特許第6285455号(P6285455)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6285455混合気液供給原料を使用する改善された膜分離方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6285455
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】混合気液供給原料を使用する改善された膜分離方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/36 20060101AFI20180215BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20180215BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20180215BHJP
   B01D 71/48 20060101ALI20180215BHJP
   B01D 71/64 20060101ALI20180215BHJP
   B01D 71/54 20060101ALI20180215BHJP
   B01D 71/52 20060101ALI20180215BHJP
   B01D 71/46 20060101ALI20180215BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20180215BHJP
   B01D 69/04 20060101ALI20180215BHJP
   C10L 1/06 20060101ALI20180215BHJP
   C10L 1/02 20060101ALI20180215BHJP
   C10G 31/11 20060101ALI20180215BHJP
   C10G 53/02 20060101ALI20180215BHJP
   C10G 31/10 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   B01D61/36
   B01D69/10
   B01D69/12
   B01D71/48
   B01D71/64
   B01D71/54
   B01D71/52
   B01D71/46
   B01D71/02
   B01D69/04
   C10L1/06
   C10L1/02
   C10G31/11
   C10G53/02
   C10G31/10
【請求項の数】13
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-542721(P2015-542721)
(86)(22)【出願日】2013年11月12日
(65)【公表番号】特表2015-536238(P2015-536238A)
(43)【公表日】2015年12月21日
(86)【国際出願番号】US2013069565
(87)【国際公開番号】WO2014078267
(87)【国際公開日】20140522
【審査請求日】2016年10月28日
(31)【優先権主張番号】61/727,329
(32)【優先日】2012年11月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023630
【氏名又は名称】エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100156085
【弁理士】
【氏名又は名称】新免 勝利
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】ランドール・ディ・パートリッジ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ピー・ルッケージ
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・ピー・ウォルチャック
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・ティ・フェルゲッリ
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・エル・ケロッグ
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・バーグマン
(72)【発明者】
【氏名】ケネス・ジョセフ・ドゥルーリー
【審査官】 片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−534738(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0270958(US,A1)
【文献】 国際公開第2008/039762(WO,A1)
【文献】 特表2010−514543(JP,A)
【文献】 特開2005−321188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22、61/00−71/82
B04C 1/00−11/00
C10G 1/00−99/00
C10L 1/00−32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高オクタン価成分である芳香族炭化水素およびオキシジェネートと、脂肪族炭化水素とを含み、少なくとも50℃の沸点を有するガソリン供給原料ストリームから前記高オクタン価成分を分離するためのパーベーパレーション膜の寿命を延長する方法であって:
前記ガソリン供給原料ストリームを加熱して部分的に気化させて、前記ガソリン供給原料ストリームから飽和蒸気および液体を生成すること;
サイクロンによって、前記飽和蒸気を前記液体から分離すること;
前記高オクタン価成分を選択的に透過させて分離するために好適なパーベーパレーション膜に前記飽和蒸気を向かわせ、前記飽和蒸気の圧力をP、温度をTとし、それから前記パーベーパレーション膜の透過物を第1の保持手段中に収集すること;
前記液体および前記パーベーパレーション膜からの残留物を第2の保持手段に向かわせること
を含む方法。
【請求項2】
