特許第6285555号(P6285555)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6285555酸化マグネシウム及びアミノ酸を含む組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6285555
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】酸化マグネシウム及びアミノ酸を含む組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20180215BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20180215BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20180215BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20180215BHJP
   C09D 5/08 20060101ALI20180215BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20180215BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20180215BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20180215BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   C09D201/00
   C09D7/12
   C09D163/00
   C09D175/04
   C09D5/08
   B05D7/24 303B
   B05D7/14 101Z
   B05D7/14 Z
   B32B15/08 D
   C23C26/00 A
【請求項の数】13
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-542089(P2016-542089)
(86)(22)【出願日】2014年9月11日
(65)【公表番号】特表2016-537481(P2016-537481A)
(43)【公表日】2016年12月1日
(86)【国際出願番号】US2014055122
(87)【国際公開番号】WO2015038730
(87)【国際公開日】20150319
【審査請求日】2016年5月6日
(31)【優先権主張番号】14/023,972
(32)【優先日】2013年9月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502328466
【氏名又は名称】ピーアールシー−デソト インターナショナル,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メイヨー、マイケル エイ.
(72)【発明者】
【氏名】フューラー、エリザベス エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ラシュマン、ポール
(72)【発明者】
【氏名】ブレオン、ジョナサン ピー.
【審査官】 仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−088060(JP,A)
【文献】 特開昭59−075957(JP,A)
【文献】 特開昭51−123230(JP,A)
【文献】 特開2007−169360(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/086383(WO,A1)
【文献】 特開2011−068868(JP,A)
【文献】 特開2013−133340(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0349121(US,A1)
【文献】 特表2004−527649(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0164169(US,A1)
【文献】 特開2011−184800(JP,A)
【文献】 特開2001−302977(JP,A)
【文献】 特開昭63−010674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 201/00
C09D 7/12
C09D 163/00
C09D 175/04
C09D 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)MgO、
(b)アミノ酸、及び
(c)フィルム形成性樹脂
を含むコーティングであって、
アミノ酸が、ヒスチジン、アルギニン、システイン、シスチン、トリプトファン、チロシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニンから選択されるアミノ酸を含む、コーティング
【請求項2】
MgOがグラム当たり少なくとも10平方メートルの表面積を有する、請求項1に記載のコーティング。
【請求項3】
アミノ酸がヒスチジンであり、ヒスチジンが全樹脂固形分に基づいて0.1〜10重量%の量で存在する、請求項1又は2に記載のコーティング。
【請求項4】
ヒスチジンが全樹脂固形分に基づいて2〜4重量%の量で存在する、請求項に記載のコーティング。
【請求項5】
(a)MgO、
(b)アミノ酸、及び
(c)フィルム形成性樹脂
を含むコーティングであって、
コーティングは多成分コーティングであ一つの成分がエポキシ官能性樹脂を含み、他の成分がアミン官能性樹脂を含む、コーティング。
【請求項6】
(a)MgO、
(b)アミノ酸、及び
(c)フィルム形成性樹脂
を含むコーティングであって、
一つの成分がポリオール樹脂を含み、他の成分がイソシアナート官能性樹脂を含む、コーティング
【請求項7】
MgOの少なくとも一部とアミノ酸が、アミン樹脂を含む成分中に存在する、請求項に記載のコーティング。
【請求項8】
該コーティングがクロム、酸化プラセオジム、及び希土類元素のいずれかを実質的に含まない、請求項1から7のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項9】
アミノ酸がオリゴマーである、請求項1〜8のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項10】
コーティング周囲条件で硬化された、請求項1〜9のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のコーティングで少なくとも一部がコーティングされた基体。
【請求項12】
基体がアルミニウムを含む、請求項11に記載の基体。
【請求項13】
基体が鋼を含む、請求項11に記載の基体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化マグネシウム(「MgO」)粒子及びアミノ酸を含むコーティング組成物に関する。本発明はまた、そのような組成物から堆積されたコーティング及び多成分複合コーティングで少なくとも部分的にコーティングされた基体であって、少なくとも一つのコーティング層がそのようなコーティング組成物から堆積されている上記基体に関する。
【背景技術】
【0002】
