特許第6285468号(P6285468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユリウス ブルム ゲー エム ベー ハーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6285468
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】家具装着具のための固定装置
(51)【国際特許分類】
   F16B 12/14 20060101AFI20180215BHJP
   E05F 1/10 20060101ALI20180215BHJP
   A47B 55/00 20060101ALI20180215BHJP
   A47B 88/423 20170101ALI20180215BHJP
【FI】
   F16B12/14
   E05F1/10
   A47B55/00
   A47B88/04 A
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-561820(P2015-561820)
(86)(22)【出願日】2014年3月12日
(65)【公表番号】特表2016-509146(P2016-509146A)
(43)【公表日】2016年3月24日
(86)【国際出願番号】AT2014000047
(87)【国際公開番号】WO2014138760
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2015年11月9日
(31)【優先権主張番号】A193/2013
(32)【優先日】2013年3月13日
(33)【優先権主張国】AT
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】597140501
【氏名又は名称】ユリウス ブルーム ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Julius Blum GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘマール,カート
【審査官】 鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】 独国実用新案第202010014948(DE,U1)
【文献】 国際公開第2013/029070(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 12/00−12/60
F16B 41/00
F16B 21/16
E05F 1/10
A47B 55/00
A47B 88/04
F16B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
家具装着具(101)を家具(110)に固定するための固定装置(100)であって、
前記家具装着具(101)が、左側の家具装着側部(102)または右側の家具装着側部(103)で前記固定装置(100)により前記家具に選択的に固定でき、
前記固定装置は、接続要素(1)を含んでおり、該接続要素(1)は、前記家具装着具(101)を前記家具(110)に固定するための2つの接続要素領域(4、5)を有しており、
前記固定装置は、貫通開口部(21)を備えた固定装置本体部(20)をさらに含んでおり、
前記接続要素(1)は前記貫通開口部(21)内に少なくとも部分的に配置されており、
前記接続要素(1)は、前記固定装置本体部(20)に対して可動である、固定装置(100)において、
前記接続要素(1)は、該接続要素(1)に対して制限的に可動であるアバットメント要素(2、3)を少なくとも一つ有しており、
前記接続要素(1)は、前記アバットメント要素(2、3)の少なくとも一つのために前記接続要素に対して固定された2つのアバットメント(11、12)を有しており、
前記接続要素に対して固定されている前記2つのアバットメント(11、12)は、前記接続要素(1)の縦軸(6)に対して略垂直に位置づけられたアバットメント表面部を有していることを特徴とする固定装置。
【請求項2】
前記アバットメント要素(2、3)の少なくとも一つが、一方において前記接続要素に対して固定されている前記アバットメント(11、12)の一つと、他方においてアバットメントとして作用している前記家具装着側部(102、103)との間で、それぞれ制限的に可動であることを特徴とする、請求項1に記載の固定装置。
【請求項3】
前記固定装置は、2体のアバットメント要素(2、3)を有していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の固定装置。
【請求項4】
前記接続要素(1)が2つの端部(9、10)を有しており、前記接続要素(1)の前記2つの端部(9、10)の領域において、前記アバットメント要素(2,3)の少なくとも一つのために、前記接続要素に対して固定されている前記アバットメント(11、12)が提供されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の固定装置。
