特許第6285438号(P6285438)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6285438磁性活性炭ならびにこのような材料の調製および再生方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6285438
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】磁性活性炭ならびにこのような材料の調製および再生方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/20 20060101AFI20180215BHJP
   C02F 11/08 20060101ALI20180215BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20180215BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20180215BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20180215BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20180215BHJP
   C02F 11/00 20060101ALI20180215BHJP
   B03C 1/00 20060101ALI20180215BHJP
   B03C 1/02 20060101ALI20180215BHJP
   C01B 32/336 20170101ALI20180215BHJP
【FI】
   B01J20/20 DZAB
   C02F11/08
   B01J20/28 Z
   B01J20/34 D
   C02F1/28 D
   B01D53/04 220
   C02F11/00 C
   B03C1/00 A
   B03C1/00 B
   B03C1/02 Z
   C01B32/336
【請求項の数】15
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2015-527426(P2015-527426)
(86)(22)【出願日】2013年8月16日
(65)【公表番号】特表2015-530236(P2015-530236A)
(43)【公表日】2015年10月15日
(86)【国際出願番号】SE2013050976
(87)【国際公開番号】WO2014027953
(87)【国際公開日】20140220
【審査請求日】2016年5月10日
(31)【優先権主張番号】1250931-1
(32)【優先日】2012年8月17日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】515042948
【氏名又は名称】ビオコル リリーストローレ ウント コンパニー コマンディートボラグ
【氏名又は名称原語表記】Biokol Lilliestrale & Co KB
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ヘディン,ニクラス
(72)【発明者】
【氏名】リリーストローレ,マルテ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンミン,ハオ
(72)【発明者】
【氏名】ビョルクマン,エーヴァ
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0196246(US,A1)
【文献】 Deon Hines 他,Surface Properties of Porous Carbon Obtained from Polystyrene Sulfonic Acid-Based Organic Salts,Langmuir,2004年,Vol.20,P3388-3397
【文献】 Zhengang Liu 他,Arsenate removal from water using Fe3O4-loaded activated carbon prepared from waste biomass,Chemical Engineering Journal,2010年,Vol.160,P.57-62
【文献】 Baoliang Chen 他,A novel magnetic biochar efficiently sorbs organic pollutants and phosphate,Bioresource Technology,2011年,Vol.102,P.716-723
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00 − 20/34
C02F 1/28
C01B 32/00 − 32/991
C02F 11/00 − 11/20
B01D 53/02 − 53/12
B03C 1/00 − 1/32
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性活性炭を調製するための方法において、
a)酸性条件下で鉄イオンの存在下、180〜250℃の間の温度の自発圧力において、バイオマスを含む水溶液を水熱的に処理して前駆生成物を得るステップであって、鉄イオンが炭素構造内にカプセル化され、前記バイオマスが刈取り草、発酵および堆肥化プロセスからのバイオ廃棄物、修飾炭水化物、都市および産業バイオスラッジ、アミノ多糖類、有蹄動物からの漏出物、藻類、海藻、ホテイアオイおよびバガス、またはこれらの混合物を含む群から選択されるステップと、
b)550〜850℃の間の高温で9時間までの期間にわたって活性化剤を混合することによって、ステップa)で得られた前記前駆生成物を活性化するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、アルカノール、アルキルエステルまたはアルカノンから選択される有機溶媒を用いて、水熱的に炭化された前記バイオマスを活性化の前に抽出するさらなるステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、前記活性化剤が700〜800℃の間の高温で2〜8時間の間の期間混合されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法において、前記活性化剤が、CO、希釈Oおよび/または不活性ガスを含む群から選択される気体または蒸気であることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、気体または蒸気の流速が5〜75dm/時の間であることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法において、流速が、ステップa)で得られた前駆生成物5グラム当たり大気圧で5〜75dm/時の間であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法において、使用される前記鉄が、Fe2+および/またはFe3+を含む鉄塩または合金であることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法において、前記鉄塩がFeSOであることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法において、前記前駆体中の鉄の量が混合物の全重量の0.5〜5wt%の間であることを特徴とする方法。
【請求項10】
バイオマスから得られる磁性活性炭において、600〜1000m/gの間のSBET、0.50〜1.0cm/gの間の全細孔容積、t−プロット法から推定した0.050〜0.30cm/gの間のミクロ細孔容積、および磁性活性炭の重量の2〜10wt.%の間の鉄含量を含み、さらに、炭化バイオマス中の細孔のサイズよりも大きい直径を有する結晶化酸化鉄ナノ粒子を含み、酸化鉄磁性ナノ粒子の直径が10〜50nmの間であり、鉄イオンが炭素構造内にカプセル化されていることを特徴とする磁性活性炭。
【請求項11】
請求項10に記載の磁性活性炭において、70%超の前記ナノ粒子が結晶化されていることを特徴とする磁性活性炭。
【請求項12】