前記パーベーパレーション膜による分離が断熱運転で行われる、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記パーベーパレーション膜による分離において、前記飽和蒸気の凝縮によって前記パーベーパレーション膜にを付与する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記供給原料ストリームが、メタノール、エタノール、プロパノール、およびブタノールを含むオキシジェネートを含有するガソリンである、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記膜が、ポリエステルイミドコポリマー膜、ポリウレタンイミド膜、ポリイミド脂肪族ポリエステルコポリマー膜、ジエポキシオクタン架橋/エステル化ポリイミド/ポリアジアペートコポリマー膜、架橋ポリエーテルアミン−エポキシ膜、脂肪族置換エポキシド及びMnが230〜4000のポリエーテルアミンを含む架橋ポリエーテルエポキシポリマー、又はそれらの組み合わせである、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記パーベーパレーション膜は、ポリマーまたはコポリマー膜が多孔質基材によって支持される、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記基材が多孔質のセラミックである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記基材が多孔質セラミックモノリスを含み、前記膜が、架橋ポリイミド−ポリアジペートポリマーであり、前記セラミックの少なくとも一部を被覆する、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記基材が多孔質セラミックモノリスを含み、前記膜が、Mnが400のポリ(プロピレングリコール)ビス(2−アミノプロピルエーテル)と1,2,7,8ジエポキシ−n−オクタンを含む架橋ポリエーテルエポキシポリマーであり、前記セラミックの少なくとも一部を被覆する、請求項6〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
高オクタン価成分である芳香族炭化水素およびオキシジェネートと、脂肪族炭化水素とを含み、少なくとも50℃の沸点を有するガソリン供給原料ストリームから前記高オクタン価成分を分離する装置であって、前記装置が、
飽和蒸気供給原料ストリームおよび液体供給原料ストリームを生成するために前記供給原料ストリームを加熱する手段;
前記液体供給原料ストリームを前記飽和蒸気供給原料ストリームから分離するサイクロン;
前記高オクタン価成分を前記飽和蒸気供給原料ストリームから選択的に透過するパーベーパレーション膜;
前記パーベーパレーション膜の透過物を収集する手段;
前記パーベーパレーション膜の残留物及び前記サイクロンからの前記液体供給原料ストリームを収集する手段、
を含む装置。
【請求項11】
圧力制御手段をさらに含み、前記膜上に液体層を凝縮させるために、前記パーベーパレーション膜への供給圧力Pおよび供給温度Tが選択的に制御される、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記供給原料ストリームが、メタノール、エタノール、プロパノール、およびブタノールを含むオキシジェネートを含有するガソリンである、請求項10〜11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれかに記載の方法における、請求項10〜12のいずれかに記載の装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーベーパレーション膜を使用してガソリン供給原料ストリームを分離するための改善された寿命の膜系を対象とする。このような系は、たとえば米国特許第7,803,275号明細書に記載されるような複数の燃料供給原料のための「オンボード」分離系における用途に対して可能性を有する。
【背景技術】
【0002】
パーベーパレーション(又はパーベーパレイション:pervaporation)は周知の膜プロセスである。パーベーパレーションは、ストリームからの芳香族の低エネルギー消費分離用であると以前から見なされ続けている。多成分液体供給原料は、透過物(又は透過液:permeate)が蒸気として除去され、残留物(又は残留液:retentate)が通常は依然として液体である、選択的溶液−拡散機構に基づいて分離することができる。
【0003】
ガソリンは、脂肪族および芳香族の炭化水素と、多くの場合エタノールなどのオキシジェネートとを有する複雑な混合物であり、幅広い沸点範囲を有する。芳香族、およびエタノールなどのオキシジェネートは、パーベーパレーションによってガソリン供給原料から分離して、オクタン価のより高い燃料を得ることができる。しかし、市販のガソリンの幅広い沸点範囲、変動する組成、および揮発性のため、単純なパーベーパレーション膜系を用いた分離は困難で比効率的となる。十分な膜流束および選択性の維持は困難である。通常、従来のガソリンは、添加剤およびその他の高沸点成分を含有し、これらは従来の内燃機関における使用に好都合となり得るが、膜性能の持続に対しては悪影響が生じうる。
【0004】
他の分離系では、これらの問題に対処するために予備分留、多段膜処理、および/または後分留を伴う再循環などの複合系が使用されているが、効率的または商業的に費用対効果の高い膜系には一般に望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明によって、たとえば従来の添加剤を有するガソリンなどの広沸点範囲の供給原料を分離する場合に、パーベーパレーションプロセスの大幅な簡略化が可能である。これらの簡略化によって、コストおよび系の複雑さを減少させることができ、一方パーベーパレーション膜の寿命を増加できることで、この用途の商業化が可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ガソリンの分離、またはたとえばナフサなどの類似の広沸点範囲の炭化水素供給原料に使用されるパーベーパレーション膜の寿命および効率を増加させるための方法および装置に関する。ガソリン供給原料は、指定のおよび圧力において部分的に気化され、次に、フラッシュドラムセパレーター、サイクロンセパレーター、またはその他の好適な手段によって、飽和蒸気留分およびより高沸点の液体留分に分離する。飽和蒸気留分を膜と接触させながら、汚れの可能性のある成分を含有する液体留分は迂回させることによって、一次パーベーパレーション膜との接触を回避し、それによって分離系の寿命が延長される。
