特許第6285433号(P6285433)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6285433可視光で活性化される、ポリマー表面上の光触媒TiO2コーティング、その調製方法、及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6285433
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】可視光で活性化される、ポリマー表面上の光触媒TiO2コーティング、その調製方法、及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20180215BHJP
   A61L 29/00 20060101ALI20180215BHJP
   A61L 31/00 20060101ALI20180215BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20180215BHJP
   B01J 37/34 20060101ALI20180215BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20180215BHJP
   B01J 31/38 20060101ALI20180215BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20180215BHJP
   A61J 1/00 20060101ALI20180215BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20180215BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20180215BHJP
   C09C 1/36 20060101ALI20180215BHJP
   C09C 3/08 20060101ALI20180215BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20180215BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20180215BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   C09D201/00
   A61L29/00
   A61L31/00
   B01J35/02 J
   B01J37/34
   B01J37/02 301C
   B01J31/38 M
   B01J37/02 101C
   A61M25/00 500
   A61J1/00 Z
   C09D7/12
   C09D5/16
   C09C1/36
   C09C3/08
   B05D5/00 Z
   B05D7/24 303B
   B32B15/08 F
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-523511(P2015-523511)
(86)(22)【出願日】2013年7月22日
(65)【公表番号】特表2015-531009(P2015-531009A)
(43)【公表日】2015年10月29日
(86)【国際出願番号】EP2013065400
(87)【国際公開番号】WO2014016239
(87)【国際公開日】20140130
【審査請求日】2016年6月27日
(31)【優先権主張番号】PL400098
(32)【優先日】2012年7月23日
(33)【優先権主張国】PL
(73)【特許権者】
【識別番号】510199432
【氏名又は名称】ユニヴェルシテット・ヤジェロンスキ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴォイチェフ・マチク
(72)【発明者】
【氏名】ラファル・サドウスキ
(72)【発明者】
【氏名】プジェミスラウ・ラブズ
(72)【発明者】
【氏名】マルタ・ブチャルスカ
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−346651(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/136672(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0071428(US,A1)
【文献】 特開2005−211545(JP,A)
【文献】 特開2005−068185(JP,A)
【文献】 特開2003−306563(JP,A)
【文献】 特開平10−067873(JP,A)
【文献】 特開2001−178825(JP,A)
【文献】 特表2013−525426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 201/00
A61J 1/00
A61L 29/00
A61L 31/00
