【実施例】
【0080】
実験セクション
材料
様々なバイオマスおよび/またはバイオ廃棄物を使用した:刈取り草、ビール製造からの有機廃棄物(ビール廃棄物)、馬糞およびバイオスラッジ。バイオマスを約1センチメートルの断片に分割し、オートクレーブ反応器に入れた。水、有機酸および少量のFe
2+。温度を180〜230℃まで上昇させ、圧力を10〜20バールに平衡化した。数時間後、HTCバイオマスおよび水のスラリーを大きい容器にポンプで注入し、いくらか高温(25〜80℃の間)で5〜6時間平衡化し、その後冷却し、ろ過した。標準化法を用いて、HTCバイオマスの水分、灰分、および元素分析を実施した。
【0081】
反応器
HTCバイオマスの活性化のためのステンレス鋼の反応器は
図1に示される。反応器は、反応器チャンバ7およびヒータ8、熱電対(thermal couple)2および熱交換器4を含む。また、気体出口1、気体入口5、気体分配器6および金属フィルタ3も示される。下方から入る気体が供給されるその鉛直設計によって、HTCバイオマスの粒子とCO
2との間の良好な接触が保証される。反応器を鉛直の管状炉内に封入した。CO
2を下方から供給し、HTCバイオマスとの接触の前に炉内の高温まで熱交換した。熱交換は、鋼ナットを充填したステンレス鋼シリンダ内で実施した。この熱交換器をHTCバイオマス床のすぐ下に配置した。HTCバイオマスを約50mlの床容積を有する2つの交差金属メッシュによって拘束した。任意選択で、石英フィルタを使用してもよい。床のすぐ上に配置された熱電対によって温度を測定した。反応器のほとんどの部分は、重力によって定位置に保持された。円錐形状のコネクタにより、反応器は容易に取付けおよび取外し着脱することが可能になる。
【0082】
活性化
各バッチにおいて、CO
2の流れの中で約5gのHTCバイオマスを活性化した。温度を室温から設定温度まで10℃/分の速度で傾斜させた。設定温度において、指定の時間サンプルを活性化した。その後、活性化されたHTCバイオマスを室温まで冷却した。指定の活性化時間が0時間の場合、設定温度に到達したらすぐに加熱を停止した。全ての活性化のための全てのステップの間、反応器床を通してCO
2を流した。
【0083】
特徴付け
二重共鳴モードで4mmプローブヘッドにおいて151MHzで作動するBruker AVANCE IIIスペクトロメータにおいて、
13CNMRスペクトルを記録した。マジック角回転(MAS)は14kHzであった。
13CNMRのケミカルシフトのスケールは、アダマンタンサンプルを用いて外部から較正した。45パルスおよび5秒のリサイクリング時間を用いる直接分極
13CNMRにより、スペクトルの部分飽和を回避した。通常、8〜16kスキャンを総計した。スペクトル線の幅と比較して少量の指数フィルタリングを使用した。スペクトルをTopspinソフトウェアにおいて処理した。窒素吸着等温線は、Micromeritics ASAP2020デバイスを用いて77Kで測定した。吸着実験を実行する前に、300℃の温度で5時間、動的真空(dynamic vacuum)の条件下でサンプルを脱気した。Brunauer−Emmet−Teller(BET)およびLangmuir等温線のための標準式を用いて比表面積(S
BETおよびS
L)を計算した。BETおよびLangmuirのいずれの分析の場合も、p/p0=0.06〜0.29の相対圧力における窒素の取込みを使用した。p/p
0=0.99における取込みから全細孔容積(V
t)を推定した。t−プロット法を用いて、ミクロ細孔容積V
micおよび外部表面積S
extを推定した(ミクロ細孔は2nmよりも小さく、メソ細孔は2nm〜50nmの範囲である)。ミクロ細孔比表面積S
micは、S
BETまたはS
Lと、S
extとの間の差として近似した。サンプル中の細孔サイズの分布は、Micromeriticsルーチンを用いる本来の密度汎関数理論(DFT)によって決定した。
【0084】
