特許第6285505号(P6285505)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6285505
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】永久磁石モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/22 20060101AFI20180215BHJP
   H02K 1/27 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   H02K1/22 A
   H02K1/27 501M
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-139592(P2016-139592)
(22)【出願日】2016年7月14日
(65)【公開番号】特開2018-11456(P2018-11456A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2016年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】514150181
【氏名又は名称】大銀微系統股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HIWIN MIKROSYSTEM CORP.
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】郭振南
(72)【発明者】
【氏名】鄭立巍
(72)【発明者】
【氏名】謝明宏
【審査官】 土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−278591(JP,A)
【文献】 特開2016−063650(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/153917(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/22
H02K 1/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状となっている固定子と、
円形となっており同軸に前記固定子に位置する回転子と、
前記回転子のリング状外周面と前記固定子のリング状内周面との間に介在するエアギャップと、
前記回転子に設けられて、前記回転子の曲率中心を原点として、複数の等角度の磁極エリアを形成する複数の磁石と、
それぞれ、各前記磁極エリアにおいて、前記回転子周側と、対応する磁石との間に介在する磁気アイランドに設けられる複数の孔とを備える永久磁石モータにおいて、
各前記磁気アイランドに位置する孔の数は、それぞれ、中間孔と前記中間孔の両側に位置する二つのサイド孔との三つの孔であり、以下の条件:
10°≦θ≦(360°/P)−27°、
0.5g ≦ r ≦3g、
0.5g ≦R ≦ 3g、
S(2/3)≦ d ≦S−(r+1)、及び
S(2/3)≦ D ≦S−(+1)
(θは前記二つのサイド孔の間に前記回転子の曲率中心を原点とする広がり角であり、
Pはこれらの磁極エリアの数であり、
rは各前記サイド孔それぞれの半径であり、
Rは前記中間孔の半径であり、
gは前記エアギャップのギャップ幅であり、
Sは前記回転子の半径であり、
dは各前記サイド孔の曲率中心と前記回転子の曲率中心との間の深さの距離であり、及び
Dは前記中間孔の曲率中心と前記回転子の曲率中心との間の深さの距離であり、
S、d、D、r、1の単位がmmである。)を満足することを特徴とする、永久磁石モータ。
【請求項2】
これらの孔はそれぞれ円形孔であることを特徴とする、請求項1に記載の永久磁石モータ。
【請求項3】
各前記磁極エリアにおける磁石はそれぞれ対となり、V字状となっており、収束端が前記回転子曲率中心に向けて前記回転子に内蔵されることを特徴とする、請求項1に記載の永久磁石モータ。
【請求項4】
各前記磁気アイランドに設けられる孔は、対をなす磁石のV字状の収束端内に位置する底孔をさらに備えることを特徴とする、請求項3に記載の永久磁石モータ。
【請求項5】
Pの数が8であることを特徴とする、請求項1に記載の永久磁石モータ。
【請求項6】
前記中間孔の半径は各前記サイド孔の半径よりも大きいものであることを特徴とする、請求項5に記載の永久磁石モータ。
【請求項7】
rが0.9mmであり、且つ、Rが1.3mmであることを特徴とする、請求項5に記載の永久磁石モータ。
【請求項8】
Pの数が6であることを特徴とする、請求項1に記載の永久磁石モータ。
【請求項9】
前記中間孔の半径は各前記サイド孔の半径よりも小さいものであることを特徴とする、請求項8に記載の永久磁石モータ。
【請求項10】
rが1.2mmであり、且つ、Rが0.5mmであることを特徴とする、請求項8に記載の永久磁石モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は永久磁石モータに関し、特にコギングを低減する永久磁石モータに関する。
【背景技術】
【0002】
モータのコギングは性能に影響するだけでなく、振動と騒音も発生するため、モータの適用上の制限と不便につながるものである。したがって、従来技術はいずれもモータのコギングトルク(Cogging Torque)低減の研究と開発に取り組んでおり、そのうえ、例えば、磁石の形状、サイズ、極ピッチ、磁化手段、磁石の広がり角度、磁極片部の深さ、スロット数と極数の組合せ及び補助溝等の多くの技術手段を介して、コギング低減を図る従来技術が開示されている。
