(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6285462
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】780MPa級冷間圧延二相帯鋼及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20180215BHJP
C22C 38/38 20060101ALI20180215BHJP
C21D 9/46 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
C22C38/00 301U
C22C38/38
C21D9/46 F
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-552973(P2015-552973)
(86)(22)【出願日】2013年5月24日
(65)【公表番号】特表2016-510361(P2016-510361A)
(43)【公表日】2016年4月7日
(86)【国際出願番号】CN2013076184
(87)【国際公開番号】WO2014114041
(87)【国際公開日】20140731
【審査請求日】2016年5月13日
(31)【優先権主張番号】201310021998.9
(32)【優先日】2013年1月22日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】302022474
【氏名又は名称】宝山鋼鉄股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朱 暁 東
(72)【発明者】
【氏名】李 旭 飛
(72)【発明者】
【氏名】杜 培 芳
【審査官】
佐藤 陽一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−239791(JP,A)
【文献】
特開平05−148579(JP,A)
【文献】
特開2004−052071(JP,A)
【文献】
特開2005−163115(JP,A)
【文献】
特開2005−002441(JP,A)
【文献】
特開2010−189712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00−38/60
C21D 9/46− 9/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
780MPa級冷間圧延二相帯鋼であって、その微視組織が細かい等軸フェライトマトリックス及びフェライトマトリックスに均一に分布された島状マルテンサイトであり、その化学元素の質量百分含有量が、
C 0.06〜0.1%;
Si ≦0.28%;
Mn 1.8〜2.3%;
Cr 0.1〜0.4%;
Mo Cr≧0.3%である場合に添加されなく;Cr<0.3%である場合に、Mo=0.3−Cr;
Al 0.015〜0.05%;
Nb、Ti元素のうちの少なくとも一種、かつNb+Tiが0.02〜0.05%の範囲内であり;
残部がFe及び他の不可避的不純物であることを特徴とする780MPa級冷間圧延二相帯鋼。
【請求項2】
C 0.07〜0.09%;Mn 1.9〜2.2%;Al 0.02〜0.04%であることを特徴とする、請求項1に記載の780MPa級冷間圧延二相帯鋼。
【請求項3】
化学元素炭素の質量百分含有量が、0.07〜0.1%、又は0.08〜0.1%、又は0.085〜0.1%、又は0.09〜0.1%、又は0.06〜0.09%、又は0.06〜0.085%、又は0.06〜0.08%、又は0.06〜0.07%、又は0.07〜0.08%、又は0.07〜0.085%、又は0.07〜0.09%、又は0.08〜0.085%、又は0.08〜0.09%、又は0.085〜0.09%であることを特徴とする、請求項1に記載の780MPa級冷間圧延二相帯鋼。
【請求項4】