請求項10または11に記載の磁性活性炭において、前記酸化鉄ナノ粒子の直径が20〜40nmの間であることを特徴とする磁性活性炭。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか一項に記載の磁性活性炭の使用において、気体の分離および貯蔵、液体の精製、下水残水および飲料水からの医薬品残渣の除去、不均一触媒担体、水槽および産業用養魚場、産業用水、カフェイン除去プロセス、化学物質漏出の浄化、油、液体、ペンキ、パイプおよび建築材料中の電磁加熱複合体、脱色、脱臭、窒素およびメタンの精製、燃料電池内の電極のクリーニング、スーパーキャピタおよび電池のためであることを特徴とする使用。
【請求項14】
液体および/または気体から粒子を分離するための方法において、以下のステップ:
ステップ1)液体および/または気体を保持するように構成された容器内に、請求項10〜12のいずれか一項に記載の磁性活性炭を提供するステップと、
ステップ2)前記液体および/または気体を前記容器内の前記磁性活性炭と接触させて、前記粒子を分離して前記液体および/または気体を精製するステップと、
ステップ3)前記磁性活性炭を液体および/または気体から分離するために、前記容器に電磁場を印加するステップと、
ステップ4)前記液体および/または気体を前記容器から除去するステップと、
ステップ5)前記電磁場を停止するステップと、任意選択で
ステップ6)精製する必要のある新しい液体および/または気体を前記容器に充填し、ステップ3)〜5)を繰り返すステップと、さらに任意選択で
ステップ7)前記磁性活性炭を再生するか、または前記磁性活性炭を破壊するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
磁性活性炭を再生するための方法において、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法に従って調製された前記磁性活性炭内に包埋された鉄粒子を加熱するために振動電磁場を印加することを含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の磁性活性炭の調製方法と、磁性活性炭および前記磁性活性炭の使用とに関する。本発明はさらに、液体および/または気体からの粒子の分離方法と、磁性活性炭の再生方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気特性を有する活性炭は、系から容易に分離可能であるという利点がある。活性化済の炭素の多孔性ネットワーク内に磁性成分を沈殿または結晶化させるという考えは直接的であり、うまく適用されてきた。合成中に鉄成分を前駆体と一緒に取り込むことは、機能性および磁性活性炭を得るための好ましい手順である。しかしながら、このような取込みは活性炭の表面積および細孔容積を低下させ、磁性成分は緩くしか統合されず、浸出し得る。
【0003】
水熱炭化は、炭化された材料内にナノサイズの鉄成分を導入するための有効なプロセスを提供することができる。水熱炭化(HTC)バイオマスは、多数の予想される用途を有する安定した有機材料である。その関連の炭化プロセスは、炭素利用率が高く、発熱性であり、そして関連の温室ガスの放出がわずかである。Baccileらは、13Cが豊富なグルコースを炭化することによってHTCグルコースの分子的性質を決定し、多次元固相核磁気共鳴(NMR)分光法を用いて生成物を研究した。このようなデータから、彼らは、HTCバイオマスが、平均して、主にフラン部分を有する高度に架橋したポリマーからなると結論付けた。近年、彼らは、有機原材料中に窒素が存在する場合、窒素は架橋HTCバイオマス内に含有されることを示した10
【0004】
通常のバイオマスから活性炭への活性化は、物理的または化学的に実施することができる。物理的な活性化は、通常、種々の炭素系物質を高温で空気、二酸化炭素または水蒸気により処理することによって実施される。化学的な活性化は、高温で、KOH、ZnClおよびHPOなどの化合物の添加により実施される。Sevillaらは、ユーカリおが屑から製造したHTCバイオマスを800℃の温度でKOHにより化学的に活性化した。12Liuらは、松材おが屑およびもみ殻から調製したHTCバイオマスを二酸化炭素により活性化し、569m/gの比表面積が到達された。13
【0005】
廃棄物バイオマスは、多くの場合、環境問題を有する。馬糞(horse manure)の堆肥化は環境ガスを放出し、そして環境に浸出し得る医薬品残渣および病原体を完全には破壊しない。刈取り草(grass cutting)は亜酸化窒素およびメタンの両方を大気に放出し、これらはいずれも温室ガスである。ビール製造からの廃棄物は経済価値が低く、主に動物飼料(animal food)として使用される。バイオスラッジは肥料として直接使用できることはほとんどなく、パルプ製紙工場からのものはわずかな商業的価値しかない。
【0006】
米国特許第7,429,330号明細書および米国特許第7,879,136号明細書には、固体ベースの酸化鉄を石炭/ピッチ混合物に添加し、圧縮してから炭化した後、既存の活性化方法に従って活性炭に活性化することによる、磁性活性炭の調製方法が開示される。
【0007】
米国特許出願公開第2010/0155335号明細書には、活性化済の炭素を+2型または+3型を有する鉄溶液と混合した後、pHを上昇させて活性炭の細孔内に酸化鉄を沈殿させることによる、磁性活性炭の調製方法が開示される。
【0008】
米国特許出願公開第2004/0147397号明細書には、従来の2段階の炭化および活性化方法で磁性活性炭が調製される方法が開示される。可溶性の鉄は、磁性材料前駆体の溶液内に炭素前駆体を浸漬することによって炭化の前に炭素内に導入される。
【0009】
米国特許第8,097,185号明細書には、軟材の炭素前駆体が第二鉄塩の溶液中に浸漬され、乾燥され、熱分解され、そして活性化される、磁性活性炭の調製方法が開示される。
【0010】
より効率的かつ費用効果的な活性炭の調製方法が依然として必要とされている。また、改善された磁性活性炭製品も必要とされている。遍在する(ubiquous)低コストのバイオ廃棄物バイオマスを使用可能であるということには、経済的かつ環境的な利点がある。
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、ナノサイズの磁性鉄成分を活性炭化材料内に導入するための効果的な方法を提供することである。さらなる目的は、炭素利用率が高く、一般に入手可能な種類のソフトおよびウェットバイオマスを原材料として用いる炭化方法を提供することである。
【0012】
この目的は、a)酸性条件下で鉄イオンの存在下、180〜250℃の間の温度の自発圧力(autogenic pressure)において、バイオマスを含む水溶液を水熱的に処理して前駆生成物を得るステップと、b)550〜850℃の間の高温で9時間までの期間活性化剤を混合することによって、ステップa)で得られた前駆生成物を活性化するステップとを含む、請求項1に記載の磁性活性炭の調製方法によって達成される。
【0013】
本発明に従って磁気位相のナノ粒子が統合された活性炭の複合体を調製するための方法の第1のステップは、原材料の炭化である。このステップは、好ましくは、高い温度および圧力において水中で実施される。本方法は発熱性であり、炭素損失が小さい。本方法は最初のバイオマスにおける脱水および断片化反応から始まり、その後、縮合および重合反応が起こり、架橋された石炭様の前駆生成物(HTCバイオマス)が提供される。高圧は水の電離定数の値を増大させ、それにより水素および水酸化物イオンの濃度が増大し、そして次に炭化反応が容易になる。鉄イオンは炭素構造内にカプセル化される。
【0014】
別の利点は、本方法を使用して、種々のタイプのソフトおよびウェットバイオマスの種類から活性炭製品を提供できることである。新規の方法を用いて、環境に優しくない気体の放出が最小限にされる。これは、環境的、経済的および/または技術的な理由でこれまで使用できなかったバイオマスを使用できることを意味する。バイオマスのいくつかの例は、馬糞、ビール製造からの廃棄物、刈取り草およびバイオスラッジである。
【0015】
一実施形態では、本方法は、アルカノール、アルキルエステルまたはアルカノンから選択される有機溶媒を用いて、水熱的に炭化されたバイオマスを活性化の前に抽出するさらなるステップを含む。さらに別の実施形態では、アルカノンは、アセトン、エタノールまたはメタノールである。
