(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に示すように、従来のPCU2では、プロペラブレード3のピッチは、プロペラブレード3の基部7に連結されてプロペラハブ6から前方に突出する液圧シリンダ4及びピストン5に対する油圧を変更することによって変化する。示したプロペラハブ6などの従来のハブの設計では、プロペラブレード3の基部7は、クロスヘッド8の近くに延在し、各プロペラブレード3は、プロペラブレード3の中のオフセットピン9を用いてピッチ付けされる(gets pitched)。より具体的には、オフセットピン9は、クロスヘッド8の一部の内部に保持される。動作中に、ピストン5の軸方向移動は、クロスヘッド8とオフセットピン9の協働を介して、回転移動に変換される。より具体的には、クロスヘッド8が軸方向に並進することによって、プロペラブレード3の中のオフセットピン9が移動し、その結果、ブレードが回転してプロペラブレード3のピッチ角が変わる。
【0009】
図1の上述したクロスヘッドやオフセットピンなどの従来のピッチ変化機構は、プロペラブレードのピンがクロスヘッドに到達できず、また、ピッチを変えるためのオフセットを十分提供できないので、スパイダハブの中で使用することができない。より具体的には、スパイダアームは、半径方向の高さがかなり高く、クロスヘッドを収容するハブの一部から、プロペラブレードの取付けができる半径方向端部まで延在する。その結果、ブレード基部は、クロスヘッドから半径方向に離れてしまい、したがって、通常のオフセットピンは、プロペラブレード基部とクロスヘッドの間の半径方向のギャップが大き過ぎてピンが跨って機能することができないので、使用することができない。本発明の実施形態は、プロペラ組立体と、スパイダハブとピッチ制御組立体を有するプロペラ組立体用のピッチ制御組立体に関しており、結果として複雑さが低減されて低価格で軽量の解決策がもたらされる。
【0010】
図2は、ハブ14と1セットのアーム16とを有するスパイダハブ組立体12を含む、プロペラ組立体10を示す。ハブ14は、機関(図示せず)に動作可能に連結することができ、プロペラ軸18の周りを回転することができる(
図3)。示したように、上記セットのアーム16は、ハブ14の周りの周方向に離間され、上記セットのアーム16は、ハブ14から半径方向に突出する。本明細書中で使用される「1セット」は、ただ1つを含む任意の数を含む場合があると理解されよう。
【0011】
1セットのプロペラブレード20が、プロペラ組立体10に含まれている。プロペラブレード20は、対応するブレード基部22と、対向する先端24を含む場合がある。プロペラブレード20は通常、捩じった翼形状に形成され、それに限定されないが金属又は複合材料を含めた任意の適切な材料から構成することができる。プロペラブレード20は、価格とメンテナンスの利点を提供するためにライン取り外し式(line−removable)にすることができる。用語「ライン取り外し式」は、プロペラブレード20が現場で取り外しと交換ができるということを指す。ライン取り外し式のプロペラブレード20は、スパイダハブ組立体12に実装することができ、保持されねばならないが、その一方で相対的な回転運動が可能である。航空機のプロペラ組立体の一例を示したが、プロペラやタービンや1つ又は複数のブレードを有するファンが適合される任意の適切な構造又は航空機は、本明細書中に説明した本発明の実施形態を活用することができると理解されよう。
【0012】
ハブ14は、上記セットのプロペラブレード20を固定するための手段を提供し、スパイダハブ組立体12は、任意の数のプロペラブレード20を固定することができる。より具体的には、プロペラブレード20のブレード基部22は、スパイダハブ組立体12の対応するアーム16に回転可能に実装することができる。示した例では、クランプ26は、ブレード基部22をその対応するアーム16に実装してアーム16とブレード基部22の間の相対的な回転運動を可能にするために、活用される。
【0013】
図3は、プロペラ組立体10の斜視図であり、ハブ14が主本体部分30と裏当てプレート32を含むことをより明瞭に示している。主本体部分30は、ピッチ制御組立体40(
図4)の一部を収容できる凹部34(
図5)を画定できる。裏当てプレート32は、ファスナ36を介して含めて任意の適切な方法で主本体部分30に実装することができる。裏当てプレート32は、スパイダハブ組立体12を機関に実装するための実装面を提供し、機関からハブ14にトルクを伝達する構造部材として機能する。裏当てプレート32は、スパイダハブ組立体12を機関に連結するために適した任意の特徴を含むことができる。