【0007】
本発明の一実施形態では、サイクロンセパレーターを使用することで、燃料が蒸気および液体の成分に実質的に分離され、飽和ガソリン蒸気はモノリス膜構造の複数の選択されたチャネルに送られ、一方、残存する液体留分は一次パーベーパレーション膜を効果的に迂回する。迂回した液体留分は、パーベーパレーション膜を通過した飽和蒸気留分の処理で得られた残留物(又は残留液:retentate)と混合される。
【0008】
オンボードガソリン分離系として使用される場合、一次パーベーパレーション膜の周囲ではHiRON燃料が生成され、一方、バイパスおよび残留物(又は残留液:retentate)は一次膜を形成し、LoRON燃料が生成される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の簡単な一実施形態を概略的に示している。
図2】混合気液供給原料が使用され改善された寿命の膜分離に使用される分離装置の概略図を示している。
図3】改善された寿命の膜分離系のための一体化されたサイクロン分離装置の概略断面図を示している。
図3B】膜支持体およびバイパスチャネルの内部構成を示している。
図4】従来の膜系の流束減少のグラフを示している。
図5】従来の膜系と対比された改善された膜寿命の系の性能を示している。
図6】一体化されたサイクロンを有する水平モノリスを有する完全に一体化されたサイクロンセパレーターの性能を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ガソリン、または石油ナフサなどの類似の広沸点混合物からの芳香族の分離は、混合相気液供給原料を使用するパーベーパレーション膜プロセスにおける液体および飽和蒸気の分離によって改善することができる。より高い芳香族の透過物(又は透過液:permeate)収率の維持が、ほぼ断熱運転で可能となりうる。より長く持続する膜流束および簡略化された系構成が本発明により可能となりうる。
【0011】
ガソリンなどの従来の燃料の部分的気化によって、供給原料の液体留分中二より高沸点の成分が濃縮する。それらのより高沸点の成分は、パーベーパレーション膜の持続した流束に対する悪影響が示されている供給原料添加剤および他の成分を含有することがある。本発明において、飽和蒸気を液体から実質的に分離することができるサイクロンなどの分離手段を含む分離段階。飽和蒸気は、第1のパーベーパレーション膜系に送ることができ、液体は、有害な内容物に対応するための第2の系に送ることができ、それによって、供給原料全体を処理する場合と比較して、一次パーベーパレーション膜系の持続した流束および性能が改善される。
【0012】
さらに、パーベーパレーション膜分離プロセスの断熱運転は、混合相気液供給原料を膜に使用することによって改善できる。気相の凝縮が続くことで、膜に熱を付与することができ、それによって、吸熱性のパーベーパレーションプロセスで生じる膜の温度変化を最小限にすることができる。混合相供給原料を使用するほぼ断熱の運転で、大幅な透過液収率の増加が実現可能となりうる。その結果、必要な膜領域を減少させることができる。混合相気/液供給原料によって、プロセススキームの大幅な簡略化が可能となり、すなわち、供給原料中のより低沸点の成分の予備蒸留を回避することができ、それとともに関連するポンプおよび制御を回避することができる。パーベーパレーション温度を維持するための中間および/または内部熱交換器の使用の減少または撤廃が可能となる。
【0013】
本発明の改善された寿命の膜系は、HiRONおよびLoRON燃料の製造に使用することができ、ここでHiRONまたは高オクタン価は、リサーチオクタン価が約97を超える、たとえば約100を超える燃料として定義され、LoRONまたは低オクタン価はリサーチオクタン価が約95未満であることを意味する。これは、従来のガソリンを低オクタン価および高オクタン価燃料に分離して、エンジン燃料供給原料をエンジン運転要求に調整し、それによって燃料経済性、エンジン排気、およびエンジン性能を実質的に向上させるために使用される「オンボード」系として使用することができる。
【0014】
図1を参照すると、本発明の改善された寿命の膜分離系の非常に簡略化された概略図を示している。供給原料リザーバー(1)は、たとえば従来のガソリンまたはナフサなどの膜分離が意図された広沸点範囲材料を含有することができる。ガソリンまたはナフサとの関連における用語「広沸点範囲」は、ASTM方法D86−05によって測定される初留点から終点までの沸点範囲が約50℃を超え、たとえば約150℃を超えることを意味する。約30℃〜約200℃のガソリン沸点範囲が、典型的にはこの方法に基づくことができる。芳香族成分は約80℃を超える沸点の留分中に見ることができる。供給原料材料を部分的に気相まで制御可能に加熱するためにヒーター手段(2)を使用することができ、それによって分離手段(4)への入口で供給原料(3)は飽和蒸気および液体となりうる。任意選択でポンプ手段(図示せず)を使用して、ヒーター(2)への供給原料を加圧して、供給原料(3)の温度および圧力を制御することによって、セパレーター供給原料(3)の液体および気相の量の組み合わせでの維持を促進することができる。所望の供給量は、任意選択で流量調節弁(図示せず)によって制御することができる。あるいは、所望の供給圧力は、残留物(又は残留液:retentate)(9)に対して作用する背圧制御手段(8)によって制御することができる。好ましい一実施形態においては、供給圧力Pおよび供給温度Tは、セパレーター(5)に対して最適の飽和蒸気および液体混合物比が提供されるように制御することができる。これとの関連において、最適とは、供給原料中の十分に高いオクタン価の芳香族およびオキシジェネート成分を、パーベーパレーション膜に接触する飽和蒸気部分中に維持することができ、より高沸点の供給原料成分および添加剤を、分離した液体ストリーム(6)中に濃縮させることができる、蒸気液体混合物を意味する。一実施形態においては、供給原料(3)は約90%の飽和蒸気、約10%の液体であってよく、分離手段(4)は、供給原料の液相(6)を供給原料の飽和気相(7)から分離するために操作可能な図2に示されるようなサイクロンを含むことができる。図2に示されるように、混合気/液供給原料(20)を飽和蒸気ストリーム(22)および液体ストリーム(24)の2つのストリームに実質的に分離することができる。