【0016】
抽出プロセスは、その後の活性化プロセスを改善するために、前駆体材料から液相を除去するために使用され得る。さらに、有機可溶性化合物は再生利用され得る。
【0017】
別の実施形態では、活性化剤は、700〜800℃の間の高温で2〜8時間の間の期間混合される。
【0018】
さらなる実施形態では、活性化剤は、CO、希釈Oおよび/または不活性ガスを含む群から選択される気体または蒸気である。さらに別の実施形態では、気体または蒸気はNまたはHOである。
【0019】
一実施形態では、気体または蒸気の流速は、5〜75dm/時の間である。
【0020】
別の実施形態では、流速は、前駆体材料5グラム当たり、大気圧において5〜75dm/時の間である。
【0021】
流速は、とりわけ、プロセスにおいて使用されるバイオガス(biogass)の量に依存する。
【0022】
一実施形態では、使用される鉄は、Fe2+および/またはFe3+を含む鉄塩または合金である。
【0023】
例えばFeSO塩などの塩の利点は、この塩が容易に入手可能であり、使用が経済的に魅力的なことである。
【0024】
別の実施形態では、バイオマスは、刈取り草、ビール製造からのバイオ廃棄物、馬糞、バイオスラッジ、炭水化物、修飾炭水化物、藻類、海藻、バガス、魚廃棄物、哺乳類糞、またはこれらの混合物を含む群から選択される。さらに別の実施形態では、バイオマスは、刈取り草、発酵および堆肥化プロセスからのバイオ廃棄物、修飾炭水化物、都市および産業バイオスラッジ、アミノ多糖類、有蹄動物からの漏出物(spilling from ungulates)、藻類、海藻、ホテイアオイおよびバガス、またはこれらの混合物を含む群から選択される。アミノ多糖類の例は、真菌のキチンおよび節足動物の外骨格であり得る。有蹄動物からの漏出物は馬糞であり得る。
【0025】
本発明に従う方法の利点は、バイオマスの水熱処理では炭素の足跡が非常にわずかなことである。現在の炭化技術は著しいCOを放出させる。新規の方法は、処理されたバイオマスから放出されるCOを低減する。
【0026】
さらに別の目的は、バイオマス粒子の外形がほぼ影響されないままである磁性活性炭を提供することである。
【0027】
別の目的は、水熱炭化(HTC)バイオマスを、多数の予想される用途を有する安定した有機材料として提供することである。さらなる目的は、優れた収率で約1000m/gまでの比表面積を有する磁性活性炭に活性化された、様々な廃棄物バイオマスからのHTCバイオマスを提供することである。改善された安定性を有する磁性活性炭を提供することもさらなる目的である。
【0028】
これらの目的は、上記の方法に従って調製される磁性活性炭によって達成される。
【0029】
またこれらの目的は、250〜1000m/gの間の表面積、0.250〜1.0cm/gの間の全細孔容積、0.050〜0.30cm/gの間のミクロ細孔容積、および磁性活性炭の重量の2〜10wt.%の間の鉄含量を含み、さらに、炭化バイオマス中の細孔のサイズよりも大きい直径を有する結晶化酸化鉄ナノ粒子を含むことを特徴とする、バイオマスから得られる磁性活性炭によって達成される。
【0030】
本方法によって得られる製品は、調整可能な表面積および細孔容積を有し、十分に開発されたナノメートルサイズの酸化鉄粒子のために有意/十分な磁化を有する磁性活性炭である。磁性活性炭複合体粒子は、外部磁場の勾配によって移動させることができ、マイクロ波周波数帯域、例えば30KHz〜3MHzの間の振動電磁場によって加熱することができる。
【0031】
新規の活性炭複合体の一つの利点は、酸化鉄の磁化ナノ粒子を含むことである。炭素複合体粒子は、外部磁場を印加することによって移動され得る。従って、このような粒子は、液体から分離することができる。従って、ナノ粒子の分離のためのろ過、沈降のような現在の技術は必要とされない。磁性ナノ粒子は、ラジオ周波数またはマイクロ波周波数領域で作動する電磁場の使用によって加熱され得る。このような加熱は、温度スイング吸着プロセスにおけるスイングサイクル時間を低減することができる。磁性活性炭が油、ペンキおよび種々の建築材料などの液体または固体材料内に包埋される場合、磁性活性炭内に包埋された鉄粒子を加熱するために、振動電磁場の印加によって熱を提供することができる。このサイクル時間の低減は、所与の気体分離装置における処理量を増大させるという利点を有する。一実施形態では、酸化鉄ナノ粒子の直径は10〜50nmの間である。さらなる実施形態では、酸化鉄ナノ粒子の直径は20〜40nmの間である。
【0032】
本発明は、ナノ粒子が活性炭材料内に安定に分散された、安定した磁性活性炭床を提供する。
【0033】
別の実施形態では、表面積は600〜1000m/gの間であり、全細孔容積は0.50〜1.0cm/gの間である。
【0034】
本発明は、高い表面積および大きい細孔容積を有する磁性活性炭を製造するための方法を提供する。
【0035】
一実施形態では、バイオマスは、刈取り草、発酵および堆肥化プロセスからのバイオ廃棄物、修飾炭水化物、都市および産業バイオスラッジ、アミノ多糖類、有蹄動物からの漏出物、藻類、海藻、ホテイアオイおよびバガス、またはこれらの混合物を含む群から選択される。別の実施形態では、バイオマスは、刈取り草、ビール製造からのバイオ廃棄物、馬糞、バイオスラッジ、炭水化物、修飾炭水化物、藻類、海藻、バガス、魚廃棄物、哺乳類糞、またはこれらの混合物を含む群から選択される。
【0036】
本発明に従うより効果的かつ効率的な方法は改善された製品を提供する。これにより、磁性活性炭製品の調製方法および使用に関連するコストが低減される。
【0037】
また本発明は、気体の分離および貯蔵、液体の精製、下水残水(sewage residue water)および飲料水からの医薬品残渣の除去、不均一触媒担体(heterogen catalyses support)、水槽および産業用養魚場、産業用水、カフェイン除去プロセス、化学物質漏出(chemical spill)の浄化、油、液体、ペンキ、パイプおよび建築材料中の電磁加熱複合体、脱色、脱臭、窒素およびメタンの精製、燃料電池内の電極のクリーニング、スーパーキャピタ(supercapitor)および電池のための磁性活性炭の使用にも関する。別の実施形態は、気体の分離、気体の精製、水などの液体の精製、医療用途、水槽ポンプ、産業用水の処理、カフェイン除去プロセス、下水処理、化学物質漏出の浄化、脱色、脱臭、触媒用の担体、窒素の精製、酸素の精製、バイオガスの性能向上、天然ガスの性能向上、燃料電池および/または電池内の電極材料、およびスーパーキャパシタのための使用に関する。
【0038】
本発明はさらに、液体および/または気体から粒子を分離するための方法に関し、以下のステップ:
ステップ1)液体および/または気体を保持するように構成された容器内に、上記で定義された磁性活性炭を提供するステップと、
ステップ2)液体および/または気体を前記容器内の前記磁性活性炭と接触させて、液体および/または気体を粒子から精製するステップと、
ステップ3)前記磁性活性炭を液体および/または気体から分離するために、前記容器に電磁場を印加するステップと、
ステップ4)液体および/または気体を容器から除去するステップと、
ステップ5)電磁場を停止するステップと、任意選択で
ステップ6)精製する必要のある新しい液体および/または気体を容器に充填し、ステップ3)〜5)を繰り返すステップと、さらに任意選択で
ステップ7)磁性活性炭の性能を高めるか、または磁性活性炭を破壊するステップと
を含む。
【0039】
一実施形態では、容器はパイプである。
【0040】
本発明は、炭素複合体内に包埋された鉄粒子を加熱するために振動電磁場を印加することを含む、磁性活性炭の再生方法に関する。この手順は、圧力下で気体の脱着を容易にする。
【0041】
本発明の一実施形態は、磁性活性炭を含む液体または固体を加熱するための方法に関し、本方法は、磁性活性炭内に包埋された鉄粒子を加熱するために振動電磁場を印加することを含む。一実施形態では、液体はペンキまたは油である。別の実施形態では、固体は、コンクリートなどの種々の複合材料を含む建築材料である。
【0042】
再生方法の別の実施形態では、振動電磁場は、30KHz〜3MHzの間の周波数で印加される。
【0043】