【0014】
図4は、ピッチ制御組立体40と、上記セットのプロペラブレード20とピッチ制御組立体40との関係をより明瞭に示すために、想像線で示したスパイダハブ組立体12を備えたプロペラ組立体10の一部を示す。クロスヘッド42と、1セットのトルク管44と、1セットの運動変換機46とが、ピッチ制御組立体40の中に含まれており、ハブ14の内部に位置する。液圧シリンダ50は、主本体部分30から軸方向に又は前方に突出し、ピッチ制御組立体40のクロスヘッド42に動作可能に連結されるピストン52(
図5)を摺動可能に支持する。
【0015】
図5は、スパイダハブ組立体12を含んでその中の単一のプロペラブレード20の一部のみを示しているプロペラ組立体10の一部を示す。複数の周方向に離間したプロペラブレード20は、
図2に示したように、スパイダハブ組立体12の内部に支持することができるが、残りの図面では、簡潔かつ明確にする目的のため、1つのプロペラブレード20の一部だけを示している。より容易に理解できるように、ブレード基部22は、クランプ26を介してアーム16の半径方向外側寄り部分に実装される。ブレード基部22は、それに限定されないが、示したような外側スリーブ23や、プロペラブレード20の一体部分を含むことができる。
【0016】
トルク管44は、第1の端部60と、対向する第2の端部62を有する。トルク管44の一部は、アーム16の長さに延在し、第1の端部60は、半径方向外側寄りに突出し、第2の端部62は、半径方向内側に突出してハブ14の凹部34の中に延在する。第1の端部60は、ブレード基部22に動作可能に連結するために構成され、これにより、ブレード基部22は、トルク管44と共に回転する。これは、それに限定されないが、トルク管44の第1の端部60がブレード基部22に固定式に実装されることを含めて任意の適切な方法で達成することができる。示した例では、トルク管44の第1の端部60は、1セットのピン64を用いてブレード基部22にキー結合(keyed)される。
【0017】
同じく、より明瞭に
図5に示されているのは、クロスヘッド42が凹部34の内部に位置してハブ14に対して軸方向に移動可能なことである。運動変換機46は、クロスヘッド42をトルク管44に動作可能に連結し、クロスヘッド42の軸方向移動をトルク管44の回転移動に変換するために構成される。示した例では、非限定的な例として、リンク70とニードル軸受72が、運動変換機46に含まれている。リンク70は、第2の端部62とトルク管44に固定式に実装される。ニードル軸受72は、リンク70をクロスヘッド42に旋回可能に連結する。
【0018】
クロスヘッドフランジ74は、ニードル軸受72をクロスヘッド42に連結するために、運動変換機46の中に含めることもできる。クロスヘッドフランジ74は、離間レール80間にチャネル82を画定するために、クロスヘッド42上に設けた一対の離間レール80を含むように示している。クロスヘッドフランジ74は、クロスヘッド42と一体の部分とすることができ、或いは、クロスヘッドフランジ74は、クロスヘッド42に実装した別個の部片とすることができる。ニードル軸受72は、チャネル82の内部に位置する軸受84を含む。軸受84は、リンク70に回転可能に実装することができる。
【0019】
さらに、ブッシュ90が、スパイダハブ組立体12の内部に含まれているように示されている。より具体的には、ブッシュ90は、アーム16の中に位置するように示している。ブッシュ90は、トルク管44の第2の端部62を支持し、スパイダハブ組立体12とトルク管44の間のフレッチングを緩和ないし排除するために構成される。ブッシュ90は、それに限定されないが、真鍮を含めて任意の適切な材料から形成することができる。
【0020】
動作中に、機関は、回転運動をスパイダハブ組立体12に提供し、プロペラブレード20は、回転運動を推進力に変換する。ピッチ制御組立体40は、プロペラブレード20を回転させることによってプロペラブレード20のブレードピッチを変更して、矢印92で示すようにプロペラブレード20の迎角を転回するために、使用することができる。より具体的には、液圧シリンダ50に対する油圧は、変更することができ、これにより、ピストン52は、