【0015】
図1に戻って参照すると、飽和蒸気ストリーム(7)は、ガソリン供給原料中のより低いオクタン価の脂肪族成分から芳香族およびエタノールなどのオキシジェネートのパーベーパレーション分離に好適なパーベーパレーション膜(5)に向かわせることができる。好適な膜の例は、米国特許第8,119,006号明細書および米国特許出願第13/446,488号明細書および米国特許出願第61/476,988号明細書に見ることができ、これら全てが、それらのそれぞれの関連する開示に関して参照により本明細書に援用される。飽和蒸気によって、好ましい透過物(又は透過液:permeate)(10)を含む供給材料の成分に富む液体層が膜上に凝縮することができ、あまり望ましくない供給原料の成分は残留液(9)として通過することができる。用語「好ましい透過物(又は透過液)」は、供給原料から透過物(又は透過液)として分離することが本発明の使用者によって望まれる供給原料の成分を意味する。図示される系において、芳香族およびエタノールなどの高オクタン価燃料成分が好ましい透過物(又は透過液)となりうる。このストリームがHiRON透過液(11)として示されている。
【0016】
低オクタン価残留物(又は残留液)(9)は、より高沸点の分離液体(6)と混合して、LoRON生成物(12)を得ることができる。この実施形態において、残留液は、好ましい透過液よりも低いオクタン価を有する供給原料の脂肪族成分を含有することができ、膜の寿命に対して有害となりうる供給原料(1)中に見られる添加剤などのより高沸点の供給原料成分を実質的に低い濃度で含有することができる。
【0017】
これよりパーベーパレーション膜(5)の作用に言及すると、飽和蒸気供給原料(7)はパーベーパレーション膜(5)に接触してこれをぬらすことができる。使用者の流束の要求を満たすために、膜の透過液側に好適な減圧を維持することができる。好ましい透過液の分子の選択的収着および拡散輸送によって、好ましい化学種を残留する供給原料から分離することができる。高温の透過液蒸気は、冷却され、膜の下流側で凝縮して、収集することができる。米国特許第8,051,828号明細書(その関連の開示に関して参照により本明細書に援用される)に開示されるように、減圧を得るための駆動流体としてHiRON透過液生成物を使用する任意選択のエデュケーター(educator)を使用して、透過液を収集することができる。
【0018】
パーベーパレーション膜(5)は、好都合には、好ましい透過液を優先的に透過するように選択された選択膜であってよい。好ましい一実施形態においては、供給原料(1)がたとえばガソリンまたはナフサを含み、好ましい透過液が芳香族炭化水素などの高オクタン価成分に富む場合、パーベーパレーション膜(5)は、たとえば米国特許第5,670,052号明細書(その関連の開示に関して参照により本明細書に援用される)に開示されるような芳香族選択膜であってよい。別の好ましい一実施形態においては、ガソリン供給原料がエタノールなどのオキシジェネートをも含有する場合、これに加えて、またはこれとは別に、米国特許第8,119,006号明細書および/または同時係属中の米国仮特許出願第61/476,988号明細書(そのそれぞれの関連の開示に関して参照により本明細書に援用される)に記載されるような芳香族選択的エタノール安定性膜を使用することができる。選択パーベーパレーション膜(5)は、本明細書に記載される温度、圧力、および材料の条件下で選択パーベーパレーション膜を物理的に支持することができるアルミナなどの物理的多孔質支持手段(図示せず)を含むことができる。別の支持体としては、焼結した金属またはセラミックの媒体を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。好ましい支持手段としては、米国特許第8,119,006号明細書および同時係属中有の米国仮特許出願第61/476,988号明細書(そのそれぞれが、その関連の開示に関して参照により本明細書に援用される)に記載されるような多孔質セラミック管または微孔質表面材料を有するモノリスなどの非対称多孔質媒体を挙げることができる。
【0019】
別の一実施形態において、選択的パーベーパレーション膜(5)は、多孔質セラミック支持手段上に支持された架橋ポリイミド−ポリアジペート膜ポリマーおよび/または架橋エポキシアミンポリエーテル膜ポリマーを含むことができる。
【0020】
本発明の特徴の1つには、パーベーパレーション膜(5)の実質的な断熱運転を含むことができる。パーベーパレーションプロセスは、通常は吸熱反応となりうる。前述のように、供給材料は、部分的に気化させて維持することができる。飽和気相供給原料のより高沸騰温度の成分の凝縮がパーベーパレーション膜上で進行することで、膜に熱を供給することができ、吸熱性のパーベーパレーションプロセスで失われる熱を相殺することができる。
【0021】
本発明のさらに別の特徴は、分離膜(5)に接触する液体層を含むことができる。膜温度Tおよび膜供給原料側の圧力Pは、好ましい透過液に富む凝縮液の比較的薄い層を膜表面上に凝縮させるために維持することができる。何らかの特定の理論によって束縛しようと意図とするものではないが、好ましい一実施形態においては、蒸気、液体、および膜の熱的および組成的の両方の平衡の到達および維持を促進するために、比較的薄い層として液体層を維持することができる。供給原料が従来のガソリンまたはナフサを含み、好ましい透過液が供給原料の高オクタン価の芳香族およびオキシジェネート成分を含む実施形態においては、芳香族に富む成分の凝縮速度が、そのような成分の透過速度にほぼ比例できるように、TおよびPを制御することによって、液体層を維持することができる。約80℃〜約180℃(たとえば、約120℃〜約140℃)の運転温度、および約1barg〜約10barg(たとえば、約3barg〜約5barg)の圧力が好ましくなりうる。