【請求項5】
2つの別々の工具受領手段(13、14)が前記接続要素(1)に提供されており、
好適には、前記工具受領手段(13、14)がスロット、十字スロット、六角ソケット、又は六角小葉ソケットの形態であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の固定装置。
【請求項6】
前記家具装着具(101)を前記家具(110)に固定させるために、請求項1〜5のいずれかに記載の少なくとも一つの固定装置(100)を有する、家具(110)のための家具装着具(101)。
【請求項7】
前記固定装置本体部(20)は、実質上完全に前記家具装着具(101)内に提供されていることを特徴とする、請求項6に記載の家具装着具。
【請求項8】
前記家具装着具(101)は、可動家具部分(104)のための延出装置、駆動装置、引込装置、若しくは制動装置の形態、又は、家具フラップ扉(105)、レール延出ガイド装置、若しくは照明装置用の作動装置(106)の形態であることを特徴とする、請求項6又は7に記載の家具装着具。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれかに記載の家具装着具(101)の少なくとも一つと、請求項1〜5のいずれかに記載の固定装置(100)の少なくとも一つとを有する家具(110)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分(「おいて」書き部分)に記した、家具装着具の家具への固定用装置に関する。
また、本発明は、前記固定装置を備えた家具用の家具装着具、及び当該家具装着具を備えた家具にも関する。
【背景技術】
【0002】
上記の固定装置は、例えば特許文献1に開示されている。家具装着具(そこでは家具フラップ扉用の駆動装置の形態)は、この固定装置によって家具筐体に固定されている。この点において、駆動装置は、家具筐体の左側と、その右側の両方に固定できるように設計されており、よって両方の組み立て位置では、一つの設計形態の駆動装置で間に合う。
【0003】
このため、固定装置は、駆動装置の一方側から他方側へ貫通する開口部を有している。接続要素はその貫通開口部内に配置されており、駆動装置はその接続要素によって家具筐体のそれぞれの側部に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第202010014948号明細書
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、従来技術に勝る、家具装着具の家具への固定装置の提供にある。この目的は、請求項1の特徴を有する固定装置と、請求項19の特徴を有する家具装着具と、請求項22に記載の家具によって達成される。
【0006】
接続要素が、該接続要素に対して制限的に可動である少なくとも一つのアバットメント要素(当接要素)を有しているという事実は、アバットメント要素が接続要素に関連して、固定装置および家具装着具という異なる2つの位置で、家具に固定させることが可能なアバットメントとして、利用できることを意味している。
【0007】
このアバットメント要素の設計のおかげで、家具装着具が家具に位置的に安定した状態で固定可能である非常にコンパクトな固定装置が提供される。さらに、接続要素に対するアバットメント要素の制限的な可動性によって、アバットメント要素が接続要素上に残ることを確実にすることができ、したがって、アバットメント要素と接続要素が互いに分離しないため、好適な組み立てモードが提供される。
【0008】
本発明のさらなる有利な実施態様は、従属請求項に定義されている。
【0009】
その少なくとも一つのアバットメント要素が、接続要素から放射状に突き出ていることが有利であることが証明されている。この点において、接続要素が縦軸を有し、その少なくとも一つのアバットメント要素は接続要素の縦軸に沿って制限的に可動であることが特に有利であることが証明されている。この点で、特に好適には、その少なくとも一つのアバットメント要素が接続要素に着脱可能に固定可能である。
【0010】
接続要素と固定装置本体部(securing body)が共同で組み立て前構造ユニットの形態をなすことが特に有利であることが証明されている。よって、接続要素が自然に固定装置本体部から外れることができないため、接続要素を紛失することがないようにすることが可能である。
【0011】
好適な実施態様の一つによれば、接続要素は固定装置本体部の貫通開口部を実質上完全に貫通して延びることができる。
【0012】
さらに好適には、組み立て状態の接続要素は、一方側で固定装置本体部の貫通開口部内に沈んだ状態で受領され、他方側で家具内に受領されることができる。接続要素が固定装置に沈んだ状態であるという事実は、接続要素が固定装置を越えて横方向に突き出ていないことを意味しているため、組み立て状態において美観的に魅力的な固定装置を提供することが可能である。
