が設けられている。位置決め部235,236の詳細な構成については、後述する。
【0041】
シャワーヘッドバッファ室232には、供給されたガスの流れを形成するガスガイド235が設けられている。ガスガイド235は、ガス供給管241が挿入される貫通孔231aを頂点として分散板234方向に向かうにつれ径が広がる円錐形状である。ガスガイド235は、その下端が、分散板234の最も外周側に形成される貫通孔234aよりも更に外周側に位置するように形成される。つまり、シャワーヘッドバッファ室232は、分散板234の上方側から供給されるガスを処理空間2021に向けて案内するガスガイド235を内包している。
【0042】
なお、シャワーヘッドの蓋231には、図示せぬ整合器及び高周波電源が接続されていてもよい。整合器及び高周波電源が接続されていれば、これらでインピーダンスを調整することにより、シャワーヘッドバッファ室232及び処理空間2021にプラズマを生成することが可能となる。
【0043】
また、シャワーヘッド230は、シャワーヘッドバッファ室232内及び処理空間2021内を昇温させる加熱源としてのヒータ(ただし不図示)を内包していてもよい。ヒータは、シャワーヘッドバッファ室232内に供給されたガスが再液化しない温度に加熱する。例えば、100℃程度に加熱するよう制御される。
【0044】
(ガス供給系)
シャワーヘッドの蓋231に設けられた貫通孔231aに挿入されるガス供給管241には、共通ガス供給管242が接続されている。ガス供給管241と共通ガス供給管242は、管の内部で連通している。そして、共通ガス供給管242から供給されるガスは、ガス供給管241、ガス導入孔231aを通じて、シャワーヘッド230内に供給される。
【0045】
共通ガス供給管242には、第一ガス供給管243a、第二ガス供給管244a、第三ガス供給管245aが接続されている。このうち、第二ガス供給管244aは、リモートプラズマユニット244eを介して共通ガス供給管242に接続される。
【0046】
第一ガス供給管243aを含む第一ガス供給系243からは主に第一元素含有ガスが供給され、第二ガス供給管244aを含む第二ガス供給系244からは主に第二元素含有ガスが供給される。第三ガス供給管245aを含む第三ガス供給系245からは、ウエハ200を処理する際には主に不活性ガスが供給され、シャワーヘッド230や処理空間2021をクリーニングする際はクリーニングガスが主に供給される。
【0047】
(第一ガス供給系)
第一ガス供給管243aには、上流方向から順に、第一ガス供給源243b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)243c、及び、開閉弁であるバルブ243dが設けられている。そして、第一ガス供給源243bからは、第一元素を含有するガス(以下、「第一元素含有ガス」という。)が、MFC243c、バルブ243d、第一ガス供給管243a、共通ガス供給管242を介して、シャワーヘッド230内に供給される。
【0048】
第一元素含有ガスは、処理ガスの一つであり、原料ガスとして作用するものである。ここで、第一元素は、例えばシリコン(Si)である。すなわち、第一元素含有ガスは、シリコン含有ガスであり、例えばジクロロシラン(SiH
2Cl
2、略称:DCS)ガスを用いる。
【0049】
第一ガス供給管243aのバルブ243dよりも下流側には、第一不活性ガス供給管246aの下流端が接続されている。第一不活性ガス供給管246aには、上流方向から順に、不活性ガス供給源246b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)246c、及び、開閉弁であるバルブ246dが設けられている。そして、不活性ガス供給源246bからは、不活性ガスが、MFC246c、バルブ246d、第一不活性ガス供給管246a、第一ガス供給管243a、共通ガス供給管242を介して、シャワーヘッド230内に供給される。
【0050】
ここで、不活性ガスは、第一元素含有ガスのキャリアガスとして作用するもので、第一元素とは反応しないガスを用いることが好ましい。具体的には、例えば、窒素(N
2)ガスを用いることができる。なお、不活性ガスとしては、N
2ガスのほか、例えばヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、アルゴン(Ar)ガス等の希ガスを用いることができる。
【0051】
主に、第一ガス供給管243a、MFC243c、バルブ243dにより、第一ガス供給系(「シリコン含有ガス供給系」ともいう)243が構成される。
また、主に、第一不活性ガス供給管246a、MFC246c及びバルブ246dにより、第一不活性ガス供給系が構成される。
なお、第一ガス供給系243は、第一ガス供給源243b、第一不活性ガス供給系を含めて考えてもよい。また、第一不活性ガス供給系は、不活性ガス供給源234b、第一ガス供給管243aを含めて考えてもよい。
このような第一ガス供給系243は、処理ガスの一つである原料ガスを供給するものであることから、処理ガス供給系の一つに該当することになる。
【0052】
(第二ガス供給系)
第二ガス供給管244aには、下流にリモートプラズマユニット244eが設けられている。上流には、上流方向から順に、第二ガス供給源244b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)244c、及び、開閉弁であるバルブ244dが設けられている。そして、第二ガス供給源244bからは、第二元素を含有するガス(以下、「第二元素含有ガス」という。)が、MFC244c、バルブ244d、第二ガス供給管244a、リモートプラズマユニット244e、共通ガス供給管242を介して、シャワーヘッド230内に供給される。このとき、第二元素含有ガスは、リモートプラズマユニット244eによりプラズマ状態とされ、ウエハ200上に供給される。
【0053】
第二元素含有ガスは、処理ガスの一つであり、反応ガスまたは改質ガスとして作用するものである。ここで、第二元素含有ガスは、第一元素と異なる第二元素を含有する。第二元素としては、例えば窒素(N)である。すなわち、第二元素含有ガスは、例えば窒素含有ガスであり、例えばアンモニア(NH
3)ガスを用いる。
【0054】
第二ガス供給管244aのバルブ244dよりも下流側には、第二不活性ガス供給管247aの下流端が接続されている。第二不活性ガス供給管247aには、上流方向から順に、不活性ガス供給源247b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)247c、及び、開閉弁であるバルブ247dが設けられている。そして、不活性ガス供給源247bからは、不活性ガスが、MFC247c、バルブ247d、第二不活性ガス供給管247a、第二ガス供給管244a、共通ガス供給管242を介して、シャワーヘッド230内に供給される。
【0055】
ここで、不活性ガスは、基板処理工程ではキャリアガスまたは希釈ガスとして作用する。具体的には、例えばN
2ガスを用いることができるが、N
2ガスのほか、例えばHeガス、Neガス、Arガス等の希ガスを用いることもできる。
【0056】
主に、第二ガス供給管244a、MFC244c、バルブ244dにより、第二ガス供給系244(「窒素含有ガス供給系」ともいう)が構成される。
また、主に、第二不活性ガス供給管247a、MFC247c及びバルブ247dにより、第二不活性ガス供給系が構成される。
なお、第二ガス供給系244は、第二ガス供給源244b、リモートプラズマユニット244e、第二不活性ガス供給系を含めて考えてもよい。また、第二不活性ガス供給系は、不活性ガス供給源247b、第二ガス供給管244a、リモートプラズマユニット244eを含めて考えてもよい。
このような第二ガス供給系244は、処理ガスの一つである反応ガスまたは改質ガスを供給するものであることから、処理ガス供給系の一つに該当することになる。
【0057】
(第三ガス供給系)
第三ガス供給管245aには、上流方向から順に、第三ガス供給源245b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)245c、及び、開閉弁であるバルブ245dが設けられている。そして、第三ガス供給源245bからは、不活性ガスが、MFC245c、バルブ245d、第三ガス供給管245a、共通ガス供給管242を介して、シャワーヘッド230内に供給される。
【0058】
第三ガス供給源245bから供給される不活性ガスは、基板処理工程では、処理容器203やシャワーヘッド230内に留まったガスをパージするパージガスとして作用する。また、クリーニング工程では、クリーニングガスのキャリアガスまたは希釈ガスとして作用してもよい。このような不活性ガスとしては、例えばN
2ガスを用いることができるが、N
2ガスのほか、例えばHeガス、Neガス、Arガス等の希ガスを用いることもできる。
【0059】
第三ガス供給管245aのバルブ245dよりも下流側には、クリーニングガス供給管248aの下流端が接続されている。クリーニングガス供給管248aには、上流方向から順に、クリーニングガス供給源248b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)248c、及び、開閉弁であるバルブ248dが設けられている。そして、クリーニングガス供給源248bからは、クリーニングガス供給源248bからは、クリーニングガスが、MFC248c、バルブ248d、クリーニングガス供給管248a、第三ガス供給管245a、共通ガス供給管242を介して、シャワーヘッド230内に供給される。
【0060】
クリーニングガス供給源248bから供給されるクリーニングガスは、クリーニング工程では、シャワーヘッド230や処理容器203に付着した副生成物等を除去するクリーニングガスとして作用する。このようなクリーニングガスとしては、例えば、三フッ化窒素(NF
3)ガスを用いることができる。なお、クリーニングガスとしては、NF
3ガスのほか、例えば、フッ化水素(HF)ガス、三フッ化塩素ガス(ClF
3)ガス、フッ素(F
2)ガス等を用いてもよく、またこれらを組合せて用いてもよい。
【0061】
主に、第三ガス供給管245a、マスフローコントローラ245c、バルブ245dにより、第三ガス供給系245が構成される。
