特許第6285588号(P6285588)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6285588自燃炭化熱処理装置及びこれを使用した自燃炭化熱処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6285588
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】自燃炭化熱処理装置及びこれを使用した自燃炭化熱処理方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 53/02 20060101AFI20180215BHJP
【FI】
   C10B53/02
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-42316(P2017-42316)
(22)【出願日】2017年3月7日
【審査請求日】2017年6月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517079641
【氏名又は名称】五友エコワークス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517079652
【氏名又は名称】永山 美鈴
(73)【特許権者】
【識別番号】517079663
【氏名又は名称】唐仁原 寿人
(74)【代理人】
【識別番号】100195327
【弁理士】
【氏名又は名称】森 博
(72)【発明者】
【氏名】永山 美鈴
(72)【発明者】
【氏名】唐仁原 寿人
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−339327(JP,A)
【文献】 実公第027900(大正15年)(JP,Y1T)
【文献】 特開2016−088942(JP,A)
【文献】 特開2004−115576(JP,A)
【文献】 特開2007−077378(JP,A)
【文献】 特表2004−534888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 9/00
C10B 49/00
C10B 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方部が底板で閉塞された筒状の本体部と、
前記本体部の上方開口部を開閉可能に閉止する蓋体と、
前記本体部内の前記底板から離れた位置に前記本体部の軸心を横断するように配置された通気孔付きの隔壁板と、
前記本体部内の前記底板と前記隔壁板との間に形成された給気室に空気を導入する給気経路と、
前記本体部内の前記底板の上面から前記隔壁板を貫通し前記本体部の軸心方向に立設され、前記隔壁板より上方の領域に通気孔を有するとともに上方開口部が閉塞された排気用外筒体と、
上方開口部が前記排気用外筒体内に位置するとともに下方開口部が前記底板の外部に開口した状態で前記排気用外筒体内に配置された排気用内筒体と、
前記隔壁板の通気孔と連通した状態で前記隔壁板上に着脱可能に立設された通気孔付きの複数の給気用筒体と、を備え
前記通気孔付きの隔壁板は、前記本体部の軸心の周りに配置された複数の通気孔と、前記通気孔と連通した状態で前記隔壁板の上面に垂直に固着された複数の円筒体とを有し、
前記複数の給気用筒体は、前記隔壁板の前記円筒体に対して、その下端部が差し込まれた状態で前記隔壁板の上面に起立姿勢で保持されて、前記本体部の軸心の周りを少なくとも1周するように配置され、かつ、
前記底板と前記隔壁板との間隔が変更可能である、
ことを特徴とする自燃炭化熱処理装置。
【請求項2】
前記給気経路に流量調整手段を備えた請求項1記載の自燃炭化熱処理装置。
【請求項3】
前記給気経路を経由して前記給気室内へ空気を送給する送風手段を備えた請求項1または2記載の自燃炭化熱処理装置。
【請求項4】
前記隔壁板の下面の前記通気孔の周囲の一部に、前記通気孔内への空気流入を促進する誘導部材を設けた請求項1〜3の何れかの項に記載の自燃炭化熱処理装置。
【請求項5】
前記本体部の内周面に沿って配設され、前記本体部の外部に流入口及び流出口を有する流体循環経路を備えた請求項1〜の何れかの項に記載の自燃炭化熱処理装置。
【請求項6】
前記底板の外部から前記給気室に連通するとともに開閉蓋を有する着火用経路を備えた請求項1〜の何れかの項に記載の自燃炭化熱処理装置。
【請求項7】
請求項1〜の何れかの項に記載の自燃炭化熱処理装置を構成する本体部内に炭化用材料を収容して自燃炭化処理し、前記炭化用材料に由来する炭化物を製造することを特徴とする炭化物の製造方法
【請求項8】
前記炭化用材料が、籾殻、竹粉、木材チップ、竹材チップ及びナッツ類の殻から選択される1種以上である請求項記載の炭化物の製造方法
【請求項9】
請求項1〜の何れかの項に記載の自燃炭化熱処理装置を構成する本体部内に収容した炭化用材料の上方に被熱処理材料を収容し、前記炭化用材料の自燃炭化処理中に発生する熱により前記被熱処理材料を加熱処理することを特徴とする自燃炭化熱処理方法。
【請求項10】
前記被熱処理材料を、有底の筒状若しくは箱状の容器、または、少なくとも一部が通気性を有する容器に入れた状態で前記本体部内に収容する請求項記載の自燃炭化熱処理方法。
【請求項11】
前記被熱処理材料が、電線廃材、電気回路基板、または、強酸、強アルカリ若しくは油分を吸着した炭化物の1種以上である請求項10記載の自燃炭化熱処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、籾殻、竹粉、木材チップ、竹材チップあるいはナッツ類の殻などの炭化用材料を酸素不足状態で自発燃焼させて炭化したり、電線廃材や電気回路基板などの被熱処理材料を加熱処理したりする機能を有する自燃炭化熱処理装置及びこれを使用した自燃炭化熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木材片や竹材片などを酸素不足状態で自発燃焼(以下「自燃」と略記する)させて炭化する装置については、従来、様々な構造、機能を有するものが開発されているが、本発明に関連するものとして、例えば、特許文献1に記載された「炭化装置」がある。