【0013】
好適な実施態様の一つでは、接続要素領域が、強制ロック及び/又はポジティブロック(能動(的)ロック)の関係で家具に接続できる。2つの接続要素領域が、接続要素上で互いに対称な形態であることが有利であることが証明されている。
【0014】
また、組み立て位置での接続要素領域が、左側または右側の家具装着側部を越えて突き出ていることが有利であることも証明されている。接続要素領域が家具装着側部を越えて突き出ているという事実のおかげで、接続要素は家具筐体内に貫通し、その中で固定されることができる。
【0015】
接続要素の接続要素領域がネジ溝を有していることがさらに好適でありえる。固定は、ネジ溝を用いることで簡単に実行できる。この点において、その少なくとも一つのアバットメント要素がネジ溝内で可動に支持されていることが特に好適である。この点において、その少なくとも一つのアバットメント要素は保持リングの形態であることが有利であることが証明されている。
【0016】
好適な実施態様の一つでは、接続要素は、その少なくとも一つのアバットメント要素のため、接続要素に対して固定されている2体のアバットメントを有することができる。この点において、その少なくとも一つのアバットメント要素は、一方側で接続要素に対して固定されているアバットメントの一つと、他方側でアバットメントとして作用している家具装着側部との間でそれぞれ制限的に可動であることが好適である。しかしながら、固定装置が2体のアバットメント要素を有していることが特に好適である。
【0017】
接続要素が2つの端部を有しており、接続要素の2つの端部の領域に、その少なくとも一つのアバットメント要素のため、接続要素に対して固定されているアバットメントが提供されていることが有利であることも証明されている。
【0018】
好適な実施態様の一つでは、2体の別々の工具受領手段が接続要素に提供されることができる。2体の独立した工具受領手段の提供のおかげで、家具装着側部での取り付けのため、それぞれを個別に利用できる。
【0019】
工具受領手段がスロットまたは十字スロットまたは六角ソケットまたは六角小葉ソケット(hexalobular socket)の形態であることが望ましい。
【0020】
特許保護は特に、ここで解説する実施態様の少なくとも一つによる、家具に家具装着具を固定させるための少なくとも一つの固定装置を有する家具用の家具装着具にも請求される。
【0021】
本発明の1実施態様では、固定装置本体部は、実質上完全に家具装着具内に提供されている。家具装着具内において固定装置本体部を提供することは、家具装着具を完全な組立体の形態で工業生産することを可能とし、家具装着具を家具に取り付ける際に追加的な組み立て作業を必要としないことを意味するものである。
【0022】
好適な実施態様の一つによれば、家具装着具を、可動な家具部分のための延出装置、駆動装置、引込装置または制動装置の形態で提供することができ、または家具フラップ扉またはレール延出ガイド装置または照明装置用の作動装置として提供できる。
【0023】
特許の保護は、解説する実施態様の少なくとも一つによる、そのような家具装着具とそのような固定装置とを有する家具にも請求されるものである。
【0024】
本発明のさらなる詳細と利点は、例示として図面に図示された実施例に関連する詳細な説明によって、以下でさらに詳説される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、家具フラップ扉を備えた家具の斜視図である。
図2図2は、家具フラップ扉が取り外されている家具の斜視図である。
図3図3は、家具装着具が取り付けられた家具の家具筐体の側壁の斜視図である。
図4図4は、接続要素が固定装置本体部に装着される前の、4体の固定装置を備えた家具装着具の斜視図である。
図5図5は、接続要素が取り付けられた状態の図4の斜視図である。
図6図6は、図5の詳細図である。
図7図7は、家具装着具の固定装置を装着した場合の断面を伴う斜視図である。
図8図8は、図7の詳細図である。
図9図9は、家具側壁へ取り付ける前の固定装置を備えた家具装着具の断面図である。
図10図10は、右側の側壁への取り付け後の図9の断面図である。
図11図11は、左側の側壁への取り付け後の家具装着具の固定装置の断面図である。
図12図12は、取り外された2体のアバットメント要素を備えた接続要素の斜視図である。
図13図13は、アバットメント要素が取り付けられた状態の接続要素の斜視図である。
図14図14は、制限的に可動であるアバットメント要素を備えた接続要素の斜視図である。
図15図15は、2体のアバットメント要素を備えた接続要素の1変形例の斜視図である。
図16図16は、2体のアバットメント要素を備えた接続要素の1変形例の平面図である。
図17図17は、2体のアバットメント要素を備えた接続要素の別の変形例の斜視図である。
図18図18は、2体のアバットメント要素を備えた接続要素の別の変形例の平面図である。
