特許第6285663号(P6285663)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6285663
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】排気装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/007 20060101AFI20180215BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20180215BHJP
   F24F 13/02 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   F24F7/007 B
   F24F7/06 C
   F24F13/02 Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-172722(P2013-172722)
(22)【出願日】2013年8月22日
(65)【公開番号】特開2015-40668(P2015-40668A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2016年8月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社岡村製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100116757
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 英雄
(74)【代理人】
【識別番号】100123216
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 祐一
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【弁理士】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(72)【発明者】
【氏名】堀江 正己
(72)【発明者】
【氏名】坂上 慎
【審査官】 安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−070913(JP,A)
【文献】 特開2013−019572(JP,A)
【文献】 実開昭54−093842(JP,U)
【文献】 実開平02−139080(JP,U)
【文献】 米国特許第5215497(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/007
F24F 7/06
F24F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室と前記処理室を覆う筐体と、前記筐体の前面の開口を開閉する扉と、前記処理室内の気体を排気ダクトを介して室外に排気する排気手段と、前記排気ダクトを流れる気体の排気風量を検出する風量検出手段と、を備えた排気装置であって、
前記風量検出手段は、前記排気ダクトの内側に配置され該排気ダクトを流れる気体の流れを受けて回転する羽根車と、該羽根車を支持し該排気ダクトの外側まで延びる回転軸と前記排気ダクトの外側に配置され前記排気ダクトの外側まで延びる回転軸の回転を検出するセンサを有する回転検出手段と、を備えていることを特徴とする排気装置。
【請求項2】
前記羽根車と前記回転検出手段は一体に構成されており前記排気ダクトに取り付けられていることを特徴とした請求項1に記載の排気装置。
【請求項3】
前記風量検出手段が、前記羽根車と、前記回転軸と、前記回転軸を回転自在に支持する軸受と、前記軸受を支持するブラケットと、前記回転軸に取付けた回転検出板と、前記ブラケットに取付けられ前記回転検出板の移動を検出する前記センサと、を一体に構成し、前記風量検出手段を前記排気ダクト外側から挿入して、前記排気ダクトに取付けられていることを特徴とした請求項1または2に記載の排気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局所排気装置、卓上フード、簡易フード、安全キャビネット、バイオハザード用キャビネット、クリーンベンチ等の排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ドラフトチャンバ等における可変風量制御装置に関する技術が開示されている。特許文献1の可変風量制御装置は、オリフィスを排気ダクト管内に設け、前後のオリフィスの圧力差から排気ダクト管内の排気風量を算出し、算出した換気風量が目標の換気風量と略一致するように排気ダクト管内のダンパ開度を調節している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−247121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にあっては、ダクト管内に流れる空気には、酸、アルカリ等の腐食性物質が含まれることがあり、オリフィスの圧力取入れ口に腐食性物質が付着すると、圧力取入れ口が腐食してしまう。オリフィスの圧力取入れ口が腐食してしまうと、風量を正確に検出できず、適切に排気風量を制御できないという問題がある。また、オリフィスが正常に動作していないことに、作業者が気付かないで実験等を行ってしまうこともある。
【0005】
この対策として、オリフィスを耐酸性、耐アルカリ性に優れた材料を使用して作ることもできるが、コスト高となってしまう。また、風速計として、特許文献1の圧力検出方式ではなく、熱線式風速計、サーミスタ風速計を使用することもできるが、腐食性ガス雰囲気では、風速検出部が腐食してしまうので、特許文献1の課題を解決することはできない。
【0006】
さらに、オリフィスの健全性を確保するために、オリフィスを定期的に点検することも行われているが、排気ダクトに取付けられたオリフィスを点検するには、ドラフトチャンバに接続される配管を分解する必要があり、点検作業に多大な時間とコストを要してしまうという問題もある。また、オリフィスが故障して交換する場合においても、ドラフトチャンバに接続される配管を分解する必要があり、交換作業に多大な時間とコストを要してしまう。
