(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記低融点ガラスは、バリウムガラス、ボロンガラス、ストロンチウムガラス、アルミナ珪酸ガラス、ソーダ亜鉛ガラス、及び、ソーダバリウムガラスのうち少なくとも一種を含むガラスである請求項9に記載の構造体。
前記低融点ガラスは、バリウムガラス、ボロンガラス、ストロンチウムガラス、アルミナ珪酸ガラス、ソーダ亜鉛ガラス、及び、ソーダバリウムガラスのうち少なくとも一種を含むガラスである請求項14に記載の表面被覆層形成用塗料。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1(a)は、本発明の構造体の一例を模式的に示す断面図であり、
図1(b)は、
図1(a)に示す構造体における凸部付近を拡大した拡大断面図であり、
図1(c)は、
図1(a)に示す構造体におけるエッジ部付近を拡大した拡大断面図である。
【
図2】
図2(a)は、排気系部品を構成する基材の筒状体を半分に切断した部材(以下、半割部材という)を模式的に示した断面図であり、
図2(b)は、基材が筒状体である場合の排気系部品を模式的に示した断面図であり、
図2(c)は、
図2(a)に示す半割部材における凸部付近を拡大した拡大断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の構造体に関連する自動車用エンジンと、自動車用エンジンに接続されたエキゾーストマニホールドとを模式的に示す分解斜視図である。
【
図4】
図4(a)は、
図3に示す自動車用エンジン及びエキゾーストマニホールドのA−A線断面図であり、
図4(b)は、
図4(a)に示すエキゾーストマニホールドのB−B線断面図である。
【0039】
(発明の詳細な説明)
以下、本発明について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0040】
以下、本発明の構造体、及び、構造体の製造に用いられる表面被覆層形成用塗料について説明する。
まず、本発明の構造体について説明する。
本発明の構造体は、金属からなり、表面に平坦部と凸部及び/又はエッジ部とが形成された基材と、上記基材の表面に被覆され、非晶性無機材及び結晶性無機材の粒子からなる表面被覆層とを備えた構造体であって、
上記表面被覆層は、上記平坦部を被覆する第1被覆部と、上記凸部及び/又はエッジ部を被覆する第2被覆部とからなり、上記第1被覆部の膜厚に対する上記第2被覆部の膜厚の比(第2被覆部の膜厚/第1被覆部の膜厚)は、0.4以上1.0未満であり、上記表面被覆層の全体に対する上記結晶性無機材の粒子の重量割合は、5〜70重量%であることを特徴とする。
【0041】
図1(a)は、本発明の構造体の一例を模式的に示す断面図であり、
図1(b)は、
図1(a)に示す構造体における凸部付近を拡大した拡大断面図であり、
図1(c)は、
図1(a)に示す構造体におけるエッジ部付近を拡大した拡大断面図である。
図1(a)に示す構造体10は、金属からなり、表面に平坦部11aと凸部11b及びエッジ部11cとが形成された基材11と、基材11の表面上に形成された表面被覆層12とを備えている。
【0042】
図1(a)に示す構造体10では、基材11の表面に形成された表面被覆層12は、非晶性無機材の層13と、非晶性無機材の層13の内部に分散する結晶性無機材の粒子14とからなるが、その他に、非晶性無機材の層13のなかに気孔等を含んでいてもよい。
表面被覆層12は、平坦部11aを被覆する第1被覆部12aと、凸部11b及びエッジ部11cを被覆する第2被覆部12bとからなり、第1被覆部12aの膜厚に対する第2被覆部12bの膜厚の比(第2被覆部の膜厚/第1被覆部の膜厚)は、0.4以上1.0未満であり、上記表面被覆層の全体に対する上記結晶性無機材の粒子の重量割合は、5〜70重量%である。
【0043】
本発明で用いる基材11は、表面被覆層12を形成する対象となる部材をいう。基材11の形状は、平板、半円筒、円筒状の他、その断面の外縁の形状は、楕円形、多角形等の任意の形状であってもよい。
基材11が筒状体である場合、基材の径が長手方向に沿って一定でなくてもよく、また、長さ方向に垂直な断面形状が長手方向に沿って一定でなくてもよい。
【0044】
基材11には、凸部11b及びエッジ部11cが形成されている。
具体的な凸部11bは、特に限定されるものではないが、溶接時に発生する溶接ビードや溶接スパッタが、この凸部11bに該当する。基材11には、大きな面積を有する主面が表側と裏側に存在し、通常は、どちらかの主面が表面被覆層12を形成する対象となるが、2つの主面に表面被覆層を形成してもよい。また、場合によっては、基材11の主面のみでなく、基材11の側面にも表面被覆層を形成する必要が生じる場合があるが、その際には、エッジ部11cにも、表面被覆層を形成することとなる。エッジ部は、例えば、排気管の一部を二重管にし、内側に内管を形成し、内管の側面にも表面被覆層を形成する場合、被覆対象としてエッジ部が存在することとなる。
図1(a)に示した構造体10では、基材11に、凸部11b及びエッジ部11cが存在しているが、基材11には、凸部11b又はエッジ部11cのいずれか一方のみが形成されていてもよい。
【0045】
凸部11bの高さは、0.01〜15mmが想定され、凸部11bの幅は、0.01〜20mmが想定される。基材11の主面に垂直に切断した際の切断面におけるエッジ部11cの角度は、通常、90°であるが、エッジ部11cの角度は、90°に限定されるものはなく、70〜110°の範囲であればよい。
【0046】
構造体10を構成する基材11の材質としては、例えば、ステンレス、鋼、鉄、銅等の金属、又は、インコネル、ハステロイ、インバー等のニッケル合金等が挙げられる。これら金属材料からなる基材は、後述するように、表面被覆層12を構成する非晶性無機材の層13と熱膨張係数を近付けることにより、表面被覆層12と金属からなる基材11との密着力を向上させることができる。
【0047】
表面被覆層との密着性を良好にするため、サンドブラスト処理や化学薬品等の粗化処理を基材の表面に施してもよい。
上記粗化処理により形成される基材の表面の表面粗さRz
JISは、1.5〜20μmが望ましい。上記した粗化面の表面粗さRz
JISは、JIS B 0601(2001)で定義される十点平均粗さであり、測長距離は、10mmである。
構造体の基材の粗化面の表面粗さRz
JISが1.5μm未満であると、基材の表面積が小さくなるため、基材と表面被覆層との密着性が充分に得られにくくなる。一方、構造体の基材の粗化面の表面粗さRz
JISが20μmを超えると、基材の表面に表面被覆層が形成されにくくなる。これは、構造体の基材の粗化面の表面粗さRz
JISが大きすぎると、基材の表面に形成された凹凸の谷の部分にスラリー(表面被覆層用の原料組成物)が入り込まず、この部分に空隙が形成されるためであると考えられる。