化学元素Siの質量百分含有量が、0.03〜0.28%、又は0.03〜0.25%、又は0.03〜0.2%、又は0.03〜0.15%、又は0.03〜0.1%、又は0.1〜0.28%、又は0.15〜0.28%、又は0.2〜0.28%、又は0.25〜0.28%、又は0.1〜0.15%、又は0.1〜0.2%、又は0.1〜0.2
5%、又は0.15〜0.2%、又は0.15〜0.25%、又は0.2〜0.25%であることを特徴とする、請求項1に記載の780MPa級冷間圧延二相帯鋼。
【請求項5】
化学元素Mnの質量百分含有量が、1.8〜1.9%、又は1.8〜2.0%、又は1.8〜2.1%、又は1.8〜2.2%、又は1.9〜2.0%、又は1.9〜2.1%、又は1.9〜2.2%、又は1.96〜2.3%、又は2.0〜2.1%、又は2.0〜2.2%、又は2.0〜2.3%、又は2.1〜2.2%、又は2.1〜2.3%、又は2.2〜2.3%であることを特徴とする、請求項1に記載の780MPa級冷間圧延二相帯鋼。
【請求項6】
化学元素Crの質量百分含有量が、0.1〜0.2%、又は0.1〜0.22%、又は0.1〜0.25%、又は0.1〜0.3%、又は0.2〜0.22%、又は0.2〜0.25%、又は0.2〜0.3%、又は0.2〜0.4%、又は0.22〜0.25%、又は0.22〜0.3%、又は0.22〜0.4%、又は0.25〜0.3%、又は0.25〜0.4%、又は0.3〜0.4%であることを特徴とする、請求項1に記載の780MPa級冷間圧延二相帯鋼。
【請求項7】
化学元素Alの質量百分含有量が、0.015〜0.02%、又は0.015〜0.03%、又は0.015〜0.035%、又は0.015〜0.04%、又は0.02〜0.03%、又は0.02〜0.035%、又は0.02〜0.04%、又は0.02〜0.05%、又は0.03〜0.035%、又は0.03〜0.04%、又は0.03〜0.05%、又は0.035〜0.04%、又は0.035〜0.05%、又は0.04〜0.05%であることを特徴とする、請求項1に記載の780MPa級冷間圧延二相帯鋼。
【請求項8】
化学元素Nbの質量百分含有量が、0.01〜0.015%、又は0.01〜0.02%、又は0.01〜0.025%、又は0.01〜0.03%、又は0.015〜0.02%、又は0.015〜0.025%、又は0.015〜0.03%、又は0.02〜0.025%、又は0.02〜0.03%、又は0.025〜0.03%であることを特徴とする、請求項1に記載の780MPa級冷間圧延二相帯鋼。
【請求項9】
化学元素Tiの質量百分含有量が、0.01〜0.015%、又は0.01〜0.02%、又は0.01〜0.025%、又は0.01〜0.03%、又は0.015〜0.02%、又は0.015〜0.025%、又は0.015〜0.03%、又は0.02〜0.025%、又は0.02〜0.03%、又は0.025〜0.03%である、請求項1に記載の780MPa級冷間圧延二相帯鋼。
【請求項10】
1)溶錬;
2)鋳造
二次水冷プロセスを採用し、噴射水量が0.7L水/kg鋼ビレット以上であり;
3)熱間圧延
最終圧延温度を820〜900℃に制御し、圧延後に急冷し;
4)卷取
巻取温度を450〜650℃に制御し;
5)冷間圧延;
6)連続焼鈍
800〜860℃で保温し、640〜700℃の間までを5℃/s以上の冷却速度で冷却し、さらに220〜280℃の間までを40〜100℃/sの速度で冷却し、220〜280℃の間で100〜300s焼き戻す;
工程を含む請求項1〜9の何れか一項に記載の780MPa級冷間圧延二相帯鋼の製造
方法。
【請求項11】
工程7)調質圧延をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の780MPa級冷間圧延二相帯鋼の製造方法。
【請求項12】
前記工程5)において、冷間圧延圧下率が40〜60%であることを特徴とする、請求項11に記載の780MPa級冷間圧延二相帯鋼の製造方法。
【請求項13】