図6の矢印94で示すように軸方向に移動する。ピストン52の軸方向移動は次には、それに実装されているクロスヘッド42の軸方向移動を引き起こす。運動変換機46は、クロスヘッド42の軸方向移動をトルク管44の回転移動に変換する。軸方向移動を回転移動に変換することは、リンク70を旋回させることを含み、リンク70は、クロスヘッド42に回転可能に連結され、他端がトルク管44に固定式に実装される。より具体的には、示した例では、クロスヘッド42は、軸方向に移動し、軸受84は、チャネル82によって保持される。リンク70は、トルク管44の第2の端部62に固定式に実装されるので、リンク70は、トルク管44の周りを旋回し、これにより、軸受84が軸方向に移動するときは、リンク70は、クロスヘッド42の中に保持される軸受84に対して回転可能に移動する。それは次には、トルク管44とブレード基部22の回転運動を引き起こす。
【0021】
こういったように、本発明の実施形態は、トルク生成のためにハブ14の内部のクロスヘッド42を軸方向に移動させることとトルク管44を用いてトルクをプロペラブレード20に伝達することとを介してスパイダハブ組立体12の中のプロペラブレード20のピッチを調整する方法を含むことができる。トルク管44を用いてトルクをプロペラブレード20に伝達することは、歯車装置(gear)なしで行われる。したがって、プロペラブレード20のピッチ角は、クロスヘッド42を軸方向に移動させ、トルク管44を回転させ、プロペラブレード20の対応する回転をもたらすことによって、調整することができる。
図6は、
図5と比較してピッチが変化したプロペラブレード20を示す。上記セットのプロペラブレード20の各々は、運動変換機46とトルク管44を介して、クロスヘッド42に動作可能に連結することができ、ピストン52の軸方向移動に応じたプロペラブレード20の同時回転が提供される、と理解されよう。
【0022】
上記の実施形態は、スパイダハブとピッチ変化組立体を備えたプロペラ組立体を含めて、複雑さを減らし、価格を下げ、重量を軽くする、様々な利益を提供する。上述した実施形態は、スパイダハブプロペラシステムのための従来のピッチ変化機構と比較して良好な設計的解決策を提供する。また、上述した実施形態は、容易な組み立てと修復を提供する。さらに、上述した実施形態は、プロペラブレードをライン交換式(line replaceable)にすることができる。
【0023】
ここに記載した説明は、例を使用して、ベストモードを含めて本発明を開示していると共に、任意のデバイス又はシステムを製作及び使用することと任意の組み入れた方法を実行することとを含めて任意の当業者が本発明を実施できるようにもしている。特許性を有する本発明の範囲は、特許請求の範囲によって画定され、当業者の想到する他の例を含むことができる。そういった他の例は、特許請求の範囲の文字通りの用語とは異ならない構造的構成要素がある場合に、或いは、特許請求の範囲の文字通りの用語に対する差異の実体がないような等価な構造的構成要素が含まれる場合に、特許請求の範囲の範囲内にあるべきことを意図している。
【0024】
最後に、代表的な実施態様を以下に示す。
[実施態様1]
ハブ(14)と、前記ハブ(14)の周りの周方向に離間されかつ前記ハブ(14)から半径方向に突出する1セットのアーム(16)と、を含み、前記セットのアーム(16)が1セットのブレード(20)を受容するために構成されて、ブレード(20)のブレード基部(22)が、前記セットのアーム(16)に含まれるアーム(16)の中に回転式に実装可能である、スパイダハブ(12)と、
前記ハブ(14)の内部に位置しかつ前記ハブ(14)に対して軸方向に移動可能であるクロスヘッド(42)と、
前記アーム(16)の中に位置しかつ前記ハブ(14)の中に延在し、対向する第1及び第2の端部(60、62)を有し、前記第1の端部(60)が前記ブレード基部(22)に装着されるように構成された、トルク管(44)と、
前記クロスヘッド(42)を前記トルク管(44)に連結しかつ前記クロスヘッド(42)の軸方向移動を前記トルク管(44)の回転移動に変換する運動変換機(46)と、を含み、
前記ブレード(20)のピッチ角は、前記クロスヘッド(42)を軸方向に移動させ、前記トルク管(44)を回転させ、前記ブレード(20)の対応する回転をもたらすことによって、調整することができる、プロペラ組立体(10)。
[実施態様2]
前記運動変換機(46)は、前記トルク管(44)に固定式に実装されたリンク(70)と、前記リンク(70)を前記クロスヘッド(42)に旋回可能に連結するニードル軸受(72)と、を含む、実施態様1記載のプロペラ組立体(10)。
[実施態様3]
前記運動変換機(46)は、前記ニードル軸受(72)を前記クロスヘッド(42)に連結するクロスヘッドフランジ(74)をさらに含む、実施態様2記載のプロペラ組立体(10)。