なお、構造体の基材の粗化面の表面粗さRz
JISは、東京精密製、ハンディサーフE−35Bを用いてJIS B 0601(2001)に準拠し、測長距離を10mmにて測定することができる。
【0048】
本発明の構造体において、基材の厚さの望ましい下限は0.2mm、より望ましい下限は0.4mmであり、望ましい上限は10mm、より望ましい上限は4mmである。
構造体の基材の厚さが0.2mm未満であると、構造体の強度が不足する。また、構造体の基材の厚さが10mmを超えると、構造体の重量が大きくなり、例えば、自動車等の車輌に搭載することが難しくなり、実用に適しにくくなる。
【0049】
結晶性無機材の粒子14は、カルシア、マグネシア、セリア、アルミナ、及び、遷移金属の酸化物のうち少なくとも一種を含むことが望ましい。
上記遷移金属の酸化物としては、ジルコニア、イットリア、酸化ニオブ、チタニア、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化銅、酸化コバルト、酸化クロム等が挙げられる。
【0050】
また、ジルコニアを含む無機材の具体例としては、例えば、イットリア安定化ジルコニア、CaO安定化ジルコニア、MgO安定化ジルコニア、ジルコン、CeO安定化ジルコニア等が挙げられる。
これらの中では、耐熱性及び耐腐食性に優れる、アルミナ、イットリア安定化ジルコニアが好ましい。
【0051】
本発明では、第1被覆部12aの膜厚に対する第2被覆部12bの膜厚の比(第2被覆部の膜厚/第1被覆部の膜厚)は0.4以上1.0未満である。第1被覆部12aの膜厚に対する第2被覆部12bの膜厚の比が0.4未満であると、凸部等に設けられた第2被覆部12bの膜厚が薄くなりすぎ、断熱性に劣ることとなるため、表面被覆層全体の断熱性能等が劣ることとなる。
第1被覆部12aの膜厚に対する第2被覆部12bの膜厚の比の比が1.0以上であると、凸部やエッジ部における第2被覆部12bの膜厚が厚くなりすぎ、構造体の上を流れる排気ガス等のガスの流れを妨げ、圧力損失に悪影響を及ぼす。また、乱流を引き起こすことで、排気ガス等のガスと構造体との間の熱伝達係数が高くなって断熱性能に悪影響を及ぼす。
本発明の構造体10が優れた断熱性、絶縁性等の効果を発揮するためには、第1被覆部12aの膜厚に対する第2被覆部12bの膜厚の比(第2被覆部の膜厚/第1被覆部の膜厚)は、0.6以上1.0未満がより好ましい。
【0052】
表面被覆層12の全体に対する結晶性無機材の粒子14の割合は、5〜70重量%が望ましく、20〜70重量%であることがより望ましい。
表面被覆層12の全体に対する結晶性無機材の粒子14の割合が5〜70重量%の範囲にあると、基材11の表面に原料を塗布し、加熱による溶融層を形成した際、溶融層中の結晶性無機材の重量割合が適切な範囲にあるため、溶融した塗布層の粘度が低くなりすぎず、適切な範囲に保たれ、溶融した凸部11bにおける塗布層が平坦部11aに流れにくく、平坦部11aの第1被覆部12aと凸部等の第2被覆部12bとにおいて、表面被覆層の厚さに大きな差がない構造体を製造することができる。
【0053】
表面被覆層12の全体に対する結晶性無機材14の粒子の割合が5重量%未満であると、結晶性無機材の割合が低すぎるため、単容積当たりの非晶性無機材の量が多くなり、溶融層の粘度が低くなり、凸部等の溶融層の厚さを厚くすることが難しく、第2被覆部12bの厚さが第1被覆部12aの厚さの0.4未満となってしまう。一方、表面被覆層12の全体に対する結晶性無機材14の粒子の割合が70重量%を超えると、溶融層の粘度が高くなりすぎるため、基材の全体に均一な厚さの表面被覆層を形成するのが難しくなり、表面粗度が高くなりすぎる。
【0054】
結晶性無機材の粒子14の平均粒子径は、0.1〜50μmであることが望ましく、結晶性無機材の粒子14の平均粒子径は、0.1μm以上、10μm未満であることがより望ましい。
結晶性無機材の粒子14の平均粒子径が0.1〜50μmの範囲にあると、基材11の表面に原料を塗布し、加熱による溶融層を形成した際、溶融層中の結晶性無機材の表面積が適切な範囲にあるため、溶融した塗布層の粘度が低くなりすぎず、適切な範囲に保たれ、溶融した凸部における塗布層が平坦部11aに流れにくく、平坦部11aの第1被覆部12aと凸部等の第2被覆部12bとにおいて、表面被覆層の厚さに大きな差がない構造体を製造することができる。
【0055】
表面被覆層12に含まれる結晶性無機材の粒子14の平均粒子径が0.1μm未満であると、結晶性無機材の粒子14の粒子径が小さすぎて、溶融層中の結晶性無機材の粒子の表面積が大きくなり、結晶性無機材の粒子14を含む溶融層の粘度が高くなりすぎ、均一な厚さの表面被覆層12が形成されない。一方、結晶性無機材の粒子14の平均粒子径が50μmを超えると、結晶性無機材の粒子14の粒子径が大きすぎて、溶融層中の無機材の粒子の表面積が小さすぎ、結晶性無機材の粒子14を含む溶融層の粘度が低くなり、形成した溶融層が流動しやすくなり、形成する第2被覆部12bの厚さが薄くなり、第2被覆部12bの厚さが、第1被覆部12aの厚さの0.4未満となってしまう。
【0056】
このように、本発明では、表面被覆層12に含まれる結晶性無機材の粒子の割合(濃度)を5〜70重量%としているので、表面被覆層12を形成するための塗料組成物を塗布し、焼成した際、溶融した塗布層の粘度が適切な範囲になり、凸部11b及びエッジ部11cの第2被覆部12bの厚さが薄くなりにくく、結果として、第2被覆部12bの厚さは、第1被覆部12aの厚さと余り異ならない厚さとなる。
【0057】
第1被覆部12aの厚さは、50〜1000μmが望ましく、100〜750μmがより望ましい。一方、第2被覆部12bの厚さは、第1被覆部12aの厚さの0.4以上1.0未満であることが望ましい。
第1被覆部12aの厚さが50μm未満であると、表面被覆層12全体の厚さが薄くなりすぎ、断熱性能が低下して基材の温度を充分に高くすることができない。一方、第1被覆部12aの厚さが1000μmを超えると、表面被覆層12の全体が厚すぎることとなり、熱衝撃を受けた際に、表面被覆層12の基材11との接合面と雰囲気に露出している表面との温度差が大きくなり易く、表面被覆層12が破壊され易くなる。
【0058】
構造体の表面被覆層12を構成する非晶性無機材は、軟化点が300〜1000℃である低融点ガラスであることが望ましい。本発明で用いる非晶性無機材は、第1被覆部12aを形成する際にも、第2被覆部12bを形成する際にも、上記範囲の軟化点を有する低融点ガラスを用いることができる。
【0059】
上記低融点ガラスの種類は特に限定されるものではないが、バリウムガラス、ボロンガラス、ストロンチウムガラス、アルミナ珪酸ガラス、ソーダ亜鉛ガラス、及び、ソーダバリウムガラスのうち少なくとも一種を含むガラスであることが好ましい。
