【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、かかる課題は請求項1に係る装置および請求項13に係る方法によって解決される。本発明の有利な実施例は、従属項の対象とされる。
【0009】
本発明によると、充填装置と、充填装置と蓄電池を収容する負圧(ないし真空)排気可能な気密性容器と、充填装置に電解液を供給するために容器壁を貫通して設けられた供給装置とを備えた装置が提供される。充填装置は、電解液で充填可能な少なくとも1つの中間容器を備えている。中間容器は、充填状態において電解液面の上部が気密性容器の内部と圧力平衡状態にある。また、中間容器は、セルの内部が気密性容器の内部に対して気密封止された状態で、電解液面の下部において、少なくとも流出口を経由して、充填すべきセルの注入口に対して流出入可能に接続することができる。
【0010】
本発明によると、気密性容器の内部に対して気密封止された充填すべきセルの内部に対して、かかる流出口を介して気密性容器の内部を流出入可能に接続可能とすることによって、中間容器からセル内部に電解液を圧力で搬送する目的で、セルの内部と気密性容器、特に電解液面の上部との間に圧力差を生じさせることが可能となる。
【0011】
このために、まず充填すべきセルの内部および収容装置の内部は、好ましくは真空ポンプを用いて負圧(ないし真空)排気される。ここで、開口した注入口を備えた蓄電池が真空気密を保った気密性容器の内部に収容されていることによって、セルの負圧排気は自動的に行われる。負圧排気の間に、同様に気密性容器に収容された充填装置は、少なくとも1つの流出口を介して、充填すべきセルの内部に流出入可能に気密封止接続されている。なぜなら、中間容器は、負圧排気の間、まだ充填されていないからである。このとき、セルの内部は、流出口と、気密性容器の内部に対して圧力平衡状態にある中間容器とを経由して負圧排気される。ただし、この代わりに、中間容器は、まず負圧排気が行われた後、充填すべきセルの内部と流出入可能に気密封止接続されるようにしてもよい。負圧排気および流出入可能な接続が行われた後、好ましくは充填装置の供給装置を介して、中間容器は電解液で充填される。充填に続けて、または、充填の間に、気密性容器の内部の圧力を上昇させ、例えば、この間に、気密性容器はゆっくりと通気される。ここで、中間容器の内部に注入された電解液は圧力障壁を形成し、気密容器内の圧力上昇の際、気密性容器の内部と圧力平衡状態にある中間容器の電解液面の上部と、充填すべきセルの内部との間に、圧力障壁を跨いで圧力差を生じさせることができる。
【0012】
有利には、この圧力によると、充填プロセスは、例えば単に重力の影響下における電解液の流入と比較して、はるかに高速に進行する。また、電解液面に圧力を及ぼすことにより、電解液は充填すべきセルの電極群に特に良く浸透することができる。このことは、例えば現代の自動車用蓄電池の場合のように、セルの内部に不織布材料が装備されている場合、特に重要である。この材料が浸漬され、空気が含まれなくなるまで、電解液は可能な限り十分にこの材料に浸透するようにすべきである。このようにすることで、はじめて蓄電池の申し分のない機能が保証される。セル内部への電解液の十分な浸透は、収容装置の内部の圧力が大気圧、さらに大気超過圧に上昇された場合、さらに促進され、または、改善される。なぜなら、セルの内部と気密性容器の内部との間の圧力差が大きくなるにつれて、充填プロセスはより高速に進行し、浸透可能な電解液の量もさらに増大するからである。
【0013】
流出口を用いてセルの内部を気密性容器の内部に対して気密封止することにより、セルまたは蓄電池の外部が電解液と決して接触しないようにすることができる。これにより、蓄電池の外側に付着した電解質を費用をかけて洗浄する必要がなくなる。
【0014】
本発明の第1の有利な実施例によると、少なくとも1つの流出口は少なくとも1つの充填ノズルを備え、充填ノズルは、セルの内部が気密性容器の内部に対して気密封止された状態で、充填すべきセルの注入口に対して流出入可能に接続できることによって、電解液のセルへの充填を特に安全に行うことができる。特に、少なくとも1つの充填ノズルは注入口に挿入可能とすることができる。注入口に突き出た、または、挿入された充填ノズルによると、電解液は注入口の下方において充填すべきセルの内部に直接供給される。これにより、電解液が注入口の縁に流れ出したり、または、誤って漏れ出したりするのを防ぐことができる。
【0015】
セルの内部を気密性容器の内部に対して気密封止するために、少なくとも1つの流出口または少なくとも1つの充填ノズルはシール手段を備えている。シール手段は、例えば、中間容器の流出口の下方に配置され、シールリングであってもよい。または、シール手段は充填ノズルの円周方向に配置された適当なシールリングであり、これに応じて充填ノズルまたは流出口とセルの注入口の間の気密封止または耐圧封止が実現される。本発明において、気密封止とは、セルの内部と気密性容器の内部との圧力差に耐え得る封止をいう。かかる封止は、両方向の圧力勾配に耐えるべきであり、好ましくは、少なくともセルの内部方向への圧力降下、すなわち、気密性容器の内部の圧力がセルの内部の圧力よりも大きい状態に耐えるべきである。