【0022】
好ましい透過液の濃度が増加した透過液(10)は、HiRONリザーバー(11)で示される従来手段によって凝縮させ収集することができる。
【0023】
残留液(9)は、LoRON生成物リザーバー(12)で示される従来手段によって収集することができる。任意選択で、分離した液体生成物ストリーム(6)は、収集して、LoRON生成物リザーバー(12)中の残留液ストリーム(9)と混合することができる。
【0024】
これより図3を参照すると、本発明の改善された寿命の分離系の断面図が示されている。この図中、混合液体/気体供給原料(33)は、膜系(35)と物理的に一体化して示されているサイクロン(30)に入ることができ、以下に詳細に説明する。供給原料は、飽和蒸気相と、より高沸点の液相とに分離することができる。供給原料の液体部分は分離されて、図3および3Bの両方に示されるように(38)で示される1つ以上のバイパスチャネルに向かうことができる。液体留分(36)から分離された飽和蒸気相の供給原料(37)は、パーベーパレーション分離のためのパーベーパレーション膜(39)に向かうことができ、これは、ガソリンまたはナフサ供給原料の実施形態においては、芳香族と、供給原料中に存在する場合はエタノールなどのオキシジェネートとを脂肪族よりも選択的に透過させることで、オクタン価が増加した透過液(41)が生成され、HiRONリザーバー(42)中に保管される。本発明の一実施形態においては、パーベーパレーション膜は、複数のほぼ軸方向に配列した通路を有するセラミック基材上に取り付けることができる。通路(39)の内部には、通路の壁に沿ってパーベーパレーション膜をコーティングすることができる。飽和蒸気は、軸方向に通路(39)に供給することができ、膜を半径方向に透過してセラミック中を通り、次に環(40)に入り、(41)においてHiRON透過液として排出され、HiRONリザーバー(42)中に保管することができる。
【0025】
膜の寿命に有害であると理解されている供給原料成分を含むより高沸点の材料は、ここでは(36)で示される分離された供給原料液体部分中に含まれることができ、パーベーパレーション膜を迂回する膜バイパス手段(38)に向かうことができ、次にここではストリーム(43)で示される膜の残留液と合流する。バイパス手段(38)から排出されたストリームと、パーベーパレーション膜の残留液とが集まったストリームは、LoRON蓄積手段(44)に蓄積することができ、これは、ガソリンまたはナフサが分離される主要供給原料である場合、より低オクタン価のオクタンストリームを含む。
【0026】
図3Bは、複数のほぼ軸方向に配列した通路を有するセラミックモノリス基材上にパーベーパレーション膜が取り付けられる本発明の一実施形態を示している。通路(39)の内部には、通路の壁に沿って、パーベーパレーション膜をコーティングすることができる。バイパス通路(38)は、供給原料(36)の分離された液体留分のためのパーベーパレーション膜のバイパスとして機能することができる。
【0027】
以下に示す実施例は、本発明の主題を説明し例示するものである。
【実施例】
【0028】
実施例1
CeraMem(登録商標)0.01ミクロン多孔度TiO2/SiC 0.1m2モノリス試験エレメント(CeraMem(登録商標)Corporation,Newton,MA)に、Jeffamine(登録商標)D400(Sigma−Aldrich/Huntsman)および1,2,7,8−ジエポキシオクタン(Sigma−Aldrich)から作製したプレポリマー溶液をスリップコーティングすることによって、セラミックモノリス支持体上に架橋ポリエーテル膜を形成した。本明細書では1,2,7,8−ジエポキシオクタンをDENOと記載した。
【0029】
D400−DENOポリマー前駆体溶液は、1.05のエポキシ/アミン水素比において、6重量%のエタノールを触媒として使用し、100℃において密封した反応フラスコ中で4時間撹拌しながら反応させ、次にクエンチして、25%の最終プレポリマー濃度までトルエンで希釈することによって調製した。この溶液は室温で2.3cPの粘度を有した。
【0030】
2つのコーティングを実施した。第1のコーティングは、支持体のコーティング溶液による浸透を制限するため、約15kPagのN背圧で、25%溶液のD400−DENOプレポリマー溶液をモノリスチャネルに充填し、取り込まれた気泡の除去を促進するため30秒間の超音波振動を用いることで行った。排液後、チャネルへの充填、振動、および続いて排液を再び行った。コーティングされたエレメントを乾燥させ、次に空気中150℃で1時間硬化させた。第2のコーティングは、粘度約1.3cPのトルエン中12.5%溶液のポリマー前駆体を使用して同様に行った。チャネル充填後に減圧に引いたが、排液前に液体量の変化はなかった。コーティングされたエレメントを乾燥させ、次に空気中150℃で12時間硬化させた。全ポリマー重量は2.12gであった。硬化させたエレメントの減圧試験では、良好なポリマーコーティングの完全性が示され、18kPaにおいて空気(チャネル中)から隔離した場合にわずか0.1kPa/分の圧力上昇を示した。
【0031】
実施例2
実施例1のD400−DENOポリマーをコーティングしたセラミックモノリスについて、10重量%のエタノール、45重量%のトルエン、および45重量%のn−ヘプタンの組成を有するモデル供給原料を使用して評価を行った。Bete WL1/4−90°ノズル(Bete Fog Nozzles,Inc.Greenfield,MA)中を供給原料がダウンフローで流れるようにモノリスを垂直に取り付けた。1.0g/sの供給原料において、600kPa(abs)の圧力、および155℃の膜入口温度でパーベーパレーション試験条件を設定した。エデュケーター(educator)(Fox Valve Development Corp,Dover,NJ)によって減圧に引いて、12kPaの透過液圧力を得た。これらの条件を約160時間維持することで、0.077g/sの安定な透過速度が得られ、これは供給原料に対して7.7%の収率に対応し、芳香族選択性は3.0、芳香族+エタノール選択性は3.8であった。本明細書において、芳香族選択性(AS)は、供給原料に対する透過液生成物中の芳香族(A)の重量分率(Ap/Af)を、供給原料に対する透過液生成物の脂肪族炭化水素(NA)の分率(NAp/NAf)で割った値として定義される。芳香族+エタノール選択性(AES)も同様に定義され、ここで透過液中のエタノールの重量分率(Ep)および供給原料中のエタノールの重量分率(Ef)が式:
AES=((Ap+Ep)/(Af+Ef))/(Nap/NAf)
に含まれる。
【0032】
実施例3
200プルーフエタノールを市販の添加剤がすべて加えられたサマーグレードRUL(Regular Unleaded(無鉛レギュラー))ガソリンとブレンドして調製した10%のエタノールを含有するガソリンブレンドを、実施例2で使用した膜を使用して分離した。0.2g/sの供給原料において500kPa(abs)の圧力および155℃の膜入口温度でパーベーパレーション試験条件を設定した。これらの条件において、約80%のガソリンが気化し、約20%は液体のままであった。この気液混合物を、実施例2に記載のスプレーノズルによって膜の面全体に分散させた。エダクターによって減圧に引いて、約25kPaの透過液圧力を得た。これらの条件を約100時間維持した。この時間の間、透過速度は0.0234g/sから0.0153g/sまで低下した。これは約35%の流束の減少を示している。規格化したデータを図4のトレース(45)にグラフで示している。
【0033】
実施例4
実施例2に記載のモデル供給原料を添加剤成分と市販のRULガソリンに通常使用される濃度で混合した。これらは、3.42ppmwの金属不活性化剤(N、N’−ジサリチリデン−1,2−プロパンジアミン)、1.44ppmwのヒンダードアミン酸化防止剤(N,N’−ジ−2−ブチル−1,4−フェニレンジアミン) 2.4ppmwのフェノール系酸化防止剤(2,6ジ−tert−ブチルフェノール)、および1.45ppmの染料(Dyeguard Yellow R)を含んだ。この試験では清浄添加剤を使用しなかった。条件は実施例2で使用したものとほぼ同じであった。1.0g/s供給原料において600kPa(abs)の圧力および155℃の膜入口温度でパーベーパレーション試験条件を設定した。エダクターによって減圧に引いて、約12kPaの透過液圧力を得た。添加剤を加えたモデル供給原料に切り替える前に、実施例3に開示されるE10ガソリン試験を含む1195時間の連続試験後のE10モデル供給原料の透過速度は0.054g/sであった。
【0034】
添加剤を加えたモデル供給原料を用いて25時間後、透過速度は表1に示されるように0.059g/sまでわずかに増加した。これらの条件を約140時間維持すると、0.058g/sの安定な透過速度が得られ、供給原料に対して5.7重量%のほぼ一定の収率が得られた。添加剤を加えていないE10モデル供給原料に戻してさらに65時間後も透過速度は安定なままであった。透過液の組成は全て非常に類似しており、エタノールおよびトルエンの両方が実質的な濃度を有した。添加剤を加えたE10モデル供給原料に移行した場合、または元に戻した場合の芳香族またはエタノール+芳香族の選択性は実質的に変化しなかった。特に、すべての透過液は無色のままであったが、残留液は、添加剤を加えた供給原料で得られた残留液は、着色した供給原料に類似する黄色となった。これは染料(Dyeguard Yellow R)が膜を透過しなかったことを示している。
【0035】
【表1】
【0036】
添加剤を加えたE10モデル供給原料の場合の規格化された透過液流束の結果を図4のグラフに示している。添加剤を加えたモデル供給原料を処理した場合のトレース(46)で、膜のさらなる老化は実質的に起こらなかった。この実施例の添加剤を加えたモデル供給原料で得られた結果を、実施例3のE10ガソリンブレンドを用いて得られた結果と比較すると、市販のガソリンの試験に起因する流束の減少を示している(トレース(45))。同じ時間の後、ガソリンではほぼ35〜40%の流束の減少を示したが、同様に添加剤を加えたモデル供給原料では流束の減少が示されなかった。
【0037】
実施例5
実施例3の200プルーフエタノールを市販の添加剤がすべて加えられたサマーグレードRUL(Regular Unleaded(無鉛レギュラー))ガソリンとブレンドして調製した10%のエタノールを含有するガソリンブレンドを部分的に気化させ、サイクロンセパレーターを使用して2つの留分に分離した。
【0038】
サイクロンセパレーターは、直径1インチ、肉厚0.065インチ、長さ3インチの316ステンレス鋼で構成され;上部が直径3/8インチでできおり、肉厚0.035インチ、界面で約1/8インチまで平らにされた管の接線入口管;外側の管と同軸であり接線入口の下3/4インチに延在する直径3/8インチ、肉厚0.035インチの管を有する上部の平坦キャップ;および円錐形減速機から底部に出る1/4インチの出口管を有した。使用時には、セパレーターは絶縁した。
【0039】
1.0g/sの供給原料を、凝縮蒸気で加熱した長さ2フィート×OD1/4インチのU字管に通すことによって、ガソリン供給原料を140℃および400kPaaにおいて部分的に気化させた。得られた気/液混合物をサイクロンセパレーターに通すことによって分離した。飽和ガソリン蒸気は、同軸管を通ってサイクロンの上部から出た。分離された液体は、底部の管からサイクロンを出た。確実な分離を促進するために、少量の蒸気が液体留分と一緒になるようにした。底部の生成物は、熱交換器によって冷却し、質量流量制御装置によって流量を制御した。
【0040】
【表2】
【0041】
これらの条件において、供給原料の約73〜75重量%が気化した。底部の速度は0.3g/sに維持した。オーバーヘッドの生成物はグリコールで冷却した熱交換器を使用して凝縮させた。試験用の供給原料を得るために、数ガロンの各生成物を収集した。
【0042】
サイクロン分離条件、ガスクロマトグラフィー分析によって得られた生成物の性質および組成を表2に示している。サイクロンのオーバーヘッドの生成物は特に無色であり、エタノールおよびより低沸点の炭化水素に富み、多員環芳香族を実質的に含有しなかった(<5ppmの2員環ナフタレン類)。サイクロン底部の生成物は、より高沸点の炭化水素に富み、供給原料よりも暗い赤色であった。ほぼ全ての多員環芳香族、ならびに高沸点添加剤および染料が、サイクロン底部の生成物中に残存した。
