(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような熱水を用いた方法では、十分な抽出を行うためには熱水による長時間の煮出しが必要となり、また煮出し中には泡立つため各種手段による消泡が欠かせず手間が掛かっていた。
【0006】
一方、エタノール、pHを調整した溶液による抽出では抽出後のエキスは、水及び牡蠣由来以外の物質を含み食品としては好ましくない場合もあるため、さらなる処理を必要とした。
【0007】
さらに、原料として用いた牡蠣は過加熱されているため、あるいはアルコール等による抽出を行われているため、食用の牡蠣としての価値は損なわれており、乾物する等の用途にしか用いることができなくなっていた。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、タウリンを豊富に含有する牡蠣エキス、及び牡蠣そのものの商品価値を低下させずに且つ比較的容易に牡蠣エキスを得ることが可能な牡蠣エキスの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、タウリンを含有する牡蠣エキスであって、Brix値が19%である場合のタウリンの含有量が1500mg/100mL以上である牡蠣エキスが提供される。
【0010】
本発明者が減圧蒸気により牡蠣の剥身を蒸す工程において、蒸した際に廃液として溜まっていた液体について調べてみたところ、予想外に高い濃度でタウリンを含有し、牡蠣エキスとしての品質も高いことを見出した。すなわち、減圧蒸気(低温・低圧の湿り蒸気)により高品質の蒸し牡蠣を生産すると同時に、豊富にタウリンを含んだ牡蠣エキスを得ることができることがわかった。
【0011】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
本発明は、別の観点によれば、好ましくは、蒸気を用いて牡蠣の剥身を蒸して牡蠣エキスを抽出する抽出工程と、抽出された前記牡蠣エキスを濃縮する濃縮工程と、を含む、牡蠣エキスの製造方法である。
好ましくは、前記蒸気は、100℃以上の温度かつ1kgf/cm
2G以下の圧力の蒸気である。
好ましくは、前記濃縮工程における加熱温度は、50〜90℃である。
好ましくは、前記濃縮工程は、減圧条件下で行われる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明の実施形態について、必要に応じて図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。なお、以下、圧力の単位を、単位面積[cm
2]に働く力[kg]である[kg/cm
2]で表す。ここで、最後のGはゲージ圧力を意味し、「圧力計に指示される」大気圧を基準とした圧力のことであるため、ゲージ圧力=絶対圧力−大気圧となる。
以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0014】
1.牡蠣エキスの製造方法
一実施形態に係る牡蠣エキスの製造方法は、蒸気を用いて牡蠣の剥身を蒸して牡蠣エキスを抽出する抽出工程と、抽出された牡蠣エキスを濃縮する濃縮工程とを含む。
【0015】
(抽出工程)
抽出工程は、蒸気を用いて牡蠣の剥身を蒸して牡蠣エキスを抽出する。
【0016】
一実施形態で用いる牡蠣は、イタボガキ科に属する貝であり、マガキ属又はイタボガキ属に属する貝が好ましい。マガキ属に属する貝としては、例えば、マガキ(真牡蠣)、イワガキ(岩牡蠣)、スミノエガキ(住之江牡蠣)などが好適に用いられる。また、イタボガキ属に属する貝としては、例えば、イタボガキ(板甫牡蠣)又はヨーロッパヒラガキなどが好適に用いられる。
【0017】
一実施形態において用いられる蒸気は、100℃以上の温度かつ1kgf/cm
2G以下の圧力の蒸気であることが好ましく、100℃以上の温度かつ1kgf/cm
2G以上の圧力の高圧蒸気を用いて水を沸騰させることによって得られた、100℃以上105℃以下の温度かつ0kgf/cm
2G以上0.5kgf/cm
2G以下の圧力の蒸気であることがより好ましい。このような蒸気を「減圧蒸気」または「低温・低圧蒸気」と称する場合もある。なお、蒸すために用いられる蒸気(減圧蒸気または低温・低圧蒸気)の温度及び圧力は、蒸気変換装置(後述のスチームチェンジャー等)内における変換直後の温度及び圧力を意味している。実際に牡蠣に噴射され接触する蒸気の状態は、上記の条件とは多少異なっていることがあり得るが、当該蒸気変換装置内での温度及び圧力が上記の条件を満たすことで通常、本発明の効果を十分に奏することが可能である。