これらのガラスは、上述のように、単独で用いてもよいし、2種類以上のガラスが混合されていてもよい。
【0060】
上記のような低融点ガラスは、軟化点が300〜1000℃の範囲にあると、低融点ガラスを融解させて基材(金属材料)の表面に塗布(コート)した後、加熱、焼成処理を施すことにより、金属からなる基材の表面上に表面被覆層12を容易にしかも基材との密着性に優れた表面被覆層を形成することができる。
【0061】
上記低融点ガラスの軟化点が300℃未満であると、軟化点の温度が低すぎるため、加熱処理の際に、表面被覆層となる層が溶融等により流れ易く、厚さが薄くなり易く、一方、上記低融点ガラスの軟化点が1000℃を超えると、逆に、加熱処理の温度を極めて高く設定する必要があるため、加熱により基材の機械的特性が劣化するおそれが生じる。
なお、軟化点は、JIS R 3103−1:2001に規定される方法に基づき、例えば、有限会社オプト企業製の硝子自動軟化点・歪点測定装置(SSPM−31)を用いて測定することができる。
【0062】
本発明の構造体10では、表面被覆層12の室温での熱伝導率は、0.05〜10W/mKであることが望ましい。
表面被覆層12の室温での熱伝導率が上記範囲にあると、本発明の構造体10は、断熱性に優れ、高温においても、熱伝導率が上がりにくいので、排気ガス等の温度が低下するのを防止することができる。
室温での熱伝導率が0.05W/mK未満の表面被覆層12を実現するのは、技術的観点及び経済的観点の両者のバランスを考慮すると容易ではない。一方、表面被覆層12の室温での熱伝導率が10W/mKを超えると、構造体の保温性が不充分となり、例えば、上記構造体を排気管に用いた場合、触媒コンバータの温度が触媒活性化温度まで達するまでの時間が長くなってしまい、望ましくない。構造体の表面被覆層の室温での熱伝導率は、レーザーフラッシュ法によって測定することができる。
【0063】
なお、本発明の構造体において、半円筒の基材又は円筒形状の基材を用いる場合にも、基材の表面には、
図1(a)に示す構造体10における平坦部11a並びに凸部11b等を含む部分に表面被覆層12(第1被覆部12a及び第2被覆部12b)が形成されている。上述したように、表面被覆層12は基材11の両面に形成されていてもよい。
【0064】
表面被覆層12が基材11の両面に形成されている場合であっても、表面被覆層12を構成する第1被覆部12aの厚さは、50〜1000μmであることが望ましい。
【0065】
本発明では、表面被覆層の上にオーバーコート層が形成されていてもよい。
上記オーバーコート層を構成する結晶性無機材の粒子及び非晶性無機材としては、表面被覆層を構成する結晶性無機材の粒子及び非晶性無機材と同様の種類、特性のものを使用することができる。表面被覆層を構成する結晶性無機材の粒子及び非晶性無機材については、上述したので、ここではその説明を省略する。
【0066】
表面被覆層の上にオーバーコート層が形成されている場合、オーバーコート層中の結晶性無機材の粒子の平均粒子径は、0.1〜50μmであることが望ましい。
【0067】
オーバーコート層に含まれる結晶性無機材の粒子の平均粒子径が0.1μm未満であると、結晶性無機材の粒子の粒子径が小さすぎて、溶融層中の結晶性無機材の粒子の表面積が大きくなり、塗料の粘度が高くなりすぎ、良好に塗装を行うことができず、オーバーコート層の表面粗度が大きくなってしまう。一方、結晶性無機材の粒子の平均粒子径が50μmを超えると、結晶性無機材の粒子の粒子径が大きすぎて、単位容積当たりの非晶性無機材の容積が大きくなり、結晶性無機材の粒子を含む溶融層の粘度が低くなりすぎ、形成した溶融層が流動しやすくなり、未塗装部分が発生し易くなる。
【0068】
オーバーコート層には、結晶性無機材が含まれていても、結晶性無機材が含まれていなくてもよい。オーバーコート層の平滑性を向上させる観点から考えると、オーバーコート層には結晶性無機材が含まれていないことが望ましい。また、オーバーコート層の耐熱性を向上させる観点から考えると、オーバーコート層には、結晶性無機材が含まれていることが好ましく、この場合、オーバーコート層に含まれる結晶性無機材の粒子の割合(非晶性無機材と結晶性無機材の合計量に対する結晶性無機材の重量割合)は、0.1〜20重量%であることが望ましい。
オーバーコート層に含まれる結晶性無機材の粒子の割合が20重量%を超えると、塗料組成物を調製した際、結晶性無機材の濃度が高くなるために、塗料の粘度が高くなり、良好な塗膜を形成することができず、オーバーコート層の表面粗度が大きくなってしまう。
【0069】
本発明では、オーバーコート層に含まれる結晶性無機材の粒子の平均粒子径を上記のように設定しているので、表面粗さの小さい平坦な層を形成することができ、オーバーコート層の上を流れるガスをスムーズに流通させることができるため、本発明の構造体の断熱性を改善することができる。
【0070】
オーバーコート層の厚さは、5〜25μmが望ましく、オーバーコート層表面のJIS B 0601(2001)に基づく測長距離10mmの表面粗度Rz
JISは、0.05〜10μmであることが望ましい。
オーバーコート層の表面粗度Rz
JISが0.05μm未満のオーバーコート層を形成するのは技術的に難しい。一方、オーバーコート層の表面粗度Rz
JISが10μmを超えると、表面粗度が大きすぎるため、オーバーコート層の上をガスがスムーズに流れず、オーバーコート層形成による断熱性の改善は難しい。
【0071】
次に、本発明の構造体の製造方法について説明する。
まず、本発明の構造体の製造において用いる表面被覆層形成用塗料について説明する。
上記表面被覆層形成用塗料は、金属からなり、表面に平坦部と凸部及び/又はエッジ部とが形成された基材に表面被覆層を形成するための塗料である。
【0072】
すなわち、本発明の表面被覆層形成用塗料は、非晶性無機材及び結晶性無機材の粒子を含み、上記非晶性無機材と上記結晶性無機材の粒子の合計量に対する結晶性無機材の粒子の重量割合は、5〜70重量%であることを特徴とする。
【0073】
本発明の表面被覆層形成用塗料を用いることにより、上記した特性を有する本発明の構造体を製造することができるが、その用途は、上記構造体の製造に限られるものではなく、塗膜を形成するための他の用途に用いてもよい。
【0074】
本発明の表面被覆層形成用塗料で塗布の対象となる基材の種類、材質や厚さ、形状等の特性、凸部、エッジ部等については、本発明の構造体で説明した事項をそのまま適用することができる。
【0075】
表面被覆層形成用塗料は、非晶性無機材及び結晶性無機材の粒子を含むが、そのほかに分散媒、有機結合材等が配合されていてもよい。
表面被覆層形成用塗料の結晶性無機材は、上述した構造体の表面被覆層を形成するための原料であり、従って、表面被覆層に含まれる結晶性無機材の粒子と同じものを用いることができる。結晶性無機材の種類等については、上記構造体で説明したので、ここではその詳しい説明を省略するが、上記非晶性無機材と上記結晶性無機材の合計量に対する結晶性無機材の重量割合は、5〜70重量%である。