コーティングは、多くの理由から電化製品、自動車、航空機等に適用され、典型的には、腐食保護及び/又は性能向上のために適用される。金属基体の耐腐食性(corrosion resistance)を改良するために、腐食防止剤(corrosion inhibitor)が、基体に塗布されたコーティングにおいて一般に使用される。一般的な腐食防止剤はクロム酸ストロンチウムであり、これは、金属基体、特にアルミニウム基体のための優れた耐腐食性をもたらす。しかし、クロム酸ストロンチウムなどの腐食防止剤は、非常に有毒で発がん性があり、それらを用いることは、廃棄物の流れの発生につながり、環境問題及び処分問題を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
結果として、クロム酸塩顔料のない耐腐食性コーティングを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、MgO、アミノ酸、及びフィルム形成性樹脂を含むコーティング組成物に関する。基体にこのようなコーティングをコーティングする方法、及びそれによりコーティングされた基体もまた、本発明の範囲内である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明は、MgO、アミノ酸、及びフィルム形成性樹脂を含むコーティング組成物に関する。
【0006】
本発明によれば、任意の平均粒径の任意のMgOを使用することができる。ある実施形態では、MgOは、平均粒径に基づいたサイズで、例えば0.5〜50ミクロン又は1〜15ミクロンのミクロンサイズである。ある実施形態では、MgOは、平均粒径に基づいたサイズで、例えば10〜499ナノメートル、又は10〜100ナノメートルのナノサイズである。これらの粒径は、コーティング内に導入した時点でのMgOの粒径をいうものと理解される。様々なコーティング調製方法によって、MgO粒子の凝集が生じて、平均粒径が増大し、あるいは、MgO粒子にせん断作用又は他の作用が生じて平均粒径が減少し得る。MgOは、多くの供給源、例えば実施例の項に記載されている供給源から商業的に入手できる。
【0007】
例えば、本発明のコーティング組成物のある実施形態は、超微細なMgO粒子を含む。本明細書で用いられる「超微細」という用語は、例えばグラムあたり30〜500平方メートル、又はある場合にはグラムあたり80〜250平方メートルなどの、グラム当たり少なくとも10平方メートルのB.E.T.比表面積を有する粒子をいう。本明細書で用いられる「B.E.T.比表面積」という用語は、定期刊行物“The Journal of the American Chemical Society”,60,309(1938)に記載されているブルナウエル・エメット・テラー法に基づき、ASTMD3663−78標準にしたがって窒素吸着により測定された比表面積をいう。
【0008】
ある実施形態では、本発明のコーティング組成物は、200ナノメートル以下、例えば100ナノメートル以下の計算された球等価直径を有するMgO粒子を含み、又はある実施形態では、5〜50ナノメートルである。当業者により理解されるように、計算された球等価直径は、B.E.T.比表面積から以下の式により決定することができる:直径(ナノメートル)=6000/[BET(m/g)*ρ(グラム/cm)]。
【0009】
本発明のコーティング組成物のある実施形態は、100ナノメートル以下、例えば50ナノメートル以下の平均一次粒径を有するMgO粒子を含み、又はある実施形態では、25ナノメートル以下であり、これは透過型電子顕微鏡(「TEM」)画像の写真を目視で検査し、その画像で粒子の直径を測定し、そして測定された粒子の平均一次粒径をTEM画像の倍率に基づいて計算することにより決定される。当業者であれば、このようなTEM画像をどのように準備し、倍率に基づいて一次粒径をどのように決定するのを理解するであろう。粒子の一次粒径とは、その粒子を完全に包囲する最小径の球のことをいう。本明細書で用いられる「一次粒径」という用語は、二つ又はそれ以上の個々の粒子の凝集とは対照的に、個々の粒子のサイズをいう。
【0010】
ある実施形態では、MgO粒子は、組成物の媒体に対して親和性を有し、組成物中にその粒子を懸濁させたままにするのに十分な親和性を有している。これらの実施形態では、粒子と媒体との親和性は、互いの粒子の親和性よりも大きく、これにより、媒体内での粒子の凝集が減少し、又は粒子の凝集がなくなる。
【0011】
MgO粒子の形状(又は形態)は変化しうる。例えば、一般に球形の形態だけでなく、立方体、板状、多面体、又は針状の(延伸された若しくは繊維状の)粒子も用いることができる。他の特定の実施形態では、粒子はポリマーゲルで完全に覆うことができ、ポリマーゲルで全く覆わないこともでき、またポリマーゲルで部分的に覆うことができる。ポリマーゲルで部分的に覆うとは、粒子の少なくとも或る部分が、その部分の上に堆積されたポリマーゲルを有しており、例えば、それは粒子に共有結合していてもよく、又は単に粒子と会合していてもよい。
【0012】
本発明のコーティングに用いられるMgOの量は、使用者のニーズに応じて変化しうる。例えば、本発明のコーティングは、ブレンドしたコーティングの顔料を含む全固形分に基づいて、1〜50重量%の、例えば5〜50若しくは10〜40重量%のMgO粒子を含むことができる。「ブレンドしたコーティング」という用語は、基体に適用されているコーティングのことを意味する。例えば、二成分コーティングの場合、ブレンドしたコーティングとは、一緒に混合した二成分から生じるコーティングをいう。
【0013】
ある実施形態では、他の金属酸化物をMgOに加えて用いることができる。例としては、亜鉛、セリウム、イットリウム、マンガン、マグネシウム、モリブデン、リチウム、アルミニウム、マグネシウム、スズ、カルシウム、ホウ素、リン、シリコン、ジルコニウム、鉄、及び/又はチタンの酸化物が挙げられる。ある実施形態では、粒子は二酸化シリコン(シリカ)を含む。ある実施形態では、特異的にプラセオジムが除外される。さらに他の実施形態は、特異的にすべての希土類元素が除外される。希土類とは周期表の17種の化学元素の集合をいい、具体的には15種のランタノイド(ランタンからルテチウムまでの原子番号57〜71の15種の元素)、並びにスカンジウム及びイットリウムをいう。他の具体的な実施形態では、クロム含有材料などのクロム又はその誘導体が除外される。本明細書で用いられる「クロム含有材料」という用語は、三酸化クロム基、CrOを含む材料をいう。このような材料の非制限的な例としては、クロム酸、三酸化クロム、クロム酸無水物、ジクロム酸塩、例えば、ジクロム酸アンモニウム、ジクロム酸ナトリウム、ジクロム酸カリウム、並びにジクロム酸カルシウム、ジクロム酸バリウム、ジクロム酸マグネシウム、ジクロム酸亜鉛、ジクロム酸カドミウム、及びジクロム酸ストロンチウムが挙げられる。本発明のコーティングがクロムを実質的に含まないか又は全く含まないとき、この場合、クロム含有材料を含む形態でのクロムを含む。
【0014】
したがって、ある実施形態では、本発明のコーティングは、任意の形態での一種以上の希土類金属(酸化プラセオジムを含むがこれには限られない)、任意の形態でのクロム、及び/又はリン酸重金属塩を、実質的に含まない。他のある実施形態では、コーティングは、リン酸塩などの金属塩を実質的に含まない。他の実施形態では、本発明のコーティング組成物は、これらの化合物又は材料のいずれか又はすべてをまったく含まない。本明細書で用いられる「実質的に含まない」という用語は、特定の材料又は化合物が、組成物中に存在するとしても偶発的な不純物として存在するということを意味する。言い換えれば、材料の量が少量過ぎて組成物の特性に影響を与えないということであり、クロム酸やクロムの場合、これはさらに、その材料が環境に負荷を引き起こすようなレベルではコーティング中に存在しないということを包含している。これは、本発明のある実施形態では、コーティング組成物が、2重量%未満の上記化合物又は材料のいずれか又はすべてを含有しているか、あるいはある場合には、0.05重量%未満の上記化合物又は材料のいずれか又はすべてを含有しており、ここで重量%は、組成物の全重量に基づくものとする。本明細書で用いられる「完全に含まない」という用語は、その材料が、組成物中にまったく存在しないことを意味する。