また、本願明細書において「蒸気」とは、水蒸気を含む気体を意味し得る。すなわち、「蒸気」には、水蒸気を含み、かつ水粒子が分散している気体が含まれるものとする。このような状態の蒸気のことを、「湿り蒸気」と称する場合もある。
【0018】
また、牡蠣の剥身を蒸気によって蒸すことは、特に限定されるものではないが、例えば、蒸機内で液体中に浸されていない状態の牡蠣の剥身に対して蒸気を噴射することによって行われ、より具体的な例としては、メッシュ(網)上に牡蠣の剥身を載置し蒸気を噴射することによって行われる。牡蠣をメッシュ上に載置することにより、蒸気が全面に接触し均一に牡蠣が加熱され、また抽出された牡蠣エキスをメッシュベルトの下に配置された受け皿等に容易に集める(収集する)ことができる。また、連続プロセスにより製造する場合にはメッシュベルト上に載置され搬送され蒸機を通過しながら加熱される。なお、ノロウィルスを死滅させるために牡蠣の中心温度が85℃以上である状態を1分間以上維持することが好ましい。
【0019】
一実施形態においては、
図1に示すような製造装置を用いて牡蠣の剥身が蒸される。牡蠣の剥身を蒸すための製造装置1000は、高圧蒸気を供給するボイラー102と、高圧蒸気を減圧蒸気に変換するスチームチェンジャー106と、減圧蒸気を用いて牡蠣の剥身を蒸す蒸機110と、を備える。また、この製造装置1000は、ボイラー102及びスチームチェンジャー106を接続する高圧蒸気配管104と、スチームチェンジャー106及び蒸機110を接続する減圧蒸気配管108と、牡蠣の剥身120を搬送するためのメッシュ(網)ベルト118と、を備える。蒸機110は、抽出される牡蠣エキスを受け集める収集用の受け皿をベルト118に備えるか、または蒸気噴出口122b付近及び進行方向下方に落下したエキスを集めるための傾斜をつけた1又は複数の配管を有してもよい。また、直接濃縮を行う濃縮装置へ送液するか、一時貯蔵用のタンクへ注入するようにしてもよい。また、上記配管の途中、入口、出口において牡蠣片や異物等を除去するための部位(例えば、メッシュが60の網、ストレーナー等)を備えることができる。
【0020】
ここで、減圧蒸気配管108は、高圧蒸気配管104の内径よりも大きい内径を有している。また、蒸機110には、蒸機110中を移動するように設けられているメッシュベルト118上で搬送される牡蠣の剥身120に対して上下方向から蒸気124a、124bを噴射することによって牡蠣の剥身120を連続的に蒸すための蒸気噴出口122a、122bを有する。
【0021】
図2に示すように、スチームチェンジャー106の内部は、高圧蒸気204が該スチームチェンジャー106内に設けられている貯水槽208内に供給されることによって、貯水槽208中の水202が沸騰して減圧蒸気206が発生するように構成されている。なお、この際、高圧蒸気204が減圧されて減圧蒸気206となることによって蒸気の体積が著しく膨張するが、減圧蒸気配管108は、高圧蒸気配管104の内径よりも大きい内径を有しているため、問題なく減圧蒸気配管108内を流通していく。
【0022】
すなわち、このような100℃以上の温度かつ1kgf/cm2G以下の圧力の減圧蒸気206は、ボイラーにおいて発生させられた高圧蒸気を用いてスチームチェンジャー106中で水202を沸騰させることによって得ることができる。このとき、減圧される前の高圧蒸気204の温度及び圧力は、特に限定されるものではないが、例えば、100℃以上の温度かつ1kgf/cm
2G以上の圧力であることが好ましい。通常の食品工場に設置されている業務用のボイラー102から供給される高圧蒸気204の温度及び圧力が100℃以上の温度かつ3kgf/cm
2G以上であることが多く、このような高圧蒸気204を用いれば、スチームチェンジャー106中で100℃以上の温度かつ1kgf/cm
2G以下の圧力の減圧蒸気206を効率よくかつ大量に発生させることが可能だからである。
【0023】
また、この高圧蒸気204の温度は、110℃以上、120℃以上、130℃以上、140℃以上又は150℃以上であってもよい。この高圧蒸気204の温度が高いほどスチームチェンジャー中で100℃以上の温度かつ1kgf/cm