A61M 25/00
B01J 31/38
B01J 35/02
B01J 37/02
B01J 37/34
B05D 5/00
B05D 7/24
B32B 15/08
C09C 1/36
C09C 3/08
C09D 5/16
C09D 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リマー表面上の酸化チタン(IV)の光触媒コーティングであって、
a)医療、食品及び医薬パッケージに用いられる有機ポリマー材料であって、ポリウレタン(PU)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる群から選択される有機ポリマー材料である基材上へ適用されており、
b)前記コーティング有機化合物で表面が修飾されたナノ結晶酸化チタン(IV)からなり、前記ナノ結晶酸化チタン(IV)が、フタル酸、4−スルホフタル酸、4−アミノ−2−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ−2−ナフチル酸、サリチル酸、6−ヒドロキシサリチル酸、5−ヒドロキシサリチル酸、5−スルホサリチル酸、3,5−ジニトロサリチル酸、1,4−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸二ナトリウム塩、没食子酸、ピロガロール、2,3−ナフタレンジオール、4−メチルカテコール、3,5−ジ−tert−ブチルカテコール、p−ニトロカテコール、3,4−ジヒドロキシ−L−フェニルアラニン(DOPA)、カテコール、ルトシド(ルチン)、及びアスコルビン酸からなる群から選択される有機化合物で表面が修飾されている
ことを特徴とする、光触媒コーティング。
【請求項2】
医療、食品及び医薬パッケージに使用されるポリマー材料であって、ポリウレタン(PU)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる群から選択されるポリマー材料の表面上の酸化チタン(IV)光触媒コーティングの調製方法であって、以下の3つの段階:
a)低温プラズマ法によるポリマー材料の表面の活性化、
b)ナノ結晶酸化チタン(IV)の懸濁液を用いた、酸化チタン(IV)のナノ結晶コーティングの合成、
c)有機化合物を用い、溶液中のその変性剤を適用することによる、コーティング表面の修飾、
を含み、
前記コーティング表面の修飾に用いる有機化合物が、フタル酸、4−スルホフタル酸、4−アミノ−2−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ−2−ナフチル酸、サリチル酸、6−ヒドロキシサリチル酸、5−ヒドロキシサリチル酸、5−スルホサリチル酸、3,5−ジニトロサリチル酸、1,4−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸二ナトリウム塩、没食子酸、ピロガロール、2,3−ナフタレンジオール、4−メチルカテコール、3,5−ジ−tert−ブチルカテコール、p−ニトロカテコール、3,4−ジヒドロキシ−L−フェニルアラニン(DOPA)、カテコール、ルトシド(ルチン)、及びアスコルビン酸からなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項3】
前記のポリマー材料の表面の活性化を酸素又は窒素プラズマの影響下で行うことを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記活性化を、0.1〜1ミリバール(すなわち0.01kPa〜0.1kPa)のプラズマ圧力下、5〜500秒のプラズマ操作時間で行うことを特徴とする、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
プラズマで活性化されたポリマー材料を空気中に置いて、酸素含有官能基を形成させることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項6】
水性コロイド溶液の形態の、100nm以下の粒径をもつナノ結晶酸化チタン(IV)を前記合成に用いることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記合成の工程を、浸漬法、スプレー又は塗布法によって行うことを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記段階を室温で行うことを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項9】
有機化合物によるコーティングの表面修飾を、最小濃度10−4モル/dmの変性剤の水又はアルコール溶液中で行い、次に乾燥させることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、可視光で活性化される、ポリマー表面上の光触媒酸化チタン(IV)コーティング、その調製方法、及びその使用である。ポリマー表面は、医療及び食品のパッケージに用いられるポリマー群から選択され、特に、ポリウレタン(PU)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。