【0015】
本発明のコーティングは、さらにアミノ酸を含む。アミノ酸は、各アミノ酸に特異的な側鎖を持った、酸とアミンの両方の官能性を有する化合物として、当業者に理解されている。アミノ酸はモノマーでもオリゴマーでもよく、ダイマーを包含する。ある実施形態において、オリゴマーのアミノ酸を用いる場合、オリゴマーの分子量(GPCにより測定した分子量)は1000未満である。
【0016】
本発明により任意のアミノ酸を使用することができるが、特に好適なものとして、ヒスチジン、アルギニン、リジン、システイン、シスチン、トリプトファン、メチオニン、フェニルアラニン、及びチロシンが挙げられる。アミノ酸は、L−又はD−エナンチオマーのいずれでもよく、これらは互いに鏡像であり、L−配置がタンパク質及び自然界に典型的に見出され、そのようなものとして広く市販されていることが理解されよう。本明細書で用いられる「アミノ酸」という用語は、それゆえに、D−及びL−配置の両方をいう。ある実施形態では、L−配置のみ、又はD−配置のみが包含されることもあり得る。アミノ酸は、例えば、シグマアルドリッチ(Sigma Aldrich)、サーモフィッシャーサイエンティフィック(Thermo Fisher Scientific)、ホーキンスファーマシューティカル(Hawkins Pharmaceutical)、又は味の素(Ajinomato)から購入することが可能である。本発明のある実施形態では、アミノ酸グリシン、アルギニン、プロリン、システイン、及び/又はメチオニンが特異的に除外される。
【0017】
アミノ酸は、コーティングの耐腐食性を改良するいかなる量でも存在することができる。例えば、アミノ酸は、ブレンドされたコーティング中の樹脂固形分に基づく重量%で、0.1〜20重量%、例えば2〜4重量%の量で存在することができる。アミノ酸の量及びMgOの量は、コーティングに最適の耐腐食性を付与するように一緒に選択することができる。
【0018】
ある実施形態では、コーティング組成物は、一成分組成物として配合され、そこでは、硬化剤(又は活性化剤)がコーティング組成物の他の成分と混合されて保存安定な組成物を形成している。このような実施形態では、耐腐食性の酸化マグネシウム粒子及びアミノ酸が、保存安定な組成物中に含まれる。あるいは、本発明のコーティング組成物は、二成分コーティング組成物として配合することができ、そこでは、硬化剤(又は活性化剤)が、適用直前に他の組成物成分のあらかじめ形成された混合物に添加される活性化剤成分に含まれる。耐腐食性の酸化マグネシウム粒子及びアミノ酸は、二成分組成物の活性化剤成分又はあらかじめ形成された混合物のいずれか又はその両方に存在することができる。本発明のさらに他の実施形態では、コーティング組成物は、三成分コーティング組成物、例えば、ベース成分、活性化剤成分、及び希釈剤成分として配合することができ、この三成分は適用に幾分先立って混合される。耐腐食性の酸化マグネシウム粒子及びアミノ酸は、三成分系のベース成分、活性化剤成分、又は希釈剤成分の少なくとも一つに存在する。さらに、耐腐食性の酸化マグネシウム粒子及びアミノ酸は、三成分系のベース成分、活性化剤成分、又は希釈剤成分の少なくとも二つに存在することができる。さらに、耐腐食性の酸化マグネシウム粒子及びアミノ酸は、三成分系のベース成分、活性化剤成分、又は希釈剤成分の各々に存在することができる。三成分より多い成分を有する多成分コーティングもまた、本発明の範囲内である。二以上の成分を有するすべての実施形態について、酸化マグネシウム及びアミノ酸は、同じ及び/又は異なる成分に存在することができる。
【0019】
本発明のコーティングはまた、フィルム形成性樹脂を含む。本明細書で用いられる「フィルム形成性樹脂」という用語は、組成物中に存在する任意の希釈剤若しくは担体の除去の際に、又は周囲条件若しくは昇温での硬化の際に、基体の少なくとも水平な表面上に自立性の連続フィルムを形成することができる樹脂をいう。
【0020】
本発明のコーティング組成物に用いることのできるフィルム形成性樹脂としては、とりわけ、航空宇宙コーティング組成物、自動車OEMコーティング組成物、自動車補修コーティング組成物、産業コーティング組成物、建築コーティング組成物、及びコイルコーティング組成物に用いられるものが挙げられるが、制限はない。本発明のコーティング組成物に用いるのに適したフィルム形成性樹脂としては、例えば、アクリル、飽和若しくは不飽和ポリエステル、アルキド、ポリウレタン若しくはポリエーテル、ポリビニル、セルロース、シリコン系ポリマー、それらの共重合体に基づく樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、反応性基、例えば、とりわけ、エポキシ、カルボン酸、ヒドロキシル、イソシアナート、アミド、カルバメート、アミン、及びカルボキシレート基、それらの混合物を含有してもよい。フィルム形成性樹脂の組み合わせも用いることができる。
【0021】
ある実施形態では、本発明のコーティング組成物に含まれるフィルム形成性樹脂は、熱硬化性フィルム形成性樹脂を含む。本明細書で用いられる「熱硬化性」(“thermosetting”)という用語は、硬化又は架橋により不可逆的に「硬化」(“set”)される樹脂であり、ポリマー成分のポリマー鎖が、共有結合により一緒に結びついている(joined)樹脂をいう。この特性は、多くの場合、例えば熱又は放射線により誘起された、組成物成分の架橋反応と通常関連している。以下を参照:Hawley,Gessner G.,The Condensed Chemical Dictionary, 第9版,856頁;Surface Coatings(表面コーティング),第2巻,Oil and Colour Chemists’ Association,Australia,TAFE Educational Books(1974)。硬化又は架橋反応もまた、周囲条件下で行うことができる。したがって、ある実施形態では、本発明は、酸化マグネシウム、アミノ酸、及びフィルム形成性樹脂を含むコーティングに関し、コーティングは周囲条件で硬化する。周囲条件とは、コーティングが、熱や他のエネルギーの助けなしに、例えばオーブンでの焼成や、強制空気の使用等なしで、熱硬化反応を起こすことを意味する。いったん硬化又は架橋すると、熱硬化性樹脂は熱の適用により融解せず、溶媒に不溶である。他の実施形態では、本発明のコーティング組成物内に含まれるフィルム形成性樹脂は、熱可塑性樹脂を含む。本明細書で用いられる「熱可塑性」という用語は、共有結合で結びついておらず、それゆえ加熱により液流を起こすことができ、溶媒に溶解するポリマー成分を含む樹脂をいう。Saunders,K.J.,Organic Polymer Chemistry(有機ポリマー化学),41−42頁,Chapman and Hall,London(1973)参照。
【0022】
本発明のある実施形態では、フィルム形成性樹脂は、本発明のコーティング組成物中に、ブレンドされたコーティング組成物の全固形分重量に基づく重量%で、10重量%より多い、例えば20〜90重量%、又はある場合には20〜50重量%の量で存在する。コーティングが熱硬化性組成物である場合、一種以上の硬化剤が用いられる。二種以上のフィルム形成性樹脂が用いられる場合は、それらは同じ及び/又は異なる硬化剤により硬化してもよい。これらの実施形態における硬化剤の全量は、70重量%まで、例えば10〜70重量%の量で存在することができる。この重量%もまた、コーティング組成物の全固形分重量に基づく。
【0023】