本発明は、例として開示される実施形態を用いて、そして添付図面を参照して、より詳細にここで説明されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1a図1aは、水熱炭化(HTC)バイオマスを活性化するために使用される反応器を示す。
図1b図1bは、水熱炭化(HTC)バイオマスを活性化するために使用される反応器を示す。
図2図2は、17dm/時の流速および2時間の活性化時間でCOにより800℃において、4つの水熱炭化(HTC)バイオマスから調製された活性炭のN吸着等温線および細孔サイズ分布を示す。
図3図3は、HTC馬糞(a)、HTC□馬糞(b)、HTC□ビール廃棄物(c)およびHTC□バイオスラッジ(d)からの活性炭の走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
図4図4は、HTC刈取り草からの活性炭の透過電子顕微鏡(TEM)画像(a)、および水熱炭化(HTC)馬糞から調製された磁性活性炭内の酸化鉄ナノ粒子の画像(b)を示す。
図5図5は、水熱炭化された馬糞から調製された磁性活性炭のX線回折パターンを示す。
図6図6は、水熱炭化(HTC)馬糞から調製された磁性活性炭の磁化曲線を示す。
図7図7は、小型磁石による水性懸濁液中の磁性活性炭の粒子の分離を示す。
図8a図8aは、水熱炭化(HTC)バイオマス(HTC草)の13C核磁気共鳴(NMR)スペクトルを示す。
図8b図8bは、水熱炭化(HTC)バイオマス(HTC馬糞)の13C核磁気共鳴(NMR)スペクトルを示す。
図S1図S1は、水熱炭化(HTC)ビール廃棄物の13C核磁気共鳴(NMR)スペクトルを示す。
図S2図S2は、水熱炭化(HTC)バイオスラッジの13C核磁気共鳴(NMR)スペクトルを示す。
図S3図S3は、アセトン中で抽出した後の水熱炭化(HTC)馬糞の13C核磁気共鳴(NMR)スペクトルを示す。
図S4図S4は、様々な温度、活性化時間および気体流速で調製された水熱炭化(HTC)刈取り草から調製された活性炭のa)N吸着等温線およびb)細孔サイズ分布を示す。「▲」600℃−2時間−17dm/時、「▼」700℃−2時間−17dm/時、「●」800℃−2時間−17dm/時、「■」800℃−2時間−48dm/時。
図S5図S5は、様々な温度、活性化時間および気体流速で調製された水熱炭化(HTC)ビール廃棄物から調製された活性炭のa)N吸着等温線およびb)細孔サイズ分布を示す。「■」600℃−2時間−17dm/時、「◆」700℃−2時間−17dm/時、「◇」800℃−0時間−17dm/時、「△」800℃−0時間−48dm/時、「▽」800℃−1時間−17dm/時、「▲」800℃−2時間−17dm/時、「●」800℃−2時間−48dm/時、「▼」800℃−8時間−17dm/時。
図S6図S6は、様々な温度、活性化時間および気体流速で調製された水熱炭化(HTC)バイオスラッジから調製された活性炭のa)N吸着等温線およびb)細孔サイズ分布を示す。「■」600℃−2時間−17dm/時、「●」700℃−2時間−17dm/時、「◆」800℃−0時間−17dm/時、「△」800℃−0時間−48dm/時、「▲」800℃−2時間−17dm/時、「▼」800℃−2時間−48dm/時。
図S7図S7は、様々な温度、活性化時間および気体流速で調製された水熱炭化(HTC)馬糞から調製された活性炭のa)N吸着等温線およびb)細孔サイズ分布を示す。「■」600℃−2時間−17dm/時、「◆」700℃−2時間−17dm/時、「◇」800℃−0時間−17dm/時、「△」800℃−0時間−48dm/時、「▼」800℃−1時間−17dm/時、「●」800℃−2時間−17dm/時、「▲」800℃−2時間−48dm/時。
図S8図S8は、全要因計画(full factorial design)から、a)BET表面積、b)ミクロ細孔表面積、c)全細孔容積、d)ミクロ細孔容積、およびe)重量損失に対する3つの因子の影響を示す。記号「+」は各因子の高いレベルを表し、「−」は低いレベルを表し、O/C比は「A」として符号化され、流速は「B」であり、活性化時間は「C」である。
図S9図S9は、水熱炭化(HTC)バイオマス:a)刈取り草、b)ビール廃棄物、c)バイオスラッジ、d)馬糞のモルホロジーを表す走査電子顕微鏡写真を示す。
図S10図S10は、水熱炭化(HTC)ビール廃棄物(a、c)およびCO活性化HTCビール廃棄物(b、d)のモルホロジーを異なる倍率で表す走査電子顕微鏡写真を示す。
図S11図S11は、水熱炭化(HTC)馬糞(a)、刈取り草(b)の、700℃におけるCO活性化中に成長するメソ細孔を表す走査電子顕微鏡写真を示す。
図S12図S12は、17dm/時の流速および2時間の活性化時間でCOにより800℃において、水熱炭化(HTC)刈取り草から調製された磁性活性炭のXRDパターンを示す。
図S13図S13は、17dm/時の流速および2時間の活性化時間でCOにより800℃において、水熱炭化(HTC)ビール廃棄物から調製された磁性活性炭のXRDパターンを示す。
図S14図S14は、17dm/時の流速および2時間の活性化時間でCOにより800℃において、水熱炭化(HTC)バイオスラッジから調製された磁性活性炭のXRDパターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明に従う方法において使用されるバイオマスまたはバイオ廃棄物は様々な起源を有する。バイオマスの起源は本発明にとって重要ではない。バイオマス材料の例は、刈取り草、発酵および堆肥化プロセスからのバイオ廃棄物、糖類などの修飾炭水化物、都市および産業バイオスラッジ、真菌のキチンおよび節足動物の外骨格などのアミノ多糖類、馬糞などの有蹄動物からの漏出物、藻類、海藻、ホテイアオイ、ならびにバガスである。好ましいバイオマスは刈取り草および馬糞である。他の好ましいバイオマスは、ビール製造からのバイオ廃棄物およびバイオスラッジである。バイオマスの混合物も同様に使用され得る。
【0046】
通常、本方法において使用されるバイオマスはまずより小さい断片に切断され、そのサイズは、製造の規模と、使用される反応器のタイプとによって決まる。
【0047】
本方法のステップa)では、水または別の水性液体、有機酸が少量の鉄塩と共にバイオマスに添加され、混合される。
【0048】
有機酸の例は、クエン酸、酢酸、乳酸、ギ酸、シュウ酸および尿酸、またはこれらの混合物であり得る。
【0049】
有機酸の添加後の混合物のpH値は3〜6の間、または4〜5の間であり得る。
【0050】
使用される鉄はFe2+および/またはFe3+であり、任意の鉄塩または合金に由来する。一例はFeSOであり得る。
【0051】
ステップa)の温度は、180〜300℃の間であり得る。一実施形態では、温度は180〜230℃の間である。
【0052】
反応器内の圧力は、1.5〜2.5MPaの間であり得る。
【0053】
1〜3時間後、バイオマスおよび水は、より大きい容器にポンプで注入され得る。得られた生成物は次に25〜80℃の間の温度で数時間(例えば、4〜7時間、または5〜6時間)平衡化され得る。平衡化の後、前駆生成物は冷却およびろ過され得る。
【0054】
前駆体中の鉄の量は、混合物の全重量の1〜3wt%の間、または0.5〜5wt%の間であり得る。
【0055】
抽出ステップは、任意選択で、ステップa)の水熱炭化の後に実施され得る。
【0056】
抽出は、有機溶媒または有機溶媒の混合物を用いて実施され得る。有機溶媒の例は、アルカノール、アルカノン、エステルなどであり得る。好ましくは、低級(C〜C)アルキル鎖が使用される。特定の例は、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ブタノン、ブチルアルコール、四塩化炭素、クロロベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサン、1,2−ジクロロエタン、ジエチルエーテル、ジエチレングリコール、ジグリム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、1,2−ジメトキシ−エタン、ジメチルエーテル、ジメチル−ホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、酢酸エチル、エチレングリコール、グリセリン、ヘプタン、ヘキサン、メチルt−ブチルエーテル、塩化メチレン、N−メチル−2−ピロリジノン、ペンタン、石油エーテル、ピリジン テトラヒドロフラン、トルエン、アセトニトリル、ベンゼンなどである。好ましい有機溶媒はアセトンであり得る。別の好ましい溶媒はエタノールまたはメタノールであり得る。