また、主に、クリーニングガス供給管248a、マスフローコントローラ248c及びバルブ248dにより、クリーニングガス供給系が構成される。
なお、第三ガス供給系245は、第三ガス供給源245b、クリーニングガス供給系を含めて考えてもよい。また、クリーニングガス供給系は、クリーニングガス供給源248b、第三ガス供給管245aを含めて考えてもよい。
【0062】
(ガス排気系)
処理容器203の雰囲気を排気する排気系は、処理容器203に接続された複数の排気管を有する。具体的には、搬送空間2022に接続される排気管(第一排気管)261と、処理空間2021に接続される排気管(第二排気管)262と、シャワーヘッドバッファ室232に接続される排気管(第三排気管)263と、を有する。また、各排気管261,262,263の下流側には、排気管(第四排気管)264が接続される。
【0063】
排気管261は、搬送空間2022の側面または底面に接続される。排気管261には、高真空または超高真空を実現する真空ポンプとしてTMP(Turbo Molecular Pump:以下「第一真空ポンプ」ともいう。)265が設けられている。排気管261において、TMP265の上流側と下流側には、それぞれに開閉弁であるバルブ266,267が設けられている。
【0064】
排気管262は、処理空間2021の側方に接続される。排気管262には、処理空間2021内を所定の圧力に制御する圧力制御器であるAPC(AutoPressure Controller)276が設けられている。APC276は、開度調整可能な弁体(図示せず)を有し、コントローラ280からの指示に応じて排気管262のコンダクタンスを調整する。また、排気管262において、APC276の上流側と下流側には、それぞれに開閉弁であるバルブ275,277が設けられている。
【0065】
排気管263は、シャワーヘッドバッファ室232の側方または上方に接続される。排気管263には、開閉弁であるバルブ270が設けられている。
【0066】
排気管264には、DP(Dry Pump)278が設けられている。図示のように、排気管264には、その上流側から排気管263、排気管262、排気管261が接続され、さらにそれらの下流にDP278が設けられる。DP278は、排気管262、排気管263、排気管261のそれぞれを介して、シャワーヘッドバッファ室232、処理空間2021及び搬送空間2022のそれぞれの雰囲気を排気する。また、DP278は、TMP265が動作するときに、その補助ポンプとしても機能する。すなわち、高真空(あるいは超高真空)ポンプであるTMP265は、大気圧までの排気を単独で行うのは困難であるため、大気圧までの排気を行う補助ポンプとしてDP278が用いられる。
【0067】
(3)分散板及び位置決め部の構成
次に、シャワーヘッド230に設けられた分散板234と、その分散板234の位置決めを行う位置決め部235,236とについて、それぞれの詳細な構成を説明する。
【0068】
上述した構成の処理室201において、ウエハ200に対する処理を行う際には、処理対象となるウエハ200をウエハ処理位置まで上昇させつつ、基板載置台212のヒータ213でウエハ200に対する加熱を行う。このとき、ヒータ213による加熱でシャワーヘッド230も高温になることから、シャワーヘッド230の接ガス部分が金属材料で構成されていると、ウエハ200への金属汚染が懸念される。そのため、シャワーヘッド230の分散板234は、非金属材料である石英で構成されている。
【0069】
一方、分散板234を支持する上部容器2031の台座部分2031bは、セラミック材料であるアルミナで構成されている。したがって、分散板234と上部容器2031の台座部分2031bとは、互いに異なる熱膨張率を有することになる。具体的には、石英の熱膨張率(熱膨張係数)は6.0×10
−7/℃(以下、この熱膨張率を「第一の熱膨張率」という。)であり、アルミナの熱膨張率(熱膨張係数)は7.1×10
−6/℃(以下、この熱膨張率を「第二の熱膨張率」という。)である。つまり、分散板234は、第一の熱膨張率を有する材質で構成され、上部容器2031の台座部分2031bは、第一の熱膨張率とは異なる第二の熱膨張率を有する材質で構成されている。
【0070】
このように、分散板234と上部容器2031の台座部分2031bとの間に熱膨張率差があると、基板載置台212のヒータ213による加熱処理で高温化した場合に、それぞれの変形量(伸び量)にも差が生じることになる。
例えば、分散板234を構成する石英については、熱膨張率が6.0×10
−7/℃であることから、温度変化Δt=300℃、長さL=500mmである場合には、6.0×10
−7×300×500=0.09mm伸びる。また、温度変化Δt=400℃、長さL=500mmである場合には、6.0×10
−7×400×500=0.12mm伸びる。また、温度変化Δt=500℃、長さL=500mmである場合には、6.0×10
−7×500×500=0.15mm伸びる。
これに対して、例えば、上部容器2031の台座部分2031bを構成するアルミナについては、熱膨張率が7.1×10
−6/℃であることから、温度変化Δt=300℃、長さL=500mmである場合には、7.1×10
−6×300×500=1.1mm伸びる。また、温度変化Δt=400℃、長さL=500mmである場合には、7.1×10
−6×400×500=1.4mm伸びる。また、温度変化Δt=500℃、長さL=500mmである場合には、7.1×10
−6×500×500=1.8mm伸びる。
【0071】
なお、分散板234に熱膨張率の小さい材質を使う理由は、基板載置台212のヒータ213による加熱処理で高温化した場合に、貫通孔234aの孔径が意図しない膨張により大きくなってしまい、期待していたガス流量と異なってしまうのを防ぐためである。一方、上部容器2031に熱膨張率の大きい材質を使う理由は、処理室201が真空チャンバ構造であるため、機械的強度の確保を優先的に考慮したためである。
【0072】
以上のような熱膨張率差があることを考慮すると、分散板234と上部容器2031の台座部分2031bとは、ネジ等で固定することができない。ネジ等で固定すると、いずれかが破損してしまうおそれがあるからである。
そこで、本実施形態で説明する基板処理装置では、分散板234と上部容器2031の台座部分2031bとの位置関係の固定を、位置決め部235,236を利用して行っている。
【0073】
以下に、位置決め部235,236の詳細な構成について説明する。
図4は、第一実施形態に係る基板処理装置の処理室における要部構成の一例を模式的に示す説明図である。
【0074】
位置決め部235,236は、いずれも、分散板234と分散板支持部として機能する上部容器2031の台座部分2031bとの位置決めをするものである。位置決め部235,236としては、処理容器203の基板搬入出口206が設けられた側(すなわち、冷却配管2034が配設されている側)に配置された第一位置決め部235と、基板搬入出口206が設けられた側とは処理空間2021を介して対向する側(すなわち、処理容器203を構成する壁のうち、基板搬入出口206が設けられた壁と対向する壁の側)に配置された第二位置決め部236とがある。
【0075】
これら第一位置決め部235及び第二位置決め部236は、基板搬入出口206を通じたウエハ200の搬入出方向に沿って並ぶように配置されている。さらに詳しくは、第一位置決め部235及び第二位置決め部236は、基板搬入出口206を平面視したときの当該基板搬入出口206の中央位置を通り、かつ、その基板搬入出口206を通じたウエハ200の搬入出方向に沿って延びる仮想的な直線L上に配置されている。これにより、第一位置決め部235及び第二位置決め部236によって位置決めされる分散板234は、仮想的な直線Lを中心にして、図中左右方向に均等に振り分けられて配置されることになる。なお、ウエハ200の搬入出方向は、真空搬送ロボット112によって特定される。つまり、ウエハ200の搬入出方向は、真空搬送ロボット112のエンドエフェクタ113の移動方向(図中矢印参照)と一致する。
【0076】
これら第一位置決め部235及び第二位置決め部236のうち、基板搬入出口206の側に位置する第一位置決め部235は、上部容器2031の台座部分2031bから上方に向けて突設されたピン状の第一凸部235aと、分散板234に穿設されて第一凸部235aが挿入される円孔状の第一凹部235bと、によって構成されている。第一位置決め部235が位置する側は、冷却配管2034が配設されていることから、高温化が抑制される。このことを鑑み、第一位置決め部235は、円孔状の第一凹部235bを有して構成されている。
【0077】
一方、第二位置決め部236は、上部容器2031の台座部分2031bから上方に向けて突設されたピン状の第二凸部236aと、分散板234に穿設されて第二凸部236aが挿入される長円孔状の第二凹部236bと、によって構成されている。このように、第二位置決め部236は、長円孔状の第二凹部236bを有して構成されている。したがって、基板載置台212のヒータ213による加熱処理で分散板234や上部容器2031の台座部分2031b等に変形(伸び)が生じた場合であっても、長円孔状の第二凹部236bが逃げとして働くので、分散板234等が破損してしまうことがない。
【0078】
また、第二位置決め部236を構成する第二凹部236bは、長円孔状の長軸方向が基板搬入出口206を通じたウエハ200の搬入出方向に沿うように配されている。つまり、第二凹部236bの長軸方向についても、第一位置決め部235と第二位置決め部236との並び方向と同様に、ウエハ200の搬入出方向(すなわち、真空搬送ロボット112のエンドエフェクタ113の移動方向)と一致している。したがって、基板載置台212のヒータ213による加熱処理で分散板234等に変形(伸び)が生じた場合であっても、その変形(伸び)が生じる方向は、主に真空搬送ロボット112のエンドエフェクタ113の移動方向に沿うように規制されることになる。
【0079】