【0003】
前記「炭化装置」は、内底部に複数の空気導入孔を有する略密閉式の炉本体と、炉本体の上部に設けられた材料出入口を開閉する蓋板と、炉本体内に立設されて上端が炉本体天井部近傍に達する加熱排気筒と、空気導入孔への空気を供給する空気取入れ口と、空気取入れ口に対する空気供給量調整手段と、を有する炭化炉を備えている。
【0004】
また、前記炭化炉を構成する加熱排気筒は、下部に炉内空間に連通する排気導入孔を備えて上部が閉塞した外筒と、この外筒内に同心状に配置した内筒とからなる二重筒をなし、内筒は、上端が外筒内の頂部近傍で開口すると共に、下端が炉外への排気路に連通しており、炉本体の底部側を着火部として、炉本体内に装填された炭化用材料を酸素不足状態で自燃させて炭化する機能を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−339327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された「炭化装置」は、木材片や竹材片など比較的大きいサイズ(例えば、長さ100mm〜150mm程度、最大外径50mm〜100mm程度)の炭化用材料を炭化する場合には好適に使用することができるのであるが、籾殻、竹材チップ、木材チップあるいはナッツ類の殻などの比較的小さいサイズ(例えば、外径や粒径などが1mm〜3mm程度)の炭化用材料を炭化することが困難である。
【0007】
具体的には、籾殻、竹材チップ、木材チップあるいはナッツ類の殻などの比較的小さいサイズの炭化用材料を炉本体内に装填すると、これらの炭化材料が炉内空間内で緻密な状態となり、炭化用材料の不完全燃焼で発生する高温の燃焼ガスによる加熱作用、及び、炭化反応に適した酸素不足状態を維持するのに必要な空気が炉内空間全体に均等に行き渡らず、炭化状態にムラが生じたり、炭化処理に長時間を要したりしている。
【0008】
また、炭化装置においては、従来から、炭化用材料の種類、サイズ、形状に左右されることなく、炭化処理に要する時間を短縮することが要請されている。
【0009】
一方、近年は、様々な産業分野において電線廃材や使用済みの電気回路基板などの産業廃棄物が大量に発生しているが、これらの産業廃棄物を効率良く処分したり、産業廃棄物に含まれている有効資源を回収したりする技術が要請されている。
【0010】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、籾殻、竹材チップ、木材チップあるいはナッツ類の殻など比較的小さいサイズの炭化用材料であっても容易に炭化処理することができ、炭化処理に要する時間の短縮を図ることもできる自燃炭化熱処理装置及び自燃炭化熱処理方法、並びに電線廃材や使用済み電気回路基板などの産業廃棄物を熱処理することができる自燃炭化熱処理装置及び自燃炭化熱処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明に係る自燃炭化熱処理装置は、
下方部が底板で閉塞された筒状の本体部と、
前記本体部の上方開口部を開閉可能に閉止する蓋体と、
前記本体部内の前記底板から離れた位置に前記本体部の軸心を横断するように配置された通気孔付きの隔壁板と、
前記本体部内の前記底板と前記隔壁板との間に形成された給気室に空気を導入する給気経路と、
前記本体部内の前記底板の上面から前記隔壁板を貫通し前記本体部の軸心方向に立設され、前記隔壁板より上方の領域に通気孔を有するとともに上方開口部が閉塞された排気用外筒体と、
上方開口部が前記排気用外筒体内に位置するとともに下方開口部が前記底板の外部に開口した状態で前記排気用外筒体内に配置された排気用内筒体と、
前記隔壁板の通気孔と連通した状態で前記隔壁板上に立設された通気孔付きの給気用筒体と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
このような構成とすれば、サイズが比較的小さい炭化用材料が本体部内に緻密な状態で収容されていても、隔壁板の通気孔と連通した状態で隔壁板上に立設された通気孔付きの給気用筒体を介して、炭化用材料の不完全燃焼で発生する高温の燃焼ガスによる加熱作用、及び、炭化反応に適した酸素不足状態を維持するのに必要な空気が本体部の内部全体に均等に行き渡るので、炭化反応が本体部内の広い範囲で均等かつ速やかに進行する。
【0013】
従って、籾殻、竹材チップ、木材チップあるいはナッツ類の殻など比較的小さいサイズの炭化用材料であっても容易に炭化処理することができ、炭化処理に要する時間の短縮を図ることもできる。
【0014】
前記自燃炭化熱処理装置においては、前記給気経路に流量調整手段を備えたものとすることもできる。
【0015】
このような構成とすれば、給気経路を経由して給気室に導入される空気量を流量調整手段で増減させることにより、本体部内に収容された炭化用材料の炭化反応温度を調整することができるので、炭化用材料に適した温度設定とすることができる。また、流量調整手段で空気量を増減して設定温度を変えることにより、炭化物の性質や性状などを変化させることができるので、使用目的に適した炭化物を製造することができる。
【0016】
前記自燃炭化熱処理方法においては、前記給気経路を経由して前記給気室内へ空気を送給する送風手段を備えたものとすることができる。
【0017】