【背景技術】
【0002】
近年、人間活動のほとんど全ての分野において、プラスチックの使用が顕著に増大している。特にこれに対しては、低価格と、発展中の社会の要請に対して材料を適用することの容易さが寄与している。ポリマー材料も、医療においてますます重要な役割を演じており、なぜなら使い捨ての医療用具・機器がこれらの材料から作られるからである。プラスチックの表面は、健康に危害を及ぼし、また院内感染に対して最も重要な病因学的寄与の1つであるバイオフィルムの形成にさらされる。世界保健機関によれば、院内感染を最小にすることは、患者の健康とともに医療設備の経済的状況にプラスの影響を及ぼす。院内感染の問題への解答は、潜在的な抗菌効果をもつ新しい材料を設計することである。従来から利用可能な抗菌剤に対する病原体の耐性の増大は、別の革新的な解答を探索することを必要としている。
【0003】
この問題に対する解答は、光触媒材料、特に半導体、例えば酸化チタン(IV)を、細菌の光不活性化に利用することである。現状の技術は、そのような応用を開示しているが、酸化チタン(IV)は、通常、無機表面、例えば、ガラス又は金属の表面において、粉末、溶液、又はコロイド層の形態で存在し(Chen, X. , Mao, S. S, 2007, Chemical Reviews, 107, 2891-2959)、このことがその応用の可能性を著しく減じている。
【0004】
低温プラズマ法によるポリマー表面の活性化法は周知であり、Hegemann(D. Hegemann ら, Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 2003, 208, 281-286)、Kasanen(J. Kasanenら, 2009, J. Appl. Polym. Sci., 111, 2597-2606)、及びVandencasteele(N. Vandencasteeleら, 2010, Journal of Electron Spectroscopy and Related Phenomena, 178-179, 394-408)により、文献に記載されている。ポリマー表面の活性化は、表面の物理的及び化学的性質を変える。活性化工程の結果として、多くの酸素含有官能基が、酸素の存在下でポリマー材料の表面において生成され、それは例えば、ヒドロキシル基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、カルボニル基(−C=O)である。
【0005】
プラズマ処理を適用することによって体積の変化なしに材料の性質を変性する方法も公知である。例えば、光ファイバーケーブルを改質するために用いられるプラズマ処理が、特許出願GB2481891Aに開示されている。光ファイバーの全長が、それをプラズマ炉を通して移動させることによってプラズマ処理を受けて、その結果、プラズマ処理した光ファイバーの表面が改質されて、その表面を標的物質と結合させやすくなる。この方法は、光ファイバーケーブルの表面に接着している標的物質の層を作ることを可能にする。接着している層の形成についての上述した例で用いられる材料は、エポキシ樹脂、ポリアミド、及びポリウレタンである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】GB2481891A
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Chen, X. , Mao, S. S, 2007, Chemical Reviews, 107, 2891-2959
【非特許文献2】D. Hegemann ら, Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 2003, 208, 281-286
【非特許文献3】J. Kasanenら, 2009, J. Appl. Polym. Sci., 111, 2597-2606
【非特許文献4】N. Vandencasteeleら, 2010, Journal of Electron Spectroscopy and Related Phenomena, 178-179, 394-408
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術において認められた不便な点は、ポリマー表面上の酸化チタン(IV)の持続したコーティングを得ることの困難さと、可視光範囲に対するそれらのセンシタイゼーションに関連する。ポリマー表面上での酸化チタン(IV)の永続的な固定は、TiOにおける光活性過程の応用のための新しい機会をもたらし、それは例えば、プラスチックから作られた様々な医療用材料の光殺菌への応用である。
【0009】
[発明の詳細な説明]