[実施態様4]
前記クロスヘッドフランジ(74)は、前記クロスヘッド(42)上に設けた一対の離間レール(80)を含み、前記対の離間レール(80)間にチャネル(82)を画定し、前記ニードル軸受(72)は、前記チャネル(82)の内部に保持された軸受(84)を含む、実施態様3記載のプロペラ組立体(10)。
[実施態様5]
前記軸受(84)は、前記リンク(70)に回転可能に実装される、実施態様4記載のプロペラ組立体(10)。
[実施態様6]
前記リンク(70)は、前記トルク管(44)の前記第2の端部(62)に固定式に実装される、実施態様5記載のプロペラ組立体(10)。
[実施態様7]
前記トルク管(44)の前記第1の端部(60)は、前記ブレード基部(22)に固定式に実装される、実施態様6記載のプロペラ組立体(10)。
[実施態様8]
前記トルク管(44)の前記第1の端部(60)は、前記ブレード基部(22)にキー結合される、実施態様7記載のプロペラ組立体(10)。
[実施態様9]
前記トルク管(44)の前記第2の端部(62)を支持するブッシュ(90)をさらに含む、実施態様7記載のプロペラ組立体(10)。
[実施態様10]
前記ブッシュ(90)は、前記セットのアーム(16)のうちの1つの内部に位置する、実施態様9記載のプロペラ組立体(10)。
[実施態様11]
1セットのアーム(16)を備えたハブ(14)と、前記セットのアーム(16)に回転可能に実装された1セットのブレード(20)と、を有するスパイダハブ(12)を含むプロペラ用のピッチ制御組立体(40)であって、
前記ハブ(14)に対して軸方向に移動するために構成されたクロスヘッド(42)と、
対向する第1及び第2の端部(60、62)を有し、前記第1の端部(60)が前記セットのブレード(20)に含まれるブレード(20)に装着されるように構成された、トルク管(44)と、
前記クロスヘッド(42)を前記トルク管(44)に連結しかつ前記クロスヘッド(42)の軸方向移動を前記トルク管(44)の回転移動に変換する運動変換機(46)と、を含み、
前記ブレード(20)のピッチ角は、前記クロスヘッド(42)を軸方向に移動させ、前記トルク管(44)を回転させ、前記ブレード(20)の対応する回転をもたらすことによって、調整される、ピッチ制御組立体(40)。
[実施態様12]
前記運動変換機(46)は、前記トルク管(44)に固定式に実装されたリンク(70)と、前記リンク(70)を前記クロスヘッド(42)に旋回可能に連結するニードル軸受(72)と、を含む、実施態様11記載のピッチ制御組立体(40)。
[実施態様13]
前記運動変換機(46)は、前記ニードル軸受(72)を前記クロスヘッド(42)に連結するクロスヘッドフランジ(74)をさらに含む、実施態様12記載のピッチ制御組立体(40)。
[実施態様14]
前記クロスヘッドフランジ(74)は、前記クロスヘッド(42)上に設けた一対の離間レール(80)を含み、前記対の離間レール(80)間にチャネル(82)を画定し、前記ニードル軸受(72)は、前記チャネル(82)の内部に保持された軸受(84)を含む、実施態様13記載のピッチ制御組立体(40)。
[実施態様15]
前記軸受(84)は、前記リンク(70)に回転可能に実装される、実施態様14記載のピッチ制御組立体(40)。
[実施態様16]
前記リンク(70)は、前記トルク管(44)の前記第2の端部(62)に固定式に実装される、実施態様15記載のピッチ制御組立体(40)。
[実施態様17]
1セットのアーム(16)を備えたハブ(14)と、前記セットのアーム(16)に回転可能に実装された1セットのブレード(20)と、を有するスパイダハブ組立体(12)の中のブレード(20)のピッチを調整する方法であって、
前記ハブ(14)の内部で軸方向にクロスヘッド(42)を移動させて、トルクを生成することと、
トルク管(44)を用いて前記ブレード(20)に前記トルクを伝達することと、
を含む方法。
[実施態様18]
前記トルクを生成することは、前記クロスヘッド(42)の軸方向移動を回転移動に変換することを含む、実施態様17記載の方法。
[実施態様19]
前記軸方向移動を回転移動に変換することは、前記クロスヘッド(42)に回転可能に連結された一端と、前記トルク管(44)に固定式に実装された他端と、を有するリンク(70)を旋回させることを含む、実施態様18記載の方法。
[実施態様20]
前記トルク管(44)を用いて前記ブレード(20)に前記トルクを前記伝達することは、歯車装置なしで行われる、実施態様17記載の方法。