このような構成とすれば、必要に応じて、前記送風手段により前記給気経路を経由して前記給気室内へ空気を送り込むと、この空気は隔壁板の通気孔を経て本体部内へ送り込まれるので、例えば、本体部内に収容された炭化用材料に対し、後述する着火用経路を利用して着火する際に、前記送風手段で前記給気室内へ空気を送り込むことによって着火性を向上させることができる。
【0018】
前記自燃炭化熱処理装置においては、前記隔壁板の下面の前記通気孔の周囲の一部に、前記通気孔内への空気流入を促進する誘導部材を設けることができる。
【0019】
このような構成とすれば、給気室に送り込まれた空気は、前記誘導部材に誘導されて通気孔へ流入し、通気孔を通過して本体部内へ速やかに送り込まれるので、着火作業性が向上し、また、自燃炭化熱処理を効率化することもできる。
【0020】
また、前記自燃炭化熱処理装置においては、複数の前記給気用筒体を、前記本体部の軸心の周りを少なくとも1周するように立設することができる。
【0021】
このような構成とすれば、燃焼ガスにより加熱作用や空気を本体部の内部全体に均等に行き渡らせることが可能となるので、炭化反応の促進に有効である。
【0022】
前記自燃炭化熱処理装置においては、前記給気用筒体が前記隔壁板に対して着脱可能に立設することもできる。
【0023】
このような構成とすれば、本体部内に収容する炭化用材料の種類、サイズ、形状などに応じて給気用筒体の本数を増減させることができる。また、清掃が必要となったときなどは、隔壁板から給気用材料を取り外して作業することもできるので、メンテナンス性が向上する。
【0024】
前記自燃炭化熱処理装置においては、前記底板と前記隔壁板との間隔を変更可能とすることもできる。
【0025】
このような構成とすれば、本体部内における隔壁板の高さ位置を、本体部内に収容する炭化用材料の種類、サイズ、形状などに応じて変更可能となるので、炭化用材料に適した設定とすることができる。なお、本体部に対して隔壁板が着脱可能な構成とすれば、隔壁板の交換が可能となり、メンテナンス性も向上する。
【0026】
前記自燃炭化熱処理装置においては、前記本体部の内周面に沿って配設され、前記本体部の外部に流入口及び流出口を有する流体循環経路を備えたものとすることもできる。
【0027】
このような構成とすれば、外部から流体循環経路に液体や気体などの流体を供給することにより、本体部内で発生する熱を利用して液体や気体を加熱することができるので、熱エネルギーの有効活用を図ることができる。前記液体には水が含まれ、前記気体には空気が含まれる。
【0028】
前記自燃炭化熱処理装置においては、前記底板の外部から前記給気室に連通するとともに開閉蓋を有する着火用経路を備えたものとすることができる。
【0029】
このような構成とすれば、本体部内に収容した炭化用材料の炭化処理を開始するときの着火作業を容易化することができる。
【0030】
次に、本発明に係る第1の自燃炭化熱処理方法は、前述した何れかの自燃炭化熱処理装置を構成する本体部に炭化用材料を収容して炭化処理し、前記炭化用材料に由来する炭化物を製造することを特徴とする。
【0031】
このような構成とすれば、籾殻、竹材チップ、木材チップあるいはナッツ類の殻など比較的小さいサイズの炭化用材料であっても容易に炭化処理することができ、炭化処理に要する時間の短縮を図ることもできる。
【0032】
次に、本発明に係る第2の自燃炭化熱処理方法は、前述した何れかの自燃炭化熱処理装置を構成する本体部内に収容した炭化用材料の上方に被熱処理材料を収容し、前記炭化用材料の自燃炭化処理中に発生する熱により前記被熱処理材料を加熱処理することを特徴とする。
【0033】
このような構成とすれば、自燃炭化処理中に発生する熱を利用して、産業廃棄物などの被熱処理材料を熱分解処理することができる。
【0034】
前記自燃炭化熱処理方法においては、前記被熱処理材料を、有底の筒状若しくは箱状の容器、または、少なくとも一部が通気性を有する容器に入れた状態で前記本体部内に収容することもできる。
【0035】
このような構成とすれば、前記本体部内に対する被熱処理材料の出し入れ作業が容易となるだけでなく、被熱処理材料が、その下方に収容された炭化用材料へ混入することを防止することができる。また、前記容器については、蓋体を備えた容器を使用することもできる。
【0036】
前記自燃炭化熱処理方法においては、前記被熱処理材料は特に限定しないが、産業廃棄物、例えば、電線廃材、電気回路基板、または、強酸、強アルカリ若しくは油分を吸着した炭化物などを好適に自燃炭化熱処理することができる。そのほか、病死した畜産動物の骨肉や魚介類の骨肉などを被熱処理材料として自燃炭化熱処理することもできる。
【発明の効果】
【0037】
本発明により、籾殻、竹材チップ、木材チップあるいはナッツ類の殻など比較的小さいサイズの炭化用材料であっても容易に炭化処理することができ、炭化処理に要する時間の短縮を図ることもできる自燃炭化熱処理装置及び自燃炭化熱処理方法、並びに、電線廃材や使用済み電気回路基板などの産業廃棄物を熱処理することができる自燃炭化熱処理装置及び自燃炭化熱処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の実施形態である自燃炭化熱処理装置を示す一部省略垂直断面図である。
図2図1に示す自燃炭化熱処理装置の一部省略水平断面図である。
図3図1に示す自燃炭化熱処理装置を構成する隔壁板の中央寄り付近の一部省略拡大図である。
図4図2中のA−A線における一部省略断面図である。
図5図1に示す自燃炭化熱処理装置を構成する給気用筒体の正面図である。
図6図1に示す自燃炭化熱処理装置を構成する流体循環経路の正面図である。
図7図6に示す流体循環経路の平面図である。
図8図1に示す自燃炭化熱処理装置を使用した自燃炭化熱処理方法で使用する熱処理容器の斜視図である。
