(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6285416
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】吸着カップ付き吸着装置及びそのガラス拭き取り装置
(51)【国際特許分類】
A47L 1/02 20060101AFI20180215BHJP
C03C 23/00 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
A47L1/02
C03C23/00 A
【請求項の数】10
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-503741(P2015-503741)
(86)(22)【出願日】2013年4月3日
(65)【公表番号】特表2015-519093(P2015-519093A)
(43)【公表日】2015年7月9日
(86)【国際出願番号】CN2013073697
(87)【国際公開番号】WO2013149583
(87)【国際公開日】20131010
【審査請求日】2016年3月25日
(31)【優先権主張番号】201210097471.X
(32)【優先日】2012年4月5日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512266028
【氏名又は名称】エコバクス ロボティクス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ECOVACS ROBOTICS CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】リュ,シャオミン
【審査官】
大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−064570(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0048081(US,A1)
【文献】
特開平03−016887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 1/02
C03C 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着装置と、清掃ユニット(3)と、駆動ユニット(4)と、走行ユニット(2)と、制御ユニット(5)とを備えるガラス拭き取り装置であって、
前記走行ユニット(2)及び前記清掃ユニット(3)は、いずれも前記ガラス拭き取り装置(8)の底部に配置され、前記制御ユニット(5)は、前記駆動ユニット(4)に接続され、前記駆動ユニット(4)は、前記制御ユニット(5)の作用により走行のために前記走行ユニット(2)を制御し、前記ガラス拭き取り装置は、吸着カップ(11)を備える前記吸着装置によってガラスの表面に吸い付くガラス拭き取り装置であり、
前記吸着カップ(11)は、互いに接続された可撓層(9)及び薄膜層(10)を備えており、前記薄膜層(10)が、前記吸着カップ(11)の周方向に沿った連続的な薄膜層であり、前記薄膜層(10)が0.08〜0.12mmの厚さを有し、前記可撓層(9)が、前記ガラス拭き取り装置の底部へと接続され、前記薄膜層(10)が、前記ガラスの前記表面に接触且つ密着して使用されることを特徴とするガラス拭き取り装置。
【請求項2】
前記可撓層(9)が、ゴム又はシリカゲルで作られていることを特徴とする請求項1に記載のガラス拭き取り装置。
【請求項3】
前記薄膜層(10)の材料が、前記可撓層(9)の材料の摩擦係数よりも小さい摩擦係数を有していることを特徴とする請求項2に記載のガラス拭き取り装置。
【請求項4】
前記薄膜層(10)が、プラスチックフィルムであることを特徴とする請求項2に記載のガラス拭き取り装置。
【請求項5】
前記プラスチックフィルムの材料が、ポリエチレンであることを特徴とする請求項4に記載のガラス拭き取り装置。
【請求項6】
前記プラスチックフィルムが、0.08〜0.12mmの厚さを有することを特徴とする請求項5に記載のガラス拭き取り装置。
【請求項7】
前記吸着装置(1)が、気体案内管(12)及び真空ポンプ(13)を更に備えており、前記真空ポンプ(13)が、前記気体案内管(12)を介して前記ガラス拭き取り装置の底部の前記吸着カップ(11)へと接続されることを特徴とする請求項2に記載のガラス拭き取り装置。
【請求項8】
通常の状態において、前記吸着カップの前記ガラス拭き取り装置の底面よりも突き出している高さが、前記走行ユニット(2)の前記ガラス拭き取り装置の底面よりも突き出している高さよりも、距離dだけ高いことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のガラス拭き取り装置。
【請求項9】
前記距離dが、0.5〜1mmであることを特徴とする請求項8に記載のガラス拭き取り装置。
【請求項10】
吸着カップを有する吸着装置であって、