【0057】
ステップb)において、ステップa)で得られた前駆生成物は、活性化剤と混合され得る。
【0058】
活性化剤は、CO、希釈Oおよび/または不活性ガスを含む群から選択される気体または蒸気であり得る。気体または蒸気はNまたはHOであり得る。
【0059】
気体または蒸気の流速は、5〜75dm/時の間、または10〜60dm/時の間であり得る。一実施形態では、流速は15〜50dm/時の間である。
【0060】
ガスの量は、燃焼を防止するために最小限に保たれ得る。Oの量は好ましくは100ppm未満である。
【0061】
反応器内の温度は好ましくはステップb)において段階的に、例えば1分当たり5〜15℃、または10℃の速度で上昇される。活性化は、550〜850℃の間の温度で実施され得る。一実施形態では、活性化温度は650〜825℃の間である。
【0062】
ステップb)における活性化期間は、製造の規模、使用される反応器のタイプ、およびバイオマス材料のタイプなどの種々のプロセス因子によって決まる。期間は、10時間まで、または1〜9時間の間、または2〜8時間の間であり得る。
【0063】
本発明の方法を用いて調製される磁性活性炭は、250〜1500m/gの間、または500〜1000m/gの間の表面積(SBETまたはS)、0.050〜2.0cm/gの間、または0.250〜1.0cm/gの間の全細孔容積、0.005〜0.5cm/gの間、または0.050〜0.30cm/gの間のミクロ細孔容積、および/または磁性活性炭の重量の1〜20wt%の間、または2〜10wt.%の間の鉄含量などの特異的な特性および/または特性の組み合わせを含むという点で新規かつ独特である。
【0064】
さらに、酸化鉄ナノ粒子の直径は、炭化バイオマス中の細孔サイズよりも大きい。直径は5〜75nmの間、または10〜50nmの間であり得る。
【0065】
ナノ粒子は、好ましくは、結晶化される。好ましくは、50%超、または70%超、または80%超、または90%超、または95%超、または99%超のナノ粒子が結晶化される。別の実施形態では、少なくとも99.9%、または98%、または95%、または90%、または80%、または70%、または50%のナノ粒子が結晶化される。
【0066】
本発明に従う磁性活性炭の特性は、上述の特性および範囲の任意の組み合わせに存在し得る。
【0067】
液体および/または気体からの汚染物質の分離方法
磁性活性炭は、液体および/または気体から粒子を分離するために使用され得る。例えば、磁性活性炭は、水を精製するために使用され得る。粒子は、液体および/または気体から除去されることが必要な任意の要素、物質、分子または原子であり得る。
【0068】
本方法は、以下に概説されるステップを含み得る。
【0069】
ステップ1)では、鉢もしくはパイプであり得る容器内、または磁性活性炭を保持することができ、液体および/または気体を炭素と接触させることができる任意の他のデバイス内に、磁性活性炭が提供される。
【0070】
ステップ2)では、磁性活性炭が液体および/または気体と接触される。磁性活性炭が液体および/または気体と混ざり、液体中に存在する分子、イオンおよび小さい汚染物質などの粒子が吸着される。これにより、液体および/または気体は、このような粒子から精製されるであろう。
【0071】
ステップ3)では、前記容器内またはそれを横切って電磁場が印加される。活性化された磁性炭素は前記容器の内側の小領域に集中し、液体および/または気体から分離される。
【0072】
ステップ4)では、液体および/または気体が容器から除去される。
【0073】
ステップ5)では、電磁場が停止される。
【0074】
任意選択で、ステップ6)において、炭素を含む容器に新しいバッチの液体および/または気体が充填される。
【0075】
ステップ3)〜6)のプロセスは、吸着剤(すなわち、磁性炭素材料)が飽和され、新しい材料と交換することが必要とされるまで数回繰り返すことができる。
【0076】
さらに任意選択で、使用される磁性活性炭は、その後のステップ7)で性能が高められるか、または破壊され得る。
【0077】
気体の分離方法
磁性活性炭は、二酸化炭素、窒素およびメタンのような気体を吸着する。材料は、所与の気体を選択的に取り込むように変更することができる。
【0078】
気体は、全圧を低下させること、いわゆる圧力スイング吸着(PSA)によって、または吸着剤の温度を上昇させること、いわゆる温度スイング吸着(TSA)によって、またはPSAおよびTSAの両方の組み合わせによって、吸着剤から脱着される。磁性活性炭は、好ましくは、TSAプロセスにおいて使用され得る。磁性活性炭内の鉄粒子は、振動電磁場および周囲の炭素構造への熱伝達によって加熱される。活性炭複合体が加熱されると、気体分子は脱着する。全ての気体が放出されると、吸着剤は冷却され、新しい気体の取込みの準備が整う。磁性活性炭は、分解することなく多数サイクル再利用することができる。
【0079】
高周波数振動電磁場を印加して、活性化磁性炭素を加熱することができる。
【実施例】
【0080】
実験セクション
材料
様々なバイオマスおよび/またはバイオ廃棄物を使用した:刈取り草、ビール製造からの有機廃棄物(ビール廃棄物)、馬糞およびバイオスラッジ。バイオマスを約1センチメートルの断片に分割し、オートクレーブ反応器に入れた。水、有機酸および少量のFe2+。温度を180〜230℃まで上昇させ、圧力を10〜20バールに平衡化した。数時間後、HTCバイオマスおよび水のスラリーを大きい容器にポンプで注入し、いくらか高温(25〜80℃の間)で5〜6時間平衡化し、その後冷却し、ろ過した。標準化法を用いて、HTCバイオマスの水分、灰分、および元素分析を実施した。
【0081】
反応器
HTCバイオマスの活性化のためのステンレス鋼の反応器は図1に示される。反応器は、反応器チャンバ7およびヒータ8、熱電対(thermal couple)2および熱交換器4を含む。また、気体出口1、気体入口5、気体分配器6および金属フィルタ3も示される。下方から入る気体が供給されるその鉛直設計によって、HTCバイオマスの粒子とCOとの間の良好な接触が保証される。反応器を鉛直の管状炉内に封入した。COを下方から供給し、HTCバイオマスとの接触の前に炉内の高温まで熱交換した。熱交換は、鋼ナットを充填したステンレス鋼シリンダ内で実施した。この熱交換器をHTCバイオマス床のすぐ下に配置した。HTCバイオマスを約50mlの床容積を有する2つの交差金属メッシュによって拘束した。任意選択で、石英フィルタを使用してもよい。床のすぐ上に配置された熱電対によって温度を測定した。反応器のほとんどの部分は、重力によって定位置に保持された。円錐形状のコネクタにより、反応器は容易に取付けおよび取外し着脱することが可能になる。
【0082】
活性化
各バッチにおいて、COの流れの中で約5gのHTCバイオマスを活性化した。温度を室温から設定温度まで10℃/分の速度で傾斜させた。設定温度において、指定の時間サンプルを活性化した。その後、活性化されたHTCバイオマスを室温まで冷却した。指定の活性化時間が0時間の場合、設定温度に到達したらすぐに加熱を停止した。全ての活性化のための全てのステップの間、反応器床を通してCOを流した。
【0083】
特徴付け
二重共鳴モードで4mmプローブヘッドにおいて151MHzで作動するBruker AVANCE IIIスペクトロメータにおいて、13CNMRスペクトルを記録した。マジック角回転(MAS)は14kHzであった。13CNMRのケミカルシフトのスケールは、アダマンタンサンプルを用いて外部から較正した。45パルスおよび5秒のリサイクリング時間を用いる直接分極13CNMRにより、スペクトルの部分飽和を回避した。通常、8〜16kスキャンを総計した。スペクトル線の幅と比較して少量の指数フィルタリングを使用した。スペクトルをTopspinソフトウェアにおいて処理した。窒素吸着等温線は、Micromeritics ASAP2020デバイスを用いて77Kで測定した。吸着実験を実行する前に、300℃の温度で5時間、動的真空(dynamic vacuum)の条件下でサンプルを脱気した。Brunauer−Emmet−Teller(BET)およびLangmuir等温線のための標準式を用いて比表面積(SBETおよびS)を計算した。BETおよびLangmuirのいずれの分析の場合も、p/p0=0.06〜0.29の相対圧力における窒素の取込みを使用した。p/p=0.99における取込みから全細孔容積(V)を推定した。t−プロット法を用いて、ミクロ細孔容積Vmicおよび外部表面積Sextを推定した(ミクロ細孔は2nmよりも小さく、メソ細孔は2nm〜50nmの範囲である)。ミクロ細孔比表面積Smicは、SBETまたはSと、Sextとの間の差として近似した。サンプル中の細孔サイズの分布は、Micromeriticsルーチンを用いる本来の密度汎関数理論(DFT)によって決定した。