図9図1に示す自燃炭化熱処理装置を使用した自燃炭化熱処理方法で使用するその他の熱処理容器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図1図7に基づいて、本発明の実施の形態である自燃炭化熱処理装置100及びこれを使用した自燃炭化熱処理方法について説明する。図1図2に示すように、本実施形態の自燃炭化熱処理装置100は、本体部10、底板11、蓋体12、隔壁板20、給気室30、給気経路31、排気用外筒体40、排気用内筒体50、給気用筒体60、流量調整手段70、流体循環経路80、着火用経路90及び排気経路95などで構成されている。本体部10の外周面には、本体部10を起倒可能に軸支するための軸体14が、本体部10の軸心10cと直交する方向に取り付けられている。
【0040】
本体部10の外周部分は鋼板製の円筒部材16で形成され、その下方部10bは底板11で閉塞され、本体部10の上方開口部10aを開閉可能に閉止する蓋体12を備えている。本体部10内の底板11から離れた位置に本体部10の軸心10cを横断するように隔壁板20が配置されている。隔壁板20は中心に円形の貫通孔20cを有する円板状の部材であり、その全面に亘って複数の通気孔20aが開設されている。
【0041】
図2に示すように、複数の通気孔20aは、本体部10の軸心10cを中心とする半径の異なる3つの仮想円C1,C2,C3に沿って開設されている。最も内側の仮想円C1に沿って8個の通気孔20aが等間隔に開設され、その外側の仮想円C2に沿って12個の通気孔20aが等間隔に開設され、最も外側の仮想円C3に沿って9個の通気孔20aが等間隔に開設されている。図3に示すように、全ての通気孔20aの上方を覆うような状態で、屋根形のカバー20bが隔壁板20の上面に固着されている。
【0042】
また、図4に示すように、隔壁板20の下面の通気孔20aの周囲の一部に、通気孔20a内への空気流入を促進する平板状の誘導部材20e(所謂、邪魔板)が垂下状に取り付けられている。誘導部材20eは、隔壁板20の下面において、それぞれの通気孔20aの周囲の下流側、即ち、隔壁板20の下面部分を流動する空気流の下流側に配置されている。
【0043】
図3に示すように、隔壁板20は、排気用外筒体40の下端部付近の周りに上下に重ねて嵌装された二つの片側フランジ管F1,F2と、底板11の上面に立設された複数の支柱21及びその延長部材22と、により、底板11から所定距離だけ離れた位置に水平保持されている。片側フランジ管F2は片側フランジ管F1上に着脱可能に載置され、片側フランジ管F1,F2のフランジ部f1,f2はそれぞれ底板11の下面を保持可能である。支柱21、延長部材22はそれぞれの上端側に縮径部21a,22aを有し、延長部材22は支柱21の上端側の同軸上に着脱可能に接続されている。隔壁板20に開設された貫通孔20dに対し、それぞれの縮径部21a,22aが着脱可能に嵌入される。
【0044】
図3に示すように、二つの片側フランジ管F1,F2は積み重ねられ、支柱21の上端部に延長部材22が接続されているが、片側フランジ管F2、延長部材22をそれぞれ片側フランジ管F1、支柱21に着脱することにより、底板11と隔壁板20との距離を変更することができる。
【0045】
底板11から所定距離だけ離れた位置に隔壁板20を保持することにより、本体部10内の底板11と隔壁板20との間に給気室30が形成されている。給気室30内に空気を導入するための給気経路31が本体部10の下端部寄りの部分から外部へ突出した状態に設けられている。図2に示すように、給気経路31は、本体部10の軸心10cを中心とする仮想円(図示せず)の接線方向と平行をなすように配置されている。給気経路31の上流側端部には、給気経路31内に流入する空気量を増減するための流量調整手段70が配置されている。流量調整手段70は、モータ70aの駆動によりボールバルブ70bを開閉する機能を有する電動式ボールバルブであるが、これに限定するものではない。
【0046】
図1に示すように、流量調整手段70の上流側には、流量調整手段70及び給気経路31を経由して給気室30内へ空気を送給する送風手段である電動送風機15が配置されている。電動送風機15を稼働させると、流量調整手段70及び給気経路31を経由して給気室30内へ空気を送給することができる。
【0047】
図1図3に示すように、排気用外筒体40は、本体部10内の底板11の上面から隔壁板20の貫通孔20cを貫通して本体部10の軸心10cと同軸上に立設されている。排気用外筒体40は、複数の通気孔40aを有する下部筒体41と、下部筒体41の上端に接続された上部筒体42とで形成されている。下部筒体41の長さは上部筒体42の半分程度であり、下部筒体41の周壁の厚さは上部筒体42の2倍程度である。
【0048】
下部筒体41において、隔壁板20より上方の領域に複数の通気孔40aが開設されている。複数の通気孔40aが開設されている領域の軸心10c方向の長さは、隔壁板20の上面から排気用外筒体40の上方部40bまでの長さの1/4程度である。排気用外筒体40の内部は、複数の通気孔40aを経由して、本体部10内の隔壁板20より上方の空間(燃焼室13)と連通しているが、排気用外筒体40の内部と給気室30の内部とは連通していない。排気用外筒体40の上方部40bは開閉可能な蓋体43によって閉止されている。
【0049】
図1図3に示すように、排気用外筒体40の内部には、排気用内筒体50が軸心10cと同軸上に配置されている。排気用内筒体50の上方開口部50aは排気用外筒体40内の蓋体43から離れた位置にあり、下方開口部50bは底板11の外部に開口した状態となっている。下方開口部50bにはチーズ管51が接続され、チーズ管51の一方の開口部51aは排気経路95に接続されている。チーズ管51の他方の開口部51b側は開閉可能な蓋体52で閉塞されている。