2G以下の圧力の減圧蒸気206を効率よくかつ大量に発生させることが可能だからである。なお、当該高圧蒸気の温度は、ボイラー出口付近における温度を意味し、スチームチェンジャーに導入される高圧蒸気は配管内での熱損失等により多少異なる場合もあるが、ボイラー出口付近における圧力が上記条件を満たせば通常、本発明の効果を十分に奏することが可能である。もっとも、この高圧蒸気204の温度は、ボイラー102の能力及びコストパフォーマンスの問題から、300℃以下又は200℃以下であってもよい。一方、この高圧蒸気204の圧力は、2kgf/cm
2G以上、3kgf/cm
2G以上、4kgf/cm
2G以上、5kgf/cm
2G以上、6kgf/cm
2G以上、7kgf/cm
2G以上、8kgf/cm
2G以上、9kgf/cm
2G以上又は10kgf/cm
2G以上であってもよい。この高圧蒸気204の圧力が高いほどスチームチェンジャー106中で100℃以上の温度かつ1kgf/cm
2G以下の圧力の減圧蒸気206を効率よくかつ大量に発生させることが可能だからである。なお、当該高圧蒸気の温度は、ボイラー出口付近における圧力を意味し、スチームチェンジャーに導入される高圧蒸気は配管内での圧力損失等により多少異なる場合もあるが、ボイラー出口付近における圧力が上記条件を満たせば通常、本発明の効果を十分に奏することが可能である。もっとも、この高圧蒸気204の圧力は、ボイラー102の能力及びコストパフォーマンスの問題から、30℃kgf/cm
2G以下又は20kgf/cm
2G以下であってもよい。
【0024】
ここで、牡蠣の剥身120を蒸す際に用いる減圧蒸気206の温度は、100℃以上の温度かつ1kgf/cm
2G以下の圧力であればよく、特に限定するものではない。ただし、この減圧蒸気206の温度の上限としては、105℃以下であれば好ましく、104℃以下、103℃以下、102℃以下又は101℃以下であればより好ましい。この温度が100℃に近づくほど飽和水蒸気の潜熱量が増大するためである。
【0025】
また、この減圧蒸気206の圧力の下限としては、通常の海抜ゼロメートル前後の標高に設けられた製造設備の場合には、l大気圧以上の0kgf/cm
2G以上となる。また、この減圧蒸気206の圧力の上限としては、1kgf/cm
2G以下であればよく、特に限定するものではない。ただし、この減圧蒸気206の圧力の上限としては、0.9kgf/cm
2G以下、0.8kgf/cm
2G以下、0.7kgf/cm
2G以下、0.6kgf/cm
2G以下、0.5kgf/cm
2G以下、0.4kgf/cm
2G以下、0.3kgf/cm
2G以下、0.2kgf/cm
2G以下、0.1kgf/cm
2G以下、0.09kgf/cm
2G以下、0.08kgf/cm
2G以下、0.07kgf/cm
2G以下、0.06kgf/cm
2G以下、0.05kgf/cm
2G以下、0.04kgf/cm
2G以下、0.03kgf/cm
2G以下、0.02kgf/cm
2G以下又は0.01kgf/cm
2G以下であれば好ましい。この減圧蒸気206の圧力が0kgf/cm
2Gに近づくほど飽和水蒸気の潜熱量が増大するためである。
【0026】
また、このとき、この減圧蒸気206の供給量としては、特に限定するものでなく、食品加工の目的に応じて適宜調整することができるが、例えば、製造装置1000等を用いた連続プロセスにより牡蠣を蒸す場合には、牡蠣の剥身1kgあたり蒸気量0.1kg/h以上の蒸気を用いて牡蠣の剥身120を蒸すことが好ましい。すなわち、この減圧蒸気206の供給量としては、蒸機内を通過する牡蠣の剥身1kgあたり蒸気量0.1kg/h以上、0.2kg/h以上、0.3kg/h以上であればより好ましい。この減圧蒸気206の供給量を増加させるほど牡蠣の剥身120の中心温度の上昇速度も大きくなるからである。また、この減圧蒸気206の供給量の上限は特に定めるものではないが、製造設備の能力の問題及びコストパフォーマンスの問題から牡蠣の剥身1kgあたり蒸気量10kg/h以下、1kg/h以下又は0.5kg/h以下であることが好ましい。
【0027】
また、このとき、牡蠣の剥身120への減圧蒸気206の暴露方法としては、特に限定するものではないが、例えば一方向から蒸気を噴射してもよく、対向する二方向から減圧蒸気124a、124bを噴射してもよく、上下左右前後をとりまくように全体から均一に減圧蒸気を噴射してもよい。もっともこれらの中でも製造設備の設計の容易性、コストパフォーマンスの良さ及び牡蠣の剥身120の中心部の加熱効率の面からは対向する二方向から減圧蒸気124a、124bを噴射することが好ましい。すなわち、牡蠣の剥身120を蒸す際には、メッシュ(網)ベルト118上で搬送される牡蠣の剥身120に対して上下方向から蒸気を噴射することによって牡蠣の剥身120を連続的に蒸すことが好ましい。