上記非晶性無機材と上記結晶性無機材の合計量に対する結晶性無機材の重量割合は、上記(1)式で表わされる。
【0076】
従って、非晶性無機材と上記結晶性無機材の合計量に対する結晶性無機材の重量割合が5重量%未満であると、結晶性無機材の割合が低すぎるため、単容積当たりの非晶性無機材の量が多くなり、溶融層の粘度が低くなり、凸部等の溶融層の厚さを厚くすることが難しく、第2被覆部12bの厚さが、第1被覆部12aの厚さの0.4未満となってしまう。一方、非晶性無機材と上記結晶性無機材の合計量に対する結晶性無機材の重量割合が70重量%を超えると、溶融層の粘度が高くなりすぎるため、基材の全体に均一な厚さの表面被覆層を形成するのが難しくなり、表面粗度が高くなる。
【0077】
表面被覆層用塗料に含まれる非晶性無機材と結晶性無機材の合計量に対する上記結晶性無機材の重量割合は、20〜70重量%であることが望ましい。
【0078】
上記結晶性無機材の粒子の平均粒子径は、0.1〜50μmであることが望ましい。
表面被覆層形成用塗料に含まれる結晶性無機材の粒子の平均粒子径が0.1μm未満であると、結晶性無機材の粒子の粒子径が小さすぎて、溶融層中の結晶性無機材の粒子の表面積が大きくなり、結晶性無機材の粒子を含む溶融層の粘度が高くなりすぎ、均一な厚さの表面被覆層が形成されない。一方、表面被覆層形成用塗料に含まれる結晶性無機材の粒子の平均粒子径が50μmを超えると、結晶性無機材の粒子の粒子径が大きすぎて、溶融層中の無機材の粒子の表面積が小さすぎ、結晶性無機材の粒子を含む溶融層の粘度が低くなり、形成した溶融層が流動しやすくなり、形成する第2被覆部の厚さが薄くなり、第2被覆部の厚さが、第1被覆部の厚さの0.4未満となってしまう。
【0079】
表面被覆層形成用塗料中の結晶性無機材の湿式粉砕後の最終的な平均粒径は、0.1μm以上10μm未満であることがより望ましい。
【0080】
表面被覆層形成用塗料中の結晶性無機材の粒子の配合割合は、表面被覆層形成用塗料に含まれる非晶性無機材及び結晶性無機材の粒子のほか、分散媒等も含むので、表面被覆層形成用塗料中の結晶性無機材の粒子の配合割合は、表面被覆層形成用塗料全体の重量に対する結晶性無機材の粒子の重量割合で示すこともある。この場合には、表面被覆層形成用塗料中の結晶性無機材の粒子の濃度ということにする。
表面被覆層形成用塗料に含まれる結晶性無機材の濃度は、0.05〜9重量%であることが望ましく、0.30〜5重量%であることがより望ましい。
【0081】
また、非晶性無機材に関し、非晶性無機材の種類、材質、その特性等については、本発明の構造体において説明したものを用いることができるので、その説明を省略するが、上記構造体では、非晶性無機材は、塗布、加熱後に溶融し、非晶質の層となる。一方、原料の表面被覆層形成用塗料を調製する際には、上記非晶性無機材の粉末を用いる。本発明の表面被覆層形成用塗料を調製する際には、各原料を調合した後、湿式粉砕を行うが、非晶性無機材の粉末は、最初に適当な粒径に調節したものを用い、原料の調合後、湿式粉砕により目的の粒子径のものを得る。
【0082】
上述したように、非晶性無機材は、基材表面に塗布、焼成後、溶融して非晶性無機材の層となるので、厳密に非晶性無機材の粒径をコントロールする必要はないが、表面被覆層形成用塗料中に非晶性無機材の粒子が均一に分散している必要がある。
この点から、第2塗料組成物における非晶性無機材の湿式粉砕後の最終的な平均粒径は、0.1〜100μmが望ましく、1〜20μmがより望ましい。1〜20μmの範囲では、粒子表面に帯電している電気による影響が少ないためと推測しているが、粒子が均一に分散しやすい。
【0083】
上記分散媒としては、例えば、水や、メタノール、エタノール、アセトン等の有機溶媒等が挙げられる。表面被覆層形成用塗料に含まれる非晶性無機材の粉末と分散媒との配合比は、特に限定されるものでないが、例えば、非晶性無機材の粉末100重量部に対して、分散媒が50〜150重量部であることが望ましい。基材に塗布するのに適した粘度となるからである。
上記表面被覆層形成用塗料に配合することのできる有機結合材としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、分散媒と有機結合材とを併用してもよい。
【0084】
次に、表面被覆層の上にオーバーコート層を形成する場合について説明する。
表面被覆層の上にオーバーコート層を形成する場合には、一旦、基材表面に表面被覆層形成用の塗料を塗布し、加熱、溶融により表面被覆層を形成した後、オーバーコート層形成用の塗料を塗布し、加熱してオーバーコート層を形成してもよいが、基材表面に表面被覆層形成用の塗料を塗布、乾燥して塗膜を形成した後、オーバーコート層形成用の塗料を塗布、乾燥してオーバーコート用の塗膜を形成し、加熱、焼成することにより、表面被覆層とオーバーコート層とを同時に形成することが望ましい。1回の加熱、焼成により表面被覆層とオーバーコート層とを同時に形成することができるからである。
【0085】
オーバーコート層形成用の塗料は、非晶性無機材及び結晶性無機材の粒子を含んでもよく、非晶性無機材の粒子のみを含んでもよい。オーバーコート層形成用の塗料は、そのほかに分散媒、有機結合材等が配合されていてもよい。
オーバーコート層形成用の塗料中に結晶性無機材を含む場合、該結晶性無機材は、上述した構造体のオーバーコート層を形成するための原料であり、従って、上記構造体を構成するオーバーコート層中に含まれる結晶性無機材と同じものを用いることができる。結晶性無機材の種類等については、上記構造体で説明したので、ここではその説明を省略するが、オーバーコート層形成用の塗料に結晶性無機材の粒子が含まれる場合、該結晶性無機材の粒子の平均粒子径は、0.1〜50μmであることが望ましく、オーバーコート層形成用の塗料に含まれる非晶性無機材と前記結晶性無機材の合計量に対する結晶性無機材の粒子の配合割合は、0.1〜20重量%が望ましい。なお、オーバーコート層形成用の塗料中の非晶性無機材と前記結晶性無機材の合計量に対する結晶性無機材の粒子の配合割合は、表面被覆層層用の塗料の場合と同様の方法により定めることとする。
【0086】
オーバーコート層形成用の塗料中に含まれる非晶性無機材と前記結晶性無機材の合計量に対する結晶性無機材の粒子の配合割合が20重量%を超えると、オーバーコート層形成用の塗料を調製した際、オーバーコート層形成用の塗料の粘度が高くなり、良好な塗膜を形成することができず、オーバーコート層の表面粗度が大きくなってしまう。
【0087】
また、非晶性無機材に関し、非晶性無機材の種類、材質、その特性等については、本発明の構造体において説明したものを用いることができるので、その説明を省略するが、上記構造体では、非晶性無機材は、塗布、加熱後に溶融し、非晶質の層となる。一方、原料のオーバーコート層形成用の塗料を調製する際には、上記非晶性無機材の粉末を用いる。オーバーコート層形成用の塗料を調製する際には、各原料を調合した後、湿式粉砕を行うが、非晶性無機材の粉末は、最初に適当な粒径に調節したものを用い、原料の調合後、湿式粉砕により目的の粒子径のものを得る。