なお、ここでは、第一位置決め部235及び第二位置決め部236のそれぞれにつき、台座部分2031bの側にピン状の凸部235a,236aを配し、分散板234の側に孔状の凹部235b,235bを配した場合を例に挙げたが、本発明がこれに限定されるものではない。つまり、第一位置決め部235及び第二位置決め部236は、分散板234と上部容器2031の台座部分2031bとの位置決めをし得るものであれば、本実施形態の場合と凹凸関係が逆であってもよいし、またピン及び孔以外の公知の位置決め技術を用いたものであってもよい。
【0080】
(4)コントローラの機能構成
次に、コントローラ281の詳細な構成について説明する。
図5は、第一実施形態に係る基板処理装置のコントローラの構成例を示すブロック図である。
【0081】
(ハードウエア構成)
コントローラ281は、基板処理装置を構成する各部の動作を制御する制御部(制御手段)として機能するものであり、コンピュータ装置によって構成されたものである。さらに詳しくは、コントローラ281は、
図5(a)に示すように、液晶ディスプレイ等の表示装置281a、CPUやRAM等の組み合わせからなる演算装置281b、キーボードやマウス等の操作部281c、フラッシュメモリやHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置281d及び外部インタフェース等のデータ入出力部281eといったハードウエア資源を備えて構成されている。これらのうち、記憶装置281dは、内部記録媒体281fを有している。また、データ入出力部281eは、ネットワーク281hに接続されている。そして、ネットワーク281hを介して、基板処理装置内の他の構成、例えば後述するロボット駆動部283や図示しない上位装置に接続される。なお、コントローラ281は、内部記録媒体281fの代わりに、外部記録媒体281gをデータ入出力部281eに接続して設けてもよく、また、内部記録媒体281fと外部記録媒体281gの両方を用いたものであってもよい。
【0082】
つまり、コントローラ281は、コンピュータ装置としてのハードウエア資源を備えて構成されており、演算装置281bが記憶装置281dの内部記録媒体281fに記憶されたプログラムを実行することにより、そのプログラム(ソフトウエア)とハードウエア資源とが協働して、基板処理装置の各部を動作制御する制御部として機能するようになっている。
【0083】
このようなコントローラ281は、専用のコンピュータ装置によって構成することが考えられるが、これに限定されることはなく、汎用のコンピュータ装置によって構成されていてもよい。例えば、上述のプログラム等を格納した外部記録媒体(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MOなどの光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)281gを用意し、その外部記録媒体281gを用いて汎用のコンピュータ装置に当該プログラム等をインストールすることにより、本実施形態に係るコントローラ281を構成することができる。また、コンピュータ装置にプログラム等を供給するための方法についても、外部記録媒体281gを介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等のネットワーク281hを用い、外部記録媒体281gを介さずにプログラム等を供給するようにしてもよい。なお、記憶装置281dの内部記録媒体281fや外部記録媒体281g等は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に「記録媒体」ともいう。なお、本明細書において、記録媒体という文言を用いた場合は、記憶装置281dの内部記録媒体281f単体のみを含む場合、外部記録媒体281g単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。また、本明細書において、プログラムという文言を用いた場合は、制御プログラム単体のみを含む場合、アプリケーションプログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。
【0084】
(機能構成)
コントローラ281における演算装置281bは、記憶装置281dの内部記録媒体281fに記憶されたプログラムを実行することにより、
図5(b)に示すように、少なくともロボット制御部282としての機能を実現する。なお、ここでは、ロボット制御部282のみを例に挙げて説明するが、演算装置281bが他の制御機能をも実現するものであることは言うまでもない。
【0085】
ロボット制御部282は、処理室201に隣接する真空搬送室103内に配置された真空搬送ロボット112(すなわち、基板搬入出口206を通じてウエハ200の搬入出を行う真空搬送ロボット112)について、その真空搬送ロボット112による基板載置台212の載置面211上へのウエハ200の載置ポジションを制御するものである。さらに詳しくは、ロボット制御部282は、処理容器203内における処理状況(例えば、基板載置台212内のヒータ213による加熱状況)に応じて、あるウエハ200を載置する第一ポジションと当該あるウエハ200の後に処理する他のウエハ200を載置する第二ポジションとを相違させるように、載置面211上への載置ポジションの可変制御を行うようになっている。
【0086】
このような載置ポジションの可変制御を行うために、ロボット制御部282は、検出部282a、算出部282b、指示部282c及び記憶部282dとしての機能を有している。
検出部282aは、真空搬送ロボット112の稼働パラメータを検出するものである。稼働パラメータには、少なくとも、真空搬送ロボット112のロボット駆動部(例えば、駆動モータやそのコントローラ等)283の駆動履歴情報または真空搬送ロボット112の位置情報が含まれる。
算出部282bは、検出部282aが検出した稼働パラメータと載置面211上にウエハ200を載置する第一ポジションの位置情報または第二ポジションの位置情報とを基に、真空搬送ロボット112を動作させる際の駆動データを算出するものである。
指示部282cは、算出部282bが算出した駆動データに応じて、真空搬送ロボット112のロボット駆動部283に対して動作指示を与えるものである。
記憶部282dは、算出部282bが駆動データを算出する際に必要となる各種データ(マッピングデータ等)を予め記憶しておくものである。
【0087】
なお、ロボット制御部282が行うウエハ200の載置ポジションの可変制御の具体的な態様については、後述する。
【0088】
(5)基板処理工程
次に、半導体製造工程の一工程として、上述した構成の処理モジュール201を用いてウエハ200上に薄膜を形成する工程について説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ281により制御される。
【0089】
ここでは、第一元素含有ガス(第一の処理ガス)としてDCSガスを用い、第二元素含有ガス(第二の処理ガス)としてNH
3ガスを用いて、それらを交互に供給することによってウエハ200上に半導体系薄膜としてシリコン窒化(SiN)膜を形成する例について説明する。
【0090】
図6は、第一実施形態に係る基板処理工程の概要を示すフロー図である。
図7は、
図6の成膜工程の詳細を示すフロー図である。
【0091】
(基板搬入載置・加熱工程:S102)
処理室202内においては、先ず、基板載置台212をウエハ200の搬送位置(搬送ポジション)まで下降させることにより、基板載置台212の貫通孔214にリフトピン207を貫通させる。その結果、リフトピン207が、基板載置台212表面よりも所定の高さ分だけ突出した状態となる。続いて、ゲートバルブ161を開いて搬送空間2022を真空搬送室103と連通させる。そして、この真空搬送室103から真空搬送ロボット112を用いてウエハ200を搬送空間2022に搬入し、リフトピン207上にウエハ200を移載する。これにより、ウエハ200は、基板載置台212の表面から突出したリフトピン207上に水平姿勢で支持される。
【0092】
処理容器203内にウエハ200を搬入したら、真空搬送ロボット112を処理容器203の外へ退避させ、ゲートバルブ161を閉じて処理容器203内を密閉する。その後、基板載置台212を上昇させることにより、基板載置台212に設けられた基板載置面211上にウエハ200を載置させ、さらに基板載置台212を上昇させることにより、前述した処理空間2021内の処理位置(基板処理ポジション)までウエハ200を上昇させる。
【0093】
このときの基板載置台212の載置面211上におけるウエハ200の載置ポジションは、真空搬送ロボット112による搬送空間2022内へのウエハ200の搬入位置に応じて定まる。つまり、載置面211上におけるウエハ200の載置ポジションは、真空搬送ロボット112に対するロボット制御部282からの動作指示の内容によって、任意にコントロールすることが可能である。
【0094】
ウエハ200が搬送空間2022に搬入された後、処理空間2021内の処理位置まで上昇すると、バルブ266とバルブ267を閉状態とする。これにより、搬送空間2022とTMP265の間、及び、TMP265と排気管264との間が遮断され、TMP265による搬送空間2022の排気が終了する。一方、バルブ277とバルブ275を開き、処理空間2021とAPC276の間を連通させるとともに、APC276とDP278の間を連通させる。APC276は、排気管262のコンダクタンスを調整することで、DP278による処理空間2021の排気流量を制御し、処理空間2021を所定の圧力(例えば10
−5〜10
−1Paの高真空)に維持する。
【0095】
なお、この工程において、処理容器203内を排気しつつ、不活性ガス供給系245から処理容器203内に不活性ガスとしてのN
2ガスを供給してもよい。すなわち、TMP265あるいはDP278で処理容器203内を排気しつつ、少なくとも第三ガス供給系のバルブ245dを開けることにより、処理容器203内にN
2ガスを供給してもよい。これにより、ウエハ200上へのパーティクルの付着を抑制することが可能となる。
【0096】
また、ウエハ200を基板載置台212の上に載置する際は、基板載置台212の内部に埋め込まれたヒータ213に電力を供給し、ウエハ200の表面が所定の温度となるよう制御される。つまり、基板載置台212内に設けられたヒータ213による加熱を行う。この際、ヒータ213の温度は、図示しない温度センサにより検出された温度情報に基づいてヒータ213への通電具合を制御することによって調整される。