前記工程7)において、調質圧延率が0.1〜0.4%であることを特徴とする、請求項11又は12に記載の780MPa級冷間圧延二相帯鋼の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二相鋼及びその製造方法に関するものであり、特に鉄系二相鋼及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車工業の軽量化及び安全性への需要に応じて、市場は、厚さがより薄く、強度がより高い鋼板への需要量が多くなっている。そのうち、引張り強度が780Mpaである二相帯鋼は、強度と成形性との両方性能が良好であるため、よい適用見通しがある。780Mpa級二相帯鋼は、今後、590MPa冷間圧延二相鋼の市場地位を取り替えて、適用が最も広い二相鋼になることが期待される。二相鋼は、相変態によって強化されてなるものであり、一定の焼入れ性を保証するために、鋼に一定の炭素及び合金元素を添加し、二相鋼が冷却過程で過冷却され、オーステナイトからマルテンサイトへ変換できる。しかし、比較的に高い炭素元素の含有量及び合金元素の含有量は、鋼板の溶接性に不利であり、かつ、鋳造過程において合金元素は成分の偏析が発生しやすいので、冷間圧延帯鋼に帯状組織が発生することになってしまい。最終的に、冷間圧延二相鋼は、異なる方向で大きな差が存在し、実際に使用する過程で一連の問題がある。
【0003】
鋼における炭素当量は、主に鋼における炭素含有量、合金元素含有量及び不純物元素の含有量により決定される。炭素当量は、多種の異なる公式で表徴され、車用鋼では通常Pcm値で表される。Pcm=C+Si/30+Mn/20+2P+4S。一般的には、Pcm値は、鋼板が溶接して冷却後の脆性傾向を表徴できる。Pcmが0.24超であると、溶接点で界面の割れが発生しやすくなる。Pcmが0.24未満であると、安全である。
【0004】
鋼材は、本質上異方性の材料である。帯鋼は、生産する際に連続生産を採用するので、鋼材組織に異なる程度で分布上の方向性が存在し、即ち、圧延方向に沿って細長い帯状分布を示す。高強度鋼には、合金元素が高いので、成分偏析が非常に発生しやすい。そして、置換型合金元素の偏析は消去し難く、熱間圧延及び冷間圧延の過程で変形し、延長されて、最終的に帯状組織を形成する。通常、帯状組織は、高い合金元素及び炭素量を含有するので、二相鋼が、焼入れた後に帯状分布を示す硬く、脆いマルテンサイトを形成して、鋼材性能を著しく害する。従って、高強度の二相帯鋼にとって、帯状組織を低減して、分布が均一である組織を得るのは、優良な性能を得る重点である。
【0005】
公開番号がCN102212745A、公開日が2011年10月12日、発明の名称が「高塑性780MPa級冷間圧延二相鋼及びその製造方法(一種高塑性780MPa級冷軋双相鋼及其制備方法)」である中国特許文献は、高塑性780MPa級冷間圧延二相鋼の製造方法を公開し、その化学成分が0.06〜0.08%C、1.0〜1.3%Si、2.1〜2.3%Mn、0.02〜0.07%Al、S≦0.01%、N≦0.005%, P≦0.01%であり、残部がFe及び他の不可避的不純物である。熱間圧延の最終圧延温度が890℃、巻取温度が670℃、冷間圧延の圧下量が50〜70%であり、通常のガスジェット冷却連続焼鈍を採用した。
【0006】
公開番号がUS20040238082A1、公開日が2004年12月2日、発明の名称が「高強度冷間圧延鋼板及びその製造方法」である米国特許文献は、穴広げ性が良い高強度鋼の製造方法を公開し、その化学成分が、0.04〜0.1%C、0.5〜1.5%Si、1.8〜3%Mn、P≦0.020%、S≦0.01%、0.01〜0.1%Al、N≦0.005%であり、残部がFe及び他の不可避的不純物である。当該鋼板は、Ar3〜870℃の間で熱間圧延、620℃以下で卷取、750〜870℃焼鈍、550〜750℃で急冷を行い、急冷速率が100℃/s以上、急冷終了温度が300℃未満であり、最終に引張り強度が780Mpa以上で、穴広げ率が少なくとも60%である冷間圧延高強度鋼を得た。当該鋼板の成分設計は比較的に高いMn含有量及びSi含有量を採用した。