図19図19は、接続要素のための位置決め装置を備えた家具装着具と、その固定装置の断面図である。
図20図20は、家具装着具内の断面図で示された接続要素のための位置決め装置の1変形例を示している。
図21図21は、アバットメント要素を1体のみ備えた固定装置の1変形例の分解図である。
図22図22は、図21に示す固定装置の斜視断面図である。
図23図23は、左向きに配置された接続要素を備えた、図22のごとき断面図である。
図24図24は、家具筐体側壁への取り付け前の、家具装着具の固定装置の断面図である。
図25図25は、家具筐体側壁への取り付け後の、家具装着具の固定装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、家具110の斜視図である。この家具110は、家具筐体107と、家具フラップ扉105の形態の可動家具部分104とを有している。家具筐体107は、右側の家具筐体側部108と左側の家具筐体側部109とをさらに有している。
【0027】
図2に示すように、家具装着具101は、家具筐体側部108と109に固定装置100(ここでは図示せず)によって固定されている。この実施例では、家具装着具101は家具フラップ扉105(ここでは図示せず)(この点に関しては図1参照)のための作動装置106の形態である。
【0028】
別の家具装着具101は、反対の左側の家具筐体側部109(この図では見えない)に固定されている。左側と右側の家具筐体側部108と109のそれぞれに装着するため、家具装着具101のための2つの異なる設計形態を作成する必要がないよう、これら家具装着具101は対称であり、すなわち一つの同じ家具装着具101を、左側の家具筐体側部109と、右側の家具筐体側部108の両方に固定できる。この図、およびさらに続く図では、家具110の左側の家具筐体側壁109または右側の家具筐体側壁108に固定された一つの家具装着具101についてそれぞれ解説している。左側または右側の家具筐体側壁109と108のそれぞれに、固定されていない家具装着具101、例えば家具筐体107の底部または上部、あるいは家具筐体107内に配置された棚の一つ、あるいは(家具フラップ扉のような)可動家具部分、引き出しなど、家具110の別の側部に固定された家具装着具を想定することも当然可能であることは自明であろう。この点における唯一の重要な点は、家具装着具101自体が、家具110の側部にて、2つの異なる家具装着側部(例えば左側の家具装着側部102と右側の家具装着側部103)に配置させることが可能であるよう、家具装着具101が対称な形態のユニット体であることである(図10図11参照)。
【0029】
図3は、家具装着具101をその右側の家具装着側部103により右側の家具筐体側部108に上方領域にて固定した右側の家具筐体側部108を示している。この好適な実施例では、家具装着具101は、家具フラップ扉105(ここでは図示せず)のための作動装置106の形態である。
【0030】
家具装着具101は同様に、延出装置、駆動装置、引込装置(retraction device)、若しくは、例えば可動家具部分のための制動装置(damping device)の形態、又は、引出しレール延出ガイド若しくは照明装置であることもできる。
【0031】
家具装着具101の対称な形態のおかげで、この家具装着具101は同様に、その左側の家具装着側部102により左側の家具筐体側部109(ここでは図示せず)に固定されることもできる。
【0032】
図4図5は、4体の固定装置100を備えた家具装着具101の斜視図であり、図4は、接続要素1がそれらのアバットメント要素2と3で家具装着具101内にまだ装着されていない状態を示している。すなわち、接続要素1またはそのアバットメント要素2と3が取り付け前に紛失しないことが確実になるよう、このユニットを一体で運ばせることが意図されていることによる家具装着具101の運搬前の状態が示されている。これは、そのような家具装着具を家具に固定するために作業員が従来喜んで使用していた単純なネジの使用に勝る大きな利点も示している。
【0033】
この好適な実施例では、家具装着具101は作動装置106の形態であり、4体の固定装置100を有している。固定装置100は、家具装着具101内に提供されており、左側の家具装着側部102から右側の家具装着側部103に延びる、家具装着具101を通る貫通開口部21を有した固定装置本体部20を実質的に含んでいる。
【0034】