本発明の目的は、可視又は紫外光で活性化されて、高い光触媒及び光殺菌活性を示す、ポリマー表面上の酸化チタン(IV)の永続的な光触媒コーティングと、その調製方法を提供することである。本発明はまた、本発明によるコーティングの応用のための新しい機会、様々な材料の、例えば、医療用カテーテルあるいは食品包装の殺菌に向けての特定の特性の組み合わせも提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、可視光で活性化された、ポリマー表面上の酸化チタン(IV)の光触媒コーティングに関するものであり、それは以下の点によって特徴づけられる。
a)医療、食品及び医薬パッケージに用いられるポリマー材料である有機基材、特に、ポリウレタン(PU)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる群から選択される有機基材上へのそれらの適用。
b)ナノ結晶酸化チタン(IV)又は有機化合物で表面を修飾したナノ結晶酸化チタン(IV)をコーティングする。
【0011】
ナノ結晶酸化チタン(IV)は、下記のものからなる群から選択される有機化合物で表面を修飾されていることが好ましい。
a)下記式1の化合物:
【化1】
式中、R〜Rは、−H、飽和又は不飽和の置換基、−NH、−NH、又は−SOM(Mは、H、K、Na、Li、NHである)であり、R〜Rは−OH又は−COOHである。
b)アスコルビン酸
c)下記式2の化合物(ルトシド(ルチン)):
【化2】
【0012】
好ましくは、有機化合物は、フタル酸、4−スルホフタル酸、4−アミノ−2−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ−2−ナフチル酸、サリチル酸、6−ヒドロキシサリチル酸、5−ヒドロキシサリチル酸、5−スルホサリチル酸、3,5−ジニトロサリチル酸、1,4−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸二ナトリウム塩、没食子酸、ピロガロール、2,3−ナフタレンジオール、4−メチルカテコール、3,5−ジ−tert−ブチルカテコール、p−ニトロカテコール、3,4−ジヒドロキシ−L−フェニルアラニン(DOPA)、カテコール、ルトシド(ルチン)、及びアスコルビン酸からなる群から選択される。
【0013】
本発明は、医療、食品及び医薬パッケージに使用されるポリマー、特に、ポリウレタン(PU)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる群から選択されるポリマーの表面上の、可視光で活性化される酸化チタン(IV)光触媒コーティングの調製方法にも関し、その方法は、
a)低温プラズマ法によるポリマー材料の表面活性化、
b)ナノ結晶酸化チタン(IV)の懸濁液を用いた、酸化チタン(IV)のナノ結晶コーティングの合成、
c)有機化合物を用い、溶液中のその変性剤(有機化合物)を適用することによる、コーティング表面の修飾、
の3つの段階を含むことを特徴とする。
【0014】
好ましくは、上記の活性化は、酸素又は窒素プラズマの影響下で行う。好ましくは、活性化は、5〜500sの間のプラズマ操作時間で、0.1〜1ミリバール(すなわち0.01kPa〜0.1kPa)のプラズマ圧力で行う。また、好ましくは、プラズマで活性化されたポリマー材料が空気中に置かれるときに酸素含有官能基が形成される。
【0015】
また、好ましくは、水性コロイド溶液の形態の、100nm以下の粒径をもつナノ結晶酸化チタン(IV)を、上記合成に用いる。好ましくは、その合成工程は、浸漬法(例えば、ディップコーティング法)、スプレー又は塗布法によって行う。好ましくは、この工程は室温で行う。
【0016】
好ましくは、有機化合物によるコーティングの表面修飾は、最小濃度10−4モル/dmの変性剤の水又はアルコール溶液中で行い、次いで乾燥させる。
【0017】
好ましくは、有機化合物は、フタル酸、4−スルホフタル酸、4−アミノ−2−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ−2−ナフチル酸、サリチル酸、6−ヒドロキシサリチル酸、5−ヒドロキシサリチル酸、5−スルホサリチル酸、3,5−ジニトロサリチル酸(表1)、1,4−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸二ナトリウム塩、没食子酸、ピロガロール、2,3−ナフタレンジオール、4−メチルカテコール、3,5−ジ−tert−ブチルカテコール、p−ニトロカテコール、3,4−ジヒドロキシ−L−フェニルアラニン(DOPA)、カテコール(表2)、ルトシド(ルチン)、及びアスコルビン酸からなる群から選択される。
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】
上記方法の具体的なステップは、図1に図で示してもいる。
【0021】
本発明の別の主題は、医療、食品及び医薬パッケージに用いられるプラスチック部材、特に、ポリウレタン(PU)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる群から選択されるプラスチック部材を殺菌するための、ポリマーの表面上の、可視光で活性化された、上で定義した酸化チタン(IV)の光触媒コーティング及び/又は本発明の方法によって得られる酸化チタン(IV)の光触媒コーティングの使用である。