【0007】
また、特許文献1の可変風量制御装置は、排気ダクト管内の排気風量を算出し、算出した換気風量が目標の換気風量となるように排気ダクト管内のダンパ開度を調節するのみであり、筐体の開口の開口度合いを考慮していない。その結果、筐体の開口面積が最大の条件で、排気風量を設定すると、開口面積が小さくなると、開口部の風速が必要以上に速くなり、排気に要するエネルギが必要以上に大きくなる問題がある。逆に、筐体の開口面積が最小の条件で、排気風量を設定すると、開口面積が大きくなると、開口部分の流速が低下し、開口部分を流れる空気が逆流してしまうこともある。
【0008】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、腐食性ガスの雰囲気内で使用しても、長期間の使用に耐えることができる風量計を備え、配管を分解しないで、風量計を点検、交換できる排気装置を提供することを目的とする。また、筐体の開口の度合いに応じて、排気風量を制御することにより、エネルギー消費が少なく、適切な開口風速を保つことができる排気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の排気装置は、
処理室と前記処理室を覆う筐体と、前記筐体の前面の開口を開閉する扉と、前記処理室内の気体を排気ダクトを介して室外に排気する排気手段と、前記排気ダクトを流れる気体の排気風量を検出する風量検出手段と、を備えた排気装置であって、
前記風量検出手段は、前記排気ダクトの内側に配置され該排気ダクトを流れる気体の流れを受けて回転する羽根車と、該羽根車を支持し該排気ダクトの外側まで延びる回転軸と前記排気ダクトの外側に配置され前記排気ダクトの外側まで延びる回転軸の回転を検出するセンサを有する回転検出手段と、を備えていることを特徴としている。
この特徴によれば、排気ダクトを流れる気体の流れを受けて回転する羽根車を排気ダクト内に配置し、回転軸の回転を検出するセンサを備えた回転検出手段を排気ダクトの外側に配置することにより、回転検出手段を腐食性ガスに触れないようにすることができるので、腐食による故障を防止でき、腐食性雰囲気で長期間使用することができる。また、回転検出手段を排気ダクトの外側に配置したので、排気ダクトを分解せずに回転検出手段の点検、交換を行うことができる。
【0010】
本発明の排気装置は、
前記羽根車と前記回転検出手段は一体に構成されており前記排気ダクトに取り付けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、羽根車と回転検出手段が一体に構成されていることから、取付け、取外しを容易に行うことができる。
【0011】
本発明の排気装置は、
前記風量検出手段が、前記羽根車と、前記回転軸と、前記回転軸を回転自在に支持する軸受と、前記軸受を支持するブラケットと、前記回転軸に取付けた回転検出板と、前記ブラケットに取付けられ前記回転検出板の移動を検出する前記センサと、を一体に構成し、前記風量検出手段を前記排気ダクト外側から挿入して、前記排気ダクトに取付けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、風量検出手段を排気ダクト外側から挿入したので、排気ダクトを分解せずに風量検出手段の取付け、分解、点検を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の排気装置として、ヒュームフードに適用した例を示す図である。
図2】(a)は風量検出手段の構成を示す横断面図であり、(b)は(a)の側面図である。
図3】風量検出手段を排気ダクトへの取付け、取外しを示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る排気装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【0014】
本発明に係る排気装置として、化学実験等を行う際に使用されるヒュームフードを例にとり、図1から図3を参照して説明する。図1の符号1は、本発明が適用されたヒュームフードで、筐体前面の開口を開閉する扉6を部分的に開いた状態を示す。筐体2の内部には処理室3を有し、この処理室3内の空気を排気するための排気ダクト4が筐体2の上部に設けられている。
【0015】
排気ダクト4には、排気ダクト4を流れる気体の風量を検出する風量検出手段20が取付けられている。排気ダクト4は、仮想線で示すように室外へ延長された排気ダクト9と接続連通し、排気ダクト9には排気手段としての排気ファン10を作動させることで、図1に示すように筐体前面の開口から内部の処理室3へ向かう吸込風12の流れが作られるようになっている。また、排気ファン10を駆動するモータは、制御装置14に備えられたインバータ電源(図示せず)により可変速駆動され、モータ11の回転速度を制御することにより排気風量を制御できるようになっている。
【0016】
筐体2の前面の開口は、その上方に強化ガラス等で構成された固定ガラス板5が固定されている。また、固定ガラス板5の下方位置には、扉6が設けられ、使用者は把持辺8を掴んで扉6を昇降させることで、筐体2の開口面積を変えることができる。
【0017】
扉6の位置は、開口位置センサ13によって検出可能となっており、開口位置センサ13の出力は、後述の制御装置14に入力され、昇降扉の開口面積が算出される。
【0018】
図2は、排気ダクト4を流れる排気の風量を検出する風量検出手段20を示し、排気ダクトを流れる気体の流れを受けて回転する羽根車21、羽根車を支持する回転軸22と、回転軸を回転自在に支持する軸受23、24と、軸受24を支持するブラケット25と、回転検出手段28とを備え、回転検出手段28は、回転軸22に取付けた回転検出板26とブラケット25に取付けられた回転センサ27とから構成される。羽根車21は排気ダクト4の内側に配置し、回転検出手段28を構成する回転検出板26と回転センサ27は、排気ダクト4の外側に配置される。