図6は、図5の詳細図であり、設置された状態である2体の固定装置100の前面を図示している。接続要素1が家具装着具101から脱落しないよう、2体のアバットメント要素2と3が、接続要素1の両端9と10に取り付けられている。この好適実施例では、これらは保持リング(retaining ring)を含む。この保持リングは、接続要素1のネジ溝内を制限的に可動である。換言すれば、これらはネジ溝に沿って移動できる。アバットメント要素2と3が自然に接続要素1から緩まないように、接続要素1には、端部9と10の領域に、接続要素に対して固定されており、アバットメント要素2と3を支受させることができる、アバットメント(当接部)11と12が提供されている。接続要素に対して固定されているアバットメントは好適には、接続要素の縦軸に対してほぼ垂直に配向されたアバットメント表面部を有している。これは軸方向でのポジティブロックの関係のごときアバットメント効果、または保持効果を提供する。アバットメント要素2または3のうちの一つが、接続要素に対して固定されているアバットメント11または12に支受されるとすぐに、それらは、家具装着具101を家具(ここでは図示せず)に固定させる接続要素頭部のように協調し、すなわちこの場合にはそこに押し付けられる。この実施例では、適切な工具が工具受領手段13に導入されることで、接続要素1がアバットメント要素2または3それぞれと共に回転できる。
【0035】
図7図8は、前述の図で示したものと同じ家具装着具101を再び示しており、今回は、固定装置100の一つに関する断面図である。図8の詳細図では、片側で家具装着具101の固定装置本体部20が家具装着具101内にほぼ完全に配置されており、接続要素1が固定装置本体部20内の貫通開口部21をほぼ完全に貫通して延びている状態が明示されている。この場合には、固定装置100は組立前構造ユニット50の形態であるので、例えば接続要素1またはアバットメント要素2と3のような固定装置100の部品は例えばその輸送中に家具装着具101から分離することはなく、したがって、これらの部品のうちの一つを紛失することを回避できる。
【0036】
図7図8では特に、家具装着具101が、左側の家具装着側部102または右側の家具装着側部103で固定装置100により家具110(ここでは図示せず)に選択的に固定できる状態が明示されており、固定装置101は接続要素1を有しており、接続要素1は、家具装着具101を家具110に固定するための2つの接続要素領域4と5を有しており、固定装置100は、貫通開口部21を備えた固定装置本体部20を有している。この構造では、接続要素1は貫通開口部21内に少なくとも部分的に配置されており、接続要素1は、固定装置本体部20に対して可動であり、接続要素1は、接続要素1に対して制限的に可動である2体のアバットメント要素2と3を有している。
【0037】
図9から図11は、どのようにして、家具装着具101が、一方では右側の家具筐体側部108(図10)に、他方では左側の家具筐体側部109(図11)に、固定装置100によって固定されるかを示している。
【0038】
このため、図9に示すように、家具装着具101は、接続要素1が右側の家具筐体側部108の穴部91上に配置されるよう、右側の家具筐体側部108に当接されている。その後に適切な工具が接続要素1の工具受領手段13に装着され、この好適な実施例では接続要素1が、接続要素1の接続要素領域5が右側の家具筐体側部108の穴部91内に配置されるまで、右側の家具筐体側部108の穴部91へネジ込まれる(図10)。家具装着具101と家具筐体側部108との間で適切な接続が提供されるよう、アバットメント要素2が、家具装着具101を右側の家具筐体側部108に押圧するネジ頭のように、それに対して固定されている接続要素1のアバットメント11と協調する。接続要素1を右側の家具筐体側部108にネジ留めする作業中に、第2のアバットメント要素11が接続要素1に沿ってその中央方向に移動し、右側の家具筐体側部108に支受される。
【0039】
この図では、取り付け状態において接続要素1が、一方側で固定装置本体部20の貫通開口部21内に、他方側で家具装着具101内に沈んだ状態で受領されている状況が明示されている。図10図11では、それぞれの接続要素領域4または5は、取り付け位置では、家具装着具101の左側の家具装着側部102と右側の家具装着側部103を越えて突き出ている。
【0040】
左側の家具装着側部109でも取り付け作業が実行できるよう、接続要素1は2体の別々の工具受領手段13と14を有している。一方側は、右側の家具筐体側部108への取り付けのためで(工具受領手段13)、他方側は、左側の家具筐体側部109への取り付けのためである(工具受領手段14)。
取り付け作業が実行された後、接続要素1はアバットメント要素2と3と共に、家具装着具101内に完全に閉じ込められ、家具装着具101のための美観と小型形態に貢献する。
【0041】
家具装着具101の左側の家具筐体側部109への固定は、図10との関連で解説した方法と同様に実行される。
【0042】
図12は、接続要素1と、(ここで明示されているように)保持リングの形態であるその2体のアバットメント要素2と3の分解図である。
【0043】
この構造では、接続要素1は2つの端部9と10を有しており、その領域には、接続要素に対して固定されたアバットメント11と12が提供される。当該アバットメント11と12により、2体のアバットメント要素2と3が接続要素1から外れるのを防止することができる。アバットメント要素2と3がこれらのアバットメント11と12に配置されているとき、アバットメント要素2と3は接続要素の頭部であるようにアバットメント11と12と協調する(図13参照)。