前記吸着カップ(11)が、可撓層(9)及び薄膜層(10)を備えており、前記薄膜層(10)が、前記吸着カップ(11)の周方向に沿った連続的な薄膜層であり、前記薄膜層(10)が0.08〜0.12mmの厚さを有し、前記薄膜層(10)が、前記可撓層(9)の表面に配置され、前記吸着カップ(11)が、前記薄膜層(10)を介した密着吸着を有することを特徴とする吸着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型の家庭用電気器具の製造の技術分野に関し、特に吸着カップを備える吸着装置及びそのガラス拭き取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス拭き取りロボットなどの従来のガラス拭き取り装置は、吸着ユニットによってガラスに吸い付くことによって作業を実行することができる。一般的な吸着ユニットは、ガラス拭き取り装置の底部に固定された吸着カップを備えている。吸着カップが、ゴム、シリカゲル、などの柔らかい材料で作られる場合、これらの弾性材料が、装置に充分な吸着を持たせることを可能にし得る。しかしながら、これらの材料は大きな摩擦係数を有するため、ガラス拭き取り装置が、吸着カップとガラスとの間の大きな摩擦力に打ち勝つことができず、結果としてガラス拭き取り装置が滑らかに移動又は走行できず、ガラス拭き取り装置の性能に悪影響が及ぶことも多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の技術的課題は、先行技術の欠点を克服するためのガラス拭き取り装置を提供することにある。開示されるガラス拭き取り装置は、単純な構造を有するだけでなく、ガラス拭き取り装置の作業時のガラスからの落下が効果的に防止されるように、充分な吸着力を生み出すこともできる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述の技術的課題を解決するために、本発明は、以下の技術的解決策を採用する。
【0005】
ガラス拭き取り装置が、吸着装置と、清掃ユニットと、駆動ユニットと、走行ユニットと、制御ユニットとを備える。走行ユニット及び清掃ユニットは、いずれもガラス拭き取り装置の底部に配置される。制御ユニットが、清掃ユニット及び駆動ユニットにそれぞれ接続される。制御ユニットの作用により、駆動ユニットが、走行のために走行ユニットを制御する。ガラス拭き取り装置は、吸着装置によってガラスの表面に吸い付く。吸着装置は、吸着カップを備えている。吸着カップは、互いに接続された可撓層及び薄膜層を備えている。可撓層が、ガラス拭き取り装置の底部へと接続される。薄膜層が、ガラスの表面に接触且つ密着するように構成される。
【0006】
上記の技術的解決策にもとづき、本発明は、解決すべき技術的課題に対処するために、以下の技術的解決策を更に採用することができる。
【0007】
可撓層は、ゴム又はシリカゲルで製作され得る。
【0008】
さらに、薄膜層の材料が、可撓層の材料の摩擦係数よりも小さい摩擦係数を有することができる。
【0009】
さらに、薄膜層が、プラスチックフィルムであってよい。
【0010】
さらに、プラスチックフィルムの材料が、ポリエチレンであってよい。
【0011】
さらに、プラスチックフィルムが、0.08〜0.12mmの厚さを有することができる。
【0012】
さらに、吸着装置が、気体案内管及び真空ポンプを更に備えることができ、真空ポンプが、気体案内管を介してガラス拭き取り装置の底部に配置された吸着カップへと接続される。
【0013】
またさらに、通常の状態において、吸着カップのガラス拭き取り装置の底面よりも突き出している高さが、走行ユニットのガラス拭き取り装置の底面よりも突き出している高さよりも、距離dだけ高く、ここで距離dは、0.5〜1mmであってよい。通常の状態とは、ガラス上でガラス拭き取り装置によって生み出される圧力がゼロである状態を指す。
【0014】
さらに本発明は、吸着カップを備える吸着装置であって、吸着カップが、可撓層及び薄膜層を備えており、薄膜層が、可撓層の表面に配置され、吸着カップが、薄膜層を介した表面への密着吸着を有する吸着装置を提供する。
【0015】
既存のガラス拭き取り装置と比べて、本発明は、以下の、有益な効果を有する。吸着カップが可撓層及び薄膜層を有する構造を採用し、薄膜層がガラスの表面に密接に接触且つ密着するため、本発明のガラス拭き取り装置は、稼働時に吸着ユニットをガラスにしっかりと付着させることができるだけでなく、薄膜層とガラスとの間の小さな摩擦力ゆえに、滑らかに走行することもできる。ガラス拭き取り装置が走行中に小さな隆起に遭遇した場合、薄膜層が、吸着カップの負圧室の漏れを回避するように容易に変形し、したがって稼働中のガラス拭き取り装置のガラスからの落下が効果的に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】通常の状態にある本発明のガラス拭き取り装置の概略図である。
【
図2】稼働状態にある本発明のガラス拭き取り装置の概略図である。
【
図3】本発明によるガラス拭き取り装置の構造の概略図を示している。
【
図4】本発明によるガラス拭き取り装置の制御の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の技術的解決策は、図面及び実施形態を参照して、以下で更に説明される。
【0018】
図1が、通常の状態にある本発明によるガラス拭き取り装置の概略図であり、
図2が、稼働状態にある本発明によるガラス拭き取り装置の概略図であり、