【0019】
回転検出手段28は、羽根車21が排気の流れを受けて回転すると、回転軸22に取付けられた回転検出板26も回転し、回転検出板26に設けられた孔29の移動を、回転センサ27が検出するものである。後述のように、回転センサ27の出力信号は、制御装置14に入力され、制御装置14は、回転センサ27の出力信号に基づいて、排気ダクト4内に流れる排気風量を算出する。
【0020】
排気ダクト4を流れる気体には、腐食性ガスが含まれることがあるため、腐食性ガスに触れる羽根車21は、腐食性ガスに強い合成樹脂、金属または繊維強化プラスチック等により製作されている。一方、回転検出手段28を構成する回転検出板26、回転センサ27は、排気ダクト4の外側に配置して、腐食性ガスと接触しないようにしたので、光電センサ等、安価な汎用の回転検出手段を使用することができる。
【0021】
このように、風量検出手段20の羽根車は耐食性の高い材料で製作し、回転センサ27は、排気ダクト4の外側に配置して、腐食性ガスと接触しないようにしたので、風量検出手段20は、腐食性ガスの雰囲気内で使用しても、長期間の使用に耐えることができる。また、回転検出手段を排気ダクトの外側に配置したので、風量検出手段を排気ダクトに取付けた状態で、回転検出板26、回転センサ27の点検、交換を行うことができる。さらに、回転検出手段を排気ダクトの外側に配置したので、回転検出板26の回転を目視によっても、確認でき、従来の風量検出装置のように、風量検出装置が動作していないことに、作業者が気付かないということも防ぐ効果がある。
【0022】
図3は、風量検出手段20を排気ダクト4への取付けを説明する図である。風量検出手段は、図3に示すように、羽根車21、回転軸22と、軸受23、24と、ブラケット25と、回転検出板26、回転センサ27を一体に構成しているので、排気ダクト4に設けた取付け孔32に風量検出手段20を挿入し、取付け孔31に軸受23を篏合して、さらにブラケット25をボルト33によって排気ダクト4に固定することで、風量検出手段20の取付けを完了することができる。また、逆の手順で、風量検出手段20を排気ダクト4から取外すことができる。
【0023】
このように、風量検出手段20を排気ダクト4の外側から挿入して、排気ダクト4に取付け可能な構造としたので、排気ダクト4を分解しなくとも、風量検出手段20を排気ダクト4に取付けることができる。同様に、排気ダクト4を分解しなくとも、風量検出手段20のみを排気ダクト4から取外すことができるので、風量検出手段20の点検、交換作業が容易となる。
【0024】
風量検出手段20の風量検出方法について説明する。風量検出手段20は、排気ダクト4を模擬した試験ダクトに設置し、規定の風量を流して、羽根車21の回転を回転検出板26に設けられた孔29の移動を回転センサ27によって検出し、前記回転センサ27の出力をカウントして、羽根車21の回転速度を演算し、検出した回転速度と風量との関連データを採取する。制御装置14には、風量検出手段20の回転速度と風量との関連データが保存され、後述のように、制御装置14は、回転検出手段28の出力から羽根車21の回転速度を検出することで、排気ダクト4内に流れる排気風量を検出することができるようになる。
【0025】
次に、制御装置14の動作について説明する。図1に示すように、制御装置14は、開口位置センサ13からの検出信号と、風量検出手段20に設けられた回転検出手段28からの検出信号とをそれぞれ入力し、開口位置センサ31からの検出信号から開口部面積を割出し、回転検出手段28の検出信号から排気ダクトを流れる排気風量を検出し、排気風量を開口部面積で割って、開口部を流れる空気の風速を算出する。
【0026】
制御装置14は、算出された開口部の風速が、設定された目標風速を下回る場合には、制御装置14に備えられたインバータ電源の出力を制御し、排気ファン10を駆動するモータの回転速度を上昇させて排気風量を増加させ、逆に、算出された開口部の風速が、設定された目標風速を上回る場合には、モータの回転速度を低下させて排気風量を減少させるように制御する。
【0027】
このように、制御装置14は、開口部の風速が、所望の風速となるように制御するので、作業者が扉6の開口度合いを変えても、開口部の風速を適正な風速に保つことができる。その結果、開口部の風速が必要以上に速くなり、排気ファン10がエネルギを多大に消費したり、逆に、開口部の風速が低下して、開口部分を流れる空気が逆流してしまうことを防ぐことができる。
【0028】
このように、本発明の排気装置は、腐食性雰囲気中で長期間使用しても耐久性を有する風量計を備えるので、排気装置の信頼性、安全性を向上することができる。また、排気ダクトを分解しないで、風量計を点検、交換できるので、短時間でメンテナンスを終了できるので、ランニングコストを低減できる。また、筐体の開口の度合いに応じて、排気風量を制御することができるので、エネルギー消費が少なく、適切な開口風速を保つことができる。さらに、回転検出手段を排気ダクトの外側に配置したので、回転検出板の回転を目視によっても、確認でき、従来の風量検出装置のように、風量検出装置が動作していないことに、作業者が気付かないということを防ぐこともできる。
【0029】
実施例においては、排気装置として、ヒュームフードを例にとり説明したが、これに限らず、局所排気装置、卓上フード、簡易フード、安全キャビネット、バイオハザード用キャビネット、クリーンベンチ等の排気装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0030】
1 ヒュームフード
2 筐体
3 処理室
4 排気ダクト
5 固定板ガラス
6 昇降扉
7 昇降ガラス板
8 把持辺
9 排気ダクト
10 排気手段(排気ファン)
11 モータ
12 吸気風
13 開口位置センサ
14 制御装置
15 化粧パネル
20 風量検出手段
21 羽根車
22 回転軸
23 軸受
24 軸受
26 回転検出板
27 回転センサ
28 回転検出手段
29 孔
31 取付け孔
32 取付け孔
33 ボルト
図1
図2
図3