【0022】
本発明の具体的主題は、光殺菌材料、光殺菌剤、光殺真菌剤、光触媒、及びその他材料、特に、透明な材料、例えば、医療用カテーテル、医療用プラスチックチューブ、ホイル、及び食品及び医薬品のためのパッケージからなる群から選択される製品を製造するための、本発明による及び/又は本発明の方法によって得られるコーティングの使用である。
【0023】
本発明の具体的な主題は、医療における(例えば、皮膚科学、眼科学、耳鼻咽喉科学、泌尿器科学、婦人科学、リウマチ学、がん科学、外科学、看護学、獣医学、及び歯科学)及び美容術における、好ましくは、殺菌が有利及び/又は必要とされる、医療用のカテーテル、プラスチックチューブ、及びその他の表面を殺菌するための、本発明のコーティング及び/又は本発明の方法によって得られるコーティングの使用である。
【0024】
[本発明のまとめ]
本発明による材料は、可視光(l>400nm;光触媒は、表面のチタン錯体による可視光の吸収の結果(電荷移動型)である)及び紫外光(l<400nm;表面のチタン錯体による紫外光の吸収の結果(電荷移動型又は酸化チタン(IV)による直接の))が照射されたときに光触媒活性を示す。光への暴露の結果として、反応性酸素種が形成され(OH、O、H)、これが有機化合物の酸化と微生物の分解をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本願の範囲を限定しない具体的態様における本発明は、図1〜6に示している。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、ポリマー表面上に、可視光で活性化される酸化チタン(IV)の光触媒コーティングを調製する方法の一般的略図を示している。
図2図2は、TiOでコーティングされ且つ様々な変性剤で修飾されたPTFEのUV−可視拡散反射スペクトルを示している。
図3図3は、TiOでコーティングされ且つ様々な変性剤で修飾されたPTFEのUV−可視拡散反射スペクトルの、UV−可視吸収スペクトルへの変換を示している。
図4図4は、アズールBの光分解「ドライモード」、吸着したモデル汚染(アズールB)を伴うTiO@PTFEの拡散反射スペクトルを示す:照射XBO−150、水フィルター、l>320nm。
図5図5は、アズールBの光分解「ドライモード」、吸着したモデル汚染(アズールB)を伴うTiO@PTFEの拡散反射スペクトルをクベルカ−ムンク式によって変換したもの、照射:XBO−150、水フィルター、l>320nm、を示す。
図6図6は、カテコールとサリチル酸での表面修飾が、未修飾TiO(a)から作られた層と比較して、可視光に対する層(K−9@TiO(b)、S−2@TiO(c)、K−4@TiO(d))の活性の範囲の明確に示された拡張をもたらすことを示している。
【実施例】
【0027】
[例1]
[ポリマーの表面上のコーティングとして、可視光に活性なナノ結晶光触媒を得ること]
記載した材料の合成のための原料基材は以下のとおりである。
a)市販されているプラスチック材料、特に、ポリウレタン(PU)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFF)、
b)100nm未満の粒径を有する、コロイド水性溶液の形態の未変性(未修飾)ナノ結晶酸化チタン(IV)、及び有機表面変性剤。
【0028】
[変法1]
市販されているポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のフィルムから3cmの辺長の正方形体を切り出し、洗浄剤できれいにした。その表面を以下の条件:p=0.3ミリバール(0.03kPa)、t=120s、v=2cm/分、電力100Wで、酸素プラズマを用いて活性化させた。活性化工程の後、そのポリマー材料を空気中に2分間置いた。コーティングの合成は、ナノ結晶酸化チタン(IV)のコロイド溶液(15質量%)から、浸漬法(ディップコーティング)を用いて行った。その溶液からのポリマー材料の引き出し速度は、室温で1cm/分とした。その結果、均一で丈夫なTiOのコーティングが、薄片の表面に作られた。得られたコーティングを、グループS(S−2、S−3;表1)又はグループK(K−1、K−4、K−9;表2)からの変性剤或いはアスコルビン酸又はルトシド(ルチン)の10−4mol/dmの濃度の水性溶液の形態の溶液に、2分間サンプルを浸漬することにより含侵させ、次に空気中で乾燥させることによって変性(修飾)した。
【0029】
[変法2]