【0003】
具体的には、図1に示す従来技術では、回転子(1)の対をなす磁石(2)の広がり角度を変えることによりコギングの低減効果以外の効果を達成する内蔵型の構造であり、その対をなす磁石(2)がV字状に回転子(1)に埋設され、さらに図2に示すように、各極の磁気アイランド(3)に孔(4)構造をさらに設けることで、孔(4)を介して磁力線の進行領域を制限し、磁力線をより一層集中させ、固定子巻線との間により効果的な鎖交を行い、コギングトルクを低減させる効果を達成することができる。
【0004】
これらの従来技術では、ホール構造により回転子コアの磁束分布を変更することが開示されているが、ホールの形状、数量、サイズ及び位置等の詳細な技術内容に関して、コギングトルク低減による効果について、最適化された技術内容が不足しており、その欠点はさらに改善する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
したがって、本発明の主な目的は、モータ回転子の磁気アイランドに設けられる孔が形状、孔径及び空間態様の配置の面で最適化されることにより、コギングトルクと、逆起電力全高調波歪みと、トルクリップルとの低減を達成し、さらに制御の精度を向上し振動及び騒音を低減する永久磁石モータを提供する。
【0006】
よって、上記目的を達成するために、本発明に係る永久磁石モータは、各磁気アイランドに、それぞれ、中間孔と前記中間孔の両側に位置する二つのサイド孔との三つの孔が設けられており、前記中間孔と各前記サイド孔がそれぞれ以下の条件を満足させ、最も好ましいコギング低減効果が達成されるものである。
【0007】
10°≦θ≦(360°/P)−27°、
0.5g ≦ r ≦3g、
0.5g ≦R ≦ 3g、
S(2/3)≦ d ≦S−(r+1)、及び
S(2/3)≦ D ≦S−(r+1)。
【0008】
また、
θは各サイド孔間に回転子の曲率中心を原点とする広がり角であり、
Pはモータ回転子の極数であり、
rは各サイド孔それぞれの半径であり、
Rは前記中間孔の半径であり、
gはモータ回転子と固定子との間のエアギャップのギャップ幅であり、
Sは前記回転子の半径であり、
dは各サイド孔の曲率中心と回転子の曲率中心との間の深さの距離であり、
Dは中間孔の曲率中心と回転子の曲率中心との間の深さの距離である。
【0009】
また、各前記孔は円形孔である。
【0010】
また、前記モータの極数は複数の対をなす磁石がそれぞれ前記回転子に設けられて構成されるものである。
【0011】
また、各前記対をなす磁石がV字状にそれぞれ前記回転子に内蔵される。
【0012】
そして、さらに各極の磁気アイランドに設けられるこれらの孔の数を四つまで増やし、増えた底孔が対をなす磁石のV字状の収束端内に位置するようにする。
【0013】
本発明の実施例において、Pの数が8である場合、各前記サイド孔の孔径が前記中間孔の孔径よりも小さくなり、各前記孔とモータ回転子の曲率中心との間及び各前記孔同士間の相対的位置を特定する。また、θが12°、rが0.9mm、Rが1.3mmであり、
dがS(2/3)であり、及び、
DがS(2/3)である場合、相対的に最も好ましいコギングトルク低減効果が得られる。
【0014】
本発明の別の実施例において、Pの数が6である場合、各前記サイド孔の孔径が前記中間孔の孔径よりも大きくなり、また、θが12°、rが1.2mm、Rが0.5mm、及びdとDがともに39mmである場合、相対的に最も好ましいコギングトルク低減効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】は従来の永久磁石モータの平面模式図である。
図2】は別の従来の永久磁石モータの平面模式図である。
図3】は本発明に係る永久磁石モータの実施例の平面図である。
図4】は本発明に係る永久磁石モータの実施例における一つの磁極エリアの平面図である。
図5】は本発明に係る永久磁石モータの実施例の広がり角とコギングトルク変化との関係図である。
図6】は本発明に係る永久磁石モータの実施例の孔半径とコギングトルク変化との関係図であり、また、前記中間孔と各前記サイド孔の半径は同様である。
図7】は本発明に係る永久磁石モータの実施例の中間孔半径とコギングトルク変化との関係図である。
図8】は本発明に係る永久磁石モータの実施例の深さの距離とコギングトルク変化との関係図である。
図9】は本発明に係る永久磁石モータの実施例の孔の数とコギングトルク変化との関係図である。
図10】は本発明に係る永久磁石モータの実施例と図1に示す永久磁石モータのコギングトルクの比較図である。
図11】は本発明に係る永久磁石モータの実施例と図1に示す永久磁石モータの逆起電力高調波の比較図である。
図12】は本発明に係る永久磁石モータの実施例と図1に示す永久磁石モータのトルクリップルの比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施例を挙げて、図式を参照しながら、順序で以下のように説明する。
【0017】
まず、図3図4を参照されたい。本発明の実施例に係る永久磁石モータ(10)は主に固定子(20)と、回転子(30)と、エアギャップ(40)と、複数の磁石(50)と、複数の孔(60)とを備える。
【0018】
固定子(20)は適切な肉厚を有する円管状体である。