【0050】
図1図3に示すように、仮想円C2に沿って隔壁板20に開設された12個の通気孔20aのうちの半数の通気孔20aとそれぞれ連通した状態で6本の給気用筒体60が隔壁板20上に立設されている。給気用筒体60は、仮想円C2に沿って、通気孔20aの一つ置きの位置に立設されている。
【0051】
図2図4に示すように、仮想円C2に沿って、通気孔20aの一つ置きの位置の隔壁板20の上面に、給気用筒体60より短い円筒体61が通気孔20aと連通した状態で垂直に固着されている。円筒体61の外径は給気用筒体60の内径より小さく、円筒体61の長さは給気用筒体60の長さの1/10程度である。6本の給気用筒体60は、それぞれの下端部60bの開口内に円筒体61が差し込まれた状態で隔壁板20の上面に起立姿勢で保持されている。給気用筒体60は円筒体61に対して着脱可能である。
【0052】
図5に示すように、給気用筒体60は、下端部60b及び上端部60cが開口し、周壁に複数の通気孔60aが開設された円筒状の部材である。複数の通気孔60aは、給気用筒体60の下端部60b寄りの部分を除く、給気用筒体60の長さ方向の略全ての領域に均等に分散するように開設されている。給気用筒体60の長さは、図1に示す隔壁板20の上面から本体部10の上方開口部10aまでの距離の95%程度であるが、これに限定するものではないので、例えば、本体部10の燃焼室13内に収容する炭化用材料の収容量(収容高さ)などに応じて、給気用筒体60の長さを減少すること(例えば、前記距離の30%〜50%程度とすること)もできる。
【0053】
図1図2に示すように、本体部10の内周面に沿って流体循環経路80が配設されている。図2図6図7に示すように、流体循環経路80は、本体部10の外部に流入口81及び流出口82を有する円管状の部材であり、本体部10を構成する円筒部材16の下半分程度の内周面に沿って螺旋を描くように配設されている。
【0054】
詳しくは、図1に示すように、円筒部材16の内周面に沿って1500℃耐熱性を有する断熱材84(例えば、石膏を含む断熱材)が円筒状に付設され、この断熱材84の内周面に沿って円筒状に形成された耐火キャスタブル83(例えば、シラスバルーンが混入された耐熱コンクリート)内に流体循環経路80が螺旋状に埋設されている。
【0055】
本体部10内の耐火キャスタブル83より上方の領域においては、円筒部材16の内周面に沿ってセラミックス製の綿状材86が複数層の円筒体を形成するように配設され、最内周に位置する綿状材86の内周面に沿って鋼板85が円筒状に配設されている。鋼板85は、帯板状鋼板を円筒状に湾曲させて配設したものであり、帯板状鋼板の長手方向の両端部分は互いに固着されることなく、開放されているので、後述する炭化物製造工程における燃焼室13内の比較的大きな温度変化に対し、円筒状の鋼板85は円周方向に伸縮して対応可能である。
【0056】
図1に示すように、本体部10の底板11の下面にはエルボ管状の着火用経路90が設けられている。着火用経路90は、底板11の外部から給気室30に連通しており、その開口部91には開閉蓋92が設けられている。
【0057】
次に、自燃炭化熱処理装置100を使用して炭化用材料M(例えば、籾殻、竹材チップ、木材チップなど)を炭化させて炭化物を製造する方法について説明する。図1に示すように、本体部10の隔壁板20より上方の燃焼室13内にMを投入し、上方開口部10aを蓋体12で閉止し、クランプ金具(図示せず)などを用いて締め付ける。この後、着火用経路90の開閉蓋92を開き、ガスバーナー(図示せず)などの着火熱源を開口部91から着火用経路90内へ差し込んで加熱する。このとき、図1中に示す電動送風機15を稼働させると、流量調整手段70及び給気経路31を経由して給気室30内へ空気が送給される。
【0058】
前述したように、給気経路31は、本体部10の軸心10cを中心とする仮想円(図示せず)の接線方向と平行をなすように配置されているので、給気経路31を経由して給気室30内へ流入した空気は、給気室30内において、軸心10cの周りを一定方向(図2において反時計方向)に回転流動する。
【0059】
また、前述した図4に示したように、隔壁板20の下面の通気孔20aの周囲の一部に平板状の誘導部材20eが垂下状に取り付けられている。誘導部材20eは通気孔20aの周囲において、給気経路31から給気室30内へ流入して給気室30内を回転流動する空気流の下流側に配置されているので、給気室30内を流動する空気流は誘導部材20eに当接して流動方向が上方へ変わり、通気孔20a内を経由して、速やかに本体部10の燃焼室13内へ流れ込むこととなる。
【0060】
着火熱源の加熱及び電動送風機15からの送風により、着火熱源の燃焼ガスと加熱された空気とが混合した状態で給気室30内に充満するとともに、誘導部材20eの誘導作用により、隔壁板20の通気孔20aを通過して燃焼室13内へスムーズに流れ込むので、燃焼室13内の最下部に位置する炭化用材料Mに着火し、その自燃による熱分解が開始する。炭化用材料Mの自燃が開始したら、着火熱源を着火用経路90から取り出し、開口部91を開閉蓋92で閉止する。
【0061】
自燃が開始すると、自燃によって発生する高温の燃焼ガスが炭化用材料Mの隙間を通って上昇していくので、これに伴って熱気が燃焼室13内の上方へ伝わっていき、炭化用材料Mの下方から上方に向かって自燃が進行する。
【0062】
炭化用材料Mの自燃によって発生する燃焼ガスの一部は、排気用外筒体40の複数の通気孔40aを通過して排気用外筒体40と排気用内筒体50との間の空間44内に吸い込まれ、この空間44内を上昇していき、排気用外筒体40の上方部40b付近に位置する上方開口部50aから排気用内筒体50内へ流入し、この排気用内筒体50内を下降していきチーズ管51及び排気経路95を経由して、自燃炭化熱処理装置100の外部へ流出する。