市販されているポリウレタン(PU)のフィルムから3cmの辺長の正方形体を切り出し、洗浄剤できれいにした。その表面を以下の条件:p=0.4ミリバール(0.04kPa)、t=60s、v=2cm/分、電力100Wで、酸素プラズマを用いて活性化させた。活性化工程の後、そのポリマー材料を空気中に2分間置いた。コーティングの合成は、ナノ結晶酸化チタン(IV)のコロイド溶液(4質量%)から、浸漬法(ディップコーティング)を用いて行った。その溶液からのポリマー材料の引き出し速度は、室温で1cm/分とした。その結果、均一で丈夫なTiOのコーティングが、薄片の表面に作られた。得られたコーティングを、グループS(S−2、S−3;表1)又はグループK(K−1、K−4、K−9;表2)からの変性剤或いはアスコルビン酸又はルトシド(ルチン)の10−4mol/dmの濃度の水性溶液の形態の溶液に、2分間サンプルを浸漬することにより含侵させ、次に、空気中で乾燥させることによって変性(修飾)した。
【0030】
[変法3]
市販されているポリカーボネート(PC)のフィルムから3cmの辺長の正方形体を切り出し、洗浄剤できれいにした。その表面を以下の条件:p=0.4ミリバール(0.04kPa)、t=120s、v=2cm/分、電力100Wで、酸素プラズマを用いて活性化させた。活性化工程の後、そのポリマー材料を空気中に2分間置いた。コーティングの合成は、ナノ結晶酸化チタン(IV)のコロイド溶液(15質量%)から、浸漬法(ディップコーティング)を用いて行った。その溶液からのポリマー材料の引き出し速度は、室温で1cm/分とした。その結果、均一で丈夫なTiOのコーティングが、薄片の表面に作られた。調製されたコーティングを、グループS(S−2、S−3;表1)又はグループK(K−1、K−4、K−9;表2)からの変性剤或いはアスコルビン酸又はルトシド(ルチン)の10−4mol/dmの濃度の水性溶液の形態の溶液に、2分間サンプルを浸漬することにより含侵させることによって変性(修飾)し、次に、空気中で乾燥させた。
【0031】
[例2]
[得られた材料の特性分析]
例1にしたがって合成したコーティングは、基材に外れないように付着されており、拭い取れない。グループKからの化合物で変性したコーティングのUV−可視スペクトルを、図2及び図3に示している。可視光の明確な吸収、好ましくは約500nm付近の波長範囲における明確な吸収が存在する。得られたコーティングの活性は、「ドライモード」を用いて特定した。アズールBの水溶液を、光触媒活性試験のためのモデル汚染として用いた。合成したTiOコーティングを備えたプラスチックのサンプルを、2.5×10−4モル/dmの濃度をもつ色素の溶液に1時間含浸させた。その後、そのサンプルに3時間照射を行い、試験の間に生じた変化を観察した。測定システムは、キセノンランプXBO−150からなっていた。そのランプのすぐ後ろに、硫酸銅(II)溶液を備えた水フィルター(このフィルターが近赤外範囲からの放射をカットする、l>700nm)及び広域フィルター(これはl>320nmの範囲の輻射を透過させる)を置いた。サンプルを、光源から40cmの距離に置いた。染料の色の強度の変化を、照射の間、吸光光度分析によって評価した。照射時のアズールB分解の拡散反射スペクトルと吸収度スペクトルを、図4及び図5に示す。3時間において、染料のほとんど完全な分解が観測された。
【0032】
[例3]
[得られたコーティングの光活性についての試験]
例1にしたがって合成したコーティングを試験して、その活性のスペクトル範囲を決定した。光電気化学的測定のために、150W電力のキセノンランプXBO−150(Osram)及び電力供給アダプターLPS−250(Photon Technology International)、シャッターを備えた単色光分光器(モノクロメーター)、及び電気化学分析装置BAS−50W(Bioanalytical systems)を含むセットを使用した。シャッター及び単色光分光器の制御システムは、入射光の波長と作用電極の照射の暴露時間の自動的な制御を可能にする。光電気化学測定は、電解液(0.1モル・dm−濃度のKNO溶液)で満たした容積25cmの石英容器中、3電極セル中で行った。白金電極を補助電極として使用し、塩化銀電極(Ag/AgCl)を参照電極として使用した。作用電極は、例1に記載した方法にしたがって有機化合物で変性(修飾)したナノ結晶TiOの層でコーティングされたITOフィルム(透明な導電性材料、インジウム−スズ酸化物の混合物)だった。この光電気化学試験のアイデアは、作用電極に印加された一定の電位において、短いフラッシュの形態(10s)で光電極に入射する光の波長の関数(I=f(l))として、生じる光電流の強度を測定することである。固定した間隔(9.5nm)で各フラッシュとともに変化する330〜700nm波長範囲の単色光を、上記コーティングに照射した。シャッターを閉じたときに、波長を変更した。600〜−200mVの電位範囲で記録したプロットI=f(l)(光の絶対強度を考慮していないシェアスペクトル)を用いて、波長と作用電極に印加した電位の関数として、光応答特性を測定した(いわゆる光電流マップ、I=f(E,l))。カテコール誘導体及びサリチル酸による表面修飾(表面変性)は、未修飾TiOから作られたコーティング(図6a)と比較して、可視光に対する活性の範囲の明確に規定された拡大(図6:K−9@TiO(b)、S−2@TiO(c)、K−4@TiO(d))をもたらしている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図6d