【0088】
上述したように、非晶性無機材は、基材表面に塗布、焼成後、溶融して非晶性無機材の層となるので、厳密に非晶性無機材の粒径をコントロールする必要はないが、オーバーコート層形成用の塗料に非晶性無機材の粒子が均一に分散している必要がある。
この点から、オーバーコート層形成用の塗料における非晶性無機材の湿式粉砕後の最終的な平均粒径は、0.1〜50μmが望ましく、1〜20μmがより望ましい。1〜20μmの範囲では、粒子表面に帯電している電気による影響が少ないためと推測しているが、粒子が均一に分散しやすい。
【0089】
オーバーコート層形成用の塗料に含まれる分散媒及び有機結合材としては、表面被覆層形成用塗料で例示したものと同様のものが挙げられる。オーバーコート層形成用の塗料に含まれる非晶性無機材の粉末と分散媒との配合比は、特に限定されるものでないが、例えば、非晶性無機材の粉末100重量部に対して、分散媒が50〜150重量部であることが望ましい。
【0090】
次に、上記した表面被覆層形成用塗料の調製とそれを用いた排気系部品の製造方法について説明する。
【0091】
(1)金属からなる基材を準備する工程
金属からなる基材(以下、金属基材又は金属材料ともいう)を出発材料とし、まず、金属基材の表面の不純物を除去するために洗浄処理を行う。
上記洗浄処理としては特に限定されず、従来公知の洗浄処理を用いることができ、具体的には、例えば、アルコール溶媒中で超音波洗浄を行う方法等を用いることができる。
【0092】
また、上記洗浄処理後には、必要に応じて、金属基材の表面の比表面積を大きくしたり、金属基材の表面の粗さを調整したりするために、金属基材の表面に粗化処理を施してもよい。具体的には、例えば、サンドブラスト処理、エッチング処理、高温酸化処理等の粗化処理を施してもよい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
この粗化処理後に、さらに洗浄処理を行ってもよい。
【0093】
(2)表面被覆層を形成する工程
まず、結晶性無機材、非晶性無機材等を混合し、表面被覆層形成用塗料を調製する。
具体的には、例えば、結晶性無機材の粉末と、非晶性無機材の粉末とをそれぞれ所定の粒度、形状等になるように調製し、各粉末を所定の配合比率で乾式混合して混合粉末を調製し、さらに水を加えて、ボールミルで湿式混合することにより表面被覆層形成用塗料を調製する。
ここで、混合粉末と水との配合比は、特に限定されるものでないが、混合粉末100重量部に対して、水100重量部程度が望ましい。金属基材に塗布するのに適した粘度となるからである。また、必要に応じて、上記表面被覆層形成用塗料には、上記したように、有機溶剤等の分散媒及び有機結合材等を配合してもよい。
【0094】
(3)次に、金属基材の平坦部、並びに、凸部及び/又はエッジ部を含む表面全体に表面被覆層形成用塗料を塗布する。
上記塗料組成物を塗布する方法としては、例えば、スプレーコート、静電塗装、インクジェット、スタンプやローラ等を用いた転写、ハケ塗り、又は、電着塗装等の方法を用いることができる。
表面被覆層用の塗膜を乾燥させた後、必要により、オーバーコート層形成用の塗料を調製し、表面被覆層用の塗膜の上にオーバーコート層形成用の塗料を塗布し、乾燥させることによりオーバーコート用の塗膜を形成する。
【0095】
(4)続いて、表面被覆層用の塗膜を形成した金属基材に焼成処理を施す。
具体的には、上記塗料組成物を塗布した金属基材を乾燥後、加熱焼成することにより表面被覆層を形成する。オーバーコート層用の塗膜を形成した場合には、表面被覆層の上にオーバーコート層が形成されることとなる。
上記焼成温度は、非晶性無機材の軟化点以上とすることが望ましく、配合した非晶性無機材の種類にもよるが700℃〜1100℃が望ましい。焼成温度を非晶性無機材の軟化点以上の温度とすることにより金属基材と非晶性無機材とを強固に密着させることができ、金属基材と強固に密着した第1被覆部及び第2被覆部を形成することができるからである。
【0096】
上記手順により、本発明の構造体の一例である、
図1に示した構造体10を製造することができる。
【0097】
図2(a)は、排気系部品を構成する基材の半割部材を模式的に示した断面図であり、
図2(b)は、基材が筒状体である場合の排気系部品を模式的に示した断面図であり、
図2(c)は、
図2(a)に示す半割部材における凸部付近を拡大した拡大断面図である。
図2(b)に示す排気系部品30では、排気管のように筒状体からなり、一部に凸部31bが形成された基材31を備え、基材31の内側に表面被覆層32(平坦部を被覆する第1被覆部32a及び凸部を被覆する第2被覆部32bを含む)が形成されている。
この、基材31の内側に表面被覆層32が形成された排気管では、極めて断熱性能に優れた排気管となる。従って、この排気管を用いることにより、エンジンの始動時から短時間で触媒活性化温度まで昇温することができ、触媒コンバータの性能をエンジン始動時から充分に発揮させることができる。
【0098】
このような基材が筒状体であり、表面被覆層が筒状体の内面に形成された排気系部品を製造する方法の例を以下に示す。
図2(b)に示した排気系部品(筒状体)30が長い場合には、その内部全体に表面被覆層を形成することは、不可能ではないが、難しいので、通常は、排気系部品を構成する基材の筒状体を半分に切断した排気系部品(半割部材)20(
図2(a)参照)を使用する。
この場合、基材21の表面に表面被覆層22を形成した後、2個の排気系部品(半割部材)20を合体させて基材31の内面に表面被覆層32(第1被覆部32a及び第2被覆部32bを含む)が形成された筒状体からなる排気系部品30を作製する。
【0099】
まず、金属基材として、筒状体を半分に切断した第1の半割部材及び第2の半割部材を準備する。次に、第1の半割部材及び第2の半割部材について、第1の半割部材及び第2の半割部材のそれぞれ面積の小さい内側の表面に塗料組成物を塗布する。続いて、第1の半割部材及び第2の半割部材に焼成処理を施すことにより、第1の半割部材及び第2の半割部材の表面に第2被覆部を含む表面被覆層を形成し、その後、第1の半割部材及び第2の半割部材を溶接等により接合して筒状体にする。
上記手順により、金属基材が筒状体であり、表面被覆層が筒状体の内面に形成された排気系部品を製造することができる。
【0100】
以下に、本発明の構造体、及び、表面被覆層形成用塗料の作用効果について列挙する。