【0097】
このようにして、基板搬入載置・加熱工程(S102)では、処理空間2021内を所定の圧力となるように制御するとともに、ウエハ200の表面温度が所定の温度となるように制御する。ここで、所定の温度、圧力とは、後述する成膜工程(S104)において、交互供給法により例えばSiN膜を形成可能な温度、圧力である。すなわち、第一の処理ガス供給工程(S202)で供給する第一元素含有ガス(原料ガス)が自己分解しない程度の温度、圧力である。
【0098】
具体的には、所定の温度は、例えば500℃以上650℃以下とすることが考えられる。500℃は、SiN膜を形成可能となる温度であるが、分散板234と上部容器2031の台座部分2031bとの熱膨張差が顕著になる温度でもある。一方、650℃を上限としたのは、例えばAlの融点が660℃であるから、それを超えると処理容器203等が装置形態を保てなくなり得るからである。
【0099】
また、所定の圧力は、例えば50〜5000Paとすることが考えられる。この温度、圧力は、後述する成膜工程(S104)においても維持されることになる。
【0100】
基板載置台212内のヒータ213で加熱を行う際には、冷却配管2034に冷媒を流して、基板搬入出口206の近傍領域を冷却する。これにより、ウエハ200の表面温度が所定の温度となるようにヒータ213が加熱処理を行う場合であっても、その加熱の影響が基板搬入出口206の近傍に配設されたOリング2033に及ぶのを抑制することができる。
【0101】
(成膜工程:S104)
基板搬入載置・加熱工程(S102)の後は、次に、成膜工程(S104)を行う。以下、
図7を参照し、成膜工程(S104)について詳細に説明する。なお、成膜工程(S104)は、異なる処理ガスを交互に供給する工程を繰り返すサイクリック処理である。
【0102】
(第一の処理ガス供給工程:S202)
成膜工程(S104)では、先ず、第一の処理ガス供給工程(S202)を行う。第一の処理ガス供給工程(S202)において、第一の処理ガスとして第一元素含有ガスであるDCSガスを供給する際は、バルブ243dを開くとともに、DCSガスの流量が所定流量となるように、MFC243cを調整する。これにより、処理空間2021内へのDCSガスの供給が開始される。なお、DCSガスの供給流量は、例えば100sccm以上5000sccm以下である。このとき、第三ガス供給系のバルブ245dを開き、第三ガス供給管245aからN
2ガスを供給する。また、第一不活性ガス供給系からN
2ガスを流してもよい。また、この工程に先立ち、第三ガス供給管245aからN
2ガスの供給を開始していてもよい。
【0103】
処理空間2021に供給されたDCSガスは、ウエハ200上に供給される。そして、ウエハ200の表面には、DCSガスがウエハ200の上に接触することによって「第一元素含有層」としてのシリコン含有層が形成される。
【0104】
シリコン含有層は、例えば、処理容器203内の圧力、DCSガスの流量、基板載置台212の温度、処理空間2021の通過にかかる時間等に応じて、所定の厚さ及び所定の分布で形成される。なお、ウエハ200上には、予め所定の膜が形成されていてもよい。また、ウエハ200または所定の膜には、予め所定のパターンが形成されていてもよい。
【0105】
DCSガスの供給を開始してから所定時間経過後、バルブ243dを閉じ、DCSガスの供給を停止する。DCSガスの供給時間は、例えば2〜20秒である。
【0106】
このような第一の処理ガス供給工程(S202)では、バルブ275及びバルブ277が開状態とされ、APC276によって処理空間2021の圧力が所定圧力となるように制御される。第一の処理ガス供給工程(S202)において、バルブ275及びバルブ277以外の排気系のバルブは全て閉状態とされる。
【0107】
(パージ工程:S204)
DCSガスの供給を停止した後は、第三ガス供給管245aからN
2ガスを供給し、シャワーヘッド230及び処理空間2021のパージを行う。
このとき、バルブ275及びバルブ277は開状態とされてAPC276によって処理空間2021の圧力が所定圧力となるように制御される。一方、バルブ275及びバルブ277以外の排気系のバルブは、全て閉状態とされる。これにより、第一の処理ガス供給工程(S202)でウエハ200に結合できなかったDCSガスは、DP278により、排気管262を介して処理空間2021から除去される。
次いで、第三ガス供給管245aからN
2ガスを供給した状態のまま、バルブ275及びバルブ277を閉状態とし、その一方でバルブ270を開状態とする。他の排気系のバルブは、閉状態のままである。すなわち、処理空間2021とAPC276の間を遮断するとともに、APC276と排気管264の間を遮断し、APC276による圧力制御を停止する一方で、シャワーヘッドバッファ室232とDP278との間を連通する。これにより、シャワーヘッド230(シャワーヘッドバッファ室232)内に残留したDCSガスは、排気管263を介し、DP278によりシャワーヘッド230から排気される。
【0108】
パージ工程(S204)では、ウエハ200、処理空間2021、シャワーヘッドバッファ室232での残留DCSガスを排除するために、大量のパージガスを供給して排気効率を高める。
【0109】
シャワーヘッド230のパージが終了すると、バルブ277及びバルブ275を開状態としてAPC276による圧力制御を再開するとともに、バルブ270を閉状態としてシャワーヘッド230と排気管264との間を遮断する。他の排気系のバルブは閉状態のままである。このときも、第三ガス供給管245aからのN
2ガスの供給は継続され、シャワーヘッド230及び処理空間2021のパージが継続される。なお、パージ工程(S204)において、排気管263を介したパージの前後に排気管262を介したパージを行うようにしたが、排気管263を介したパージのみであってもよい。また、排気管263を介したパージと排気管262を介したパージを同時に行うようにしてもよい。
【0110】
(第二の処理ガス供給工程:S206)
シャワーヘッドバッファ室232及び処理空間2021のパージが完了したら、続いて、第二の処理ガス供給工程(S206)を行う。第二の処理ガス供給工程(S206)では、バルブ244dを開けて、リモートプラズマユニット244e、シャワーヘッド230を介して、処理空間2021内へ第二の処理ガスとして第二元素含有ガスであるNH
3ガスの供給を開始する。このとき、NH
3ガスの流量が所定流量となるように、MFC244cを調整する。NH
3ガスの供給流量は、例えば1000〜10000sccmである。また、第二の処理ガス供給工程(S206)においても、第三ガス供給系のバルブ245dは開状態とされ、第三ガス供給管245aからN
2ガスが供給される。このようにすることで、NH
3ガスが第三ガス供給系に侵入することを防ぐ。
【0111】
リモートプラズマユニット244gでプラズマ状態とされたNH
3ガスは、シャワーヘッド230を介して、処理空間2021内に供給される。供給されたNH
3ガスは、ウエハ200上のシリコン含有層と反応する。そして、既に形成されているシリコン含有層がNH
3ガスのプラズマによって改質される。これにより、ウエハ200上には、例えばシリコン元素及び窒素元素を含有する層であるSiN層が形成されることになる。
【0112】
SiN層は、例えば、処理容器203内の圧力、NH
3ガスの流量、、基板載置台212の温度、プラズマ生成部の電力供給具合等に応じて、所定の厚さ、所定の分布、シリコン含有層に対する所定の窒素成分等の侵入深さで形成される。
【0113】
NH
3ガスの供給を開始してから所定時間経過後、バルブ244dを閉じ、NH
3ガスの供給を停止する。NH
3ガスの供給時間は、例えば2〜20秒である。
【0114】
このような第二の処理ガス供給工程(S206)では、第一の処理ガス供給工程(S202)と同様に、バルブ275及びバルブ277が開状態とされ、APC276によって処理空間2021の圧力が所定圧力となるように制御される。また、バルブ275及びバルブ277以外の排気系のバルブは全て閉状態とされる。
【0115】
(パージ工程:S208)
NH
3ガスの供給を停止した後は、上述したパージ工程(S204)と同様のパージ工程(S208)を実行する。パージ工程(S208)における各部の動作は、上述したパージ工程(S204)と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0116】
(判定工程:S210)
以上の第一の処理ガス供給工程(S202)、パージ工程(S204)、第二の処理ガス供給工程(S206)、パージ工程(S208)を1サイクルとして、コントローラ281は、このサイクルを所定回数(nサイクル)実施したか否かを判定する(S210)。サイクルを所定回数実施すると、ウエハ200上には、所望膜厚のSiN層が形成される。
【0117】
(判定工程:S106)
図6の説明に戻ると、以上の各工程(S202〜S210)からなる成膜工程(S104)の後は、判定工程(S106)を実行する。判定工程(S106)では、成膜工程(S104)を所定回数実施したか否かを判定する。ここで、所定回数とは、例えば、メンテナンスの必要が生じる程度に成膜工程(S104)を繰り返した回数のことをいう。
【0118】
上述した成膜工程(S104)において、第一の処理ガス供給工程(S202)では、DCSガスが搬送空間2022の側に漏れて、さらに基板搬入出口206に侵入することがある。また、第二の処理ガス供給工程(S206)でも同様に、NH
3ガスが搬送空間2022の側に漏れて、さらに基板搬入出口206に侵入することがある。パージ工程(S204,S208)では、搬送空間2022の雰囲気を排気することが困難である。そのため、搬送空間2022の側にDCSガス及びNH
3ガスが浸入すると、侵入したガス同士が反応してしまい、搬送空間2022内や基板搬入出口206等の壁面に反応副生成物等の膜が堆積されてしまう。このようにして堆積された膜は、パーティクルとなり得る。したがって、処理容器203内については、定期的なメンテナンスが必要となる。
【0119】