【0044】
この好適な実施例では、工具受領手段13と14は十字スロット受領手段の形態であるが、必ずしもこの形態である必要はないことは理解できよう。工具受領手段13と14は、それぞれがスロット、六角ソケットまたは六角小葉ソケットまたはその他の任意の考えられる工具受領手段でよいことは同様に想定できる。
【0045】
図14に示すように、アバットメント要素2と3はそれぞれネジ溝7と8内で可動に取り付けられており、接続要素に対して固定されているアバットメント11と12に当接するまで、ネジ溝7と8内を制限的に可動である。
【0046】
この実施例では、ネジ溝7と8には連続したネジ溝が関与する。ネジ溝7と8自体は、家具装着具101(図示せず)を家具に固定するために接続要素領域4と5のみに必要とされるものであり、このことは必ずしも必要ではないであろう。この実施例では、2つの接続要素領域4と5は、接続要素1にて互いに対称な形態をとっており、アバットメント要素2と3は接続要素1に着脱可能に固定できる。これは、製造技術の点で利点を提供するが、実際のところ、必ずしもそうである必要はないであろう。
【0047】
図13図14に示されているように、2体のアバットメント要素2と3は、接続要素1の縦軸6に沿って制限的に可動である。この場合には、2体のアバットメント要素2と3は、接続要素1から放射状に突き出ている。
【0048】
ここで解説する実施例では、接続要素1は、接続要素1を家具筐体側部108または109にねじ込むため、ネジ溝7と8を常に有していた。そのことは必ずしも必要ではないことは理解できよう。よって、そのような接続要素がねじ込みされず、その代わりにこれらがプレス装着(press fit)の形態で家具筐体側部に接続される場合も多いことは、家具の組立においては既に知られている。
【0049】
この場合には、接続要素1は、図15から図18に示す2つの実施例の場合のように、ネジ溝のない形態でよい。
【0050】
図15図16では、接続要素1はその縦軸6に沿った溝部93を有するピンの形態である。アバットメント要素2または3のノーズ部が、接続要素1のこの溝部93内に突き入る。アバットメント要素2または3は、溝部93の端部にてアバットメント11と12に対し当接するまで、溝部93に沿ってスライドできるか、または押されることができる。
【0051】
この状況は図17図18の実施例でも類似しており、接続要素1の端部9と10は、接続要素1の中央領域での直径よりも大きな直径である。2体のアバットメント要素2と3は、大きい直径の2つの端部9と10との間に配置されており、接続要素1の端部9と10の領域においてアバットメント11と12との間で自由に移動できる。この実施例も溝部93を有している。しかしながらその溝部93は単にオプションであり、その溝部93のない構造も想定できる。
【0052】
図15図16の実施例と図17図18の実施例のいずれも、接続要素1を家具筐体側部108または109(ここでは図示せず)に接続するためのネジ溝を有していない。家具筐体側部への接続は好適にはプレス装着によって実行される。このためには、接続要素1は家具筐体側部にハンマーまたは同様の適切な工具で打ち込むことができるので、接続要素1が工具受領手段を有する必要もない。しかしながら、この実施例にネジ溝及び/又は工具受領手段を提供してもよい。
【0053】
このように、全ての実施例で、接続要素領域4と5を家具110(ここでは図示せず)に強制ロック及び/又はポジティブロック関係で接続できる。
【0054】
それ以外では、図15から図18における2つの実施例では、図4から図14の実施例に関する前述の説明が対応して当てはまる。
【0055】
接続要素1とそのアバットメント要素2と3が、固定装置本体部20内の貫通開口部21に緩く配置されないよう、図19図20の実施例に示すように、位置決め装置60が提供されている。
【0056】
図19の実施例では、位置決め装置60は接続要素1のネジ溝7または8に係合することで、接続要素1が貫通開口部21をひとりでに移動できないことを確実にしている。
【0057】
図20は、接続要素1に過度の力(radical force)を及ぼすバネ装置61を備える位置決め装置60という別の実施例を示すものであり、これも接続要素1が貫通開口部21を移動することを防止する。
【0058】
図20の実施例では、接続要素1はネジ溝7と8もそれぞれ有している。ただ、位置決め装置60のバネ装置61が接続要素1の滑らかな軸も押圧し、その移動を防止するであろうから、このようなネジ溝は位置決め装置60の当該実施例には、必ずしも必要というものではないであろう。
【0059】
図19図20の実施例では、固定装置100の2体のアバットメント要素2と3が、一方側で接続要素に対して固定されているアバットメント11と12の一方と、他方側でアバットメントとして作用している家具装着側部102と103との間でそれぞれ制限的に可動である状態がさらに図示されている。
【0060】