(1)本発明の構造体では、基材と非晶性無機材及び結晶性無機材の粒子からなる表面被覆層とを備え、上記第1被覆部の膜厚に対する上記第2被覆部の膜厚の比(第2被覆部の膜厚/第1被覆部の膜厚)は、0.4以上1.0未満であり、上記表面被覆層の全体に対する上記結晶性無機材の粒子の重量割合は、5〜70重量%であり、非晶性無機材に対する結晶性無機材の割合が比較的高いので、非晶性無機材及び結晶性無機材を含む塗料を用いて塗布層を形成した後、加熱した際、溶融した溶融層の粘度が適切な範囲に保たれ、溶融した凸部における溶融層が平坦部に流れにくく、平坦部分の第1被覆部と凸部等の第2被覆部において、表面被覆層の厚さに大きな差がない構造体となる。その結果、本発明の構造体の全体において、優れた断熱性、絶縁性等の効果を発揮することができる。
【0101】
(2)本発明の構造体で、上記結晶性無機材として、カルシア、マグネシア、セリア、アルミナ、及び、遷移金属の酸化物のうち少なくとも一種を含んでいると、上記結晶性無機材の粒子は、耐熱性に優れ、かつ、表面被覆層を機械的に強化する役割を果たすので、表面被覆層の機械的強度の劣化によりクラック等が発生するのを防止することができる。特に、アルミニウムの酸化物を用いた場合は、排気管の絶縁性の向上にも寄与する。また、結晶性無機材として、遷移金属の酸化物を含んでいると、上記遷移金属の酸化物は、高い赤外線の放射率を有するため、表面被覆層の放射率を高くすることができ、基材との密着性にも優れる。
【0102】
(3)本発明の構造体で、膜厚が20〜1000μmの表面被覆層を形成することにより、全体として充分に断熱性の高い表面被覆層を形成することができ、断熱性や絶縁性に優れた構造体とすることができる。
【0103】
(4)本発明の構造体で、上記表面被覆層の上に、結晶性無機材の粒子の平均粒子径が0.1〜50μmのオーバーコート層が形成され、上記オーバーコート層全体に対する上記オーバーコート層中の結晶性無機材の粒子の重量割合は、0.1〜20重量%であると、上記特性を有する結晶性無機材の粒子が含有されたオーバーコート層を形成することができ、表面粗さの小さい平坦な層を形成することができ、オーバーコート層の上を流れるガスをスムーズに流通させることができるため、排気ガス等のガスと構造体との間の熱伝達係数が低くなり、断熱性を改善することができる。
【0104】
(5)本発明の構造体で、上記非晶性無機材の軟化点が300〜1000℃の低融点ガラスからなると、塗布等の手段を用いて基材の表面に塗布層を形成した後、加熱することにより、比較的容易に表面被覆層を形成することができる。
【0105】
(6)本発明の表面被覆層形成用塗料では、表面被覆層形成用塗料は、非晶性無機材及び結晶性無機材の粒子を含み、上記非晶性無機材と上記結晶性無機材の合計量に対する結晶性無機材の重量割合は、5〜70重量%であるので、この塗料を用いて表面被覆層を形成し、加熱すると、溶融した塗料の粘度が高く、平坦部と凸部等とで余り厚さが異ならない表面被覆層を形成することができ、優れた断熱性、絶縁性等を有する構造体とすることができる。
【0106】
(実施例)
以下、本発明の構造体、及び、表面被覆層形成用塗料をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0107】
(実施例1)
(1)基材の準備
塗布対象である金属からなる基材として、高さ5mm、幅10mm、長さ40mmの半円柱状の溶接ビードを有する長さ40mm×幅40mm×厚さ1.5mmの平板状のステンレス基材(SUS430製)を材料として、アルコール溶媒中で超音波洗浄を行い、続いて、サンドブラスト処理を行って基材の表面(両面)を粗化した。サンドブラスト処理は、♯100のAl
2O
3砥粒を用いて10分間行った。
表面粗さ測定機((株)東京精密製 ハンディサーフE−35B)を用いて、測長距離10mmにて金属基材の表面粗さを測定したところ、金属基材の表面粗さは、Rz
JIS=8.8μmであった。
上記処理により、平板状の基材を作製した。
【0108】
(2)表面被覆層形成用の塗料の調製
非晶性無機材の粉末として、旭硝子株式会社製K4006A−100M(Bi
2O
3−B
2O
3系ガラス、軟化点770℃)を準備した。非晶性無機材の表面被覆層形成用塗料全体に対する濃度は、21重量%である。上記濃度とは、水等を含む表面被覆層形成用塗料の全体の重量に対する非晶性無機材の割合を百分率で示したものである。また、上記非晶性無機材の粉末は、平均粒子径が15μmであった。
また、結晶性無機材の粒子として、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)を配合した。非晶性無機材と前記結晶性無機材の合計量に対する結晶性無機材の重量割合は、70重量%、平均粒子径は、0.1μmであった。
【0109】
さらに、有機結合材として、信越化学工業株式会社製のメチルセルロース(製品名:METOLOSE−65SH)を準備し、表面被覆層形成用塗料全体に対する濃度が0.05重量%となるように配合した。
表面被覆層形成に用いる表面被覆層形成用の塗料の調製にあたっては、さらに水を表面被覆層形成用塗料全体に対する濃度が7重量%となるように配合し、ボールミルで湿式混合することにより第1塗料組成物を調製した。
【0110】
(3)オーバーコート層形成用の塗料の調製
上記した表面被覆層形成用の塗料の調製方法と同様の方法により、オーバーコート層形成用の塗料を調製した。
非晶性無機材の粉末として第1塗料組成物の場合と同じ旭硝子株式会社製K4006A−100Mを非晶性無機材の表面被覆層形成用塗料全体に対する濃度が、38重量%となるように使用した。結晶性無機材は、配合しなかった。
塗布対象、表面被覆層形成用の塗料の特性(結晶性無機材の種類、結晶性無機材の平均粒子径、結晶性無機材の重量割合、非晶性無機材の濃度)、オーバーコート層形成用の塗料の特性(結晶性無機材の種類、結晶性無機材の平均粒子径、結晶性無機材の重量割合、非晶性無機材の濃度)を表1に示す。
【0111】
ここで、結晶性無機材の粒子の平均粒子径は、表面被覆層を形成するため原料を調製する際に、原料に添加する結晶性無機材の粒子の平均粒子径を、島津製作所社製レーザ回折式粒子径分布測定装置(SALD−300V)を用いて測定した値である。
【0112】
(4)構造体の製造
上記基材の片側表面及び側面に、調製した表面被覆層形成用の塗料を用いてスプレーコート法により塗布を行い、乾燥機内において70℃で20分乾燥した。この後、空気中、850℃で90分間、加熱焼成処理することにより、表面被覆層を形成した。
【0113】
(5)得られた構造体の評価
得られた構造体に関し、表面被覆層の厚さの測定(第1被覆部の膜厚、第2被覆部の膜厚)、膜厚比(第2被覆部の厚さ/第1被覆部の厚さ)の計算、表面被覆層の特性評価(平坦部への成膜性評価、凸部への成膜性評価、表面被覆層又はオーバーコート層表面の面粗度測定、及び、総合判断)を以下に示す方法により行った。
【0114】
(膜厚の測定)
得られた構造体の第1被覆部及び第2被覆部の膜厚を株式会社フィッシャー・インストルメンツ製のデュアルスコープMP40にて測定した。