【0016】
有利には、シール手段は、侵食性の電解液、特に硫酸に対して化学的に耐性を有するように構成されている。このために、シール手段に対する材料として、好ましくは、耐薬品性のプラスチック、特にゴム、例えばエチレンプロピレンジエンゴムまたはフッ素ゴム材料が選択される。シール手段として、例えば、エチレンプロピレンジエンゴムから成るオーリング(Oリング)が考えられる。オーリングは充填ノズルの円周方向または流出口の近傍に配置され、注入口と流出口または充填ノズルとの間に生じうる隙間を塞ぐ。
【0017】
本発明の他の有利な実施例によると、少なくとも1つの中間容器は、上方に開口し、底部に少なくとも1つの流出口を備え、立方形、円筒形、円錐形または漏斗形のカップとして形成されている。立方形または円筒形のカップは、技術的に簡単な方法で、金属薄板(シートメタル)またはプラスチックで製造することができる。円錐形または漏斗形のカップは、これに加えて次の利点がある。すなわち、特に流出口がこのように形成されたカップの先細部に配置され、先細部または流出口を有するカップが充填装置において重力方向の下向きに配置されている場合、電解液はファンネル効果(漏斗効果)によって、流出口を介して可能な限り完全にセル内部へと流入する。上方に向かって開口するように形成された中間容器によると、特に簡単な方法で、充填された中間容器の内部の電解液面上部が気密性容器の内部と圧力平衡状態となるようにすることができる。
【0018】
多くの蓄電池、特に、自動車用の蓄電池は、複数のセルを備えていることから、本発明の他の有利な実施例によると、充填装置は複数の中間容器を備えていてもよい。ここで、中間容器は、それぞれ、少なくとも1つの流出口、または、少なくとも1つの充填ノズルを有する流出口を備えている。
【0019】
特に、充填装置の流出口または充填ノズルのすべての個数および/または配置は、蓄電池の注入口の個数および/または配置に対応するようにしてもよい。このようにして、蓄電池のすべてのセルは、本発明に係る装置を用いて同時に充填することが可能となる。ここで、単一の中間容器から、蓄電池のセルの個数に応じた個数の流出口および/または充填ノズルが分岐するようにしてもよい。代わりに、蓄電池の注入口の個数および配置に応じて、複数の流出口と充填ノズルを有する同数の中間容器を設けるようにしてもよい。ここで、流出口または充填ノズルの配置は、好ましくは、蓄電池の注入口の配置に対応している。充填ノズルまたは流出口の対応する配置によると、特に簡単に流出口または充填ノズルを蓄電池の注入口に対して流出入可能に接続することができる。好ましくは、充填装置は単純に上から、開口した注入口に被せられ、または、挿入される。これは、手動または自動で行うことができる。
【0020】
本発明の他の有利な実施例によると、負圧排気可能な密封性容器は、底板と、底板を気密封止する取り外し可能な、好ましくはドーム形の上部とを備えている。好ましくは、取り外し可能な上部は、昇降装置を用いて蓄電池および/または充填装置の上に降ろすことができ、または、被せることができる。
【0021】
蓄電池を充填装置に導入するために、気密性容器の上部は、好ましくは昇降装置を用いて上方へ持ち上げられ、または、取り外され、蓄電池の導入の後、再び底板の上に降下され、これにより、上部と底板は互いに重なり合って気密封止される。気密封止は、例えばシール手段、特に底板と接触する上部の下側に設けられたゴム封止(シール)部材によって実現される。
【0022】
有利には、本発明の他の実施例に係る気密性容器は、蓄電池に基本的に適合する形状を備えている。有利には、気密性容器は、ドーム形の上部と平らな底板から成る直方体の容器として形成される。容器は蓄電池自体よりもほんのわずかに大きいにすぎないものの、充填装置を収容するための十分な空間を有する。気密性容器の容積を可能なかぎり小さくすることで、気密性容器の内部を非常に高速に負圧排気することが可能となり、これにより充填プロセスの持続時間を削減することができる。さらに、蓄電池は、充填プロセスの間、気密性容器によって気密を保って収容されているため、気密性容器は充填装置の操作者に対して飛散防止の役割も果たす。
【0023】
本発明の他の有利な実施例によると、充填装置の少なくとも一部、特に少なくとも充填ノズルおよび/または中間容器は、気密性容器の上部によって保持されている。このとき、特に、上部を上昇させる際、充填装置も一緒に上方に持ち上げられることになり、これにより、蓄電池は充填後に充填装置全体から取り出すことができ、追加の作業工程において充填装置を充填済の蓄電池から分離する必要がなくなる。また、これにより、逆に、上部を降下させる際、充填装置は自動的に充填すべき蓄電池の注入口に挿入される。