図3が、本発明によるガラス拭き取り装置の構造の概略図である。
【0019】
図1及び
図2に示されるように、本発明のガラス拭き取り装置8は、吸着装置と、清掃ユニットと、駆動ユニットと、走行ユニットと、制御ユニットとを備える。走行ユニット及び清掃ユニットは、どちらもガラス拭き取り装置の底部に配置されている。制御ユニットが、清掃ユニット及び駆動ユニットにそれぞれ接続されている。制御ユニットの作用により、駆動ユニットが、走行のために走行ユニットを制御する。ガラス拭き取り装置8は、吸着装置1によってガラスの表面に吸い付く。吸着装置は、吸着カップ11を備えている。吸着カップ11は、互いに接続された可撓層9及び薄膜層10を備える。可撓層9は、ガラス拭き取り装置の底部へと接続されている。薄膜層10は、ガラス6の表面に接触且つ密着するように構成されている。
【0020】
この実施形態において、可撓層9の好ましい材料は、ゴム又はシリカゲルであり、薄膜層10の材料は、可撓層9の材料の摩擦係数よりも小さい摩擦係数を有し、薄膜層10の材料は、好ましくはポリエチレンフィルムなどのプラスチックフィルムであってよく、プラスチックフィルムの厚さは、好ましくは0.08〜0.12mmの間に制御される。確かに、可撓層9及び薄膜層10は、先行技術におけるさまざまな種類の適切な材料で製作され得る。例えば、薄膜層10は、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、などで製作され得、プラスチックフィルムは、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、及びポリスチレン、などで製作され得る。また、ここに挙げられていない他の適切な材料も、本発明によって使用され得る。
【0021】
図3に示されるとおり、吸着カップ11が充分な吸着力を生み出すことができるよう、本発明における吸着装置1は、気体案内管12及び真空ポンプ13を更に備え、真空ポンプ13が、気体案内管12を介してガラス拭き取り装置の底部に配置された吸着カップ11へと接続される。
【0022】
図4に示されるように、本発明のガラス拭き取り装置8は、走行ユニット2、清掃ユニット3、駆動ユニット4、及び制御ユニット5を備える。走行ユニット2及び清掃ユニット3は、ガラス拭き取り装置8の底部にそれぞれ配置される。制御ユニット5が、清掃ユニット3及び駆動ユニット4にそれぞれ接続される。制御ユニット5の作用により、駆動ユニット4が、走行のために走行ユニット2を制御する。走行ユニット2、清掃ユニット3、駆動ユニット4、及び制御ユニット5が、先行技術における技術を使用することができ、したがって不必要な詳細は本明細書において説明されないことを、述べておく必要がある。
【0023】
図1に示されるとおり、ガラス拭き取り装置が通常の状態にあるとき、ガラス拭き取り装置の底面よりも突き出している吸着カップ11の高さは、ガラス拭き取り装置の底面よりも突き出している走行ユニット2(例えば、クローラベルト)の高さよりも距離dだけ高く、ここで通常の状態は、ガラス上でガラス拭き取り装置によって生み出される圧力がゼロである状態を指す。距離dは、通常は可撓層の変形の程度によって決定され、本発明においてはdが0.5〜1mmであることが好ましい。
【0024】
ガラス拭き取り装置の稼働時に、真空ポンプ13によって吸着カップ11内の空気が吸い出されることで、吸着カップ11の内側のチャンバが負圧を生み出し、内側と外側との圧力差によって生み出される圧力により、薄膜層10がガラス6に完全に吸い付き且つ張り付くように、吸着カップ11が変形することができる。走行ユニット2(例えば、クローラベルト)とガラスとの間の距離dが、徐々に小さくなり、次いでゼロになり、ガラス6上でクローラベルトによって生み出される正の圧力が徐々に大きくなり、結果として吸着カップとガラスとの間の摩擦力に打ち勝つための充分な駆動力を生み出し、したがってロボットの滑らかな走行を可能にする。薄膜層10の材料が、可撓層9の材料の摩擦係数よりも小さい摩擦係数を有しているため、ガラス拭き取り装置が移動するときのガラス拭き取り装置とガラスとの間の摩擦力は効果的に小さくされ得、更に薄膜層10の厚さがきわめて薄い(通常は、mmの水準)ため、薄膜層10は、小さな隆起に出会ったときにガラスの表面の小さな隆起に対応する位置においてのみ突き出され、残りの位置は依然としてガラスの表面に付着している。したがって、吸着カップの漏れ又は障害は効果的に防止され得る。
【0025】
本発明によって提供される吸着装置においては、吸着カップの可撓層9及び薄膜層10の組み合わせ構造が、垂直な壁面又はガラス表面に効果的に吸い付いて移動することができ、したがって垂直面用のさまざまな清掃装置に適用可能である。
【0026】
以上、本発明の実施形態が例示された。しかしながら、本発明のガラス拭き取り装置は、これらの実施形態に限られない。本発明の技術的思想及び原理の範囲内で行なわれるあらゆる変更、均等な置き換え、及び/又は改善が、本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0027】
1 吸着装置
2 走行ユニット
3 清掃ユニット
4 駆動ユニット
5 制御ユニット
6 ガラス
8 ガラス拭き取り装置
9 可撓層
10 薄膜層
11 吸着カップ
12 気体案内管
13 真空ポンプ