本発明の実施形態によれば、コーティング組成物は、液体コーティング組成物の形態であり、その例として、水性(WB)及び溶媒性(SB)コーティング組成物及び電着可能なコーティング組成物が挙げられる。本発明のコーティング組成物はまた、粒子形態で共反応性の固形物(すなわち粉末コーティング組成物)の形態で存在することもできる。
【0024】
希釈剤として水を用いる場合は、コーティング組成物は、水性コーティング組成物であってもよい。他の実施形態において、溶媒を希釈剤として用いる場合、コーティング組成物は、溶媒性のコーティング組成物であってもよい。例えば、ある実施形態では、本発明は、ケトン、アセタート、グリコール、アルコール、及び/又は芳香族溶媒などの溶媒を含んでもよい。好適な溶媒の例示は、米国特許第6,774,168号明細書の第3欄第28〜41行に記載されており、その引用された部分は参照することにより本願明細書に取り込まれる。
【0025】
ある実施形態では、本発明のコーティング組成物は、エポキシ官能性フィルム形成性樹脂成分、及びポリアミン活性化剤成分を含むことができる。例えば、ある実施形態では、本発明は、ビスフェノールA、ビスフェノールF、グリセロール、ノバラックス(novalacs)等のジグリシジルエーテルのようなエポキシ樹脂を含むことができる。好適なポリエポキシドの例示は、米国特許第4,681,811号明細書の第5欄第33〜58行に記載されており、その引用された部分は参照することにより本願明細書に取り込まれる。また、ある実施形態では、本発明は、脂肪族アミン及び付加物、脂環式アミン、アミドアミン、及びポリアミドなどのポリアミン硬化剤を含むことができる。好適なポリアミンの例示は、米国特許第4,046,729号明細書の第6欄第61行〜第7欄第26行に、及び米国特許第3,799,854号明細書の第3欄第13〜50行に記載されており、その引用された部分は参照することにより本願明細書に取り込まれる。さらに上記の硬化反応は、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの3級アミン触媒によって補助することができる。
【0026】
ある実施形態では、水性又は溶媒性のコーティング組成物は、ベース成分、例えばエポキシ官能性ポリマー、活性化剤成分、例えばポリアミン、及び任意に第三成分、例えば希釈剤成分、例えば水又は水溶液を含む多成分系である。他の成分を任意にいずれかの成分中に含有させることができる。混合物の三つの成分を基体に適用する直前に組み合わせることができる。例えば、エポキシ官能性ポリマーベース成分及びポリアミン活性化剤成分、並びに(使用するのであれば)他の追加成分を、別々に保存し、適用する直前に混合することができる。特定の実施形態では、酸化マグネシウム及びアミノ酸の両方が、これらの多成分エポキシ/アミン実施形態中のアミン成分中に存在する。
【0027】
本発明のコーティング組成物はまた、コーティング製造の技術分野において標準的な添加剤を含むことができ、その添加剤は、着色剤、可塑剤、耐摩耗性粒子、フィルム強化粒子、流量制御剤、チキソトロープ剤、レオロジー調整剤、触媒、酸化防止剤、殺生物剤、消泡剤、界面活性剤、湿潤剤、分散助剤、接着促進剤、粘土、立体障害アミン光安定剤、UV光吸収剤、及び安定剤、安定化剤、充填剤、有機共溶媒、反応性希釈剤、粉砕媒体(grind vehicles)、及び他の慣用の助剤、又はそれらの組み合わせを含むこともできる。本明細書で用いられる「着色剤」という用語は、米国特許公開公報第2012/0149820号明細書、段落29〜38に定義されており、その引用された部分は参照することにより本願明細書に取り込まれる。
【0028】
「耐摩耗性粒子」とは、コーティングに用いられる場合に、その粒子を欠く同じコーティングと比較して、コーティングにある程度の耐摩耗性を付与するものをいう。好適な耐摩耗性粒子としては、有機及び/又は無機粒子が挙げられる。好適な有機粒子の例としては、ダイアモンド粒子、例えば、ダイアモンドダスト粒子、及びカーバイド材料から形成された粒子が挙げられるが、これらには限定されない。カーバイド粒子の例としては、チタンカーバイド、シリコンカーバイド、及びボロンカーバイドが挙げられるが、これらには限定されない。好適な無機粒子の例としては、シリカ;アルミナ;アルミナシリケート;シリカアルミナ;アルカリアルミノシリケート;ボロシリケートガラス;窒化ホウ素及び窒化シリコンを包含する窒化物;二酸化チタン及び酸化亜鉛を包含する酸化物;石英;ネフェリンサイヤナイト(霞石閃長岩);酸化ジルコニウムの形態などのジルコン;バデレイ石;及びユージアル石が挙げられるが、これらには限定されない。いかなるサイズの粒子も用いることができ、様々な粒子及び/又は様々なサイズの粒子の混合物も同様に用いることができる。例えば、粒子は、0.1〜50、0.1〜20、1〜12、1〜10、若しくは3〜6ミクロンの平均粒径、又はこれらのいずれかの範囲内の任意の組合せを有するマイクロ粒子であってもよい。粒子は、0.1ミクロン未満、例えば0.8〜500、10〜100、若しくは100〜500ナノメートルの平均粒径、又はこれらの範囲内の任意の組合せを有するナノ粒子であってもよい。
【0029】
本明細書で用いられる「接着促進剤」及び「接着促進成分」という用語は、組成物中に含まれる場合、コーティング組成物の金属基体への接着を増大する任意の材料をいう。本発明のある実施形態では、このような接着促進成分は遊離酸を含む。本明細書で用いられる「遊離酸」という用語は、組成物中に存在し得るポリマーを形成するために使用され得る酸とは異なり、組成物の個々の成分として含まれる有機及び/又は無機の酸を包含することを意味する。ある実施形態では、遊離酸は、タンニン酸、没食子酸、リン酸、亜リン酸、クエン酸、マロン酸、それらの誘導体、又はそれらの混合物を含む。好適な誘導体としては、エステル、アミド、及び/又はそのような酸の金属錯体が挙げられる。ある実施形態では、遊離酸は、リン酸、例えば、100パーセントオルトリン酸、スーパーリン酸、又はそれらの水溶液、例えば70〜90%リン酸溶液、を含む。
【0030】
このような遊離酸に加えて、又はその代わりに、他の好適な接着促進成分は、金属のリン酸塩、有機リン酸塩、及び有機ホスホン酸塩である。好適な有機リン酸塩及び有機ホスホン酸塩としては、米国特許第6,440,580号明細書の第3欄第24行〜第6欄第22行、米国特許第5,294,265号明細書の第1欄第53行〜第2欄第55行、及び米国特許第5,306,526号明細書の第2欄第15行〜第3欄第8行に記載されたものが挙げられ、その引用された部分は参照することにより本願明細書に取り込まれる。好適な金属のリン酸塩は、例えば、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸マンガン、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸コバルト、リン酸亜鉛−鉄、リン酸亜鉛−マンガン、リン酸亜鉛−カルシウムが挙げられ、米国特許第4,941,930号、第5,238,506号、及び第5,653,790号明細書に記載の材料を包含する。上述のように、ある実施形態では、リン酸塩は除外される。
【0031】
ある実施形態では、接着促進成分は、リン酸塩処理エポキシ樹脂を含む。このような樹脂は、一種以上のエポキシ官能性材料及び一種以上のリン含有材料の反応生成物を含み得る。本発明に用いるのに好適な、このような材料の非制限的な例は、米国特許第6,159,549号明細書の第3欄第19〜62行に開示されており、その引用された部分は参照することにより本願明細書に取り込まれる。
【0032】