【0007】
公開番号がJP特開2007−138262、公開日が2007年6月7日、発明の名称が「機械特性ばらつきの小さい高強度冷延鋼板およびその製造方法」である日本特許文献は、高強度冷間圧延鋼板に関わり、その化学成分が0.06〜0.15%C、0.5〜1.5%Si、1.5〜3.0%Mn、0.5〜1.5%Al、S≦0.01%、P≦0.05%であり、残部がFe及び他の不可避的不純物である。製造プロセスは、Ac1〜Ac3で10s保持し、500〜750℃までを20℃/sの冷却速度で冷却し、100℃以下までを100℃/s以上の冷却速度で冷却し、780MPaかつ穴広げ率が60以上である高強度鋼板を得ることができる。
【0008】
上記特許文献のいずれでも、鋼における帯状組織の制御に対する記載がなく、異方性の改善について相応的な解決方法をも提出しないので、上記特許は、二相鋼の異方性の機械的性能の改善に関するものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、780MPa級冷間圧延二相帯鋼及びその製造方法を提供することにあり、当該冷間圧延二相帯鋼は、低炭素当量の設計で、微視組織が均一で、リン酸塩処理性が良好で、かつ機械的性能の異方性が小さい二相帯鋼を得て、車工業分野での鋼材料厚さがより薄く、強度がより高い両方の要求を満たすことが期待される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記発明の目的を達成するために、本発明は、780MPa級冷間圧延二相帯鋼を提供し、その微視組織が細かい等軸フェライトマトリックス及びフェライトマトリックスに均一に分布されたマルテンサイト島であり、その化学元素質量百分含有量が:
C 0.06〜0.1%;
Si ≦0.28%;
Mn 1.8〜2.3%;
Cr 0.1〜0.4%;
Mo Cr≧0.3%である場合に添加されなく;Cr<0.3%である場合に、Mo=0.3〜Cr;
Al 0.015〜0.05%;
Nb、Ti元素のうちの少なくとも一種、かつNb+Tiが0.02〜0.05%の範囲内であり;
残部がFe及び他の不可避的不純物である。
【0011】
本発明に記載の780MPa級冷間圧延二相帯鋼における各化学元素の設計原理は、以下である。
【0012】
C:Cはマルテンサイトの強度を向上でき、かつマルテンサイトの含有量に影響する。Cは強度への影響が大きいであるが、炭素含有量の向上は帯鋼の溶接性に不利である。炭素含有量が0.06%未満であると、強度が不十分になり;炭素含有量が0.1%超であると、溶接性が低下する。よって、本発明に記載の技術方案は、炭素含有量が0.06〜0.1wt%の間であるとする。
【0013】
Si:Siは二相鋼の鋼において固溶強化の作用を果たす。Siは炭素元素の活性を向上させ、CがMnリッチ区域に偏析することを促進でき、帯状区域の炭素含有量を向上させる。しかし、Siは、帯鋼のリン酸塩処理性に不利であるので、Si含有量の上限を制御する必要がある。本発明に記載の技術方案では、Si≦0.28wt%であると要求される。
【0014】
Mn:Mnは鋼の焼入れ性を向上でき、鋼の強度を有効的に向上できる。しかし、Mnは帯鋼の溶接性能に不利である。Mnは鋼において偏析し、熱間圧延過程で帯状分布のMnリッチ区域に圧延されやすく、帯状組織に形成し、二相鋼の組織均一性に寄与しない。Mnが1.8%未満であると、帯鋼の焼入れ性が不十分で、強度も不十分になる。Mnが2.3%超であると、帯鋼における帯状組織が亢進し、炭素当量が高くなる。よって、Mnの含有量を1.8〜2.3wt%に設定する。
【0015】
Cr:Crは帯鋼の焼入れ性を向上でき、一方、Crを添加すると、Mnの作用を補うことになる。Crが0.1%未満であると、作用が顕著ではない。しかし、Crが0.4%超であると、強度が高過ぎ、塑性が低下することになる。本発明に記載の技術方案ではCr含有量を0.1〜0.4wt%に制御する。