【0063】
このような過程において、排気用外筒体40内を通過する燃焼ガスの熱気と、周囲の炭化用材料Mの自発燃焼による熱気と、により排気用外筒体40の下方部分が、その内外両面から加熱され赤熱状態となる。燃焼室13内での自燃領域が拡がっていくにつれて、増加する燃焼ガスの熱気と蓄熱によって排気用内筒体50の赤熱部分が次第に上方へ拡大していくので、排気用外筒体40内の排気用内筒体50も赤熱し始め、やがて排気用外筒体40及び排気用内筒体50全体が赤熱状態となる。
【0064】
これにより、燃焼室13内の炭化用材料Mは、隔壁板20側から上昇してくる熱気と、赤熱した排気用外筒体40及び排気用内筒体50から周囲へ放射される熱気とによって加熱されるので、炭化用材料Mの下方部分と中央部分の両方部分から熱分解が開始し、自燃温度に達した部分から自燃が開始する。
【0065】
熱分解及び自燃領域が拡がっていくにつれて、排気用外筒体40及び排気用内筒体50は流入する燃焼ガスの増加によりさらに高温化して周囲への熱放射を増し、その相乗効果で炭化用材料Mの熱分解反応の進行と自発燃焼領域の拡大が促進されるので、やがて燃焼室13内全体が均一な高温状態になり、収容された炭化用材料Mの全てが熱分解・自燃して炭化する。
【0066】
前述した炭化処理工程においては、排気用外筒体40及び排気用内筒体50からの燃焼排ガスの排出に伴い、給気経路31から給気室30へ吸い込まれた空気は複数の通気孔20aを通過して燃焼室13内に空気が吸入される。また、複数の通気孔20aのうち、給気用筒体60と連通する通気孔20aを通過した空気はそれぞれ複数の給気用筒体60内へ流入し、その内部を上昇していき、複数の通気孔60a及び上方開口部60cから燃焼室13内へ供給される。
【0067】
また、給気経路31から給気室30内へ吸い込まれる空気量は、給気経路31の上流側に配置された流量調整手段70で制御することにより、燃焼室13内を適切な酸素不足状態に維持することができる。従って、燃焼室13内の炭化用材料Mは、不完全燃焼によって炭素成分が殆ど燃焼しない状態で熱分解反応が継続し、最終的に完全に炭化することになる。
【0068】
自燃炭化熱処理装置100においては、隔壁板20の通気孔20aだけでなく、複数の給気用筒体60内を上昇する空気がそれぞれ複数の通気孔60aや上方開口部60cから炭化用材料Mに供給され、これに伴って、炭化用材料Mの不完全燃焼で生じる高温の燃焼ガスが給気用筒体60内容を上昇して炭化用材料Mの加熱に供されるので、籾殻などの様に燃焼室13内に隙間なく充填される粒状の炭化用材料であっても、燃焼室13全体に適切な酸素不足状態を維持することができる。このため、籾殻などの粒状の炭化用材料を容易に炭化処理することができ、炭化処理時間の短縮を図ることもできる。
【0069】
なお、前述した炭化物製造工程のスタート段階においては、着火熱源を開口部91から着火用経路90内へ差し込んで加熱することにより炭化用材料Mに着火したが、自燃炭化熱処理装置100の場合、着火方法は限定されないので、炭化用材料Mを燃焼室13内へ収容して蓋体12を閉止する前に、炭化用材料Mの上面部分を加熱、着火させて蓋体12を閉止することによって炭化処理を開始することもできる。また、着火用経路90からの加熱による着火と、炭化用材料Mの上面部分の加熱による着火とを併用して炭化処理を開始することもできる。
【0070】
一方、燃焼室13内の温度は、給気経路31から給気室30内へ供給される空気量の多少によって昇降するので、流量調整手段70のモータ70aを作動させてボールバルブ70bの開度を変更することにより、燃焼室13内の温度を調整することができる。
【0071】
流量調整手段70による開度調整は、実験によって得られたデータに基づいて、燃焼室13内に充填する炭化用材料Mの種類、粒径、含水率及び充填量などに適した処理温度データを予め作成しておき、これを温度センサーによる計測温度と炉内温度に関連付けた制御データとして制御装置(図示せず)に入力し、制御装置からの指令信号によって自動的に行うように設定することができる。
【0072】
炭化用材料Mの熱分解(炭化)が終わると、燃焼排ガスの温度が急速に低下するので、これを温度センサー(図示せず)にて検出することによって炭化終了が判明する。炭化終了後、生成した炭化物の温度が危険性のない程度まで低下したら、クランプ具(図示せず)を外して蓋体12を上方開口部10aから離脱させ、操作ハンドル(図示せず)を回転させ、本体部10を軸体14中心に90度程度(軸心10cが略水平となる程度まで)傾倒させると、燃焼室13内の炭化物を上方開口部10aから取り出すことができる。
【0073】
自燃炭化熱処理装置100においては、炭化用材料Mの自燃によって発生する高温の燃焼排ガスは、排気用外筒体40下部の複数の貫通孔40aから排気用外筒体40内に流入してその内部を上昇し、排気用外筒体40の蓋体43付近の上方開口部50aから排気用内筒体50内へ流入してその内部を下降していき、本体部10の底板11から外部へ流出する。
【0074】
このように自燃炭化熱処理装置100においては、二重管構造をなす、排気用外筒体40及び排気用内筒体50により長い排気経路を確保することができるので、燃焼排ガスから排気用外筒体40及び排気用内筒体50への熱伝導が多くなるとともに、燃焼排ガスによって外部へ散逸する熱量が減少し、高い熱効率が得られる。
【0075】
また、燃焼排ガスが排気用外筒体40及び排気用内筒体50の内部で昇降移動することにより、排気用外筒体40及び排気用内筒体50の赤熱化が進行し、この排気用外筒体40及び排気用内筒体50からの熱放射によって燃焼室13内の温度が上昇し、炭化用材料Mの熱分解及び自燃の進行が促進されるので、炭化終了までに要する時間を短縮することができる。