ある実施形態では、本発明はまた、アルコキシシラン接着促進剤、例えば、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリロキシアルコキシシラン、γ‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのメタクリラートアルコキシシラン、並びにγ‐グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシ官能性シランを含む。好適なアルコキシシランの例示は、米国特許第6,774,168号明細書の第2欄第23〜65行に記載されており、その引用された部分は参照することにより本願明細書に取り込まれる。
【0033】
ある実施形態では、接着促進成分は、コーティング組成物中に、組成物の全固形物重量に基づく重量%で、0.05から20重量%まで、例えば0.25〜15重量%にわたる量で存在する。
【0034】
ある実施形態では、本発明のコーティング組成物はまた、先に述べた任意の耐腐食性粒子に加えて、従来の非クロム耐腐食性粒子を含むことができる。好適な従来の非クロム耐腐食性粒子としては、リン酸鉄、リン酸亜鉛、カルシウムイオン交換シリカ、コロイダルシリカ、合成非晶質シリカ、及びモリブデン酸塩、例えばモリブデン酸カルシウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸バリウム、モリブデン酸ストロンチウム、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらには限定されない。好適なカルシウムイオン交換シリカは、W.R.Grace&Co.からSHIELDEX.AC3及び/又はSHIELDEX.C303として市販されている。好適な非晶質シリカはW.R.Grace&Co.からSYLOIDとして入手できる。好適な水酸化リン酸亜鉛は、Elementis Specialties,Inc.からNALZIN.2として市販されている。これらの従来の非クロム耐腐食性顔料は、典型的にはおよそ1ミクロン以上の粒径を有する粒子を含む。ある実施形態では、これらの粒子は、本発明のコーティング組成物中に、組成物の全固形物重量に基づく重量%で、5から40重量%まで、例えば10〜25重量%にわたる量で存在する。
【0035】
本発明のコーティングはまた、一種以上の有機防止剤(inhibitors)を含むことができる。そのような防止剤の例としては、イオウ及び/又は窒素含有へテロ環式化合物が挙げられ、その例として、アゾール、チオフェン、ヒドラジン及び誘導体、ピロール及び誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。このような有機防止剤は、米国特許公開公報第2013/0065985、段落52に記載されており、その引用された部分は参照することにより本願明細書に取り込まれる。有機防止剤は用いる場合は、コーティング組成物中に、ブレンドした組成物の全固形分重量に基づく重量%で、0.1から20重量%、例えば0.5〜10重量%にわたる量で存在する。
【0036】
上述のように、本発明のコーティング組成物は、液体コーティング組成物であることができ、その例として、水性若しくは水ベース及び溶媒ベースのコーティング組成物並びに電着可能なコーティング組成物が挙げられ、あるいは粒子状の共反応性固形物の形態では、すなわち粉末コーティング組成物が挙げられる。形態にかかわらず、本発明のコーティング組成物は、着色していても無色でもよく、単独で又はプライマー、下塗り(basecoat)、若しくは上塗り(topcoat)として組み合わせて用いることができる。本発明のある実施形態は、以下により詳細に検討するように、耐腐食性プライマー及び/又は前処理コーティング組成物に関する。示されているように、本発明のある実施形態は、「エッチプライマー」(“etch primer”)などの金属基体プライマーコーティング組成物、及び/又は金属基体前処理コーティング組成物に関する。本明細書で用いられる「プライマーコーティング組成物」という用語は、下塗りを基体の上に堆積することができるコーティング組成物に関する。或る産業又は基体では、プライマーは、保護的又は装飾的コーティングシステムの適用のための表面を調製するために適用される。他の産業又は基体では、他のコーティング層は、プライマーの上(top)に適用されない。例えば、外部への曝露が制限された又は外部への曝露がされていない基体表面は、他の層を上に有しないプライマーを有する可能性がある。本明細書で用いられる「エッチプライマー」という用語は、上記でより詳細に説明したように、遊離酸などの、接着促進成分を含むプライマーコーティング組成物をいう。本明細書で用いられる「前処理コーティング組成物」という用語は、耐腐食性を改良するために、又はその後に適用されるコーティング層の接着を増大するために、裸の基体に非常に薄いフィルム厚で適用することのできるコーティング組成物をいう。
【0037】
本発明のコーティング組成物をプライマーとして用いると、ある実施形態では、少なくともプライマーの一部に、保護的及び/又は装飾的コーティングシステムを適用することができる。例えば、一層上塗り、又は着色ベースコーティング組成物と清澄コート(clearcoat)組成物との組み合わせ、すなわち色プラス清澄システムである。結果として、本発明はまた、本発明のコーティング組成物から堆積した少なくとも一つのコーティング層を含む多成分複合コーティングに関する。ある実施形態では、本発明の多成分複合コーティング組成物は、下塗り(しばしば着色カラーコート)として役立つ下塗りフィルム形成性組成物、及び上塗り(しばしば透明若しくは清澄なコート)として役立つ下塗り上に適用されるフィルム形成性組成物を含む。
【0038】
本発明のこれらの実施形態では、下塗り及び/又は上塗りを堆積するコーティング組成物は、例えば、当業者(例えば、とりわけ、自動車OEMコーティング組成物、自動車補修コーティング組成物、産業コーティング組成物、建築コーティング組成物、コイルコーティング組成物、及び航空宇宙コーティング組成物を配合する技術分野の当業者)に知られている従来の下塗り又は上塗りコーティング組成物のいずれを含んでもよい。このような組成物は、典型的には、例えばアクリルポリマー、ポリエステル、及び/又はポリウレタンを含むことができるフィルム形成性樹脂を含む。フィルム形成性樹脂の例示は、米国特許第4,220,679号明細書の第2欄第24行〜第4欄第40行、及び米国特許第4,403,003号、第4,147,679号、及び第5,071,904号明細書に開示されており、その全内容は参照することにより本願明細書に取り込まれる。
【0039】
このような組成物でコーティングすることができる金属基体は、例えば、鋼(とりわけ、電気亜鉛めっき鋼、冷延鋼、溶融亜鉛めっき鋼を包含する)、アルミニウム、アルミニウム合金、亜鉛−アルミニウム合金、被覆アルミニウム、及びアルミニウムめっき鋼を含む基体が挙げられる。このような組成物でコーティングすることができる基体はまた、一種よりも多い金属又は金属合金を含んでもよく、その基体は、二種以上の金属基体を一緒にした組み合わせであってもよく、例えばアルミニウム基体と組み合わせた溶融亜鉛めっき鋼などである。基体は、視覚効果及び/又は色彩効果、あるいは耐腐食性などの性能向上を付与するような方法で、先に処理されたものであってもよい。
【0040】
したがって、本発明はさらに、本発明のコーティングで少なくとも一部がコーティングされた基体に関する。基体は、乗り物(輸送手段)の一部を含んでもよい。「乗り物(輸送手段)」という用語は、本明細書ではそのもっとも広い意味で使われており、飛行機、ヘリコプター、乗用車、トラック、バス、バン、ゴルフカート、オートバイ、自動車、貨車、タンク等のような、あらゆるタイプの乗り物(輸送手段)が挙げられるが、これらには限定されない。本発明によりコーティングされた乗り物(輸送手段)の部分は、コーティングが用いられる理由に応じて変え得ることが理解されよう。