【0043】
実施例6
実施例5で調製したサイクロンのオーバーヘッド成分を、前述の実施例2〜4で使用した膜の供給原料として使用した。条件は、実施例3におけるE10ガソリンで使用した条件と類似しており、10%透過液の公称収率を得るために0.2g/sの供給量、600kPa(abs)、157℃、および27kPa(abs)の透過液圧力に設定した。供給原料としてのガソリンのオーバーヘッド成分を使用する場合に膜入口に確実に気液混合物を送るために圧力を約100kPaに増加させた。これらの条件を約210時間維持し、老化に関して透過速度の劣化を監視した。この時間の間、供給原料としてのサイクロンのオーバーヘッド成分で得られた透過速度は、ほぼ一定に維持され、収率は8.8%から9.0%にわずかに増加した。透過液の密度0.784g/ccは、残留液の密度0.731g/ccよりも実質的に高く、より高密度の芳香族およびエタノール成分の透過と整合性がある。透過液および残留液の両方が無色であり、無色の供給原料であることと整合性があった。
【0044】
実施例5で調製したサイクロン底部成分を、前述の実施例で使用した膜の供給原料として使用した。0.2g/sの供給量、500kPa(abs)、166℃、および27kPa(abs)の透過液圧力を設定した。10%透過液の公称初期収率を実現するために温度を約10℃上昇させた。これらの条件を約150時間維持し、劣化に関して透過速度を監視した。この時間の間、供給原料としてのサイクロン底部成分から得られた透過速度は実質的に低下し、収率は7.8%から3.3%に低下した。透過液の密度0.811g/ccは残留液の密度0.762g/ccよりも実質的に高く、より高密度の芳香族成分の透過と整合性がある。透過液は無色であったが、残留液は暗赤色であり、赤色の底部供給原料の染料濃度と整合性があった。
【0045】
規格化された透過液流束の比較を図5に示している。供給原料としてのガソリン(50)ガソリン底部成分(51)の流束の減少は類似しており、供給原料に対する最初の100時間で約40%流束が減少した。供給原料としてのガソリンのオーバーヘッド成分の結果のトレース(52)は、その時間以上にわたって流束の実質的な変化を示さなかった。これらの結果は、ガソリン供給原料のより高沸点の成分が流束減少に主として関与することを示している。
【0046】
実施例7
公称1mmの円形チャネルを有するCorning(登録商標)0.01ミクロン多孔度TiO2/ムライト0.21m2モノリス試験エレメント(Corning(登録商標)Inc.,Corning,NY;1L1R−1045)に、実施例1に記載のDENO−D400プレポリマー溶液をスリップコーティングすることによって、セラミックモノリス支持体上に架橋ポリエーテル膜を形成した。12.5%のプレポリマー溶液および最終3.7%のコーティングの4回のコーティングの合計で、硬化後に2.17gの最終ポリマー重量を得た。
【0047】
実施例5に記載のサイクロンセパレーターのオーバーヘッド出口を膜モノリスの入口ノズルに直接接続した。モノリスは実施例2のように垂直のダウンフローで搭載した。サイクロンの底部は、サイトチューブ(site tube)を介して、熱交換冷却器および質量流量制御装置に接続した。冷却後、透過液、残留液、および底部生成物を別々に収集した。
【0048】
200プルーフエタノールを市販の添加剤がすべて加えられた90 RONウインターグレードRUL(Regular Unleaded(無鉛レギュラー))ガソリンと混合して、エタノールを含有するガソリンブレンドを調製した。
【0049】
0.5g/sの供給量および500kPa(abs)の入口圧力および約160℃のサイクロン入口温度を含む条件を設定した。ガソリンの約90%は気化し、10%は液体のままであった。約0.45g/sのサイクロンからのオーバーヘッド飽和蒸気を膜入口の前まで約152℃にわずかに冷却することで、入口ノズルに少量の液体が存在するようにした。
【0050】
膜のパーベーパレーション条件は、入口温度が約152℃、出口制御圧力が約500〜510kPa(abs)、および透過液圧力が約35kPaであった。典型的な残留液温度の約143℃および透過液温度の約106℃が観察された。透過液および残留液の両方は無色であったが、底部生成物は赤色であり、オーバーヘッド供給原料中の染料が膜に到達しなかったことを示している。
【0051】
図6は、一体化されたサイクロンを有する膜の老化性能を示している。E10ガソリン供給原料を用いて得られた前述の結果とは異なり、一体化したサイクロン膜の組み合わせは、運転の最初の100時間の間にトレース(60)で流束の増加を実際示しており、透過液収率は17.5%から20.8%まで改善された。この20%の流束の増加は、トレース(61)のサイクロンを用いずにE10ガソリンの実験で同じ時間で40%の流束の減少と比べて大幅に改善されている。透過液収率は、さらなる220時間の試験の間にほぼ一定に維持された。
【0052】
表3は、ストリームに対して150時間後に、全供給原料に対して21.6%の収率での生成物の分析から、透過液のRONの約100.8は、残留液のRONの92.0と比較して実質的に改善されたことを示している。底部生成物は、約94.5の中間のRONを有した。この実験で使用した供給原料ブレンドのエタノール含有量は、典型的なE10よりも低かった。エタノールおよび芳香族の両方が透過液中で濃縮され、残留液は軽質炭化水素およびC5+非芳香族の増加を示した。
【0053】
【表3】
【0054】
実施例8