図4から図20に示す実施例では、家具装着具101を固定装置100によって異なる家具壁に固定するよう、それぞれが2体のアバットメント要素2と3を利用している。
【0061】
図21から図25の実施例では、接続要素1に対して制限的に可動であり、家具装着具101を異なる家具筐体側壁に固定させる、単体のアバットメント要素2だけを有する固定装置100を利用している。
【0062】
図21は、家具装着具101の固定装置100の分解図である。この場合には、前述の実施例とは異なり、固定装置100は単体のアバットメント要素2だけを有しており、このアバットメント要素2は接続要素1に着脱可能に固定されることができる。
接続要素1の接続要素領域4と5は、強制ロック及び/又はポジティブロック関係で家具(ここでは図示せず)に前述同様に固定できる。この実施例でも、2体の接続要素領域4と5は接続要素1上で相互に対称な形態である。
【0063】
この実施例では、接続要素領域4と5はネジ溝を有していない。しかしながら、接続要素領域4と5が、接続要素1を家具にネジ留めさせるネジ溝を有していてもよい。
【0064】
この図では、アバットメント要素2は前述同様に保持リングの形態である。接続要素1は、アバットメント要素2のため、接続要素に対して固定されている2体のアバットメント11と12を有している。
【0065】
アバットメント要素2は、これらアバットメント11と12との間を制限的に可動であり、しかもアバットメント要素2は家具装着側部102と103との間も制限的に可動であり、アバットメントとして作用する。このため、家具装着側部102の内部には、取り付け状態でそこにアバットメント要素2を受領する凹部が提供されている(図22から図25参照)。
【0066】
接続要素に対して固定されているアバットメント11と12は、接続要素1の2つの端部9と10の領域に提供されており、アバットメント要素2は取り付け手順において、これらアバットメント11と12に当接できる。
【0067】
この実施例では、接続要素1は、この実施例では十字スロットの形態の2つの別々の工具受領手段13と14を有している。これは接続要素1が、接続要素1を家具筐体側壁に接続するためにネジ溝を有する場合に特に有利である。また、この実施例のように、接続要素1がネジ溝を有しておらず、プレス装着形態によって家具筐体側壁に接続されることもできる。
【0068】
図22は、家具装着具101の断面とその固定装置100を示す斜視図である。
【0069】
この状態で、固定装置100は家具装着具101内に完全に受領されており、家具装着具の側壁103と102それぞれを越えて突き出てはいない。家具装着具101の内部は、アバットメント要素2が配置される空洞(cavity)を有している。
【0070】
家具装着具101を左側に取り付ける時、アバットメント要素2が左側の家具装着内側アバットメント22に当接し、一方、右側の側部への取り付け時には、アバットメント要素2は右側の家具装着内側アバットメント23に当接するであろう。
【0071】
この図では、接続要素1と固定装置本体部20は共同で組立前構造ユニット50の形態をなすことが明示されている。接続要素1が、固定装置本体部20の貫通開口部21を実質的に貫通して延びている状態も明示されている。この場合には、アバットメント要素2は2本の溝部93内で可動に取り付けられている。溝部93が存在せず、その代わりに、その上をアバットメント要素2が移動できるネジ溝が接続要素1に提供されている場合も当然に可能であろう。
【0072】
図23は、接続要素1が、家具装着具101の固定装置本体部20の貫通開口部21を通って移動した後の図22の家具装着具101を示している。この場合には、アバットメント要素2が家具装着具101の空洞内で停止したままであるため、アバットメント要素2は接続要素1に対して制限的に移動しており、一方で接続要素1は、貫通開口部21から部分的に抜け出している。
【0073】
図24は、接続要素1が左側の家具筐体側壁109の穴部91の前方に配置されるよう、家具装着具101がどのようにして左側の家具筐体側壁109に配置されるかを示す側面図である。続いて、図25に示すように、接続要素1は左側の家具筐体側壁109の穴部91にネジ込まれており、さらに詳細には、そこに対して固定されている接続要素1のアバットメント12が、アバットメント要素2に接するまでネジ込まれており、よって家具装着具101が左側の家具筐体側壁109に押し付けられて、そこで固定される。
【0074】
図24図25に明示するように、アバットメント要素2は接続要素1から放射状に突き出ており、接続要素1は縦軸6を有しており、アバットメント要素2は接続要素1の縦軸6に沿って制限的に可動である。
【0075】
家具装着具101が取り付けられた後には、接続要素1は、一方側で固定装置本体部20の貫通開口部21内に、他方側で家具110(この場合には左側の家具筐体側壁109)内に沈んだ状態で受領される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25