【0041】
本発明のコーティング組成物は、例えば、金属基体プライマーコーティング組成物及び/又は金属基体前処理コーティング組成物であってもよく、裸の金属に適用することができる。「裸の」(“bare”)という用語は、例えば、従来のリン酸塩処理浴、重金属リンス等のようないかなる前処理組成物でも処理されていない未加工の材料を意味する。さらに、本発明のコーティング組成物でコーティングされた裸の金属基体は、その表面の残りの部分が異なる処理及び/又はコーティングがされている基体のカットエッジであってもよい。ある実施形態では、基体は、コーティング及び/又は前処理の適用に先立って摩耗させることができる。「摩耗させる」(“abraded”)という用語は、機械的作用により基体の表面を部分的に摩耗させることを意味する。これは、紙やすり、SCOTCHBRITEパッドのような摩耗材料、又はこする化合物若しくは磨く化合物のような摩耗材料のスラリーを用いて、手で又は機械によるものであってもよい。
【0042】
本発明のコーティング組成物を、プライマー及び/又は金属前処理として適用する前に、コーティングされる金属基体をまず洗浄して、グリース、汚れ、又は他の付着物を取り除いてもよい。従来の洗浄手法及び材料を使用することができる。これらの材料としては、例えば、市販されている穏やかな又は強力なアルカリ性洗浄剤が挙げられる。例としては、BASE Phase Non−Phos又はBASE Phase #6が挙げられ、その両方ともPPGインダストリー、前処理及びスペシャルティ製品(PPG Industries,Pretreatment and Specialty Products)から入手できる。他の例としては、ALK−660、ED−500が挙げられ、その両方ともPPGインダストリー、航空宇宙コーティング製品(PPG Industries,Aerospace Coatings Products)から入手できる。このような洗浄剤の適用は、水によるリンスの前に、及び/又は後に行ってもよい。
【0043】
次いで、金属表面は、アルカリ性洗浄剤で洗浄した後であって、本発明のコーティング組成物と接触する前に、酸性水溶液でリンスしてもよい。好適なリンス溶液の例としては、市販の希釈硝酸溶液のような、穏やかな又は強力な酸性洗浄剤が挙げられる。例としては、AC−5、AC−12、及びEAC−8が挙げられ、そのすべてがPPGインダストリー、航空宇宙コーティング製品(PPG Industries,Aerospace Coatings Products)から入手できる。洗浄剤/研磨溶液の組み合わせも用いることができる。
【0044】
本発明のコーティング組成物は、様々な方法のいずれによっても調製することができる。例えば、ある実施形態では、前述の耐腐食性酸化マグネシウム及びアミノ酸粒子を、フィルム形成性樹脂を含むコーティング組成物の配合中の任意の時点で、添加する(ただし、それらが、フィルム形成性樹脂中に安定な分散を形成する限り)。本発明のコーティング組成物は、まずフィルム形成性樹脂、前述の耐腐食性粒子、顔料、充填剤、及び希釈剤(例えば、有機溶媒及び/又は水)を混合し、混合物を、10〜30分間1000〜2000RPMで、高速分散機で分散させ、次いでその分散液をペイントミルに通し、破砕ゲージでチェックしたときに5プラスの破砕粉末度を達成することにより、調製することができる。本発明のコーティングは、酸化マグネシウム及び/又はアミノ酸を含む溶液とは区別されるものと理解されよう。それは、本発明のコーティングがフィルムを形成するのに対し、溶液は、基体に適用されたとしてもほとんど又は全く一体性を有しないからである。出願人は、コーティング内に酸化マグネシウムとアミノ酸を一緒に用いた場合、驚くべきことに、耐腐食性を向上させるという付加的な効果を見出したのである(相乗効果ではないとしても)。
【0045】
本発明のコーティング組成物は、既知の塗布技術、例えば、ディッピング若しくは浸漬、スプレー、断続的なスプレー、ディッピング後のスプレー、スプレー後のディッピング、ブラッシング、又はロールコーティングなどにより、基体に塗布することができる。エアスプレー及び静電スプレー(手動又は自動方法のいずれかの)のための、通常のスプレー技術及び装置を用いることができる。本発明のコーティング組成物は、多くの場合、様々な基体(例えば、木材、ガラス、布、プラスチック、発泡体、弾性基体等を含む)に適用することができるが、基体は、上述したような金属を含む。
【0046】
本発明のコーティング組成物のある実施形態では、基体に組成物を適用した後、加熱又は空気乾燥を用いることにより、フィルムから溶媒(すなわち、有機溶媒及び/又は水)を除去し、それにより基体の表面上にフィルムを形成する。好適な乾燥条件は、特定の組成及び/又は用途に依存するが、ある例では、約70〜250°F(27〜121℃)の温度で約1分から5分の乾燥時間で十分である。必要であれば、本発明の組成物の複数のコーティング層を適用することができる。通常は、コートの間に、先に適用したコートをフラッシュする;すなわち、所望の時間のあいだ、周囲条件に曝す。ある実施形態では、コーティングの厚さは、0.1から3ミリまで(2.5〜75ミクロン)であり、例えば0.2〜2.0ミリ(5.0〜50ミクロン)である。コーティング組成物は、次いで加熱してもよい。硬化操作において、溶媒を除去し、組成物の架橋性成分があれば、それを架橋する。加熱操作及び硬化操作は、70から250°Fまで(27〜121℃)の範囲の温度で行われることがあるが、必要であれば、より低い又はより高い温度を用いることができる。先に記したように、本発明のコーティングはまた、加熱又は乾燥工程の追加なしに硬化してもよい。
【0047】
本発明のある実施形態では、本発明のコーティング組成物を基体に適用した後、多層コーティング系を望むのであれば、上塗りを本発明のコーティングの上(top)に適用する。通常は、コートの間に、先に適用したコートをフラッシュする。ある実施形態では、上塗りコーティングの厚さは、0.5から4ミリまで(12.5〜100ミクロン)であり、例えば1.0〜3.0ミリ(25〜75ミクロン)である。コーティング組成物は、次いで加熱してもよい。硬化操作において、溶媒を除去し、組成物の架橋性成分があれば、それを架橋する。加熱操作及び硬化操作は、70から250°Fまで(27〜121℃)の範囲の温度で行われることがあるが、必要であれば、より低い又はより高い温度を用いることができる。ある実施形態では、本発明のコーティング組成物を適用し、上塗りをその上に「ウェット・オン・ウェット」で適用する。あるいは、本発明のコーティング組成物を、一つ以上の追加のコーティング層を適用する前に硬化することができる。
【0048】
多くの産業で広い用途を有するコイルコーティングもまた、本発明の範囲内にある。
【0049】
本明細書において用いる場合、特に明確な指示がない限り、値、範囲、量、又はパーセンテージを表すすべての数値は、「約」という用語が明示的に表記されていなくても、それが前に付いているように解釈することができる。また、本明細書に記載の数値的範囲は、すべての下位の範囲がその中に組み込まれていることが意図されている。単数形は複数形を包含し、その逆もまた適用される。例えば、“an”amino acid(アミノ酸)、“an”film forming resin(フィルム形成性樹脂)、及び“a”crosslinker(架橋剤)といった場合、これらの成分の各々、及び他の成分の一つ以上を用いることができる。本明細書で用いられる「ポリマー」という用語は、オリゴマー、及びホモポリマーとコポリマーの両方をいい、「ポリ」という接頭辞は二以上のものをいう。含む及びなどの用語は、含むことを意味するが、それだけには限定されない。範囲が与えられた場合、それらの範囲の任意の端点(上限値、下限値)、及び/又はそれらの範囲内の任意の数値は、本発明の範囲内で組み合わせることができる。