この実施例では、図3および3Bに示されるようにサイクロンセパレーターを膜への入口に直接一体化させた。92個の公称1.5mmの円形チャネルを有する0.13m2の0.01ミクロン多孔度のCorningモノリスに、1.06gのDENO−D400ポリマー膜をコーティングした。0.5g/sで流されるE10ガソリン供給原料を500kPa(abs)において160℃にあらかじめ加熱した。これによって、実施例7と同様に供給原料の約90%が気化した。この部分的に気化した供給原料を、水平運転用に構成された完全に一体化されたサイクロンの入口に向かわせた。絶縁は使用しなかった。蒸気ストリームからモノリスへの中心線上に配置した熱電対は約152℃の入口温度を示し、これは約80%の最終蒸気留分に対応した。対応する残留液出口は138℃であり、透過液出口は108℃であった。透過液圧力は31kPaであった。ガソリンの液体底部留分は、制限した数のモノリス膜チャネルに向かわせた。この方法で使用した膜チャネルは、蒸気留分の処理に使用される場合よりも速く老化すると予想される。残りのチャネルは飽和蒸気留分と接触させた。水平に搭載した場合、液体留分は下方のチャネルに向かう。底部液体残留液は、供給原料の飽和蒸気部分を処理するチャネルから得られた残留液と混合される。この混合生成物は、通常、ガソリン供給原料よりも低いオクタン価(RON)を有する。処理された全ての供給原料からの透過液は、多孔質モノリス構造の共通部分によって混合され、通常は供給原料よりも高いオクタン価を有する。
【0055】
ストリームに対する最初の50時間中、透過液の収率は約20%の初期収率から約27%の収率の最大まで増加し、RONは101であった。透過液の収率は250時間において18%まで減少し、RONは101を維持した。結果は、実施例3に示されるような気/液スプレーとして導入されるガソリン気液混合物で得られた結果よりも大幅に改善される。
【0056】
表4は、ストリームに対して210時間後の全供給原料に対して19.6%の収率における生成物の分析を示している。透過液のRONの101.2は、複合残留液のRONの92.5よりも実質的に改善された。エタノールおよび芳香族の両方が透過液中で濃縮され、残留液は、脂肪族軽質炭化水素およびC5+非芳香族の増加を示した。透過液生成物は無色であったが、複合残留液生成物は供給原料よりもわずかに強い赤色を示した。
【0057】
【表4】
【0058】
使用した膜モノリスを調べると、モノリスの下側のチャネルは上側のチャネルよりもはるかに暗い色であることが分かり、これは着色されたサイクロン液体留分との接触を制限したことと適合した。
【0059】
別の一実施形態においては、分離した液体留分は、モノリス面で封止するためのセパレーターからの導管によってモノリスチャネルに向かわせ、それによって蒸気留分との再混合を防止し、分離した液体のほとんどが系のその部分を通過するようにバイパスチャネルに向かわせた。
【0060】
別の一実施形態においては、凝縮した透過液の一部は膜蒸気入口に再循環され、飽和蒸気留分を部分的に冷却するために使用されて、気/液ミストが形成され、それによって液体がモノリス入口に存在するようになり、それによって膜性能が改善される。透過液の再循環によっても、より高いオクタン価の透過液生成物が得られる。
本明細書の開示内容は、以下の態様を含み得る。
(態様1)
芳香族および非芳香族を含み、少なくとも50℃の沸点を有するガソリン供給原料ストリームから高オクタン価成分を分離するためのパーベーパレーション膜の寿命を延長する方法であって:
圧力Pにおいて前記ガソリンを温度Tで加熱して、前記ガソリンを部分的に気化させて、前記ガソリンから飽和蒸気および液体を生成すること;
前記蒸気を前記液体から分離すること;
高オクタン価成分をガソリン供給原料から分離するために好適なパーベーパレーション膜に前記蒸気を向かわせ、それから前記透過物を第1の保持手段中に収集すること;
前記液体および前記パーベーパレーション膜からの残留物を第2の保持手段に向かわせること
を含む方法。
(態様2)
断熱的に行われる、態様2に記載の方法。
(態様3)
気相の凝縮によって熱が得られる、態様1又は2に記載の方法。
(態様4)
前記供給原料ストリームが、メタノール、エタノール、プロパノール、およびブタノールを含むオキシジェネートを含有するガソリンである、態様1〜3のいずれかに記載の方法。
(態様5)
前記膜が、ポリエステルイミドコポリマー膜、ポリウレタンイミド膜、ポリイミド脂肪族ポリエステルコポリマー膜、ジエポキシオクタン架橋/エステル化ポリイミド/ポリアジアペートコポリマー膜、架橋ポリエーテルアミン−エポキシ膜、脂肪族置換エポキシド及びMnが約230〜約4000のポリエーテルアミンを含む架橋ポリエーテルエポキシポリマー、又はそれらの組み合わせである、態様1〜4のいずれかに記載の方法。
(態様6)
前記ポリマーまたはコポリマー膜が多孔質基材によって支持される、態様1〜5のいずれかに記載の方法。
(態様7)
前記基材が多孔質のセラミックである態様6に記載の方法。
(態様8)
前記基材が多孔質セラミックモノリスを含み、前記膜が、架橋ポリイミド−ポリアジペートポリマーであり、前記セラミックの少なくとも一部を被覆する、態様6又は7に記載の方法。
(態様9)
前記基材が多孔質セラミックモノリスを含み、前記膜が、Mnが約400のポリ(プロピレングリコール)ビス(2−アミノプロピルエーテル)と1,2,7,8ジエポキシ−n−オクタンを含む架橋ポリエーテルエポキシポリマーであり、前記セラミックの少なくとも一部を被覆する、態様6〜8のいずれかに記載の方法。
(態様10)
供給原料ストリームから高オクタン価成分を分離する装置であって、前記供給原料ストリームが芳香族および非芳香族炭化水素を含み、少なくとも50℃の沸点を有し、前記装置が、
複合蒸気および液体供給原料ストリームを生成するために前記供給原料ストリームを加熱する手段;
前記液体供給原料ストリームを前記蒸気供給原料ストリームから分離する手段、高オクタン価の芳香族およびオキシジェネートを前記蒸気供給原料ストリームから選択的に透過するパーベーパレーション膜;
前記パーベーパレーション膜の透過物を収集する手段;
前記パーベーパレーション膜の残留物及び前記分離手段からの前記液体を収集する手段、
を含む装置。
(態様11)
前記分離手段がサイクロンであり、前記供給原料ストリームがガソリンである、態様10に記載の装置。
(態様12)
圧力制御手段をさらに含み、前記膜上に液体層を凝縮させるために、前記パーベーパレーション膜への供給圧力Pおよび供給温度Tが選択的に制御される、態様10または11に記載の装置。
(態様13)
前記供給原料ストリームが、メタノール、エタノール、プロパノール、およびブタノールを含むオキシジェネートを含有するガソリンである、態様10〜12のいずれかに記載の装置。
(態様14)
態様1〜9のいずれかに記載の方法における、態様10〜13のいずれかに記載の装置の使用。

図1
図2
図3
図3B
図4
図5
図6