原子吸光分光分析法は、長い矩形の10cmバーナーを有するPHILIPS PU 9100原子吸光分光光度計において実施した。使用した光源は、10mAの動作電流で作動する37mmのFe中空陰極ランプであった。炭素サンプルを600℃の炉内で燃焼させて灰分を得た後、FeイオンをHClおよびHNO
3混合酸中に溶解させた。希釈後、溶液を空気/アセチレン炎内に噴霧した。空気/アセチレンの流速を、それぞれ5および1.3l/分で一定に固定した。種々のサンプルについて248.3nmにおける吸光度を記録し、Feの濃度を計算した。
【0085】
XPSスペクトルは、Kratos AXIS UltraDLDx線光電子分光計(Kratos Analytical,Manchester,UK)を用いて記録した。単色Alx線源を用いてサンプルを分析した。分析領域は、約1mm
2未満であった(シグナルの大部分は700×300μmの領域からである)。
【0086】
X線回折(XRD)を用いて、サンプル内に包埋されたナノサイズの結晶を同定した。反射モードにおいて2θ=20.0〜70.0°の間で、X’Celerator検出器を有するX’PERT−PRO PANalyical粉末回折計(CuKa1放射、k=1.5418Å)を用いて、磁性活性化HTCバイオマスのXRDパターンを収集した。
【0087】
200kVで作動するJEOL TEM(JEM−2100)においてTEMを実施した。2°の傾斜ステップで126°の範囲にわたって、傾斜した一連のTEM画像を記録した(全部で63枚の画像)。傾斜した一連の画像を前処理するためにImageJを使用し、トモグラフィー再構成のためにTomoJを使用した。試料を無水エタノール中に分散させ、10分間の超音波処理によって処理した。一滴の懸濁液を銅格子に移した。トモグラフィー再構成における画像の位置合わせを容易にするために、続いて、十分に分散された10nmの大きさのAuナノ粒子を含有する一滴の懸濁液を銅格子に適用した。Auマーカーに従って画像を位置合わせした。0.1の緩和係数によりTomoJにおいてARTアルゴリズムを15回反復して実行した。
【0088】
それぞれ2.0および1.0kVの加速電圧でJEOL JSM−7000FおよびJEOL JSM−7401F走査型電子顕微鏡を用いて、SEM顕微鏡写真を記録した。サンプルをOxford Aluminiumスタブ(stub)上に薄く広げ、乾燥コロイド炭素を被覆した。
【0089】
Quantum Design PPMS機器を用いて材料の磁気ヒステリシスループを測定した。数ミリグラムの粉末をポリプロピレンカップに緩く詰め、−20kOeから+20kOeまで様々の磁場において300Kで測定した。結果は、
図6に示される。
【0090】
結果および考察
活性化HTCバイオマスの特徴付け
活性炭の特性は、HTCバイオマスの化学的性質および適用されるプロセス条件の両方によって決まる。活性化HTC刈取り草およびHTC馬糞は、商業的な起源を有する活性炭と類似の比表面積を有した(表1を参照)。HTCビール廃棄物およびHTCバイオスラッジからの活性炭は、他よりも比表面積が小さかった。活性化HTCバイオスラッジの表面積がより大きく低下されるのは、その大量の不活性灰分のためであろう。収率は、HTC馬糞およびHTCバイオスラッジの場合よりもHTCビール廃棄物およびHTC刈取り草から活性炭への活性化の方が高かった。より高い収率は、より高い炭化度と相関する。表1は、固定したプロセス条件で活性化された活性炭のデータを示す。
【0091】
Langmuirモデルは、ミクロ多孔質炭素ウェルにおいて記録された吸着データを説明し、BETモデルは、メソ多孔質炭素ウェルにおいて記録された吸着データを説明した。後者では、多層吸着を行うことができる。
図2は、N
2吸着等温線a)馬糞、b)刈取り草、c)ビール廃棄物およびd)バイオスラッジ、e)市販の活性炭と、f)市販の活性炭、および4つの水熱炭化(HTC)バイオマス馬糞(■)、刈取り草(▲)、ビール廃棄物(●)、バイオスラッジ(▼)、市販の活性炭(◆)から調製された活性炭の細孔サイズ分布とを示す。
【0092】
活性化HTC刈取り草およびHTCビール廃棄物におけるN