【0028】
なお、抽出工程における牡蠣の剥身の蒸し方については、公知文献特開2012−60994号公報等に記載の方法を参考にすることが可能である。
【0029】
(濃縮工程)
抽出され集められた牡蠣エキス(原液)は、次に濃縮工程によって処理される。濃縮方法は、特に限定されてないが、牡蠣エキスの変色(メイラード反応)や焦げ付き等を避けるために、減圧条件下で濃縮することが好ましい。すなわち、抽出されて、収集された牡蠣エキスに対し、減圧下、比較低温で加熱しながら水を留去し濃縮を行う。この際、泡立つ場合には濃縮済のエキス、未濃縮のエキス(原液)、あるいはこれらの混合液を噴射することで消泡してもよい。
【0030】
濃縮工程における加熱温度は、50〜90℃であることが好ましく、55〜80℃であることがより好ましい。なお、当該加熱温度は濃縮タンク(例えば、後述のセパレータ)内の濃縮液の温度である(濃縮液の温度は、濃縮タンクから出てくる濃縮液の温度を測定することで得られる温度を濃縮タンク内の濃縮液の温度とする)。また、この加熱温度は、50、55、60、65、70、75、80、85、90℃のうち任意の2つの数値の範囲内であってもよい。また、濃縮工程における圧力は、大気圧より低いことが好ましく、例えば、10〜30kPaであることが好ましく、15〜25kPaであることがより好ましい。なお、当該圧力は濃縮タンク(例えば、後述のセパレータ)内の圧力であり、より具体的には濃縮タンク内の液面より上方の空間にて測定されるか、その後の真空装置内までの配管内の適切な位置にて測定することで得られる圧力である。また、この圧力は、1011、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30kPaのうち任意の2つの数値の範囲内であってもよい。
【0031】
濃縮時間は、原液となる牡蠣エキスの濃度、及び製品として求められる濃縮液の濃度によって調整可能である。
【0032】
一実施形態においては、
図3に示すような濃縮装置を用いて牡蠣エキスが濃縮される。牡蠣エキスを濃縮するための濃縮装置3000は、牡蠣エキスを煮詰める(濃縮する)セパレータ301と、セパレータ301内を減圧状態にする真空装置303と、原液(及び濃縮液)をセパレータ301内に供給前に加熱するための加熱器305(例えば、プレート式加熱器等)と、原液(及び濃縮液)をセパレータ301内に供給するためのノズル307と、を備える。ノズル307から噴射される噴射液309は濃縮用のエキスであると同時に濃縮液311の液面で生じることがある泡を消泡する役割も果たし得る。また、この濃縮装置3000は、その他、原液供給のためのバランスタンク、装置内を加熱するための蒸気(スチーム)を供給するボイラー及びスチーム供給用の配管、サーモコンプレッサー、蒸気出口で液化するための冷却装置(例えば、プレート式コンデンサ等)及びそのための冷却水供給機構、各所に送液のためのポンプ、ドレンタンク等を備えていてもよい。
【0033】
2.牡蠣エキス
上記の牡蠣エキスの製造方法によって、製造される牡蠣エキスは、タウリンを含有し、Brix値が19%である場合のタウリンの含有量が1500mg/100mL以上である。なお、Brix値は屈折濃度計によって測定される値である。
【0034】
牡蠣エキスのBrix値が19%である場合のタウリンの含有量は、好ましくは1700mg/100mL以上であり、より好ましくは1900mg/100mL以上である。
【0035】
なお、牡蠣エキスが他のBrix値を有する場合にはタウリンの含有量はBrix値に比例して変化するものとして取り扱う。例えば、Brix値が10%においてXmg/100mLの場合には、「19(%)/10(%)=1.9」を乗算した「1.9Xmg/100mL」の換算値をBrix値が19%である場合の含有量として取り扱うことができる。
【0036】