【0019】
回転子(30)は円柱状に同軸に固定子(20)に貫通される。
【0020】
エアギャップ(40)は環状をなしており回転子(30)のリング状外周面と固定子(20)のリング状内周面との間に介在し、それにより、固定子(20)のリング状内周面と回転子(30)のリング状外周面を相互に離間させ、直接の接触がないようにする。
【0021】
各磁石(50)は対になってV字状にそれぞれ回転子(30)に埋没され、V字状の収束端が回転子(30)の円心に向けて、回転子(30)の円心を原点として、各対をなす磁石が回転子(30)の周側に、45度角をなす8つの磁極エリア(70)を形成するようにする。
【0022】
各孔(60)は、それぞれ、各磁極エリア(70)において回転子(30)の周側と対応する対をなす磁石(50)との間に介在する磁気アイランド(80)に設けられ、孔軸が回転子(30)のコラムシャフトと平行するようにする。
【0023】
さらには、本実施例がそれによりモータのコギングトルクの低減を達成する主な技術特徴は、それぞれ各磁気アイランド(80)に設けられる孔(60)の数が、それぞれ、対応する磁極エリア(70)の中間位置に位置し円形となる中間孔(61)と、二つの中間孔(61)の両側に位置し円形となるサイド孔(62)との少なくとも三つの孔であり、同時に、より好ましいコギング低減効果を達成するために、前記中間孔(61)、各サイド孔(62)以外に、各磁気アイランド(80)におけるホールの数を四つまで増やし、増えた底孔(63)が対をなす磁石のV字状の収束端内に位置することにあるようにする。
【0024】
本実施例では、中間孔(61)と各サイド孔(62)のサイズと空間状態はさらに以下の条件を満足すべきである。
10°≦θ≦(360°/P)−27°、
0.5g ≦ r ≦3g、
0.5g ≦R ≦ 3g、
S(2/3) ≦ d ≦ S−(r+1)、及び
S(2/3) ≦ D ≦ S−(r+1)。
【0025】
また、
θは各サイド孔(62)間に回転子(30)の円心を原点とする広がり角であり、
Pは回転子(30)の極数であり、本実施例では8であり、
rは各サイド孔(62)それぞれの半径であり、
Rは中間孔(61)の半径であり、
gはエアギャップ(40)のギャップ幅であり、
Sは回転子(30)の半径であり、
dは各サイド孔(62)の曲率中心と回転子(30)の曲率中心との間の深さの距離であり、
Dは中間孔(61)の曲率中心と回転子(30)の曲率中心との間の深さの距離である。
【0026】
これにより、本実施例に開示される8つの極のモータの構造にて、θ値である広がり角度の大きさとコギングトルクとの間の関係は、図5に示すように、θが12°である場合、コギングのトルクは0.1Nmよりも小さいものである。
【0027】
さらにθを12°にし、中間孔(61)と各サイド孔(62)の半径が同様である場合、前記R値と前記r値のコギングトルクに対する関係は図6に示すように、R=r=0.9mmである場合、コギングのトルクはさらに低下し、0.04Nmよりも小さい。
【0028】
上記により、中間孔(61)のR値のみを増やす場合、図7に示す関係図から、中間孔(61)のR値が1.3mmまで増える場合、コギングトルクが図6に示す状態からさらに約0.024Nmまで低減されることが分る。
【0029】
これより、中間孔(61)と各サイド孔(62)それぞれのサイズの大きさに関しては、中間孔(61)の半径が各サイド孔(62)の半径よりも大きい場合、好ましいコギングトルク低減効果を有することが分る。
【0030】
さらに図8を参照されたい。中間孔(61)と各サイド孔(62)の相対的位置を変更する場合、d値、D値とコギングトルクとの間の関係図からも、d=D=39mmである場合、最低のコギングトルクを有することが分る。
【0031】
図9に、中間孔(61)と各サイド孔(62)とがともに存在する場合、著しくコギングトルクを低減できることがさらに裏付けられる。
【0032】
図5乃至図9のデータから、本実施例において、中間孔(61)と各サイド孔(62)がP=8、θ=12°、r=0.9mm、R=1.3mm、d=D=39mmであることを満足する場合、相対的に最も好ましいコギングトルク低減効果を有することが明らかである。
【0033】
本発明は上記8つの極を有する永久磁石モータの実施例に制限されるものではなく、別の6つの極を有する永久磁石モータの実施例において、P=6、θ=12°、r=1.2mm、R=0.5mm、d=D=39mmである場合、相対的に最も好ましいコギングトルク低減効果を有する。
【0034】
上記技術により、本発明に係る永久磁石モータ(10)の達成できる効果は、コギングトルク低減効果の場合、図1に示すような永久磁石モータに比較して、図10の比較図に示すような顕著な程度を持つ以外、図11及び図12に示すように全高調波歪みとトルクリップルを低減して、制御精度を向上し騒音を軽減することもできる。
【符号の説明】
【0035】
1 回転子
2 磁石
3 磁気アイランド
4 孔
10 永久磁石モータ
20 固定子
30 回転子
40 エアギャップ
50 磁石
60 孔
61 中間孔
62 サイド孔
63 底孔
70 磁極エリア
80 磁気アイランド
θ 広がり角
P 極数
R 中間孔半径
r サイド孔半径
g エアギャップのギャップ幅
S 回転子半径
d サイド孔と回転子円心間の距離
D 中間孔と回転子円心間の距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12