2の取込みの等温線により、少量のより大きい細孔と組み合わせられたミクロ多孔質材料の特徴が明らかにされる。IUPACの分類に従うI型の挙動は低い相対圧力において見ることができ、小さいヒステリシスループはメソ多孔質を示す。活性化HTC馬糞、HTCバイオスラッジおよび市販の活性炭の場合、N
2等温線は吸着および脱着の大きいヒステリシスループを示し、これは、毛管凝縮およびメソ多孔質に典型的である。
図2fは、DFTを用いて吸着枝から推定される細孔サイズの関連の分布を示す。細孔のDFTモデルにおいてスリットモデルを用いた(
図4aのTEM画像を参照)。HTC馬糞からの活性炭内のメソ細孔は、約14nmの平均スリットサイズを有する幅広の分布を示す。ミクロ多孔質は、0.7および1.3nmがピークのスリットの明白な2峰性分布を示す。
【0093】
図3は、a)バイオマス内の根本的な形状がHTCおよびCO
2中の活性化の両方を切り抜けたHTC馬糞からの活性炭を示し、b)HTC馬糞からの活性炭はメソ細孔を示し、c)活性化HTCビール廃棄物は炭素球を示し、d)活性化HTCバイオスラッジはメソ細孔を示す。
図3aのSEM顕微鏡写真は、水熱炭化、そしてそれに続く高温のCO
2の流れの中での活性化の後、HTC馬糞の外形がほとんど保持されることを視覚化する。保根本的な物体(セルなど)の保存形状は、バイオマスの適切な選択によって複雑な形態の活性炭が製造されることを可能にし得る。このような保存形状は、推測で、活性炭の合成後の構造化を使用する必要性を回避し得る。HTC馬糞からの活性炭の
図3bのSEM顕微鏡写真では、相当量のメソ細孔(約15nm)が見られた。この平均サイズは、
図2bの分布に比べてN
2吸着データの分析によって確立されるスケールと一致する。HTC刈取り草からの活性炭の表面は、多数のメソ細孔を示さなかった(
図S11b)。付加的なSEM顕微鏡写真は、補足情報(
図S9〜S11)に示される。
図S11aのSEM顕微鏡写真では、粒子内の揮発性化合物が活性化の間に追い出され、粒子の表面に気泡が生成されたと思われる。大きい気泡は破壊され、明らかにメソ細孔を示した。
【0094】
図4は、HTCバイオマスからの活性炭の透過電子顕微鏡(TEM)画像を示す。
図4aでは、サイズが約1nmのスリット形状の細孔がランダムにHTC刈取り草の活性炭内に広がる。
図4bは水熱炭化(HTC)馬糞から調製された活性炭内の8面体形状のナノ粒子を示す。活性炭を有するナノ粒子の分布をさらに画像形成するために、再構築断層写真によるスライシングによって試料の3次元構造を再構築できるようにする電子断層撮影法を実行した。8面体形状の酸化鉄粒子が活性炭内に包埋された。断層写真のスライスから、種々のサイズの細孔が明白に見られ、これらは磁性活性炭の全体にランダムに分布される。
【0095】
活性炭および酸化鉄ナノ粒子の複合体粒子の磁性
鉄粒子の原子格子を粉末X線回折(XRD)によって決定した。
図5は、17dm
3/時の流速および2時間の活性化時間でCO
2により800℃において、水熱炭化(HTC)馬糞から調製された活性炭における結晶化酸化鉄(Fe
3O
4)のXRDパターンを示す。酸化鉄ナノ粒子のサイズは約20〜40nmであり、これは、酸化鉄ナノ粒子が活性化済の炭素内に沈殿された場合に予想され得るサイズよりも有意に大きい。統合された大きい酸化鉄ナノ粒子は、磁性分離のために重要である。酸化鉄ナノ粒子が細孔寸法よりも大きい理由は、水熱炭化プロセスにおける鉄の触媒性質と、HTCバイオマスの活性化の前に鉄がHTCバイオマス内に含有されたという事実とに関する。鉄が捕捉されたバイオマスの触媒駆動される水熱炭化の後に、CO
2中での活性化が行われるこのデュアルプロセスは、酸化鉄の大きいナノ粒子が活性炭内に統合されることを可能にする。これらの大きいナノ粒子は、活性炭の多孔質構造内での酸化鉄の小さいナノ粒子の沈殿を用いる従来の技術と比べて分解する傾向がある。
【0096】
粒子内に包埋されたFe
3O
4ナノ粒子は、断層撮影法から分かるように、活性化複合体炭素を磁性にした。