このことから、判定工程(S106)において、成膜工程(S104)を行った回数が所定回数に到達していないと判定した場合は、処理容器203内に対するメンテナンスの必要が未だ生じていないと判断し、基板搬出入工程(S108)に移行する。一方、成膜工程(S104)を行った回数が所定回数に到達したと判定した場合は、処理容器203内に対するメンテナンスの必要が生じていると判断し、基板搬出工程(S110)に移行する。
【0120】
(基板搬入出工程:S108)
基板搬入出工程(S108)では、上述した基板搬入載置・加熱工程(S102)と逆の手順にて、処理済みのウエハ200を処理容器203の外へ搬出する。そして、基板搬入載置・加熱工程(S102)と同様の手順にて、次に待機している未処理のウエハ200を処理容器203内に搬入する。その後、搬入されたウエハ200に対しては、成膜工程(S104)が実行されることになる。
【0121】
(基板搬出工程:S110)
基板搬出工程(S110)では、処理済のウエハ200を取り出して、処理容器203内にウエハ200が存在しない状態にする。具体的には、上述した基板搬入載置・加熱工程(S102)と逆の手順にて、処理済みのウエハ200を処理容器203の外へ搬出する。ただし、基板搬出入工程(S108)の場合とは異なり、基板搬出工程(S110)では、次に待機している新たなウエハ200の処理容器203内への搬入は行わない。
【0122】
(メンテナンス工程:S112)
基板搬出工程(S110)が終了すると、その後は、メンテナンス工程(S112)に移行する。メンテナンス工程(S112)では、処理容器203内に対するクリーニング処理を行う。具体的には、クリーニングガス供給系におけるバルブ248dを開状態として、クリーニングガス供給源248bからのクリーニングガスを、第三ガス供給管245a及び共通ガス供給管242を通じて、シャワーヘッド230内及び処理容器203内へ供給する。供給されたクリーニングガスは、シャワーヘッド230内及び処理容器203内に流入した後に、第一排気管261、第二排気管262または第三排気管263を通じて排気される。したがって、メンテナンス工程(S112)では、上述したクリーニングガスの流れを利用して、主にシャワーヘッド230内及び処理容器203内に対して、付着した堆積物(反応副生成物等)を除去するクリーニング処理を行うことができる。メンテナンス工程(S112)は、以上のようなクリーニング処理を所定時間行った後に終了する。所定時間は、予め適宜設定されたものであれば、特に限定されるものではない。
【0123】
(判定工程:S114)
メンテナンス工程(S112)の終了後は、判定工程(S114)を実行する。判定工程(S114)では、上述した一連の各工程(S102〜S112)を所定回数実施したか否かを判定する。ここで、所定回数とは、例えば、予め想定されたウエハ200の枚数分(すなわち、IOステージ105上のポッド100に収納されているウエハ200の枚数分)に相当する回数のことをいう。
【0124】
そして、各工程(S102〜S112)の繰り返し回数が所定回数に到達していないと判定した場合は、再び基板搬入載置・加熱工程(S102)から上述した一連の各工程(S102〜S112)を実行する。一方、各工程(S102〜S112)の繰り返し回数が所定回数に到達したと判定した場合は、IOステージ105上のポッド100に収納された全てのウエハ200に対する基板処理工程が完了したと判断し、上述した一連の各工程(S102〜S114)を終了する。
【0125】
(6)基板の載置ポジション
次に、上述した一連の基板処理工程において、真空搬送ロボット112が処理容器203内に搬入したウエハ200の載置面211上における載置ポジションについて説明する。なお、ウエハ200の載置ポジションは、真空搬送ロボット112によるウエハ200の搬入位置に応じて定まり、ロボット制御部282からの動作指示の内容によってコントロールされるものとする。
図8は、第一実施形態に係る基板処理装置における基板の載置ポジションの一具体例を模式的に示す説明図である。
【0126】
(ウエハと分散板との位置関係)
載置面211上に載置されたウエハ200は、基板載置台212が基板処理ポジションまで上昇すると、
図8(a)に示すように、分散板234と面した状態となる。そして、載置面211上のウエハ200には、分散板234の貫通孔234aからガス供給がされることになる。
【0127】
基板処理ポジションでのウエハ200と分散板234との位置関係は、例えば1ロットの1枚目のウエハ200の処理開始時の初期状態においては、ウエハ200の中心位置C1と、分散板234の中心位置C2とが、平面視したときに互いに一致するように設定される。
【0128】
ところで、上述したように、成膜工程(S104)では、異なる処理ガスを交互に供給する工程を繰り返すサイクリック処理を行う。サイクリック処理においては、ウエハ200への処理ガスの暴露量を多くすることで、一層あたりの形成時間の短縮化を図ることが可能である。ただし、処理ガスの暴露量を多くすると、ウエハ200の表面から成膜に寄与しない物質(副生成物)が発生するおそれも高くなる。
その一方で、成膜工程(S104)では、分散板234の各貫通孔234aから均一に供給された処理ガスが、分散板234の直下からウエハ200の表面上を外周側に向かって流れて排気される。そのため、分散板234の中心付近から流出した処理ガスと、分散板234の外周付近から流出した処理ガスとでは、ウエハ200の表面上を流れる距離が異なる。また、ウエハ200の中心付近で副生成物が発生した場合には、その副生成物がウエハ200の表面上を外周側に向かって流れる。
したがって、ウエハ200の面上では、処理ガスが流れる距離の違いに起因して、または外周側に流れた副生成物が外周付近での反応を阻害する等の悪影響を及ぼすことにより、中心付近と外周付近とで形成する膜質(膜密度や膜厚等)に偏りが起きることが考えられる。
【0129】
このような状況を鑑みると、基板載置台212の載置面211上に載置されたウエハ200と、分散板234における各貫通孔234aとの位置関係は、初期状態から一連の基板処理工程が完了するまでの間、常に一定の関係であることが望ましい。また、複数のウエハ200に対しても同様であり、例えば1ロット中で最初に処理するウエハ200と最後に処理するウエハ200を処理する間や、複数ロット間において最初に処理するウエハ200と最後に処理するウエハ200を処理する間も、一定の関係であることが望ましい。
【0130】
(加熱処理の影響)
ところが、一連の基板処理工程では、基板載置台212内のヒータ213が加熱処理を行う。そのため、ウエハ200が載置される基板載置台212と、そのウエハ200へのガス供給を行う分散板234とのそれぞれが、いずれも、ヒータ213による加熱処理の影響を受けることになる。
【0131】
具体的には、基板載置台212及び分散板234は、
図8(b)に示すように、ヒータ213による加熱処理の影響により、熱膨張による変形(伸び)が生じる。特に、ウエハ200の処理を繰り返し行った場合、熱が蓄積するために、熱膨張による変形が著しい。
ただし、このとき、基板載置台212については、その中心位置(ウエハ200の中心位置C1と一致する位置)を軸中心として四方に向けて変形(伸び)が発生する(図中矢印G1参照)。これに対して、分散板234については、円孔状の第一凹部235bを有する第一位置決め部235と長円孔状の第二凹部236bを有する第二位置決め部236とによって位置決めされていることから、第一位置決め部235の位置を基準にして第二位置決め部236が設けられた側に向けて変形(伸び)が発生する(図中矢印G2参照)。
【0132】
したがって、ヒータ213による加熱処理の後においては、基板載置台212の載置面211上に載置されたウエハ200の中心位置C1と、分散板234の中心位置C2との間に、それぞれの伸び方向に違いによりズレ量αの間隔が発生する。つまり、処理開始時の初期状態と加熱処理を開始した後では、載置面211上のウエハ200と分散板234における各貫通孔234aとの位置関係にズレが生じてしまうことになる。
【0133】
このような位置関係のズレは、処理開始当初に処理したウエハ200と、その後に処理したウエハ200とで、形成する膜質(膜密度や膜厚等)が異なるという事態を招く要因となり得る。このような事態を招くと、それが製品歩留まりの低下に繋がってしまうおそれがある。
【0134】
(載置ポジションの可変制御)
以上のことを踏まえ、本実施形態で説明する基板処理装置では、加熱処理を開始した後においても載置面211上のウエハ200と分散板234における各貫通孔234aとの位置関係にズレが生じてしまうのを抑制すべく、真空搬送ロボット112によるウエハ200の載置ポジションについて、ロボット制御部282が以下に述べるような可変制御を行う。
【0135】
ロボット制御部282は、処理容器203内における処理状況に応じて、ウエハ200の載置ポジションの可変制御を行う。処理容器203内における処理状況としては、例えば、ヒータ213が行う加熱処理における加熱状況が挙げられる。具体的には、ヒータ213による加熱状況が、処理開始時の初期状態であるか、加熱処理を開始した後の状態であるかに応じて、ウエハ200の載置ポジションを可変させる。なお、ヒータ213による加熱状況は、加熱処理の開始からの経過時間や加熱処理開始後における処理容器203内の温度検出結果等を加味したものであってもよい。
【0136】
また、ロボット制御部282は、あるウエハ200を載置する第一ポジションと、当該あるウエハ200の後に処理する他のウエハ200を載置する第二ポジションとを、互いに相違させるように、各ウエハ200の載置ポジションの可変制御を行う。例えば、処理開始時の初期状態にはウエハ200を第一ポジションに載置し、加熱処理を開始した後にはウエハ200を第二ポジションに載置する。その場合に、第二ポジションは、必ずしも一箇所である必要はなく、加熱処理開始からの経過時間や加熱処理開始後の処理容器203内の温度等に応じて複数箇所が設定されていてもよい。
【0137】
第一ポジションと第二ポジションは、上述した位置関係のズレ量に対応した距離だけ離れているものとする。例えば、加熱処理によってウエハ200の中心位置C1と分散板234の中心位置C2との間にズレ量αの間隔が発生することが想定される場合であれば、第二ポジションは、第一ポジションから分散板234の伸び方向に距離αだけ離れた位置に存在する。
【0138】