【実施例】
【0050】
以下の例は本発明を説明することを意図しており、いかなる態様でも発明を限定するものと解釈されるべきでない。
【0051】
表1に、その例の調製に用いた材料の説明を示す。
【表1-1】

【表1-2】
【0052】
すべての例において、各材料についての量は、重量グラムである。
【0053】
例1〜10
表2において特定された材料を用いて、下記のとおりコーティング例を調製した。これらの例では、コーティングを防止剤(inhibitor)なしで調製し、ナノ酸化マグネシウムのみで、アミノ酸のみで、及びナノ酸化マグネシウム/アミノ酸で調製した。
【0054】
【表2】
【0055】
例1〜10のベース成分について、すべての材料を秤量し、ガラスびんに入れた。次いで、分散媒を、ベース成分材料の全重量のおよそ35%に等しい濃度で、各びんに追加した。びんをふたで封止した後、3時間の分散時間でLau DAS 200分散ユニット(Lau GmbH)に置いた。すべての最終分散液は、7より大きいHegmanゲージの表示数値を示した。コーティング塗布の前に、各々の例について表2に示したベース成分及び活性化剤成分に対応する量を組み合わせ、十分に混合し、適用前に30〜60分の誘導時間を与えた。例1〜10のコーティングを、2024T3アルミニウム合金基体パネルの上に、空気噴霧スプレーガンを用いて、0.7〜1.2ミリの乾燥フィルム厚さにまでスプレー塗布した。コーティング塗布の前に、基体パネルを、アセトンふき取りを用いて清浄化し、続いて、SCOTCHBRITE 7448超微細パッドを用いて湿潤研磨し、水切れのよい自由表面(water−break free surface)を生成した。パネルを水で十分にリンスし、乾燥させた。コーティング塗布の前に、最終的なふき取りをメチルエチルケトンで行った。
【0056】
コーティング例1〜10でコーティングした試験パネルを、周囲条件下で最低7日間エージングさせ、その後、パネル表面に3.75インチx3.75インチの「X」マークを、表面コーティングを貫通し、下層の金属を露出させるように、十分な深さでスクライブした。次いで、スクライブした(彫りこんだ)コーティングされた試験パネルを、ASTM B117にしたがって、5%塩化ナトリウム中性塩スプレーキャビネット中に置いた(ただし、pHと塩濃度は毎日ではなく週ごとにチェックした)。
【0057】
表3に示す評価を、例1〜8については500時間の曝露で、例9及び10については672時間の曝露で行った。パネルを以下の基準で評価した。
【0058】
スクライブ腐食:小さい番号の評価ほど良好である。
1=腐食が存在しない
2=変色したスクライブ−白色の腐食は存在しない
3=軽度の腐食−幾分白色の腐食生成物が見られる(〜25〜30%)
4=腐食したスクライブ >30%の白色腐食
5=その他(上記のカテゴリーにあてはまらないもの−コメントの項で特定)
【0059】
スクライブの光沢/性質:小さい番号の評価ほど良好である。
1=スクライブの100〜90%が光沢あり
2=スクライブの89〜30%が光沢あり
3=スクライブの29〜1%が光沢あり
4=スクライブに光沢がない
【0060】
ブリスター:小さい番号の評価ほど良好である。
スクライブに隣接し、スクライブから離れたブリスター(すなわちFace)ブリスターの合計数は30までカウントする
【0061】
最大スクライブブリスターサイズ:小さい番号の評価ほど良好である。
スクライブに隣接する最大のブリスターのサイズは以下のように記録される。
0 スクライブブリスターが存在しない。
<1/16” 最大のスクライブブリスターが直径1/16”未満
>1/16” 最大のスクライブブリスターが直径1/16”と1/8”の間
>1/8” 最大のスクライブブリスターが直径1/8”より大きい
【0062】
【表3】
【0063】
表3の腐食データは、コーティングにアミノ酸のみを添加し他の腐食防止剤を含まないと、スクライブ腐食又はブリスターの発生にほとんど効果がなく、コーティングにMgOを添加し他の腐食防止剤を含まないと、スクライブ光沢とスクライブブリスター減少にわずかに正の効果を示し、そしてMgOとアミノ酸を組み合わせると、スクライブ保護、ブリスターの数の減少、ブリスターの大きさの減少、又はこれらの測定値の組み合わせのいずれかに有利な改良が見られることを明確に示している。したがって、このデータは、MgOとアミノ酸の組み合わせが、各材料を単独で用いた場合よりも、耐腐食性にはるかに有利な効果をもたらすことを示している。
【0064】
例11〜12
これらの例では、一つは酸化マグネシウムを含み、一つは酸化マグネシウムとヒスチジンとを含む、二つのコーティングを、様々な基体及び表面調製について比較した。
【表4】
【0065】
例11及び12のベース成分について、すべての材料を秤量し、ガラスびんに入れた。次いで、分散媒を、ベース成分材料の全重量のおよそ45%に等しい濃度で、各びんに添加した。それらの例の活性化剤成分については、すべての材料を秤量し、ガラスびんに入れた。次いで、分散媒を、活性化剤成分材料の全重量のおよそ50%に等しい濃度で、各びんに添加した。びんをふたで封止した後、3時間の分散時間でLau分散ユニットに置いた。すべての最終的分散物は、7より大きいHegmanゲージ測定値を示した。コーティング塗布の前に、表4に示す対応する比率のベース成分と活性化剤成分とを一緒にブレンドし、十分に混合し、適用前に30〜60分の誘導時間を与えた。
【0066】
例11及び12のコーティングを、アルミニウム合金基体パネル上に、空気噴霧スプレーガンを用いて、0.7〜1.2ミリの乾燥フィルム厚さにまでスプレー塗布した。コーティング塗布の前に、アルミニウム合金基体パネルを、以下の三つの基体シナリオの一つで調製した。
【0067】
シナリオ1:2024T3アルミニウム合金パネルを、アセトンふき取りを用いて清浄化し、続いて、ALK−660アルカリ性洗浄剤を用いSCOTCHBRITE 7448超微細パッドを用いて湿潤研磨し、水切れのよい自由表面(water−break free surface)を生成した。パネルを水で十分にリンスし、乾燥させた。コーティング塗布の前に、最終的なふき取りをアセトンで行った。
【0068】
シナリオ2:2024T3被覆アルミニウム合金パネルを研磨し、シナリオ1と同様に清浄化し、次いで、供給者の技術データシートに記載されたスプレー塗布方法を用いてDESOGEL EAP12で前処理した。前処理したパネルを、コーティング塗布の前に、周囲条件下で2〜4時間乾燥した。
【0069】
シナリオ3:2024T3アルミニウム合金パネルを、アセトンふき取りを用いて清浄化した。パネルを130°Fで2分間RIDOLENE 298に浸漬し;続いて、水道水に1分浸漬し;続いて、周囲条件でTURCO6/16脱酸素剤に2’30”浸漬し;続いて、水道水に1分浸漬し;続いて、2’30” ALODINE 1200S溶液に浸漬し;続いて、脱イオン水に1分浸漬し、且つ脱イオン水でスプレーリンスし、パネルをコーティング塗布の前に、周囲条件下で2〜4時間乾燥させた。
【0070】
コーティング例11〜12でコーティングした試験パネルを、周囲条件下で最低7日間エージングさせ、その後、パネル表面に3.75インチx3.75インチの「X」マークを、表面コーティングを貫通し、下層の金属を露出させるように、十分な深さでスクライブした。次いで、スクライブした(彫りこんだ)コーティングされた試験パネルを、ASTM B117にしたがって、5%塩化ナトリウム中性塩スプレーキャビネット中に置いた(ただし、pHと塩濃度は毎日ではなく週ごとにチェックした)
【0071】
表5に示す評価を、2016時間の曝露で行った。パネルを以下の基準で評価した。