【0084】
原子吸光分光分析法は、長い矩形の10cmバーナーを有するPHILIPS PU 9100原子吸光分光光度計において実施した。使用した光源は、10mAの動作電流で作動する37mmのFe中空陰極ランプであった。炭素サンプルを600℃の炉内で燃焼させて灰分を得た後、FeイオンをHClおよびHNO混合酸中に溶解させた。希釈後、溶液を空気/アセチレン炎内に噴霧した。空気/アセチレンの流速を、それぞれ5および1.3l/分で一定に固定した。種々のサンプルについて248.3nmにおける吸光度を記録し、Feの濃度を計算した。
【0085】
XPSスペクトルは、Kratos AXIS UltraDLDx線光電子分光計(Kratos Analytical,Manchester,UK)を用いて記録した。単色Alx線源を用いてサンプルを分析した。分析領域は、約1mm未満であった(シグナルの大部分は700×300μmの領域からである)。
【0086】
X線回折(XRD)を用いて、サンプル内に包埋されたナノサイズの結晶を同定した。反射モードにおいて2θ=20.0〜70.0°の間で、X’Celerator検出器を有するX’PERT−PRO PANalyical粉末回折計(CuKa1放射、k=1.5418Å)を用いて、磁性活性化HTCバイオマスのXRDパターンを収集した。
【0087】
200kVで作動するJEOL TEM(JEM−2100)においてTEMを実施した。2°の傾斜ステップで126°の範囲にわたって、傾斜した一連のTEM画像を記録した(全部で63枚の画像)。傾斜した一連の画像を前処理するためにImageJを使用し、トモグラフィー再構成のためにTomoJを使用した。試料を無水エタノール中に分散させ、10分間の超音波処理によって処理した。一滴の懸濁液を銅格子に移した。トモグラフィー再構成における画像の位置合わせを容易にするために、続いて、十分に分散された10nmの大きさのAuナノ粒子を含有する一滴の懸濁液を銅格子に適用した。Auマーカーに従って画像を位置合わせした。0.1の緩和係数によりTomoJにおいてARTアルゴリズムを15回反復して実行した。
【0088】
それぞれ2.0および1.0kVの加速電圧でJEOL JSM−7000FおよびJEOL JSM−7401F走査型電子顕微鏡を用いて、SEM顕微鏡写真を記録した。サンプルをOxford Aluminiumスタブ(stub)上に薄く広げ、乾燥コロイド炭素を被覆した。
【0089】
Quantum Design PPMS機器を用いて材料の磁気ヒステリシスループを測定した。数ミリグラムの粉末をポリプロピレンカップに緩く詰め、−20kOeから+20kOeまで様々の磁場において300Kで測定した。結果は、図6に示される。
【0090】
結果および考察
活性化HTCバイオマスの特徴付け
活性炭の特性は、HTCバイオマスの化学的性質および適用されるプロセス条件の両方によって決まる。活性化HTC刈取り草およびHTC馬糞は、商業的な起源を有する活性炭と類似の比表面積を有した(表1を参照)。HTCビール廃棄物およびHTCバイオスラッジからの活性炭は、他よりも比表面積が小さかった。活性化HTCバイオスラッジの表面積がより大きく低下されるのは、その大量の不活性灰分のためであろう。収率は、HTC馬糞およびHTCバイオスラッジの場合よりもHTCビール廃棄物およびHTC刈取り草から活性炭への活性化の方が高かった。より高い収率は、より高い炭化度と相関する。表1は、固定したプロセス条件で活性化された活性炭のデータを示す。
【0091】
Langmuirモデルは、ミクロ多孔質炭素ウェルにおいて記録された吸着データを説明し、BETモデルは、メソ多孔質炭素ウェルにおいて記録された吸着データを説明した。後者では、多層吸着を行うことができる。図2は、N吸着等温線a)馬糞、b)刈取り草、c)ビール廃棄物およびd)バイオスラッジ、e)市販の活性炭と、f)市販の活性炭、および4つの水熱炭化(HTC)バイオマス馬糞(■)、刈取り草(▲)、ビール廃棄物(●)、バイオスラッジ(▼)、市販の活性炭(◆)から調製された活性炭の細孔サイズ分布とを示す。
【0092】
活性化HTC刈取り草およびHTCビール廃棄物におけるNの取込みの等温線により、少量のより大きい細孔と組み合わせられたミクロ多孔質材料の特徴が明らかにされる。IUPACの分類に従うI型の挙動は低い相対圧力において見ることができ、小さいヒステリシスループはメソ多孔質を示す。活性化HTC馬糞、HTCバイオスラッジおよび市販の活性炭の場合、N等温線は吸着および脱着の大きいヒステリシスループを示し、これは、毛管凝縮およびメソ多孔質に典型的である。図2fは、DFTを用いて吸着枝から推定される細孔サイズの関連の分布を示す。細孔のDFTモデルにおいてスリットモデルを用いた(図4aのTEM画像を参照)。HTC馬糞からの活性炭内のメソ細孔は、約14nmの平均スリットサイズを有する幅広の分布を示す。ミクロ多孔質は、0.7および1.3nmがピークのスリットの明白な2峰性分布を示す。
【0093】
図3は、a)バイオマス内の根本的な形状がHTCおよびCO中の活性化の両方を切り抜けたHTC馬糞からの活性炭を示し、b)HTC馬糞からの活性炭はメソ細孔を示し、c)活性化HTCビール廃棄物は炭素球を示し、d)活性化HTCバイオスラッジはメソ細孔を示す。図3aのSEM顕微鏡写真は、水熱炭化、そしてそれに続く高温のCOの流れの中での活性化の後、HTC馬糞の外形がほとんど保持されることを視覚化する。保根本的な物体(セルなど)の保存形状は、バイオマスの適切な選択によって複雑な形態の活性炭が製造されることを可能にし得る。このような保存形状は、推測で、活性炭の合成後の構造化を使用する必要性を回避し得る。HTC馬糞からの活性炭の図3bのSEM顕微鏡写真では、相当量のメソ細孔(約15nm)が見られた。この平均サイズは、図2bの分布に比べてN吸着データの分析によって確立されるスケールと一致する。HTC刈取り草からの活性炭の表面は、多数のメソ細孔を示さなかった(図S11b)。付加的なSEM顕微鏡写真は、補足情報(図S9〜S11)に示される。図S11aのSEM顕微鏡写真では、粒子内の揮発性化合物が活性化の間に追い出され、粒子の表面に気泡が生成されたと思われる。大きい気泡は破壊され、明らかにメソ細孔を示した。
【0094】
図4は、HTCバイオマスからの活性炭の透過電子顕微鏡(TEM)画像を示す。図4aでは、サイズが約1nmのスリット形状の細孔がランダムにHTC刈取り草の活性炭内に広がる。図4bは水熱炭化(HTC)馬糞から調製された活性炭内の8面体形状のナノ粒子を示す。活性炭を有するナノ粒子の分布をさらに画像形成するために、再構築断層写真によるスライシングによって試料の3次元構造を再構築できるようにする電子断層撮影法を実行した。8面体形状の酸化鉄粒子が活性炭内に包埋された。断層写真のスライスから、種々のサイズの細孔が明白に見られ、これらは磁性活性炭の全体にランダムに分布される。
【0095】
活性炭および酸化鉄ナノ粒子の複合体粒子の磁性
鉄粒子の原子格子を粉末X線回折(XRD)によって決定した。図5は、17dm/時の流速および2時間の活性化時間でCOにより800℃において、水熱炭化(HTC)馬糞から調製された活性炭における結晶化酸化鉄(Fe)のXRDパターンを示す。酸化鉄ナノ粒子のサイズは約20〜40nmであり、これは、酸化鉄ナノ粒子が活性化済の炭素内に沈殿された場合に予想され得るサイズよりも有意に大きい。統合された大きい酸化鉄ナノ粒子は、磁性分離のために重要である。酸化鉄ナノ粒子が細孔寸法よりも大きい理由は、水熱炭化プロセスにおける鉄の触媒性質と、HTCバイオマスの活性化の前に鉄がHTCバイオマス内に含有されたという事実とに関する。鉄が捕捉されたバイオマスの触媒駆動される水熱炭化の後に、CO中での活性化が行われるこのデュアルプロセスは、酸化鉄の大きいナノ粒子が活性炭内に統合されることを可能にする。これらの大きいナノ粒子は、活性炭の多孔質構造内での酸化鉄の小さいナノ粒子の沈殿を用いる従来の技術と比べて分解する傾向がある。