【0024】
特に有利には、充填装置またはその一部は、例えば、ばね負荷保持バーまたはばね負荷サスペンションによって気密性容器の上部に弾性的に保持される。降下の際、上部が底板上の最終的な封止位置に達しない限り、ばね負荷保持バーまたはばね負荷サスペンションは、充填装置を蓄電池上に積み重ねる際に撓む。このように充填装置の少なくとも一部を気密性容器の上部に弾性的に取り付けることにより、蓄電池の寸法の公差に起因して生じる高さの差を補償することができる。
【0025】
流出口または充填ノズルを蓄電池の注入口に対して簡単に正確な位置で流出入可能に接続するために、本発明の他の実施例に係る充填装置は、機械式の案内手段、特に調整ボルトを備えている。これにより、充填装置を設置する場合において、上部をこれに保持された充填装置とともに降下させるときに、蓄電池は充填装置に対して自動的に正しい位置に押しやられる。結果として、流出口または充填ノズルは、蓄電池の注入口に自動的に差し込まれ、または、注入口に対して流出入可能に接続される。
【0026】
本発明の他の有利な実施例によると、装置は気密性容器の内部を負圧排気するための負圧排気装置、および/または、気密性容器の内部に大気圧または大気超過圧を生成するための圧力源を備えている。特に好ましくは、かかる目的で、真空ポンプまたは圧力ポンプが使用される。
【0027】
充填プロセスを制御し、これに影響を及ぼすために、本発明の他の有利な実施例によると、気密性容器の内部における圧力は、圧力源または負圧(ないし真空)排気装置によって制御可能および/または調整可能である。特に、気密性容器の内部における圧力は10ミリバールから2500ミリバールの範囲で、好ましくは100ミリバールから大気圧の範囲で制御可能および/または調整可能である。このようにして、蓄電池を充填する際に、特に利用者が定義した圧力プロファイルを設定することが可能となる。
【0028】
本発明の第1の独自のアイデアは上記の充填装置に関し、充填装置は充電池の少なくとも1つのセルを電解液で充填するために、気密性容器または本発明に係る充填用の装置に配置するのに適している。特に、充填装置はスタンドアロン型ユニットを構成し、特に追加装備用セットまたはスペア部品として、既存の充填用の装置に統合されることが考えられる。
【0029】
本発明の他の独自のアイデアは、気密性容器の内部において蓄電池の少なくとも1つのセルを電解液で充填する方法に関し、特に上記の装置を用いて蓄電池を充填する方法に関する。本発明によると、充填方法は、
(a)気密性容器の内部に負圧を生成することによって、充填すべきセルの注入口を介してセル内部を負圧排気するステップと、
(b)中間容器が電解液面の上部において気密性容器の内部と圧力平衡状態となるように、気密性容器の内部に配置された少なくとも1つの中間容器を電解液で充填するステップと、
(c)気密性容器の内部とセルの内部の圧力差により、電解液が中間容器から少なくとも流出口を介してセルに供給されるように、気密性容器の内部における圧力を上昇させるステップと、を含み、
中間容器は、前記充填を行う前に、セルの内部が気密性容器の内部に対して気密封止された状態で、流出口を経由して、セルの注入口に対して流出入可能に接続される。
【0030】
本発明によると、気密性容器の内部とセルの内部との間にかかる圧力が生成されることにより、電解液面に圧力がかかり、これにより電解液のセル内部の電極群への浸透が顕著に改善され、かつ、促進される。さらに、流出口を用いてセルの内部を気密性容器の内部に対して気密封止することにより、セルまたは蓄電池の外部が電解液と決して接触しないようにすることができる。これにより、蓄電池の外側に付着した電解質を、費用をかけて洗浄する必要がなくなる。
【0031】
第1の有利な実施例に係る方法よると、気密性容器の内部の圧力を大気圧またはさらに大気超過圧に上昇することによって、このプロセスを改良することができる。
【0032】
また、本発明の他の有利な実施例によると、気密性容器の内部の圧力を段階的に、特に大気圧に上昇させてから大気超過圧に上昇させることも考えられる。
【0033】
さらに、有利には、気密性容器の内部の圧力を、圧力上昇の際、2つの値の間で、特に大気圧と大気超過圧との間で変更することもできる。
【0034】
さらに効率を改善する目的で、可能な限り多量の電解液をセルの内部に供給すべく、上記方法のステップ経過を複数回繰り返すことができる。
【0035】
本発明の他の目的、利点、特徴および適用可能性は、図面を参照しつつ以下の実施例の記載から明らかにされる。その際、記載された、かつ/または、図示されたすべての特徴は、それ自体において、または、任意の有意な組み合わせとして、本発明の主題を構成するものであり、請求項における発明の要約、または、請求項による後方参照(従属関係)からは独立したものである。