図6は、17dm
3/時の流速および2時間の活性化時間でCO
2により800℃において、水熱炭化(HTC)馬糞から調製された磁性活性化複合体炭素の磁化曲線を示す。差込み図は、ヒステリシスの低磁場領域を示す。曲線は、包埋された酸化鉄粒子が超常磁性およびフェリ磁性の両方の特徴を表すことを示す。超常磁性特性は10〜30nm未満のより小さい酸化鉄粒子(いわゆる超常磁性限界の約30nmよりも小さい)に由来し(参考文献:Cornell and Schw.p166)、フェリ磁気特性はより大きい酸化鉄粒子(>30nm)に由来する。Fe
3O
4相の計算重量に関する飽和磁化は高く(90emu/g、300K)、バルクFe
3O
4について報告された値(93emu/g、290K)に近い(Ref 79)。
図7において分かるように、活性化複合体炭素の磁性粉末は、小さい磁石を用いることによって分散体から容易に分離された。磁場が除去されると、活性化複合体粒子の大部分は、その(超)常磁性のためにその磁性を失うが、複合体内のいくつかの粒子は、その大きいサイズのためにその磁化を保持する。複合体の飽和保磁力(coercitivity)は、300KにおいてH
c=40Oeであった。活性炭の高い飽和磁化および高い比表面積および小さい細孔の組み合わせは、水および他の液体からの分子の分離に関する用途の新しい可能性を可能にするであろう。また、気体混合物中の気体成分の分離は、酸化鉄のナノ粒子と電磁放射との相互作用による非常に急速な温度上昇の可能性によって容易にされ得る。包埋されたナノ結晶は、脱着するときに、ラジオ周波数を印加することによって熱およびエネルギー吸収を強化し得る。
【0097】
HTCバイオマスの研究
活性化の前にHTCバイオマスの分子構造を調査するために、固相
13CNMRスペクトルを記録した。HTC刈取り草の直接分極固相
13CNMRスペクトルは
図8aに示される。HTC刈取り草の色は黒色であり、原子組成およびその
13CNMRスペクトルは、その化学組成および構造が褐炭と同様であることを示した。約170ppmの
13CNMRケミカルシフトは酸基の存在を示し、約210ppmはケトンであり、約100および約150ppmは、酸素の有無にかかわらずsp2混成炭素であり、約130ppmは芳香族基であり、そして約30ppmはsp3混成脂肪族炭素であった。
【0098】
HTC馬糞の固相
13CNMRスペクトル(
図8b)において、65、72、75、84、89および105ppmのピークは、未反応セルロースに帰属された。
図8bのHTC馬糞からの固相
13CNMRスペクトルは、この固体が褐炭よりも泥炭との類似性を有することを示した。これらの類似性は、固体の茶色および元素組成と一致した。これらのあまり凝縮されていない固体には、酸およびケトン基が欠けていた。代わりに、その特徴的な約60〜80ppmのケミカルシフトによって、O−CHx型の残基の兆候があった。sp2混成炭素の割合はHTC刈取り草の場合よりも小さく、これらの茶色の固体の炭化度が低いことが示された。HTC馬糞中の大量のO−CHx基は、同等に低い収率、およびその活性化の前のより大量のメソ細孔を説明し得る(表1を参照)。HTCビール廃棄物およびバイオスラッジの固相
13CNMRスペクトルは、
図S1および
図S2に示される。
図S1の175ppmおよび210ppmのシグナルは酸基およびケトン基を示し、
図S2の60〜80ppmの独特なシグナルはO−CHx部分を示す。アセトン中での抽出(Soxlet)後のHTC馬糞において記録されたスペクトルは
図S3に示される。抽出された固体のスペクトルは、その脂肪族領域に有意なシグナルを有さなかったが、他の点では
図8bの非抽出HTC馬糞のスペクトルと非常に類似していた。抽出された画分は、恐らく脂質またはその分解生成物に関連する相当量のメチレン基を有する化合物を含有していた。抽出の度合いは、ペンタン中よりもアセトン中の方が高かった。液体画分は、いくらかの極性基も含有し得る。
【0099】