したがって、ロボット制御部282からの指示に従って動作する真空搬送ロボット112のエンドエフェクタ113は、加熱処理を開始した後においては、
図8(c)に示すように、第一ポジションから分散板234の伸び方向(図中における右方向)に向かって距離αだけ余分に移動し、その位置を第二ポジションとして、処理容器203内へのウエハ200の搬入及び載置を行うことになる。
【0139】
その後、基板載置台212が基板処理ポジションまで上昇すると、第二ポジションに搬入されたウエハ200は、
図8(d)に示すように、その中心位置C1が基板載置台212の中心位置から距離αだけズレた状態で載置面211上に載置されることになる。そのため、基板載置台212と分散板234とのそれぞれで加熱処理による伸び方向が違う場合であっても(図中矢印G1,G2参照)、ウエハ200の中心位置C1と分散板234の中心位置C2が平面視したときに互いに一致し得るようになる。つまり、ロボット制御部282が真空搬送ロボット112に対する載置ポジションの可変制御を行うことで、上述したような加熱処理の影響による位置関係のズレを相殺することが可能となり、載置面211上のウエハ200と分散板234の各貫通孔234aとの間の位置関係が一定の関係に保たれる。
【0140】
(ポジション可変制御の具体的手法)
以上のような載置ポジションの可変制御は、ロボット制御部282が検出部282a、算出部282b、指示部282c及び記憶部282dの各機能を利用して実行する。
【0141】
具体的には、真空搬送ロボット112を動作させるにあたり、ロボット制御部282では、先ず、検出部282aがその真空搬送ロボット112の稼働パラメータを検出する。稼働パラメータには、少なくとも、真空搬送ロボット112のロボット駆動部283の駆動履歴情報または真空搬送ロボット112の位置情報が含まれるものとする。また、稼働パラメータは、他の情報(例えば、加熱処理の開始からの経過時間や処理容器203内の温度検出結果等)を含むものであってもよい。このような稼働パラメータを検出することで、ロボット制御部282は、真空搬送ロボット112の稼働状況(例えば、真空搬送ロボット112の現在位置等)を把握し得るようになる。なお、稼働パラメータの検出手法については、公知技術を利用したものであればよく、ここでは詳細な説明を省略する。
【0142】
検出部282aが稼働パラメータを検出すると、続いて、ロボット制御部282では、算出部282bが、その稼働パラメータと、第一ポジションの位置情報または第二ポジションの位置情報とを基に、真空搬送ロボット112の駆動データを算出する。さらに詳しくは、算出部282bは、検出した稼働パラメータに基づき、第一ポジションを載置ポジションとすべきか、または第二ポジションを載置ポジションとすべきかを判断し、その判断した載置ポジションまでの移動に必要となる駆動データを算出する。第一ポジションの位置情報は、処理開始時の初期状態における載置ポジションとして、例えば事前に行うティーチング作業を通じて、記憶部282d内に予め設定されているものとする。また、第二ポジションの位置情報は、第一ポジションの位置情報と同様に記憶部282d内に予め設定されていてもよいが、例えば記憶部282dが温度変化と熱膨張量との対応関係を特定するマッピングデータを記憶している場合であれば、そのマッピングデータに基づいて算出部282bが算出するものであってもよい。
【0143】
算出部282bが駆動データを算出すると、その後は、算出した駆動データに応じて、ロボット制御部282の指示部282cが、真空搬送ロボット112のロボット駆動部283に対して動作指示を与える。この動作指示を受けて、ロボット駆動部283は、真空搬送ロボット112を動作させる。これにより、真空搬送ロボット112は、処理容器203内における処理状況に応じて、第一ポジションまたは第二ポジションのいずれかを載置ポジションとするように、処理容器203内へのウエハ200の搬入処理を行うことになる。
【0144】
(7)本実施形態の効果
本実施形態によれば、以下に示す一つまたは複数の効果を奏する。
【0145】
(a)本実施形態においては、シャワーヘッド230の分散板234が非金属材料である石英で構成されている。そのため、ヒータ213による加熱処理でシャワーヘッド230が高温になる場合であっても、ウエハ200への金属汚染の懸念がない。
しかも、非金属材料の分散板234とこれを支持する上部容器2031の台座部分2031bとは、互いに異なる熱膨張率の材質で構成されることになるが、それぞれの間の位置関係の固定がウエハ200の搬入出方向に沿って並ぶ第一位置決め部235と第二位置決め部236とによって行われる。そのため、ヒータ213による加熱処理の影響で分散板234等に変形(伸び)が生じても、分散板234等の破損を回避しつつ、その変形方向を主に真空搬送ロボット112のエンドエフェクタ113の移動方向に沿うように規制することができる。つまり、加熱処理の影響による分散板234等の変形を、真空搬送ロボット112の移動位置を可変させることで相殺することができ、載置面211上のウエハ200と分散板234の各貫通孔234aとの間の位置関係を一定の関係に保ち得る。
したがって、本実施形態によれば、シャワーヘッド230を利用してウエハ200へのガス供給を行う場合に、ウエハ200への加熱処理を行っても、その加熱処理がウエハ200へのガス供給に悪影響を及ぼすのを回避できる。
【0146】
(b)本実施形態においては、基板搬入出口206が設けられた側(すなわち、冷却配管2034が配設されている側)に、第一位置決め部235が配置されている。そして、第一位置決め部235は、ピン状の第一凸部235aと、第一凸部235aが挿入される円孔状の第一凹部235bと、によって構成されている。つまり、第一位置決め部235と第二位置決め部236による位置決めにあたり、第一位置決め部235の側が基準となるとともに、その第一位置決め部235の側は冷却配管2034を流れる冷媒によって冷却される。したがって、ウエハ200への加熱処理を行っても、位置決めにあたって基準となる第一位置決め部235の側については、その加熱処理による影響が及ぶのを抑制することができる。
【0147】
(c)本実施形態においては、基板搬入出口206が設けられた側とは対向する側に配置された第二位置決め部236が、ピン状の第二凸部236aと、第二凸部236aが挿入される長円孔状の第二凹部236bと、によって構成されている。そして、第二凹部236bは、長軸方向が基板搬入出口206を通じたウエハ200の搬入出方向に沿うように配されている。つまり、第一位置決め部235と第二位置決め部236による位置決めにあたり、第二位置決め部236の側が逃げとして働いて分散板234等に生じた変形(伸び)を吸収する。したがって、ウエハ200への加熱処理を行っても、分散板234等が破損してしまうことがなく、また分散板234等の変形方向を主に真空搬送ロボット112のエンドエフェクタ113の移動方向に沿うように規制することができる。
【0148】
(d)本実施形態において、第一位置決め部235及び第二位置決め部236は、基板搬入出口206を平面視したときの当該基板搬入出口206の中央位置を通り、かつ、その基板搬入出口206を通じたウエハ200の搬入出方向に沿って延びる仮想的な直線L上に配置されている。これにより、第一位置決め部235及び第二位置決め部236によって位置決めされる分散板234は、仮想的な直線Lを中心にして左右均等に振り分け配置される。したがって、ウエハ200への加熱処理により分散板234に変形(伸び)が生じても、ウエハ200の搬入出方向と交差する方向については、その変形が仮想的な直線Lを中心にして左右均等に生じることになるので、載置面211上のウエハ200と分散板234の各貫通孔234aとの間の位置関係にズレが生じるのを極力抑制することができる。
【0149】
(e)本実施形態においては、処理室201に隣接する真空搬送室103内に配置された真空搬送ロボット112が、基板搬入出口206を通じて処理容器203内に対するウエハ200の搬入出を行うとともに、その真空搬送ロボット112によるウエハ200の載置ポジションがロボット制御部282によって制御されるようになっている。つまり、真空搬送ロボット112によるウエハ200の載置ポジションは、ロボット制御部282からの動作指示の内容によって、任意にコントロールすることが可能である。したがって、分散板234等の変形方向が真空搬送ロボット112の移動方向に沿うように規制されていれば、分散板234等に変形が生じても、その変形によるウエハ200と分散板234の各貫通孔234aとの位置関係のズレを、真空搬送ロボット112の移動位置を可変させることで相殺し得るようになる。
【0150】
(f)本実施形態においては、処理容器203内でのウエハ200に対する処理状況に応じて、ロボット制御部282が真空搬送ロボット112によるウエハ200の載置ポジションの可変制御を行う。したがって、例えば、処理開始時の初期状態にはウエハ200を第一ポジションに載置し、加熱処理を開始した後にはウエハ200を第二ポジションに載置するといったように、処理状況に応じてウエハ200の載置ポジションを相違させることが実現可能となる。つまり、ウエハ200に対する加熱処理の影響により分散板234等に変形が生じても、これに適切に対応することが可能となり、ウエハ200と分散板234の各貫通孔234aとの間の位置関係を一定の関係に保ち得るようになる。
【0151】
(g)本実施形態においては、シャワーヘッド230に第一の処理ガス(第一元素含有ガス)と第二の処理ガス(第二元素含有ガス)を交互に供給する共通ガス供給管242が接続されている。そのため、成膜に寄与しない物質(副生成物)が発生し、その影響でウエハ200上に形成する膜質(膜密度や膜厚等)に偏りが起きるおそれがある。その場合であっても、本実施形態によれば、ウエハ200と分散板234の各貫通孔234aとの間の位置関係を、初期状態から一連の基板処理工程が完了するまでの間、1ロット中で最初に処理するウエハ200と最後に処理するウエハ200を処理する間、もしくは複数ロット間において最初に処理するウエハ200と最後に処理するウエハ200を処理する間、常に一定の関係に保ち得る。つまり、本実施形態は、異なる処理ガスを交互に供給する場合に適用すると非常に有用である。
【0152】