また、牡蠣エキスのBrix値が19%である場合の次の各成分の含有量は、好ましくは、アスパラギン酸:30mg/100mL以上、スレオニン(トレオニン):80mg/100mL以上、セリン:40mg/100mL以上、グルタミン酸:400mg/100mL以上、グリシン:200mg/100mL以上、アラニン:200mg/100mL以上、メチオニン:20mg/100mL以上、イソロイシン:20mg/100mL以上、ロイシン:30mg/100mL以上、チロシン:15mg/100mL以上、フェニルアラニン:15mg/100mL以上、ヒスチジン:40mg/100mL以上、アルギニン:100mg/100mL以上であり、より好ましくは、アスパラギン酸:50mg/100mL以上、スレオニン(トレオニン):90mg/100mL以上、セリン:50mg/100mL以上、グルタミン酸:480mg/100mL以上、グリシン:200mg/100mL以上、アラニン:300mg/100mL以上、メチオニン:30mg/100mL以上、イソロイシン:25mg/100mL以上、ロイシン:45mg/100mL以上、チロシン:20mg/100mL以上、フェニルアラニン:18mg/100mL以上、ヒスチジン:50mg/100mL以上、アルギニン:150mg/100mL以上である。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
<実験例>
製造装置1000及び濃縮装置としてフラッシュ式濃縮装置(REV−60/30、日阪製作所製)を用いて実際に牡蠣を蒸し牡蠣エキスを抽出し、濃縮する実験を行った。具体的には、牡蠣の剥身120を蒸機110の内部を通るメッシュ(網)ベルト118上に載せて、ボイラー102から発生した130℃、5〜6kgf/cm
2Gの高圧蒸気を、一旦スチームチェンジャー106を通して100℃、0〜0.07kgf/cm
2Gの減圧蒸気にした上で、蒸機110に牡蠣の剥身1kgあたり蒸気量0.4kg/hで供給して蒸し工程を行いた。そして、牡蠣エキスは蒸機に設けた傾斜をつけた配管を通じ、配管の出口でメッシュが60の網により濾した後、一時貯蔵用のタンクへ注入した。
ここで、十分なトレーニングを積んだ複数の官能パネラーが肉眼で観察したところ、牡蠣の剥身120がほとんど変色しておらず外観が良好であった。さらに、これらの官能パネラーが実際に試食してみたところ、牡蠣の剥身120の食感及び旨みの面で良好であった。すなわち、蒸し牡蠣として高品質であり商品価値の高い製品が得られた。
続いて、収集されたタンクの牡蠣エキスを、濃縮装置3000へ送液され、セパレータ301内の圧力が約20kPa、濃縮液311の温度が約60℃となるように設定し濃縮を行い、Brix値が19%に濃縮された試作品の牡蠣エキスを得た。なお、Brix値は屈折濃度計(アタゴ社製、ポケット糖度濃度計 PAL−1)を用いて測定した。その試作品の牡蠣エキス成分を分析した結果を表1に示す。
また、牡蠣の剥身を熱水による煮出しによって製造された従来品(Brix値19%)の分析結果も合わせて表1に示す。なお、各種アミノ酸の含有量はアミノ酸自動分析計、具体的には、株式会社島津製作所製液体クロマトグラフ(Prominence)に、強酸性イオン交換樹脂カラムを取り付け測定した。
【0039】
【表1】
【0040】
表1から、従来品に比べタウリンの含有量が大幅に多く、また他の成分についても多い牡蠣エキスが得られたことがわかった。
【0041】
また、試作品及び従来品、それぞれの色・味・匂い(香り)について調べた。具体的には、冷凍保存しておいた試作品及び従来品を解凍後、Brix値を4.3%に調整し、冷蔵庫にて5℃で保存し、それぞれについて10日間経時変化を、十分なトレーニングを積んだ複数の官能パネラーが調べた。経時変化については、解凍直後の試作品、従来品のそれぞれの状態を基準として評価している。これらの結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
表2から、従来品に比べ試作品は味、匂いがより濃いため、特に他の食品と合わせた場合により牡蠣の味及び風味を楽しめる。
さらに、驚くべきことに従来品は試作品に比べ劣化、腐敗が速く進んだ。原因は不明であるが、煮出しによる製法では、減圧蒸気により牡蠣の剥身を蒸す場合に比べ牡蠣としての味や風味を与える成分以外の成分も抽出されてしまっており、それらが味や匂いだけではなく、保存性にも影響を及ぼしている可能性が考えられる。
【解決手段】タウリンを含有する牡蠣エキスであって、Brix値が19%である場合のタウリンの含有量が1500mg/100mL以上である牡蠣エキス。蒸気を用いて牡蠣の剥身を蒸して牡蠣エキスを抽出する抽出工程と、抽出された前記牡蠣エキスを濃縮する濃縮工程3000と、を含む、牡蠣エキスの製造方法。前記蒸気は、100℃以上の温度かつ1kgf/cm2G以下の圧力の蒸気であり、濃縮工程3000における加熱温度は、50〜90℃であり、減圧条件下で行われることが好ましい。