4つのHTCバイオマスサンプルに対してXPSを実施した。XPS法は、表面の最外部2〜10nmについての定量的な化学情報を提供する。元素組成および炭素の種々の化学状態の両方を分析した。表4は元素組成を示し、表2は炭素の種々の化学状態を示す。表面のCおよびO組成はいずれも、各サンプルの平均CおよびO値とは異なる。HTC馬糞は、対応する平均値のCおよびOと比較して、表面においてより多くのC組成およびより少ないOを有する。4つのサンプルのそれぞれについて、表面のO/C原子比は平均値とは異なる。HTC馬糞およびバイオスラッジは表面において平均数よりも低いO/C原子比を有し、これらが水熱炭化中に表面においてより良く炭化されることを意味する。HTCビール廃棄物は反対の傾向を有するが、同様に、他の部分と比較して表面において十分に炭化されないことを意味する。表2において、炭素の種々の化学状態が決定される。炭素は、異なる官能基に従って4つのタイプに分類される:酸化されていない炭素(C1−炭素:C−C、C−H、C=C基、炭化水素鎖/芳香族基においてみられるものなど)、酸素への1つの結合(C2−炭素:C−O、C−O−C官能基)、より酸化された炭素のC3−炭素およびC4−炭素(例えば、エステルおよびカルボン酸官能基)。4つのサンプルについて、全炭素の多く(60〜73%)は酸化されていない炭素(C1−炭素)として存在し、HTC馬糞はC1の最高値を有する。
【0100】
本発明に従う磁性活性炭は、気体および流体の分離および/または精製における使用に適している。その他の使用は、水の分離および/または精製、医療用途、水槽ポンプ、産業用水の処理、カフェイン除去プロセス、下水処理、化学物質漏出の浄化、脱色、脱臭、触媒用の担体、窒素の精製、酸素の精製、バイオガスの性能向上、天然ガスの性能向上、燃料電池、スーパーキャパシタなどのためであり得る。
【0101】
HTCバイオマスの元素組成、水分、および灰分含量は表3に示される。HTCバイオスラッジは、製紙工場からのバイオスラッジの不均一な性質および使用される関連化学物質のために、他のHTCバイオマスよりもはるかに多い灰分を有した。HTCバイオマスの水分含量は約4〜7wt.%であった。このレベルは、極性官能性に関連していくらか親水性であるHTCバイオマスの性質と一致する。
【0102】
水熱炭化プロセスにおいてFe2+イオンを金属塩の形態で添加した。原子吸光分光分析法によって決定される、活性化の前後の炭素のFe含量はいずれも表5に示される。Feは活性化プロセスの間に濃縮される。XPSからのFe含量(表4)と、原子吸光分光分析法からのFe含量(表5)とを比較するのは興味深いことである。Feの濃度は、原子吸光分光分析法よりもXPSデータにおいてはるかに高い。XPSはサンプルの表面の元素を検出するが、原子吸光分光分析法は、サンプル中の平均元素含量を決定する。活性化の前、HTCバイオマス中のFeは、大部分が粒子の表面に位置するようである。水熱炭化プロセスは、Feを炭素粒子内に取り込むことができなかった。
【0103】
要因計画による研究
HTCバイオマスの活性化を最適化するために、
図1に示される鉛直反応器において、温度、CO
2の流速および活性化の時間を変更した。これらのパラメータは、CO
2の流れの中での種々の原材料の定型的な活性化にとって重要であると思われる。活性炭は全て、活性化の温度の上昇と共に表面積の増大を示した。収率は、全てのHTCバイオマスについて、温度の上昇と共に予想通りに低下した。HTC刈取り草およびHTCビール廃棄物は、これらのより低いO/C比と一致して、他のものより高い収率で活性化された。この高収率は、
13CNMRスペクトルから推定されるような高度の凝縮とよく相関した。HTCバイオマス中の少量の酸素原子は脱酸素化(脱カルボニルおよび脱炭酸反応)が限られており、従って高収率をもたらすと思われた。各サンプルについて収率、比表面積および細孔容積を分析し、表7に示す。
【0104】
種々のHTCバイオマスから調製された活性炭においてN
2の多数の吸着および脱着等温線を記録した。これらの等温線および細孔分布の推定は、補足