上記の測定で得られた第2被覆部の膜厚を第1被覆部の膜厚で割った値を膜厚比として算出した。
【0115】
(平坦部及び凸部への成膜性の評価)
基材表面に形成する表面被覆層に関し、走査型電子顕微鏡(Hitachi製、FE−SEM S−4800)を用いて、基材と表面被覆層の界面に注目した10枚のSEM写真を撮影し、それらのSEM写真に基材と表面被覆層との間に空隙が形成されており、剥離は発生していることが観察されたものを「×」とし、基材と表面被覆層との間に空隙が全く形成されていないものを「○」とした。
【0116】
(表面被覆層の表面の面粗度の測定)
表面粗さ測定機((株)東京精密製 ハンディサーフE−35B)を用いて、第1被覆部の表面の面粗度を測定し、JIS B 0601(2001)の規定に基づき、測長距離10mmにて粗さ曲線における十点平均粗さRz
JISを計算した。
【0117】
(総合判定)
上記した平坦部への成膜性、凸部への成膜性及び膜厚比の評価結果に基づき、全てが○のものを合格、上記の特性に一つでも×のあるものを不合格とした。ここで膜厚比の評価について説明すると、構造体の断熱度合いを示す評価値として熱抵抗:R(m
2K/W)=膜厚:t(m)/熱伝導率:λ(W/m・K)がある。熱抵抗Rは高い方が断熱度合いが高く、式に示される通り膜厚tに比例する値である。よって、断熱度合いについては熱抵抗Rの代用として膜厚tを用いて評価することとした。また、熱抵抗Rを評価する際に膜厚tを代用する是非をガスの流れの観点からも考えてみると、凸部やエッジ部を有する構造体の表面をガスが流れる際、凸部やエッジ部においてガスの流れが乱れることで単位面積と単位時間あたりにガスから構造体の凸部やエッジ部が受け取る熱量は平坦部が受け取る熱量よりも大きくなる。よって、凸部やエッジ部に形成される膜厚が厚いほど構造体全体の断熱度合いが高くなることは容易に考えられることである。本発明が適用される用途の一つである排気管においては、膜厚比0.4以上があれば断熱性能としては充分であるため、膜厚比の評価は0.4以上の場合を○として評価した。
【0118】
(実施例2〜10)
塗布対象となる基材の種類、表面被覆層形成用の塗料で用いる結晶性無機材の種類と平均粒子径、重量割合、非晶性無機材の濃度を表1に示したように変更した他は、実施例1と略同様の方法により表面被覆層を形成した。塗布対象、表面被覆層形成用の塗料の特性(結晶性無機材の種類、結晶性無機材の平均粒子径、結晶性無機材の重量割合、非晶性無機材の濃度)、オーバーコート層形成用の塗料の特性(結晶性無機材の種類、結晶性無機材の平均粒子径、結晶性無機材の重量割合、非晶性無機材の濃度)を表1に示す。
【0119】
(比較例1〜5)
塗布対象となる基材の種類、表面被覆層形成用の塗料で用いる結晶性無機材の種類と平均粒子径、重量割合、非晶性無機材の濃度を表1に示したように変更した他は、実施例1と略同様の方法により表面被覆層を形成した。塗布対象、表面被覆層形成用の塗料の特性(結晶性無機材の種類、結晶性無機材の平均粒子径、結晶性無機材の重量割合、非晶性無機材の濃度)、オーバーコート層形成用の塗料の特性(結晶性無機材の種類、結晶性無機材の平均粒子径、結晶性無機材の重量割合、非晶性無機材の濃度)を表1に示す。
【0120】
【表1】
【0121】
実施例1では、第1被覆部の膜厚は、50μm、第2被覆部の膜厚は、49.5μm、膜厚比(第2被覆部の厚さ/第1被覆部の厚さ)は、0.99であり、オーバーコートの厚さは、25μm、平坦部への成膜性評価は○、凸部への成膜性評価は○、オーバーコート層表面の面粗度(Rz
JIS)は0.1μmで、総合判断は○となった。
【0122】
実施例2では、第1被覆部の膜厚は、200μm、第2被覆部の膜厚は、190μm、膜厚比(第2被覆部の厚さ/第1被覆部の厚さ)は、0.95であり、平坦部への成膜性評価は○、凸部への成膜性評価は○、表面被覆層表面の面粗度(Rz
JIS)は5μmで、総合判断は○となった。
【0123】
実施例3では、第1被覆部の膜厚は、1000μm、第2被覆部の膜厚は、450μm、膜厚比(第2被覆部の厚さ/第1被覆部の厚さ)は、0.45であり、平坦部への成膜性評価は○、凸部への成膜性評価は○、表面被覆層表面の面粗度(Rz
JIS)は1μmで、総合判断は○となった。
【0124】
実施例4では、第1被覆部の膜厚は、200μm、第2被覆部の膜厚は、190μm、膜厚比(第2被覆部の厚さ/第1被覆部の厚さ)は、0.95であり、オーバーコートの厚さは、20μm、平坦部への成膜性評価は○、凸部への成膜性評価は○、オーバーコート層表面の面粗度(Rz
JIS)は1.5μmで、総合判断は○となった。
【0125】
実施例5では、第1被覆部の膜厚は、200μm、第2被覆部の膜厚は、160μm、膜厚比(第2被覆部の厚さ/第1被覆部の厚さ)は、0.8であり、平坦部への成膜性評価は○、凸部への成膜性評価は○、表面被覆層表面の面粗度(Rz
JIS)は5μmで、総合判断は○となった。
【0126】
実施例6では、第1被覆部の膜厚は、150μm、第2被覆部の膜厚は、135μm、膜厚比(第2被覆部の厚さ/第1被覆部の厚さ)は、0.9であり、平坦部への成膜性評価は○、凸部への成膜性評価は○、表面被覆層表面の面粗度(Rz
JIS)は7μmで、総合判断は○となった。
【0127】
実施例7では、第1被覆部の膜厚は、150μm、第2被覆部の膜厚は、105μm、膜厚比(第2被覆部の厚さ/第1被覆部の厚さ)は、0.7であり、平坦部への成膜性評価は○、凸部への成膜性評価は○、表面被覆層表面の面粗度(Rz
JIS)は2μmで、総合判断は○となった。
【0128】
実施例8では、第1被覆部の膜厚は、200μm、第2被覆部の膜厚は、160μm、膜厚比(第2被覆部の厚さ/第1被覆部の厚さ)は、0.8であり、平坦部への成膜性評価は○、凸部への成膜性評価は○、表面被覆層表面の面粗度(Rz
JIS)は10μmで、総合判断は○となった。
【0129】
実施例9では、第1被覆部の膜厚は、500μm、第2被覆部の膜厚は、350μm、膜厚比(第2被覆部の厚さ/第1被覆部の厚さ)は、0.7であり、オーバーコートの厚さは、5μm、平坦部への成膜性評価は○、凸部への成膜性評価は○、オーバーコート層表面の面粗度(Rz
JIS)は0.2μmで、総合判断は○となった。
【0130】
実施例10では、第1被覆部の膜厚は、500μm、第2被覆部の膜厚は、200μm、膜厚比(第2被覆部の厚さ/第1被覆部の厚さ)は、0.4であり、平坦部への成膜性評価は○、凸部への成膜性評価は○、表面被覆層表面の面粗度(Rz
JIS)は3μmで、総合判断は○となった。
【0131】
比較例1では、平均粒子径0.05μmの細かすぎる結晶性無機材の粒子を使用したので、塗布可能な塗料を調製することができず、塗膜を形成することができなかった。
【0132】