【0016】
Mo:Moは鋼の焼入れ性を向上でき、帯鋼の強度を有効的に向上できる。Moは炭化物の分布に対して改善作用がある。Moは、Crとともに帯鋼の焼入れ性能を促進できる。よって、本技術方案において、Moの添加量はCrと関わり、Cr含有量が0.3wt%未満である場合、Moの添加量が(0.3−Cr)を満足すべく;Cr含有量が0.3wt%超である場合、Moを添加する必要がない。
【0017】
Al:Alは鋼において脱酸素作用及び結晶微粒化の作用を奏する。本発明の技術方案では、Alが0.015〜0.05 wt%であると要求される。
【0018】
Nb、Ti:Nb及びTiは、析出ための強化元素であり、結晶微粒化の作用を果たせ、単独又は組み合わせで添加することができる。しかし、それらの合計添加量は0.02〜0.05wt%に制御する必要がある。
【0019】
更に、本発明に記載の780MPa級冷間圧延二相帯鋼は、下記化学元素に対して限定する。そのうち、C 0.07〜0.09wt%;Mn 1.9〜2.2wt%;Al 0.02〜0.04wt%である。
【0020】
成分設計の点で、本発明に記載の780MPa級冷間圧延二相帯鋼は、比較的低い炭素含有量、比較的低い合金元素の合計添加量及び多種の合金元素の組み合わせ添加の方式を採用した。本技術方案にとって、比較的低い炭素含有量を選択することは、Cが鋼における富化度を低下し、帯状組織の形成傾向を阻止することができる。二相鋼における主要な合金元素Mnの含有量を低減することは、帯鋼に帯状組織が生じる確率を有効的に低減し、及びリン酸塩処理性への悪影響を低減することができる。Siの添加を厳しく制限することで、SiがC原子の活性を変えることによるC原子の偏析を低減する。一定量のCr、Moなどの他の合金元素を添加することで、Mn含有量が低いことによる焼入れ性の低下を補うことができる。このような成分設計は、鋼における炭素当量Pcmを0.24未満に有効的に制御することができ、溶接十字伸張締め具状割れ(welding cruciform tensile fastener-like crack)を得るとともに、帯鋼強度が780MPa以上であることを保証できる。当該帯鋼の微視組織が細かい等軸フェライトマトリックス及びフェライトマトリックスに均一に分布されたマルテンサイト島であるので、その中に示されている帯状組織が微小である。よって、帯鋼は、機械的性能の異方性が小さく、良好な冷間曲げ及び穴広げ性能を有する。
【0021】
それ相応に、本発明は、更に当該780MPa級冷間圧延二相帯鋼の製造方法を提供し、当該製造方法は、下記工程を含み、
1) 溶錬;
2) 鋳造:二次水冷(secondary water-cooling)プロセスを採用し、噴射水量が0.7L水/kg鋼ビレット以上であり;
3) 熱間圧延:最終圧延温度を820〜900℃に制御し、圧延後に急冷し;
4) 卷取:巻取温度を450〜650℃に制御し;
5) 冷間圧延;
6) 連続焼鈍:800〜860℃で保温し、640〜700℃の間までを5℃/s以上の冷却速度で冷却し、さらに220〜280℃の間までを40〜100℃/sの速度で冷却し、220〜280℃の間で100〜300s焼き戻す。
【0022】
さらに、上記780MPa級冷間圧延二相帯鋼の製造方法では、工程7)調質圧延を含む。
【0023】
さらに、上記工程(5)において、冷間圧延の圧下率が40〜60%である。
なおさらに、上記工程7)において、調質圧延率が0.1〜0.4%である。
【発明の効果】
【0024】