図S4〜7に示される。これらのデータから、600℃において活性化されるHTCバイオマスが細孔の単峰性分布を有したことは明らかである。800℃での非常に急速な処理によって、高レベルのメソ多孔質およびミクロ多孔質がHTCバイオスラッジからの活性炭中で発達した。補足情報の
図S6のN
2吸着等温線を参照。HTC馬糞からの活性炭中のメソ多孔質の程度は、それとは異なって発達した。2時間処理されたサンプルは、それ以外は同一の活性化条件で1時間処理されたものよりも多くのメソ細孔を有した。
図S7の捕捉のN
2吸着等温線を参照。温度の影響は上記で直接的に記載されたが、活性化をさらに分析するために全要因計画を適用した。このような計画を用いて、HTCバイオマスの活性化における流速、活性化時間およびO/C比の効果を評価した。HTCビール廃棄物およびHTC馬糞からの結果を比較することによってO/C比を変更した。800℃の設定温度での活性化のために17および48dm
3/時の流量、0または2時間の活性化時間を使用した。重量損失、比表面積(BET)、ミクロ細孔面積、ミクロ細孔容積、および全細孔容積に対する効果を要因分析によって評価した。詳細な要因分析およびその依存性は補足情報に示される(表6および
図S8を参照)。
【0105】
ミクロ細孔面積および容積は、O/C比にマイナスに依存し、十分に炭化されたHTCビール廃棄物からの活性炭は、主にこのようなミクロ細孔を示した。一方、全細孔容積は、高いO/C比または長期間の活性化によりプラスの影響を受けた。これらの依存性は、細孔が活性化中に成長することと、高O/C比を有するHTC馬糞の活性化の場合に急速な成長が生じることとに一致する。比表面積(BET)および細孔容積は、流速にマイナスに依存する。これらの低減は、活性炭がより急速なCO
2の流量下で消費し始めたことを示し、これはさらに、これらの活性化の低収率によって支持された。
【0106】
要因分析により、相互作用効果の評価が可能になった。高O/C比および短い活性化時間の組み合わせ、または低O/C比および長い活性化時間の組み合わせによりミクロ細孔が促進された。これらの相乗効果は、活性化中の反応が高O/C比のほうが低O/C比よりも速いことを示した。また、活性化中のCO
2の流速と、活性化時間との間に有意な負の相互作用が観察された。
【0107】
流速および時間は一緒に比表面積(BET)および全細孔容積に影響した。急速な流量および短い活性化時間の組み合わせ、または遅い流量および長い活性化時間の組み合わせはいずれも有益であった。この相乗効果は、必要とされるCO
2の容積の最適値を示した。単位(フロー時間)=dm
3。比表面積および全細孔容積についても同様に、有意な負の3本線の相互作用を観察した。長い活性化時間は、予想通り、短い場合よりも大きい重量損失を与えた。
【0108】
異なるタイプのHTCバイオマスを一緒に合成し、CO
2の流れの中で磁性活性炭に活性化した。酸化鉄の磁性ナノ粒子の前駆体を水熱炭化に導入し、これは、ナノ粒子よりも寸法が小さい細孔構造を有する活性炭内で大きいナノ粒子が発達することを可能にする。バイオマスから活性炭へのこの2段階の活性化は、有意な磁気特性が活性炭に導入されることを可能にする。これらの特性によって、これらは水処理プロセスおよび特定の気体分離プロセスに高度に関連される。ナノ粒子は外部磁場および電磁放射に強く反応する。活性炭のテクスチャ特性は、バイオマスのタイプおよび活性化に使用されるプロセスパラメータに依存する。活性化HTC馬糞は、特定の条件下で活性化されると、相当量のメソ細孔を示した。活性化HTC刈取り草および活性化HTCビール廃棄物はミクロ多孔質であった。この細孔サイズの違いは、根本的なHTCバイオマスにおける凝縮度によって合理的に解釈された。HTC刈取り草およびHTCビール廃棄物は高度に凝縮され、その分子構造は褐炭に類似していたが、HTC馬糞はいくらか低く凝縮され、その分子構造は泥炭に類似していた。可能な場合には、活性化のプロセスパラメータだけでなく、バイオ廃棄物の水熱炭化の程度によって、ミクロ多孔質およびメソ多孔質の度合いを調製することができると思われる。これらの活性炭は、潜在的に、従来の前駆体から製造されたものを置換することができる。活性化HTCバイオマス中の固形物の全体の形状は、HTCおよびCO