【0076】
さらに、図1図2に示すように、本体部10の内周面に沿って流体循環経路80が配設され、この流体循環経路80は、本体部10の外部に流入口81及び流出口82を有しているので、例えば、流体循環経路80内に水を流動させれば、炭化処理中に燃焼室13内で発生する熱を利用して湯を生成することができる。また、流体循環経路80内に空気を流動させれば、炭化処理中に燃焼室13内で発生する熱を利用して高温空気を生成することができる。
【0077】
一方、排気経路95から排出される燃焼排ガスは、ガス再燃焼炉(図示せず)に送って再燃焼させれば、ガス中に微量の有機物が含まれていても完全に分解可能であり、最終的に外部へ排出される排ガスを無毒化、無臭化することができる。また、自燃炭化熱処理装置100においては、排気経路95を木酢液抽出器(図示せず)に接続することにより、木酢液や竹酢液を抽出、回収できるようにすることもできる。
【0078】
本実施形態の自燃炭化熱処理装置100を使用して、即ち、自燃炭化熱処理装置100の本体部10内の燃焼室13内に籾殻を収容し、前述した手順で着火し、800℃程度の温度で自燃炭化処理したところ、型崩れすることなく、元の籾殻の形状を維持した状態の籾殻炭化物(炭化籾殻)を短時間で生成することができた。型崩れのない籾殻炭化物(炭化籾殻)は多くの微細な空孔(空隙)を有しているので、例えば、土壌改良剤として土中に混入させた場合、籾殻炭化物(炭化籾殻)中の空孔(空隙)が土壌中に生息する有益微生物の住処となり、優れた土壌改良効果を発揮する。
【0079】
本実施形態の自燃炭化熱処理装置100は、籾殻、竹材チップ、木材チップあるいはナッツ類の殻などの粒状の炭化用材料Mを炭化処理するのに好適であるが、用途を限定するものではないので、木材片、竹材片などの炭化用材料であっても容易に炭化処理することができ、前述と同様の優れた作用効果を得ることができる。また、自燃炭化熱処理装置100は、型枠廃材、住宅用木材、家屋解体廃材なども炭化処理することができ、これらの炭化用材料に塗料やシロアリ駆除剤などが付着していても、前述した自燃炭化熱処理方法によって生成された炭化物にはダイオキシンなどの有害物質が基準値以上に含まれることがない。
【0080】
次に、図1図8図9を参照し、図1に記載された自燃炭化熱処理装置100を使用したその他の自燃炭化熱処理方法、例えば、電線廃材L及び使用済みの電気回路基板CBの自燃炭化熱処理方法(熱分解処理方法)について説明する。
【0081】
電線廃材Lの熱処理を行う場合、図1に示す自燃炭化熱処理装置100を構成する本体部10内に立設された給気用筒体60を隔壁板20から取り外し、自燃炭化熱処理装置100から離脱させる。この後、本体部10内の燃焼室13に木材チップなどの炭化用材料Mを収容する。このとき、炭化用材料Mの収容量は、燃焼室13の深さの1/3〜1/2程度することが望ましい。
【0082】
次に、図8に示すような、熱処理容器200に電線廃材Lを収容し、この熱処理容器200を、自燃炭化熱処理装置100の本体部10の上方開口部10aから燃焼室13内に装入し、前述した炭化用材料Mの上に配置する。
【0083】
図8に示すように、熱処理容器200は、網材で形成された有底円筒体であり、その軸心200cと同軸上に網材で形成された筒状体201が配置されている。筒状体201の上端及び下端は開口部201aとなっており、下端の開口部(図示せず)は熱処理容器200の底部と一体化した状態で底部下面(図示せず)に露出している。熱処理容器200の外径は燃焼室13の内径より小さく、筒状体201の内径は排気用外筒体40の外径より大である。
【0084】
従って、熱処理容器200を燃焼室13内に装入するとき、熱処理容器200の底部を下にした姿勢で熱処理容器200の軸心200cを本体部10の軸心10cに合わせた状態とし、本体部10の上方開口部10aから燃焼室13内に向かって熱処理容器200を下降させれば、排気用外筒体40が筒状体201内を貫通した状態で燃焼室13内に配置される。
【0085】
電線廃材Lが収容された熱処理容器200が燃焼室13内の炭化用材料Mの上方に配置されたら、本体部10の上方開口部10aを蓋体12で閉塞し、前述した炭化処理の際の手順に従って、炭化用材料Mに着火して炭化処理を開始すると、炭化処理中に発生する熱により電線廃材Lを形成する合成樹脂製の外被(図示せず)が熱分解される。熱分解された外被は著しく脆化しているので、僅かな外力を加えるだけで容易に崩壊し、金属芯線と分別することができる。本実施形態の自燃炭化熱処理方法においては、本体部10の燃焼室13内の温度が600℃〜800℃程度に維持されるので、ダイオキシンの発生もなく、安全である。
【0086】
なお、自燃炭化熱処理装置100を使用して電線廃材Lを熱処理する場合、熱処理容器200を使用せずに、本体部10の燃焼室13内に収容された木材チップなどの炭化用材料Mの上方に電線廃材Lを直接載置して、前述した手順にて熱処理を行うこともできる。
【0087】
次に、図1図9を参照しながら電気回路基板CBの自燃炭化熱処理方法について説明する。この場合も、前述と同様、図1に示す自燃炭化熱処理装置100を構成する本体部10内に立設された給気用筒体60を隔壁板20から取り外し、自燃炭化熱処理装置100から離脱させる。この後、本体部10内の燃焼室13に木材チップなどの炭化用材料Mを、燃焼室13の深さの1/3〜1/2程度まで収容する。
【0088】
次に、図9に示すような、熱処理容器300に電気回路基板CBを収容し、その上方開口部300aを蓋体303で閉じた後、熱処理容器300全体を、自燃炭化熱処理装置100の本体部10の上方開口部10aから燃焼室13内に装入し、前述した炭化用材料Mの上に配置する。熱処理容器300及び蓋体303はアルミニウム製であるが、これに限定するものではない。