【0072】
スクライブ腐食:小さい番号の評価ほど良好である。
評価は0〜100であり、数字は目に見える腐食を示すスクライブ面積のパーセントを示す。
【0073】
スクライブの光沢/性質:小さい番号の評価ほど良好である。
評価は0〜100であり、数字は暗色/変色したスクライブであるスクライブのパーセントを示す。
【0074】
ブリスター:小さい番号の評価ほど良好である。
スクライブに隣接し、スクライブから離れたブリスター(すなわちFace)ブリスターの合計数は30までカウントする。
【0075】
最大スクライブブリスターサイズ:小さい番号の評価ほど良好である。
スクライブに隣接する最大のブリスターのサイズは以下のように記録される。
0 スクライブブリスターが存在しない。
<1/16” 最大のスクライブブリスターが直径1/16”未満
>1/16” 最大のスクライブブリスターが直径1/16”と1/8”の間
>1/8” 最大のスクライブブリスターが直径1/8”より大きい
【0076】
【表5】
【0077】
表5の腐食データは、MgOとアミノ酸L−ヒスチジンを組み合わせると、三つのすべての試験基体/表面処理シナリオにおいて、MgOのみよりも、スクライブ腐食保護が改善し、ブリスターが低減したことを明確に示している。
【0078】
例13〜18
これらの例では、MgO単独及びL−ヒスリジンとともに、MgOの様々な供給源及びサイズから作られたコーティングを、二つの異なる基体/処理で比較した。
【0079】
【表6】
【0080】
例13〜18のベース成分について、すべての材料を秤量し、ガラスびんに入れた。次いで、分散媒を、ベース成分材料の全重量のおよそ50%に等しい濃度で、各びんに追加した。実施例の活性化剤成分について、すべての材料を秤量し、ガラスびんに入れた。次いで、分散媒を、活性化剤成分材料の全重量のおよそ50%に等しい濃度で、各びんに追加した。びんをふたで封止した後、3時間の分散時間でLau分散ユニットに置いた。すべての最終的分散物は、7より大きいHegmanゲージ測定値を示した。コーティング塗布の前に、表6に示す対応する比率のベース成分と活性化剤成分とを一緒にブレンドし、十分に混合し、適用前に30〜60分の誘導時間を与えた。
【0081】
例13〜18のコーティングを、アルミニウム合金基体パネル上に、空気噴霧スプレーガンを用いて、0.7〜1.2ミリの乾燥フィルム厚さにまでスプレー塗布した。コーティング塗布の前、アルミニウム合金基体パネルを、以下の二つの基体シナリオの一つで調製した。
【0082】
シナリオ1:2024T3アルミニウム合金パネルを、アセトンふき取りを用いて清浄化し、続いて、EAC−8酸性洗浄剤を用いSCOTCHBRITE 7448超微細パッドを用いて湿潤研磨し、水切れのよい自由表面(water−break free surface)を生成した。パネルを水で十分にリンスし、乾燥させた。
【0083】
シナリオ2:2024T3被覆アルミニウム合金パネルを研磨し、シナリオ1と同様に清浄化し、次いで供給者の技術データシートに記載されたスプレー塗布方法を用いてDESOGEL EAP12で前処理した。前処理したパネルを、コーティング塗布の前に、周囲条件下で2〜4時間乾燥した。
【0084】
コーティング例13〜18でコーティングした試験パネルを、周囲条件下で最低7日間エージングさせ、その後、パネル表面に3.75インチx3.75インチの「X」マークを、表面コーティングを貫通し、下層の金属を露出させるように、十分な深さでスクライブした。次いで、スクライブした(彫りこんだ)コーティングされた試験パネルを、ASTM B117にしたがって、5%塩化ナトリウム中性塩スプレーキャビネット中に置いた(ただし、pHと塩濃度は毎日ではなく週ごとにチェックした)。
【0085】
表7に示す評価を、例13〜14については1008時間の曝露で、例15〜16については1104時間の曝露で、例17〜18については504時間の曝露で行った。パネルを以下の基準で評価した。
【0086】
スクライブ腐食:小さい番号の評価ほど良好である。
評価は0〜100であり、数字は目に見える腐食を示すスクライブ面積のパーセントを示す。
【0087】
スクライブの光沢/性質:小さい番号の評価ほど良好である。
評価は0〜100であり、数字は暗色/変色したスクライブであるスクライブのパーセントを示す。
【0088】
ブリスター:小さい番号の評価ほど良好である。
スクライブに隣接し、スクライブから離れたブリスター(すなわちFace)ブリスターの合計数は30までカウントする。
【0089】
最大スクライブブリスターサイズ:小さい番号の評価ほど良好である。
スクライブに隣接する最大のブリスターのサイズは以下のように記録される。
0 スクライブブリスターが存在しない。
<1/16” 最大のスクライブブリスターが直径1/16”未満
>1/16” 最大のスクライブブリスターが直径1/16”と1/8”の間
>1/8” 最大のスクライブブリスターが直径1/8”より大きい
【0090】
【表7】
【0091】
表7の腐食データは、様々な粒径と表面積の酸化マグネシウム供給源の全三つについて、酸化マグネシウム自体と比べて、アミノ酸L−ヒスチジンを添加することにより、両方の基体シナリオにおいて、計測できる程度にスクライブ腐食保護が改善し、及び/又はブリスター発生が低減したことを明確に示している。
【0092】
例19〜24
表8において特定された材料を用いて、下記のとおり、コーティング例19〜24を調製した。
【0093】
【表8】
【0094】
例19及び24のベース成分について、すべての材料を秤量し、ガラスびんに入れた。次いで、分散媒を、ベース成分材料の全重量のおよそ35%に等しい濃度で、各びんに追加した。びんをふたで封止した後、4時間の分散時間でLau DAS 200分散ユニット(Lau GmbH)に置いた。すべての最終分散液は、7より大きいHegmanゲージの表示数値を示した。コーティング塗布の直前に、各々の例について表8に示したベース成分及び活性化剤成分に対応する量を組み合わせ、十分に混合した。例19及び20のコーティングを、三つの異なる前処理冷延鋼パネル(Bondrite B1000 P−60、Bondrite B1000 DIW、Bondrite B1000 P−99X DIW)の上に、空気噴霧スプレーガンを用いて、1.5〜2.0ミリの乾燥フィルム厚さにまでスプレー塗布した。パネルは供給されたものを用いた。コーティング例19及び20でコーティングした試験パネルを、周囲条件下で最低7日間エージングさせ、その後、パネル表面に一本の3.75インチスクライブを、表面コーティングを貫通し、下層の金属を露出させるように、十分な深さでスクライブした。次いで、スクライブした(彫りこんだ)コーティングされた試験パネルを、ASTM B117にしたがって、5%塩化ナトリウム中性塩スプレーキャビネット中に置いた(ただし、pHと塩濃度は、毎日ではなく週ごとにチェックした)。
【0095】
表9に示す評価を、300時間の曝露で行った。ステンレス鋼メスを用い、十分な力を適用してスクライブの周囲の領域をこすり、ブリスター発生したコーティングを除去した。スクライブを入れた端から、スクライブ後に基体から剥離した点までの距離(ミリメートル)により、パネルを評価した。スクライブクリープの8個の別々の測定からの平均値を求めた。
【0096】
【表9】
【0097】
表9の腐食データは、様々なアミノ酸L−ヒスチジンをMgO含有コーティングに添加することにより、三つのすべての冷延鋼基体において、有意に、より優れた腐食保護をもたらすことを明確に示している。
【0098】
本発明の特定の実施形態を例示の目的で上述してきたが、添付の特許請求の範囲に記載されるように本発明から逸脱することなく本発明の詳細の多くの変形がなされ得ることは、当業者にとって明らかであろう。