2中の活性化の後、大部分は保存された。念頭の用途に関連した適切なバイオ廃棄物を選択することによって、形状の保存は、活性炭の粒子の調節に通じる。
【0109】
図S9の根本的な形状は、バイオマスが水熱処理によってほとんど影響を受けないままであることを示す。
図S10において、(a)と(b)、そして(c)と(d)を比較すると、活性化によって形状はほとんど影響を受けないままであるが、形状のサイズは縮小することが示される。
図S11には、表面を通して現れる「気泡」が表面の下に存在するように見えることが示される。表面にメソ細孔はあまり存在しないように見える。
【0110】
定義
本明細書で使用される場合の「含む/含んでいる」という用語は、記述される特徴、整数、ステップまたは構成要素の存在を指定すると解釈される。しかしながら、この用語は、1つまたは複数の付加的な特徴、整数、ステップもしくは構成要素またはこれらの群の存在または付加を除外しない。
【0111】
値は、末端値を含むその間の範囲として定義される。従って、「15〜50の間」という用語は、15から50までのこれらの値を含む任意の値、例えば、15.5、20.456および50などを含む。
【0112】
本明細書で使用される場合の「自発圧力」という用語は、閉鎖した系において温度上昇の間に増大される圧力を指定すると解釈される。
【0113】
本明細書で使用される場合の「メソ細孔」という用語は、細孔サイズが2nm〜50nmの間であることを指定すると解釈される。
【0114】
本明細書で使用される場合の「室温」という用語は、15〜30℃の間の温度を指定すると解釈される。
【0115】
本明細書で使用される場合の「バイオスラッジ」という用語は、紙パルプ工場のための水施設における廃水の懸濁液からの沈降物を指定すると解釈される。
【0116】
本明細書で使用される場合の「炭水化物」という用語は、炭素、水素、および酸素だけからなる有機化合物を指定すると解釈される。
【0117】
本明細書で使用される場合の「アルキル」、「アルカノール」「アルカノン」および「アルキルエステル」という用語は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エーテル基、ハロ基、ニトリル基、ホルムアミド基、スルホキシド基および/またはアミン基などの官能基を含み得る、C
1〜C
6またはC
1〜C
4直鎖状または分枝状アルキル鎖を指定すると解釈される。
【0118】
本明細書で使用される場合の「粒子」という用語は、容積または質量などのいくつかの物理的または化学的な特性が属するとみなされる任意の小さい局所的な物体を指定すると解釈される。
【0119】
本明細書で使用される場合の「容器」という用語は、固体、液体または気体を含有、貯蔵、および輸送するために使用される任意の品目を指定すると解釈される。例としては、パイプまたは鉢であり得る。
【0120】
本明細書で使用される場合の超常磁性という用語は、約30nmよりも小さいFe
3O
4(酸化鉄(II、III))ナノ粒子においてみられる磁性の形態を指定すると解釈される。これらは磁場の存在下で強力に磁化されるが、磁場が存在しないとその平均磁化は0になると思われる。
【0121】
本明細書で使用される場合のフェリ磁性という用語は、その主要成分として酸化鉄(II、III)を有する化合物において見出すことができる磁性の形態を指定すると解釈される。
【0122】
本明細書で使用される場合の飽和保磁力という用語は、磁化をゼロに低減するために必要とされる印加磁場の強度を指定すると解釈される。
【0123】
参考文献
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【0124】
本発明は開示される実施形態に限定されず、以下の特許請求の範囲の範囲内で変更および修正され得る。