比較例2では、第1被覆部の膜厚は、500μm、第2被覆部の膜厚は、175μm、膜厚比(第2被覆部の厚さ/第1被覆部の厚さ)は、0.35と断熱性能が不充分であり、平坦部への成膜性評価は○、凸部への成膜性評価は○、表面被覆層表面の面粗度(Rz
JIS)は3μmであったものの、総合判断は×となった。
【0133】
比較例3では、第1被覆部の膜厚は、500μm、第2被覆部の膜厚は、160μm、膜厚比(第2被覆部の厚さ/第1被覆部の厚さ)は、0.32と断熱性能が不充分であり、平坦部への成膜性評価は○、凸部への成膜性評価は○、表面被覆層表面の面粗度(Rz
JIS)は2.5μmであったものの、総合判断は×となった。
【0134】
比較例4では、第1被覆部の膜厚は、500μm、第2被覆部の膜厚は、150μm、膜厚比(第2被覆部の厚さ/第1被覆部の厚さ)は、0.3と断熱性能が不充分であり、平坦部への成膜性評価は○、凸部への成膜性評価は○、オーバーコート層表面の面粗度(Rz
JIS)は0.1μmであったものの、総合判断は×となった。
【0135】
比較例5では、結晶性無機材の重量割合が75重量%と高すぎたため、塗布可能な塗料を調製することができず、塗膜を形成することができなかった。
【0136】
以下、本発明の構造体の具体的な例について、図面を参照しながら説明する。
本発明の構造体は、自動車用エンジン等の内燃機関に接続される排気系を構成する部材として使用される排気系部品に使用することができる。ここで説明する排気系部品の構成は、基材が筒状体であること以外は、上述した構造体と同じである。
【0137】
具体的には、本発明の構造体は、例えば、エキゾーストマニホールド等として好適に使用することができる。
以下、自動車用エンジン等の内燃機関に接続されるエキゾーストマニホールドを例にして、本発明の構造体について説明する。
【0138】
図3は、本発明の構造体に係る自動車用エンジンと、自動車用エンジンに接続されたエキゾーストマニホールドとを模式的に示す分解斜視図である。
また、
図4(a)は、
図3に示す自動車用エンジン及びエキゾーストマニホールドのA−A線断面図であり、
図4(b)は、
図4(a)に示すエキゾーストマニホールドのB−B線断面図である。
【0139】
図3及び
図4(a)に示すように、自動車用エンジン100には、エキゾーストマニホールド110(
図1に示した構造体)が接続されている。
自動車用エンジン100のシリンダブロック101の頂部には、シリンダヘッド102が取り付けられている。そして、シリンダヘッド102の一方の側面には、エキゾーストマニホールド110が取り付けられている。
【0140】
エキゾーストマニホールド110は、グローブ状の形状を有しており、各気筒の数に応じた分岐管111a、111b、111c及び111dと、分岐管111a、111b、111c及び111dを結合する集合部112とを備える。
このエキゾーストマニホールド110には、触媒担体を備えた触媒コンバータが接続される。エキゾーストマニホールド110は、各気筒からの排ガスを集合させ、さらに、触媒コンバータ等に排ガスを送る機能を有する。
そして、自動車用エンジン100から排出された排ガスG(
図4(a)中、排ガスをGで示し、排ガスの流れる方向を矢印で示す)は、エキゾーストマニホールド110内を通って、触媒コンバータ内に流入し、触媒担体に担持された触媒により浄化され、出口から排出されることとなる。
【0141】
図4(b)に示すように、エキゾーストマニホールド110(本発明の構造体)は、金属からなる基材と、基材の表面上に形成された表面被覆層132とを備えている。
図4(b)に示すエキゾーストマニホールド110(本発明の構造体)において、基材は筒状体であり、表面被覆層132は、基材の内面上に形成されている。
【0142】
本発明の構造体(エキゾーストマニホールド)においては、表面被覆層の構成として、上述した構造体における表面被覆層と同様の構成を採用することができる。
図4(b)に示すエキゾーストマニホールド110には、表面被覆層132として、
図1に示した構造体10における表面被覆層12と同様の構成を有する例を示しており、凸部131bに第2被覆部132bが形成されており、非晶性無機材中に図示はしていないが、結晶性無機材の粒子が分散している。
【0143】
本発明の構造体(エキゾーストマニホールド)において、表面被覆層は、基材の内面上全体に形成されていることが望ましい。排ガスと接触する表面被覆層の面積が最大となり、耐熱性に特に優れるからである。しかしながら、表面被覆層は、基材の内面上の一部にのみ形成されていてもよい。
また、本発明の構造体において、表面被覆層は、基材の内面上に加えて外面上に形成されていてもよいし、基材の外面上のみに形成されていてもよい。
【0144】
ここまでは、本発明の構造体として、排気系部品に使用されるエキゾーストマニホールドを例に説明してきたが、本発明の構造体の使用範囲は、エキゾーストマニホールドに限定されず、排気管、触媒コンバータを構成する管、又は、タービンハウジング等としても好適に使用することができる。
上記エキゾーストマニホールドを構成する分岐管の数は、エンジンの気筒数と同じであればよく、特に限定されない。なお、エンジンの気筒としては、例えば、単気筒、2気筒、4気筒、6気筒、8気筒等が挙げられる。
【0145】
本発明の構造体を製造する場合には、基材の形状が異なる他は、
図1を用いて説明した本発明の構造体と同様であり、上述した構造体と同様の方法により排気系部品を製造することができる。
なお、本発明の構造体において、基材の内面に表面被覆層を形成する場合、上述したように、第1の半割部材及び第2の半割部材からなる基材を用いることが望ましい。
【0146】
ここで説明した本発明の構造体においても、
図1を用いて説明した構造体及び表面被覆層形成用塗料の効果(1)〜(6)と同様の効果を得ることができる。
【0147】
本発明の構造体において、表面被覆層は、必ずしも基材の表面上全体に形成されている必要はない。
例えば、本発明の構造体を排気管として用いる場合において、表面被覆層を基材としての筒状体の内面に形成してもよいが、筒状体の内面に形成する場合には、基材としての筒状体の内面の表面全体に形成する必要はなく、少なくとも排ガスが直接接触する部分に表面被覆層を形成すればよい。
【0148】
本発明の構造体は、上金属からなり、表面に平坦部と凸部及び/又はエッジ部とが形成された基材と、上記基材の表面に被覆され、非晶性無機材及び結晶性無機材の粒子からなる表面被覆層とを備えた構造体であって、上記表面被覆層は、上記平坦部を被覆する第1被覆部と、上記凸部及び/又はエッジ部を被覆する第2被覆部とからなり、上記第1被覆部の膜厚に対する上記第2被覆部の膜厚の比(第2被覆部の膜厚/第1被覆部の膜厚)は、0.4以上1.0未満であることが必須の構成要素である。
係る必須の構成要素に、上述した種々の構成(例えば、表面被覆層の構成、基材の形状、エキゾーストマニホールド等)を適宜組み合わせることにより所望の効果を得ることができる。