[本発明の第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。ここでは、主として上述した第一実施形態との相違点を説明し、第一実施形態と同様の箇所については説明を省略する。
【0153】
(装置構成)
図9は、第二実施形態に係る基板処理装置の全体構成例を示す横断面図である。
図例の基板処理装置は、各処理モジュール201a〜201dのそれぞれに複数(例えば二つ)の処理室202a〜202hが形成されている点で、上述した第一実施形態の構成とは異なる。具体的には、処理モジュール201aに二つの処理室202a,202bが形成され、処理モジュール201bに二つの処理室202c,202dが形成され、処理モジュール201cに二つの処理室202e,202fが形成され、処理モジュール201dに二つの処理室202g,202hが形成されている。
【0154】
各処理モジュール201a〜201dには、各処理室202a〜202hのそれぞれに個別に対応する複数の基板搬入出口206a〜206hが設けられている。基板搬入出口206a〜206hは、各処理モジュール201a〜201dのそれぞれにおける壁の一つに設けられている。したがって、各処理モジュール201a〜201dにおいては、同一の壁に設けられた複数(例えば二つ)の基板搬入出口206a〜206hが同方向(具体的には、真空搬送室103に面する方向)を向くように並んで配置されることになる。なお、各基板搬入出口206a〜206hは、それぞれがゲートバルブ161a〜161hによって開閉自在に覆われている。
【0155】
基板搬入出口206a〜206hが面する真空搬送室103内に配置された真空搬送ロボット112は、同方向を向くように並んで配置された複数(例えば二つ)の基板搬入出口206a〜206hのそれぞれに対応するように、二股状に分岐するアームの先に形成された複数(例えば二つ)のエンドエフェクタ113a,113bを有している。各エンドエフェクタ113a,113bは、二股状に分岐するアームの先に形成されていることから、それぞれが同期して動作するように構成されている。ここでいう「同期して動作する」とは、同じタイミングで同方向に動作することを意味する。
【0156】
(基板の載置ポジション)
続いて、第二実施形態におけるウエハ200の載置ポジションについて説明する。
図10は、第二実施形態に係る基板処理装置の処理室における要部構成の一例を模式的に示す説明図である。
【0157】
ここでは、各処理モジュール201a〜201dのうちの一つを例に挙げて具体的に説明する。処理モジュール201a〜201dの一つを例に挙げることから、以下の説明においては、処理モジュール201a〜201dを単に「処理モジュール201」と記述し、各処理モジュール201a〜201dに形成された各処理室202a〜202hのうち、真空搬送室103の側からみて左側に位置する処理室202a,202c,202e,202gを単に「処理室202L」と記述し、真空搬送室103の側からみて右側に位置する処理室202b,202d,202f,202hを単に「処理室202R」と記述し、それぞれに対応するゲートバルブ161a〜161hについても単に「ゲートバルブ161L」または「ゲートバルブ161R」と記述する。
【0158】
処理モジュール201には、二つの処理室202L,202Rが形成されている。そして、処理室202Lに対しては、真空搬送ロボット112のエンドエフェクタ113aがウエハ200の搬入出を行う。一方、処理室202Rに対しては、真空搬送ロボット112のエンドエフェクタ113bがウエハ200の搬入出を行う。
このとき、各処理室202L,202Rは、それぞれに対応するゲートバルブ161L,161Rが処理モジュール201の同一壁面に位置している。さらに、各エンドエフェクタ113a,113bは、それぞれが同期して動作する。
したがって、各処理室202L,202Rに対しては、ウエハ200の搬入出が同じタイミングでの同方向へのロボット動作によって行われる。つまり、各処理室202L,202Rに対するウエハ200の搬入出が、処理モジュール201単位で効率的に行われることになる。
【0159】
しかも、各処理室202L,202R内では、分散板234についての位置決めがウエハ200の搬入出方向に沿って並ぶ第一位置決め部235と第二位置決め部236とによって行われている。したがって、各処理室202L,202R内において、ウエハ200に対する加熱処理の影響で分散板234等に変形(伸び)が生じる場合であっても、その変形方向を主に真空搬送ロボット112のエンドエフェクタ113a,113bの移動方向に沿うように規制することができる。つまり、処理モジュール201に二つの処理室202L,202Rが形成されていても、第一実施形態の場合と同様に、加熱処理の影響による分散板234等の変形を、真空搬送ロボット112の移動位置を可変させることで相殺することができ、載置面211上のウエハ200と分散板234の各貫通孔234aとの間の位置関係を一定の関係に保ち得るようになる。
【0160】
(冷却機構)
ところで、第二実施形態で説明する構成においても、冷却機構を構成する冷却配管2034については、第一実施形態の場合と同様に、処理モジュール201のゲートバルブ161L,161Rが配されている側に配設することが考えられる(
図10参照)。ただし、第二実施形態においては、第一実施形態の場合とは異なり、処理モジュール201に二つの処理室202L,202Rが隣り合うように配置されている。そのため、冷却機構を構成する冷却配管2034,2035については、以下に述べるように配設することも考えられる。
【0161】
図11は、第二実施形態に係る基板処理装置の処理室における要部構成の他の例を模式的に示す説明図である。
各処理室202L,202Rでは、ウエハ200に対する加熱処理の影響により、基板載置台212や分散板234等に変形(伸び)が生じる。このときの変形は、ウエハ200の搬入出方向に沿った方向のみならず、当該搬入出方向と交差する方向にも生じ得る。 ただし、二つの処理室202L,202Rは、互いに隣接して配置されている。そのため、ウエハ200の搬入出方向と交差する方向の変形については、処理室202Lでは、隣接する処理室202Rの存在により、その処理室202Rの側への発生が阻害され、主としてその反対側に向けて生じる(図中の破線矢印参照)。また、処理室202Rでは、隣接する処理室202Lの存在により、その処理室202Lの側への発生が阻害され、主としてその反対側に向けて生じる(図中の破線矢印参照)。
このような変形(伸び)の発生方向の偏りは、載置面211上のウエハ200と分散板234の各貫通孔234aとの間の位置関係を一定の関係に保つ上では好ましくない。
【0162】
そこで、各処理室202L,202Rが隣接配置されている場合には、基板搬入出口206の近傍に配設された冷却配管2034に加えて、各処理室202L,202Rの隣接方向における外壁部分(すなわち、変形が偏って発生する側に存在する外壁部分)に、図示せぬ温調ユニットからの冷媒が供給される冷却配管2035を配設することが考えられる。
【0163】
このような冷却配管2035を配設すれば、その冷却配管2035を流れる冷媒によって、当該冷却配管2035が配設された外壁部分の近傍が冷却される。したがって、各処理室202L,202Rが隣接配置されている場合であっても、加熱処理の影響による変形(伸び)の発生方向の偏りを抑制することができる。
【0164】
(本実施形態の効果)
本実施形態によれば、上述した第一実施形態における効果に加えて、以下に示す効果を奏する。
【0165】
(h)本実施形態においては、処理モジュール201が複数の処理室202L,202Rを有するとともに、各処理室202L,202Rのそれぞれに対応する複数の基板搬入出口206が同方向を向くように設けられている。そのため、各処理室202L,202Rに対するウエハ200の搬入出を処理モジュール201単位で行うことが可能となるので、ウエハ200の搬入出の効率を向上させることができ、基板処理装置でのウエハ200に対する処理のスループット向上が図れる。
【0166】
(i)本実施形態においては、真空搬送ロボット112が各処理室202L,202Rのそれぞれに対応する複数のエンドエフェクタ113a,113bを有するとともに、各エンドエフェクタ113a,113bが同期して動作するように構成されている。そのため、処理モジュール201に複数の処理室202L,202Rが形成されていても、加熱処理の影響による分散板234等の変形を、真空搬送ロボット112の移動位置を可変させることで相殺することができ、載置面211上のウエハ200と分散板234の各貫通孔234aとの間の位置関係を一定の関係に保つことが可能となる。
【0167】
[他の実施形態]
以上に、本発明の第一実施形態及び第二実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0168】
例えば、上述した各実施形態では、基板処理装置が行う成膜処理において、第一元素含有ガス(第一の処理ガス)としてDCSガスを用い、第二元素含有ガス(第二の処理ガス)としてNH
3ガスを用いて、それらを交互に供給することによってウエハ200上にSiN膜を形成する場合を例に挙げたが、本発明がこれに限定されることはない。すなわち、成膜処理に用いる処理ガスは、DCSガスやNH
3ガス等に限られることはなく、他の種類のガスを用いて他の種類の薄膜を形成しても構わない。さらには、3種類以上の処理ガスを用いる場合であっても、これらを交互に供給して成膜処理を行うのであれば、本発明を適用することが可能である。具体的には、第一元素としては、Siではなく、例えばTi、Zr、Hf等、種々の元素であってもよい。また、第二元素としては、Nではなく、例えばO等であってもよい。
【0169】
また、例えば、上述した各実施形態では、基板処理装置が行う処理として成膜処理を例に挙げたが、本発明がこれに限定されることはない。すなわち、本発明は、各実施形態で例に挙げた成膜処理の他に、各実施形態で例示した薄膜以外の成膜処理にも適用できる。また、基板処理の具体的内容は不問であり、成膜処理だけでなく、アニール処理、拡散処理、酸化処理、窒化処理、リソグラフィ処理等の他の基板処理を行う場合にも適用できる。さらに、本発明は、他の基板処理装置、例えばアニール処理装置、エッチング装置、酸化処理装置、窒化処理装置、露光装置、塗布装置、乾燥装置、加熱装置、プラズマを利用した処理装置等の他の基板処理装置にも適用できる。また、本発明は、これらの装置が混在していてもよい。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【0170】