【0096】
粒子内に包埋されたFeナノ粒子は、断層撮影法から分かるように、活性化複合体炭素を磁性にした。図6は、17dm/時の流速および2時間の活性化時間でCOにより800℃において、水熱炭化(HTC)馬糞から調製された磁性活性化複合体炭素の磁化曲線を示す。差込み図は、ヒステリシスの低磁場領域を示す。曲線は、包埋された酸化鉄粒子が超常磁性およびフェリ磁性の両方の特徴を表すことを示す。超常磁性特性は10〜30nm未満のより小さい酸化鉄粒子(いわゆる超常磁性限界の約30nmよりも小さい)に由来し(参考文献:Cornell and Schw.p166)、フェリ磁気特性はより大きい酸化鉄粒子(>30nm)に由来する。Fe相の計算重量に関する飽和磁化は高く(90emu/g、300K)、バルクFeについて報告された値(93emu/g、290K)に近い(Ref 79)。図7において分かるように、活性化複合体炭素の磁性粉末は、小さい磁石を用いることによって分散体から容易に分離された。磁場が除去されると、活性化複合体粒子の大部分は、その(超)常磁性のためにその磁性を失うが、複合体内のいくつかの粒子は、その大きいサイズのためにその磁化を保持する。複合体の飽和保磁力(coercitivity)は、300KにおいてH=40Oeであった。活性炭の高い飽和磁化および高い比表面積および小さい細孔の組み合わせは、水および他の液体からの分子の分離に関する用途の新しい可能性を可能にするであろう。また、気体混合物中の気体成分の分離は、酸化鉄のナノ粒子と電磁放射との相互作用による非常に急速な温度上昇の可能性によって容易にされ得る。包埋されたナノ結晶は、脱着するときに、ラジオ周波数を印加することによって熱およびエネルギー吸収を強化し得る。
【0097】
HTCバイオマスの研究
活性化の前にHTCバイオマスの分子構造を調査するために、固相13CNMRスペクトルを記録した。HTC刈取り草の直接分極固相13CNMRスペクトルは図8aに示される。HTC刈取り草の色は黒色であり、原子組成およびその13CNMRスペクトルは、その化学組成および構造が褐炭と同様であることを示した。約170ppmの13CNMRケミカルシフトは酸基の存在を示し、約210ppmはケトンであり、約100および約150ppmは、酸素の有無にかかわらずsp2混成炭素であり、約130ppmは芳香族基であり、そして約30ppmはsp3混成脂肪族炭素であった。
【0098】
HTC馬糞の固相13CNMRスペクトル(図8b)において、65、72、75、84、89および105ppmのピークは、未反応セルロースに帰属された。図8bのHTC馬糞からの固相13CNMRスペクトルは、この固体が褐炭よりも泥炭との類似性を有することを示した。これらの類似性は、固体の茶色および元素組成と一致した。これらのあまり凝縮されていない固体には、酸およびケトン基が欠けていた。代わりに、その特徴的な約60〜80ppmのケミカルシフトによって、O−CHx型の残基の兆候があった。sp2混成炭素の割合はHTC刈取り草の場合よりも小さく、これらの茶色の固体の炭化度が低いことが示された。HTC馬糞中の大量のO−CHx基は、同等に低い収率、およびその活性化の前のより大量のメソ細孔を説明し得る(表1を参照)。HTCビール廃棄物およびバイオスラッジの固相13CNMRスペクトルは、図S1および図S2に示される。図S1の175ppmおよび210ppmのシグナルは酸基およびケトン基を示し、図S2の60〜80ppmの独特なシグナルはO−CHx部分を示す。アセトン中での抽出(Soxlet)後のHTC馬糞において記録されたスペクトルは図S3に示される。抽出された固体のスペクトルは、その脂肪族領域に有意なシグナルを有さなかったが、他の点では図8bの非抽出HTC馬糞のスペクトルと非常に類似していた。抽出された画分は、恐らく脂質またはその分解生成物に関連する相当量のメチレン基を有する化合物を含有していた。抽出の度合いは、ペンタン中よりもアセトン中の方が高かった。液体画分は、いくらかの極性基も含有し得る。
【0099】
4つのHTCバイオマスサンプルに対してXPSを実施した。XPS法は、表面の最外部2〜10nmについての定量的な化学情報を提供する。元素組成および炭素の種々の化学状態の両方を分析した。表4は元素組成を示し、表2は炭素の種々の化学状態を示す。表面のCおよびO組成はいずれも、各サンプルの平均CおよびO値とは異なる。HTC馬糞は、対応する平均値のCおよびOと比較して、表面においてより多くのC組成およびより少ないOを有する。4つのサンプルのそれぞれについて、表面のO/C原子比は平均値とは異なる。HTC馬糞およびバイオスラッジは表面において平均数よりも低いO/C原子比を有し、これらが水熱炭化中に表面においてより良く炭化されることを意味する。HTCビール廃棄物は反対の傾向を有するが、同様に、他の部分と比較して表面において十分に炭化されないことを意味する。表2において、炭素の種々の化学状態が決定される。炭素は、異なる官能基に従って4つのタイプに分類される:酸化されていない炭素(C1−炭素:C−C、C−H、C=C基、炭化水素鎖/芳香族基においてみられるものなど)、酸素への1つの結合(C2−炭素:C−O、C−O−C官能基)、より酸化された炭素のC3−炭素およびC4−炭素(例えば、エステルおよびカルボン酸官能基)。4つのサンプルについて、全炭素の多く(60〜73%)は酸化されていない炭素(C1−炭素)として存在し、HTC馬糞はC1の最高値を有する。
【0100】
本発明に従う磁性活性炭は、気体および流体の分離および/または精製における使用に適している。その他の使用は、水の分離および/または精製、医療用途、水槽ポンプ、産業用水の処理、カフェイン除去プロセス、下水処理、化学物質漏出の浄化、脱色、脱臭、触媒用の担体、窒素の精製、酸素の精製、バイオガスの性能向上、天然ガスの性能向上、燃料電池、スーパーキャパシタなどのためであり得る。
【0101】
HTCバイオマスの元素組成、水分、および灰分含量は表3に示される。HTCバイオスラッジは、製紙工場からのバイオスラッジの不均一な性質および使用される関連化学物質のために、他のHTCバイオマスよりもはるかに多い灰分を有した。HTCバイオマスの水分含量は約4〜7wt.%であった。このレベルは、極性官能性に関連していくらか親水性であるHTCバイオマスの性質と一致する。
【0102】
水熱炭化プロセスにおいてFe2+イオンを金属塩の形態で添加した。原子吸光分光分析法によって決定される、活性化の前後の炭素のFe含量はいずれも表5に示される。Feは活性化プロセスの間に濃縮される。XPSからのFe含量(表4)と、原子吸光分光分析法からのFe含量(表5)とを比較するのは興味深いことである。Feの濃度は、原子吸光分光分析法よりもXPSデータにおいてはるかに高い。XPSはサンプルの表面の元素を検出するが、原子吸光分光分析法は、サンプル中の平均元素含量を決定する。活性化の前、HTCバイオマス中のFeは、大部分が粒子の表面に位置するようである。水熱炭化プロセスは、Feを炭素粒子内に取り込むことができなかった。
【0103】
要因計画による研究
HTCバイオマスの活性化を最適化するために、図1に示される鉛直反応器において、温度、COの流速および活性化の時間を変更した。これらのパラメータは、COの流れの中での種々の原材料の定型的な活性化にとって重要であると思われる。活性炭は全て、活性化の温度の上昇と共に表面積の増大を示した。収率は、全てのHTCバイオマスについて、温度の上昇と共に予想通りに低下した。HTC刈取り草およびHTCビール廃棄物は、これらのより低いO/C比と一致して、他のものより高い収率で活性化された。この高収率は、13CNMRスペクトルから推定されるような高度の凝縮とよく相関した。HTCバイオマス中の少量の酸素原子は脱酸素化(脱カルボニルおよび脱炭酸反応)が限られており、従って高収率をもたらすと思われた。各サンプルについて収率、比表面積および細孔容積を分析し、表7に示す。
【0104】