【0089】
図9に示すように、熱処理容器300は、金属材料で形成された有底円筒体であり、その軸心300cと同軸上に金属材料で形成された筒状体301が配置されている。筒状体301の上端及び下端は開口部301aとなっており、下端の開口部(図示せず)は熱処理容器300の底部と一体化した状態で底部下面(図示せず)に露出している。熱処理容器300及び筒状体301の軸心300c方向の上半分程度の領域にはそれぞれ複数の通気孔302が分散状に開設されている。熱処理容器300の外径は燃焼室13の内径より小さく、筒状体301の内径は排気用外筒体40の外径より大である。
【0090】
従って、熱処理容器300の底部を下にした姿勢で熱処理容器300の軸心300cを本体部10の軸心10cに合わせた状態とし、本体部10の上方開口部10aから燃焼室13内に向かって熱処理容器300を下降させれば、排気用筒体40が筒状体301内を貫通した状態で燃焼室13内に配置される。
【0091】
電気回路基板Bが収容された熱処理容器300が燃焼室13内の炭化用材料Mの上方に配置されたら、本体部10の上方開口部10aを蓋体12で閉塞し、前述した炭化処理の際の手順に従って、炭化用材料Mに着火し、炭化処理を開始すると、炭化処理中に発生する熱により電気回路基板CBを形成する合成樹脂部分(図示せず)が熱分解される。熱分解の過程において、電気回路基板CBを形成する合成樹脂部分は脆化するので、電気回路基板CBに含まれていた金属材料は合成樹脂部分から分離され、熱処理容器300内の底部に貯留するので、有用な金属材料を容易に回収することができる。
【0092】
また、熱処理容器300の上方開口部300aは蓋体303で閉塞されているので、熱処理中に、熱処理容器300内へ異物が侵入したり、熱処理容器300内の電気回路基板CB中の有用金属資源が散逸したりするのを防止することができる。
【0093】
なお、前述した実施形態に係る自燃炭化熱処理方法においては、本体部10内に立設された給気用筒体60を隔壁板20から取り外して、前記熱処理を行ったが、これに限定しないので、例えば、給気用筒体60の代わりに、給気用筒体60より短い長さ(例えば、燃焼室13の深さの1/3〜1/2程度の長さ、あるいは、燃焼室13内に熱処理容器200を収容可能なスペースを確保できる長さ)の給気用筒体を取り付けた状態で炭化用材料を燃焼室13内に収容し、この炭化用材料の上方に、被熱処理材料を直接または熱処理容器に収容した状態で配置して、前述した自燃炭化熱処理方法を実施することもできる。
【0094】
また、自燃炭化熱処理装置100を使用した自燃炭化熱処理方法の対象となる被熱処理材料は、前述した電線廃材Lあるいは電気回路基板CBに限定しないので、その他のもの(例えば、病死した畜産動物類の骨肉や魚介類の骨肉など)を自燃炭化熱処理することもできる。
【0095】
なお、図1図9に基づいて説明した自燃炭化熱処理装置100及びこれを使用した自燃炭化熱処理方法は本発明に係る自燃炭化熱処理装置及び自燃炭化熱処理方法を例示するものであり、本発明に係る自燃炭化熱処理装置及び自燃炭化熱処理方法は前述した自燃炭化熱処理装置100や自燃炭化熱処理方法に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の自燃炭化熱処理装置及び自燃炭化熱処理方法は、籾殻、竹材チップ、木材チップあるいはナッツ類の殻あるいは木材片、竹材片などの炭化用材料を製造したり、電線廃材や使用済み電気回路基板などの電気産業廃棄物を熱処理したりする技術として、様々な産業分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0097】
10 本体部
10a,50a,300a 上方開口部
10b 下方部
10c,200c,300c 軸心
11 底板
12,41 蓋体
13 燃焼室
14 軸体
15 電動送風機
16 円筒部材
20 隔壁板
20a,20c,40a,302 通気孔
20b カバー
20e 誘導部材
21 支柱
21a,22a 縮径部
22 延長部材
30 給気室
31 給気経路
40 排気用外筒体
40b 上方部
41 下部筒体
42 上部筒体
43,52,303 蓋体
44 空間
50 排気用内筒体
50a 上方開口部
51 チーズ管
51a,51b,91,201a,301a 開口部
60 給気用筒体
60b 下端部
60c 上端部
61 円筒体
70 流量調整手段
70a モータ
70b ボールバルブ
80 流体循環経路
81 流入口
82 流出口
83 耐火キャスタブル
84 断熱材
85 鋼板
86 綿状材
90 着火用経路
92 開閉蓋
95 排気経路
200,300 熱処理容器
201,301 筒状体
C1,C2,C3 仮想円
CB 電気回路基板
F1,F2 片側フランジ管
f1,f2 フランジ部
L 電線廃材
【要約】
【課題】籾殻など比較的小さいサイズの炭化用材料でも容易に炭化処理することができ、炭化処理に要する時間も短縮することができる自燃炭化熱処理装置及び自燃炭化熱処理方法などを提供する。
【解決手段】自燃炭化熱処理装置100は、円筒状の本体部10と、その上方開口部10aを閉止する蓋体12と、本体部10内の底板11の上方に配置された通気孔20a付きの隔壁板20と、底板11と隔壁板20との間の給気室30に空気を導入する給気経路31と、底板11の上面から隔壁板20を貫通して立設され、複数の通気孔40aを有する排気用外筒体40と、上方開口部50aが排気用外筒体40内に位置した状態で排気用外筒体40内に挿入された排気用内筒体50と、隔壁板20の通気孔20aと連通した状態で隔壁板20上に立設された通気孔60a付きの給気用筒体60と、を備えている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9