製造プロセスの点で、連続鋳造工程において二次水冷プロセスを採用し、速い冷却速度及び大きな冷却噴射水量で鋼ビレットを均一に急冷して、連続鋳造ビレットの組織を微細化できる。このように、細かい炭化物は、粒子状でフェライトマトリックスに分散的に分布する。熱間圧延工程において比較的低い最終圧延温度を採用し、卷取工程においても比較的低い巻取温度を採用した。これによって、結晶粒子を微細化できるとともに、帯状組織の分布連続性を低減できる。連続焼鈍工程において比較的高い焼鈍保温温度を採用することで、鋼における帯状組織の形成を抑制でき、均一に加熱した後に急冷して、炭素の偏析及び帯状組織の形成を低減することに寄与する。上記プロセス工程を経て、本発明に記載の780MPa級冷間圧延二相帯鋼の微視組織は、細かい等軸フェライトマトリックス、及びフェライトマトリックスに均一に分布されたマルテンサイト島を表現し、その機械的性能の異方性が小さく、組織構造が均一である。
【0025】
従来の技術と比べて、本発明に記載の780MPa級冷間圧延二相帯鋼は、マルテンサイト分布が均一で、帯状組織が微小で、表面のリン酸塩皮膜が微細で緻密であり;良好な溶接性、優れた機械的性能均一性、優れたリン酸塩処理性を有し、縦方向と横方向の性能の差が小さいので、二相鋼のプレス加工に有利であり、高強度二相鋼が強度と成形に対する要求を満たすことができ、車製造などの分野に広く応用される。
【0026】
本発明に記載の780MPa級冷間圧延二相帯鋼の製造方法では、何のプロセス難度を増加することなく、合理的な成分設計及び改善された製造工程によって、微視組織が均一で、良好な冷間曲げ及び穴広げ性能を有し、機械的性能の異方性が小さい高強度冷間圧延二相帯鋼を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施例3に係わる780MPa級冷間圧延二相帯鋼の鋳放し微視組織を示す。
【
図2】実施例3に係わる780MPa級冷間圧延二相帯鋼の微視組織を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
具体的な実施例及び図面に基づいて、本発明の技術方案をさらに説明する。
下記工程に従って、本発明に記載の780MPa級冷間圧延二相帯鋼を製造する。
【0029】
1)溶錬
各化学元素の配合比を表1に示すように制御する;
2)鋳造
二次水冷プロセスを採用し、噴射水量が0.7L水/kg鋼ビレット以上である;
3)熱間圧延
最終圧延温度を820〜900℃に制御し、圧延した後に急冷する;
4)卷取
巻取温度を450〜650℃に制御する;
5)冷間圧延、冷間圧延圧下率が40〜60%である;
6)連続焼鈍
800〜860℃で保温し、640〜700℃の間までを5℃/sの冷却速度で冷却し、220〜280℃の間までを40〜100℃/sの速度で冷却し、220〜280℃の間で100〜300s焼き戻す。
【0030】
7)調質圧延
調質圧延率が0.1〜0.4%である(実施例1には当該工程を行わない)。
【0032】
表2は、各実施例の具体的なプロセスパラメーターを示す。その中、実施例2−1及び実施例2−2は、いずれも表1に示す実施例2の成分配合比を採用し、実施例5−1及び実施例5−2は、いずれも表1に示す実施例5の成分配合比を採用した。
【0034】
表3は本技術方案の各実施例に係わる冷間圧延二相鋼の性能を示す。
【0036】
表3から分かるように、本発明に記載の780MPa級冷間圧延二相帯鋼は、比較的高い強度、良好な伸び率を有し、機械的性能の異方性が小さいので、590MPa冷間圧延二相鋼を取り替えて、車の製造分野に適用することができる。
【0037】
図1は本願実施例3の鋳放し微視組織を示し、
図2は本願実施例の微視組織を示した。
図1から分かるように、当該冷間圧延二相鋼の鋳放し組織は、フェライト結晶粒に分散的に分布されたセメンタイトを含む。
図2から分かるように、当該冷間圧延二相帯鋼の微視組織は、細かい等軸フェライトマトリックス、及びフェライトマトリックスに均一に分布されたマルテンサイト島を含み、帯状組織が微小である。
【0038】
当分野の普通の技術者にとって、以上の実施例は、本発明を説明するのに用いるものだけであり、本発明を限定するものではなく、本発明の実質的な精神を逸脱しない範囲において、上記実施例に対する変形、変更が本発明の特許の範囲内に落ちると認識すべきである。