種々のHTCバイオマスから調製された活性炭においてNの多数の吸着および脱着等温線を記録した。これらの等温線および細孔分布の推定は、補足図S4〜7に示される。これらのデータから、600℃において活性化されるHTCバイオマスが細孔の単峰性分布を有したことは明らかである。800℃での非常に急速な処理によって、高レベルのメソ多孔質およびミクロ多孔質がHTCバイオスラッジからの活性炭中で発達した。補足情報の図S6のN吸着等温線を参照。HTC馬糞からの活性炭中のメソ多孔質の程度は、それとは異なって発達した。2時間処理されたサンプルは、それ以外は同一の活性化条件で1時間処理されたものよりも多くのメソ細孔を有した。図S7の捕捉のN吸着等温線を参照。温度の影響は上記で直接的に記載されたが、活性化をさらに分析するために全要因計画を適用した。このような計画を用いて、HTCバイオマスの活性化における流速、活性化時間およびO/C比の効果を評価した。HTCビール廃棄物およびHTC馬糞からの結果を比較することによってO/C比を変更した。800℃の設定温度での活性化のために17および48dm/時の流量、0または2時間の活性化時間を使用した。重量損失、比表面積(BET)、ミクロ細孔面積、ミクロ細孔容積、および全細孔容積に対する効果を要因分析によって評価した。詳細な要因分析およびその依存性は補足情報に示される(表6および図S8を参照)。
【0105】
ミクロ細孔面積および容積は、O/C比にマイナスに依存し、十分に炭化されたHTCビール廃棄物からの活性炭は、主にこのようなミクロ細孔を示した。一方、全細孔容積は、高いO/C比または長期間の活性化によりプラスの影響を受けた。これらの依存性は、細孔が活性化中に成長することと、高O/C比を有するHTC馬糞の活性化の場合に急速な成長が生じることとに一致する。比表面積(BET)および細孔容積は、流速にマイナスに依存する。これらの低減は、活性炭がより急速なCOの流量下で消費し始めたことを示し、これはさらに、これらの活性化の低収率によって支持された。
【0106】
要因分析により、相互作用効果の評価が可能になった。高O/C比および短い活性化時間の組み合わせ、または低O/C比および長い活性化時間の組み合わせによりミクロ細孔が促進された。これらの相乗効果は、活性化中の反応が高O/C比のほうが低O/C比よりも速いことを示した。また、活性化中のCOの流速と、活性化時間との間に有意な負の相互作用が観察された。
【0107】
流速および時間は一緒に比表面積(BET)および全細孔容積に影響した。急速な流量および短い活性化時間の組み合わせ、または遅い流量および長い活性化時間の組み合わせはいずれも有益であった。この相乗効果は、必要とされるCOの容積の最適値を示した。単位(フロー時間)=dm。比表面積および全細孔容積についても同様に、有意な負の3本線の相互作用を観察した。長い活性化時間は、予想通り、短い場合よりも大きい重量損失を与えた。
【0108】
異なるタイプのHTCバイオマスを一緒に合成し、COの流れの中で磁性活性炭に活性化した。酸化鉄の磁性ナノ粒子の前駆体を水熱炭化に導入し、これは、ナノ粒子よりも寸法が小さい細孔構造を有する活性炭内で大きいナノ粒子が発達することを可能にする。バイオマスから活性炭へのこの2段階の活性化は、有意な磁気特性が活性炭に導入されることを可能にする。これらの特性によって、これらは水処理プロセスおよび特定の気体分離プロセスに高度に関連される。ナノ粒子は外部磁場および電磁放射に強く反応する。活性炭のテクスチャ特性は、バイオマスのタイプおよび活性化に使用されるプロセスパラメータに依存する。活性化HTC馬糞は、特定の条件下で活性化されると、相当量のメソ細孔を示した。活性化HTC刈取り草および活性化HTCビール廃棄物はミクロ多孔質であった。この細孔サイズの違いは、根本的なHTCバイオマスにおける凝縮度によって合理的に解釈された。HTC刈取り草およびHTCビール廃棄物は高度に凝縮され、その分子構造は褐炭に類似していたが、HTC馬糞はいくらか低く凝縮され、その分子構造は泥炭に類似していた。可能な場合には、活性化のプロセスパラメータだけでなく、バイオ廃棄物の水熱炭化の程度によって、ミクロ多孔質およびメソ多孔質の度合いを調製することができると思われる。これらの活性炭は、潜在的に、従来の前駆体から製造されたものを置換することができる。活性化HTCバイオマス中の固形物の全体の形状は、HTCおよびCO中の活性化の後、大部分は保存された。念頭の用途に関連した適切なバイオ廃棄物を選択することによって、形状の保存は、活性炭の粒子の調節に通じる。
【0109】
図S9の根本的な形状は、バイオマスが水熱処理によってほとんど影響を受けないままであることを示す。図S10において、(a)と(b)、そして(c)と(d)を比較すると、活性化によって形状はほとんど影響を受けないままであるが、形状のサイズは縮小することが示される。図S11には、表面を通して現れる「気泡」が表面の下に存在するように見えることが示される。表面にメソ細孔はあまり存在しないように見える。
【0110】
定義
本明細書で使用される場合の「含む/含んでいる」という用語は、記述される特徴、整数、ステップまたは構成要素の存在を指定すると解釈される。しかしながら、この用語は、1つまたは複数の付加的な特徴、整数、ステップもしくは構成要素またはこれらの群の存在または付加を除外しない。
【0111】
値は、末端値を含むその間の範囲として定義される。従って、「15〜50の間」という用語は、15から50までのこれらの値を含む任意の値、例えば、15.5、20.456および50などを含む。
【0112】
本明細書で使用される場合の「自発圧力」という用語は、閉鎖した系において温度上昇の間に増大される圧力を指定すると解釈される。
【0113】
本明細書で使用される場合の「メソ細孔」という用語は、細孔サイズが2nm〜50nmの間であることを指定すると解釈される。
【0114】
本明細書で使用される場合の「室温」という用語は、15〜30℃の間の温度を指定すると解釈される。
【0115】
本明細書で使用される場合の「バイオスラッジ」という用語は、紙パルプ工場のための水施設における廃水の懸濁液からの沈降物を指定すると解釈される。
【0116】
本明細書で使用される場合の「炭水化物」という用語は、炭素、水素、および酸素だけからなる有機化合物を指定すると解釈される。
【0117】
本明細書で使用される場合の「アルキル」、「アルカノール」「アルカノン」および「アルキルエステル」という用語は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エーテル基、ハロ基、ニトリル基、ホルムアミド基、スルホキシド基および/またはアミン基などの官能基を含み得る、C〜CまたはC〜C直鎖状または分枝状アルキル鎖を指定すると解釈される。
【0118】
本明細書で使用される場合の「粒子」という用語は、容積または質量などのいくつかの物理的または化学的な特性が属するとみなされる任意の小さい局所的な物体を指定すると解釈される。
【0119】
本明細書で使用される場合の「容器」という用語は、固体、液体または気体を含有、貯蔵、および輸送するために使用される任意の品目を指定すると解釈される。例としては、パイプまたは鉢であり得る。
【0120】
本明細書で使用される場合の超常磁性という用語は、約30nmよりも小さいFe(酸化鉄(II、III))ナノ粒子においてみられる磁性の形態を指定すると解釈される。これらは磁場の存在下で強力に磁化されるが、磁場が存在しないとその平均磁化は0になると思われる。
【0121】
本明細書で使用される場合のフェリ磁性という用語は、その主要成分として酸化鉄(II、III)を有する化合物において見出すことができる磁性の形態を指定すると解釈される。
【0122】
本明細書で使用される場合の飽和保磁力という用語は、磁化をゼロに低減するために必要とされる印加磁場の強度を指定すると解釈される。
【0123】
参考文献
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【0124】
本発明は開示される実施形態に限定されず、以下の特許請求の範囲の範囲内で変更および修正され得る。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図S1
図S2
図S3
図S4
図S5
図S6
図S7
図S8
図S9
図S10
図S11
図S12
図S13
図S14