また、例えば、上述した各実施形態では、加熱部の一つとしてヒータ213が記載されているが、本発明がこれに限定されることはなく、基板や処理室を加熱するものであれば、他の加熱源を含めてもよい。例えば、基板載置台210の下方や側方に加熱用のランプ構造や抵抗ヒータを加熱部として設けてもよい。
【0171】
[本発明の好ましい態様]
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0172】
[付記1]
本発明の一態様によれば、
基板を処理する処理室を有する処理モジュールと、
前記処理モジュールを構成する壁の一つに設けられた基板搬入出口と、
前記基板搬入出口の近傍に配設された冷却機構と、
前記処理室内に配され、前記基板が載置される基板載置面を有する基板載置部と、
前記基板を加熱する加熱部と、
前記基板載置面と対向する位置に配され、第一の熱膨張率を有する材質で構成された分散板を有するシャワーヘッドと、
前記第一の熱膨張率とは異なる第二の熱膨張率を有する材質で構成されて前記分散板を支持する分散板支持部と、
前記分散板と前記分散板支持部との位置決めをするものであり、前記基板搬入出口が設けられた側に配置された第一位置決め部と、
前記分散板と前記分散板支持部との位置決めをするものであり、前記基板搬入出口が設けられた側とは前記処理室を介して対向する側に配置され、かつ、前記基板搬入出口を通じた基板の搬入出方向に沿って前記第一位置決め部と並ぶ位置に配置された第二位置決め部と、
を備える基板処理装置が提供される。
【0173】
[付記2]
好ましくは、
前記第一位置決め部は、
ピン状の第一凸部と、
前記第一凸部が挿入される円孔状の第一凹部と、
を有する付記1に記載の基板処理装置が提供される。
【0174】
[付記3]
好ましくは、
前記第二位置決め部は、
ピン状の第二凸部と、
前記第二凸部が挿入される長円孔状で、長軸方向が前記基板搬入出口を通じた基板の搬入出方向に沿うように配された第二凹部と、
を有する付記1または2に記載の基板処理装置が提供される。
【0175】
[付記4]
好ましくは、
前記第一位置決め部及び前記第二位置決め部は、前記基板搬入出口の中央を通り、前記基板搬入出口を通じた基板の搬入出方向に沿って延びる仮想的な直線上に配置されている
付記1から3のいずれかに記載の基板処理装置が提供される。
【0176】
[付記5]
好ましくは、
前記処理モジュールに隣接する搬送室と、
前記搬送室内に配置され、前記基板搬入出口を通じて前記処理モジュールに対する基板の搬入出を行う搬送ロボットと、
前記搬送ロボットによる前記基板載置面上への基板の載置ポジションを制御するロボット制御部と、
を備える付記1から4のいずれかに記載の基板処理装置が提供される。
【0177】
[付記6]
好ましくは、
前記ロボット制御部は、前記処理モジュール内における処理状況に応じて前記載置ポジションの可変制御を行うものである
付記5に記載の基板処理装置が提供される。
【0178】
[付記7]
好ましくは、
前記ロボット制御部は、ある基板を載置する第一ポジションと前記ある基板の後に処理する他の基板を載置する第二ポジションとを相違させるように、前記載置ポジションの可変制御を行うものである
付記6に記載の基板処理装置が提供される。
【0179】
[付記8]
好ましくは、
前記ロボット制御部は、
前記搬送ロボットの稼働パラメータを検出する検出部と、
前記検出部が検出した稼働パラメータと前記第一ポジションの位置情報または前記第二ポジションの位置情報とを基に、前記搬送ロボットの駆動データを算出する算出部と、
前記算出部が算出した駆動データに応じて、前記搬送ロボットの駆動部に対して動作指示を与える指示部と、
を有する付記7に記載の基板処理装置が提供される。
【0180】
[付記9]
好ましくは、
前記稼働パラメータは、少なくとも前記搬送ロボットの前記駆動部の駆動履歴情報または前記搬送ロボットの位置情報を含む
付記8に記載の基板処理装置が提供される。
【0181】
[付記10]
好ましくは、
前記処理モジュールは、複数の前記処理室を有するとともに、前記処理室のそれぞれに対応する複数の前記基板搬入出口が同方向を向くように設けられている
付記1から9のいずれかに記載の基板処理装置が提供される。
【0182】
[付記11]
好ましくは、
前記搬送ロボットは、同方向を向く複数の前記基板搬入出口のそれぞれに対応する複数のエンドエフェクタを有するとともに、各エンドエフェクタが同期して動作するように構成されている
付記10に記載の基板処理装置が提供される。
【0183】
[付記12]
好ましくは、
前記シャワーヘッドには、第一ガスと当該第一ガスとは異なる第二ガスを前記処理室に交互に供給する供給部が接続されている
付記1から11のいずれかに記載の基板処理装置が提供される。
【0184】
[付記13]
本発明の他の態様によれば、
基板を処理する処理室を有する処理モジュール内に、前記処理モジュールを構成する壁の一つで冷却機構を有する壁に設けられた基板搬入出口を通じて、基板を搬入する工程と、
前記処理モジュール内に搬入した基板を、前記処理室内に配された基板載置部の基板載置面上に載置する工程と、
前記基板を加熱する工程と、
前記基板載置面と対向する位置に配されたシャワーヘッドから、前記シャワーヘッドが有する分散板を通じてガスを供給し、前記基板載置面上の基板に対する処理を行う工程と、
処理後の基板を前記処理モジュール内から搬出する工程と、を備え
前記処理モジュール内に基板を搬入する工程に先立ち、前記基板搬入出口が設けられた側に配置された第一位置決め部と、前記基板搬入出口が設けられた側とは前記処理室を介して対向する側に配置され、かつ、前記基板搬入出口を通じた基板の搬入出方向に沿って前記第一位置決め部と並ぶ位置に配置された第二位置決め部とによって、第一の熱膨張率を有する材質で構成された前記分散板と、前記第一の熱膨張率とは異なる第二の熱膨張率を有する材質で構成されて前記分散板を支持する分散板支持部との位置決めをしておく
半導体装置の製造方法が提供される。
【0185】
[付記14]
好ましくは、
前記処理モジュール内に基板を搬入する工程及び前記処理モジュール内の前記基板載置面上に基板を載置する工程を、前記処理モジュールに隣接する搬送室内に配置された搬送ロボットを用いて行い、
前記基板載置面上に基板を載置する工程では、前記搬送ロボットによる前記基板載置面上への基板の載置ポジションについて、前記処理モジュール内における処理状況に応じて可変制御を行う
付記13に記載の半導体装置の製造方法が提供される。
【0186】
[付記15]
本発明のさらに他の態様によれば、
基板を処理する処理室を有する処理モジュール内に、前記処理モジュールを構成する壁の一つで冷却機構を有する壁に設けられた基板搬入出口を通じて、基板を搬入する手順と、
前記処理モジュール内に搬入した基板を、前記処理室内に配された基板載置部の基板載置面上に載置する手順と、
前記基板を加熱する手順と、
前記基板載置面と対向する位置に配されたシャワーヘッドから、前記シャワーヘッドが有する分散板を通じてガスを供給して、前記基板載置面上の基板に対する処理を行う手順と、
処理後の基板を前記処理モジュール内から搬出する手順と、
をコンピュータに実行させるとともに、
前記処理モジュール内に基板を搬入する手順に先立ち、前記基板搬入出口が設けられた側に配置された第一位置決め部と、前記基板搬入出口が設けられた側とは前記処理室を介して対向する側に配置され、かつ、前記基板搬入出口を通じた基板の搬入出方向に沿って前記第一位置決め部と並ぶ位置に配置された第二位置決め部とによって、第一の熱膨張率を有する材質で構成された前記分散板と、前記第一の熱膨張率とは異なる第二の熱膨張率を有する材質で構成されて前記分散板を支持する分散板支持部との位置決めをしておく手順
を前記コンピュータに実行させるプログラムが提供される。
【0187】
[付記16]
好ましくは、
前記処理モジュール内に基板を搬入する手順及び前記処理モジュール内の前記基板載置面上に基板を載置する手順を、前記処理モジュールに隣接する搬送室内に配置された搬送ロボットを用いて行い、
前記基板載置面上に基板を載置する手順では、前記搬送ロボットによる前記基板載置面上への基板の載置ポジションについて、前記処理モジュール内における処理状況に応じて可変制御を行う
付記15に記載のプログラムが提供される。
【0188】
[付記17]
本発明のさらに他の態様によれば、
基板を処理する処理室を有する処理モジュール内に、前記処理モジュールを構成する壁の一つで冷却機構を有する壁に設けられた基板搬入出口を通じて、基板を搬入する手順と、
前記処理モジュール内に搬入した基板を、前記処理室内に配された基板載置部の基板載置面上に載置する手順と、
前記基板を加熱する手順と、
前記基板載置面と対向する位置に配されたシャワーヘッドから、前記シャワーヘッドが有する分散板を通じてガスを供給して、前記基板載置面上の基板に対する処理を行う手順と、
処理後の基板を前記処理モジュール内から搬出する手順と、
をコンピュータに実行させるとともに、
前記処理モジュール内に基板を搬入する手順に先立ち、前記基板搬入出口が設けられた側に配置された第一位置決め部と、前記基板搬入出口が設けられた側とは前記処理室を介して対向する側に配置され、かつ、前記基板搬入出口を通じた基板の搬入出方向に沿って前記第一位置決め部と並ぶ位置に配置された第二位置決め部とによって、第一の熱膨張率を有する材質で構成された前記分散板と、前記第一の熱膨張率とは異なる第二の熱膨張率を有する材質で構成されて前記分散板を支持する分散板支持部との位置決めをしておく手順
を前記コンピュータに実行させるプログラムを記録した記録媒体が提供される。
【0189】
[付記18]
好ましくは、
前記処理モジュール内に基板を搬入する手順及び前記処理モジュール内の前記基板載置面上に基板を載置する手順を、前記処理モジュールに隣接する搬送室内に配置された搬送ロボットを用いて行い、
前記基板載置面上に基板を載置する手順では、前記搬送ロボットによる前記基板載置面上への基板の載置ポジションについて、前記処理モジュール内における処理状況に応じて可変制御を行う
付記17に記載の記録媒体が提供される。